経済審議会総会議事録
時:平成10年12月21 日
所:内閣総理大臣官邸ホール
経済企画庁
経済審議会総会議事次第
日時 平成10年12月21日(月)14:00~16:00
場所 内閣総理大臣官邸ホール
- 開会
- 経済企画庁長官挨拶
- 「緊急経済対策」、「平成11年度経済の見通しと経済運営の基本的態度について」
- 「『構造改革のための経済社会計画-活力ある経済・安心できるくらし-』の推進状況 と今後の課題」について
- 内閣総理大臣挨拶
- 閉会
(出席者)
- 内閣総理大臣、内閣官房長官、内閣官房副長官(政務・事務)、内閣内政審議室長、首席内閣参事官、内閣広報官
- 豊田会長、長岡会長代理、伊藤委員、角道委員、香西委員、小長委員、小林委員、佐々波委員、得本委員、那須委員、畠山委員、星野(昌)委員、水口委員、村田委員、山口(光)委員、和田委員
- 経済企画庁長官、経済企画政務次官、経済企画事務次官、経済企画審議官、官房長、総合計画局長、調整局長、国民生活局長、物価局長、調査局長、経済研究所長、等
(配布資料)
- 資料1 経済審議会委員名簿
- 資料2 「緊急経済対策」
- 資料3 「平成11年度の経済見通しと経済運営の基本的態度」
- 資料4 「『構造改革のための経済社会計画―活力ある経済・安心できるくらし―』の 推進状況と今後の課題」
- 資料5 「『構造改革のための経済社会計画―活力ある経済・安心できるくらし―』の推進状況」
- 資料6 「『高コスト構造是正・活性化のための行動計画』の推進状況」
経済審議会委員名簿
会 長 豊田 章一郎 トヨタ自動車(株)取締役会長
会長代理 長岡 實 東京証券取引所正会員協会顧問、
日本たばこ産業(株)顧問
伊藤 助成 日本生命保険相互会社代表取締役会長
稲葉 興作 石川島播磨重工業(株)代表取締役会長
角道 謙一 農林中央金庫理事長
金井 務 (株)日立製作所取締役社長
公文 俊平 国際大学グルーバルコミュニケーションセンター所長
香西 泰 (社)日本経済研究センター会長
小長 啓一 アラビア石油(株)代表取締役社長
小林 陽太郎 富士ゼロックス(株)代表取締役会長
佐々波 楊子 明海大学経済学部教授
下村 満子 (財)東京顕微鏡院理事長
末松 謙一 (株)さくら銀行常任顧問
鶴田 卓彦 (株)日本経済新聞社代表取締役社長
得本 輝人 日本労働組合総連合会副会長
那須 翔 東京電力(株)取締役会長
畠山 襄 日本貿易振興会理事長
星野 進保 総合研究開発機構理事長
星野 昌子 日本国際ボランティアセンター特別顧問
水口 弘一 (株)野村総合研究所顧問
村田 良平 (株)三和銀行特別顧問
諸井 虔 太平洋セメント(株)取締役相談役
師岡 愛美 日本労働組合総連合会副会長
山口 光秀 東京証券取引所理事長
山口 泰 日本銀行副総裁
鷲尾 悦也 日本労働組合総連合会会長
和田 正江 主婦連合会副会長
〔 豊田会長 〕 ただいまより経済審議会を開催いたします。
本日は、委員の皆様にはご多忙のところをお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
なお、小渕総理大臣には、後ほどご出席いただける予定となっております。
ご承知のとおり、去る10月5日に改選が行われまして、新しく委員の任命が行われました。お手元にその名簿を配付してございます。
それでは、議題に入ります前に、堺屋経済企画庁長官よりご挨拶をいただきたいと存じます。
〔 堺屋経済企画庁長官 〕 経済審議会の委員の皆様方には、本日は誠にご多用のところご出席いただき、ありがとうございます。一言ご挨拶を申し上げさせていただきます。
最近の我が国の経済動向は、誠に厳しいものがございます。依然として個人消費は低迷を続けておりまして、この冬のボーナスも前年を下回りそうだということでございまして、消費者の財布のひもははなはだきつい、固いという状況が続いております。住宅建設を見ますと、個人住宅は、前月比に比べては復活してまいりましたけれども、分譲マンション、賃借が不振でございまして、全体としては低い水準にとどまっております。特に設備投資がこのところかなり減ってまいりまして、中小企業のみならず、大企業も減少傾向にございます。
一方、公共事業でございますが、6月に国会を通りました第一次補正がようやく効果を上げまして、9月末から10月にかけて発注量が増えてまいりました。今、かつてないほどの前倒しのペースで進んでおりまして、10年度の補正予算がようやく効果を上げてきたということであります。そういうこともございますが、なお雇用情勢を見ますと、失業率が 4.3%の高止まり、有効求人倍率が下降ぎみといった状況でございます。
以上のように、景気は甚だしく低迷しておりますけれども、一部には明るい胎動も見られるのではないかと考えております。先ほどの公共事業ほか、半導体の価格が下げ止まり、出荷が増えておりますとか、あるいは家電量販店の売上が増えておりますとか、そういった傾向も見え出してまいりました。
政府は、11月16日に、緊急経済対策を取りまとめまして、これをはじめとする諸施策を強力に推進することになっております。また、本日、予算閣議がございましたけれども、所得・法人に対する恒久的な減税、課税の減少を決定いたしました。平成11年度におきまして、これらの効果、第一次、第二次の補正予算、そして、この平成11年度から始まります大幅な減税。こういうものを併せて、 0.5%程度の成長が見込めるだろうと期待しております。平成9年度、10年度、マイナス成長でございましたが、11年度にはぜひともプラス成長にしたいと思っております。
一方、より長期的な観点から見ますと、今日の我が国経済社会は、少子高齢化、グローバル化、ソフト化という大きな転換点を迎えておりまして、戦後日本が積み上げてまいりました日本的経営による規格大量生産の時代から、新しい多様な知価社会の時代に、歴史的な転換点を迎えているのではないかと思います。
こうした中で、国民が将来にわたって夢と希望を持ち続けるように、これまでの発想を転換して、新しいビジョンを策定し、21世紀の脱工業化の時代、工業化の次の時代の文明に、我が国がどのような貢献をしていくことができるのか。世界に先がけて高齢化社会を作る日本にとって、これは人類文明全体に対して大きな責務を負っているのではないかという感じがいたします。
そういった観点から、経済審議会におかれましては、今年9月以降、現行計画の想定と現実が乖離したこともございまして、今後のマクロ経済政策、雇用政策のあり方等々につきまして、企画部会を中心に重点的にご審議いただいたところでございます。その結果、現行経済計画の本年度のフォローアップ報告をいただきまして、本日の総会に提出していただけることになりました。その中で、現行経済計画にかわる新しいビジョンの策定の必要性もご指摘していただいております。本日の総会におきますご意見も参考にしながら、このご指摘につきまして、政府といたしましても重く受けとめ、早急に検討していきたいと考えております。この次の中期ビジョンの策定をどのような形でするか、従来の経済計画といったものでいいのか、また、その枠組み自体を変えるべき時期にきているのではないか。そんなことも私どもとしては考えております。
委員の皆様方のこれまでの熱心なご審議に御礼申し上げるとともに、今後とも引き続き、ご指導、ご協力いただけますことを心よりお願いいたしまして、私のご挨拶としたいと思います。ありがとうございました。
〔 豊田会長 〕 ありがとうございました。
引き続き、ただいま長官からもご紹介のありました「緊急経済対策」及び「平成11年度の経済見通しと経済運営の基本的態度」につきまして、事務局より説明をお願いいたします。
〔 河出調整局長 〕 調整局長でございます。
まず、お手元の資料2「緊急経済対策」でございます。これは11月16日に決定したものでございますが、表紙をめくっていただきますと目次が出てまいります。今回の対策は、これまでと異なりまして、まず第1章で日本経済再生の道筋を明らかにしております。続きまして、第2章、これは従来の対策と同じでございますが、今回の対策の内容を明らかにしているところでございます。
1ページにまいりまして、「はじめに」ということでございますけれども、今回の緊急経済対策は、日本経済を一両年(平成11年度、12年度)のうちに回復軌道に乗せるための第一歩として立案されたものでございまして、来年度には、3つの目標を達成することとするということにしております。
3つの目標というのは、まず、来年度の経済を、はっきりプラス成長と自信を持って言えるような需要を創造する。2番目が、失業を増やさない雇用。我が国は開業率よりも企業の廃業率の方が高いわけでございますが、そういった新しい起業の推進でございます。3番目が、国際協調の推進、対外経済摩擦の抑制の問題。こういった目的を達成するためには、全力をあげて諸施策を推進することとしております。
2ページにまいりまして、第1章でございます。今回の緊急経済対策と、先ほども申しましたように、日本経済再生の道筋でございます。経済情勢の認識は、ただいま大臣がご挨拶申しましたように、今非常に厳しい状況にあるわけでございます。また、世界経済も、アジア諸国をはじめとして厳しく、アメリカでも、先行きに対する不透明感が見られるわけでございます。さらにまた、金融機関の再編と体質強化を進める過程で信用収縮が生じる可能性があるわけでございます。
そこで、まず今回の対策では、いわゆる不況の環、経済の悪循環を断ち切ることが必要であると考えております。企業をめぐる悪循環、個人をめぐる悪循環、こういった2つの環をはっきりと断ち切ることが重要であるという認識に立っております。
そのために、今回の緊急経済対策の基本的考え方でございますが、まず、金融システムの安定・信用収縮対策によりまして、貸し渋りを断ち、併せまして、景気回復策を緊急に実行することによりまして、需要不足を断って、日本経済の不況の環を断つということをねらいとしております。
また、景気回復策は、単に景気回復への問題だけではなくて、まさに即効性、波及性に加えまして、21世紀に向けた未来性の3原則に立って実施することが重要であるという認識をしておりまして、短期的な施策につきましても、こういった観点を踏まえながら推進するということにしております。
そのために、政府としては、 100万人規模の雇用の創出・安定を目指して、総事業費で17兆円を大きく超える事業を緊急に実施することにしております。これに恒久的減税6兆円超を加えれば、20兆円を大きく上回るような規模となるわけでございます。
「3.経済再生の道筋」でございますが、今回の対策によって、いわゆるデフレ・スパイラルの懸念は取り除かれて、現在の厳しい状況を脱することができると確信しているわけでございますが、この対策は、平成12年度までに我が国経済を回復軌道に乗せるための政策的対応の第一歩であるということでございまして、そのために、今後も機動的、弾力的な経済運営を行うということにしております。
