経済審議会総会議事録
時:平成11年1月18日
所:内閣総理大臣官邸ホール
経済企画庁
経済審議会総会議事次第
- 日時 平成11年1月18日(月)14:30~15:30
- 場 所 内閣総理大臣官邸ホール
- 開会
- 内閣総理大臣挨拶
- 「新たなる時代の姿と政策方針」の諮問について
- 経済審議会の今後の運営について
- 経済企画庁長官挨拶
- 閉会
- (出席者)
-
豊田会長、長岡会長代理、稲葉委員、角道委員、香西委員、小長委員、小林委員、佐々波委員、末松委員、鶴田委員、畠山委員、星野委員、水口委員、村田委員、師岡委員、山口委員、和田委員
内閣総理大臣、官房長官、官房副長官(政務、事務)、官房副長官、内閣内政審議室長、首席内閣参事官、内閣広報官
経済企画庁長官、政務次官、事務次官、経済企画審議官、総合計画局長、国民生活局長、調査局長、経済研究所長、等
- (配布資料)
-
- ① 経済審議会委員名簿
- ② 諮問文
- ③ 経済審議会の今後の運営について(案)
経済審議会委員名簿
- 会長 豊田章一郎 トヨタ自動車(株)取締役会長
- 会長代理 長岡實 東京証券取引所正会員協会顧問
- 日本たばこ産業(株)顧問
- 伊藤助成 日本生命保険相互会社代表取締役会長
- 稲葉興作 石川島播磨重工業(株)代表取締役会長
- 角道謙一 農林中央金庫理事長
- 金井務 (株)日立製作所取締役社長
- 公文俊平 国際大学グルーバルコミュニケーションセンター所長
- 香西泰 (社)日本経済研究センター会長
- 小長啓一 アラビア石油(株)代表取締役社長
- 小林陽太郎 富士ゼロックス(株)代表取締役会長
- 下村満子 財東京顕微鏡院理事長
- 末松謙一 (株)さくら銀行常任顧問
- 鶴田卓彦 (株)日本経済新聞社代表取締役社長
- 得本輝人 日本労働組合総連合会副会長
- 那須翔 東京電力(株)取締役会長
- 畠山襄 日本貿易振興会理事長
- 星野進保 総合研究所開発機構理事長
- 星野昌子 日本国際ボランティアセンター特別顧問
- 水口弘一 (株)野村総合研究所顧問
- 村田良平 (株)三和銀行特別顧問
- 諸井虔 太平洋セメント(株)相談役役
- 師岡愛美 日本労働組合総連合会副会長
- 山口光秀 東京証券取引所理事長
- 山口泰 日本銀行副総裁
- 鷲尾悦也 日本労働組合総連合会会長
- 和田正江 主婦連合会副会長
〔 豊田会長 〕 ただいまから、経済審議会を開会いたします。
本日は、委員の皆様には大変ご多忙中の中をお集まりいただきまして誠にありがとうございます。
また、小渕総理大臣、野中官房長官、堺屋経済企画庁長官におかれましても、お忙しい中をご出席いただきまして、誠にありがとうございます。
それではまず初めに、小渕総理よりご挨拶をいただきたいと思います。
〔 小渕内閣総理大臣 〕 経済審議会の委員の皆様方には、本日はご多忙中のところをご出席いただき、誠にありがとうございます。
また、日頃から、経済運営全般にわたり貴重なご意見をいただいておりますことに心から御礼申し上げます。
中長期の経済運営につきましては、平成7年12月に現行経済計画である「構造改革のための経済社会計画」を策定し、自由で活力があり、国民が豊かに安心して暮らせる経済社会を創造すべく、政府として努力をしてきたところであります。
しかしなしがら、現行経済計画も策定後約3年を経過し、同計画で示されております経済成長率等のマクロ経済の姿は現状から大きく乖離しております。このため、現行経済計画に替わるものとして、明確な将来展望や、政策の指針を新たに策定することが必要となってきていることは、当審議会において昨年12月に取りまとめていただきました「現行経済計画のフォローアップ報告」の中でご指摘をいただいたとおりであります。
内外情勢の変化は大きく、かつ速く、いまや歴史的発展段階の転換をも感じさせるものがあります。近代日本は高度に完成した工業社会を実現しましたが、世界に目を向けますとさらに多様な知恵の時代へと進んでおります。この新しい人類文明において、我が国は積極的かつ創造的な役割を果たすべきであると考えます。
また、目下の我が国経済は、深刻な不況下にありますが、これを克服して経済を再生し、少子・高齢化、人口減少などの課題を乗り越えていかなければなりません。
今後、これまで蓄積された労働・資本・土地等の生産要素を最適活用し、情報化を一層推進することにより、市場メカニズムを通じた効率性を最大限に発揮できるよう構造改革を抜本的に前進させる必要があります。
こうした認識を踏まえ21世紀初頭の我が国経済社会のあるべき姿を描き、国民が自信と誇りを持って未来に臨めるよう、平成11年から21世紀初頭までの10年間程度にとるべき政策の基本方針の策定が必要であると考え、本日、現行経済計画に替わるものとして「新たなる時代の姿と政策方針」の作成を経済審議会にお諮りする次第でございます。
皆様方の精力的なご審議をお願いいたしまして、私の挨拶とさせていただきます。
それでは、諮問文を豊田会長にお渡しいたします。よろしくお願いいたします。
〔 豊田会長 〕 ただいま総理から当審議会に対しまして、現行経済計画に替わるものといたしまして「新たなる時代の姿と政策方針」策定の諮問をいただきました。
お手元に諮問文とその説明資料がお配りしてございますので、これを事務局から朗読していただきたいと存じます。
〔 中名生総合計画局長 〕 それではお手元の資料2でございますが、朗読いたします。
経済企画庁組織令第41条第2項第1号の規定に基づき、次のとおり諮問する。
諮問第15号
「内外の歴史的な大転換期にあたり、『新たなる時代』の我が国経済社会のあるべき姿と、その実現に向けての経済新生の政策方針いかん。」
以下、説明でございます。
内外情勢の変化は大きくかつ速く、今や、歴史的発展段階の転換をも感じさせるものがある。近代日本は高度に完成した工業社会を実現したが、世界に目を向けると、さらに多様な知恵の時代へと進んでいる。この新しい人類文明において、我が国は積極的かつ創造的な役割を果たすべきである。
