計量委員会(第3回)議事録

平成11年3月25日

経済企画庁総合計画局会議室(732号室)

経済企画庁


計量委員会(第3回)議事次第

日時 平成11年3月25日(木)13:00~15:17

場所 経済企画庁総合計画局会議室(732号室)

  1. 開会
  2. 財政社会保障モデルの改善点について
  3. 中期多部門モデルの改善点について
  4. 「新たなる時代の姿と政策方針」において示す指標について
  5. 閉会

(配付資料)

資料1 計量委員会名簿

資料2 論点メモ

資料3 財政社会保障モデルの改善点

資料4 中期多部門モデルの改善点に


計量委員会委員会名簿

新居 玄武 学習院大学経済学部教授
岩田 一政 東京大学大学院総合文化研究科教授
小川 一夫 大阪大学社会経済研究所教授
奥村 洋彦 学習院大学経済学部教授
国友 直人 東京大学大学院経済学研究科教授
佐和 隆光 京都大学経済研究所教授
島田 晴雄 慶応義塾大学経済学部教授
橘木 俊詔 京都大学経済研究所教授
南部 鶴彦 学習院大学経済学部教授
伴  金美 大阪大学経済学部教授
深尾 光洋 慶応義塾大学商学部教授
藤原 正寛 東京大学大学院経済学研究科教授
吉岡 完治 慶応義塾大学産業研究所教授
吉川  洋 東京大学大学院経済学研究科教授
吉田 和男 京都大学大学院経済研究科教授


〔 委員長 〕ただいまから、第3回の計量委員会を開催いたします。

 本日は、皆様方、ご多用中のところをお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。

 本日は、3つ議題がございまして、1つは「財政社会保障モデルの改善点」、2つ目が「中期多部門モデルの改善点」、3つ目が「『新たなる時代の姿と政策方針』において示す指標について」、これは、フリートーキングになると思いますがこの3つでございます。それぞれの議題について大体40分ほど想定しておりますが、多少のフレキシビリティーはあり得ると思います。

 それでは1 番目の議題「財政社会保障モデルの改善点」につきましてご説明をお願いいたします。

〔 事務局 〕お手元に資料3をお配りしておりますけれども、これが財政社会保障モデル、前回ご議論いただいたのですが、について私どもの方でご意見を踏まえたデータの改善を行なったものですが、前回のご議論のときにも既にこういう問題点があるということを指摘させていただきましたけれども、多少作業を入れ込んだ形で新しいバージョンのものをお示ししているということでございます。

 最初に資料3で主要な変更点をご説明いたします。

 前回、3月3日の計量委員会のときにお示しした「財政社会保障モデル」との変更点ということでございますけれども、最初に価格ブロックの変更ということで、一言で言えば物価にラグをつけたということでございます。

 前回のバージョンですと雇用者所得が増えると年金の給付額にはね返る。賃金スライドということで雇用者所得にスライドする形になっていたものですから、保険料率が引上げると給付が増えるということになって、そこがメカニズムとして非常におかしなことが起こるのではないか。その結論としては、保険料率を引上げると年金財政が悪化するというように変な結果も出てくるわけで、そこを断つために、前回お話ししたのは、雇用者所得にリンクさせるのではなくて雇い主負担を除いたウエッジ・レート、賃金俸給の部分に年金の給付額をリンクさせるということで、他にも雇用者所得を使うよりは賃金俸給を使った方がいいという部分が多々ございまして、それを変更すべきであるという点を申し上げたわけです。

 それを変更してやってみたのですけれども、あまり結果が変わらなくて、なぜかということをもう一度方程式を眺めつつ考えたわけなのですが、物価ブロックにラグが入っていないために、長期的に水準の調整が行われるものが初年に全部調整が行われるということで、保険料率を引上げた途端に物価が上がるというようなことで、それがまた政府の収入なりに即座にはね返るということで、長期的な均衡の姿が直ちに現れるような形になっていた。そこが大きな原因ではないかということで、雇い主負担を除くという問題と同時に物価関数にラグを入れるということをやったわけでございます。その下に方程式が書いてございますが、これはWPIでやっておりますけれども、WPIの説明変数として労働は生産性、1人当たり雇用者所得、輸入物価、いずれもがラグなしで入っておりました。その下に(今回)というのがございますけれども、これ、厳密なラグを試してみないといけないのですけれども、いずれも一期ラグを入れるということで、多少方程式のフィットを犠牲にしてもラグ付の物価ブロックにしたということであります。やはりフィットだけで判断すると必ずしもよくないという1つの例ではないかと思います。

 1ページの下半分に書いてございますのは、いろいろなデフレーターを出す関係で消費者物価ですとかいろいろな価格関数を前に使っていて、いろいろ相互の齟齬、長期的に見ると消費者物価と賃金の関係がどんどん差が開いていくような形になるというのはおかしいのではないかということで、ここではむしろ、前回ご示唆をいただきましたけれども、生産関数の情報に依拠するということで割り切るというのも1つの考え方ではないかということで、思い切って単純化して機械的に全ての価格の伸び率は同一であるというふうに仮定して、先ほど、卸売物価でラグがついたものをご紹介しましたが、すべて価格は同じ伸びで伸びる。これもちょっと単純化し過ぎということもあるかもしれませんけれども、一度単純化してきちんとした基本的なプロパティーを確かめた方がいいということで思い切った単純化をして、物価についてはそれに伸びが同じということをやっております。

 ちょっと順序が逆になるかもしれませんが、2ページ目の賃金関数ですけれども、実質賃金がレーバー・プロダクティビティーで決まってくるという簡単な式。レーバー・プロダクティビティーの弾性値がほぼ1になるということで、これも単純化した、モデルの基本的なプロパティーを見る上ではなるべく簡単な基本的なモデルから出発した方がいいだろうということで、ちょっと逆戻りをして単純化を図っているということであります。

 3ページ以下に変更した点についての一応の内挿期間中のフィットをグラフで示しておりますが、3ページにございますのが物価関数。卸売物価について実線が実績値で点線が推計値で、一通りは追えているという……。

 4ページについては、実質賃金がレーバー・プロダクティビティーとどういう相関があるかというフィットの図。

 5ページについては、また別な変更点なのですが、これも長期の供給型のモデルで実質金利で考えた方がいいのではないか。前回、実質金利でやってもなかなかいい式が出なかったということをご報告したわけですが、その後、もう一度やってみたところ、(今回)ということで真ん中に書いてございますが、一応、実質金利関数というものも有意に計れた。これは日米の実質金利差を日本の国内のISバランスのGDP比で回帰させて、ISバランスが改善すると金利が下がる、ISバランスが悪化すると金利が上がるという単純な式。これもご議論の中では、民間部門のISバランスと政府部門のISバランスとを足してしまっていいのかというご議論があったかと思います。私ども、足す前には別々に扱っておりまして、ただ、別々に扱うという考え方もわからないではないのですが、そのときの経験ですとあまりに係数が違って、本当にこんなに違うだろうかということがありまして、むしろ足してやった方が方程式の当てはまりもいいということで、今、一応足した形でやらせていただいております。

 逆に、前回のご議論ですと、日本の金利が逆に海外の金利に影響を与えるというルートもあるのではないか。これは現実の世界としてはまさにそのとおりだと思いますけれども、私どもの一国モデルの限界といいましょうか、今の段階ではアメリカの金利は外生に扱わせていただいているということでございます。実質金利関数を使うということは、理論的にはまさにそのとおりなのですが、実は、後ほどちょっと触れたいと思いますが、単純なモデルでは非常に発散する性格を持ち込むことになるわけです。一度ISバランスが悪化するとそれが金利上昇につながって、それが利払いを通じてさらにISバランスを悪化させるということで、私ども、そういうことをやったことはありますが、理論的にモデルをすっきりさせるということ、結果がもっともらしい、と言うとおかしいのですけれども、何十年も走らせると発散する性格がちょっとしたことであらわになってきますので、理論的にすっきりさせるということと20年ぐらいのタームを念頭に置いたときに現実をどれだけ模写できているかということの間のジレンマみたいなものがあって、実際の政策シミュレーションという場合に実質金利関数を理論どおり入れていていいのかというのは、もう一度検討しなければいけないと考えております。