11年度につきましては、3ページの2)にございますように、はっきりとしたプラス成長へ転換するということで、3年連続のマイナス成長を回避して、まさに回復基盤を固める年にしなければいけないという認識でございます。金融システムの安定化策を実施することによって、これまでの実体経済の回復を阻害していた要因が取り除かれ、徐々に景気は回復していくものと思っておりますが、こういった民間需要の緩やかな回復を公的需要が十分に下支えするとともに、信用収縮が起こることのないように、金融面からも企業の資金需要に応えて、量的な緩和を図るよう、経済運営を行うこととしております。
12年度は、3)でございますが、回復軌道に乗せる年ということでございまして、恒久的な減税の効果があらわれ、家計のマインドも好転するということで、消費、住宅ともに本格的に回復すると思っております。また、企業のマインドも好転して、実体経済の回復と金融再生とが好循環を生む結果、設備投資を含めまして、民需主導の景気回復が始動していくものと思っております。
ただ、こういった公的需要から民間需要に円滑にバトンタッチが行われますように、十分に配慮した経済運営を行うとともに、金融再生を完了させるということにしております。また、併せまして、21世紀型社会の構築に向けまして、構造改革を引き続き強力に推進するということでございます。こういった状況を踏まえまして、13年度からは、民需中心の安定的な成長軌道に乗って、我が国経済が発展していくことを期待しているわけでございます。
4)で中期展望の策定でございます。こういった経済再生の道筋を踏まえまして、今後の中期的な経済の姿と政策対応の在り方につきまして、展望を策定するということをここで決定しているものでございます。
4ページにまいりまして、第2章で、「経済再生のための緊急対策」の内容そのものでございますが、従来でありますと、社会資本の整備等から対策を始めるケースが多いわけでありますけれども、今回の対策は、まず金融システムの安定化・信用収縮対策が重要であるという認識で、これを1番に掲げております。金融システムの安定化対策として、先般の臨時国会で既に金融再生関連法、あるいは金融機能早期健全化法が成立したわけでございますが、こういったものによって、金融システムの危機的な状況を起こさないような取組みをしてまいりたいということで考えております。
そのためには、1)~5)までございますが、まず、1)資本増強制度の実効ある運用の問題。あるいは2)で検査監督行政の効果的な運用ということで、早期是正措置のための発動基準をこの対策を決めた日に施行しております。3)では、金融機関の主体的な取り組みということで、各金融機関がこの資本増強制度を効果的かつ十分に活用することが期待されると、取り組みを促しているところでございます。4)は、情報開示の改善ということで、証券取引法上の情報開示におきまして、連結財務諸表の作成に当たっての、子会社、あるいは関連会社の範囲を拡大することとなっておりますが、金融機関につきましては、これを1年前倒して来年の3月期から実施して、米国のSEC基準と同様の基準によるところのリスク管理債権額についても、実質的な連結基準によって開示するということを決めているものでございます。こういった内容で、まず金融システムの安定化対策を1として掲げております。
次に、「2.信用収縮対策等」でございます。いわゆる貸し渋り、あるいは融資回収等によります信用収縮を防ぐために、8月末に中小企業等の貸し渋り対策大綱を決定しているわけでございますが、それに基づきますところの信用保証制度の拡充、あるいは政府系金融機関の融資制度の拡充等の施策を強力に推進するということにしております。
これに加えまして、さらに中堅企業等向けの貸し渋り対策を抜本的に強化するため、開銀等の政府系金融機関におきまして、代理貸しの導入とか、あるいは転貸資金融資の導入等によりますところの対策を講ずることとしております。このための開銀法の改正が先の臨時国会で成立したところでございます。
こういったことによりまして、全体として事業規模5兆 9,000億円程度の施策を追加するということにしておりまして、これによりまして、20兆円の信用保証枠と並びまして、さらに7兆円を上回る規模の資金量の確保ができたということでございます。
7ページにまいりまして、2)「資金供給ルートの拡充・多様化」でございます。いわゆるSPC法につきましても、さらに一層の制度整備の検討を行うとともに、12月から導入されます会社型投信の投資対象につきましても、さらにその検討を行うということを決めているわけでございます。
それから、「3.日銀による金融政策の適切かつ機動的な運営」ということで、この対策の決定する直前に、日本銀行におきまして、企業金融の円滑化に資することを目的として、【1】CPオペの積極的な活用、【2】企業金融支援のための臨時貸出制度の創設、【3】社債等を担保とするオペレーションの導入という措置を決定したわけでございますが、このうち【1】、【2】は既に11月中に実施されているものでございます。今後とも、日本銀行におきまして、こういった措置の実施や潤沢な資金供給など、金融政策を引き続き適切かつ機動的に運営されるよう要請することを決めているものでございます。
次に、2番目に大きな柱でありますところの「Ⅱ.21世紀型社会の構築に資する景気回復策」ということでございます。
まず、「21世紀先導プロジェクトの実施」ということでございまして、4つのプロジェクトを書いております。1)で、先端電子立国を形成するための2つのプロジェクトということで、次世代インターネット構想の推進とか、あるいは、8ページにまいりまして、2)で未来都市の交通と生活を先取りするプロジェクト、こういったものに触れているわけでございます。3)では、安全・安心、ゆとりの暮らしを創るプロジェクトということで、世界に先がけて、高齢者が安全で安心して暮らせるような国土づくりを実現するために、中心市街地の再開発、あるいは商業集積の活性化の問題、あるいは公共空間におけるバリアフリー化の問題といったものについてここで触れております。4)では、高度技術と流動性ある安定雇用社会の構築のためのプロジェクトということで、バイオとか、あるいはベンチャー事業化のための公的な技術開発費の集中投下制度創設の問題とか、あるいは9ページの【4】ですけれども、これからの新技術、あるいは新種企業、産業転換に対応した、流動性はあるけれども安定した雇用社会、そういったものへの転換を進めるような勤労者教育訓練を推進するということを決めております。
この中で2番目の大きな柱は、「生活空間活性化策」ということで、生活空間倍増戦略プランを来年1月中に策定して、向こう5年を視野に入れまして、そういった面への積極的な投資を推進することとしております。
また、この関連で、都市と地方の各地域自らがテーマを選んで生活空間を創造していこうということで、こういった総合的な地域戦略プランづくりのために、 400か所程度、1地域当たり大体事業規模で 100億円といった想定で、5年間で総額4兆円程度のものを考えているところでございます。
2)で土地・債権の流動化の問題ということで、金融機関などが保有する不良債権等の処理をできるだけ早急に進めるために、整理回収機構や、先般成立した債権管理回収業法などを活用しながら、そういった環境整備をしていこうというものでございます。
3)は、住宅投資の促進ということで、住宅投資は非常に波及効果の大きい産業でございますが、非常に今低水準が続いているわけでございますが、それにつきまして、活発な対策を講じることとしております。住宅公庫貸付金利の大幅な引下げの問題、あるいは融資額の大幅拡充等につきまして、この対策で決定しているものでございまして、併せまして、10ページの冒頭にありますように、事業規模で1兆 2,000億円程度を追加することを決めております。
3番目の柱が「産業再生・雇用対策」でございます。これも来年1月中に、産業再生計画を策定して、新規開業の成長支援とか、あるいは新規・成長15分野、医療・福祉、情報通信、流通、物流といった15分野における技術開発普及などを内容とする計画を作ることとなっております。
11ページにまいりまして、2)が雇用対策。特に今回の対策では、雇用問題に力を入れたわけでございますけれども、早急な雇用の創出、安定を目指して、雇用活性化総合プランの実施とか、あるいは産業再生計画に沿った新規開業、その成長支援等によりますところの新規雇用の創出とか、あるいはまた、中高年の非自発的な失業者に対する必要な雇用機会を提供できるような「緊急雇用創出特別基金」といったものを創設することを決めているわけでございまして、これも全体で事業規模で1兆円程度の施策を実施することとしております。
「4.社会資本の重点的な整備」ということで、全体として事業規模8兆 1,000億円程度を追加するということで、2)の【1】から12ページの【7】に至るまで、この7つの分野を重点的に投資をしていこうということでございます。それから、4)にありますように、民間資金を活用する観点から、PFIの推進につきましても、所要の措置を講ずることを決定しているものでございます。
次が「5.恒久的な減税等」の問題で、これは既に決まっておりますが、所得課税につきましては、最高税率を50%に引き下げて、4兆円規模の恒久的な減税を行うとか、あるいは法人課税につきましても、11年度から実効税率40%程度への引下げを行うということを決めているわけでございます。また、その他、2)で住宅建設・設備投資などに必要な政策税制につきまして精力的に検討するということを決めているものでございます。
それから、「6.財政構造改革法の凍結」で ございます。これにつきましても、財政構造改革を推進するという基本的な考え方を守りながら、まずは景気回復に全力を尽くすという観点から、財政構造改革法を凍結することとして、先日の臨時国会で成立したところでございます。
3番目の柱が、「Ⅲ.世界経済リスクへの対応」ということで、世界経済、特に我が国と密接な関係にあるアジア経済の安定にとって、我が国経済の再生が極めて重要であるといった認識の下に、事業規模1兆円程度のアジア支援策などを実施することとしております。
具体的な柱は、13ページにありますように、1が「アジア諸国の通貨危機等への支援」ということでございまして、輸出入銀行の融資や円借款などを活用した施策、あるいはまたアジア通貨危機支援基金を設立して利子補給や保証など行う施策、あるいは国際開発基金間の保証機能の活用といった施策を考えたわけでございます。
2は「アジアの現地日系企業等に対する支援」ということで、アジア経済で日系企業が輸出にとって非常に重要な役割を果たしているということから、この12月1日から、日本の親企業を通じる融資制度ということで、国民金融公庫・中小企業金融公庫などによる制度を作っているわけでございます。それから、アジアの円借款に関しましても、アジア諸国のための特別円借款ということで、特別に毎年 2,000億円、3年間で 6,000億円という規模の円借款の創設をつい先日決めたところでございます。
こういった対策によりまして、今申しました社会資本整備の 8.1兆円、所得税減税の4兆円。それから、ご説明いたしませんでしたが、地域振興券ということで 7,000億円というのがございますので、この3つを合わせまして経済効果を試算しますと、地域振興券につきましては、初めての制度で効果は難しいのでございますが、所得減税と同じような効果で試算いたしまして、合わせまして今後向こう1年間で 2.3%程度の実質成長率押し上げ効果があると試算しております。