この時にあたって、従来の経済計画の発想を超えて、我が国のあるべき姿を探求する必要があると考える。目下の我が国経済は深刻な不況下にあるが、これを克服して経済を再生し、少子・高齢化、人口減少などの課題を乗り越え、新しい時代においては繁栄と安寧を長期に実現することが求められる。
今後、これまで蓄積された労働・資本・土地等の生産要素を最適活用し、情報化を一層推進することにより、市場メカニズムを通じた効率性を最大限に発揮できるよう、構造改革を抜本的に前進させる必要がある。これを通じて、新しい経済社会のシステムに対する不透明感を払拭するために、個々人が自らの好みを選択でき、かつ、全体としては調和のとれた安心と安全が確保できるような経済社会の具体像とそれを実現可能とする政策的道筋を明確に示すことが求められている。
こうした時代認識を踏まえ、21世紀初頭の我が国経済社会のあるべき姿を描き、国民が自信と誇りを持って未来る臨めるよう、平成11年から21世紀初頭までの 10 年間程度にとるべき政策の基本方針の策定を求めるものである。
なお、策定にあたっては、全国規模で広く国民の生の声を聞くとともに、海外からも意見を求めるなど、内外に開かれた活発な議論が求められる。
以上でございます。
〔 豊田会長 〕 どうもありがとうございました。
ただいまの諮問に従いまして、今後、当審議会におきまして「新たなる時代の姿と政策方針」の策定を行なうことにいたします。
去る12月21日に取りまとめました現行経済計画の本年度のフォローアップ報告におきましても指摘いたしましたとおり、中長期的な将来展望と経済政策の指針が強く求められております。この際、この策定に着手するということは誠に時宜に適ったことで意義深いものと考える次第でございます。委員の皆様のご協力をいただきまして策定を進めてまいりたいと存じますので、よろしくお願いをいたします。
それでは、本日、諮問いただきました件につきまして、ご意見等がございましたらお願いいたします。
なお、総理はご多忙でいらっしゃいますので、後ほどご退席される予定でございます。 この機会に、どうぞ、どなたからでもご自由にご発言ください。
〔 鶴田委員 〕 総理がいらっしゃるせっかくの機会ですから、ちょっとご質問したいと思います。
1つは、経済戦略会議との関係です。経済戦略会議は大体検討がすみまして2月いっぱいで最終報告をまとめて、それで解散するという話も聞いているのですけれども、一部の人の中には、せっかくいろいろな提案をするわけだから、フォローアップが必要ではないかという考え方を述べている方もあると聞いております。そうなると、全く経済戦略会議をやめてしまうというわけにもいかないのではないかと思いますし、経済戦略会議が開かれるということになりますと、戦略会議の検討の内容と経済審議会の検討の内容との整合性が1つ問題になりはしないかと思うのです。全くやめてしまうというのならそれはそれでいいと思うのですけれども。それが1つあると思うのです。
それからまた、経済戦略会議の方は当面の政策課題というか、どちらかというとか短期の問題に力点が置かれておりますし、ただいま、ご諮問をいただいたものは2010年ぐらいまでの超長期の対策の内容ということになりますから、一見矛盾しないようではあるのですけれども、ただ、現状判断をどう見るかということについて、あまり違ったものが出ると具合が悪いのではないかという感じがするので、その点をどういうふうにお考えかというのが1つです。
もう一つは、経済審議会自体なのですけれども、これはもちろんまだ最終決定ではないようなのですけれども、今、政府は、各種審議会の存廃について検討されていると思うのです。時々新聞などに存続する審議会と廃止する審議会ということで名前が出るのですけれども、経済審議会については、行革で経済企画庁がなくなってしまうわけですから、経済企画庁がなくなるのに経済審議会だけが存立するというのは何か妙な話ではあると思うのですけれども、2年後に統廃合でなくなる、経済審議会がなくなってしまうのに、一生懸命検討するというのも何か切ない感じがします。ですから、それをどうするというのか。それはいずれどこかに統合されていくのかもしれませんけれども、私は、経済審議会は経済企画庁がなくなっても経済審議会があっておかしくはないのではないかと思うのです。もともと本来そういう性格のものではないかと思うのです。
そういうことで、この2点について、総理でも経済企画庁長官でも結構ですから、何かお考えがあればお伺いしたいと思います。
〔 小渕内閣総理大臣 〕 まず、経済戦略会議との関係ですが、これは、私、総理になりまして、現下の不況の状況についてスピーディーに問題を処理していかなければならないということで始めさせていただきまして、もう中間的ないろいろな報告を受けながら、来年度予算の中にも組み入れて政策的に実行しようといたしております。最終的な答申は未だいただいてはおりませんが、かなり中長期にわたる考え方も出てくるものと思っておりますが、かなり具体的な問題をわかりやすく提案していただけるのではないかと認識しております。
もっと端的に言いますと、この戦略会議で、私はかりにこれを法律に直すなら、例えば100本なら100本、キングリッジの「100の契約」ではありませんけれども、そのぐらい出すものとして出してくれないかとお願いしておりますので、年金や何かそれぞれについてもかなり具体的な形のものを提案していただけると思うのです。したがって、これは中長期にわたりますから、かなりの期間、内閣としてはこれをすべて実行しようとすると中長期的にわたりまして時間のかかる仕事でありますけれども、私は、これは国会自体がこの問題に取り組んでしっかりした答えを出していかなければならないのではないか。その先頭に内閣としても中心としてやっていきたいと考えております。したがいまして、どういう最終答申をいただけるかわかりませんが、これが出た以上は私としては責任を持って実行のために努力していきます。そのために、一たんは閉じるのかもしれませんけれども、しかし、答申をいただきましたから、また出された方は出しましたということではなくて、これは常々私も監視していただきたいと思うし、そういう意味でのフォローアップというものはあっていいのではないかと考えております。