 6ページは、実質金利関数のフィットを示しております。

 7ページは、既に最初に申し上げたウェッジ・レートと1人当たり雇用者所得の関係を推計するのですが、年金制度をどういうふうにモデルの中で表現するかという非常に難しい点でございます。

 (前回)ということが、国民年金、厚生年金、共済年金の制度別に1人当たりの給付額をモデルの中でどういう式を使っているか。式自体は非常に単純でウエッジ・レートの弾性値を使って1人あたり給付額を推計しているわけですが、国民年金の場合ですと弾性値がかなり高くて1.55。厚生年金は少し下がりますが1.19、共済年金の場合も1.77。これが70年から94年の推計期間の弾性値として計測されるわけです。

 年金制度というのはこういうものなのだということで、将来に延ばすと必然的に、ただ単なる賃金インデクセーションという以上に、制度の成熟化が今後もずうっと続くということを仮定したような、賃金以上に1人当たり給付が伸びるという世界を将来に持ち込むことになるわけですけれども、前回のご議論ではダイミックに弾性値の変化を時系列的に丁寧に追ってみて、それで、将来それが一定でいいのかどうかということをチェックすべきだ。こういうご議論もあったわけですが、サンプル期間がそんなに、24年で弾性値を測ったのですけれども、まだそこまではっきりしたトレンドを確認するまで作業しておりませんで、ここでも「仮に」ということでございますけれども、今回は賃金との弾性値を1にしてみた。7ページの下の方に書いてございますが、これも非常に単純化し過ぎなのかもしれませんけれども、ということです。

 去年の6月に公表した展望部会の報告書の場合は、賃金スライドの場合、物価スライドの場合と2つのケースのウエイテッド・アベレージをとると、7.3とか、5.5とかいろいろやったのですけれども、いくつかのウエイトでいくつかの中間というのを計算して、そのときに2025年の年金給付水準が、厚生省が「今の制度だとこうなる」と言っている数字に近いものを選んで、それを現行制度であるとみなして、そこを基準に制度改正をした場合にどうなるかというような議論をしたことがございます。

 実際、この弾性値が将来どうなっていくかということは、過去の70年から94年のデータからだけでは何とも言えないところがあるわけでして、いつ頃までの年金の成熟化がすむのか、あるいは現状でもほとんどすんでいるという説もあるわけですから、将来この弾性値がどうなるかということは過去のデータから何とも言えなくて、もう少し年金プロパーの情報が必要な部分だろうと思います。

 これも、厚生省自身もマクロの年金というのを必ずしも把握できていない部分があって、制度ごとには把握できているのですけれども、企業年金の側から言うと、他の年金制度でその人がどういう扱いを受けているかということはわからないということで、人によって、典型的な雇用者の場合はいいわけですが、例えば女性で、若いときには学校の先生をしてして、私学共済か何かで働いていて、それから、そこをやめて今度は普通の企業に勤めたというような人、いろいろな制度をまたがって動いているような人については全体的な把握ができていない状況がありまして、マクロで弾性値がどうなるかということも、年金プロパーの情報としてもなかなか得られないという問題。ここは社会保障制度のモデルという意味で、かなりコアの部分であろうと思っております。

 その他に、それに付け加えてということなのですが、8ページの真ん中あたりにございますけれども、社会保障統計の年金給付額と国民所得統計の年金給付額の間にも非常に差がございまして、この差も一定の差があるというだけでなくて、真ん中の(前回)という式に書いてございますが、社会保障統計の年金に対して弾性値1.14で国民所得統計の年金の伸びの方が高いという関係がございます。ここも、年金制度どこまで細かく定式化していくかということになるわけですが、私どものモデルでは弾性値でつないでいる。これも将来、1.14という1より大きい弾性値を使うことの是非というのが検討されるべきでありますけれども、「ここでは」ということで先ほどと同様ここの弾性値も1であるというような仮定を置いた。

 8ページの下は、前回、恐縮でございますが、私、説明をしながら舌を噛んでしまったところなのですが、1つ、女性の労働力率関数で、9ページに5歳階級別の労働力率関数が書いてございます。これは変更後でございますが、一番上がRLFF2529という、25歳から29歳という年齢区分の女性の労働力率関数でございまして、右辺の最初の項ですが、RLFF2024のドットのー5 、つまり20歳から24歳の階級の労働力率の5年前の値。つまり、20歳から24歳のときに働いていた人が、5年たって25歳から29歳というときになったときにも、前の5年間に働いていたということが、5年たった後でも労働力率にプラスに効く。ただ、これは係数が 1.9になっているというところは問題かもしれませんが、前は、5年前というラグがなくて、ある階級の、若い女性の労働力率を、例えば保育所の整備でもいいのですが、そういうことで政策的に上げたシミュレーションをやると、そこだけが上がらないで、そこから後ろの4954まで、54歳のところまで一気に、その途端に全部労働力率が上がる。これは解釈としては、若い人が働きだすと自分も働かなければいけないと思って働きだすというような解釈もできるのかもしれませんが、ちょっと無理があるのではないかということで、ここはちょっと判断の問題ですが、今回は5年というラグをつけて考えております。

〔 委員長 〕ありがとうございました。 今のご説明に対して何かご質問、ご意見ございますでしょうか。

〔 委員 〕3つに収まるかどうかわからないのですけれども、非常にモデルを簡単にされて、透明性を高めたというのはまさにその通りで、私も非常にいいことだと思うのですが、ちょっと気になるのが、賃金の決定式などのところで、はっきりと生産関数を使っていらっしゃのですが、そのやり方がいいかどうかというのは少し問題がある。

 もう一つは、D・W値が低いというのがあって、私は前から言っているのですが、フィットの方はあまり問題にならないのですが、D・W値が低いということは基本的には非常に傾向的な誤差が累積するし、グラフを見ても非常にあるので、それを長期に延ばす場合には注意がいるのではないか。 基本的には、生産関数でやるということは、ある意味では労働供給のことを全く無視してしまっているわけで、そのことの影響が少し問題として出てくるかという気がいたします。

 最後の点、これは答えていただく必要はないと思うのですが、結局、こういうモデルというのは、はっきり言うと我々専門家だけではなくて、ある意味でクローズド・システムでいいと思うのですが、中期多部門モデルでも天野先生のときやろうとしたような記憶があるのですが、とにかく専門家と言われている人に、はっきり言えばモデルとデータを渡して「いろいろとやってほしい」と。ある意味でソフトウェアの世界ではしょっちゅうやっているのですが、そういうところでいろいろ再推定とかパラメーターの置き換えとかやって、どういう結果が出るかということを少しやられたらいいのではないか。そういうことを、今、具体的に始めようとしている人もいらっしゃるし、あれなのですが、地球環境とかその点ではずいぶん昔からこれやっているわけです。つまり、データとかを全部渡しておいて、「あとはみんなやってくれ」ということ。でないと、結局、事務局が一生懸命やると、必ずこうでもない、ああでもないというのが出てくるわけですから、それをやるには「皆さんでやってください」というふうに投げかけるのも1つではないか。「それの基準系としてはこういうことを考えています。だけど、違うとしたら、どこが違うのでしょうか」というのをある意味でやってもらうというのも1つのやり方かなという気がします。

〔 委員 〕経済の相互依存関係を考えて、財政、年金のモデルを作るというのは一歩進んでいると思うのですけれども、やはり21世紀の激動期にどういう対処をしていくかという議論をしていくときには、ちょっと不満というか気になるのです。

 例えば、今のTFPの話でも、実質GDPの話だけれども、現実に今GDPの概念すら、例えばコンピュータとかそういうところのクォリティー・チェンジが本当に入っているのか、そういう議論です。

