経済審議会企画部会(第4回)議事録
時:平成10年12月11日
所:経済企画庁特別会議室(436号室)
経済企画庁
経済審議会企画部会(第4回)議事次第
平成10年12月11日(木)14:00~16:00
経済企画庁特別会議室(436号室)
- 開会
- 経済計画フォローアップ報告(案)について
- 新しい経済計画の策定について
- 閉会
(配布資料)
- 資料1 企画部会委員名簿
- 資料2 「構造改革のための経済社会計画―活力ある経済・安心できるくらし―」の推進状況と今後の課題(案)
- 資料3 「構造改革のための経済社会計画―活力ある経済・安心できるくらし―」の推進状況(案)
- 資料4 「高コスト構造是正・活性化のための行動計画」の推進状況(案)
(参考資料)
- 参考資料1 緊急経済対策
- 参考資料2 長期経済計画の変遷
経済審議会企画部会委員名簿
部会長
小林 陽太郎 富士ゼロックス(株)代表取締役会長
部会長代理
香西 泰 (財)日本経済研究センター会長
委員
跡田 直澄 大阪大学国際公共政策研究科教授
荒木 襄 日本損害保険協会専務理事
伊藤 進一郎 住友電気工業(株)専務取締役
角道 謙一 農林中央金庫理事長
小島 明 (株)日本経済新聞社論説主幹
小長 啓一 アラビア石油(株)取締役社長
佐々波 楊子 明海大学経済学部教授
ポール・シェアード ベアリング投信(株)ストラテジスト
嶌 信彦 ジャーナリスト
長岡 實 東京証券取引所正会員協会顧問
日本たばこ産業(株)顧問
那須 翔 東京電力(株)取締役会長
樋口 美雄 慶応義塾大学商学部教授
星野 進保 総合研究開発機構理事長
堀 紘一 ボストン・コンサルティング・グループ社長
松井 孝典 東京大学理学部助教授
水口 弘一 (株)野村総合研究所顧問
村田 良平 (株)三和銀行特別顧問
八代 尚宏 上智大学国際関係研究所教授
吉井 毅 新日本製鉄(株)代表取締役副社長
吉川 洋 日本大学大学院経済学研究科経済学部教授
鷲尾 悦也 日本労働組合総連合会会長
〔部会長〕それでは、定刻でございますので、第4回の企画部会を開催させていただきます。まだ何人かご出席のご予定の方でいらっしゃらない方がおられますが、追っていらっしゃると思います。
それから、最初にご案内をしておきますが、後ほど、大体2時半ぐらいと伺っていますが、大臣にもご出席いただくことになっておりまして、その際に、ご挨拶をいただくことになっております。
今日は、ご案内いたしましたように、主に、「経済計画のフォロー・アップ報告(案)」と、「新しい経済計画の策定」について、いろいろご意見をいただきたいと思います。そこで、早速、「経済計画のフォロー・アップ報告(案)」につきまして、事務局から説明をお願いいたします。
〔事務局〕お手元の議事次第にございますが、本日の資料は、資料2のフォロー・アップの本体と、その下に、グラフの「参考図表」というのが付いておりまして、フォロー・アップといたしまして「『高コスト構造是正・活性化のための行動計画』の進展状況」と、「『社会資本の整備目標』の進捗状況(案)」という数字の入っています進捗状況表がございます。その綴りの下に、「参考資料1」としまして、11月16日の「緊急経済対策」の本文、それから「参考資料2」としまして「長期経済計画の変遷」(これまで13本の計画の変遷)を付けております。
それでは、資料2を中心にご覧いただきたいと思います。資料2「『構造改革のための経済社会計画―活力ある経済・安心できるくらし―』の推進状況と今後の課題(案)」でございますが、1枚めくって目次をご覧いただきますと、構成は、前回スケルトンでお示ししたものと同じでございますが、第4章「新しい経済計画の策定」とございます。これは、スケルトンのときは「将来ビジョン」と書いておりましたが、「新しい経済計画の策定」と改めております。それで、第1章の第1節と第2節で国際経済情勢と我が国経済の現状を分析いたしまして、第3節で現行経済計画との乖離をご説明し、第2章で計画と現実との乖離の要因を分析して、留意点を書いております。第3章で、今後の経済運営の方向を説明し、第4章で、先ほどの「新しい経済計画」の必要性を説くということでございます。
それでは、3ページ、「はじめに」でございますが、ここは今申し上げたことを文章にしたものでございまして、ご案内のように、今の計画で「毎年、経済審議会は、内外経済情勢及び施策の実施状況を点検し」……「政府に報告する」ことになっているということ、今回はその3年がたちましたので、そこの1)~3)までのことを重点的に検討を行ったということを紹介しております。
