経済審議会地域経済・社会資本部会報告書
平成11年6月
はじめに ~歴史的潮流変化の中での国土構造のあり方~
戦後から90年代に至るまでの日本経済を振り返り、21世紀の新たなる時代を展望すれば、内外の歴史的潮流が大転換している。
- 第一に、「多様な知恵の時代」への移行である。すなわち、知識や知恵を新たに創造したり、使いこなしたりすることによって生み出される価値が、経済成長、企業収益並びに人々の満足を高めるための原動力となる。また、ネットワーク化の急速な進展が、情報面で全世界を一つに結び付けるとともに、情報通信技術の革新とその普及は、経済全体の効率性を飛躍的に向上させる可能性を持っている。
- 第二に、今後10年程度で、日本の人口は減少へと転じる。人口増加の下で機能してきた、雇用システム、社会保障制度、都市・国土などの基盤整備政策を現行のまま維持することは難しくなっている。
- 第三に、財・サービスの貿易や資本移動における国家間の障壁が低くなるとともに、途上国の発展と旧東側諸国の市場経済移行により、グローバル市場の規模が急速に広がってきている。
- 第四に、未解決の環境問題の山積が従来型の大量生産・大量消費・大量廃棄型システムの限界を示唆している。また、食料、資源・エネルギー問題が経済活動に対する一層の制約要因となる可能性がある。
このような歴史的潮流の大転換に伴い、国土のあり方についても、東京一極集中の階層型国土構造は、さまざまなひずみ・非効率を生じさせており、新たな国土構造の構築が求められている。
21世紀初頭のあるべき経済社会における国土のあり方としては、個人や地域の自主性、多様性を尊重することにより、効率的で生産性の高い国土構造に転換することが重要である。同時に、時間的・空間的ゆとりといった豊かさの増進・持続、国土の安全・安心を実現していくことが基本となる。
このような観点から、本部会は、まず、21世紀のあるべき地域社会とそのかたちを大都市、地方都市、中山間地域等の各地域ごとに明らかにした上で、それぞれのあるべき姿・機能を実現するための戦略的施策と、それを支えるネットワーク化等に資する社会資本整備や地域経営システムのあり方について提言する。
第1章 21世紀の地域社会のあり方
1.地域社会と地域政策の変遷
近代以前の地域社会においては、永年に渡り同じ共同体に属してきた住民同士で文化を共有し、祭りの開催やムラの安全確保等、共同体の運営や公共財の供給を地域自らが決定する仕組みが根付いていた。また、各地域社会の経済構造は、農業をはじめとする土着性が高い産業を中心にした経済であったため、各々の自己完結性が高く、地域間の交易や交流は低い水準にとどまっていた。
明治期以降、様々な分野において国の関与が強まるとともに、近代産業が発達し、地域間で人・物・情報の移動が活発化していく中、以前の地域社会に備わっていた自己完結的な特質は弱くなっていった。
特に、第二次大戦後は、重化学工業等の装置型産業を中心に、規模の利益の獲得を目的として、人・物・情報が特定の地域や産業に重点的に投入された。そうした潮流は、人口・産業の東京一極集中を進ませ、そのことは、国富を効率的に増大させることに寄与した。しかし、その一方で地方の独自性の喪失、過密・過疎の拡大等が生じ、東京を頂点とする階層型の国土構造が形成された。その後、国土の過密・過疎の解消をねらった人口・産業の地域分散策が採られ、人口移動や所得面における地域間格差は是正されつつあるが、地域の国への財政的依存や企業の本社機能の一極集中等、意思決定面における東京一極集中は温存され、階層型の国土構造を転換するには至っていない。
2.地域社会と地域経済の現状
これまでの階層型の国土構造の形成という潮流は、今日、各地域社会にさまざまなひずみ・非効率をもたらしてきている。
まず、大都市においては、人口、諸機能の過度の集中により都市機能の円滑な発揮が阻害され、低水準の居住環境、職住遠隔化等による通勤時間の拡大、低未利用地の発生、環境問題の深刻化など様々な問題が発生している。他方で、グローバル化の進展に伴う都市間競争の中で、国際競争力の強化が大きな課題となっている。
また、地方都市においては、中心市街地の衰退、企業城下町等の空洞化、国への財政的依存等といった問題が生じ、地域経済の活力を低下させている。
さらに、中山間地域等については、高齢化・過疎化が深刻化し、担い手不足による地域社会の維持が困難となっており、国土・環境保全等の多面的機能等の低下が懸念されている。
3.21世紀のあるべき地域社会とそのかたち
それでは、このような国土構造を、内外の歴史的潮流の大転換の下で、どのように変革し、21世紀のあるべき姿として形成していけばよいのであろうか。
そもそも、地域社会には、居住機能、生産流通その他の業務機能、医療福祉機能、教育機能、文化機能、娯楽機能等、様々な機能が備わっており、これらの機能を各々の地域特性に応じ、いかに高度化するかが、地域政策に課せられた使命である。歴史的潮流の大転換を踏まえると、今後の地域政策は、東京一極集中の階層型国土構造から、個人や地域の自主性、多様性を尊重することにより、効率的で生産性の高い国土構造に転換することが重要である。同時に、時間的・空間的ゆとりといった豊かさの増進・持続、国土の安全・安心を実現していくことが基本となるべきである。すなわち、以下に述べるような、大都市における国際競争力のある都市機能、地方都市の個性的・自立的発展の源泉となる突出機能、中山間地域等における国土・環境保全等の多面的機能といった、各地域の特色ある機能を、自立的かつ戦略的に高度化するとともに、地域間の有機的で水平的な連携・交流を確保し、諸機能の分担、相互補完を通じて、さらなる高度化を図れるような国土構造を形成することが重要である。
このためには、地方分権を徹底して進めるとともに、経済社会活動の基礎となる人・物・情報が効率的に移動でき、かつ、大都市と地方の双方向や自立した地域間の横の結合を強化する高度な交通・情報通信ネットワークシステムを構築することが不可欠である。同時に、「対面慣習」の行き過ぎによる非効率を是正することが重要である。さらに、首都機能移転が、このような新しい国土構造への転換にとって大きな効果を有することから、その具体化に向けた積極的検討が求められる。
(1)大都市
大都市(以下では、三大都市圏及び政令指定都市を中心とする地方中枢都市圏を対象とする。)は、生産流通その他の業務、教育、文化、娯楽、医療等の諸側面において、我が国を代表するような高度な都市機能や情報発信機能を発揮し、我が国の経済社会全体の活力の維持、発展に積極的に貢献していく。同時に、地方ブロックにおける中枢的機能を果たす。
さらに、経済のグローバル化の進展に対応し、国際的な都市間競争に対応できるような都市機能の高度化を図る。まず、生産流通その他の業務に関しては、国際取引機能、事業所統括機能、経営判断機能の特化を図るとともに、国際的な人・物・情報の流れの国内と国外の大きな接続点としてゲートウェイ機能を果たす。
次に、国際的な都市間競争に対応できるためには、国際都市として遜色のない生活環境が備わっている必要がある。すなわち、居住、通勤、通学、通院、買いもの、文化活動、娯楽活動などの日常生活とそのフットワークにおいて、現在の過密状況がもたらすデメリットを克服し、生活にうるおいをもたらす「空間」のゆとりと、移動時間等をできる限り短縮することによる「時間」のゆとりを確保するとともに、安全性、快適性、利便性、効率性を向上させることが求められる。
特に、これからの少子・高齢社会にあっては、日常生活における移動等が、安全に、かつ、短時間に済ませられることが求められる。これまでは、例えば、育児に携わる者が働きに出る場合でも、住宅と保育所と職場との間の移動時間、保育時間の限定、子供が病気になった場合の病院の待ち時間などにより時間的に余裕のない生活を余儀なくされる場合も多々あった。高齢者の外出にしても、駅の階段の昇降、歩行等において様々なバリアーがあり、決して快適な環境ではなかった。こうした問題に、行政として、サービスの提供や施設の整備を通じてどう対応するかが大きな課題である。
以上を総合的に勘案してみると、大都市における業務、生活等の機能を十分に果たしうるためには、ゆとりある「空間」の確保、様々な高度な都市機能のコンパクトな集積と地域内外の高度な交通・情報通信ネットワークによる、ゆとりある「時間」の創出、さらには、ネットワーク化を通じた、多様で迅速な人流・物流・情報交流の実現が中心的課題となる。
なお、大都市では、民間を中心とした施設建設、サービス提供が質的にも量的にも期待できることから、民間の経営力、技術力、資金力を十分に活用した形で都市形成を図ることとする。
(2)地方都市
地方都市(以下では、地方中核都市圏及び地方中心・中小都市圏を対象とする。)においては、都市機能の過度の集積がもたらす弊害の問題はなく、大都市に比較すると総じて「空間」のゆとりと「時間」のゆとりは確保されている。
一方で、生産流通その他の業務機能、教育機能、文化機能、娯楽機能等については、大都市に強く依存しており、地方都市間においても地域差はあるものの、地域社会を支えるべき若年層の流出や価値観の画一化、コア経済である大都市への従属による自己決定能力の低下等の問題が生じている。
今後は、東京一極集中から機能分散を図る中で、東京主導の雁行型発展ではなく、地域が個性的・自立的発展を遂げ、むしろ、地域もまた日本経済全体を牽引しうる活力を持つことが求められる。
しかし、地域が個性的・自立的発展を遂げるには、地域間競争を勝ち抜いていくための突出した機能とそれを担う人材が必要である。