もう一つの審議会の件につきましては、これはドラスティックに政府の中の審議会を廃止することにいたしました。しかし、この審議会は全くそういうことの必要のないといいますか、答申をいただかなければならない極めて重要な審議会であります。しかし、行革の問題に触れられましたので、この問題については経済財政諮問会議ということで、担当の大臣を置かせていただくということになりますので、内閣におきましては責任を持って、この審議会で作っていただく過程、また出していただきました後のきちんとした処置につきましては、大臣をしっかり据えて取り組ませていただきたいと考えております。
〔 鶴田委員 〕 ありがとうございました。
〔 水口委員 〕 従来の経済計画は、特に90年代に入ってから、大体5か年計画が途中で齟齬をきたしてきたということで、今回、「『新たなる時代』の経済新生の政策方針いかん」というのが10年間にわたるということで、非常に結構なことだと思いますし、また委員の一人としてできるだけ勉強してまいりたいと思いますが、それで、直接は関係はないのですけれども、現在の当面の景気見通し、あるいは将来にわたっての問題で非常に重要な点は為替レートの問題があると思いますが、例えば、私どものシンクタンクの予測によりますと、代表的な上場企業を見てみますと、98年度の業績予想は前年同期に比べると大体23%のマイナスの利益。これは上期が▲20%、下期が▲25%、99年度の予測は4%プラスとなっておりまして、上期が10%▲、下期は、下期ということは今年の10月から来年3月までですけれども20%プラスとなっているわけでございますが、そういう意味ではミクロ段階ではどうにかそれぞれ明るい兆しも見えてきた、胎動というものが見えるということは言えるわけでありますけれども、ただ、この場合、前提として為替レートを通年度で122円と置いてこういう予測をしているという状況がございますので、最近の状況で見ますと為替レート1円の変動で経常利益はシミュレーションすると0.9%変動する。日経平均も90円から100円ぐらい動くという状況にありますので、為替レートの安定ということが非常に重要だと思いますし、総理の今度のヨーロッパ訪問において、あるいはアメリカとの関係においても、どうやら国際協調という問題が非常にいい方向に動き出しているというような印象を持っておりますので、そちらの方をひとつなお一層よろしくお願いしたいということだけ要望しておきます。
〔 豊田会長 〕 経済企画庁長官、何かありますか。
〔 堺屋経済企画庁長官 〕 よろしゅうございます。総理の方にできるだけ皆さんのご意見をお伝えいただきたいと思いますので。
〔 長岡委員 〕 諮問を頂戴いたしまして、これから経済審議会で大いに勉強するつもりでございますけれども、諮問の前文にもあります「新たなる時代の我が国経済社会のあるべき姿」、これは、今後、日本という国がどういう国になるべきであるか。例えば国際化時代であっても、日本という国並びに国民のアイデンディティーというものをしっかり打ち出せる。しかもそれが国民から「これは非常にいい考え方だ」という同意が得られるような姿を描いていくということが一番大事だと思うのです。それがはっきり描ければ、それを実現していくための構造改革その他にはいろいろ苦痛も伴いますけれども、しかし、それを乗り越えて経済社会を作っていこうということが中心であろうかと私は考えております。
これからその点を議論していくわけですけれども、例えば、日本が世界に誇れるものは何であろうか。よく言われるのは「美しい国土で」であり、「安全な社会」であり、そして、最近、若干どうも欠けつつあると思われますのは「明るい家庭」とか「自立心のある個人を育てる」というような点がありますけれども、そういうものが実現されていくために、我々は苦労しながら、これから、直すべきものは直していこうではないかという訴えかけをしなければいけないのではないか。これは私個人の考えでございますけれども、そういったようなことを中心に、したがって、これは会長のご意向にもよりますけれども、新しい審議会が歩み出すときには、やはりその辺の基本理念を常に中心点に据えて、各部会に分かれましてもそこに軸足を置いて議論していくということが必要ではないかと私は考えておりますが、総理のお考えが承れれば幸いでございます。
〔 小渕内閣総理大臣 〕 お許しをいただいてこれから席を立ちますが、今の長岡会長代理のお話は誠にごもっともだと思っております。
まず明日、私の施政方針演説がございます。総理になりましてから、過去、2回ほど所信表明をいたしました。これは喫緊の課題である金融問題を初めとして経済再生をうたいました。これは当然しなければなりませんが、しかし、今、長岡会長代理がおっしゃられたような視点に立って、明日、私は、つたないものかとは思いますけれども、自ら、その考え方を明らかにして国民の理解を求めていきたい。全くおっしゃるような趣旨でございます。
