第2回経済審議会地域経済・社会資本部会議事概要

1 日時:

平成11年3月10日(水) 10:00~12:00

2 場所:

経済企画庁共用第二特別会議室(407)(第4合同庁舎4F)

3 出席者

(部会)

森地茂部会長

安土敏、北村浩子、小林重敬、坂本多旦、戸所隆、中邨秀雄、長谷川逸子、

溝口薫平、宮脇淳 の各委員

(事務局)

今井政務次官、中名生総合計画局長、高橋審議官、梅村企画課長、

大西計画課長、林部計画官、安井計画官、涌野計画官、福島推進室長

4 議題

21世紀初頭のまちづくりについて

小林委員意見発表

地域経済・中山間地域等の活性化について

坂本委員意見発表

5 議事内容

1.小林委員から発表資料「これまでの都市づくりとこれからの都市づくり」(別紙1)に沿って意見発表後、「21世紀初頭のまちづくり」について審議。各委員からの主な意見は以下のとおり。

  • 日本で都市計画法という制度的枠組みが存在するにもかかわらず、スプロールの進行や中心市街地の跡取り不足などの問題が生じているのは、運用に問題があるのか。
  • 日本においても欧米と同時期に遜色のない制度が整備されてきたと思うが、「必要最小限の規制とする…」といった法律上の規定や、小規模のものは規制しないという仕組みが抜け穴的に作用したと考えられる。
  • 行政、市民とも依然として郊外開発中心の考え方から抜けきれないことが、中心市街地の活性化が進まない理由ではないか。
    日本では、自営業者に後継者がいないことから投資意欲がわかず、地価、固定資産税が高騰したことから新規参入者に手放さざるを得ず、「積み重ね」型のまちづくりが行われずに専ら「スクラップ・アンド・ビルド」型のまちづくりとなったと考えられる。
  • 都市のまちづくりに当たり、周囲の中山間地域等を含めて考える必要がある。都市は都市住民だけのものではない。
  • 抜け道があるという問題よりも、高度成長期における基本的な都市化社会のグランドデザイン自体が間違いだったのではないか。
    広い住宅で職場に近ければ東京は住みやすい。職場から遠い所に住むから、住みにくいと思う。
    オフィス規制や高度利用が必要だ。
  • 日本にもまちづくりに当たっての基本的な視点は存在した。しかし、例えば、20数mの幹線道路の整備は進めたが6~12m程度の生活対応道路の整備がなされず、あるのは4m道路という状況。住宅市街地の高層化は4m道路沿いでは無理。これが、高層利用が進まなかった主因である。幹線道路沿道では高層化がなされている。
  • 日本のまちづくりは、木造住宅を中心に小規模の都市づくりを行なってきたことが欧州のまちづくりと異なる点である。
    都市が急速に発展したため、核家族化や地価高騰などの問題が生じているが、古いものの中に魅力的なものはあるもの。一極集中的にまちづくりを進めることは問題。
  • 戦後すぐに作られた(道路の)都市計画がいまだに生きており、その規制が様々な「抜け穴」を認める形で運用されており、道路が一向に整備されないのが実態。計画自体を見直し、そこから整備を進めることが必要。
  • 地方の中心市街地の活性化については、高度成長時代の補助金中心の手法では、もはや有効な効果を持ち得ない。地方都市では中心市街地の空洞化対策として庁舎や公的機関の整備に頼る動きがあるが、そうではなく、民間が中心市街地に入りたくなるインセンティブが働くよう、国のみならず地方公共団体の計画も含めて再検討する必要がある。
  • 日本は小規模の建替えによるまちづくりが多いのではないか。
  • 共同化を進める施策が進められてきたが、なかなか実現は難しい。関係者がうまく環境を分かち合う仕組みが必要だが、現在は、その判断の責任を建築主事という個人に委ねている。誰がどのように判断するかといった仕組みの整備が必要だろう。

2.坂本委員から発表資料「「地域経済・中山間地域等」の活性化についての意見」(別紙2)に沿って意見発表後、「地域経済・中山間地域等の活性化」について審議。各委員からの主な意見は以下のとおり。

  • 日本では、中央が中心で地方が下請というような関係になっている。一方、例えばフランスはパリとその郊外は対等に補完し合う関係になっている。地方の個性が出せる仕組みづくりが大切。
    中山間地域等と都市が補完し合える仕組みを作るためには、国土保全や学びといった中山間地域等の公益的機能への評価を高めていく必要があり、そのための教育も重要。
    住民の土地への愛着心の欠如が地域コミュニティーの崩壊の一因。
  • 現在の中山間地域等は補助金依存体質が強すぎる。その最大の要因は人がいないこと。生活者とそのリーダーを増やすことが課題。
    社会基盤整備は整ってきたが、東京の視点からの整備であり、生活に密着した整備となっていない。例えばホールはあるが、買い物をする所がない。
    旧来の市町村、選挙区単位等を超えて連携できる仕組みがないことも中山間地域等が活性化しない要因。
  • 本発表における「中山間地域等」には海や島も入ると考えるべき。
    市町村の横並び主義、平等主義が、魅力ある地域の創造を阻害している。
    最近では、東京を経由せず地方から直接海外に行く若者も増えてきており、東京依存型意識からの脱却が進んでいる。こうした動きを支援していくことが重要。
  • 地方の公共建築はあらゆる方針を国の方針に合わせてきたので、各々の地域の魅力が出ていない。細かな部分については、住民の自主性に任せるべき。
  • 中山間地域等を巡る議論が国民全体的にいま一つ分かりにくいのは、食料安保等に必要とされる都市の負担について、具体的レベルやシナリオが示されないことにあるのではないか。
  • 例えば、中山間地域等に係るPFI等を通じて、国民全般の中山間地域等に対する意識を変えていくことが重要。
  • ドイツでは、耕作放棄地を河川周辺にまとめ、その管理を農民に任せてデカップリングの対象とし、さらにグリーンツーリズムにも活用している。こうしたデカップリング政策と旧来の補助金依存とは大きな違いがあり、現在のところ、この違いをどう埋めていくかというシナリオが分かりにくい。今後議論が必要だろう。
  • デカップリングについては、土地利用計画を整備し保全するべき所を明確にした上で、導入していく必要がある。
  • 中山間地域等と都市の交流といっても、都市が上の立場で中山間地域等が奉仕者の関係にあることが、交流のネックとなっている。
  • 地方では、補助金を得るための書類作成等をコンサルタントに依存しているが、それが全国画一的な内容となっている。地方が計画をつくりやすくするための仕組みが必要。
  • 地方はいかに補助金を多く受けられるかということで奔走している。交付された補助金を多少残して他の用途に回すというような仕組みがない。
  • 農村から都市へ人が集まるのは、農村に魅力がないから。農村に魅力を持たせるためには、農業の法人化等により新しい事業、新しい経営等を導入する必要がある。

なお、本議事概要は速報のため事後修正される可能性があります。

(本議事概要に関する問い合わせ先)

経済企画庁総合計画局農林水産業班

TEL:03-3581-0764