4ページから、第1章「内外経済情勢の展開」ということで説明をしておりますが、ここでは下の(表1)をご覧いただきますと、世界全体では、96年、97年と4.2、4.1という数字が一番上にございますが、高めの成長となったほか、下から2段目でございますが、96年の▲1.0からプラスに転じていること、それから、97年(昨年)の夏のアジアの金融危機の影響からアジアで成長率が低下しているというところ、下から6段目のアジアの数字にございますように98年のところから大きく成長率が鈍化しているということの紹介をしております。
5ページでは、それをアメリカ、ヨーロッパ、アジアと書き分けておりまして、一番下に国際金融市場での推移というものを書いております。
第2節では「我が国経済の現状」ということで、(厳しさを増す景気の低迷)ということで、ご案内のように、近年の厳しい景気の状況を説明している下りでございます。
5ページ~6ページにかけまして、11月16日の緊急経済対策の紹介をしております。去年の11月以降3回の対策がございまして、その活性化策の経過が早急に発現することが期待されるとしております。
その後に、雇用情勢でございますが、これは大変厳しい状況にありまして、完全失業率や有効求人倍率の推移など、少し丁寧に書いてございます。
そして、6ページの「雇用情勢……」の真ん中のパラグラフの一番下でございますが、「現下の雇用情勢を改善し、将来に対する不安を払拭することが、まず第一の課題である」というふうに少し強調させていただいております。
その下には、物価についての分析をしております。
7ページの方では、そういった主要経済指標を表にまとめたものがございまして、続いて(対外バランス、財政の状況、金融情勢)と、3つについてそれぞれ表を付けて書き分けております。このあたり、できるだけ表を入れて見やすくしようとしております。
8ページでは、財政の状況について書かれておりまして、第3次補正後の公債額が34兆円、公債残高は約299兆円に達するという話、それから、最近よく言われます地方財政の借入金の残高が166兆円程度になる見込みであるということで、平成3年度の2.4倍まで増えるということなどを書いております。
なお、(表5)で、98年の財政収支・債務残高の国際比較というのを入れております。ちょっとご覧いただきますと、▲14.4と▲9.3と2つございます。括弧の方は、その下に小さな字で(注)がございますが、国鉄や林野の債務の一般会計の承継に係る分を除いておりまして、▲14.4に当たる数字は75兆円、▲9.3に当たる数字は48兆円でございます。その分27兆円程度ございます。
9ページでは、金融情勢でございますが、ここで言っておりますことは、(表6)でご覧いただきますと、2段目のハイパード・マネーの伸びは高いが、マネーサプライ自体は伸びが低いということで、一番上の段の平成9年度の3.5とか7~9月の3.7という数字と、その一段下の数字をご覧いただければと思います。
次に、第3節として「現行経済計画との乖離状況」ということでございます。こちらは、ご案内のことでございますが、10ページに見やすいように(表7)を付けておりますので、これをご覧いただければ早いかと思います。実質の成長率は3%程度で、構造改革が進展しなければ13/4ということで計画を置いているわけですが、実績は一番上の段にあるとおりで、これを平均しますと、10ページの一番上の行に書いておりますが、0.7ぐらいの平均になります。そうすると、構造改革が進展しない場合の13/4(1.75)よりも大きく下回る結果になっているということで、その分析をしているところでございます。
10ページの下の方では、物価についての計画との比較がございます。そのあたりの評価は11ページの上から4行目あたりにございますが、「平成8~10年度の3年間を平均してみると、消費者物価上昇率は0.8%、卸売物価上昇率は▲0.0%となっており、当初の想定に比較的近似していた推移となっている。」とございます。
失業率につきましては、ご案内のように、進展した場合に23/4、しなければ33/4という想定を置いておりまして、既に10年度で4.2%になっておりますので、最終年度の23/4などの想定を大きく上回った数字になっている、乖離があるということを言っているものでございます。
そこで、12ページから、では乖離の要因としてどういうふうに整理をするかということでございます。ここでは、その要因を5つに分けて分析をしております。まず1つ目は、1)「政策の影響」というところで、「平成9年度についてみると、不良債権問題の経済に与える影響の深刻さについて認識が不十分ななかで、官需から民需へのバトンタッチを見込んで大幅な財政収入の増加と歳出の削減が実施されたが、結果としては、後述のような様々な要因もあって民需の順調な回復は実現しなかった」ということを書いております。
それで、この「平成9年度における」……「財政政策の影響が、同年における景気後退の原因として指摘されることがある」ということで、「こうした財政政策の影響により景気の足どりが緩やかになる中で、不良債権問題の顕在化やアジア通貨・金融危機等の様々な諸要因が連動した結果、現状のような厳しい景気低迷が引き起こされた」というふうに、政策の影響について言及をしているところでございます。