これからちょっと出てまいりますけれども、私は経済再生内閣と言っておりますけれども、元をただせば経済というものは、漢語を紐解けば「経世済民」なのでございまして、元より不況を乗り越えるということは大きな問題だと思いますけれども、しかし、「経世済民」ということから言えば、今、長岡会長代理がおっしゃった諸点にわたって、経済そのものはすべからく、単に不況を乗り越えるだけの問題ではない。日本国家としてどうあるべきかという姿を明らかにしていかなければならないという点で、過去2回の演説と異なりまして、私としては新しい施政の演説というあり方で、明日、私の考え方を申し述べたいと思いますので、是非、ひとつご批判、ご鞭撻をいただければありがたいと思いますし、この演説の中に本日の諮問で申し上げたことを導入させていただきまして、この諮問をしたこと、そして、諮問に応えてやりますということも入れさせていただくということでありますので、是非、よろしくお願いしたいと思います。
それでは、お許しをいただきまして退席させていただきます。どうもありがとうございました。
〔 長岡委員 〕 ありがとうございました。
〔 豊田会長 〕 どうもありがとうございました。
それでは、さらにご意見のある方は、引き続きお願いいたします。
経済企画庁長官がいらっしゃいますから、どうぞ。
〔 堺屋経済企画庁長官 〕 今、総理が申されましたことを、いささか諮問に従って敷衍させていただきますと、まず第1に、従来の諮問はすべて経済計画、5か年であるとか7か年、いろいろありますが「経済計画」となっておりました。今回の諮問は「経済計画」という言葉はございませんで、「あるべき姿とそのためにとる政策」、「新たなる時代の姿と政策方針」ということになっております。これは、今、長岡委員からお話がございましたように、単に経済だけではなくして、日本国家のあるべき姿の中でいかに位置づけていくか。こういう意味を含めてのことでございます。そしてまた「10年程度の……」というのも、必ずしも10年間と限るのではなく、ある程度方向性を明確にしていただきたい、そういった意味でございます。
従来は成長率が何パーセント、達成すべき目的が何兆円というような数字で固まっていたのでございますけれども、今回はそれはある程度、もちろん数字は大事でございますけれども、ある程度緩やかにしても、そういった方向性と考え方の方に重点を置いていただきたいというように考えております。
したがいまして、それにふさわしく、かなり多方面にわたった部会を設けて、それぞれの分野の方々、経済だけではなく文化、文明といったような方面の方々にも参加していただけたらありがたいと考えているところでございます。
〔 佐々波委員 〕 今、長官のご指摘にあったので、希望を1つ申し上げたいとおもうのですけれども、今回、10年間という期間が非常に長いようにも感じますけれども、必ずしも長くないのではないか、と申しますのは、この前も申し上げましたように、ユーロというものの実現は実は30年近くのヨーロッパでの理念の結果として生まれてきたところであって、是非、お願いしたいのは、理念を実現するための非常に長期的な政治的な仕組みというようなものをお考えいただくのが政府、施策の根本ではないかと存じておりますのが1点と、それから、ここにございます「個々人が自らの好みの選択ができ……」ということは、これから実現していただく社会というのが画一的なものではなくて、それは長官がおっしゃったような計画ということではなくて、今度は「あるべき姿」ということの真意ではないかと私なりに理解しておりますので、この点、是非、お願いしたいと思います。
〔 堺屋経済企画庁長官 〕 佐々波委員のご指摘のとおりでございまして、いままで計画というのは社会主義的な官僚主導の匂いがございました。これから自由化を進め、市場経済化をし、消費者主権を作っていくというところでは、形を、まず政府が目標を定めて、その中で個人がそれぞれの好みを実現していただく。そういうような土俵づくりといいますか、舞台だけはこういうものだよという形で見せるのかな、そんなことも考えております。 そうなりますと、従来と考え方、手法も相当変わってこなければいけないので、どういうような手法でこれを検討するか、そのことについても各委員の方々のご意見を伺いたいところでございます。従来は、経済計画でございましたから、伸び率がどうとか、産業構造がどうとかというような数値を出していくと、おおよそ方向がわかったのでございますが、今回は、その根っこの部分から皆様方のご意見を伺いたいと思っております。
〔 豊田会長 〕 今の長官のお話でございますが、やはり計画というのは何となく社会主義的であるとか官僚主導というふうにおっしゃいましたが、大体10年ぐらい先の日本がどういう姿がいいかということの中には、こんな国になりたいというのを具体的に表現すると、やはり数字も入ってくるのではないかと思いますが、その辺は数字が入ってもよろしいのですか。
〔 堺屋経済企画庁長官 〕 もちろん数字化できるものはできるだけ数字化したいと思いますけれども、数字化できないものもやはり無視できないという考え方でいきたいと思っております。
また、数字もある程度幅を持って出してもいいのではないかという感じも持っております。
〔 豊田会長 〕 私どもも古い人間になったかもしれませんが、基本的に日本の国が立派に一流国として栄えていくということを期待したいと思っているわけでございます。
何かご意見ございませんか。
〔 鶴田委員 〕 先ほどらいお話がいろいろあったわけですけれども、新しい諮問の内容は従来とはだいぶ趣きが違うのだと。従来は成長率何パーセントとかそういうことをやってきたけれども、そういうものにはこだわらないで、日本国のあるべき姿というものを描いて、そこから経済の問題その他いろいろな問題を肉付けをしよう。そういう考え方かなと伺っていたのですけれども、それは非常に結構だと思うのです。いままで、戦後いくつかの経済計画が作られてきましたけれども、経済計画を政府あるいは国民、政治も一緒ですけれども、一体となって推進したというのは所得倍増計画だけだったのではないかという気がするのです。あとの計画は作りっぱなしで、フォローアップなんていうこともやりましたけれども、どこがどう違ったかという検討はしましたけれども、なぜ違ったということはやらないのです。これが非常に大事で、なぜ違ったのかということの突っ込みが非常に重要だと思うのだけれども、それをやらないままにきたということで、本当のことを言って最近の経済計画はあまり意味がなかったと言ってよろしいと思うのです。