続きまして、資料3「平成11年度の経済見通しと経済運営の基本的態度」でございます。経済運営の基本的態度は、3つの柱からなっておりますが、基本的には今の緊急経済対策で申しました考え方と同じでございますので、省かせていただきまして、最後の4ページの来年度の主要経済指標につきまして、ご説明させていただきます。
経済見通しは、まず前提で、為替レートにつきましては、政府は予測いたしておりませんで、作業を開始するときの為替レートが今後向こう1年間、平成11年度末まで続くという前提で作業をしております。その関係で、為替レートにつきましては、 119円25銭ということを前提にこの見通しは作っているものでございます。
一番上の欄の国内総生産(GDP)でございますが、来年度は、先ほどの大臣のご発言にもありましたように、実質で 0.5%のプラスということでございます。なお、今年度につきましては、先般、-1.8%と見直したところでございますが、その後、今年の7-9月の国民所得統計で、特に設備投資の落ち込みが激しかったために、さらに-1.2%と下方に改定しております。
その主な内訳でございますが、まず消費でございますけれども、これから需要追加、あるいは雇用対策の効果も出てまいりますし、また、先ほど申しましたような所得税減税の効果などが出てくるということで、来年度につきましては、わずかでありますが、+ 0.4%の伸びを見ております。民間住宅につきましても、住宅金融公庫金利、先般、大幅な引下げを行ったところでございます。また、この28日から 0.2%ほどの引上げがありますが、そういった金利の効果。さらに、今回は思い切った住宅税制の改正を行ったところでございますので、それを合わせまして、来年度は今年度の- 8.6%から+ 6.7%と見ております。民間企業設備につきましては、まだまだ非常に厳しい状況にあるということで、今年度13.5%の減とみておりますが、来年度につきましても、当面マイナスが続くということで、年度平均ではなお 5.2%の減とみているところでございます。
なお、民間機関がいろいろ今予測をしておりますが、最高が+ 0.4%から- 2.2%であったかと思っておりますが、平均すれば-0.5%でございますが、特に大きな違いは民間住宅と民間消費でございまして、設備投資につきましては、ほぼ同じような見方かと思っております。消費や住宅につきましては、つい最近決まったいろいろな政策の効果を私どもは織り込んでおりますので、それを考えれば、実質的にそう大きな違いではないのではないかと見ております。
雇用につきましては、ここにございますように、需要の追加なり雇用対策によって、労働力人口、就業者総数ともに 0.2%ほどの上昇と見ております。失業率につきましては、別の紙にありますが、本年度とほぼ同等の、年度平均すれば 4.3%程度の失業率ということでみております。一時的にはさらに上がったりすることもあろうかと思いますけれども、年度平均としては同じとみております。
鉱工業生産でございますが、今年度は-7.0%と見込んでおりますが、在庫調整も次第に進展していくということで、来年度につきましては+ 1.0%とみております。
物価でございますが、まず国内卸売物価でございますけれども、今年は-2.1%とみておりますが、これから民間需要が緩やかに回復していって、需給面からの下落圧力が次第に低下するとみておりますので、来年度は-0.9%とみております。消費者物価につきましては、個人消費の緩やかな回復を背景に、0.1%ということで若干のプラスをみております。
最後に、国際収支でございますけれども、世界経済につきましては、欧米経済が緩やかに減速し、アジア経済は今年大きな落ち込みをしたのが下げ止まるとみておりますので、全体としては緩やかな減速だろうとみております。
そういった中で、下から3つ目の輸出でございますけれども、特に我が国の輸出先の大きなウェイトを占めますアジア市場が底落ちがあるという面はあるわけですが、一方で円高効果もあるということで、数量的にはわずかに増えると思っておりますが、価格面の円高効果もありますので、伸びとしては来年度 3.4%の減とみております。輸入につきましては、数量面は円高や内需増加で伸びると思っておりますが、価格が円高で下落するということで、全体としては▲ 1.9%とみているわけでございます。この結果、来年度の経常収支は、今年度かなり増大いたしまして、17.6兆円程度ということになるわけでございますが、来年度は若干低下して17.1兆円程度ということでございます。経常収支のGDP比率としては、今年度は 3.6%、来年度は 3.4%程度ということで、若干GDP比率は低下するとみているわけでございます。
以上でございます。
〔 豊田会長 〕 ありがとうございました。
それでは、議題に入らせていただきたく存じます。最初の議題は、「『構造改革のための経済社会計画―活力ある経済・安心できるくらし―』の推進状況と今後の課題」についてでございます。平成7年12月に閣議決定されました「構造改革のための経済社会計画」におきましては、経済審議会におきまして、毎年、同経済計画に掲げられました諸施策の推進状況を点検しまして、政府に報告することとされております。
それでは、まず、今回の報告案を取りまとめられました小林部会長から、部会での審議経過につきましてご報告いただき、それから、事務局より説明をお願いいたします。
〔 小林部会長 〕 企画部会部会長の小林でございます。
部会のこれまでの審議経過について、簡単にご報告いたします。
企画部会は、本年6月の経済審議会総会におきまして設置されました。9月24日に第1回会合を開きまして、審議を開始いたしました。企画部会におきましては、現行経済計画「構造改革のための経済社会計画」の想定と現実との乖離、将来の経済社会のマクロ的変化、マクロ経済政策・雇用政策等について重点的に検討を行いました。そうした検討結果を踏まえまして、12月11日の第4回会合にて、現行経済計画のフォローアップ報告(案)を取りまとめたところでございます。
現行経済計画の想定と現実との乖離につきましては、経済成長率と失業率が特に顕著でありますけれども、その原因についての部会での議論を総合いたしますと、平成9年度における消費税率引上げ等の国民負担増、あるいは財政支出の抑制等といった政策の影響が一つ。2番目に、アジア通貨・金融危機等の国際経済環境の変化。3番目に、金融機関の不良債権問題等負の遺産の処理の遅れ。4番目に、構造改革の効果の発現が十分でないこと。さらに5番目に、将来の不透明感等、いろいろな要因が連動したという認識でございます。
しかし、いろいろあるわけでありますけれども、あえて整理させていただくと、一番大きな要因としては、不良債権問題があったのではないかと思います。この不良債権問題と、構造改革という10年来の懸案課題が残されたままでずっといたところに加えて、アジア通貨・金融危機が徹底的に地合いを悪くした。結果、不透明感が慢性的な症状になりまして、そこで、国民負担増、あるいは財政支出抑制という政策選択上の緩急の判断を誤ったということになるのではないかと思っております。
なお、構造改革については、現行経済計画の中心的な柱であります。その進捗状況の全体的な評価としましては、施策の推進という意味では、概ね現行経済計画に示された基本的な方向に向かって進んでいると言えるわけでありますけれども、しかし、中にはようやく最近になって実際の措置がとられたものもありますし、また、検討中ないし準備中であるというものもございます。
そうした中で、一つ言えることは、構造改革の効果の発現にある程度時間が必要だということがございますし、また、2番目に、経済全体としてのシステム変革は、全体としての施策がそろってはじめて十分な効果を持つということから、より早期に、かつ、集中的に施策を進める必要があったわけでありますけれども、振り返ってみますと、実際のアクションについてみますと、スピードと集中度において残念ながら不十分であったと言わざるを得ないと思います。また、現状のような需要低迷下においては、労働・資本・土地等の流動化が阻害されている。そういうことによりまして、構造改革の効果が発現しにくくなっているということも指摘することができるかと思います。
また、部会では、こういうことを踏まえてでありますが、今後のマクロ経済政策としては、経済が安定軌道へと回復した後には、もちろんそれを目指しているわけでありますが、再び中長期的に財政の健全化を図っていくということが必要になりますが、その政策転換のタイミングにつきましては、今回の経験に照らして、十分に慎重であるべきである。また、雇用政策としては、労働移動を円滑化していくことや、個々の労働者が主体的に職業能力開発を図っていくことが、低生産性のセクターの活性化のためにも不可避だ。そのための環境整備を進めていくべきだという方向性が示されました。
そのほかにもいろいろ貴重な意見をお出しいただきましたが、ご紹介いたしますと、規制緩和等の構造改革は、まだまだ不十分で、今後、構造改革の効果を十分に発現させるためにも、一層強力に推進する必要がある。あるいは、過去の政策評価を行う際には、仮に異なった政策をとっていたとしたらどうなっていたかということについての計量的試算(ヒストリカルシミュレーション)を行うことが有効である。あるいは、世界経済全体が、モノ・サービス中心の時代から、金融中心の時代に変化している。それに対応した新しい経済のシステムを作ることが重要になっている。さらには、足元の経済動向と計画との乖離は、需要不足によるところが大きいけれども、そのための方策としては、単なる需要の追加ではなく、石炭から石油への代替に見られたように、構造改革により経済のシステムを変える中で新しい需要を創ることが必要である。こういったご意見が出されました。
本日ご審議いただく現行経済計画の本年度のフォローアップ報告(案)につきましては、こうした部会での意見の方向性を集約して取りまとめたものでございます。報告書(案)の中では、現行経済計画の想定から現実の経済動向が大きく乖離している現状を踏まえると、現行経済計画に代わる新たな経済計画を早急に策定すべき必要性についても指摘させていただいております。
以上が、企画部会の審議状況でございますが、この報告(案)の内容につきましては、詳しくは事務局からお願いしたいと思います。
〔 中名生総合計画局長 〕 総合計画局長の中名生でございます。
お手元の資料4「『構造改革のための経済社会計画―活力ある経済・安心できるくらし―』の推進状況と今後の課題(案)」ということで、いわゆるフォローアップ報告がございますが、これに即しまして、部会長の説明の補足をさせていただきます。
表紙をおめくりいただきますと、目次がございます。ここでご覧いただきますように、今年のフォローアップ報告では4章構成にいたしております。第1章では「内外の経済情勢の展開」。第2章では、今、部会長からもお話がございましたように、現行の経済計画で想定している姿と現実の経済の推移が非常に大きく乖離が生じましたので、それがどういう要因によって生じたかというのを重点的に述べております。第3章では、それを踏まえて、「今後の経済運営の方向性」ということでございます。最後に第4章で、今お話がございましたように、新しい経済計画を策定すべきであるというご提言をいただいている。こういう内容になっております。
