第3回構造改革推進部会議事概要

1.日時:

平成11年3月16日(火)10:00~12:00

2.場所:

合同庁舎4号館経済企画庁長官官房特別会議室(729号室)

3.出席者:

水口弘一部会長、五十嵐三津雄、江口克彦、岩田一政、加藤秀樹、草野厚、草野忠義、中条潮、長谷川公敏、濱田康行、村井勝の各委員

今井政務次官、中名生総合計画局長、牛嶋審議官、高橋審議官、梅村企画課長、大西計画課長、涌野計画官、塚原計画官、林部計画官、佐久間計画官、荒井計画官、岩瀬計画企画官、福島推進室長他 

4.議題:

  • (共通課題)「あるべき姿」における我が国の国家像
  • 「グローバルな競争に対応した経済社会を実現させるための構造改革」について

5.審議内容:

(1)(共通課題)「あるべき姿」における我が国の国家像

事務局から資料2に基づき説明。委員から特段の意見は無かった。

(2)「構造改革推進部会」固有の検討テーマについて

Ⅰ.グローバリゼーションと制度・慣行

1.「グローバルスタンダード」と国際競争について

○ 資料で表現されている「グローバルスタンダード」の定義には、消極的な印象を受ける。もっと積極的に、前向きな表現にすべき。

○ 「グローバルスタンダード」とは、単にアメリカのシステムに従うということではなく、良いものは入れて、悪いものは外すという考え方であるから、誤解を受けないためにも積極的な表現の方がよい。また、グローバルな競争での遅れを取りもどすという考え方ではなく、その競争を先取りするという姿勢が必要。

○ ここでの「グローバルスタンダード」の定義は受け身的に感じる。今後は、デファクトスタンダードがグローバルスタンダード化するなかで、日本は戦術的に何処と同盟して「グローバルスタンダード」を形成していくのか、といった観点からの検討をもう少し加えるべき。

○ 「グローバルスタンダード」における議論では、日本という視点が強い。日本の産業界には、世界を一つとして見ているものが少なく、世界が一つの市場、消費者と考えるべきである。

○ これまでの「グローバルスタンダード」への日本の関わりは、日本と途上国との仲介役であったという指摘については、そういういった側面も確かにあった。今後は、ルールメイカーとしての積極的な役割について考えるべき。

○ 「グローバルスタンダード」の意味について、合意がまだしっかりできていないような印象があり、定義付けをしっかりしておく必要がある。資料では、「市場原理主義=グローバルスタンダード」との印象を受け、少し狭い意味になっていると思われる。

○ 前回のヒアリングで、在日米国商工会議所の方が、「グローバルスタンダード」という言葉は日本人が作ったものだと言っていたように、個人的には「グローバルスタンダード」という言葉に固執する必要はないと思っている。

○ グローバルスタンダードの形成は、途上国も対象とするのか。例えば、アジアの金融危機はグローバルスタンダードを受け入れた結果であり、途上国に「グローバルスタンダード」を押し付けるのは疑問である。

○ 「グローバルスタンダード」は日本だけでなく、どこの国にでも当てはまるものとして考えるべき。

○ グローバルスタンダードについて考えるとき、文化・環境、公共の福祉からの観点も加えるべきである。

○ スタンダードといっても、ある時に一つの絵ができあがるのではなく、その絵は常に動いているのであり、いつも多くのことが起こっており、それを容認していく姿勢を持つ必要がある。

2.グローバルな競争に遅れをとる日本

○ グローバルな競争を考える際には、消費者・国民サイドからの視点も必要。

○ 競争力を高めるという場合、国内市場も含めていうのか、世界マーケットを相手に考えるかが重要。輸出産業はすでに競争力を有しており、グローバルスタンダードに沿って行動している。一方、規制分野も対象に入れるのであれば、阻害要因を取り払う必要がある。どこまでを対象とするのか線引きが必要。

○ グローバル化は与件として受け入れ、その状況の中でどうするかを考えるべき。

○ 「グローバルな競争に遅れをとる日本」という表現は消極的。市場原理が全てではないが、公正な競争があり、その中に規制緩和が入っており、税制云々の話が述べられていることは肯首できる。加えて、「民営化」という視点を追加して欲しい。

Ⅱ.構造改革の進め方

1.規制撤廃・緩和の徹底

○ 規制撤廃・緩和についてここで挙げられている問題点はその通りだと思うが、なぜそのような問題点が出てきたのかという説明が欲しい。規制緩和の推進体制として中核的な機関の設置をあげているが、どのように具体的に進めるのか。費用対効果分析による政策評価についても、誰がどこでやるのかが問題である。

○ 規制撤廃・緩和の徹底については、これまで処方箋が示されてきたにもかかわらず、何故うまくいかなかったのかが問題であり、これについてもっと書きこむべき。透明性、アカウンタビリティの観点から、例えば、地方での契約形態を公開するといった方法が考えられる。

○ 規制緩和の問題点で、激変緩和措置があげられており、それ自体は悪くはないが、問題なのはそれを隠れ蓑にして規制緩和をやらないことである。数値目標を示すと同時に、経過措置を明示すればよい。