12ページのところで、国民負担増がどのくらいのマイナスの効果があるのかというところにつきまして、計量モデルにより試算したことが書かれております。12ページの一番下から2行目でございますが、「平成9年度の実質GDP成長率に対して1%以下にとどまる」ということが書かれております。それから13ページの方で、数字としまして、駆け込み需要と、その反動減ということで、これがどのくらいの押し上げ・押し下げ効果かというのが、上から6行目ですが、「平成8年度の成長率は0.5%押し上げられた後、平成9年度の成長率は1%強押し下げられ」たということで、これはタイミングのズレの問題なのですが、予想以上に多くて、その影響が長引いているということを指摘をしております。
13ページの(財政支出の抑制)のところでは、現行の計画ができたときに公共投資基本計画が7~16年度で630兆円ということを前提にしているわけで、2004年までの10年間であったわけですが、その後、3年間延長された13年計画になりまして、2007年度までという措置がとられております。そして、いわゆる財政構造改革によって10年度の当初予算では、公共投資関係費は7.8%減となっておりまして、これを反映して公的資本形成が名目、実質ともに、平成8、9年度と連続してマイナスとなったということを紹介しております。
分析といたしまして、その下ですが「仮に」とございます。名目公的固定資本形成が前年度比横這いのケースと、現実のパターン(前年度比▲6.1%)を計量モデルにより比較してみると、これは0.6%の差があるのだということを分析として載せております。
それから、「なお」とございまして、「各分野毎の社会資本整備目標の進捗状況は別紙の通りである」と。先ほどちょっとご覧をいただいた横書きの数字の入ったものですが、それぞれの目的別に、例えば「排水が公的主体により衛生処理される人口の割合」というものを、現状から将来目標を出しまして、「スケジュールですと2000年度に7割を超える程度」と書きまして、それぞれの年の進捗をみているものが付いております。
18ページから、2番目の要因といたしまして、2)「国際環境の変化」というのがございます。当企画部会でも、アジアとの関係についていろいろご議論いただいておりまして、14ページの真ん中あたりの「しかし」というところから少し分析をしております。「貿易や資本移動の相互関係を通じて需要の下振れ要因となっている」ということで、まず、我が国の輸出が鈍化し、現地に進出している企業は、中間輸入財の高騰や現地経済の不振により不利益を被っていて、現地の企業が親企業等との取引関係に密接に関連して、国内への影響が懸念されているのだということを書かせていただいております。
それから、国際貸付銀行などの、いわゆる対外との関係での貸し渋りの問題というのが大きな問題であるということを言っております。
3番目の要因といたしまして、3)「不良債権問題と負の遺産の処理の遅れ」ということでございます。これは、現行計画でも、そこの4行目ですが、「5年以内のできるだけ早期に積極的な処理を進め、問題解決の目処をつける」と書かれていますが、その下の2行目あたりにございますように、金融機関のリストラが遅れたではないか、価格が下落を続けたということで新たな不良債権が出てしまったということで、厳しさが増しているということを書いておりまして、それが大きな影響を与え、15ページの方でございますが、不透明感を増し、個人消費などに影響があったということを言っております。
それから、(資産価格の下落とバランスシート調整の遅れ)ということで、こちらについては家計、企業、金融機関と3つに別けてそれぞれ、バランスシート調整の遅れが消費低迷なり設備投資にマイナスの影響を与えているということを論じております。
16ページで、4番目の要因といたしまして、4)「構造改革の効果」でございます。ここは16ページから書かれておりますが、ご覧のなり方は、まず16ページの上のところが、概論という感じで、基本的な計画に示された方針によって進められているというふうに評価をしております。そして、2年前になりますか、6分野の構造改革を総理大臣に建議いたしましたが、その提言の多くについて具体的な進捗が見られているということは評価できると書いておりますが、その下「一方」のところから辛口に転じておりまして、ご覧いただきますと、「ようやく最近になって実際の措置がとられたもの」、「なお検討中ないし準備中であるもの」とあって、「効果の発現にはある程度の時間が必要である」というのが下から8行目あたりからございますが、「現時点で意味のある構造改革の効果を期待しようとするためには、より早い時期に強力な施策が実施されていることが重要となる」ということで辛口のことが書かれております。
