第6回 経済審議会・企画部会議事概要
- 日時:平成11年2月25日(木) 15:00~17:00
- 場所:共用特別第一会議室(404号室) (第4合同庁舎4F)
- 出席者
- (部会)
- 小林陽太郎部会長、香西泰部会長代理
荒木襄、伊藤進一郎、角道謙一、小島明、小長啓一、佐々波楊子、
ポール・シェアード、高橋進、長岡實、松井孝典、吉川洋、の各委員 - (事務局)
- 塩谷事務次官、林官房長、中名生総合計画局長、高橋審議官、牛嶋審議官、
梅村企画課長、大西計画課長、染川計画官、涌野計画官、塚原計画官、
青木計画官、荒井計画官、安井計画官、佐久間計画官、林部計画官、
佐々木計画官、渡辺電源開発官、福島推進室長、岩瀬計画企画官
- 議題
- 経済社会の歴史的転換について
- 「新たなる時代のあるべき姿」の基本理念について
- 議事内容
事務局より資料3「経済社会の歴史的転換について」、資料4「経済社会の歴史的転換に関する参考指標」について説明。これらに対する各委員からの主な意見は以下のとおり。
- 歴史的転換で整理されている方向に持っていくときに、気づいていないところに障害があるのではないか。例えば、情報化時代においても、日本のインターネット接続料は非常に高い。現在の日本が国際的趨勢にどの分野で遅れているのか、それはなぜなのか等を把握したうえで、将来像を描くべき。
- 少子高齢化は地域社会に対しても影響を与える。人口が減っていっても世帯数は増えるので、それによって住まいのニーズも変わり、街の構造にも影響が出てくる。地域の中での職と住の関係が、従来の形から変わっていく。
- 歴史的転換を言う場合、明るい夢が持てるものであるべき。所得格差、地域格差といったことを指摘すると、いやいやながらやろうとしているイメージになる。
- 現在の不況下で何かをしなければいけないことはコンセンサスがある。しかし、例えばグローバルスタンダード等の受け入れは国民の問題であり、政府として行うべきことは国民に自己責任で頑張れということくらいしかない。
- 少子高齢化については、マイナスイメージばかりではなく、頑張っていけばプラス志向になるといえないか。
- 情報化、グローバル化の中で、国際的な言葉の重要性が増している。例えばインターネットを受信できても発信できないことは問題。また、英語を理解できないと、日本の文化しか理解できないことになる。
- 多様な知恵の時代への移行、グローバル化、少子高齢化、環境適合の4つの次元の相互関係を立体的に考えると、いろいろな見方ができるのではないか。例えば、知恵を持った人が移動することになるが、彼らをどう取りこむかは国として重要。4つの切り口で変化を考えるだけでなく、日本としてどうすべきか、国として向かう方向性を考える必要がある。
- 多様な知恵の時代への移行、グローバル化、少子高齢化、環境適合の4つの要素の補完性を考えると、一つずつでは問題であっても、これらを一緒に考えたときに問題解決につながる。
- 欠けている視点は教育。教育改革はあまり進んでいない印象を受ける。人的資本の形成は重要。これからの情報化社会に見合うものにするために、これを前面に出せば良いのではないか。
- 今後の変化を客観的に整理されているが、そこでの問題をどう調整していくのか、という視点で今後まとめていくべき。中でも教育問題は長い目で見れば重要。
- 資料の中で欠けている視点はテクノロジー。将来、具体的にどういうテクノロジーについて物理的可能性が開けているのかについて、信頼できる知見を集約し、情報を把握することにより、見通しを立てることが必要。
- 人口減少の中でも低成長は必ずしも不可避ではない。日本の過去の経済成長の多くは資本と技術革新によるものであり、労働の寄与は大きくない。
- 国際環境がどうなるのかが重要。日本では人口が減るが、世界的には人口は増加し、食糧問題が発生するかもしれない。日本と世界の動きは異なっており、その中でモノの流れがどうなるのかを見ることが必要。
- 欧米人は、積極的に他と関わる資質を持っているが、そうしたことを基準に今日のグローバルスタンダードが成り立っている。日本人はそれが弱い国民である。グローバルスタンダードでやっていくとき一番遅れているのは国民の資質ではないか。
- 光ファイバーの敷設等、今までなら国がやってきたと考えられるインフラ整備を、これからも国がやるのか、それとも民間がやるのか、それを判断しないと大事な問題が前へ進まない。
- 夢のある報告であればと思う。
- 日本は、公害問題や石油危機等これまでの供給制約をすべてその後のバネとしてきた。現在日本が直面している高齢化という供給制約は、今後他の先進国も直面するものであり、日本がそれを乗り越えるシステムを作ることができれば、その中には世界が学ぶものが出てくる。このように、高齢化についても前向きに捉えることができないか。それには新しいニーズに対応するサプライサイドが出てくれば良い。