こうした観点から、地方都市は、さらに基礎的な都市機能を高めていくとともに、発展を支える、国際競争力をも備えた地域独自の突出した機能を創出し、または、その高度化を図っていくこととする。
(3)中山間地域等
中山間地域等については、この地域の持つ生産力、国土・環境保全等の多面的機能を今後とも適切かつ十分に発揮していくことが重要である。また、同地域には、都会にない優れた魅力があり、就業し、あるいは定住したいという人々の意欲に応えるため、都市との連携を始め、広域連携、機能分担も視野に入れつつ、生産基盤及び生活基盤等の環境を整備する等、十分な利便性を確保することが必要である。ただし、中山間地域等の経済社会システムの維持に当たっても、可能な限り効率的に行うことは言うまでもない。
また、中山間地域等以外の農山漁村地域についても、国民の生命・財産を守り、安らぎのある生活を確保する観点から、基幹産業である農林水産業を始めとする地域の産業の発展や生活環境の向上等のために必要な施策を適切かつ効率的に展開する。
改めて中山間地域等の現状をみると、稼得機会等を求める若年層を中心とした人口流出により高齢化・過疎化が進むなど、担い手不足等により集落等の地域社会の維持が困難となる場面がみられる。その一方で、引き続き中山間地域等に居住を続けたいとする人々も多く、また、近年、都市住民等が就業や余暇活動の場として、中山間地域等に定住する、あるいは定期的に訪れるケースが増加している。このような人々にとって、中山間地域等は、都市にはない豊かな自然環境、住環境や地域の連帯感を有した自己実現を図る魅力ある生産・生活空間となっている。
しかしながら、生産流通その他の業務機能が不十分で十分な所得が得られず、また、生活するのに最低限必要な教育機能、文化機能、娯楽機能、医療福祉機能、交通・情報通信機能等の生活支持機能も不足している等の問題があることから、中山間地域等に安心して住み続けることや住んでみたいとする人々の意欲の実現を困難にしている。
我が国国土における中山間地域等の位置付けをみると、農業等の生産性については、平地部等に比較して厳しい面がみられるものの、多彩な気象・土地条件や多様な地域資源を活かした農産物等の主要生産地として、我が国食料生産力の重要部分を占めている。
さらに、降水量が多く急峻な山地や急流が多い我が国において、一般に河川の上流域に位置する中山間地域等は、古来より、農林漁業を中心とした様々な人間の働きかけや努力により、国土・環境の保全、水源のかん養、緑や景観の提供、地域文化の継承等の多面的機能を発揮している。この結果、「都市の里山」として、地域住民のみならず、下流域の都市住民を含む国民の生命・財産と豊かなくらしを守る防波堤としての役割を果たし、国民全体が共有する財産となっている。こうした、中山間地域等の持つ生産力、国土・環境保全等の多面的機能の維持は、21世紀においても求められる。
以上のような観点に立って、定住しうるに十分な稼得機会としての産業体制、物流体制等の確立、中山間地域等に住むために必要な生活支持機能の確保、集落の再編整備等による集落機能の強化、国民レベルでの多面的機能への理解の促進により、中山間地域等の地域社会の振興を図る。
4.あるべき地域社会を支えるネットワーク・フットワーク
効率的で生産性の高い国土構造を形成していくためには、大都市、地方都市、中山間地域等の各地域が、特色ある機能を高度化するとともに、その有機的で水平的な連携を確保し、諸機能の分担、相互補完を通じてさらなる高度化を図ることが重要である。このためには、経済社会活動の基礎となる人・物・情報が効率的に移動でき、かつ、大都市に向けた放射状の動きだけではなく、大都市から地方に向けた動き、それに加えて、自立した地域間の横の動きを生じさせることが必要であり、これを可能とする交通・情報通信ネットワークの構築が必要である。
このためには、まず、グローバル化した高速・大容量の情報通信ネットワークを全国に構築するとともに、国際的なゲートウェイ機能を果たす空港や港湾、そのアクセスとなる高度な交通ネットワークと地域を相互に連携する地域間ネットワークを整備することが重要である。このようなネットワークは一極集中型の「一対多」のネットワークではなく、多くの拠点を有する「多対多」のネットワークである必要がある。さらに、このような地域間のネットワークの整備と併せて、地域内の交通・情報通信ネットワークの有機的な整備が必要である。
このような多重的・複合的なネットワークを全国に渡って構築することにより、多様で個性的な地域間及び地域内における、双方向での、迅速な情報交流や効率的でシームレスな人流・物流が可能となる。こうしたネットワークは、廃棄物等の収集、処理、再生・再資源化を支え、今後のリサイクル社会を支える静脈としての機能も果たす。経済産業活動だけでなく、教育、医療福祉に関するサービスの高度化や、文化、娯楽、旅行等に関する多様な情報と交通を総合的に組合せたネットワークの形成も可能となる。デジタル社会の進展による電子商取引の普及によって、カネのネットワークも、より効率化する。
さらに、通勤、通学、通院、買い物や文化活動などの日常生活においては、ゆとりある「空間」や市街地環境を確保しつつ、各種施設の近接化・複合化を進めることと併せ、ネットワーク機能を積極的に活用することにより、安全、快適、便利で短時間の移動が可能となるフットワークが確保される。
5.首都機能移転の検討
首都機能移転は、政治・行政の中心地と経済・文化の中心地を物理的に分離することにより、東京の優位性の相対化を図るものであり、東京一極集中の是正のための基本的対応として重要である。また、地方分権、規制緩和、行財政改革等の国政全般の改革と並行して検討を進めていく必要がある。さらに、大規模災害時に復興の司令塔となる首都機能と経済の中枢との同時被災を免れることや移転跡地を活用した市街地の防災性向上を通じて、災害対応力の強化に資する。加えて、移転先に新しく建設された都市が、都市形態、ライフスタイル、新技術の活用等において、先導的なモデルを提示することとなる他、人心一新や新たな日本文化形成にとっても大きな意義がある。
ところで、東京一極集中の階層型国土構造の下では、実際に顔を合わせないと十分な意思疎通ができず、事が円滑に進まないとする「対面慣習」の行き過ぎが、多数の儀礼的な集まりなど必要以上に人と会うという非効率をもたらしており、情報通信ネットワーク化が進展しても、このような非効率が解消されない可能性も懸念されている。効率的で生産性の高い国土構造を実現するためには、地方分権の推進やネットワーク機能の高度化とともに、「対面慣習」の行き過ぎを是正した効率的な慣習(いわば「低対面慣習文化」)を根付かせることが必要である。首都機能移転には、現実に対面する機会を強制的に減らすことを通じて、現在の「対面慣習」の非効率な側面を改めて認識させ、変革していく効果も期待される。
このようなことから、新たな国土構造への転換にとって大きな効果を有する首都機能移転について、「国会等の移転に関する法律」に則り、その具体化に向けた積極的検討を進める。
第2章 大都市のあるべき姿
1.あるべき機能と今後の戦略的施策
21世紀初頭における大都市の機能は、生産流通その他の業務、教育、文化、娯楽、医療等の諸側面において、我が国を代表するような高度な都市機能や情報発信機能を発揮し、我が国の経済社会全体の活力の維持、発展に積極的に貢献していくことにある。同時に、地方ブロックにおける中枢的機能を果たすことが求められる。
さらに、経済のグローバル化の進展に対応し、国際的な都市間競争に対応できるよう都市機能の高度化を図ることが求められる。すなわち、生産流通その他の業務に関しては、国際取引機能、事業所統括機能、経営判断機能の特化を図るとともに、国際的な人・物・情報の流れの国内と国外の大きな接続点としてゲートウェイ機能を果たすことが必要である。また、国際都市として遜色のない生活環境を備える観点から、日常生活とそのフットワークにおいて、生活にうるおいをもたらす「空間」のゆとりと、移動時間等をできる限り短縮することによる「時間」のゆとりを確保するとともに、安全性、快適性、利便性、効率性を向上させることが重要である。
このため、ゆとりある職・住など様々な生活空間や市街地環境を確保しつつ、様々な高度な都市機能のコンパクトな集積と地域内外の高度な交通・情報通信ネットワークの構築を進めることが必要である。こうして、例えば、文化的機能を含めた一体的な複合空間としての都心型住宅地区や都心型国際オフィスセンター地区の形成など、ゆとりある市街地環境を確保するとともに、ソフトパワーの増進や新たなリーディング産業の育成と多様なワークスタイルの実現に資する都市空間を形成することが肝要である。
これを実現するための戦略的施策として、「小さな大都市」構想~ゆとりの「空間」とゆとりの「時間」のまちづくり~を推進する。
2.「小さな大都市」構想~ゆとりの「空間」とゆとりの「時間」のまちづくり~
様々な高度な都市機能がコンパクトに集積し、ネットワーク化された、「小さな大都市」構想を推進する。すなわち、職・住など様々な機能の生活空間の良質化と拡大を図り、安全性、快適性、利便性の向上を図るとともに、ゆとりの「空間」を確保する。併せて、それらの近接化・複合化と高度な交通・情報通信インフラを介したネットワーク化を進め、移動時間の短縮や利便性、効率性の向上を図るとともに、ゆとりの「時間」を確保する。同時に、ネットワーク化を通じて、広域的な機能補完や地域間連携と多様で迅速な人流・物流・情報交流を実現する。この際、郊外部における新市街地開発を抑制し、既成市街地の再構築に重点化する。これにより、高齢社会にふさわしい「歩いて暮らせるまちづくり」の実現も同時に目指す。