2ページにまいりまして、第1章「内外経済情勢の展開」でございます。最初に、第1節で「国際経済情勢」でございます。委員の皆様ご承知のとおりでありますが、3行目から書いてございますように、昨年7月のタイのバーツ危機から始まりましたアジアの通貨・金融危機の影響ということで、アジアの経済が低下し、さらにそれが世界経済全体にも影響を及ぼしているということでございまして、下の(表1)にIMFの世界経済の予測の数字が掲げてございますが、一番上の世界経済全体で見ますと、97年が 4.1%の成長に対しまして、今年は 2.0%ということで、成長率が大きくダウンするという見通しになっております。とりわけ、アジアのNIEs、ASEAN諸国の成長率でご覧いただきますと、それぞれ6%から▲ 2.9%、 3.7%から▲10.4%ということで、大変大きく落ち込むという姿になっております。
3ページにまいりまして、アメリカ経済でございますが、アメリカ経済は景気拡大が既に8年目に入っております。特に個人消費に牽引される形で内需中心の拡大が続いているということでございます。しかし、ここにアメリカの家計貯蓄率の数字を掲げておりますが、最近のところではわずかながら貯蓄率がマイナスという形で、非常に所得の伸びを超えた消費が行われている。そういうことで、先行きについては、アメリカ経済についても不安材料が見られるということを言っております。
それから、第2節で「我が国経済の現状」ということでございます。計画策定後の我が国経済の状況を見てみますと、これは5ページの(表2)に数字が掲げてございます。ご承知の数字でありますが、平成7年12月に現在の計画が策定されておりますが、その後の動きということで、一番上の実質成長率をご覧いただきますと、平成7年度が3%成長、平成8年度が 4.4%。最近改定されまして、 4.4%という非常に高い成長率だという形になっております。それが一転して、平成9年度には▲ 0.4%という形で、ひどく落ち込んだ形になっております。失業率、雇用情勢につきましても、失業率が 4.3%。有効求人倍率が 0.5を下回って0.48倍ということで、雇用情勢も大変厳しいということでございます。物価は非常に落ち着いておりますけれども、逆に、デフレ・スパイラルではないかという議論が出ているということでありまして、我々、デフレ・スパイラルとは認識しておりませんが、大臣が常に申しておりますように、デフレ・スパイラルの入り口のすぐわきを通るという非常に危ない状況ということでございます。
それから、対外バランス、財政、金融の情勢ということをまとめております。対外バランスにつきましては、5ページの下の(表3)に数字を掲げておりますが、ご覧いただきますように、平成8年度までは経常収支の黒字が対GDP比で減ってくるという姿でございましたが、平成9年度にはこれが反転して拡大し、その後も拡大の傾向にあるという形でございます。
6ページにまいりまして、財政の状況ということで、財政は、累次の経済対策を実施しているということから、多額の公債を発行するということで、ほかの先進諸国と比べましても極度に財政バランスは悪化した状態になっているということでございます。(表4)に財政状況を掲げてございます。国・地方を合わせました長期債務残高は、平成10年度で 560兆円程度ということでございます。また、下の(表5)では、財政状況をほかの先進諸国と比較して掲げてございます。財政収支のGDP比に対する比率、あるいは残高のGDP比に対する比率をご覧いただきましても、日本の場合には、国鉄債務まで含めて考えますと、GDPに対して15%を超える赤字でありますし、債務残高もGDPの額を超えるという状況で、非常に厳しい財政状況になっているということでございます。
金融情勢につきましては、6ページの下から書いてございますけれども、金融機関の不良債権問題の一層の深刻化や、あるいは資産価格の下落による自己資本比率の低下などを背景といたしまして、民間の金融機関が新規の貸出に非常に慎重になっている、いわゆる貸し渋り。さらには、一部貸出の回収を進めているということで、その結果、7ページの(表6)に金融関連の指標を掲げておりますが、貸出残高は最近のところでは前年比マイナスという状態が続いているということでございます。また、国際的に見ましても、日本の金融システム、あるいは金融機関に対する国際金融市場の認識は厳しくなっているということで、ジャパン・プレミアムがつくといった状況、資金調達が難しいという状況が出ているということでございます。
次に、第3節で、現行の経済計画と現実の経済の推移との乖離状況ということでございます。最初に経済成長率で書いてございますが、3年前に作られました現行の経済計画では、規制緩和等の構造改革が進展した場合には、実質で3%程度の成長、構造改革が進まない場合には1と3/4%程度の成長という見通しを出しておりましたが、現実の動きは、先ほど表でもご覧いただきましたように、平成7年度、8年度は、むしろそれを上回る成長でございましたが、平成9年度に大きく落ち込み、平成10年度は、先ほど調整局長がご説明いたしましたように、実績見込みとして▲ 2.2%ということでございます。期間の伸びということでは、8ページの上から2行目に、平成8~10年度の平均の成長率を掲げてございますが、10年度の実績見込みを入れて計算いたしますと、 0.6%程度ということでございます。さらに、平成11年度は、昨日決定されました経済見通しで 0.5%程度という状況になっておりまして、経済計画で想定した姿、構造改革が進展しなかった場合という姿に比べても、なお大きく下回るという状況になっております。
これにつきましては、33ページ以下に幾つかの参考図表を掲げておりますが、1つだけご覧いただきますと、33ページの参考図表1―1に「実質経済成長率の乖離」というグラフを掲げてございます。上のグラフが前年同期比の伸び率のグラフでございまして、下の方が実質GDPの実額ベースの推移でございます。長い点線で書いてあるのが構造改革が進展した場合の、上で申しますと実質3%という成長率の点線でございます。小さい点線で書いてございますのが、構造改革が進展しなかった場合ということで、計画に掲げてある1.75%という成長率でございます。下はそれを実質の線であらわしております。太い実線が実際の成長率の推移でございますが、これでご覧いただきますと、初めは想定のラインを上回っておりましたが、昨年の4―6月期から少し下にいって、特に昨年の10―12月期以降急速に想定したラインから乖離していったという姿がよくおわかりいただけるかと存じます。
8ページに戻りまして、物価の上昇率については、これは結果的には経済計画と似たような数字になっていますけれども、要因的に考えると、内需が弱くて物価を押し下げたという要因と、円安で物価が上がったという両方が複合されて、結果的にほぼ似た姿になっているということでございます。失業率は、申し上げるまでもなく、計画で考えておりました2と3/4%を大きく上回って、現在時点で 4.3%ということでございます。
10ページにまいりまして、第2章で、それではこういう乖離がどうして生じたかということを、先ほど部会長からもお話がございましたけれども、5つの要因に分けて整理、分析をいたしております。第1点は、1)に掲げてございますが、政策の影響。とりわけ財政面からのデフレ効果が経済の足を引っ張ったのではないかということでございます。冒頭に書いてございますように、平成9年度についてみると、不良債権問題の経済に与える影響の深刻さについての認識が不十分な中で、官需から民需へのバトンタッチを見込んで大幅な財政支出の増加と歳出の削減が実施されたということでございます。
これを国民負担増、税の面からの負担増、11ページでは財政支出の方ということで書いてございますが、最初に、消費税率の引上げ、あるいは特別減税の廃止といった国民負担増がどの程度経済の足を引っ張ったかということで、これは事後的なシミュレーションをやってみますと、確かにマイナスの影響を与えておりますが、数字的に申しますと、成長率に与える影響としては1%弱という形の計算になります。それから、消費税率の引上げの場合に、そういう負担増のほかに、税率が上がる前の駆け込み需要と、4月以降の反動減というのがございまして、これが当初考えていたより大きかったということが書いてありまして、前後で 1.5%ぐらい、8年度、9年度の成長率の振れを与えたということを書いてございます。そういう意味では、駆け込み需要とその反動減は予想以上に大きく、その影響が長引いたということを言っております。
財政支出の方でございますが、一番最後のパラグラフに書いてございますけれども、平成9年度は、政府見通しでもほぼ横ばいの財政支出、公的資本形成を見込んでおりましたが、結果的には、前年比名目で6%を若干超えるマイナスになっておりまして、これだけで成長率を 0.6%程度足を引っ張った形になっているということを言っております。
2番目の要因といたしましては、2)の「国際経済環境の変化」ということでございます。これは後ろの方に参考図表も載せておりますが、これまでの計画期間ということで考えますと、外需はむしろ経済計画で想定していたよりも上にいっておりますから、それが直ちに乖離の要因ということではございませんが、最初に申し上げましたように、昨年の夏以降のアジアの通貨・金融危機が、企業活動を通じて、あるいは資本取引を通じて我が国経済にも下振れの要因となったということを言っております。
それから、12ページの中ほどの3)、第3番目の要因ということで、小林部会長から、これが非常に大きかったというご指摘がございましたけれども、不良債権問題、それに伴う金融システムの不安、貸し渋りという問題でございます。金融機関のリストラが遅れたということで、これが景気の低迷、資産価格の下落の継続等により新たな不良債権が発生するということで、不良債権問題が厳しさを増したということであります。そうした状況の中で、昨年11月に、複数の大型金融機関の倒産ということになりまして、金融システムに対する国民の不安感の高まりから、景気の先行きに対する不透明感が増し、個人消費、あるいは企業の設備投資に悪影響を及ぼすことになったということでございます。
13ページにまいりまして、さらに一般的に、地価の下落が続いていること、株価の低迷ということが、家計、企業にとってもバランスシートの悪化ということでマイナスの要因になっているということを書いております。13ページの下の方では、金融機関の貸し渋り、資金回収ということにさらに重ねて触れております。
14ページにまいりまして、4つ目の要因ということで、経済構造改革。現行の経済計画は、構造改革のための経済社会計画ということで、経済構造改革を前面に掲げておりまして、先ほど数字でも申し上げましたように、この構造改革が進むか進まないかということによって、成長率にも1%を超える影響があるだろうということを指摘しているわけでありますけれども、それでは、構造改革の効果がこの期間に十分にあらわれたのかどうかということでございます。そこについては、必ずしも十分にあらわれていないということで、分けて申し上げると、2つの要因があるのではないかということでございます。