- 日本は規格大量生産をうまく発展させてきたため、貿易では黒字を計上しているが、観光、文化、留学生などについての収支を考えてみると大幅な赤字である。日本を魅力ある国にして、多様な対外的バランスシートを改善することが必要。
- 80年代央から90年代にかけて、歴史的転換の流れは進んでいるが、経済社会はこれまでの「単線・イノシシ型」から変化できないでいる。今はその変化の動きを起こすことが必要。そのためには敢えて格差を生み出し、差がつくことは良いことであるということを思い切って言うことも必要ではないか。ギャップが次の時代のバネになりうる。
- 教育については、10年先に成果が出てくるものではないが、50年先を視野に入れてどう仕込みをするか。先に向かってやっておかなければならない。
- 成熟化と格差があることは矛盾しているのではないか。成熟化は格差がなくなることであり、格差があるということは成熟したものをこわすことではないのか。
事務局より資料5「我が国の国家像についての意見集計」、資料6「我が国の国家像を議論するにあたっての参考指標」について説明。これらに対する各委員からの主な意見は以下のとおり。
- 女性や高齢者は生活文化面のみならず、企業文化面でも重要になる。現在はまだ女性や高齢者の登用は進んでいないが、企業のあり方にも変化が起きている。
- このところ男子の留学生の応募が減っているが、それは男子には会社を離れる不安がつきまとっているからである。
- 日本は世界秩序には積極的に関与すべきである。10年展望では、世界平和と発展に貢献する方向付けをすべき。
- 自由と社会的秩序のトレードオフについては、結果の平等から機会の平等に徹するべきである。
- 経済成長については、構造転換を進めるためにも必要。
- 企業の年功序列は崩れる。しかし、企業の管理部門や技術部門といった中核には、長期雇用は残ると考えるべき。一方、周辺部門にはアウトソーシングや派遣社員も広がる。
- アメリカ型でもヨーロッパ型でもない日本型の経済運営、資本主義がある。それを具体的に考えていくべき。
- 所得格差の問題については、日本の行き過ぎた大衆民主主義により、結果の平等を追求するようになってしまった。それではダメだということを、誰にでもわかってもらえるようにうまく説得すべきである。
- 経済成長自体が目的でなく、成長は他の価値の実現のために必要と位置付けられる。目的とするのは豊かな生活である。日本ではモノの品揃えは豊富だが、生産性や効率性が悪いため、価格が下がらない。品質や個性を求める消費者ニーズもあるが、多様なものが安く求められる方向に持ってくるべきではないか。
- 移民については、例えば建設業では2010年になると労働力が追いつかないという試算もある。一方で、単純労働者を入れると生産性の上昇に結びつかないとの見方もある。
- 今後の地域社会については、できるだけ定住を増やそうとするのでなく、各地域の交流を考えるべき。
- 当然尊敬される国であるべきであるが、それ自体が目的ではなく、国益や国民の幸せ中心に考えるべきであり、安定した国、住み良い社会という基本を押さえることが重要。
- 安全ネットについては、社会の発展段階により何が必要とされるかが異なる。例えば、高度な発展段階においては、厚みを持った労働市場など、市場自体が安全ネットとなりうる。安全ネットの提供者も国だけでなく、企業、家族、NPO等も考えられる。
- システムで良いものは自然に残ると考えるのは適当でない。システムについては市場に任せればよいという考え方はやや楽観的すぎる。
- 日本固有の良さとしては、協調的労使関係を強調すべき。その一方でこれまで欠けていたのは株主に目を向けた経営である。日本のシステムは雇用者に優しいが、米国のシステムは雇用者に厳しく、株主に優しい。その中間型があるのではないか。協調的労使関係を残しつつ、株主のための経営を目指すべき。それらが両立するかは社会実験である。
- 移民問題の前に、在日外国人や帰国子女等の人的資源をもっと社会の中で活用することを考えるべきではないか。
- 制約条件下で、日本が世界の中でどこまで自立するのか、またはすべて世界に依存するのかについての議論を押さえることが、国家像のほとんどを決めることになる。
- 都市はこれまでの制約がないところで形成されてきた。今後は人口減少下で大きく変わってくる。
なお、本議事概要は速報のため事後修正される可能性があります。
(本議事概要に関する問い合わせ先)
経済企画庁総合計画局計画課
西岡、阿部
TEL:03-3581-1041