また、独創的で魅力あるまちづくりを推進するために、まちづくりのプロセスにおいて、住民参加を拡充する。
3.ゆとりの「空間」~様々な機能の生活空間の良質化・拡大~
① 住宅・買いもの・オフィス空間のゆとり
ア.住宅のスペース拡大とレベルアップ
住宅については、広くて良質なスペースを整備し、一人当たり床面積(平成5年時点で31㎡)を今後5年間でヨーロッパ並みの水準(英・独・仏一人当たり40㎡弱)に引き上げる。また、情報化に対応した機能の向上を図るとともに、21世紀を通して良質なストックとして活用し得る長期の耐久性を有する住宅や「スケルトン住宅」の整備を促進する。さらに、良質なファミリー向け賃貸住宅の整備を促進するため、良質な民間賃貸住宅に対する公的支援を充実するとともに、公的主体による供給を推進する。
イ.商業施設・オフィスのスペース拡大とレベルアップ
商業施設については、市街地の面的整備事業の推進等により、駐車場も含めスペースの拡大を図るとともに、商品、サービス検索等に関する情報化を推進する。 Mbr> オフィスについては、意欲を持って効率的に就業できるようにスペースの拡大を図るとともに、情報通信環境の高度化を進める。また、飲食・物販設備、ATM(現金自動受払機)、宿泊施設の整備等、24時間利用が可能な環境整備も望まれる。
② 教育・文化・娯楽・スポーツ空間のゆとり [相互利用の促進、情報化と魅力的な運営]
文化、芸術やスポーツを通した人と人との結び付きは、新しいコミュニティーの形成に繋がるものであり、ゆとりある文化・娯楽・スポーツ空間の創出は重要である。
公共的な文化施設や娯楽施設は、基本的には充足しており、今後はむしろ、既存の施設の効率的活用によって、ゆとりの「空間」を創出することが重要である。このため、地域間の相互利用や余裕教室の文化施設、スポーツ施設への転用を促進するとともに、地域住民が主体となった管理・運営を行う。特に、新たな活力ある人間関係が形成され、地域コミュニティーの拠点ともなる生涯学習施設の充実を図る。
また、受講可能講座、文化イベントやスポーツイベントに関する案内等の情報化を推進するとともに、必要な人材の確保や企画等の充実を図り、文化施設において魅力的な運営を行う。
③ 公共空間のゆとり
ア.安全でゆとりある公共・交流空間の確保
道路、公園、河川、広場、下水道等の都市基盤施設は、良好な市街地環境の基礎として、都市の公共・交流空間を形成するとともに、土地の有効高度利用や建築物の秩序ある整備の前提となるものである。
また、安全・安心の観点から、避難地・避難路、緊急輸送道路、延焼遮断帯等としての機能を有するとともに、円滑な交通や良好な歩行空間の確保、洪水被害の軽減等の役割を果たしている。
さらに、公園、河川、港等における緑地や水辺の整備は、都市部の自然的環境の保全・創出や環境負荷の軽減にも資するものである。
このため、ゆとりの「空間」の基盤として、安全な生活や利用しやすさの確保と環境負荷の軽減に留意しつつ、重点的整備を図る。
イ.歩いて楽しめる歩行空間・公共空間の確保
歩行空間・公共空間のバリアフリー化、電線類の地中化や交通安全対策を推進するとともに、これらの空間をイベント等地域活動の場ととらえて、その有効利用の促進を図る。また、トランジット・モール(公共交通機関だけが通行可能な歩行者天国)の積極的導入を図る。
④ 歴史・文化・風土・自然空間のゆとり
地域に根ざした歴史・文化・風土や水辺、緑等の自然環境を保存し、活用するとともに、屋外広告物の規制、建築物の壁面や屋上の緑化等都市の美観の保持を推進する。
このため、歴史的な建造物・街並みや史跡等の貴重な文化遺産や水辺、緑等の自然環境の保存、復元、整備を促進する。また、歴史的風土特別保存地区、伝統的建造物群保存地区、緑地保全地区等の制度や、建築協定制度、緑地協定制度などの積極的活用を図る。
(2)ゆとりの「時間」~都市構造のコンパクト化とネットワーク化~
① 既成市街地の再編による生活空間の近接化・複合化とゆとりの「時間」の創出
住宅、職場、保育所、商業施設、医療施設、行政施設等の近接化・複合化を進めることにより、移動時間等の短縮を図り、利便性、効率性とゆとりの「時間」を確保する。
中心市街地の再開発、都心部の低未利用地の有効高度利用などによる既成市街地の再編は、道路、公園等の都市基盤施設、住宅、商業・業務施設、福祉施設、文化施設等の更新、整備と良好な市街地環境の形成を通じて、ゆとりの空間の確保に寄与すると同時に、様々な生活空間の近接化・複合化に寄与するものであり、その積極的推進を図る。
ア 計画的な土地の有効高度利用と用途複合の促進 [有効高度利用の促進]
容積率等の特例制度の積極的な活用により土地の有効高度利用を促進する。
また、個々の敷地ごとの規制ではなく、複数敷地への一体的規制の手法により、容積率移転等を可能とする連担建築物設計制度等を積極的に活用する。
良好な市街地環境を確保するためには、道路等の都市基盤施設の整備と併せて、土地の有効高度利用を図ることが必要であり、こうした観点から、計画的な土地利用を図るための「マスタープラン」や有効高度利用に向けた「プログラム」を積極的に策定し、機能させる。
[用途複合の促進]
都市計画等の土地利用計画における用途規制について、地域特性に応じ、住宅、事務所、店舗、工場等の、より広範な用途複合を図ることを検討する。
また、都心部における住宅に対する容積率のインセンティブ付与等により、望ましい用途の集積・複合を促進する。
イ 市街地の面的整備事業の推進 [市街地再開発事業と土地区画整理事業との立上げの円滑化と両事業の一体的施行]
市街地再開発事業と土地区画整理事業について、新たに、事業の立上げの円滑化を図るため、組合設立の早期化を図るとともに、幅広く建築物と土地と一体的に整備するため、両事業の一体的施行を進める。
[密集市街地の整備と市街地住宅の供給]
老朽木造建築物が密集している密集市街地については、防災上も危険であることから、老朽建築物の除却や建替え、道路、公園等の地区施設や住宅の整備を総合的に行う事業を推進する。
また、既成市街地において、良質な市街地住宅の供給と公共施設の整備等を総合的に行う事業を推進する。
[低未利用地の有効利用]
大都市の都心部を中心に、数多く発生している虫食い地等の低未利用地の有効利用のために、敷地整序型土地区画整理事業等を推進するとともに、公的機関による土地取得、敷地の整序・集約化や基盤整備と民間事業者等による建物整備を促進する。
[大規模遊休地等の円滑な土地利用転換]
産業構造の転換に合わせ、大都市臨海部の工場跡地など大規模遊休地等を都市の再構築に活用しうるよう円滑な土地利用転換を進める。このため、重点的な都市基盤施設や住宅市街地の整備を推進するとともに、土地利用規制の見直しをはじめ、不動産の証券化の促進等資金調達の改善等の総合的な支援方策について検討する。
ウ 民間事業者に対する資金面での公的支援と不動産の証券化の促進
既成市街地の再編を民間事業者の事業ノウハウを活用して促進するため、優良なプロジェクトについて、民間事業者に対する補助、低利融資、税制といった公的支援措置の活用を図る。
資金調達の多様化・円滑化に資する不動産の証券化を促進する。このため、投資者保護の観点も踏まえつつ、「特定目的会社による特定資産の流動化に関する法律」(SPC法)等資産流動化に関する制度に関し、多様な投資商品の提供を促進するため、その改善について検討を進める。また、資産流動化の促進のために必要な税制について検討する。さらに、優良プロジェクトに係る証券化について、公的主体による信用補完の活用を図る。
エ 都市中心部における住宅や福祉施設の整備
住宅については、補助、低利融資等の公的支援を通じて、民間事業者による良質な共同住宅の供給を促進するとともに、公的賃貸住宅の供給を推進する。
この場合、定期借地権付住宅について、税制の活用や住宅購入者に対する融資の弾力化等により、一層の供給促進を図るとともに、容積率等の特例制度を積極的に活用する。加えて、良質な賃貸住宅の供給を促進する観点から、定期借家権の導入を促進する。
また、福祉施設については、余裕教室の転用、施設の複合化や公的賃貸住宅、公園等との一体的整備を促進するとともに、面的整備事業の一環として整備する。なお、規制緩和を通じ、都市部を中心とした待機児の解消を図る観点から、認可保育所の設置主体について、民間企業等の参入を認めるよう見直す。さらに、特別養護老人ホームについては、入所者が生活拠点を失うことがないよう、他の事業活動が特別養護老人ホーム事業に直接影響を及ぼさない仕組みの検討と併せ、社会福祉法人制度の見直しや介護保険施行を含めた規制緩和の効果等を踏まえつつ、民間企業の参入を今後さらに検討する。
② 交通・情報通信ネットワークの高度化とゆとりの「時間」の創出
地域内外の高度な交通・情報通信ネットワークを構築することにより、地域間連携と多様で迅速な人流・物流・情報交流を実現するとともに、移動時間や用務時間の短縮等を図り、利便性、効率性とゆとりの「時間」を確保する。
ア 交通
都市鉄道網の整備と環状道路の整備等のハード面、交通需要マネジメント等のソフト面の交通渋滞対策の推進等により、都市内交通の高度化を図る。また、高速鉄道網、高規格幹線道路、地域高規格道路等や、国際空港、国際港湾等の整備により、都市間交通と国際交通の高度化を図る。
また、ITS(高度道路交通システム)の整備を推進し、移動効率の飛躍的向上を図る。
イ 情報通信