構造改革につきましては、ここに幾つか掲げてございますけれども、例えば経済審議会でも一昨年の12月に、いわゆる6分野の経済構造改革ということで内閣総理大臣に非常に大胆な提起を行っていただいておりますし、さらに、昨年5月には、「経済構造の変革と創造のための行動計画」が閣議決定され、また、今年の3月には「規制緩和推進3か年計画」の閣議決定ということで、進んでいる面もあるわけでございますけれども、分野を見ていきますと、まだ十分に進んでいないもの、あるいは考え方、方針の転換は示されておりますけれども、実施はまだ今後というものもありまして、そういう意味ではまだ、先ほど部会長からお話がありましたように、スピードをもって実施されているとは言いがたいという面がございます。
もう一つは、15ページ以下に書いてございますけれども、今非常に需要が落ち込んでいる中で、構造改革の効果が顕在化するためには、労働、資金、あるいは土地が構造改革を通じて新しい分野へ移動していく。それによって全体としての成長を高めるという効果が期待されるわけですけれども、そういう移動がスムーズにいかなかったという問題も指摘いたしております。
16ページにまいりまして、最後の要因、5番目の要因ということで、「景気後退を強めた将来の不透明感」と書いてございますが、下から2行目に書いてございますように、経済社会が非常に大きく変わっている時期において、もともと不透明感が強い中で、特に9年以降の景気後退が、経済主体のマインドをさらに下振れさせることになったということを言っております。
以上の乖離の要因を踏まえて、17ページの第2節では、今後どういう点に留意すべきかということを挙げております。第1点は、「経済のストック面に留意した経済運営」ということで、振り返って考えてみますと、平成8年度は 4.4%ということで、フローの面だけ考えると、ほとんどバブルの時期に近いような成長率が達成できたわけでありますけれども、株価、地価、さらに不良債権など、ストックの面で大きな問題を抱えていたということが反省されるわけであります。
そういう面から、例えば今後の問題として、財政再建の必要性ということは変わりがありませんけれども、「適切なタイミングと施策面での十分な手当てにより、まずは不良債権問題を短期集中的に処理することが、政策の優先度の観点からは適当であったと考えるべきである。」という反省をいたしております。また、その下に続けて書いておりますが、「現行経済計画策定時には、不良債権問題の先行きに関する状況認識が必ずしも十分であったとは言えない。今後はこうした経験を踏まえて、同じ過ちを繰り返さないよう、ストック面への十分な配慮を行う必要がある。」ということを言っております。
2つ目といたしましては、「成熟経済下での下振れリスク」ということで、現在、家計の消費を考えましても、必需的な消費というよりも、裁量的な消費が多くなってくる。こういう状況になりますと、とかく経済が下振れをしやすいということで、そういうリスクを想定した厳しいシナリオに対応できる対策を用意していく必要があるということを言っております。
3番目には、「構造改革の効果についての認識」ということでありますが、構造改革は引き続き極めて重要な課題でありますけれども、需要が非常に低迷した場合には、それだけでは十分ではないということを言っております。
4番目には、世界経済との相互依存性の認識を軸に持たなければいけないということを言っております。
次に、20ページにまいりまして、第3章の「今後の経済運営の方向性」でございます。ここでは大きく分けて2つ言っております。冒頭に書いておりますが、「今後の経済運営においては、第一に、当面の厳しい経済状況から早急に脱却し、我が国経済再生を図ること、第二に、経済再生を実現した後、中長期的にバランスのとれた成長軌道を確実にするとともに、21世紀の新しい経済社会の仕組みを築き上げていく」という2つが重要であるということを言っております。
第1節では、前段の方の話をいたしておりまして、これも内容的には2つございますけれども、「経済再生のためには、まず、景気の底割れ要因となりかねない金融システム不安・信用収縮のリスクに対して万全の対策を講じる」というのが第1点でございます。第2点といたしましては、「併せて、十分な需要喚起を行うことによって景気の回復を図る必要がある。」ということを言っております。
「金融システムの安定化・信用収縮対策」ということでは、一連の法的措置等がこの前の臨時国会でとられましたが、20ページの一番最後のパラグラフで、「今後とも、金融システム全体の危機的な状況を絶対に起こさない」ということで、万全を期す必要がある。「同時に、金融機関には抜本的なリストラの断行が求められるが、そうした金融機関の努力を前提として、今回の措置を金融機関の資本増強のために大胆に使い、健全な金融機関の体力回復を促していくことが必要である。」ということを言っております。
21ページにまいりまして、第2節の「中長期的な経済政策」では、最初に「マクロ経済政策」ということで、景気が回復した先の話といたしまして、財政バランスの回復を図っていく必要があるということを言っておりますが、その際、22ページの上に書いてございますように、一つには、その「タイミングについては十分慎重であるべきである」ということで、「経済が安定軌道へと回復したと考えられる場合にも、様々なリスク要因を考慮し、景気の先行きを十分見極めた上で、慎重に対応することが必要である。」ということを言っております。その次のパラグラフで、「景気動向の把握については、認知ラグを短縮することで、より早くより正確に行い、早期からこうした政策転換について幅広い議論がなされるための判断材料を準備していくことが重要である。」ということを指摘いたしております。
2番目は、2)「構造改革」の問題ということで、3行目から書いてございますが、「構造改革を一層強力に進めることにより、内外の環境変化に対する我が国経済社会の『供給面』での対応の遅れを早急に取り戻すことが必要かつ喫緊の課題である。」ということを指摘いたしております。
時間の関係で少し急ぎますけれども、23ページにまいりまして、3番目といたしましては、中長期的な課題として、3)「雇用政策」を挙げております。ここでの基本的な認識は、「企業におけるリストラや人員削減が進むとともに、失業率が高水準で推移する昨今の厳しい雇用情勢の中、構造改革を推進しつつ早期に雇用の安定を図ることは、我が国の国民生活の安定に向けた最重要課題の一つである。」ということを言っております。そのためには、新たな雇用の場を創設していく。さらには、労働移動の円滑化を図っていくことが重要であるということを言っております。
24ページにまいりまして、上から3行目、「また」というところに書いてございますが、これから、従来の非正規労働者に加えて、パート、あるいは派遣といった多様な形の就業形態が増えてくる。そういう人たちが安心して働ける環境を整備することも重要である。「さらに」ということで書いてございますけれども、エンプロイアビリティという言葉も使っておりますけれども、労働者が職場を移っても働ける能力の開発が重要であるということを言っております。
25ページにまいりまして、最後に、第4章「新しい経済計画の策定」ということで、まず最初に、どうして新しい経済計画が必要かということを4点ほど書いてございます。第1には「人々の将来不安の解消」ということで、「我が国経済の先行きに関する不安感や不透明感が、家計及び企業のマインドを萎縮させており、それが現在の景気低迷の一つの要因となっている」。こういう状況を考えて、それを解消するような将来ビジョンを示す必要があるというのが第1点でございます。
第2点といたしましては、「中長期的な経済政策の指針」と書いてございますけれども、政府の政策スタンスが緊縮型から拡張型へと大きく転換するという中で、国民にとって政策の全体像がとらえにくい状態となっている。こうした中で、各種の政策間の整合性を確保しつつ政策の全体像を国民にわかりやすく提示することが必要であるということでございます。
3番目は、「中長期の経済成長率等マクロフレームの提示」ということで、現在のように経済計画のマクロフレームが実際から非常に大きく乖離しているということになってまいりますと、非常に不明瞭が生じるということであります。なお、そのフレームという場合に、26ページの上から2行目で、「今後の経済社会の姿をわかりやすく示すためにはどのような指標を盛り込むべきかについて十分検討した上で、新しい経済計画を策定することによって新たにマクロフレームを示すことが課題になっている。」。従来と同じような数字でいいのかどうかということは、また検討していただくべき問題であると考えております。
4番目は、「世界へ向けての情報発信」ということで、いまや大きくなりました日本経済がどういう方向で進んでいるのだということは、現実にいろいろと海外からもご指摘がありますので、世界に向けて日本の姿、あるいは日本の政策方向を示すことも、新しく作る経済計画の重要な課題であろうと考えております。
第2節が「新しい経済計画に求められるもの」ということで、ここに5点ほど書いてございます。3行目辺りから書いてございますけれども、「実際の経済政策運営において、現行経済計画が指針としてのその機能を十分に果たし得なかったという問題もある。こうした反省に立ち、今後、新しい経済計画を策定する際には、次のような点に留意することが必要である。」ということでございますが、その後に「なお」書きで一つ重要な点が書いてございますけれども、「個人や企業の活発な活動がより重要となる今後の経済社会においては、『計画』という名称が適当か否かを含め、新たな発想で、我が国経済社会の指針のあり方を示すことを検討すべきである。」とありまして、これは従来から経済計画というと、引っくり返して計画経済的なニュアンスがあるのではないかということで、これはいろいろなところでご議論されている。例えば展望と指針とか、いろいろな言い換え。あるいはビジョンと政策体系といいますか、そういう内容として認識されておりますけれども、これからは名前そのものももう少し考えていく必要があるのではないかということもここに書いてございます。
5点書いてございますが、最初は、「政策相互間の整合性確保と優先順位の明確化」ということで、「経済計画は様々な個別政策の単なる寄せ集めであってはならない」ということで、優先順位を明確にするようにということを言っております。
27ページにまいりまして、そういう方向性から、「産業構造の転換を図る施策を推進する中で、景気対策のための公共事業の追加や雇用対策を実施する場合には、それらが従来型の産業構造の維持につながるのではなく、新しい産業構造の構築に結びつくものとなるよう十分な企画がなされるべきである。」ということで、先ほど調整局長がご説明いたしました11月16日の緊急経済対策の中でも、そういう需要追加を単なる需要追加ではなくて、将来の方向性に合わせてやるという努力がされているものと考えております。