 どっちかというと、これはこのまま置いておいた、今の在来部門のGDPみたいなものかもしれない。コンピュータなんかの成長みたいなものを考えて、統計そのものから考えていくような状態かもしれないような気がするのです。問題の課題は過少投資というのか、過少貯蓄というのが今でも現存しているわけですよ。それは変わってないわけです。海外経済余剰の増大と。だから、民間の真っ黒けを政府と海外が真っ赤かでトータルしてゼロになっているという状態ですよ。それがずうっと続いているわけです。それを変えていくムーブメントというのを考えなければいけない。それに年金とかそういうものが張りついているわけです。経済そのものが変わっていけば変わるわけで、そういうことを考えるために、要するに経済との連動のモデルを作られているわけです。年金そものだけで考えたら、もう悲観的この上ないわけでしょう?。でも、経済がどんどん成長したら、それを吸収していくというようなことを考えるモデルならば、是非、そういうものを取り込んでいくようなことをやってほしいと思います。

 それから、マイナーな点なのですけれども、先ほど実質金利の話をどんどんされてましたけれども、これは民間固定資本形成の、要するに設備投資関数に大きく関連しているのですか。それ以外大きな要因はありますか、実質金利の影響で。

〔 委員長 〕最初の質問に対する答えは事務局にやっていただかないといけない。

〔 事務局 〕投資は投資関数に効いてくるのと、あとは財産所得の受け払いに効いてくるるわけです。

〔 委員長 〕それは第2の……。

〔 委員 〕実質金利という意味では投資関数に関係するの?

〔 事務局 〕はい。

〔 委員 〕そのときに、この前も申し上げましたように、投資関数だとユーザーコストというところでの代理変数みたいなことで入れているんでしょうかね。

 前に申しましたように、経済がグローバル化したときに、非常に高い法人税と、高い賃金と、非常に高いエネルギー費で、日本に投資なんかできるかなんていうことを財界が言っていたわけです。それが現に行われてきて、海外へどんどんやっているわけです。経常黒字は日本に返ってこない、投資機会を失っているということですよね。

 そうすると、投資関数の実質金利というものを入れるとするならば、そこに法人税等々が入ってくる、投資の決定的な要因に。ただし、一国のモデルでやっているときには、ユーザーコストを出しているところでは、法人税率というのはあまり効かないですよね。つまり、税引き後の利益の極大と、税引き前利益の極大というのは同じような均衡値を持ってしまうわけです。ところがグローバル経済で片一方の経済で法人税率がほとんどなくて、こっちの国の法人税率が高いときに、この小さな部門の国で投資が起こるかという課題だと思うのです。経済学ではそういう話はあまりしていないような気がするのです。

 普通、ニュートラルな税率を入れておくと、例えば実質金利ということを誘導するときには、ほとんど税が消えてしまう。ちょっとずれているときには、例えばジョルゲンソンなどのユーザーコストの計算なんかのときには法人税率が入ってきますけれども、ほとんどずれている。

 ところが現状起きていることというのは、海外と日本の差というようなことをあれしているわけです。私はそこら辺専門ではないのですけれども、そこなどをどうやって入れていくかというのが非常に気になるところだと思いました。私の言うこと間違っていますか。

〔 委員長 〕でも、このモデルの中でそれをやるのは大変でしょう?、このモデルは基本的には社会保障モデルなんですよ。企業行動に関しては、そんなに明示的にモデルを張ってないところに、ユーザーコスト・キャピタルとかを入れるのは大変でしょう?

〔 委員 〕というよりも、さっきの委員の意見があるのだけれども、レート・オブ・リターンとかユーザーコストはコンスタントでいいと思うのです。つまり、もし、グローバル化ということを考えるのであれば。だから、むしろ今のままでいいんじゃないの?と私は思うのですけれども。ある意味のほとんどコンスタントですよね。

〔 委員長 〕私はなかなか難しいと思う。これはむしろ社会保障に中心がいっているわけですよ。金利が非常に重要な役割を演じているから、金利が動くことによって投資、貯蓄が変わることの影響力が相当入っているから、彼のような意見を持つのはわからないでもないけれども、そこまで考慮したら大変なんじゃないの?

〔 委員 〕私は、グローバル化ということではコンスタントでいいと思うのです。

〔 委員長 〕コンスタントならみんな平常化される?

〔 委員 〕はい。あとはそこで任せておけばいいわけで、要するに、それがグローバル化でなければ内部的に動くだけなのです。だから、今みたいにほとんど大部分実質金利がコンスタントみたいになるというのは、べつにかまわないし、グローバル化という観点からは十分インプリシットには考慮されているという気がしますけれども。

〔 委員 〕今のは中間になっているわけですね。

 アメリカの実質金利が1で効いてきて、それで5%あれば必ず5%分あって、それに国内の貯蓄投資差額が貯蓄超過ですからそれより少し下がる。しかも長期的に言えば政府部門が黒字をどんどん増やして、民間の方は家計の貯蓄率が10%ぐらい下がるわけです。だから、民間の貯蓄は下がるのだけれども、一方で政府のネットの貯蓄が増えるものだから、結局、国内の貯蓄投資差額は貯蓄過多になっていって、その分が結局経常収支の黒字が増える。ここで4 、5 %ですか、増えるようなスタイルになっていると思うのです。ですから、本当にグローバルなら実質金利は全く世界の貯蓄投資差額で決まる。だから、3%ではないかと思うのです。もし、国内の貯蓄投資差額要因を少し入れるのだとすると、日本はかなりアメリカの金利に影響を与えている可能性があるわけです。つまり、資本輸出してアメリカの国債を買ったり何かしているわけです。そういうことでもっとアメリカで金利が上がっていたはずなのが実は上がらないで止まっているというところがあるわけです。つまり、アメリカの実質金利が日本の貯蓄投資差額から独立ではないはずなのです。もし、そういうことも考えるのであったら。そうすると、アメリカは実質金利を1対1で効くというのなら、何か中途半端なような気がする。

 それから、こういう差で説明しているということは、実質金利格差はオープン・エコノミーでフレキシブレーターだったら、為替レートの変化率がそれに見合っているはずです、もちろん、そこはどのぐらいアビトレッジがあるかとか、資本移動がどのぐらい完全だとかという議論があるはずですけれども、このやり方だと、結局、日本の実質金利は低いわけですから、すごく長期的にどんどん期待実質為替レートが上がっていくという、円レートはどんどん上がっていきますよと。そうだとすると、輸入価格が2%また上がっていくというのは、どこかおかしい。むしろ輸入物価は落ちていくのかもしれない。だから、実質金利のところは、1つは、「世界実質金利です。というのは完全グローバライズで1です」ということで、しかも「実質為替レートも、交易条件も変わらないという条件でシミュレーションします」という方が、もしかすると、単純だけれども、そんなんでもいいのかなという気がいたします。

〔 委員長 〕議論はあるかと思いますが、次に「中期多部門モデルの改善点」に移りたいと思います。

〔 事務局 〕資料4「中期多部門モデルの改善点」ということで、主に設備投資関数に思い切って「市街地価格」という地価を直接変数として追加してみたということがポイントでございます。

 4ページに推計結果がございます。上の表が現在使っておりますバージョンでございますけれども、右から5つ目ぐらいの欄に「市街地地価」、これは名目GDPに対する比率ということで、私も前に地価の研究をやったことがありますが、非常に長期的には名目GDPに対する比率が安定していると考えて、名目GDPに対する市街地価の比率を、一応入るところを入れてみたということで、入っているところが一次金属、機械、卸・小売、金融・保険、運輸・通信、その他サービスということで、設備投資の大所としましては、機械とその他サービスがウエイトが非常に大きいので、そこには地価が入っているということでございます。

 これによって何が変わるかということでございますが、5ページ以降に簡単な内挿期間のフィットが書いてございまして、目覚ましくよくなるということでは必ずしもないのですけれども、例えば、大所ということで7ページに、上が機械、下がその他製造業ということで、その他製造業などは実線が実績値で、1点鎖線が前のバージョン、細かい連続の鎖線が今回のバージョンということで、バブルあるいはその後については、細かい鎖線の(今回推計)の方がフィットがいい。

 あと、目立っている点は、9ページの金融・保険業なども、従来の設備投資関数ですと93年あたりから上に向いてくるものが、地価を入れた関数でやりますと低迷が続くということで、直近のフィットが改善される。