○ 費用対効果分析については、資料にあるように各省が独自に行っているが、各省横断的な評価基準が必要。例えば調達実施官庁では、共通のものさしを作りやすいのではないか。

○ 規制緩和を進める際の透明性、アカウンタビリティの中味をどう確保するかが問題。規制情報、行政情報の公開に加え、行政手続法や情報公開法の使い方をアドバイスする、規制緩和に関する「駆け込み寺」のような機関を作り、事業などに挑戦したいのにできない人のために資することも一案である。

○ 規制改革の推進体制における専門の中核的機関設置については、屋上屋を架すことにもなるので、どれだけ効果があるのか慎重に検討するべきである。

○ アカウンタビリティももちろん重要であるが、費用対効果を分析する際に、国や地方自治体においてその前提となる貸借対照表などが作成されていない現状では、その実行も心許ない。アメリカでは企業会計が導入されており、その面では日本はグローバルスタンダードに達していないといえる。公会計の見直しが必要。

○ 費用対効果を分析する際には、その分析が経済的な意味に限定的であるという認識が必要。環境や文化といった視点も考慮する必要がある。

○ 規制緩和の執行を担保するという意味で、業界団体の改革が必要。現在はロビイストと行政の一端を担うという2つの役割を持っているが、どちらかに徹底するべきである。

○ 規制緩和について、ある規制が緩和・撤廃されても別の規制によって制限されているような事例についても、ある程度踏みこんで記述してもよいのではないか。

○ 規制緩和については、他の部会の議論や従来の経済審議会の議論を踏まえ、できる範囲で掘り下げてしっかり議論をしていきたい。

○ 透明性やアカウンタビリティについては、どうしてできないのかを掘り下げて議論すべき。また、人材については、ニーズが十分にあるのか、またモチィベーションが形成されているのかを考えるべき。いずれの問題も指摘されている事項がなぜ進まないのかを掘り下げることが必要。

2.グローバリゼーションに適合した制度の構築・人材の育成

○ 「外国企業による日本企業の買収」とあるが、もう少しソフトな書き方に改める必要がある。

○ 知的所有権の中の特許については、我が国では他人の技術開発を規制する防衛のための特許がほとんどを占めており、問題である。使わない特許ではなく、開発型の特許に向かうための工夫が必要。

○ 人材の育成については、教育の問題が最大であるが、グローバリゼーションに適合した人材を育成するエキスパートが教える側におらず、相当の体制と時間が必要である。

○ 人材育成については、もっと外国人を活用してもよいのではないか。利用価値の高い人材が外国から入ってくることが、日本での人材育成にも資することになるのではないか。

○ 国際的に通用する人材を育てる基盤として、インターネット教育を導入すべきである。

3.国際的なルールや基準の形成への積極的参画

○ 国際的なルールや基準の形成への積極的参画に関しては、人材の育成が最大の問題。

○ 国際的ルール形成の議論に参加する際に、国際フォーラム等のサポート体制整備、費用負担を国が行うという対策は、短期的すぎるのではないか。

○ 求められるアカウンタビリティの度合いは、欧米とアジアでは異なるため、国際的ルール等の形成に際し、アジアの中での議論が必要である。

・その他

○ ハーモナイゼーションは必要であるが、経済学者は多種多様なシステムで競争すべきで、皆同じでは本質的には好ましくないと考えている。市場経済で競争が保証され、多様性の存在を可能とするような最低限のフレームワークを構築すべきである。

○ 構造改革の進め方を検討する際には、国民の生活をどう捉えるかといった視点も重要。

○ 今後10年位を視野に入れ、持続可能な経済社会システムを構築するための議論をするべき。グローバルな競争に対応するだけではなく、例えばアメリカの現在の好景気が悪化した際に、主張を変えたりすることのないようにしておくことが重要。ルールの統一は世界的に進みつつあるが、企業、個人は多様であるはずであり、長期的に考えて、多様性こそ重視されるべきである。

○ 情報化や電子商取引等が進み、国際的な取引が劇的に変化する中で、輸出入、課税、保険等様々な分野で、これまでの取引の前提が崩れつつある。こうした点を踏まえ、商法や民法などの基本法の枠組みを考えるべき。

○ 民事訴訟法や医療法で行った改正のように、情報技術の利用に係わる制度を見直す必要性を盛り込むべきである。

○ 構造改革には大賛成であるが、なぜ構造改革を進めるのか、国民にとって、例えば生活水準が上がるといった長所をあげながら、検討を進めるべきである。

○ 構造改革を進めると、勝者と敗者が出てくる。我が国では敗者が復活しにくいのが問題であるといわれているが、これを是正するというよりは、敗者が部分的にでてくるという前提で、構造改革について検討する必要がある。

6.今後のスケジュール

次回の構造改革推進部会(第4回)は3月26日14:00~16:00に開催する予定。

以上

なお、本議事概要は、速報のため、事後修正の可能性があります。

(連絡先)

経済企画庁総合計画局計画企画官室

吉野

Tel 3581-0977