2番目といたしましては、「政策指針の設定とその柔軟性の確保」ということで、3行目に書いてありますように、経済計画がどこまで進捗しているかということ、これはフォローアップで従来もやっておりますけれども、今後より一層事後評価のしやすい形の計画の作り方が必要ではないかということと、もう一つは、併せて、若干相矛盾する面はありますけれども、状況が変わった場合に柔軟に対応できる工夫が必要だということであります。
3番目は、「リスク要因の考慮」ということで、現在の状況の中では、下振れのリスク等がありますので、そういうリスクに対応できる計画にすべきであるということ。
4番目は、「より長期的な展望の必要性」ということでありまして、最近の経済計画では、5年計画というのが比較的多いわけでありますが、「経済社会の仕組みの歴史的大転換期にある今日においては、持続的発展が可能な我が国経済社会の展望を国民にわかりやすく示すことが経済計画の重要な役割になる。」ということで、例えば人口の動き等、あるいは財政バランスの回復、社会保障制度のあり方、といったものを大きな歴史的な転換期の中でとらえていくとすると、従来の比較的多かった5年計画というよりは、もう少し長いスパンでものごとを考える必要があるのではないか、あるいはビジョンを示す必要があるのではないかということを言っております。
最後になりますが、これは内容というよりも策定過程でありまして、経済計画の策定過程というのが非常に重要であるということを言っております。即ち、経済計画が十分国民の中に浸透し、その後の政策運営の指針となるためには、作る過程においてできるだけ多くの方々に関心を持っていただき、参画の過程に関与していただく。そういう工夫を、従来もされてまいりましたが、さらに一層の工夫が必要ではないかということを指摘させていただいております。
以上でございます。
〔 豊田会長 〕 ありがとうございました。
それでは、ただいま説明のありました「『構造改革のための経済社会計画―活力ある経済・安心できるくらし ―』の推進状況と今後の課題(案)」につきまして、ご意見、ご質問等をお伺いいたしたく存じます。
得本委員、どうぞ。
〔 得本委員 〕 乖離の要因等については大分突っ込んで報告がされ、お聞きしますと、従来はあまり書かなかったことでも大分突っ込んで書きましたということで、そういう面では評価したいと思いますが、質問と意見、2点したいと思います。
一つは、12月の初めに平成8年度の成長率が、従来は 3.2%と言われていたのが、 4.4%。これは9年度も変わりましたけれども、確かにいろいろなやり方が、私は計算のやり方は知りませんけれども、これだけ成長が低い、または3年続けてマイナス成長云々。これを何とか改良したいということで、9年度はプラスにしたいとか、そういうときに1%以上も変わるということは、何か大きな要因があるのか。すでに十分説明されたのかもしれませんけれども、こういう状況のやり方であったときに、今後、例えばプラスへの転換とか、マインドの転換とかいっても、この数値自体に、信憑性というか、納得性というものはあるのだろうかどうなのだろうかという気がいたしますが、この辺りは質問です。
もう一点は、乖離の要因でいろいろな面が書かれているのですが、特に不良債権の問題、金融システムの問題等々については、今年の2月、3月にも資金の注入、公的資金を用意された。また、60兆円の枠とかいうのでこうしながらも、なかなか十分公的資金が、大手には一部入っていますけれども、なかなか全体にいっていない。そして、片方では、貸し渋り対策という形でいろいろな面でだいぶ、私たちも雇用問題とも絡めながらいろいろなお願い等々もしてきましたけれども、どうもこの辺りが進んでいない。これがつまり収益面や雇用等々については、どの程度影響があったのかどうか、もう少し突っ込んだ分析ができなかったものでしょうか。
後の方は意見ですけれども、2つ、質問と意見、併せて述べさせていただきたいと思います。
〔 経済研究所長 〕 経済研究所長の貞広です。
今お尋ねの最初の点でございますけれども、おっしゃるように、96年度の成長率が、当初QEベースでは 3.2%。これは1%強上方改定いたしました。これは中身を調べてみますと、名目の数字はほとんど変わらないのでございますけれども、物価上昇率、つまりデフレーターがかなり大きく変わっております。原因はまずデフレーターにあります。デフレーターはどこに原因があるのかというのを調べてみますと、民間企業設備投資、政府公共固定資本形成、3つ目が輸出。この3つのデフレーターがQEベース、つまり 3.2%ベースのときと比べて、いずれも下がっているということであります。
なぜ下がったのかといいますと、実は今回の国民所得統計確報で、基礎の一次統計になっておりますデータ、即ち、卸売物価統計をこれまでの90年価格から95年価格に切り替えました。それに伴って、実は日本銀行の卸売物価統計の中で、特に資本財関係のデフレーターが95年価格と90年価格を比べますと、大幅に下がっております。これは中身は何かと申しますと、コンピュータ等の、特に資本財の価格が、これはかなり技術的な面もあるのですけれども、資本の質が、性能がよくなりますと価格が下がるという取扱いをします。これは統計の言葉でヘドロキ指数と言うのですけれども、このヘドロキ指数で随分価格が下がっているというのが、卸売物価統計に入って、それがそのままGDP統計のデフレーターに反映して、民間投資、公共投資、輸出という3つのデフレーターが下がって、名目は変わらないのですけれども、実質が変わった。こういうことでございます。
〔 得本委員 〕 ということは、5年間のあれで見直しをされたという、若干数字的な面では見直しを、よくわかりませんが、テクニカルな数字の視点が変わったから、あと数年間は大丈夫だと逆に考えていいのですか。5年ごとですから。
〔 経済研究所長 〕 特に今後の資本財の、特にそういうコンピュータ等、IC等の電子電機関係の数字がどの程度下がってくるかということでございます。同じ基準でありましたら、従来ほどは急にはこないと思います。
〔 豊田会長 〕 長岡委員、どうぞ。
〔 長岡会長代理 〕 今の関連で。5年ごとに数字が変わるというのはわかるのですけれども、私もかつての経験に照らしまして、そのときそのときの政策判断というのは、そのときの数字でやっているわけですね。ところが、何年かたつと、さかのぼって数字がみんな変わってしまうわけですよ、5年間。その点を変えるなというわけにはいかないのですけれども、政府がいろいろな政策をどういう情勢の下にどう判断したかといったことの記録は、しかし、その記録までさかのぼって変えてしまうと、何か平仄が合わなくなる場合があるので、べつに外に発表する、しないに関係なく、過去の数値のときには、その時点での数値と、5年ごとの見直しの数値と、両方を掲げるように、内部記録等についても、そういう配慮が必要ではないかなと考えます。
〔 豊田会長 〕 水口委員、どうぞ。
〔 水口委員 〕 私、今回のフォローアップ作業と関連して総合計画局の中に設けられました構造改革推進研究会の座長を務めております水口でございますが、この研究会のこれまでの検討を踏まえまして、構造改革に関連して一言発言させていただきたいと思います。
私は、構造改革のこれまでの進捗状況は、先ほど来、小林部会長、あるいは事務局のご説明にもありましたように、かなり不十分だと考えております。特に2つの点を申し上げたいと思います。
第1点は、まだまだ多くの分野で市場メカニズムを有効に機能させるための改革が残されているという点でございます。例えば、私どもの研究会で取り上げました医療・福祉、教育といった分野におきましても、営利企業も含めた多様な民間の主体が積極的に活動できるようにするためのさらなる規制撤廃・緩和が必要であろうと思います。また、土地の分野でも、不動産の証券化とか、アフォーダブルな住宅の供給という観点から、改革すべき点は多いと思います。特に昨今、行き過ぎた規制撤廃・緩和よりも若干の規制も必要ではないかという意見も、一部ジャーナリズムの中に散見されておりますので、ここはさらに規制の撤廃・緩和を進めていくことが非常に重要ではないかというのが、第1点でございます。
第2点は、改革によって個別の分野で価格低下等の効果が見られる場合でも、その成果が他の分野へ幅広く波及していかないので、結果として、我が国経済全体の高コスト構造是正もなされず、また、経済の活性化にもつながっていない面があるということであります。
例えば電気通信の分野では、我が国におきましても、改革の成果として価格の低下やサービスの多様化が進んでおりますけれども、アメリカのようにこれを生かして様々なソフト関連の企業が続々と生まれ育つ、そして経済を活性化させていくという状況は、残念ながらまだ見られておりません。したがいまして、電気通信といった個別分野の構造改革を経済全体の活性化につなげていくためには、分野ごとでの改革に加えまして、分野横断的な成果の波及を妨げている要因を明らかにして、その要因を取り除くという新しいアプローチがこれから必要になってくるのではないかと考えます。
構造改革につきましては、このフォローアップ報告の中でも、今後とも一層の推進が必要であるとの認識が示されておりまして、全く私も異存のないところでありますが、これからは、従来の視点に加えまして、今申し上げたような2つの視点も念頭に置いて取り組む必要があるのではないかと考えております。
以上、ご報告まで。
〔 堺屋経済企画庁長官 〕 ここ数年、歴代経済企画庁の長官の経済演説を読みますと、必ず構造改革だと、今、日本は大きな転換期を迎えており、構造改革が不可欠だと、毎年言い続けているわけですが、どうもそれにふさわしい成果が上がっていない。これは水口委員のおっしゃるとおりだと思います。金融問題についても、決して無視していたのではなくして、3年ほど前から、前3回ぐらいの長官は皆さんその点を指摘しておられるのでありますが、実際は動いていなかったわけですね。
そういうことを考えますと、より大きなより高い視点から構造改革を考えるとともに、現に今行われている不況対策とともに、大変大きな変化が生まれつつあると思います。行政改革も、橋本内閣を上回るスピードで確実に行われておりますし、そういったことが相重なって、どんな社会が出てくるのか。これも私たちが考える必要があると思います。
特に、最後のところの新しいこれから作るべき計画についてでございますが、工業社会を脱した段階で、日本はどんな社会、世界の中でどういう分野で人類文明的貢献ができるのかということを考えるべきだと思うのです。いままで日本は、世界文明から見ますと、常にフォロワーでございまして、古くは東亜中華文明に、近年は西洋近代文明に追い着け、追い越せということだけがねらいでありましたけれども、自ら新しい創造文化を作って、人類全体に貢献するような未来というものは描けないのか。例えば日本は世界で最初に高齢化社会を実現するわけでございますが、そういった高齢化社会にふさわしい人類、人間の生き方の世の中を私たちが率先して作るというのは、一つの大きな夢になるのではないか、誇りになるのではないかという気もいたします。
ご指摘いただきました点、確かに言いながら進んでいない点も大いにありますので、次の機会には、相当飛躍した発想も必要かと考えております。
〔 中名生総合計画局長 〕 先ほどのご説明で落としたところがありまして、少し補足的に申し上げさせていただきます。