 10ページは「その他サービス業」でございますけれども、これも従来の推計式ですと93年ぐらいで実績を上方に乖離する動きが見られているわけですが、今回の推計結果では比較的その後の動きもフォローするような形になっているということで、1本1本やっていますので全体としてフィットがどうかということはなかなか言いにくく、産業ごとに違うわけですが、思い切って「地価」を入れてやってみたということがございます。

 その他、消費関数についての改善点が11ページ。国債の金利関数については12ページにありますが、従来はコールレートとの相関をとっていましたが、コールレートの係数が 0.5程度で非常に小さいということで、ちょっと長期にシミュレーションをして金利が上がってくるようなシミュレーションをやりますと、それにもかかわらず国債金利が上がってこないということで、それは国・地方の赤字の推計をするときにちょっと問題なので、むしろ11ページの一番下にありますような貸出約定金利でほぼ係数が1に効いている国債金利関数の定式化を今回は採用しております。

 これはマクロフレームでどういう影響というより、国・地方の赤字を計算するときにちょっと影響が大きいということでございます。

 それが主に設備投資関数を中心とした前提ということでございます。

〔 委員長 〕ありがとうございました。

〔 委員 〕先ほどの投資関数絡みですけれども、市街地価格を入れられて、要するに市街地価格が高いと投資は増える……。

〔 委員長 〕担保が増えるということですね。

〔 事務局 〕そうですね。

〔 委員長 〕それが企画庁の論理でしょ。それで借りやすくなって、投資が増える。

〔 委員 〕資本コストの中に1つ入っているわけですね。実質金利の中にも入っている。

〔 委員長 〕だから、計算のやり方によるわけよ。

〔 委員 〕2つあるわけですよ。地価が高いと工場を作るのが大変だからという側面と、レベルそのものは地価が上がると資本コストを上げる効果になるけれども、片一方のP分のPドットというのが入ってきて、値上がり率が高いときには資本コストが下がるという、2つが入っているわけです。だから、その点を注意してもらわないと、理論的に何か言われるかもしれない。

〔 委員 〕私もそう思うのであれなのですが、この式は納得できません。

〔 委員 〕これは経験的には絡んでいるんだよ。

〔 事務局 〕金融みたいなものをどういうふうにモデルの中で表現するかというので、銀行貸出行動がどうのというのを理論的に定式化していくというのはあるのですけれども、それをやるとモデルが複雑になって、かつ、その結果自体が人の目に見えない、ブラックボックス化していくのではないかという懸念があって、むしろ理論的にいろいろ批判は浴びるかもしれないけれども、単純明快に入れてしまったというのが、私のいいかげんなやり方なのです。

〔 委員 〕先ほどのように、それこそPドットがどこかの形で入ればいいわけで、それがここには実際には入っていない。それを入れたことで最終的な結果は良くなったかもしれないのだけれども、結局、設備投資を説明しているかというと、はっきり言って全然説明していないわけです。どこが良くなったかというと、例えば早くそれを説明したかどうかもパフォーマンスも、パフォーマンスという意味は、転換点の……。

〔 委員長 〕結果はわりあいうまくいっている……。

〔 委員 〕そうではなくて、現実に早めに出ていて、91年ぐらいにわりとピークしている。特に製造業系で後ろになっていることが全然説明されていないわけです。つまり、それを入れたことによって、例えばバブル時期の設備投資行動の遅れとか速さを説明したかというと全然説明していないのです。 だから、これを入れてやってしまうと非常におかしいわけです。 ただ、これは事務局がおっしゃったように、あくまで1つのインフォメーションですから、それを資本コストの中に何か入れる。私は貸出とかそういうのは必要はないと思うけれども、やはり何か資本コストの中に入れるべきだろうと思うのです。

 もう一つはパラメーターが同一でない。ただBとBー1を、結局、BとCぐらいにしたと思うのですが、これもちょっと安易すぎる感じがするがするわけでありまして、そこの中に、もし、市街地の価格が担保価値だと言うのであれば、やはりそこを入れなければいけないわけで、市街地を入れたから担保価値というのはちょっとショートカットすぎるし、果たしてその議論を使ったとしても現実にはうまく追えてないし、やはり問題ではないかという気がします。そういうコストを払うのであれば、こういうことはしない方が、まだましだろうという気がするのです。

〔 委員 〕だから、ここが要なのです、社会保障だって何だって。だから結局、経済がだめならだめになるわけです。それを追っているだけにすぎないわけです。

 そうして考えると、外需依存度も無理だから、設備投資が要なわけです。それの議論ができるようなことをやっておくというのがすべてにつながるような気がする。財政赤字を解消してくれるのもここだ。そういうようなビジョンが出せるかどうか。だから、そういう意味で設備投資はものすごい要だという気がする。

〔 委員 〕だから、担保価値とかそういう後付けでやるのではなくて、もし、それをやるのであれば、そこはちゃんとメカニズムとしてはっきり最適化行動の中に入った形でやってほしいわけで、単純に地価を入れたら説明できるから、これは担保価値だという、そう言う学者はたくさんいるのだけれども、私は間違っていると思うのです。

〔 委員 〕土地を明示的に入れた投資関数というのはあまりないのです。本当は住宅投資だって関係があるわけです。住宅投資の方は本当はもっとシリアスなのです。ビルのオフィスを借りているサービス業などはあまり土地は使わないのではないかと思うのです。そうすると、すごく土地を使うような重化学工業、大きなプラントで土地をたくさん使わなければならないとか、だけど、そういうのは多分日本は今ディクライニングなのではないですか。情報化の方がむしろ増えていくのだとすると、それは将来について土地の価格がどうか、過去を説明するときは何か意味があるかもしれないですけれども、将来についてどのぐらいレレバントかというと、ややどうかなと。

 本当に土地を明示的に資本コストに入れると、除却率とか何かというのも変わってこなければいけない。それから、投資の額自身も変わってこなければいけない。投資の額がディフィニッションが違うわけです。つまり国民所得統計で入らないでしょ、土地をいくら投資しても。

 土地をちゃんとインプットだというふうに考えて、しかもそれに投資するのだというふうに考えたら、被説明変数は土地を含めた投資額ということになって、それをウェイテッド・アベレッジのある種土地の方の資本コストと上の方の資本コストのウェイテッド・アベレッジみたいなもので説明する。もし、併置してやるというふうにすればそういうようなことになると思うのです。でも、そういうのってやっているのをあまり見たことがない。 住宅は本当は重要なのですけれども、それでもやったのをあまり見たことはない。でも、入れるのだったら、そういうのは1つのやり方ではあると思います。

〔 委員 〕アメリカの例とか、今成長している、これからリィーディングセクターになってくるところは、TFPも高いし、供給制約なんていうのは起きないような産業でしょう。だから、アメリカもいつか物価が上がるだろうと思っても上がらないでしょう。

〔 事務局 〕ネットワーキングみたいなもの……。

〔 委員 〕コンピュータ関係とか。どんどん素材も小さくなるし、そのクォリティーを考えると。だから、供給制約がなくなるというのは、むしろケインズ的世界が生じるのではないか。どんどん拡大できる。また、そういうものに乗っていかないと日本もだめなわけです。

〔 委員 〕これは多部門モデルですから、中期モデルで考える必要はないのかもしれないけれども、やはりどこの産業が伸びていくかというメカニズムが多少何か入ってもいいのかなという気がするのです。でも、現行のモデルだとこれ何なのですか、この産業は。 先ほど説明変数に市街地価を入れたのも、その効果が出てくると思うのですけれども。というのは、先ほどのご説明の中で気になったのは、労働力需要関数をこれは持っていないですね。失業率を先に決めてトータルの労働力需要を決めて、それを各産業に割り振る。その割り振り方というのは……。

〔 事務局 〕各産業は労働力需要関数……。

〔 委員 〕その比率で……。

〔 事務局 〕マクロで合計したときに……。

〔 委員 〕その合計を出てきたもので割り振る?