グローバルに展開するインターネットの活用により、在宅勤務等を可能とするテレワーク、SOHO(Small Office Home Office)を推進するほか、在宅で医療、福祉、学習等のサービスを享受できるような住宅の情報化を進める。また、商業・業務施設、教育施設、文化施設やスポーツ施設においても、サービス面等での様々な情報化を進める。さらに、申請、届出等手続の電子化やワンストップ・サービス化を推進することにより、役所での所要時間を短縮する。 このため、グローバル化した、高速・大容量の情報通信ネットワークを構築する。
第3章 地方都市のあるべき姿
1.あるべき機能と今後の戦略的施策
大都市に比較すると、総じて「空間」のゆとりと「時間」のゆとりは、確保されている一方、生産流通その他の業務機能、教育機能、文化機能、娯楽機能等については、大都市に強く依存しており、若年層の流出や価値の画一化、コア経済である大都市への従属による自己決定能力の低下等の問題が生じている。
しかし、今後は、東京主導の雁行型発展ではなく、地域が個性的・自立的発展を遂げ、むしろ、地域もまた日本経済全体を牽引しうる活力を持つことが求められている。
このような観点から、さらに基礎的な都市機能を高めていくとともに、国際競争力をも備えた地域独自の突出した機能の創出と高度化を図る。
これを実現するための戦略的施策として、自立的発展を支える独自の産業・文化を持つ地域づくりを推進する。
2.自立的発展を支える独自の産業・文化を持つ地域づくり~自立型地域構造の構築~
地方都市の自立的発展を支えるためには、まず、地域の基本的需要が可能な限り自地域内で満たされることが適当である。しかし、それのみでは地域経済の拡大が望めないので、さらなる発展を実現するためには、基礎的な都市機能の高度化を図りつつ、突出した機能としての独自の産業、文化を持つ地域づくりを進めることが重要である。生活基盤についても、基礎的な機能の確保、地域の特色や地域間連携を活かした機能の高度化等により、その向上を図っていく。
このため、
- 安定的経済基盤の確立のための地域密着型産業の振興
- 内外の市場の競争激化に対応するための地域独自の突出機能の創出
- より高度な都市機能を享受するための生活基盤の向上
(1)地域密着型産業の振興
地域内に存在する商業やサービス業等地域完結性が高く、地域で生産された財・サービスの大半が同じ地域内で消費されるような地域密着型産業は、周辺環境の変化に直面しても、致命的な打撃を受けにくく、地域の安定的な経済基盤の確立に貢献する。このため、マーケティング等を通じ地域内のニーズを把握した上で、その担い手の確保、育成を図りながら、地域密着型産業を振興する。
① 地域内商業基盤の確立
ア 中心市街地の活性化による商業基盤の確立
地域住民の財・サービスの購入が、できる限り地域内で済ますことができるよう、地域内の商業基盤を確立する。
特に、近年衰退する傾向のあった中心市街地を再活性化する。このため、道路、駐車場、公園等の整備、用途混合型の市街地整備、タウンマネジメント機関(TMO)の設置や消費者ニーズへのきめ細かい対応等、ハード面、ソフト面の振興策に官民が協同して取組むとともに、商店街の新陳代謝の促進や組織力強化のための方策について検討を行う。
また、新たに商業集積の形成がなされる場合においても、開発の核となる者と行政が協同して、利用者の動向やニーズを把握し、緑地やアミューズメント施設との一体的整備等、地域のニーズに即した商業施設の個性的整備・運営を図る。
イ 投資を集中させることの必要性
地方都市では、その規模が小さくなればなるほど、活用できる投下資金量、人材等には限度がある。商業基盤を確立するための計画を立てるに当たっても、その地域の特性、関係者の意向等を踏まえながら、資本、人材等を集中して投下していくことが効率的である。
このため、振興策の策定や実現において地域の住民や企業の見識と能力を最大限に活用する観点から、地域の実情を理解し、その活性化の中心的な担い手となり得る者、民間団体等とよく協議し、その上で行政としての戦略的判断を迅速に下していくことが重要である。
② 福祉関連サービス等における創業
新たな地域密着型産業として、福祉関連サービス、環境関連ビジネス等の需要の拡大が期待できる。行政は、その地域における民間企業やNPOの参入、環境関連ビジネスの分野におけるPFIの活用等により、新しいサービスを出来る限り地域の新しい投資や雇用の拡大に直結できるよう、サービスの振興に努める。
(2)突出した機能による競争力の強化
地域が発展するためには、地域密着型産業のみならず移出産業の振興を図る必要がある。地域密着型産業と異なり、移出産業の振興に当たっては、地域の突出した機能を活用しながら、海外も含む他地域からの需要の確保を図ることが重要である。
このため、地域資源の有効活用、産業、文化、技術の創出の基盤となる知的インフラの整備、地域からの情報発信能力の向上、といった取組により、地域独自の産業を創出し、その競争力の強化を図る。併せて、内外の市場へのアクセスを容易にし、地域の財・サービスの効率的供給や生産要素の移入の円滑化を可能とする交通インフラの高度化や、内外からの企業誘致や投資を促進するための地域の生活基盤の向上を図る。
① 地域資源の有効活用 ア 観光資源、農林水産物、伝統文化・技術等の活用
地域の比較優位性を獲得するためには、その地域にしか存在しない独自の資源を有効活用することが効果的であることから、典型的な地域資源である観光資源、農林水産物、伝統文化・技術等を活用した先進的な取組に対し、戦略的な創業支援措置を講じる。
イ 既存の産業集積の再生
工場の海外進出等により、中核的な拠点を失い、低迷を余儀なくされている産地や企業城下町等については、長年の間に培われた技術力の集積を活用し、新たな活性化を図れるよう、企業誘致や創業への支援措置を講じる。
ウ リサイクル産業の振興
日本が技術的に大きな比較優位を持ち、廃棄物の再資源化を可能とするリサイクル産業については、有望な地域資源を持たない地域にとっても、国際競争力を獲得する上で有効な手段となり得ることから、モデル事業の設定やリサイクル資源搬入のためのインフラ整備等を通じて、その振興を図る。
② 突出した機能を生み出す文化的基盤の強化 ア 知的インフラの整備
地域が独自の産業を創出し、多様な知恵をいかしながらその付加価値を高め、振興を図っていくためには、創造的な担い手の育成や、その知的活動を支援する条件整備が必要である。このため、高度な情報通信インフラの整備により、情報の流通面における地域の不利性を解消する。また、地域における研究開発施設等の基盤整備を推進するとともに、地域の知的拠点である地元大学を中核とした産学官連携を推進し、研究開発成果の効果的な普及、実用化を促進する。さらに、奨学金制度の充実や、地元高校生を対象に地元大学及び専門学校の魅力についての積極的広報活動等を行うことにより、担い手となり得る技術を持った人材の育成を図る。
イ 情報発信機能の向上
地域が国外を含む広い市場の中で、地域の財・サービスの需要を確保するとともに、投資先や立地先として選択されるためには、地域からの情報発信を促進し、地域の認知度を高めることが前提となる。
このため、経済統計等地域情報の電子データベース化を推進し、他地域からの地域情報の入手を容易化する。また、地域産業の重点分野において、内外の専門家との交流やネットワークづくりに向けた取組みに対し、支援措置を講じる。さらに、地域番組作成、イベント開催等を通じ、表現に創意と工夫を凝らしながら、地域からの活発な情報発信を行うとともに、番組制作者等情報発信の担い手を育成する。 <
(3)生活基盤の向上
生活面について考えると、地方都市は、大都市に比較して、豊かな自然が残っている他、空間的ゆとりがあり、都市規模も小さいことから通勤等に要する時間が短く、日常生活とそのフットワークには恵まれた状況にある。
しかし、道路、下水道等の都市基盤施設の整備がなお不十分である他、教育、文化、娯楽、医療等について、より高度な都市機能を求めて、大都市まで出向いていくという状況もある。この結果、若年層の大都市への人口流出が生じ、都市機能の集積・高度化に限界を与えるという悪循環が生じているケースもある。
このため、地方都市は、周辺地域の拠点であるという性格に鑑み、日常の都市的生活を充たしうる基礎的な機能の確保を図る。地域によっては、周辺の中山間地域等に生活面の基礎的インフラを提供するという役割も果たす。
また、より高度な機能については、都市規模も勘案しながら、地域の特色を活かした重点整備を図るとともに、ネットワーク機能を活用した地域間連携を進めることにより、確保する。
① 基礎的な都市的生活機能の確保
地方都市においては、空間のゆとりから来る高い立地自由度等を最大限に生かして、都市基盤施設や住宅、商業・業務施設、福祉施設、文化施設等の更新、整備を計画的、効率的に進め、基礎的な機能の確保を図る。この際、既成市街地の再編等を通じ、安全でゆとりある生活空間を確保するとともに、諸機能のコンパクトな集積を図り、少子・高齢社会にふさわしい、安全性、快適性、利便性、効率性を確保する。また、新しい時代における基本的インフラとして、グローバル化した高度な情報通信ネットワークの整備を推進する。
② 地域の特色と地域間連携を活かした機能の高度化
高度で専門的な教育施設、文化施設、医療施設等について、これまでに地域に蓄積された技術、芸術、人材等を活かした分野を優先的に整備する。また、商業、広域レクリエーション等については、文化遺産や自然環境等、地域の特色ある資源を活用して、地域の突出した魅力を創出する。