それから、全体としての施策が揃わなければいけないということが、16ページにございまして、そういった意味で構造改革の必要性を極めて強調している部分でございます。
この計画では、高コスト構造是正・活性化について、10分野についての行動計画というのがございまして、それにつきましての諸施策の実施状況というのが、さっきご覧いただきました縦長の別紙で「『高コスト構造是正・活性化のための行動計画』の進展状況」というのを付けておりますので、後でご覧いただければと思います。
そこで、辛口と申し上げましたが、その後の17ページに、(需要の低迷下における構造改革の効果)はいかにということでございます。17ページのところにございますが、生産性の向上などで潜在的な成長率を押し上げる効果、新規事業への企業進出などで新たな需要を創出する効果というものがあるということですが、その最初の方につきましては、需要が大幅に下振れしていますとなかなか発現しずらい、資本や労働がフル稼働しないということ、その次の方につきましては、活性化で新たな需要が創出されれば、その分押し上げ効果として発現され得ると期待できるわけですけれども、電気通信などの分野においてはそういうものが見られますが、全体に波及していないのではないかというような分析をしていまして、その背景として、17ページの下から4行目のところでございますが、労働・資本・土地の配分が最適化に向かわなければいけないのだけれども、ここで流動化が十分進んでいないのではないかということが、18ページにかけて書かれております。
最後に、5番目の要因といたしまして、5)「景気後退を強めた将来の不透明感」ということでございます。その最初の3行目としまして、人口減少や環境問題などの歴史的な大転換期にあるのではないかということで、「大転換期」という言葉を書かせていただいております。それで、企業や家計が防衛的な行動をとっているのではないかということで、18ページの真ん中あたりに家計、それから企業ということで、それぞれの行動について若干の数字を入れてございます。
そこで、こういう要因分析をした後に、19ページに第2節「今後に向けての留意点」を書いております。
できるだけ留意すべき点をここで挙げようということでございますが、1つは、(経済ストック面に留意した経済運営)が必要であるということでございます。「例えば」というところに、不良債権処理の話が書いてございますが、全体として、不良債権問題が深刻で、処理の過程でデフレ効果が大きい場合には、全体として整合的に政策を進める必要があるのだということを書いております。そこの下をちょっとご覧いただきたいのでありますが、「今回について言えば、財政再建の必要性には変わりがないものの、適切なタイミングと施策面での十分な手当てにより、まずは不良債権問題を短期集中的に処理することが、政策の優先度の観点から適当であったと考えるべきである。」ということを書いております。
その下に、3%という高い成長を達成していれば、フロー面での収益でバランスシート調整を進めることができるシナリオが書けたのだけれども、そうではないのだということを少し書いております。そういうストック面での配慮が必要である、と。
20ページには、(成熟経済下での下振れリスク)で、成熟経済下ということで下振れリスクがあるのだということを強調しております。このところは、真ん中のパラグラフの後をご覧いただきますと、「成熟経済下においては、消費のウェイトが必需的なものから裁量的なものにシフトしているとみることができ、消費を牽引する新しい商品・サービスの出現に相当の努力が求められるとともに、教育、医療、介護等潜在的に需要が見込まれる分野においても、今後の需要増大のために、一層の環境整備が必要となる」という問題意識が重要であるということを書いておりまして、下振れリスクを念頭に置いた厳しいシナリオが必要であるということでございます。
それから、(構造改革の効果についての認識)、構造改革の効果をどう考えるかということで、これは先ほどの17ページで述べたようなことをもう一ぺん繰り返した部分でございますが、下から3行目でございますが、「我が国経済を安定的な成長軌道へ乗せるためには、適切な需要喚起策と、規制緩和等による供給サイドの強化のための構造改革を、同時並行的に実施していくことが不可欠であること」、ここがポイントであるかと思います。
21ページでは、(世界経済との多面的な相互依存関係)ということで、世界経済のグローバル化の中で多面的な相互依存関係があって、この国際的な市場環境の変化に十分な留意をする必要があるというのが、上から4行目から書かれておりますが、それがエッセンスでございます。