〔 事務局 〕ええ。

 外から制約を与えないで、各産業から出てくる労働需要を合計すると、どんどん増えて

いってしまう。

〔 委員 〕それはいいと思うのですけれども……。

〔 事務局 〕これは、多部門であるということの1つの副作用なのかなと思うのですが、個々の産業にとっては労働力制約、供給制約というのはないのです。ただ、マクロで日本全体ではあるというときに、それが産業ごとの労働力の需給というものに、何か調整メカニズムをもう一つ考えないといけないだろうと思うのです。

〔 委員 〕今でもトータルで出てくれば失業率が低下して、そこそこ需要が入る。賃金が高くなって、雇用できないところはやめてほしいというメカニズムは入っているのではないですか。

〔 事務局 〕入っていることは入っています。

〔 委員 〕それは、そんなには明確ではない?、そこがうまく出てくるといいと思うのですけれども。

〔 事務局 〕産業ごとに非常におかしなことがある。1つは、就業者数を積み上げていって、労働需要の変動自体がけっこう大きいので、失業率の変動というのが大きく……。

〔 委員 〕べつにいいです。それは失業率は例の定義式でなくてもいいわけで、労働需要と労働供給?、両方の関数で賃金を決めたっていいわけでしょう?

 そうすると、例えば労働供給がある水準の下で非常に景気がよくなった場合には、賃金

が必ず上昇する形のものを入れられますよね。

〔 事務局 〕労働需要関数に入っている…、実際は労働力人口自体の数字というのが大体このぐらいかというのがあるわけですけれども、今、ちょっとわからなかったのですけれども、就業者数を求めて、賃金は潜在的な需給ギャップ、労働の需給ギャップで動かすということで、当期の中で失業率がちゃんと均衡するような値になるのかというのは…。

〔 委員 〕まではわかっていない……。

 ただ、先程事務局がおっしゃったのは、むしろ別の、イノベーションか何かが起きたときのメカニズムがあるかどうかですから、また違うかもしれませんけれども。

〔 委員 〕それと絡むのですけれども、イノベーションだけではなくて、コブ・ダクラスを使うというのは、労働の限界生産力というのがずいぶん絡んでいるんでしょう?、これがコブ・ダクラスだといつもポジティブになってしまうわけです。投資が増えるとこれはポジティブになってしまうわけです。労働の限界生産力を押し上げる形になるわけでしょう?。ところが、今のニュー・テクノロジーの一部の怖さというのは、これをネガティブにするようなものが出てくるわけです。例えば極端な話、ロボットってそうじゃないですか。「人はいらないよ」ってなったら、労働のあれが下がるわけです。

 昔のイメージというのがあって、カナヅチを使ったらこっちの生産性がどんどん上がるよという感じなのだけれども、コブ・ダクラスというのはそういう側面を持っているわけです。これを破壊していくようなものというのは、よく見ているとあるのです。だから、そろそろコブ・ダクラスも放棄しなければいけない。これがあるとすごく楽観的じゃないですか。限界生産力を上げるのだから、ウェルフェアを上げていくということがあるのだけれども、一部はそういうものがあるから、技術進歩だけではなくて、そういうものを是非採り入れてください。

〔 委員長 〕それは希望として聞いておきましょう(笑)。

〔 委員 〕これはやはりデータの制約かもしれないけれども、おそらく運輸・通信が一緒になっちゃうからでしょうね。

〔 委員長 〕運輸と通信を分けなかった。

〔 事務局 〕よい社会資本、悪い社会資本で必ずネックになるのはそこで、要するに道路を作るのも光ファイバーを作るのも運輸・通信だし、何がどの産業かというと、両方とも窯業・土石なのです。

〔 委員長 〕なるほど……。

〔 事務局 〕同じになってしまうのです。

〔 委員 〕もう一つは、前から言っているのですけれども、コンストラクション

とイクイップメントはやはり分けた方が……。

 ただ、少なくとも運輸・通信では私も事務局と悩みは同じですので、非常によくわかる。

〔 委員長 〕中期多部門モデルで、他にご質問ございませんか。もし、なければ、最後にフリーディスカッションに入るのですが、「『新たなる時代の姿と政策方針』に関する指標」、これは、先ほど吉岡委員のGNP、GDPでいいのかという話と多少は関係があるので、最後の4番のところを、指標ごとについてフリーディスカッションを。

 事務局から何かございますか。

〔 事務局 〕前の95年に策定した経済計画で、その以前から「生活大国5ヶ年計画」のキャッチフレーズ、あるいは副題的なものとして経済計画の主眼というのは経済成長の極大化ということでは、必ずしもなかったと思うのですが、構造改革が想定した場合として3%という成長率を掲げたということは事実で、「くたばれGNP」というのは今に始まったことではないのですけれども、べつに成長率が高望みできないということを補完するためのものでも何でもないわけですけれども、今の経済審議会全体の議論の中でも、経済成長率というのが主たる目標ではないということについては、かなり広範な合意がありまして、つまり「目的ではなく手段である」、手段としての重要性は当然のことながらある。そういう中で、ここは計量委員会なわけですけれども、定量的な目標、「豊か」だとかそういう表現の他に指標として何か、経済計画というのは「計画経済」ではないわけなので、政府がそういう数字を掲げるということの是非というのはまた別にあると思うのですけれども、国民が知りたがっている、あるいは欲しがっているような指標というものは何があるのだろうというのを暗中模索しているようなところなのです。

 いろいろな人の話の中に出てくるものとしては、「ゆとり」というようなことと関係するのでしょうけれども「可処分時間」というようなもの、あるいは「行政手続」というようなもの、役所に行って手続をするのに非常に手間がかかる。そういうのを除いた可処分時間というようなもの。家計の所得の中でも、税込み、あるいは社会保障の掛金を含んだ、GDPに当たるわけですけれども、総所得がいくら増えるというよりかは、「可処分所得」がどうなるかということの方を重視すべきだ。あるいはもっと身近な指標として、何が何台というようなことでもいいのですけれども、病院の数とか、介護の普及度合とか、そういうものも、おそらく唯一の指標ということではないのだと思うのですけれども。「選択の自由」とかいうものが議論にはなっているわけですが、我々として困っているのは、そういうのをただ単にポンと「100 %が望ましい」ということを言うだけでは、なかなか政府の政策とのリンクがとれないものですから、どういうふうに……。

 計量委員会というかマクロ計量モデルというのは、とてもそこまで射程がない、実質GDPとかそういうことの議論しか今までしていないわけですけれども、委員からも、前回まで環境とかそういうものも採り入れるということを考えるべきだというご意見もあったわけですが、何か今の時点で、そういう議論に対する計量という、数字で示すという立場から何か具体的な示唆なりがあれば、そんなに完璧なものを私ども自身提示できるとは思っていないのですけれども、委員長ご自身も所得格差とか(笑)、そういうのありますので、今の時点で何か、これは全くのフリーディスカッションということでご議論いただけたらと思います。

 先ほどのお話で、ついでに質問というか、アメリカにそういう議論、プロダクティビティー・パラドックスの議論というのがずいぶんあって、ネットワーキングというのは要するに既存のものを使って結び方を変えるだけで、生産能力というのは一切制約がないという議論があって、確かにインターネットの普及で、こういうサクセス・ストーリーがあるということはいくらでもあるわけなのですが、マクロレベルに引き直したときに、アメリカの景気が非常にいいということは、かなり労働力が増えている、1%ぐらいの寄与が労働力からきているということもあって、つい最近まで本当に技術革新の効果でアメリカの経済が活性化しているかということは、かなり慎重に見る見方の方が多かったと思うのです。 ここの事例としてはインターネットとかいうことがあるわけですが、それがどういうふうにマクロの生産性なり、TFPというものに結びついているかというメカニズムは必ずしも明らかではなくて、例えばインターネットでよくブルッキングスのボズワースなんか言うのですけれども、ブルッキングス研究所、1人1台コンピュータがあって、みんなそれで論文を書くような、秘書もいなくなった。考えようによっては秘書がタイプしてくれていた方が自分は効率がよかった。自分でタイプしなければいけなくなって、すごく効率が落ちたと言うのです。アシスタントを見ているとゲームか何かやったりしているわけです。 もう少しマクロ的にブルッキングス研究所で見ると、パソコンを1人1台入れたお陰で、ブルッキングス研究所の出している出版の数が増えたか、あるいはその質がどれだけ向上したかということになると、そこは非常に疑問が多いということです。

