経済審議会総会議事概要
経済審議会総会議事概要
1 日時
平成11年7月5日(月) 16:30~18:00
2 場所
総理大臣官邸ホール
3 出席者
(委員)豊田章一郎会長、長岡實会長代理、伊藤助成、稲葉興作、角道謙一、香西泰、小林陽太郎、末松謙一、鶴田卓彦、得本輝人、那須翔、畠山襄、星野進保、水口弘一、村田良平、諸井虔、山口光秀、山口泰、鷲尾悦也、和田正江
(内閣)小渕内閣総理大臣、野中官房長官、鈴木官房副長官、上杉官房副長官、古川官房副長官、竹島内閣内政審議室長
(経済企画庁)堺屋長官、今井政務次官、塩谷事務次官、井出経済企画審議官、林官房長、中名生総合計画局長、河出調整局長、金子国民生活局長、小峰物価局長、新保調査局長、貞広経済研究所長、高橋総合計画局審議官、牛嶋総合計画局審議官 他
4 議題
「経済社会のあるべき姿と経済新生の政策方針」(案)について
5 議事内容
(1)堺屋経済企画庁長官あいさつ
日本経済は、長期的にみれば、近代工業社会から多様な知恵の時代への転換期にあたり、不況対策に取り組むと同時に、不況から立ち直った後の経済社会の「あるべき姿」と政策方針を提示することが必要。この答申案は、少子高齢化、グローバル化、多様な知恵の社会への変化、環境制約などに対応した、2010年頃までの日本の経済社会のあるべき姿とそれに至る政策、さらには新しい経済社会の条件、目標、概念、価値観について明示しており、時代の要請に応えたものになっている。
(2)答申案について
「経済社会のあるべき姿と経済新生の政策方針」(案)について、小林陽太郎企画部会長より概要を説明したのち、事務局より詳細を説明。各委員からの主な意見は以下のとおり。
(委員からの意見)
- ○今後の方向として原則自由や需給調整の撤廃ということを強調しているが、農業、サービス分野等と違い、工業製品の分野ではすでに自由である。今後は自由が必要と言うと、現状認識について誤解を与える恐れがあるため、海外に広報していく際には特に注意してほしい。自由をこれまでにない正義の一つとして強調しているが、従来から自由は、自由経済、自由貿易等、重要な価値観として認識されていたのではないか。
- ○自由、競争、効率が基本的な考え方になっているが、社会的弱者に対する安全ネットだけでは不十分である。自由な競争社会よりも互いに助け合う社会の方が望ましい。また、所得格差は勝者のインセンティブにはあまりなりえず、所得再配分により結果の平等にも配慮する社会の方がむしろ活力が生まれる。
- ○物流、情報通信分野の改革は、構造改革推進部会報告にあるように、2001年を目途に結論を得るというつもりでやっていただきたい。
(これに対し、堺屋長官より次のように発言)
- ○自由の原則については、工業製品分野では実現されているが、教育、医療、金融等の分野では実現されていない。答申は、すべてのものを原則自由にするべきという趣旨である。従来の自由は、効率、安全、平等という価値観との関連で考えられてきた。今後は、自由それ自体が社会的正義として認められるべき。
- 豊田会長から、答申案の採択について委員に諮ったところ、原案通り了承された。また、本答申についての政府及び国民への呼びかけを、経済審議会会長談話として発表したい旨を委員に諮ったところ、原案通り了承された。その後、豊田会長から小渕総理大臣に答申が手交された。
(3)小渕総理大臣あいさつ
時代の転換期にあたり、先行きの不透明感が経済主体の活動を躊躇させている現在、21世紀初頭の経済社会のあるべき姿と政策方針を示す意義は大きい。政府として、この答申をすみやかに閣議決定し、その推進に最大限努めていきたい。その際、国民の幅広い理解と協力を得るとともに、今後詳細な検討が必要な分野は、政府内で早急に検討を行って、その結果をプログラムとして示していきたい。
(4)小渕総理大臣と委員との意見交換
(委員からの意見)
- ○官への依存から個の自由・自己責任へ、結果の平等から機会の平等へと、今までの価値観の大転換を求めており評価できる。ただし、これを実現するためには大幅な制度改革が必要になり、困難が予想されるので、政府は真剣に取り組んでほしい。
- ○議論がこの答申で終わらず、今後も広く国民の間で続いていくことが重要。
- ○広く国民の意見を募集したことは評価。政策の立案過程では、一般の人が参加できる議論の場を設けることが重要。
- ○自由と平等の二者択一でなく、両者のバランスをどう選択するかが重要。日本は、平等から自由へと転換していくべきだが、アメリカのように過度に自由に重点を置くべきでない。
- ○環境問題は、従来、経済再生の影に隠れがちだったが、速やかに対応すべき問題。今後、具体的な施策を実施していく際にも積極的かつ速やかに行ってほしい。
- ○審議会の見直しについて、単なる名称の変更だけでなく、実質的な見直しを行ってほしい。
- ○WTOの無差別原則という正論から、日本は共同市場の整備を実施してこなかったが、国際的に見て、共同市場の整備を推進していない国はわずか。今回、共同市場に対する方針を転換したことは評価できる。
(小渕総理より次のように発言)
- ○立派な答申をまとめていただき、感謝。小渕内閣も、ようやく長期的なビジョン、計画を持つことができた。
- ○委員の方の意見は、要は実行ということに尽きると思う。政府として、国民の理解形成に努めるとともに、本答申を一日も早く閣議決定し、本答申の基本的哲学に従って、提言された政策の実行に努めていきたい。
以上
本議事概要は速報のため、事後修正の可能性があります。
(連絡先)
経済企画庁総合計画局計画課 宮原、阿部
電話03-3581-1041