第2回基本理念委員会議事概要

1 日時 

平成11年3月29日(月) 18:30~20:00

2 場所 

経済企画庁官房特別会議室(729号室)(第4合同庁舎7階)

3 出席者 

(委員会) 小林陽太郎企画部会部会長、香西泰企画部会部会長代理、江口克彦構造改革推進部会部会長代理、清家篤国民生活文化部会部会長、森地茂地域経済・社会資本部会部会長、安土敏地域経済・社会資本部会部会長代理

(事務局) 堺屋大臣、今井政務次官、塩谷事務次官、中名生総合計画局長、高橋審議官、牛嶋審議官、梅村企画課長、大西計画課長等

4 議題

(1)議事の公開方法について

(2)「新たなる時代のあるべき姿」の基本理念について

5 審議内容

(1)「新たなる時代のあるべき姿」について

大西計画課長より、資料2「我が国の国家像についての意見集計」資料3「『新たなる時代のあるべき姿』を考えるにあたって(案)」について説明、その後討議。委員からの主な意見は以下の通り。

○完全失業率は、働く意思と能力があるが仕事がないというマクロでの労働力の活用度を表す指標で、労働者の不満度を表す指標とは峻別すべき。

○消費行動については、ライフサイクルモデルとダイナスティモデルでの論争が今もあるところ。どちらか一説だけに偏る考え方はいかがなものか。

○安全ネットについては、安全ネットがあるから安心して競争に参加するという競争促進の意味もあるのではないか。

○帰属先の多様化については、女性の場合は昔から多様化しており、これまでの会社人間というのは男性だけにしかあてはまらないのではないか。

○多くの人は仕事等を通じて社会に貢献したいという動機はあるはず。会社に儲けさせるためだけに働く人は実際にはそれほどいないのではないか。

○定年については、年齢を理由に退職を強要できないルールと考えればいいのではないか。今後個人は企業を移りながら職業生涯を全うすることが増えるのではないか。雇用政策のあり方は、今まで企業に雇用保障の役割を任せていたのを、今後は労働市場全体で保障していくことになるのではないか。

○今後は開発対環境という枠組みより、一方の環境を良くすることで他方の環境が悪くなるという問題が深刻になり、解決が困難になる。そういう視点を入れなくてよいか。

○外国の例を見ると、規制緩和、民営化等の民間活力の活用がこの20年くらい進められたが、90年代に入って一部で独占等の弊害が出て規制が強化された。また、それによって資本が逃避して再び政府が介入して効率が悪くなり、また民営化の話が出るというサイクルがあるのではないか。こうしたサイクルを念頭に、期間毎にやることを考えてはどうか。この20年の方向性をそのまま追いかけることでいいのか。

○安全を絶対視する考え方は日本特有で、こうしたことを変えていく視点はいらないのか。

○効率性では価格のみを考えがちだが、時間管理の視点が抜けているのではないか。

○リサイクルや海外資本の流入は、地方の活性化のラストチャンスかもしれない。地方にはリサイクルの材料も市場もあり、そこで生産機能を持つことになる。海外資本も日本で市場を拡大しようとして第二次産業で投資するとすれば地方に進出するだろう。港湾でも、リサイクルに関連して臨海地区の機能も変えることになるかもしれない。

○都市計画は、現状の制度で何ができるかを考えたほうが論理的、現実的と思われる。

○失業率は、NPOの雇用をどう考えるかがポイント。例えば、米国のNPOには、都市交通計画を立案し、行政や企業の退職者が再就職してそれを行っている。NPOは社会的機能を持ち、広く社会を支えるという視点を持つべきではないか。

○民間企業の寿命が短くなり次々と倒産し、個人が独立して、ベンチャー企業が次々興亡するという想定は難しいのではないか。60年代にも今と似たようなことが言われていたが、現実は全く違った。

○企業が評価制度を厳格に運用すれば定年はいらない。その問題が解決できなくて、定年等がある。あるべき姿が実現すればすばらしいが、どういうプロセスで夢やビジョンに結びつくかに触れ、人々の夢を広げるものを付け加える必要がある。

○地方分権を強調すれば、日本の国土のあるべき姿の新しいイメージが出てくるのではないか。

○心理、精神面に触れなくてもよいか。日本のあるべき姿が実現したとき、規範や規則等の考え方はどうなるのか。

○富国有徳というより、富民有徳を目指すべきではないか。

○人口が減るとき不安感があると思うが、企業がどう行動するのか。需要が減るときは個人の面からだけ物事を見ないで産業から見る視点がほしい。

○アジアの視点があまりない。例えばODAは、欧州は恵みのODAから産業政策のODAへ、人口流出対策としてのODAへとに変わってきている。こうした考え方はアジアでも適用する場面が出てくるかもしれない。

○情報だけでは新たなる時代を説明しきれないのではないか。リサイクルや海外資本流入の可能性についても触れておいたほうがよいのではないか。

○首都移転は重要。モデル的な首都を造り、日本人にもちゃんとした街を造れるということを示すことが必要。

○富国有徳の「有徳」については、日本人がいなくなったときに、それをどのくらいの他国の人が寂しいとか、困るとか思ってくれることではないか。

○少子化については、年金財政は2040年頃までは過去の出生率で決まっているので、今から対策に取組んでもマクロの経済政策に影響はない。

○少子化対策を一方で唱えながら、負担の先送りをするのは疑問。意思決定に参加していない人に著しく負担を押し付けてよいものか。

○昭和40年代頃から、民間のパワーによる都市の魅力で人口が集まるようになった。しかし、それが失敗だったかも知れない。

○魅力的な街を造るという考え方の中で都市計画を扱うのがいいかもしれない。

○企画部会の議論では、自由は本来責任を伴うものであり、このような本来の自由に限っては正義の中に入れるべきである、という意見があった。

なお、堺屋大臣の主な発言は以下の通り。

○富国有徳と「あるべき姿」の関係について言えば、経済審議会では、富国有徳を両方想定して、そのうち経済的な面を中心に審議することになるのではないか。日本人は様々な議論をする際にも結局は金儲けしか考えていないという傾向があるが、有徳とは、金儲け以外を真剣に考えるということかもしれない。

○民間企業は失敗すると小さくなるが、行政は失敗すると大きくなるのが問題。

○10年からその先を見越して、いくつかの前提を置くべきか。例えば、【1】日本の労働人口を減らさないようにすべきか。その場合、高齢者や女性を使っても減るから、移民を入れていいのか。【2】経済が長期的にマイナスになるのは避けるべきか。それとも誰もが同じように縮小すれば問題ないのか。【3】社会的正義に自由を入れていいのか。あるいは、効率、安全、平等に比べてあった方が良い程度のものなのか。【4】家族主義や国家主義に戻ることはないことを与件として考えていいか。これらについても御意見を伺いたい。

なお、本議事概要は速報のため事後修正される可能性があります。

(本議事概要に関する問い合わせ先)

経済企画庁総合計画局計画課

西岡、阿部

Tel:03-3581-1041