また、教育・研究開発施設等について、近隣の地域間で共同して整備する他、既存の施設についても、相互利用や共同運営を推進する等、ネットワーク機能を活用した地域間連携により、機能の高度化を図る。
さらに、大都市における高度な教育、文化、娯楽、医療等の機能や、各地の様々な特色ある機能については、交通・情報通信のネットワーク機能を最大限に活用した地域間の相互補完的な機能分担により、その享受を可能とする。
第4章 中山間地域等のあるべき姿 1.あるべき機能と今後の戦略的施策
中山間地域等は、古来より、様々な人々の働きかけや負担によって形成・維持され、「都市の里山」として国民全体が共有する財産となっていることから、今後とも、その食料安定供給機能と農林漁業活動が行われることにより生ずる国土・環境保全等の多面的機能を適切かつ十分に発揮していくことが重要である。併せて、都市との連携を始め、広域連携、機能分担も視野に入れつつ、生産基盤及び生活基盤を効率的に整備する等、十分な利便性を確保することが必要である。
このため、人々が定住しうるに十分な稼得機会としての産業体制、物流体制等の確立、中山間地域等に住むために必要な生活支持機能の確保、国民レベルでの多面的機能への理解の促進が不可欠である。
これを実現するための戦略的施策として、意欲ある人材の確保・育成、突出機能を有する地域資源等を活用した独自の産業の創出、生活支持機能の効率的な整備・向上、集落の再編整備等による集落機能の強化と多面的機能に対する国民意識の醸成等を推進し、持続的な地域社会を再生する。
2.多面的機能の永続的な発揮を可能とする中山間地域等の活性化策
~持続的な地域社会の再生~
(1) 意欲的な人づくり
中山間地域等が活力あふれる展望を切り開くためには、まず、地域の良さを認識し、地域の課題に積極的に取り組んでいく意欲ある担い手を広範に確保・育成するとともに、地域の構想づくりや各般の取組みに活用していくことが戦略上の要となる。
① 多様な担い手の確保・育成 ア 地域の人材活用と条件整備
中山間地域等の具体的な将来展望を描き、それを着実に実行していくため、地域の集落組織、農業生産法人、地場産業等の様々な分野で活躍する者が、地域リーダーや地域コーディネーターとして、市町村等の地域活性化方策の策定や実施に参画することを促進する。
併せて、地域経済において重要な役割を果たす農林水産業、地場産業等の担い手、後継者を安定的に確保するとともに、これらの者がリスクを踏まえて自己決定できる「経営者」となるために必要な各種の研修、海外視察等に対する支援措置や資本装備、技術向上等経営全般にわたる支援策の体系的な整備を促進する。また、地域の個性的な生産・生活技術や知恵を有する女性や高齢者も重要な地域の担い手である。こうした者の活動を支援するため、地域の子育て支援体制の整備、農協等におけるホームヘルパーの養成や公共施設等のバリアフリー化等を推進する。
なお、不足しがちな地域組織の人材をフレキシブルに活用する観点から、農協、農業委員会、農地保有合理化法人等異なる組織間における連携、職員の兼任等の取組みを進める。
イ UJIターン等の居住・受入れ等の推進
近年、自己実現を目的とした就業、生活の場を求めて、新規就農者や芸術家、文化人等様々な職業を持つ者が都会を離れて農山漁村に居住するケース、自然の豊かさや心身の安全と安心を求めて、退職者等が中山間地域等に定住するケースが多々みられる。
このような地域、産業等の分野を超えた多様な担い手が、経営力等の知恵や技術等を十分に発揮できる場を整備する必要がある。このため、UJIターンの希望者に対する居住、研修、就業の支援を行うとともに、相談窓口の拡充等国内外に向けた情報提供体制を整備する。また、これらに取り組むNPO、ボランティア等に対する支援体制の充実を図る。
さらに、平日は都市に居住し、週末を中山間地域等で過ごす定期居住者や交流者の持つ専門的な知識等をムラづくりに活用するための受け皿として、これらの者に対する空き家等の斡旋、宿泊施設、集会施設等の整備、地域住民との交流会の開催等を行う。
② 担い手づくりに向けた体制整備
地域の関係機関が適切な役割分担を行いつつ、担い手づくりを総合的に支援するため、地域経営を担うリーダー、農協、都道府県、市町村と地域の高校、大学、研究機関等が連携して、地域資源の発掘とその活用方法に関する共同研究や自然条件等に対応した生産、加工、販売の技術開発とこれらについての研修、訓練等を行う等の新たな産学官連携体制の構築を進める。
また、国内先進地や海外からの研究者、技術者等の招へいによる交流会等を通じて情報交換の場を提供するとともに、これらの企画立案、運営に地域の担い手が参画すること等を積極的に促進する。
さらに、地域農業を担う農業生産法人について、流通、加工業者や消費者グループ等農業関係者以外の者が構成員となれるようにする等の関連制度の見直しを行い、活性化を進める。
(2) 個性的な産業づくり
中山間地域等は、食料生産の場だけではなく、地域の人々が働き、生活する場でもあり、地域に居住する住民の十分な稼得機会を確保することが必要である。
このため、既存産業の活性化を図るとともに、新たな就業の場として、地域独自の新たな産業の創造やベンチャー企業等の誘致を促進する。
なお、個性的な産業づくりを行うに当たっては、自由度の高い産業活動のベースとなる地域資源の効率的な利用、景観の保全や伝統文化の維持等の多面的機能の発揮、これらに必要な社会資本の計画的な整備を図ることが重要である。このため、長期的な土地利用の視点から、現行制度を有効に活用しつつ、地域毎の土地利用計画を住民参加の下で策定し、同計画に基づき、農林水産業、商工業等の振興に必要な生産基盤と、生活基盤の整備を行う。
① 既存産業の活性化 ア 活力ある農林水産業等の展開
集落営農、農業生産法人、第三セクター等の多様な経営形態により、多彩な気象条件や地域資源を活用した高付加価値型、高収益型作目の導入や間伐材を利用した商品開発等、独自の農林水産業の振興を図る。この際、マーケティングを支える需給情報の収集やアンテナショップ等の積極的活用を進めるとともに、生産だけではなく、加工・販売部門への進出や消費者との交流等、川下部分までを含めた事業の多角化・総合化を図る等の取組みを推進する。
イ 地域資源等を活用した産業の振興
地域に賦存する特徴的な資源の発掘や伝統文化の再発見、保存を進めるとともに、歴史的な建造物・街並みや史跡等地域固有の文化財の保全、活用や関連施設の整備を促進し、これらを活用した内発型の地場産業を振興する。このため、地域活性化アドバイザーやコンサルタント等を活用して、経営・技術の高度化を図りながら、加工食品、伝統工芸品等の特産品づくりや新規需要の開拓を積極的に進める。
また、意欲ある女性、高齢者による起業活動に必要な情報の提供、技術研修の実施、施設の導入の円滑化等の支援を行う。
② 新たな産業の創造 ア 総合観光産業の構築
交流人口の拡大により地域の活性化を目指す等の新たな視点から、農林水産業をベースとした地域文化、自然環境及び景観を適切に保存し、これらを観光資源とする拠点づくりを地場の独自産業の振興と一体的に展開することにより、国際的競争力を有する総合観光産業を構築する。その実施に当たっては、近隣市町村のハード施設とソフト技術の有効活用、様々な観光資源を活用した広域的、回遊的な観光拠点、十分な投資効果の上がる観光周遊道路等の整備や広域周遊地図の作成等について周辺市町村間の連携を推進する。
また、これに必要な観光リーダーを育成するため、内外の先進地域における研修・視察や実績のある観光学科等への留学等を通じた経営者能力の向上を図る。
イ 地域資源等に着目した新たな産業の展開
地域特産物の処理技術等を活用した農産物や食品残滓等の有機性資源の飼・肥料化、家畜排せつ物を原料とした肥料化・バイオガス化等によるリサイクル産業、島しょ部等の地勢等を活用した風力発電、木材等の生物資源を活用した発電(バイオマス発電)等の次世代型環境産業を推進する。
さらに、自然環境や安価な土地を活用して、立地自由度の高い情報通信関連の研究機関、工場等の知識集約型企業や高齢者介護、福祉等を行うベンチャー企業等を積極的に誘致するほか、森林体験産業等の起業化を促進する。
このため、高い成長が見込まれるものの、研究開発のリスクが大きいプロジェクトや、産学官が共同で行う研究開発、研修に対する支援措置を講ずる。また、これらの取組みを積極的に支援するNPO等の活動を促進する。
(3)生活支持機能の確保
中山間地域等において、就業、定住したいとする意欲を喚起する必要条件として、上下水道、医療福祉施設、教育施設、文化施設、交通・情報通信施設、住宅、商業施設等の生活基盤的施設の整備による生活支持機能の向上が挙げられる。しかし、過疎が進んだ地域を含めた全ての集落に全ての施設をフルセットで整備することは、利用の面からみても非効率である。
従って、可能な限り施設を中心地に集約化する等効率的に配置するとともに、その広域連携、機能分担を進めることと併せて、交通手段や情報通信等のネットワークを整備し、十分な利便性を確保することが重要であり、例えば以下のような視点を踏まえる必要がある。 (交通インフラ)
- 地域連携による公共施設等の共同利用や、就業の場と居住の場の自由な選択を可能とする交通網等の整備
- 交通弱者である高齢者、児童等の安心安全を確保する車道と歩道の分離や地域巡回バス等の整備
(情報通信インフラ)
- 地域コミュニティの結束力を高めるとともに、国の内外に対して地域の認知度を高める情報発信機能の整備