資料4では、本文についてポイントをご説明申し上げましたが、その後ろに31ページから幾つかの参考図表がついております。先ほど説明の中で、33ページの図表1―1をご説明いたしました。同じような形で、内外需別に分けたものが、参考図表1―2、参考図表1―3ということでついております。参考図表1―4では、物価が計画の想定とどのように推移しているか。
37ページの参考図表1―5では、「完全失業率の推移」ということで書いてございます。これは少し見にくいグラフでございますけれども、一番右に点線で書いておりますのは計画で想定した失業率の水準であります。下の2.75というのは、構造改革が進んだ場合に達成されるべき完全失業率でございます。しかし、現実には、ご覧いただいておりますように、とりわけこれは今年の4―6以降急速に失業率が上がって、現在の 4.3という水準になっている。こういうことでございます。
それから、参考図表2―1では、金融機関が公表いたしました不良債権の額が掲げてございまして、これは進んできたという推移でありましたが、公表基準が変わるという形で、さらにまたそれが結果的にははね上がったという形の推移を載せてございます。
39ページの参考図表2―2では、地価と株価の推移。これはご承知のとおりでございます。ご説明はいたしませんけれども、地価が下がり続けている。株価も低迷しているという状況でございます。
40ページの参考図表2―3では、家計の方の負債ということで、家計の負債の数字も高止まりをしているというグラフを掲げてございます。
41ページ以下では、(別紙)ということで、現在の経済計画の中では、「高コスト構造是正・活性化のための行動計画」ということで、ご覧いただきますように、物流以下10の分野についてのかなり具体的な目標を掲げておりましたが、それについてどの程度進捗しているかというのを要約的に説明しております。
49ページに飛びまして、(別表)が掲げてございます。現在の経済計画の中では、社会資本の整備目標ということで、これを例えば道路の投資が何兆円という形ではなくて、もう少し国民に身近な形で、生活の中でわかるように、例えば都市公園の整備面積とか、そういうものを掲げておりますが、それがどの程度進捗しているかということを、大体97年度までの実績が主でありますけれども、策定後の進捗状況を掲げてございます。
資料4は以上でございますが、もう2つ厚い資料を委員の皆様方のお手元にお配りしてございます。
資料5は、横長の資料でございますが、「『構造改革のための経済社会計画―活力ある経済・安心できるくらし―』の推進状況」と同じ名前がついておりますが、中をご覧いただきますとわかりますように、経済計画の中で具体的な分野ごとの施策をそれぞれ書き込んでございますが、それに沿って、どういう措置がとられてきたかという推進状況について、詳細にまとめたものということでございます。
資料6は、これも横長の資料になっておりますけれども、ご覧いただきますとわかりますように、先ほど資料4のところで要約的に10分野についての高コスト構造の是正、経済活性化のための政策の進展状況を書いてございますが、さらに具体的に、物流、エネルギー、流通、電気通信、金融サービス、旅客輸送サービス、農業生産、基準認証・輸入手続き等、公共事業、住宅建設という、計画で重要分野と考えておりました10の分野について、それぞれどういう措置がとられ、どういう推移になっているかということを、文章及び図表でフォローしたもの。こういう内容でございます。
以上でございます。
〔 豊田会長 〕 ありがとうございました。ご質問、ご質疑、ほかにございませんでしょうか。和田委員、どうぞ。
〔 和田委員 〕 新しい経済計画の策定につきまして、その必要性の一番初めのところが25ページに、「人々の将来不安の解消」ということが挙げられております。言うまでもなく、今の個人消費の低迷は、消費者の財布のひもが固いと言われておりますけれども、これは時間がありませんから細々とは申し上げませんけれども、将来に対する不安、将来の生活設計に対する不安ということが一番大きなポイントだと考えております。
それで、ここで示されております経済計画によって、将来に対する不安というのに直接つながるのかどうかというところは非常にまだまだ不十分であり、疑問が残っているということを申し上げておきたいと思います。医療なり年金なり、そういうところの不安が解消しませんと、経済計画でいろいろ示されておりましても、それが本当にどの程度の効果があるのか。私たちの生活に、今お話がありましたけれども、具体的にどのように変わってくるのかということが、まだまだ見えにくいということを申し上げておきたいと思います。将来に対する不安というのが、まずとにかく解消の方向に向かわなければ、なかなか消費者の財布のひもが緩むところまではいかないということを申し上げておきたいと思います。
〔 豊田会長 〕 ご意見、ありがとうございました。
それでは、議論もほぼ尽くされたと思いますので、「『構造改革のための経済社会計画―活力ある経済・安心できるくらし―』の推進状況と今後の課題」を経済審議会といたしまして承認いたしたいと存じますが、よろしいでしょうか。
( 「異議なし」の声あり )
ありがとうございました。ご承認いただきました本報告書は、後ほど私から総理にお渡しいたします。また、後日、閣議報告される予定となっております。
ただいま、小渕総理がお見えになりましたので、先ほどご承認いただきました本報告書を、総理にお渡しいたします。
それでは、総理よりご挨拶をいただきたいと存じます。
〔 小渕総理大臣 〕 ただいま、豊田会長から、現行経済計画の本年度のフォローアップ報告である「構造改革のための経済社会計画の推進状況と今後の課題」を頂戴いたしました。委員の皆様方におかれましては、これまで熱心なご議論を重ねていただきましたことに、厚く御礼申し上げます。
最近の我が国の経済情勢を見ますと、景気は低迷状態が長引き、極めて厳しい状況にあるものの、一層の悪化を示す動きと幾分かの改善を示す動きとが入り混じり、変化の胎動も感じられるところであります。
政府といたしましては、本年11月の緊急経済対策をはじめとする諸施策を強力に推進することにより、「不況の環」を断ち切り、平成11年度には我が国経済をはっきりしたプラス成長に転換させ、平成12年度までに経済再生を図るよう、内閣の命運をかけて全力を尽くしてまいりたいと考えております。
なお、昨日、閣議了解いたしました政府経済見通しにおきましては、平成11年度の実質経済成長率を 0.5%程度と見込んでおります。
当面は、公的需要を中心に景気の下支えを図りながら、民間消費などの回復を通じた民需主導の経済発展に円滑にバトンタッチすることを目指すとともに、景気回復の動きを中長期的な安定成長につなげるため、21世紀の多様な知恵の時代にふさわしい社会の構築に向けた構造改革を推進していく所存であります。
また、現行経済計画である「構造改革のための経済社会計画」は、策定後約3年が経過いたしましたが、そこで示されている経済成長率等のマクロ経済の姿は、現状から大きく乖離しております。本日頂戴いたしました現行経済計画のフォローアップ報告では、こうした状況の要因を分析するとともに、新たな中長期の経済政策のあり方をお示しいただき、さらに、新しい経済計画策定の必要性についてのご指摘をいただいたところであります。ご指摘については重く受けとめ、現行経済計画に替わる新しい経済計画の策定をお願いすることにつきまして、早急に検討を行い、年明け後できるだけ早いタイミングで、私として、その方針を明らかにしたいと存じます。
経済審議会の委員の皆様方には、今後とも我が国経済の運営につきまして貴重なご意見をいただきたいと考えております。引き続き委員の皆様のご指導とご協力を今後とも切にお願い申し上げ、私の挨拶とさせていただきます。
〔 豊田会長 〕 ありがとうございました。
本日は、総理にお時間をいただいておりますので、せっかくの機会でございますので、ご自由にご発言いただきたいと思います。
畠山委員、どうぞ。
〔 畠山委員 〕 私、今日から、前任の豊島ジェトロ理事長のあとを受けまして、このメンバーに入れていただいた畠山でございます。よろしくお願いいたします。ずっと長いこと貿易の関係をやってきたものですから、貿易について申し上げたいと思います。
先ほどご説明いただいた緊急経済対策の「はじめに」の3)の「国際協調の推進、とりわけ対外経済摩擦の抑制」ということが唱われているわけでございまして、これは非常に重要な点だと思います。それで、ご案内のとおり、アメリカの成長率も鈍化してくる。EUの成長率も鈍化していく。日本の黒字は大いに保っていく。こういうことになるわけですから、これから来年にかけてだんだんこういう摩擦の要因が増えてくると思うわけであります。
その際に、しかしながら、よく考えてみますと、黒字が増えても、WTOで輸出規制も禁止されていますから、何も手段はないわけであります。それなのに、なぜ摩擦になるかといいますと、外国、なかんずくアメリカが、日本市場は閉鎖的だという誤解を持っている面が与って大きいと思うのですね。
そこで、その誤解を解かなければいけないわけでありますが、日本は貿易の中心が工業製品でありますけれども、工業製品は非常に開放的なわけです。規制があるのはサービスでありまして、ここは規制緩和でやっているし、農産物は、ありますが、しかし、これはウルグァイラウンドのスケジュールに従ってやっている。したがって、貿易の中心である工業製品については全く開放的であるのに、閉鎖的であるという誤解を受けているわけです。
この間、ジェトロにドイツのヘンケルさんという、ドイツ経団連の会長さんでございますけれども、お見えになりまして、日本の市場は非常に開放的であると自分は思っていて、その旨言っているのだけれども、その結果、前の駐日米国大使とは口論になったぐらいであるということを言っておられました。このヘンケルさんがおっしゃっているように、日本の市場、なかんずく工業製品は開放的であるという認識を世界で広めていただくことが非常に重要だと思います。
かつ、ここから先はお願いめいて恐縮でありますけれども、今度ドイツに総理がいらっしゃる予定があると伺っておりますが、その際に、ヘンケルさんは、ぜひドイツ財界人を集めて、昼飯でも晩飯でもいいのだけれども、そういうところで総理から、日本の工業製品に関する市場は非常にオープンなのであるという旨を説明していただくと非常にいいのだということを言っておられましたので、そういうことが実現するといいかと思いますので、よろしくお願いいたします。
〔 小渕総理大臣 〕 正月早々から、フランスとイタリアとドイツですが、今お話のように、ドイツに参りましたときに、ドイツの経団連と、昼食会ということだろうと思いますけれども、そこで皆さん方と私が何かお話をさせていただいて、十分な懇談をすることになっております。今ご指摘の点につきましては、十分心得て、ドイツ側とも話を進めてまいりたいと思いますが、今のようにドイツのヘンケルさんがそういうお考えをしていただいているということは大変ありがたいと思いますし、日米間について、貿易の収支のインバランスができますと、今、畠山委員ご指摘のように、我が方にそういった制約なり何なりが必ずしもあるとは限らないのにかかわらず、インバランスの高で、何かその原因たるものが我が方にあるといった指摘も若干聞こえてきていますし、内容も承知しているつもりですから、よくこれはヨーロッパ、実はフランスの経団連とも話をすることになっておりますが、特にドイツのことをご指摘いただきましたので、十分内容のある話を進めてまいりたいと思いますので、機会を見て、また状況について出発前にお話をお聞きできればありがたいと思っています。