今度は日本のあるべき姿ということになると、これはまた観点がちょっと違いますし、これは非常に必要なことだと思います。21世紀初頭における日本のグランドデザインというか、まさにそれが今求められていると思うのです。それを構築するということは非常に大きな意味を持つと思うのですけれども、ただ、私はやるべきだと思うけれども、非常に難しいと思うのは、イデオロギーというか世界観というか哲学というか、文明論というかそれが絡んでくると思うのです、この「あるべき国家」の中には。これをどういうふうに調整するかというのが難しいのではないかという気がするのです。世界の中で日本はどういう位置づけを求めていくべきか、あるいはアジアの中でどういう位置づけを求めていくべきか。それぞれの人がそれぞれの考えを持っていると思うのですけれども、1本にまとめるというのはなかなか難しい。同床異夢で、例えばアジアの中でこういうシチュエーションで考えていったらいいじゃないかと言っても、アジアっていったって北もあれば南もあれば東もあれば、これまた難しい国家群ですから、どうするか。それができるのなら一番やらなければいけないことだと思いますが、場合によっては経済審議会の枠を超えて、結論は出ないかもしれないけれども、1回突っ込んでみたらいいのではないかという感じがします。
先ほど、経済関係の人だけではなくて、文化人とか、文明批評家、そういった方もお呼びしていろいろご意見を伺うというお話がありましたけれども、是非、そういうことをやられたらいいのではないでしょうかね。今、日本人に一番必要なことはそういうことではないでしょうかね。
〔 山口委員 〕 いままでのお話、誠にごもっともだと思いますし、そういう方向で検討を進められることが適当であると思いますが、今の経済情勢、なかんづく財政に焦点を当てて考えてみますと、ほとんど破産状態ではないかという感じがいたします。そして、今、政府がご努力なさっていることが功を奏してプラス成長に転ずるとしても、今、財政的なスティムラスの底上げというものをだんだん外していかなければいけない。だんだん外していってもなおかつ成長できるか。そして、そういう過程で、今、現に破産状態と申し上げましたような程度が極端に悪化しないような姿が描けるかということは大変難問ではなかろうかと思うのです。
だから、前途に対して幅広い関心を持ち、そしてその中から、やはり経済とか社会生活といったようなものの方向を見定めるということは、もちろんこの審議会の大きな役目だと思いますけれども、私が申し上げましたような道筋、財政が破綻状態からどうして脱却していけるだろうか。それは経済に自立的な力が備わってこなければできないわけで、その程度とそのスティムラスをどの程度にするかということの兼ね合いになってくるのだと思いますので、その辺は本当から申しますと緊急の問題ではないか。大変難しい問題であろうかと思いますが、政治も国民も真剣に考えなければいけない問題ではないかという気がいたします。
〔 堺屋経済企画庁長官 〕 仰せのとおりでございまして、もちろん、この審議会では財政問題も、年金等の社会保障の問題も重要な議題に取り上げざるを得ないと思います。
財政で申しますと、アメリカあたりは一時レーガン時代に大変な赤字を出したのが今黒字になっている。また、イタリアも大変な赤字を出していたのに、ユーロに入るのに非常な引締めをやった。そういうような諸外国の経験も参考にいたしまして、日本がどのような選択肢を持っているのか、そういったところも十分ご検討いただきたいと思っております。10年という期間になりますと、それが現実的といいますか視野に入れられる。3年、4年でございますと、今の経済状態、財政状態から難しいかと思いますが、10年であれば視野にも入れられるし、入れなければいけないと思いますので、是非、大いに取り上げていただきたいと考えております。
〔 豊田会長 〕 いろいろありがとうございました。
それでは続きまして、経済審議会の今後の運営につきまして、事務局からご説明をお願いしたいと思います。
〔 小長委員 〕 もう一つよろしゅうございますか。
2点言わせていただきたいと思いますが、説明資料の中にもございますけれども、「市場メカニズムを通じた効率性を最大限に発揮できるよう……」というシステム、まさにそのとおりだと思うのでございますけれども、ただ、私ども注意しなければいけないのは、いわゆるアメリカ型の資本主義をそのまま手本に追求するということでも必ずしもないのではないか。さればと言って、ヨーロッパ型の高福祉高負担型の経済運営をそのまま踏襲するということでもない。やはり日本の文化と伝統を尊重した日本型の資本主義といいますか、日本型の経済運営のあり方というのを追求していくべきではないのか。国のあり方の関係もまさにその辺が1つのポイントではないかなという感じがするのでございますけれども、その辺についての長官のお考えをお聞きしたいという点が第1点。
それから、10年展望で国と国民生活の安心と安全の議論をしていただく場合に、やはりエネルギーと食料についての視点もあるのではないかと思うわけでございまして、そういう点についても、今度の新しい議論の中では是非参考にしていただきたい。その2点を申し上げたいと思います。
〔 堺屋経済企画庁長官 〕 全く仰せのとおりでございまして、アメリカ型でもヨーロッパ型でもない日本型と言われるのだけれども、その「日本型」というのは一体何だろうかというと、人それぞれに違いが出てまいりますので、この審議会の議論を通じて集約できれは、それはたいへん大きな成果だと思います。
