第3回経済審議会・計量委員会議事概要
1 日時:
平成11年3月25日(木) 15:00~17:00
2 場所:
合同庁舎4号館 経済企画庁総合計画局会議室(732号室)
3 出席者
橘木委員長、新居玄武、岩田一政、伴 金美、吉岡 完治の各委員
高橋審議官、牛嶋審議官、荒井計画官 他
4 議 題
財政社会保障モデルの改善点について
中期多部門モデルの改善点について
「新たなる時代の姿と政策方針」において示す指標について
5 審議内容
事務局から、資料2「論点メモ」、資料3「財政社会保障モデルの改善点」、資料4「中期多部門モデルの改善点」について説明。これらに対する各委員からの主な意見は以下のとおり。
(1)財政社会保障モデルの改善点について
- モデルの簡略化・透明化は大変結構なことである。
- 今回賃金の決定式を変更し、生産関数を利用したものとなっているが、これでは労働供給を無視した形となっており、問題があるのではないか。
- 計量モデルにおける個々の方程式に関しては、フィットの善し悪しはさほど問題ではないが、ダービンワトソン比が低く系列相関があると誤差が累積していくため注意が必要である。
- モデルとデータを専門家に渡していろいろやって貰うのも一つの方途。
- 本モデルは経済全体と社会保障部門との相互関係を見るモデルであると思うが、21世紀の激動期にどう対処していくかという議論をするには若干の不満がある。
- ここでのTFPやGDPといった概念は旧来のものであり、現在のような情報化による生産性の変化を捉えるのには不適切ではないか。
- 部門別のISバランスの動きを考えるに当たっては、「過小消費」にあると言われているような現状や政府の大幅な投資超過の現状を考慮に入れるべきである。
- 実質金利等に関する想定は、一方で海外金利のみで決まるという考え方、もう一方で日本の海外に与える影響を考慮する考え方があり、今回の定式化はその中間にある。
- 将来的には医療の国庫負担も問題化すると思われるが、ここでは年金にのみ焦点を当てているのであれば不十分である。
(2) 中期多部門モデルの改善点について
- 今回の変更で設備投資関数に市街地価格を入れているが、地価が設備投資に与える影響には水準と変化率の2つの経路があるはずであるが、変化率の経路が考慮されていないので整合的に考えるべき。地価を説明変数として入れる前と後では、パフォーマンスにあまり変化もなく、結局設備投資の動きを説明できていない。地価を説明変数に入れるのであれば、除却率も変更しなければならない。
- コブ・ダグラス型関数の定式化では、労働の限界生産性は常にプラスとなるが、現在のニューテクノロジーはこれをマイナスにする可能性もある。コブ・ダグラス型関数を放棄しても良いのではないか。
(3)「新たなる時代の姿と政策方針」において示す指標について
- 「質」を考慮したGDPを作るべきではないか。
- 帰属概念を排除しより景気動向に感応的なGDPも別途考慮すべきではないか。
- 情報化、高齢化、環境問題に関して、それに対応するための社会的インフラストラクチャーの目標水準を示し、達成率を示してはどうか。
- A.Senの「capability」という概念も重要。
- GDPは生産に着目した指標であり、生活水準を表すような指標が重要。問題はあるかもしれないが、「消費」や「レジャー(ゆとり)」を国民の「welfare(厚生)」を測る基準としてはどうか。
なお、本議事概要は、速報のため、事後修正の可能性があります。
(連絡先) 経済企画庁総合計画局計量班
島澤
電話 03-3581-1098