- 地域に居ながらにして国内外の情報を瞬時かつ容易に入手できるハード、ソフトの整備
- 画像情報等の送受信を活用した都市と遜色のない高水準の医療サービス、教育サービスの享受や在宅勤務等を可能とする情報通信システムの整備
(消費インフラ)
- 郵便局、農協等による、日常生活に不可欠な「よろず屋」的機能を確保するためのコンビニ的施設の設置や在宅福祉支援サービスの供給等既存組織の効率的活用
(4)集落の再編整備等と多面的機能に対する国民意識の醸成等
中山間地域等は、食料の安定供給の機能に加え、農林漁業を中心とした生産活動を通じて、国土・環境保全等の多面的機能を発揮している。今後とも、このような多面的機能が適切かつ十分に発揮できるような国民レベルでの取組みが必要である。
① 集落の再編整備等による集落機能の強化
中山間地域等が適切な農林漁業活動を通じて維持している国土・環境保全等の多面的機能の持続的な発揮を可能とするためには、集落組織を主体とした地域資源の維持管理活動が不可欠であるが、高齢化・過疎化の進行等により集落機能が低下している。
このため、連携や統合等の集落の再編整備を推進することにより、効率的な集落活動、行政サービスの向上等を通じた集落機能の強化を図るとともに、これに必要な支援措置を講じる。
その際、少子高齢化等の潮流の変化を踏まえ、効率的な集落整備を行うため、地方公共団体や関係者の協力の下、存続の是非をも視野に入れた集落の将来展望を策定していく必要がある。
② 多面的機能に対する国民意識の醸成とその発揮に向けた取組み
「都市の里山」として存在する中山間地域等が有する多面的機能は、国民全体が共有する財産であり、こうした意識を国民の間で醸成することが重要である。このため、これら多面的機能が国民に正しく理解され、適正に評価されるよう多面的機能の定量的評価方法の検討や情報提供、普及活動を促進する。
また、国土・環境保全等の多面的機能の永続的な維持、発揮のためには、農林漁業等最も効率的なシステムを研究、構築する必要がある。このため、森林と農用地が混在した地域における農林地の一体的な保全整備、耕作放棄の発生を未然に防止するための生産基盤整備と農地の利用、管理体制整備の一体的促進を図る。さらに、耕作放棄の防止等を内容とする協定を結んだ農業者等に対する直接支払いを実施する。この場合、地域資源の維持管理を行うことを促進する観点から、地域の実情に応じて農業者とともに第三セクター等を対象者として認めていくこと等が必要である。併せて、関係省庁の連携の下、不在村地主が所有する土地を含めて、遊休化している土地の有効利用を図るための方策を検討する。
さらに、都市住民と地域住民が共同で行う里山林等の形成・維持等のグリーン活動に対するボランティア休暇制度の導入等の支援を行うとともに、下流域が基金を造成する等の費用負担により上流域の森林を整備・管理する等の上下流連携の取組みを推進する。
③ 都市との交流・連携・共生の促進
古来より、様々な人々の働きかけや努力により維持されてきた中山間地域等に存在する美しい自然環境、農山漁村の景観等は、都市住民にゆとりと安らぎを提供している。しかし、これらの多面的機能は、人口の減少等により地域社会の維持が困難になっていることや、いわゆる乱開発等により大きく損なわれつつある。多面的機能とその重要性について、都市住民の理解と、その維持・修復に対する支援を得るとともに、これを地域の側からも支えられるよう、都市と地域の交流、連携や共生を積極的に推進する。
このため、農山漁村におけるグリーンツーリズム、ブルーツーリズム等の推進や、家族キャンプ村等観光基盤の整備を通じて、都市と地域の交流を深める。また、長期的な交流等を確保する視点から、都市住民と地域住民等の共同出資による参加型のふれあい体験・宿泊施設等の整備手法の普及、優良田園住宅(セカンドハウス等)の整備等による定住や定期居住の促進を図る。一方、都市においても、顧客ニーズの発掘と新市場やチャンネル創造のために産直販売施設、アンテナショップや農業テーマパーク等の交流拠点の整備を推進する。
さらに、幼少期から自然や農林漁業の体験を通じて、国土・環境保全等の重要性に対する意識を醸成するとともに、創造性、思いやりや社会貢献の精神を育むため、関係省庁、地方公共団体、農協等関係機関が連携しながら、小中学校における自然体験学習、農林漁業体験学習等を促進する。
第5章 21世紀型社会資本整備
1.基本的考え方
今後の社会資本整備は、大都市、地方都市、中山間地域等のあるべき姿の実現を支援するための基盤整備を担うものでなければならない。
ここでは、21世紀型社会に対応して、多様な知恵の活用が促進され、少子高齢化や環境制約の中で持続可能な社会の形成を支えるという視点から、国と地方との適切な役割分担と連携の下に、優先的・重点的に整備すべき社会資本分野を明確にする。
また、そのような21世紀型社会資本の整備を効率的に進めるために、時代の変化や事業環境の変化に迅速かつ柔軟に対応できる整備・運営システムを構築する。その際、社会資本整備の目標を、これまでの単なる施設整備としての「公共投資」から利用者の視点に立った「公共サービスの提供」へと改めるとともに、社会資本整備に施設建設後の「運営」あるいは「経営」の要素を含める。すなわち、従来においては社会資本の量的充足、いわばハード中心の施策に主眼が置かれていたが、今後は、事業評価の充実やアカウンタビリティの向上、既存社会資本の有効利用等ソフト施策を重視した展開を推進する。
2.社会資本整備における国と地方の役割分担
社会資本整備を進めるに際しては、効率的な事業の推進と個性豊かで活力に満ちた地域社会の実現を図る観点から、国の役割を見直した上で、地方公共団体にゆだねることが可能なものはできる限りゆだねることが必要である。国の事業は全国的な見地から必要とされる基礎的又は広域的事業(技術的に先駆的な事業等を含む。)に限定し、その他の事業は地方公共団体にゆだねる。また、限られた財源の中で住民の受益と負担の対応関係をより明確化し、事業の取捨選択や優先順位を明確化するなど、地方の自己決定能力と自己責任の強化を図る。
3.21世紀型社会資本整備の優先整備分野
社会資本が21世紀初頭には全体としておおむね整備されることを目標とする「公共投資基本計画」の考え方を踏まえつつ、限られた財源を最大限に有効活用する観点から優先的・重点的に整備すべき分野を21世紀型社会資本として明確化し、必要な基盤整備を速やかに推進する。このため、このような21世紀型社会資本を将来社会に対応した以下の3つの柱に即して明確化する。
① 多様な知恵の社会を支える社会資本
② 少子・高齢社会にふさわしい社会資本
③ 環境にやさしい安全な持続的発展社会を支える社会資本
(1) 多様な知恵の社会を支える社会資本
高度な情報通信技術に支えられたネットワーク型の構造を基盤とする多様な知恵の社会に対応するため、政府・企業・個人による積極的な情報発信と迅速な情報交換に資する高速・大容量の情報通信ネットワークの構築を促進し、その利用環境を整備する。
また、国や地方公共団体の提供する公共サービスの情報化を進め、効率性や利便性の向上を図る。
さらに、我が国社会の国際競争力を強化し、世界各地から知恵・情報・資金を集めるため、物流・人流の効率化・円滑化と、生活基盤の向上を図る。
① 情報通信ネットワークの整備
ア 高速・大容量の情報通信ネットワークの形成
市場経済の原則に基づき、グローバルに展開するインターネットの速度の向上とコストを低減するため、通信ケーブルの光ファイバー化と接続中継点における各種情報通信機器の高度化を進め、日本列島の中核に世界最大級の高速・大容量を持つ情報通信ネットワークの形成に努める。
イ 国土情報スーパーハイウェイの構築
民間主導の情報通信ネットワーク整備に要する時間の短縮とコストの削減を図るため、公共空間の有効活用という観点から、道路、河川、下水道等社会資本と民間光ファイバーとの一体整備による国土情報スーパーハイウェイを構築する。
ウ 技術開発の支援と競争環境の整備の推進
次世代インターネットや高速・大容量の通信が可能な衛星通信等に関する技術開発への積極的支援を行う。また、技術革新の成果が広範に活用できるように、通信分野への多様な主体の新規参入を促進するための規制緩和等競争環境の整備を推進する。
② 公共分野の情報化
ア 電子政府とワンストップサービスの実現
高速・大容量の情報通信ネットワークや情報通信技術等を活用し、積極的に国や地方公共団体等の電子政府化を進める。このため、すべての国・地方公共団体等がインターネット上にホームページを開設し各種情報を公開するとともに、申請、届出等手続の電子化を推進する。また、パソコン又は身近な場所で各種の行政サービスを総合的・複合的に行うワンストップサービスを推進するとともに、各種の行政手続、行政情報の提供等のサービスについて郵便局等の国の出先機関の施設等身近な場所を活用する。
イ スマートインフラの整備
交通関連社会資本を情報通信関連技術と融合し、スマートインフラとして効率的・整合的に計画・整備・運営する。具体的には、ETC(ノンストップ自動料金収受システム)等の多様なサービスに対応したスマートウェイ(知能道路)等ITS(高度道路交通システム)の整備、公共交通の利便性を高める汎用電子乗車券の実用化や、商取引・物流の効率化に資するEDI(電子データ交換)の普及等を積極的に推進するとともに、これらの情報通信システムの相互連携が促進される環境を整備する。
③ 国際競争力強化のための基盤整備
ア 国際交通体系とアクセスの整備