また、エネルギーと食料でございますが、今、たまたま、たまたまと言うと語弊があるかもしれませんが、今、食料もエネルギーも供給過剰でございますが、20年前には全く逆だった。だから、今後10年以内にまた逆転しないとも限りません。現在の石油リグの動き方が2万4,000本ぐらいでございますから、これは普通の状態で言うと供給減少傾向です。だから、そういうこともやはり考慮に入れていく必要があるのではないか。
それと関連いたしまして、今は一般的に物価が下がる時代でございますけれども、これから10年先になると通貨の安定ということがどうなるのかということもまた検討すべき問題だと思います。
いろいろ幅広い問題をお願いして恐縮でございますが、そういったことすべてを視野に入れて議論していただければありがたいと思っております。
〔 豊田会長 〕 ありがとうございます。
いろいろ幅広いご注文でございまして、なかなか大変だと思いますが、委員の皆様方、是非、ご協力をお願いいたしたいと思います。
それでは、総合計画局長、よろしくお願いいたします。
〔 中名生総合計画局長 〕 それではお手元の資料3でありますけれども、「経済審議会の今後の運営について(案)」をご説明させていただきます。
今日、ご検討いただきました諮問をご検討いただく体制でありますが、最初のページに書いてございますように、まず部会の構成でございます。
現在、経済審議会の下に「企画部会」が置かれているわけでございますが、これに加えまして新たに「構造改革推進部会」、「国民生活文化会」、「グローバリゼーション部会」、「地域経済・社会資本部会」という4つの部会を設けてはどうかというふうに考えております。
それから、今、大臣のご発言にもございましたように、基本的な理念が重要であるということで、経済審議会の会長、各部会の部会長、部会長代理によって構成される「基本理念委員会」というのを設けて、新しい時代の基本理念についての考え方の取りまとめを行なっていただいたらどうかというふうに考えております。
2.にありますように、必要に応じまして、各部会の下には委員会等を置くことができるということでございます。
4.にありますように、計量委員会、首都機能移転委員会は、従来から審議会の中に設けられておりますので、これは引き続き存置するということでございます。
以上申し上げましたものを機構図的にご覧いただきますと、資料3の最後のページでありますが、「検討体制(案)」という図で示してございます。「経済審議会」の下に従来からの「首都機能移転委員会」、「計量委員会」がございまして、新しい姿と政策方針をご議論いただくために「基本理念委員会」があり、その下に「企画部会」、「構造改革推進部会」、「国民生活文化部会」、「グローバリゼーション部会」、「地域経済・社会資本部会」という5つの部会を設けるという形でございます。
それから、2ページ以下に(別添)という形で、各部会でどういうことをご検討いただくかという内容を、ごく概括的に書いてございます。若干重複する部分、相互に関連する部分もございますが、1.企画部会でありますけれども、
「新たなる時代の姿と政策方針」を策定するにあたり、総論としての大きな方向性として、規格大量生産社会から知価社会へ、少子高齢化、環境制約の高まり等といった経済社会の歴史的展開、マクロ経済の展望について検討する。また、経済社会のあるべき姿を描くとともに、その実現のための政策方針について検討する。各部会の検討事項を整理するとともに、各部会での議論を総括し、全体のとりまとめを行なう。
全体の総括を企画部会でやっていただくということでございます。
次に、2.構造改革推進部会でありますけれども、
現在までの我が国における産業・経営、市場等の経済各面での構造について改革の進捗と必要性を点検し、抜本的な改革を実現するための問題を整理する。市場原理の徹底や創業・起業の促進、新技術・新業態の発生・普及等、21世紀において目指すべき経済社会を実現させるために必要な諸課題とその方策を明らかにする。また、構造改革の経済効果について数量的な分析を行なう。ということであります。
3.国民生活文化部会につきましては、
国民の生活と文化を規定する人口、教育、環境、資源、社会保障等が経済に与える影響及びその対応策について検討する。また、「高齢者及び女性の雇用・社会参加」「新たな社会を支える人材育成・教育」「家族,地域活動、コミュニティネットワーク等人々を結びつける機能」「応報と安全ネットのあり方」等についての施策、仕組み等を検討する。ということであります。
そして、4.グローバリゼーション部会につきましては、
グローバリゼーションの進展と地域統合の動き等世界の動きを踏まえて、我が国の世界における位置づけ、金融、情報、資源、商品、労働等世界的な課題への対応を検討する。特に、円の国際化や経済協力のあり方、グローバリゼーションの流れの中で必要とされている我が国の経済、経営の構造改革(制度調和)の必要性について検討する。ということでございまして、
5.地域経済・社会資本部会におきましては、
我が国経済の長期持続的成長のために、国際競争力のある都市、独自の産業や文化を持つ地域造りとともに、良質な生活空間の拡大、ゆとりのある生活空間の創出、高齢社会にふさわしい社会のあり方及びその実現のための方策を検討する。このために、それぞれの地域の多様なニーズに対応した21世紀型社会資本の戦略的・効率的・効果的整備のあり方を検討する。ということでございます。
以上でございます。
〔 豊田会長 〕 それでは、ただいまご説明のありました件につきまして、ご意見、ご質問等がございましたら、お願いいたします。
〔 畠山委員 〕 質問ではございませんでコメントでございますけれども、今、地域経済・社会資本部会の中に、「国際競争力のある都市」という言葉が出てまいりますけれども、これは大変いいコンセプトではないかと思います。想像いたしますに、その都市に住んでみたい都市を日本にいくつも作ろうということであろうと思いますので、仮にそうであるとすれば、外資系企業もたくさんくるでしょうし、雇用にも役に立つでしょうし、日本という国が各国から尊敬されるようにもなるでしょうから、大変にいい大事なコンセプトではないかという感じがいたしましたので申し上げました。