 ここの事例としてインターネットとか選択の自由が広がっているとか、情報が多くなっているということは確かだと思うのですけれども、ボズワースなんかの言い方によると、それはほとんどがアドバタイズであって、本当に利用できている情報というのはわずかしかなくて、むしろ検索したり何かする方が大変なのだということを言うのですけれども、本当にそういう技術革新がイコール生産性の向上という、概念としてはイコールに見えるのですけれども、どういうメカニズムなのかということは、私自身よくわからない。

 果たして、そういうパラダイムが新しくなって、いくらでも供給能力があるのだということがどれだけ言えるのかなというのが、やや疑問なのです。

〔 委員 〕もともと景気というのはそういうものではないんですか、ウェルフェアとは違うと思いますよ。ものすごく効率のいいコンピュータがものすごく安く手に入っても、果たして人間は幸せかと言われたら、それはわからない。でも、それを買ってやっているのだから、昔と比較した数量インデックスはクォリティーを勘案したら上がっていると考えたらいいでしょう。その勘案をしていないということを私は言っているのです。

〔 委員長 〕さっき言われたのは、いままでのトラデショナルなGDPではだめだ、クォリティー・チェンジを考慮したGDPを開発しなければいけないというのが根幹ですか。

〔 委員 〕もうそれはあるわけでしょう?

〔 委員長 〕日本はあるの?

〔 委員 〕もともとそういう概念でやろうと言っているのだけれども、そこまでなれないということでしょう。

〔 委員長 〕日本はまだないでしょう。

〔 事務局 〕物価は少しクォリティーを入れて物価指数を作っているのではないですか。インデックスを入れて、物価上昇ではなくてクォリティーのインクリーズだということにかなりなっている。

〔 委員長 〕物価の方から接近しているわけですね。アプローチはそれを徹底しろという提言ですね。

〔 委員 〕そうすると全然変わってくるでしょうという感じですよね。実際問題としてそれをやっていないですよ。1次統計からやってないですからね。

〔 委員長 〕他の委員の方、GNP、GDP以外に何かいい指標はあり得ないかとかいうご意見はございませんか。

〔 委員 〕私は、ウェルフェア水準もそうだけれども、景気の動向の指標は絶対必要だし、むしろGDPを変えるとしたら、GDPというのは妥協の産物で出てきたいろいろなものがあります、帰属家賃とか。あんなものは景気の感応を受けないわけですから。不動産産業の付加価値というのは、変な形で帰属家賃になってしまって、みんなの持家のあれをインピュートしたものばかりでしょ。あれは景気に響かないわけです。だから、むしろスリムに取ってしまうということもあるのではないかと思う。だから、徹底した景気の動向のものと、ちょうど今企画庁がやられているサテライト・アカウントというのをいつも持っておいて、できるというのが、非常に保守的ですけれども。ただ、逆に抜けたのは、景気の動向ということに関して、もっとスリム化するという意識がないのかなという気がします。逆に帰属家賃とか関係のないものを入れてしまっている。

〔 委員長 〕そういうものを考慮するなということですか。

〔 委員 〕主婦の労働とかそんなものも入れましょうとか何とかというのは、景気の動向と関係なくなるわけだから。

〔 委員長 〕昔、企画庁がNNWとかいうのを作って、馬場先生が「何が何だかわからない」とか言って批判した有名な話があるのですが、そのような動きというのは今、中でもあるのですか。

〔 事務局 〕議論としてはあるのですけれども、今またそれを復活させようというところまではいってない。

〔 委員 〕でも、新SNAから改訂SNAに変わるところで、そこ、どんどん進めているでしょう。企画庁の中でサテラウト・アカウントを作って。

〔 事務局 〕環境の方……。

〔 委員 〕環境も入れる。犯罪なども入れていくとか、そういう指標をどんどん、サテライト勘定をどんどん作っていっているでしょう。そういう動きはあると思います。

〔 委員 〕1ついいですか。

 やはり全体として日本は内向きになっているのではないかと思うのですが、縮み志向というか、資本ストックも多すぎるし、何も多すぎるし、減らさなければいけない、成長はどう見てもどんどん落ちていくのだというあれで、ある意味ではグローバライゼーションというのは情報とか何かを見ると日本は進んでいないですね。アメリカの例でも、例えばインドで情報産業なんかが、ソフトウェアをインド人にやってもらっているわけです。だから、もしかするとインド人に依存して生産性が上がっているかもしれないですね。

〔 委員長 〕それはよく言われるね。

〔 委員 〕アウトソーシングという意味では、多分。それを、ものすごく進んでいるにもかかわらず、今、日本経済全体が内向きだけというのは、多分、大きいところで方向を間違えるのではないかという気がするのです。

 森嶋さんが最近、日本は没落するというのを書いて、東北アジアか北東アジアか知りませんが、韓国と台湾と、あれ、中国は入っているのですかね。入れるとどうなるのかなと。

〔 委員長 〕 大東亜共栄圏の現代版?

〔 委員 〕やや東北部分という感じがしますけれども、何か日本がやはり……、アメリカでさえNAFTAとか、ヨーロッパもユーロランドとか、そういう構想を持って21世紀を準備しているのではないかと思うのですけれども、最終的にはもちろん本当にグローバルになるのがいいとは思いますけれども、日本が21世紀を迎えるに当たって何の対外的なメッセージも持たないということは、国内的にも行き詰まってしまうのではないかという気がするのです。

 何かそういう、外に対して「日本はこれからこういうことでやっていきますよ」というのが、何かもう少しアイディアとしてあった方が……。

〔 事務局 〕おっしゃるような話についてはできるだけ、グローバライゼーショ

ン部会というのがありまして、そこでできるだけそういう方向で明確に言ってみたいなと

思っております。

〔 委員 〕それが従来型だと政府主導型である場合が多かったと思うのですけれども、そうじゃない、公文先生なんかが「ネチズム」とか何とか言っているけれども、ブルッキングス・インスチュテートも端末でくっついていれば日本もその一員であるとか、そういう意味での外とのつながりといいますか、そういうのがもう少しあるべきではないかというのが1つです。それから、もう少し足下の問題で言うと3つ非常に重要な問題があって、情報化と高齢化と環境、やはり3つ欠かせないのではないかと思います。

 高齢化も最近「モーニング・アフター」って、前のアメリカの商務長官が「フォーリン・アフェアーズ」に書いてますけれども、先進国全体が50年後マイアミみたいになってしまうと。そのときには先進国の貯蓄は全部足りなくて、そのときは破局なのだという。アメリカのマイアミは高齢化率が何パーセントとか、日本だって今地域的にはそういうことがいくらも起こっていると思いますけれども、そういう高齢化のインパクトがどのぐらいあって……。

 我々の議論は年金とかそういうところにやや集中しすぎているのではないかと思うのです。もちろん年金とか医療の財政収支は非常に重要なのですけれども、もう少し高齢化の下での生きがいがある社会であり続けるために社会的なインフラストラクチャーはどういうものなのかという、それをいつ頃までに、例えば10年の間に必要なものを例えばリストアップして、それをどのぐらいに整備していくのか。もちろんこれは政府がやるということではなくて基本的には民間がやってもらうということだと思うのですけれども、そういうある程度のメドといいますか、長期的なこういうものも必要だ、こういうものも必要だというような、言ってみれば社会的なインフラストラクチャー。快適でかつ生きがいのある高齢化の社会で必要な社会的なインフラのストックはどのぐらいなのでしょうか。それを例えば10年ぐらいではどの程度達成するのでしょうかというような、何かそういうメドはある程度は可能なのではないか。