国際的な規模と機能を有した競争力の高い国際空港、国際港湾等の国際拠点の整備を進める。また、高規格幹線道路、地域高規格道路、高速鉄道等の整備による国際拠点へのアクセスの強化を進めるとともに、国際拠点の24時間化を総合的に進めることにより利便性を向上させる。
イ 快適な生活基盤の整備
外国から優れた企業や人材を誘致するためには、生活条件・勤務条件の国際競争力が必要である。このため、国際都市として遜色のない水準の道路、公園、下水道、河川、住宅、文化施設や情報通信施設等の整備、外国人子女教育の充実など生活基盤の整備を図る。また、記号等を利用し、より分かりやすい標識の設置を進めるとともに、道路番号の体系的な整理について検討し、外国人等が不案内の土地でも安心して運転できるようにする。同時に、利便性の向上を通じて地域間の交流の促進に資する。
(2) 少子・高齢社会にふさわしい社会資本
人口減少期においては社会資本の質的向上に視点をおきつつ、社会全体の生産性の向上と安心で快適な生活環境の形成に資する社会資本を整備する。
① 社会の生産性の向上
社会の生活、運営コストを引き下げ、経済社会全体の生産性の向上を図る。通勤時間等移動時間の短縮のために、大都市圏の都市鉄道における新線建設や複々線化と、バイパス・環状道路の整備、踏切の連続立体交差事業等の交通容量拡大策を推進する。併せて、ソフト面の対策として、時差通勤・相乗りの促進、パークアンドライド(自家用車と公共交通機関の乗り継ぎ利用)、トランジットモールの導入等の交通需要マネジメント施策・マルチモーダル施策等の総合的な対策を進める。
また、社会資本の整備とそれに併せた規制緩和、情報化・標準化等の対策により物流の効率化を進める。
② 安心で快適な生活環境の形成
ア 歩行空間・公共空間のバリアフリー化とユニバーサルデザイン化
高齢者、障害者、子供等の交通弱者に安心を与えるように、幅の広い歩道の設置や段差の解消、公共交通ターミナルなどにおけるエレベーターやエスカレーター等の設置により公共施設のバリアフリー化を進める。また、交通安全施設の整備や電線類の地中化を通じて安全で快適な歩行空間を確保する。さらに、公共施設や情報機器等について可能な限り改善や特別な設計を必要とすることなく、すべての人々にとって使いやすい設計とするユニバーサルデザイン化を進める。
イ 高齢者等への支援の充実
寝たきり状態等要介護状態の発生を極力防止するとともに、介護を必要とするに至った場合でもできる限り住み慣れた家庭、地域で安心して生活できるよう医療福祉サービスの質的・量的な充実を図る。このため、介護利用型軽費老人ホーム(ケアハウス)等地域に密着した社会福祉施設等の整備を推進するとともに、情報通信技術を活用した医療システム等に対する技術開発を支援する。また、子育てをしながら働きやすい環境整備として、就業環境の整備と併せて、保育所等について駅前等利用しやすい立地での整備と公的賃貸住宅等との一体的整備を推進する。
ウ 防災対策の充実
高齢者等災害弱者が自然災害・事故災害から生命・生活を守れるよう、防災拠点や防災公園等の整備を推進するとともに、学校、公民館等の施設との連携を進め、地域住民の啓発や訓練を進める。
(3) 環境にやさしい安全な持続的発展社会を支える社会資本
21世紀とその後の社会を後の世代にも配慮した環境負荷の少ない循環型社会とし、持続可能な発展を実現することが求められている。このため、これまでの大量生産・大量消費・大量廃棄型の「使い捨て社会」から「ごみゼロ社会」に転換するとともに、環境にやさしい交通体系の形成と、良好な環境の保全と形成を進める。また、持続可能な経済社会を形成するために安全な国土を効率的に構築する。
① 環境との調和
ア ごみゼロ社会の実現
廃棄物循環型のごみゼロ社会を実現するために、廃棄物の発生をできるだけ抑制しつつ広域的な廃棄物処理とリサイクルが一体となった循環型システムを構築する。このため、再利用可能物の需給情報データベースの整備を進める。また、一般廃棄物処理施設やリサイクル関係施設等を整備する地方自治体を支援するとともに、PFI方式等による効率的な処理体制を推進する。
イ 環境にやさしい交通体系の形成
地球温暖化対策として、二酸化炭素の排出の少ない交通体系を形成する。このため、低燃費車、電気自動車等の低公害車の普及を促進するとともに、鉄道・バス・路面電車等の公共交通機関の利用促進、バイパス・環状道路の整備等による交通渋滞の緩和、鉄道・内航貨物輸送の推進(モーダルシフト船の建造促進等)、駐輪場の整備等による自転車の利用促進等を進める。
また、交通騒音等の防止のため、交通流対策、道路構造対策や緩衝緑地等の整備を進める。
ウ 良好な環境の保全と形成
社会資本の整備に際しては、地域の歴史・文化・風土や自然環境と調和した美しい景観の形成や生態系の維持に配慮する。また、積極的なアメニティの確保や、健全な水循環系の構築を進めるとともに、緑化空間や水辺地、生物生息空間等を整備する多自然型社会資本等の整備を進める。
さらに、歴史・文化・風土や自然環境の保存に当たっては、地域の地場産業や観光産業などの活性化の視点を考慮したり、歴史的に優れた建造物・街並みの保存と他の建造物との調和に配慮した一体的整備を図るなど効率性の確保にも留意する。具体的には、保存等の対象、それに要する時間と費用、住民の参加・協力の方法等について情報公開した上で、保存方法等についての早急な合意形成を図る。
② 安全な国土の構築
ア 防災対策の促進
治山・治水施設、海岸保全施設等の国土保全施設を整備するとともに、避難路、避難地、緊急輸送道路、河川舟運路、延焼遮断帯等の体系的整備、防災安全街区の整備、大河川における堤防の安全性の向上、火山噴火活動等の災害に対応する防災施設の整備等を図る。また、高度情報通信技術を活用した災害に関する情報の収集・提供を進める。
イ 効率的な国土と環境の保全手法の検討
災害を防ぎ、被害を最小限にとどめるための施設整備に加えて、危険地域における規制等を通じた国土と環境の保全の効率的な手法を検討する。
ウ 首都機能移転の検討
首都圏の防災性の向上を図る。首都機能移転は、大規模災害時に復興の司令塔となる首都機能と経済の中枢との同時被災を免れることや移転跡地を活用した市街地の防災性向上を通じて、災害対応力の強化に資することから、その具体化に向けた積極的検討を進める。
4.社会資本整備・運営システム
21世紀型社会資本の整備を効率的に進めるために、経済社会情勢や国民・住民のニーズの変化等事業を取り巻く環境の変化に対し、迅速かつ柔軟に対応できる「感度の良い」システムを構築する。その際、社会資本整備の目標を、これまでの単なる施設整備としての「公共投資」から利用者の視点に立った「公共サービスの提供」へと改めるとともに、社会資本整備に施設建設後の「運営」あるいは「経営」の要素を含める。今後は、事業評価の充実やアカウンタビリティの向上、既存社会資本の有効利用等ソフト施策を重視した展開を推進する。
(1)事業評価の拡充
透明性・客観性を高め効率的・効果的な社会資本整備を可能とするため、費用対効果分析を含めた総合的な事業評価を充実する。
① 新規事業評価と再評価の拡充
新規採択時の評価及び事業採択後の再評価を適切に実施するとともに、地方公共団体等においても積極的に実施する。また、費用対効果分析などの分析評価手法について、改善を図りつつ統一的な運用を確立する。さらに、再評価においては、学識経験者等第三者から意見を聴取する仕組みを確立する。
② 事後評価システムの導入
事業の必要性や効果等を確認し、今後の類似事業に活用するために、事業完了後の事後評価システムを導入する。
③ 定性的な項目の客観的評価
事業評価において、安全性や環境保全等定性的で数値化し難い要素について極力定量的な分析に努める。
(2)時間管理概念の導入
これまで、事業評価制度や建設コストの縮減等により、事業の効率化が進められてきたが、時間的効率性を意識した事業促進の取組みは十分でなかった。今後は、事業の時間的効率性を向上させるため、事業の遅延がもたらす時間的損失を算出し、その公表を通じて情報の共有化を進め、行政機関同士の調整や関係者との調整の促進を図ることとし、そのための制度を検討する。また、土地については、公共の福祉を優先させるという土地基本法の理念の下に、事業を円滑に実施するために、必要に応じて、土地収用制度の積極的活用を図る。なお、事業の入札時に、工期を加味した総合評価方式を積極的に採用する。
(3)PFIの推進
民間の技術力、経営力及び資金力を活用したPFI(Private Finance Initiative)を推進するため、PFIの認知が不十分な地方公共団体等への普及・啓発活動を推進するとともに、廃棄物処理施設整備等国民のニーズが高く、民間事業者にとって収入を確保しやすい事業をPFI事業の先例として積極的に実施する。
(4)アカウンタビリティの向上と幅広い国民関与の促進
多様な地域の意向を的確に反映した社会資本整備を進めるために、事業の内容を詳細に公表すること等を通じてアカウンタビリティ(説明責任)の向上を図るとともに、幅広い関係者からなる国民関与を促進する。
① PI方式・NPOの活用
計画段階から、住民を始めとする幅広い国民各層の社会資本整備への関与を深めるため、多様な広報活動や公聴会等を通じて積極的に情報と意見の交換を進めるPI(Public Involvement)方式を活用する。
また、行政がくみ取りきれない住民の声を代弁し、行政に対し積極的に提言するNPOの主体的参加が図られるように、情報交換のための拠点整備等により活動を支援する。
② 社会実験の推進