先を急ぎまして恐縮ですが、22ページから、第3章「今後の経済運営の方向性」ということで、まず、第1節「経済再生のための優先課題」として、そこの柱書きにございますことがエッセンスですが、「金融システム不安・信用収縮リスクに対して万全の対策を講じるとともに、併せて、十分な需要喚起を行う」ということで、その下に「金融システムやそれに伴う信用収縮が急速に進行すると、底が抜けたように民間需要が減少し、景気の落ち込みが加速する可能性」があって危険だということを書いております。
そこで、(金融システムの安定化・信用収縮対策)、それから23ページの(景気回復策)ということで、ここでは、11月の「緊急経済対策」での即効性、波及性、未来性の3原則、21世紀先導プロジェクトの実施、生活空間活性化策、産業再生対策というものを紹介しております。
第2節「中長期的な経済政策」ということで、マクロ経済政策について述べております。こちらでは、「財政構造改革法」の凍結について、下から4~5行目に書いておりますが、「目指すべき方向性は尊重されるべきである。その際、経済状況と整合性のとれた財政健全化の道筋を明確に描くことが必要である」ということがございまして、24ページで、その「タイミングについては十分に慎重であるべきである。経済が安定軌道を回復したと考えられても、様々なリスク要因を考慮し、先行きを十分見極めた上で、慎重に対応することが必要である」ということ。それから、認知ラグという話がございましたが、景気動向把握については、認識ラグを短縮するべく判断材料を準備しなければいけないということを書いております。
次に、方向性といたしまして、2)「構造改革」で(需要低迷下での構造改革)について少し触れております。1つは、需要が大きく下振れている現状で、どうも効果の発現は小さいと思われるわけです。24ページの一番上のところでございますが、「しかし、こうした中においても」、構造改革を進めなければいけないし、「供給面での対応の遅れを早急に取り戻すことが必要かつ喫緊の課題である」というふうに強調させていただいております。
その下の方では、「構造改革の痛みが伴うが」というのが、下から10行目あたりにございますけれども、「これを先延ばしにする」と「より大きな痛みに直面する」ということで、これは繰り返し強調になってしまっていますが、この点を強調したいということで、ここに書かせていただいております。
25ページでは、(デフレ懸念下での高コスト構造是正の考え方)、デフレ懸念下での高コスト構造是正をどう考えるかということで、こちらはエッセンスとしては、真ん中の「しかし」のところをご覧いただきますと、生産性向上で価格は下がるという場合に、需要減少で下がるのとは違うのだということを言っている下りでございます。
それから、重要であります雇用政策につきまして、3)「雇用政策」ということで25ページ~26ページにかけて書いておりまして、まず25ページのところでは、労働移動の円滑化が重要であるということでポータビリティの確保の話、26ページのところでは、退職金に関する課税・控除制度のあり方、有料職業紹介事業や労働者派遣事業等の規制緩和ということを書いております。
「また」のところでは、「パートや派遣などの多様な就業形態」ということで、正規労働者に比較して遜色なく安心して働くことのできる環境を整備するということ。
それから、職業能力開発あるいはエンプロイアビリティの向上ということを、一番下のパラグラフに書いてございます。
さて、最後の章といたしまして、第4章「新しい経済計画の策定」として2つ節を立てております。まず、第1節では「新しい経済計画の必要性」ということで、今まで、乖離をみてまいりましたように、現状ではなかなか適合していないということで、新たな計画を早急に作らなければいけないということを柱書きで書いております。その必要性として、1)「人々の将来不安の解消」がまず必要であるということ、2)「中長期的な経済政策の指針」が必要であるということで、ちょっとご覧いただきますと、2行目あたりに、「政府のスタンスが緊縮型から拡張型へと大きく転換しているほか、構造改革や需要喚起の観点から様々な政策が実施されつつあり、国民にとって政策の全体像がとらえにくい状態になっている。」ということで、ここで政策間の整合性が必要であるということを強調しているつもりでございます。3)「中長期の経済成長率等マクロフレームの提示」が必要であるということ。28ページでございますが、4)「世界へ向けての情報発信」、我が国は世界から見られている。その点、姿勢を示す必要があるということで、「情報発信」という言葉を使って、書かせていただいております。
そこで、第4章は新しい計画の必要性を説いている下りでございますが、第2節「新しい経済計画に求められるもの」として、求められるものは何かということでいくつか留意点として書いているものでございます。