 例えば、北欧の国とかそういうところの、それに関係した社会資本ストックの水準と、日本はどういう状況にあるのかとか、あるいは情報化についても同じだと思うのですけれども、情報化に必要なインフラストラクチャーというのはどういうことなのか。多分、これは教育の問題なんかすごく大きいと思うのですけれども、小中学校とかそういうところでどのぐらい情報のリテラシーみたいなことをきちっとやっているのかとか、あるいは年取った人が情報化の下でどうやって快適に生きていけるのかとか、そういうことを考えたら、単に物理的なインフラ、コンピュータが1人1人になければいけないというようなことだけではなくて、その教育。やはり投資が相当必要なのではないかという気がするのですけれども、全体にレベルアップするためにはどういうことをしなければいけないかとか、それに必要なストックはどのぐらいかとか、そういうことはやはり必要だし、環境についても、CO2 のああいうコミットメントしたのであれば、2010年まで何パーセント下げるとやったわけですから、だけど下げるためには相当の投資が必要だと思うのです。CO2 をどんどん出すようなものは代替しなければいけないですから、そういうメカニズムはどうやって作るのですかとか。

 アメリカなんかだと、排出権なんていうのですごく先取りしているわけです。これで 0.5兆ドルのファイナンシャル・マーケットができる。そういうマーケットがあるわけです。シカゴのマーカンタイルでも取引をやっていて、既にそういう準備を始めているわけです。だけど、日本の金融業でやっているところは1つもないのではないですか。政府自身も排出権取引というの、アイテムになっているけれども、それ自体もどこがやるのかもわからない、誰がやるのかも全くわからない。そういう取り組み自体も非常に遅れているのではないかと思うのです。環境の例えばそういう目標を本当に実現するためには何をしなければいけないか。それだって相当のインフラストラクチャーが必要なのではないか。本当にそれを達成しようと思えば、CO2 の場合とSO2 とすごく違うんですよ。どういうふうにモニターすれば排出権の取引のマーケットができるかといったら、これはけっこう大変なのです。これは情報化とも関係してきますけれども、本当にそういうのを達成しようと思えば、どの工場がどのぐらいCO2 を出したかを計測しなければいけない。そういう課題はあるわけです。だけど、どこもそれをちゃんとまじめにやろうとしていないではないかと思うのです。

 そういうので情報化、高齢化、環境というのは、そういう社会的なインフラストラクチャーが今どのぐらい必要であって、それを10年の間にどのぐらいまで達成するのかというのは、ある意味では広い意味でのストックだと思うのですけれども、共通社会資本というのか、そういうものをどのぐらい今後10年で日本はちゃんと、これは多少国内向けになってしまいますけれども、GNPの成長率には関わりなくやるべき話ではないかという気がするのです。

 もう一つは「ゆとり」とかというのは、考え方が2つあって、今の税制というのは労働をするとタックスが取られるわけです。GNPを増やそうと思えば、レジャーにタックスを掛けるのが一番いいわけです。遊んだ人はタックスするとか、失業している人はタックスを掛けて必死に働くようにさせる。そうすればもちろんGNPは上がるわけですけれども、だけど、それは人間の最後の生きがいというのですか、ウェルフェアとか、GDPも、今のウェルフェア・エコノミックスで言うウェルフェアも、やはり結果主義なのだと思うのです、もう少しもとのところで言うと、「ケーパビリティー」という言葉を使っているのですけれども、生きがいみたいなものではないかと思うのですが、そういうものがどのぐらい拡大するかというか、のようなケーパビリティーズなところまで戻ってやる。

 そうすると、どうもヒューマン・キャピタルに一番関係があるのではないかという気がするのですが、ヒューマン・キャピタルの蓄積で、広い意味のヒューマン・キャピタルを拡大、充実する、倍増すると言ってもいいのですけれども、ぐらいのことを例えば考える、やはり1つの転機でもあると思うのです。日本は大学教育のところまでと相当よくなったのだけれども、その先がやや限界に当たっているのではないかと思うのです。新しい産業を興すとか、そういうエネルギーも関係があっていたのではないかという気がするのですが、もう少し教育水準のクォリティーを高めるというか、ニーズもあるのではないかという気がするのです。

 だからヒューマン・キャピタルと、高齢者についてはもっとケアがちゃんとできるように、メインテナンスできるための投資というものも必要なのではないかと思うのです。

 だから、どっちかと言えば、もう少し広い意味でのストックみたいなものについての目標というようなものがあってもいいのではないかと思います。

〔 委員長 〕ちょっと時間を延長してもいいですか。他の方の意見も聞きたいと思うのです。

〔 委員 〕私も先程の意見に全く賛成でして、1つの指標ではなくてある目標値、数値目標ではないのですが、ある意味でそういうのを設定する。

 例えば教育なんかで生徒に1台というのしか今やっていない。物ですよね。だけど現実には揃えたけれども教える人間がいないわけです。本来、ヒューマンのところをどういう形でサービスするかということを、もう少しはっきりした形でやる。

 方向転換としては、いわゆる1人当たり何台という、物量的なものではなくて、例えば介護にしろ情報化にしろ、何人ぐらい配置して、それが今どのぐらいなのだというのを絶えず示していくというのがいいのではないかという気がするのです。

 これまでそういうのは通商産業省あたりがいつも物量単位で非常に派手な数字をやっていたのだけれども、現実に今問題になっているのは、必要な人がいないわけです。例えば、金融監督庁がこの12階にあるのだけれども、それだって必要な数があって、それにとても足りない状態だ。だから、望ましい水準というもの、これは非常にいろいろな意見があると思いますが、少なくともそれに関してはある一定の合意なり、必要なものをやって、CO2 もそうなのですが。その上でそれに対する達成率という形でどんどん足していくというのが1つではないか。

 その場合に重要なことは、先ほどから出ていますが物ではなくて、つまり物量ではなく

て、やはり人がどれだけ配置できるかというところが非常に重要ではないかという気がし

ます。

〔 委員 〕特に言うことはないというか、あまりにも難しすぎてあれなのですけれども、ずいぶん前になりますけれども、別の審議会の話を出すのはご法度かもしれませんが、「行動化ビジョン」という話をやっていたときに、それは某電波関係の省庁だったのですけれども、つまり、「いつでも、どこでも、好きなだけ情報が取れる」という世界が出現する。そういうことをうたおうとしたわけです。そのときに、私は起草委員会というか文章を作成する委員会のメンバーの1人として加わったのですが、キャッチフレーズを何にするか、「豊かな社会だ」、それでさんざん議論したわけです。議論すればするほど、「そういう高度化された情報化社会というのは豊かではないのではないか」という話になっていく。つまり、いつでも自分はつかまってしまうということも逆に起こり得る。それでいろいろ議論になったわけですけれども、今回も我々は計量委員会に属していますから、どうしてもやはり数値目標とかそういうことになりがちですけれども、上の部会はどう考えるかわかりませんけれども、もう少し何かアピールするようなことを考えなければいけないのではないかという気がします。

〔 委員 〕委員が言われたことにほとんど尽きてしまうかもしれませんが、私、実は計量なんかやらないで、いろいろな工学部の環境のことをずいぶんやっていたのですけれども、今、エネルギーを化石依存度を減らしてキャピタルと代替するという話が出ましたけれども、そうやっていろいろ突き詰めていくと、結局、地球閉鎖系から脱出して宇宙に行くという(笑)、例えばそこから電力を取るとか、そろそろ実現しようとしているわけです。通信もそうだし。そういう社会インフラというものをターゲットにして、そのためのヒューマン・キャピタルとかそういうものがバーッと張りついてくるわけだけれども、そういうような実感が浮かんでくると思うのです。

 私、そのフォーラムに入っているのですが、意外と実現性が高いのです。太陽宇宙衛星発電とか。私はIOの細かいので試算したのですけれども、原発並みのCO2 なのです。いっぱい、いっぱいロケットを飛ばすようだけれども、けっこう少ないのです。SPSと言われるものですが。そういうのとか通信とかいろいろ考えて、どうもそういう社会インフラだなと。