〔 豊田会長 〕 水口委員、どうぞ。
〔 水口委員 〕 今、豊田会長の方からお渡ししました「『構造改革のための経済社会計画―活力ある経済・安心できるくらし―』の推進状況と今後の課題」というのは、委員である私が自分で言うのはおかしいのですが、非常によくできているレポートだろうと思います。特に第2章の計画と現実の経済との乖離の要因という分析は、恐らくその辺の俗説のエコノミストの議論とは別に、非常に明快によくできているのではないかと考えております。
次は、一つは、先ほど堺屋長官のご挨拶にもございましたけれども、26ページに「新しい経済計画に求められるもの」ということで、「個人や企業の活発な活動がより重要となる今後の経済社会においては、「計画」という名称が適当か否かを含め、新たな発想で、我が国経済社会の指針のあり方を示すことを検討すべきである。」ということで、21世紀に入りまして、私どもとしてもここのところは、経済計画と言うと何か計画経済のような、非常に市場経済と似つかわない語呂もございますので、長官のご指摘のように、どういう指標をどのようにして使っていくかといったことも含めて、よく勉強していきたいと思いますので、そういう趣旨に沿っていろいろ御下問いただければ非常にありがたい。このように考えております。
〔 豊田会長 〕 小林委員、どうぞ。
〔 小林委員 〕 小林でございます。今、水口さんからお話のことと関連いたしますが、実は先ほど総理がいらっしゃる前に、和田委員から、将来に向かっての不安感とか不透明性、これを新しい経済計画でどうやって取り除くかということがキーだというお話がありました。
これは現存の経済計画についてもそこが反省の一つなのですが、先ほど総理がおっしゃいましたように、年明け早々、新しい計画づくり、名称とか中身とか作り方のプロセスは、まさに今、事務方で非常に苦心していただいているところですが、新しく始まった段階で、できたらいい機会といい方法で、総理ご自身の口から、どういう目的でどういうところを重点に新しい計画づくりを進めようとしているのか、あるいは始めたのか。そういうことをかなり緒戦で多くの国民の皆さんにお話しいただくということと、いつ完成するかは別として、でき上がったときはでき上がったときで、これはテレビであるか、同じようなことをぜひ総理の口から皆さんに話をしていただくということが、多くの皆さんに関心を持っていただくと同時に、先行きについて共通の認識というか、オーナーシップを持つという意味では非常に重要で、効果のあることではないかと思いますので、大変にご多忙とは思いますけれども、改めてこのことはお願いしたいと思います。
〔 小渕総理大臣 〕 せっかくのご提案ですから、私自身も今のお考えに沿い得るように、冒頭から国民の皆さんの理解が得られるような形で、できる限り努力をさせていただいて、その上でまた改めてご答申をお願いする。もし事によっては途中でもいろいろ、せっかくのすばらしい委員の皆さんがおまとめされているときですから、私もお聞きしながら、国民にも私の方からもお訴えするようなこともどうかなと、今たまたま言われましたので、いままでどういうことで進めていたか、過去のことを存じませんけれども、ご提案ですから、ひとつ勉強させていただきます。
〔 豊田会長 〕 佐々波委員、どうぞ。
〔 佐々波委員 〕 その折り、総理が今度の新しい計画について述べていただく折りに、これまでの計画の乖離については、事務局の方からご丁寧なご説明があったのですけれども、その中で、新しい世紀を迎えまして、今回、ユーロの発足もございますし、その中での日本の通貨というのは、円が独特と申しますか、非常に変動の大きいという特徴を抱えておりますので、そういったものを抱えながらの世界の中の一極としてのお立場を、ぜひ国民の中にでも訴えていただければよろしいのではないかとお願いいたします。
〔 小渕総理大臣 〕 今回、ヨーロッパに行きます。ちょうど1月1日からユーロがスタートするわけで、フランス、イタリア、ドイツと、特に関係の深い国々を回れるので、スタートからどのような進み方にされるか、あるいはユーロとドルとの関係、あるいは今ご指摘の円の関係とか、こういうものも来年の一つの大きな金融問題のポイントだろうと思いますので、ご指摘のことも踏まえて、さらに勉強させていただきます。
〔 豊田会長 〕 得本委員、どうぞ。
〔 得本委員 〕 労働側です。一つ、緊急経済対策で雇用の問題については、非常に重要な柱に位置づけていただいて施策を展開していく。これは私たちも素直に評価したいと思います。
その中で、日経連と連合が 100万人雇用対策、雇用創出のプログラムという、これについても緊急経済対策の中でも触れていらっしゃいますけれども、ぜひ一日も早く具体化をしていただくことをまず要請しておきたいと思います。
もう一点は、来年度の予算の問題等々が今だんだん詰まりつつある状況でありますので、何とかプラス成長にという、マインドを少しでもプラスの方へ転換させよう。これはこれで非常に結構ですので、ぜひ進めていただきたいのですが、特に所得税の減税の問題等々については、減税の規模や手法等々で若干まだ私たち不満はありますけれども、1月からできるだけ早くしてほしいという気持ちを持っているのに対して、どうも1月からやることにやぶさかではないようですが、年末調整とかいう、何か具体的な形になるとこういう。そうすると、せっかくやっても、タイミングというか、遅くなったときに、いかがなものかと思いますので、その辺りはぜひ、どういう工夫ができるのかどうかというのは、せっかくいろいろな知恵があるわけですから、ぜひ工夫もしていただきたいとお願いを申し上げておきたいと思います。
〔 小渕総理大臣 〕 第1の雇用の問題につきましては、今朝ほど閣議の後、労働大臣が私のところへ寄られまして、政府としての 100万人雇用と、それから、政労使といろいろお話しされた点と、両方説明がありました。まずは政府としては、基本的に 100万人雇用について、これを現実の問題とするように最善を尽くすように指示いたしましたが、併せて、三者間でいろいろお話しされていることで取り入れることができれば、それは考慮すべきだろうと思っておりますが、何はともあれ、政府として約束したことが実現するように全力を尽くすように、労働大臣には指示しておきました。
それから、税制の問題につきましては、これはこれからの次の国会で法律案として提出をいたしていかなければりませんが、所得税については歴年でやっていますから、その前の年までさかのぼるということは実際はなかなか無理ではないかと思うのですね。ですから、1月から結局実施するということにならざるを得ないのではないかと思うのです。法律が通りました後にですね。何か間違えてとらえておりましたですか。
〔 得本委員 〕 1月からなのですけれども、1月から3月までの分が年末調整とかにどうもなりそうらしいという、これは税金を集める場合の徴収上のテクニカルな話のようですけれども、そうすると、せっかく早急にというのが大分遅れてしまうという、そこについてはもったいないことですし、ぜひ、ご決断されたわけですから、できるだけ早くできる手法を考えていただきたいということでございます。
〔 小渕総理大臣 〕 結局、今度も、法人課税も所得課税もそうでしたですけれども、特に所得課税につきましては、一番のネックの一つは源泉徴収義務者、これが 300万とも言われて、8割は、9割ですかね、中小企業なのですね。したがって、これが作業から考えましても、ものすごく負担になるわけですね。大きいところはある程度コンピュータ化されていますからできるのかもしれませんけれども。そういった意味での大変なネックがありまして、これが実施というのはなかなか困難であるということで申し上げているわけですが、これは少し研究させていただきます。
〔 豊田会長 〕 長岡委員、どうぞ。
〔 長岡会長代理 〕 長岡でございます。第3次補正と、今日内示が行われました来年度予算、この2つを併せまして、これだけ思い切った景気対策をやったというのは、私も長いこといろいろ経験いたしておりますけれども、あまり例はないと思います。それから、減税についても、多い少ないの議論があるかもしれませんけれども、将来の国民の税金を財源として、即ち借金で減税をやるという例もあまりないと思います。
そういったことにつきましては、世の中に堂々と総理からおっしゃっていただいて、大変な決意でこれだけのことをやるのだから、君らも元気を出せということを、企業、あるいは国民に強く訴えていただきたいということを、生意気でございますけれども、心からお願い申し上げたいと思います。
〔 小渕総理大臣 〕 ありがとうございます。減税も実は6兆円超と言っていたのですが、9兆 4,000億円になるわけですね。合わせますと、それは24兆円にプラス3兆円という規模になるわけですね。したがいまして、これは大変なところだろうと思うのです。
それから、私から言ってはいけないのかもしれませんけれども、法人課税にも所得課税につきましても、時期の問題はいろいろありますけれども、かねて日本の税制から考えると、経済のグローバル化、あるいは各国との税制の在り方を考えましたときに、ほぼ横並びの数字になることはいまだかつてないことなのですね、実際。ずっと私自身も国会にいて考えてきたことは、税制改正というと、課税最低限の引上げというところで大体過ぎてきまして、これは経済が右肩上がりで上がってきましたから、所得税も法人税もある程度税収が確保されるという時代にとってきた手法ではなかったかという率直な、私は、総理というより、長い国会議員の経験から言ってですね。それが今回こういう形で、おっしゃるように、将来、負担しなくてもいいような経済状況を生み出すために、今回のようなこういうことで思い切ってやらせていただいているわけです。
今日は今、率直な話を申し上げれば、テレビで、TBSで録画を撮ったのですが、「将来の人にどういう責任を負うか」と言うから、「毎日寝ていられるか」と言うから、この問題だけは寝ていられないと。けれども、必ずこのことによって世の中がよくなれば、将来に対しては皆さんも必ず理解してくれると思うから、ひとつ元気を出して国民の皆さんも一緒にやろうではありませんかと、先ほどテレビでしゃべってきたところなのですがね。ありがとうございました。
〔 豊田会長 〕 ほかにございませんか。
どうもありがとうございました。ここで、総理はご退席されます。
〔 小渕総理大臣 〕 どうも大変ありがとうございました。
〔 豊田会長 〕 それでは、本日の議題はすべて終了いたしましたので、本日はこれで閉会とさせていただきます。長時間にわたるご審議、誠にありがとうございました。
なお、本日の審議の模様等につきましては、この後、私より、発表いたします。
それでは、これにて散会といたします。
―以上―