〔 堺屋経済企画庁長官 〕 これは、小渕総理大臣の非常に力の入れておられる「21世紀先導プロジェクト」の1つの中に「都市の生活と交通」というのがありまして、その中で、これからの世界の中で都市産業、あるいは都市生活の国際競争力を高めて、世界、ニューヨークやロンドンに劣らないような、金融市場だけではなくて観光もソフトウェアも、あるいはリタイアした人が喜んで住むようなところ、そういったところを作りたいというような発想がございます。それを取り上げて考えているわけなのですけれども、大体、この第5の部会ではそういった空間的都市、あるいは国土というような問題を地域社会、社会経済として作っていただきたいと思っております。
また、ここでは農業、あるいは農村などについても、そういった検討の中で取り上げていただきたいと思っております。
それで、それぞれの部会に大きな課題がことごとくございまして、従来は、この中で言いますと、企画部会と構造部会の内容みたいなことをやっていたわけでございますが、「国民生活」、「グローバリゼーション」、「地域社会」という3つの部会は、非常に範囲を広げたものとして、日本の将来、どんな国になりたいかというのを明らかにしていただければありがたいと思っております。
〔 香西委員 〕 2点申し上げたいと思っておりまして、1点は極めて簡単な質問でございます。大体どのぐらいの審議期間を予定しておられるのか。聞いたような気もしますが文書では出ておりませんので、この機会にどのぐらいの時間で審議を期待しておられるのか。大きな問題がたくさん出されておりますのでお伺いしたい。
第2点は、審議の考え方でございますけれども、先ほど、小長委員、あるいは山口委員からもお話がございましたが、新たな時代ということと、政策が問われているこの10年という間にはかなりギャップがあって、この10年というのはまだまだ厳しい面も残さざるを得ない可能性がある。しかし、あるべき姿を問う新たな時代というのは、もう少し大きな時代展望が必要だ。そういう二重の観点で考えていいのかどうか。考えなければならないだろうというふうに考えておりますので、その点を申したいと思います。
例えば、先ほど財政について山口委員からお話がございましたけれども、人口を見ても、例えば2010年、2015年というのは、堺屋大臣が言われました団塊の世代がリタイアするわけです。その一方で、第2次ベビーブームの人たちがお母さんになって、おそらく労働市場から撤退していく、一時ですが撤退する可能性がある。社会保障負担、労働力その他にとってかなり厳しいところが2010年、2015年になる。それ以降になりますと人口は減ってきますけれども、ある意味で、そう言ってはあれですが高齢者の絶対数の伸びが鈍ってくる形で人口が減ってきますので一息つける面もあるわけでございます。
そういったことも考えますと、政策が問われている10年と、あるべき新しい時代というのと、あまり簡単に結びつかない、かなり厳しいところもあるという覚悟で、先ほど既にお話がありましたけれども、長いものも含めながら10年を見ていく。そういうことが必要だということを痛感しているということを一言申し上げたいと思います。
〔 堺屋経済企画庁長官 〕 審議期間はできれば本年の中頃までという期待をしているのです。やはり経済がこういう状況であり、国民が未来に対して不安を持っている時期でございますので、できるだけ早く未来の指針を示したいという考え方がございますので、誠に恐縮でございますが、短い期間でございますけれども、できるだけ早くお願いしたいと考えております。
後の点につきましてはまさにおっしゃるとおりで、最も厳しい時期を目指して、それを乗り越えた後をにらんでいただくという形になろうかと思います。
〔 小林委員 〕 資料3の一番最後にあります「検討体制(案)」について、組織上の問題の確認ですが、基本理念委員会は部会長及び部会長代理をもって構成するというお話がありましたが、個々の部会が何をやるかというのは先ほどご説明がありまして、企画部会が他の部会から出てきたものの調整とか、あるいは将来に向かっての大きな政策方針とか、企画部会が司ると書いてあります。
組織上は基本理念委員会というのがそれぞれの部会の上に座っているわけですが、企画部会等の調整を経た各部会の提案というのは、一応基本理念委員会を通って経済審議会に提案されるということなのか。むしろ、もちろん各部会長、部会長代理を含めてある程度の調整とか話し合いとかそういうものが必要だから、それは作るけれども、むしろそこが本当にやらなければいけないことというのは、ここに文字で表すほどそれほど固くないということなのか。基本理念というところと、実際には企画部会がやらなければいけない将来に向かっての方針を決めるということとは、かなりオーバーラップしているところがありまして、その辺を明確化していただけるとありがたいと思います。
〔 堺屋経済企画庁長官 〕 お説のとおりでございまして、まず、基本理念委員会というのは各部会長、部会長代理が随時お話し合いをしていただくという感じでございまして、特にここで決議するとか、ここで通らなければというようなことは考えておりません。
これから委員のメンバーを決めるわけでございますが、広範な分野の方々が入ってこられて、おそらく認識の違い、あるいは手法、発想の違いというようなものがあると思いますので、随時ここでお集まりいただいて、我々と話し合いながら進めていただければと思っております。
〔 末松委員 〕 質問というより疑問で恐縮ですけれども、構造改革に絡みまして、これは基本的な考え方としてはよくわかります。いわゆる日本の昔の行政といいますか、結果平等追求社会から、機会は均等に与えましょうということは保障するけれども、結果についての格差はお互いに覚悟してくださいということであろうと思います。