 そこで考えたときに、それでは果たして、例えば9電力というレベルでそんなものができるかというと、ある一部についてはやはり政府の役割というのが出てくるのではないかという気がします。9電力では、それを立ち上げていくのには、とてもとてもコストが合わないわけです。そのためには、コストを度外視して一般財源でやって、あと、サンクコスト化してしまって、運営だけを9電力に任すというやり方でないと出てこないかもしれない。何かそういう気がします。

〔 委員長 〕私も一言だけ。

 これからは、生活水準がどれだけにあるかということに指標を移していく必要があると思うのです。GDPというのは生産に注目しているわけで、それよりも生産の恩恵を受けるのは消費者なわけで、消費者が一体どれだけのウェルフェアが高まっているかということ。昔、我々が経済理論を学ぶときには、効用関数というのは、UというのはCとLの関数だった。Cというのがコンサンプションで、Lはレジャーなわけです。私はこれに帰る必要があると思うのです。消費を高め、レジャーを高め、これは「ゆとり」に通じるわけです。この両者を高めることが国民のウェルフェアを高めるのに役立つわけで、これからは指標としてはU、CとLの関数でコンサンプションを高め、あるいはレジャーを高める。これは代替関係にあるわけで、そのどっちのウエイトを取るかというのは人によって違うわけですが、しかしながら、生産一本よりも消費ないしはレジャーで表せるウェルフェア水準というものにシフトしていくということがあってもいいかなという感じがします。 これは、この前、厚生省がウェルフェア政策のセミナーをやったのですが、そのときにヨーロッパの人たちはそれを盛んに言ってまして、もうGNPとかインカムではない、コンサンプションで各国の豊かさを測るべきだというのを盛んに言っていましたが、私もそれに大賛成です。

 もう一つ、私が付け加えれば、コンサンプション、プラス「ゆとり」、それはレジャーだというふうに考えます。

〔 事務局 〕1人当たり消費というので……。

〔 委員長 〕あるいは1人当たりレジャー。 1,800時間というのは、これは労働時間が週3日になるのですか。

〔 事務局 〕まだまだです。週休2日で、完全に年間20日ぐらいの休暇を消化して 1,600時間という感じです。

〔 委員長 〕具体的なものはどうでもいいですが、「ゆとり」というのは、もうレジャーだけではだめですか。

〔 委員 〕その変はちょっと微妙な……。

〔 委員長 〕ケーバビリティーなんかの考え方を入れると、いくらレジャーがあっても、病院に誰もアクセスできないとか、そういうのはセンも言っているわけで、ケーパビリティーになってくる。ついでながらケーパビリティーの考え方というのは、発展途上国ではそうとう計測例があるらしいのです。センの指導力でワールドバンクなんかを中心にして。先進国に関してはあまりメジャーがないというのが問題みたいなので、むしろケーパビリティーの考え方を我々日本のような成熟した国でも……。

〔 事務局 〕具体的には、ケーパビリティーでもヒューマン・キャピタルでも、どういう指標でやればいいのでしょうか。

〔 委員長 〕それは私あまり、センをフォローしておられる?

〔 委員 〕ええ、まあ。理論的にはいろいろインサイトはあるのですけれども、具体的に数字でやれと言われるとなかなか難しいですよね。

 だから、ベイシック・ヒューマンニズムみたいな方に俗流化してしまったわけです、60年代の後半ぐらいに世界銀行なんかは。多分あれはその方向に向いたのでしょうけれども、全体をつかまえていないと思うのです、センが言っていることも。

 だから、実際につかまえるとなると、なかなか難しいです。レジャーだってレジャー時間があって、一日中テレビを見ていましたと。その人は「本当に生きがいがありますか」って言ったら……。

〔 委員長 〕ハッピーかと言ったら、それは……(笑)。

〔 事務局 〕例えば大学の先生の数を倍にするとかというのはすごくわかりやすい、それがいいか悪いかは別として、わかりやすいのですけれどもね。

〔 委員 〕ヒューマン・キャピタルの計測というのは難しいのです。結局、ウエッジでやるしかなくなってしまって。

 たけど、そうでないウエッジで表されないヒューマン・キャピタルというのも、当然あるのではないかと思うのです。そういうのをどう測るかというのはなかなか難しいですね〔 委員長 〕ただ、コンセンサスとしてGDP、GNPだけではいけないという

のは、みんな、視点は違うけれども考えているみたいだしね。

〔 事務局 〕先ほど言われた外とのつながりというのはすごく重要なのですけれども、それをまた指標というようなもので何か……。おそらくいままでこういうことはなかったのですよね。内で社会資本の何とかをどのぐらい整備してとかという指標はいろいろ工夫して出したのだけれども、確かに外とのつながりをこれからもっと広げなければいけないとかというものは、あまり指標ということで示したことはない。

〔 委員 〕そこの内的なつながりというのは、本当はあるのではないかと思いますけれども、だけどそれもなかなか難しいですね。

 これは上からということになってしまいますけれども、例えばNAFTAに近いようなものを日本も少し、次の世紀にかけてはやると。現実に韓国とか何かの投資協定、あるいはメキシコとの投資協定とかというのは、そっちの方向に向いているのではないかという気がしますけれども。

〔 委員長 〕例えば日本の少子化・高齢化だって、東アジア圏で労働移動が自由になったら、一ぺんに解決するのですよ。

〔 委員 〕多分そういうところで関係してくると思います。

〔 委員長 〕でしょ?

〔 委員 〕いい障壁はあるけれども、みんなそういう意識はあるんじゃないんですか、いろいろな分野の人に。

〔 委員長 〕あ、そお……。

〔 委員 〕韓国なんかの人でもそうでしょう。やはりもう少し大人にならなければいけない、過去のことばかり考えていたらだめだ。最近は特にそういう道を探している。ヨーロッパはうまくやっているように見える。うまくいってないようなところもありますけどね。そういう動きが相当あるのではないですか。

〔 委員長 〕計量委員会で話す議論ではないけれども……。

〔 委員 〕でも、景気というのは絶対重要ですからね。そういう議論をしていても景気が悪くなったら、そういう議論は吹っ飛んじゃいますからね、目先のことで追い詰められちゃって。

〔 委員長 〕森嶋さんの本はおもしろかったですか。

〔 委員 〕没落すると。

 ややエシックスなのではないかという気もしますけれどもね。突き詰めると倫理の……

〔 委員長 〕倫理?

〔 委員 〕ええ。センも突き詰めると倫理なのではないかという気がしますけれども。センの「エコノミックス・アンドエシックス」という本がありますけれども、すごくおもしろくて、やはりアダム・スミスが「見えざる手」で言ったのは、一部だけを今の経済学が引き継いで、エシックスの部分を全部捨ててしまったと。

〔 事務局 〕昔は道徳というのは必ずついていた。

〔 委員 〕つまり、道徳系哲学から始まって、それで経済の方にグッと引き寄せられて「見えざる手」になっちゃったのですが、スミスはまた晩年はまた戻っているのです。そのどきのあれはプルーデンスとか、シンパシーとか、何かそういうあれなのです。 センなんかの本を読むとおもしろいと思ったのは、日本は「見えざる手」だけではないので、うまくやった例なのだと。それはまだ日本がいいときの講演集ですけれども。表面的に見るとグループ志向とかそういうのは悪いものだと今なってしまっているけれども、だけど、多分少し違ったやり方でやったのではないかという気がするのですけれども、それが全部悪いというふうになっているので、本当はどうなのかなと。

〔 委員長 〕ノーベル賞委員会もそれは考えていて、ショールズとかブラックのマーケット中心主義でやってだめだったと。それへの反動でセンにノーベル賞を出したと。これはどうも事実みたいですね。

 だから、そういう意味でエシックスとかそういうのも大事だというのはよくわかりますよね。

 話は最後大きくなりましたが、このぐらいでよろしいでしょうか。

 一応これで計量委員会は、今日でおしまいということなのですが、事務局からまた何か作業をやったり、あるいは問題点が現れてきたら、また、我々お会いする機会もあるかもしれませんということで、最後は事務局にお任せしたいと思います。

 それでは、第3回の計量委員会をこれで終わりたいと思います。どうもありがとうございました。

--以上--