社会的に大きな影響を与える可能性が高い新しい施策の導入に当たっては、関係者や住民の参加のもと、場所や期間を限定して試行・評価する社会実験を積極的に実施する。
③ 公共サービスの目標の定量化と住民満足度の把握
社会資本整備の立案に際し、公共サービスの成果指標を設定し、目標を極力定量化した上で、その達成状況を定期的に公表・管理する。また、社会資本の整備水準や公共サービスの提供内容等について、苦情や意見の受付窓口の設置やアンケート調査等により、利用者である住民の満足度を継続的に把握する。
④ 社会資本の状況の把握
様々な技術的問題はあるものの、諸外国において貸借対照表の作成など企業会計的要素の導入が試みられていることにかんがみ、我が国においても社会資本等資産と負債をどのように示すことができるのかに関し、企業活動に比較的近い活動を行っている公的企業をはじめとして、検討を進めていく。
⑤ 情報公開の徹底
社会資本・公共サービスの現状、施策の取り組み方針等のほか、公共事業の計画や事業評価のための手法・データ・結果等を含めた各種の情報については、社会資本整備の事業主体から国民に対して適時に積極的な情報公開を行う。
(5) 事業間連携の強化
空港、港湾とそのアクセス道路等異なる社会資本間の調整や類似事業の重複投資の防止により効率的な社会資本整備を進めるため、省庁や地方公共団体の枠を越えた適切な連携を強化する。
① 行政機関相互間の連携・調整体制の整備
国の行政機関相互間、国と地方公共団体間そして地方公共団体相互間において、長期的な計画の策定段階から社会資本整備に関する連携・調整体制を整備し、広域的な計画の策定等により事業の効率性の向上を図る。
② 地域間連携の推進
一つの地方公共団体でフルセットで施設を整備するのではなく、交通・情報通信インフラ等ネットワーク型社会資本の整備等を通じ、地方公共団体間で機能を分担した地域連携を進め、施設の共同整備や相互利用を進める。
(6) 既存社会資本等の有効利用 ① 適切な維持更新等
これまで蓄積されてきた社会資本ストックについて、機能が十全に発揮されるよう適切な維持更新に努める。この際、少子高齢化等に対応して、施設の廃棄や他の用途への転換等も選択肢とする。
② ライフサイクルコストの評価
施設建設後の維持管理が大きな負担にならないように、当初の建設費のみならず長期にわたる維持管理費を含めた社会資本のライフサイクルコストの把握に努め、その結果を公表しつつ、事業の評価に活用する。また、施設の効率的な運営を見据えた設計を行うとともに、運営を適切に行えるような人材を確保する。
③ 利用の平準化
社会資本の利用を平準化することで既存施設の有効利用を進める。このため、道路交通の渋滞緩和のための交通需要マネジメントや道路交通情報の提供、鉄道による通勤の混雑緩和のためのオフピーク通勤(時差通勤)等の施策を推進する。
④ 住宅ストックの有効利用
公的融資、税制等の活用によりリフォーム、建替えなど住宅ストックの有効活用を図るとともに、新たな施策として、住宅履歴情報の整備等により中古流通市場の活性化を図る。
第6章 地域経営システム
1.基本的考え方
21世紀の地域社会が、様々な制約要因の高まりの中で、自立的・効率的に地域内の諸機能を高めていくためには、地域の自己決定能力と自己責任を強化することが必要である。
このため、国から地方への権限委譲や、国庫補助負担金の整理・合理化と統合補助金化を徹底的に進め、地方公共団体が地域の実情やニーズに応じたきめ細かい行政が行うための条件を整備する。これと併せて、地方自主財源の拡充等により、地方公共団体の行政サービスと住民の地方税負担との関係の明確化を図り、地域の自己決定能力と自己責任を強化するとともに、行政サービスの効率化を促進する。
また、地域住民の生活圏域拡大への対応と行政サービスの効率化を目的に、地域間連携や行政の広域化を推進する。
さらに、独創的で魅力ある地域づくりを推進するため、住民をはじめとする利害関係者やNPOの地域づくりへの積極的参加とその合意形成を促進する。
2.地域の自己決定能力の向上
(1)課税自主権の尊重と地方税の充実確保
地方税について、地方における歳出規模と地方税収入との乖離をできるだけ縮小するという観点に立って、課税自主権を尊重しつつ、その充実確保を図る。
また、今後、地方分権の進展に伴い、国と地方公共団体との役割分担を踏まえつつ、中長期的に、国と地方の税源配分のあり方についても検討しながら、税源の偏在性が少なく、税収の安定性を備えた地方税体系の構築について検討する。
(2)国庫補助負担金の整理・合理化と統合補助金の創設
国庫補助負担金の整理・合理化を積極的に進め、存続する国庫補助負担金についても、その運用・関与の改革を進める。公共事業については、個別補助金を交付する事業を限定するとともに、統合補助金を創設し、地方公共団体に裁量的に施行させる。
(3)地方債発行に際しての環境整備
地方債の発行について、許可制度から協議制度への移行が予定されており、これに伴い、市場における地方債の発行条件の改善等を図る観点から、
- 償還財源としての地方税財源の充実確保
- 地域住民に対する情報開示の充実
- 地方債の共同発行促進等による流通性向上
3.地域間連携と行政の広域化の推進
(1)地域間連携の推進
複数の地方公共団体が共同利用することが適当な施設についての共同整備、既存施設の地方公共団体間での相互利用、事業の共同運営等、地方公共団体間の連携を推進する。また、その推進に資する目的から、交通・情報通信インフラ等のネットワーク型社会資本の重点的整備を図る。
この他、行政サービス供給の効率化のために、郵便局等地域の公的機関の有効活用にも留意する。
(2)行政の広域化の推進
地域の実情や住民のニーズを最も的確に把握できる基礎的自治体の役割が重要になってきていることにかんがみ、地方交付税における激変緩和措置や、合併後のまちづくり支援のための財政措置の拡充等により、市町村合併を推進し、市町村の行政体制の整備を図る。この他、広域連合等の広域行政制度の活用を図る。
さらに、中長期的には、市町村の機能強化を踏まえ、都道府県合併も視野に入れて、都道府県の持つべき機能とその機能にふさわしい適切な規模について検討する。その上で、道州制の意義について幅広い観点から検討を行う。
4.参加の拡充
地域のアイデンティティーを高めるような独創的で魅力ある地域づくりを推進するためには、その担い手となる人材の育成を図りつつ、住民をはじめとする利害関係者やNPOの地域づくりへの積極的参加とその合意形成を促進することが必要である。
このため、広報活動や十分な情報公開を通じ、アカウンタビリティ(説明責任)を向上させるとともに、公聴会開催や情報交流のための拠点整備等、住民等の声を幅広くくみ取るための措置を講じることにより、行政と住民等との間で、情報の交流と共有を強化する。また、住民やNPO等の地域活動に対する支援措置を講じる。さらに、住民、企業の自発的な寄付行為等を通じた地域づくりへの多様な関与の途を開く。
また、住民等の価値観の多様化等に伴い、合意形成に至るまでの住民間の利害調整は、近年一層難しくなっている。こうした状況に対応するため、行政の適時の対応と判断や、地方議会における幅広い住民等の意思の提示、活発な議論及び迅速な決定が必要となる。さらに、高い識見を有する専門家による調停や住民投票のあり方も含め、調整の手法について幅広い検討が求められる。
5.21世紀の地域コミュニティ
歴史とともに、個人の帰属先となるコミュニティも、様々な変遷を経てきた。近代産業が興る以前は、血縁や地縁を基盤とするコミュニティが、代表的な帰属先として、防災など地域の安全確保、祭りの開催など文化・娯楽の提供といった、様々な機能を果たしていた。
その後、産業が発展して行く中で、「会社中心主義」、いわば職縁によるコミュニティが台頭し、都市部を中心に「会社」が代表的な帰属先となった。終身雇用制、会社による福利厚生の充実と労働時間、通勤時間等拘束時間の拡大とが相まって、個人の生活が会社中心的になり、地域への帰属意識は希薄化したため、地縁によるコミュニティの機能は衰退していった。
歴史的潮流変化の下で、コミュニティのあり方も、個人の意思や選択が最大限に尊重され、自己実現が可能となるような新たな姿が求められている。即ち、文化活動、娯楽活動、スポーツ、NPO活動等に見られるような、好みや趣味、志の縁により個人が緩やかに結合し、かつ開放性の高い、新しいタイプのコミュニティの重要性が増してきている。様々な都市機能のコンパクトな集積と高度な交通・情報通信ネットワークの構築を通じて、「時間」のゆとりが確保されるとともに、多様な交流や様々な情報の受発信が促進されることにより、個人は、こうしたコミュニティへの参加意欲が向上し、より積極的に関与するようになる。
また、従来、地域コミュニティが有していた防災等の機能については、重要ではあるが、今や自然発生的に醸成されるのを待つのは難しい。むしろ、積極的に、「自主防災組織」の育成、強化に取組む必要があるが、日常から相互の意思疎通が円滑な地域においては、より災害対応力が高いものと考えられる。
このように、21世紀において、個人は、その自己実現を図るために、単一のコミュニティに全人格的に帰属するのではなく、家族、地域、会社、文化サークル、娯楽サークル、スポーツクラブ、NPO等、地域を超えた多様な複数のコミュニティに様々な形で関与することとなろう。大都市から中山間地域等に至るまで、いずれの地域社会においても、これらの多様なコミュニティが重層的に存在し、その中で、幅広く、ゆるやかな人間関係が形成され、豊かさの実現が図られることとなる。