ただ、その際に、そうは言いながら、そういうようなアプローチの仕方なのですが、先ほどのお話の中に若干ニュアンスが出てくるのは、1つは予定調和的なソフトランディングをやはり追求していくのだ、やはりみんなハッピーでなければ困るということなのか。あるいは、21世紀を控えている競争社会というのは時間の競争であって、ハードランディングも辞さないということを、我々としても覚悟して答申していくのか。この辺は非常に大きな決断の問題として出てくる。ことに、一部の業界はそういうことをやっている、片方は受け入れないということでは、国全体として何の効果も及ぼさないということになりますから、ソフトランディングではなくてハードランディングでいくのだということになれば、あらゆる分野がそれに対応する着陸姿勢をとらなければならないという気がするのですが、いかがでしょうか。
〔 堺屋経済企画庁長官 〕 誠に難しくて本質的なことを尋ねられたのでございますけれども、それはある程度今よりは格差を容認することになるだろうと思うのです。それが業種別、業界別、あるいは種類別ということになってまいりますと、例えば国鉄はハードランディングをやったようなものです。あるいは、これから、この次にはこの産業はどうするのだ、この分野はどうするのだ、この地域はどうするのだということになってまいりますと、なかなか一概に答えられないところがあるのですが、やはりある程度労働力移動というもの、あるいはもっと言いますと、労働移民というようなことも議論の対象になってくるのではないかという気がするのです。そうなりますと、安全ネットはもちろん必要ですが、格差というのをどう考えていくか。例えば所得の格差は絶対的な格差と考えるのか、所得に格差があっても逆に時間の余裕に格差があれば釣り合っていると考えていくのか。人それぞれに好みで、俺は所得は高く欲しいから暇なしに働くと言う人と、俺は悠悠自適で生きたいから所得は低くていいと言う人と、両方認めるのかなという考え方もあるわけです。その点も皆様方に十分議論していただきたい点だと思うのですけれども、ここには、経済だけではなく経営、市場というような構造についても申し上げておりますが、そういったことも非常に議論が尽くされなければいけないところだと思います。
〔 豊田会長 〕 いろいろご意見ありがとうございました。
まだご意見もあると思いますが、今後の運営につきまして、ただいまご説明のありました原案に沿って今後の経済審議会を運営してまいりたいと存じますが、いかがでございましょうか。
( 「異議なし」の声あり )
ありがとうございました。
それでは、このように運営してまいります。
なお、新たに設置することになりました部会の部会長並びに委員につきましては、私にご一任していただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。
( 「異議なし」の声あり )
ありがとうございました。
それでは、最後に、堺屋経済企画庁長官よりご挨拶をいただきたいと思います。
〔 堺屋経済企画庁長官 〕 最後に一言ご挨拶を申し上げます。
経済審議会の委員の皆様方には、大変ご多忙なところ、熱心なご審議、誠にありがとうございました。
また、日頃より審議会の運営にご尽力を賜りまして、心から御礼申し上げます。
我が国経済は、2年連続のマイナス成長となりまして、戦後最悪、いわば経済国難というような厳しい状況にあります。この不況を克服して、我が国経済を再生することが当面の最重要課題であります。また、それと同時に、歴史的な大転換期にある今日においては、新たなる時代の我が国経済社会のあるべき姿と、その実現に向けての政策方針を示すことが重要な課題になっていると思います。
我が国は、明治以来百年余、殖産興業を旗印といたしまして規格大量生産型の近代工業社会を作ることに努めてまいりました。そして、その目標は一応1980年代に達成したのではないかと思います。
ところが世界経済と人類文化の歴史的潮流は、規格大量生産型の近代工業社会を超越いたしまして、多様な知恵の時代へと変わりつつあります。国民の欲求も物財の量的な充足だけではなく、情報の獲得や自己実現の方向に拡大しております。このため、規格大量生産型社会の実現のために作り上げられました日本の構造あるいは習慣の中には、今日の社会に不適合なものが増えております。
こうした歴史的変化の中で、21世紀初頭には我が国がどのような国になっていればよいのか。国民の暮らしがどのようになっていれば人々は本当に幸せと思うのだろうか。こういった問題に答えることは、今後の経済社会を考える上で極めて重要なことだと思います。 また、これまでの経済計画では経済成長率等の指標が、将来を展望する際の中心的な指標でございましたが、新たなる時代を展望する際にはどのような指標が有効であるかについてもお考えいただきたいと思っております。
本日、小渕総理大臣より当審議会に対して「新たなる時代の我が国経済社会のあるべき姿とその実現に向けての経済新生の政策方針策定」について諮問が行われました。現在のような歴史的転換期にあり、先行き不透明な時代において将来を展望することは非常に難しい仕事でございますが、経済審議会の委員の皆様方におかれましては、今後、幅広い観点から精力的なご審議をいただき、現行経済計画に替わるものとして「新たなる時代の姿と政策方針」をお示しいただくようにお願いいたします。
〔 豊田会長 〕 ありがとうございました。
それでは、本日の会議はこれで閉会とさせていただきます。
委員の皆様方には、大変ご多忙のところをお集まりいただきまして、誠にありがとうございました。
なお、本日の審議の模様につきましては、この後、私より発表させていただきます。
それでは、これにて散会いたします。
--以上--