今までいろいろとご覧いただきましたように、1)で言っておりますように、1つは、「政策相互間の整合性確保と優先順位の明確化」ではないか。28ページの1)のすぐ下に、「様々な個別政策の単なる寄せ集めであってはならない」というセンテンスを入れておりますが、整合性の確保ということが極めて重要であるということで、この場でもご議論いただいたと思いますが、例えば、下から4行目のところに、「景気対策のための公共事業の追加や雇用対策を実施する場合には、それらが従来型の産業構造の維持につながる」のではいけないということを書かせていただいております。29ページでは、「時間的な優先順位」というのが上の方に書いてございます。
2)「明確な目標の設定とその柔軟性の確保」、やはり目標が明確でなければいけないだろうということで、「重要な政策については、政府の政策スタンスを明確に国民に示すために、経済計画の中に政策指針を盛り込むこと」、それによって初めて事後評価ができることが可能になるということでございます。
それから、それについて柔軟性の確保、外的な状況変化があり得るわけで、それを柔軟に修正するということも考えなければいけないということも書いております。
3)「リスク要因の考慮」、このフォロー・アップの中でリスクということを言っておりますが、そのリスクについてここで少し具体的な例を、これ以外にもあると思いますけれども、書いております。景気回復の道筋、国際経済環境、将来の人口動態というものに関するリスクを無視できないということで、このリスクを頭に入れて政策の方向性を想定しておくことが今極めて重要ではないかということを書いております。
4)「より長期的な展望の必要性」、先ほど「歴史的大転換期」という言葉をご紹介いたしましたが、こういう転換期にあって、なおかつ持続的な発展が可能な我が国の姿を描くとすれば、29ページの下の方でございますが、「人口減少等の大きなトレンドのなかで、財政赤字削減の道筋、雇用、年金等老後の所得保障等の将来の姿等、国民が関心を抱いている事項について、計画期間にこだわらず長期の期間を念頭において、できる限り明確に示すことも検討」しなければいけないだろうということで、「長期的な」ということをここで留意点として書いてございます。
5)「経済計画の策定過程の重要性」、以上は中身の話を言っておりましたが、最後に計画の策定過程、作り方についても書いてございます。それは国民全体に影響するものであって、幅広く国民の声を吸収していかなければいけないであろうし、より身近で、実効性ある経済計画とすることが求められるということで、策定過程でできるだけ国民が参画し、意見を聞けるという工夫が必要であるということを書いてございます。
最後に「おわりに」が付いておりまして、現状分析から乖離の要因を分析し、運営の方向性を反省と教訓を含めて述べ、新しい経済計画の策定が必要であるということを述べているものでございます。
これがフォロー・アップの本体でございまして、このフォロー・アップの本体の中に入れられなかった表については、参考図表として、主にグラフでございますが、入れているのが別添のものでございます。それから、10分野についての「『高コスト構造是正・活性化のための行動計画』の進展状況」と、「『社会資本の整備目標』の進捗状況(案)」が付いております。
なお、お手元に資料3と資料4の大変厚いものがございますが、ご案内のように、資料3は、現行計画に書かれています重点施策についてフォロー・アップをするために、これは主として定性的なものですが、それを、現在どこまで進んでいるか、どのような施策がとられたかについて書かれているものでございます。資料4は、高コスト構造是正の行動計画で10分野ございますが、それについてそれぞれ分野毎に現在の進捗状況について、図表、数字も含めて詳しく書いたものでございます。資料3と資料4は参考資料という位置づけになっております。一々のご説明は省略させていただきます。
以上でございます。
〔部会長〕ありがとうございました。
ちょうど大臣がいらっしゃいました。フォロー・アップは後でまた皆さんからご意見をいただきますが、ここで、大臣にはお着きになったばかりですが、ご挨拶をいただきまして、その後30分ぐらいお時間をいただいているようでありますので、ご挨拶そのもの、あるいは特に新しい経済計画の策定について、ご意見をいただけたらと思っております。
大臣、よろしくお願いいたします。
〔堺屋経済企画庁長官〕経済企画庁長官の堺屋太一でございます。
本日は、お忙しいところを皆様方にお集まりいただきまして、経済審議会企画部会を開催していただきましてありがとうございます。
本企画部会におきましては、現行の平成7年に作りました経済計画を見直していただくということで、いろいろとご意見を賜りましてありがとうございます。
平成7年、村山内閣のときと現在とは、現実が非常に変わっておりまして、どうしても現状合わない部分が出てまいりました。経済成長率が1.75%、構造改革をやるとこれが3%になるという、楽観的と申しましょうか、バラ色の夢を描いたわけでございますけれども、現実は、ご存じのように、昨年度が定性でマイナス0.4%、今年は、恐らくマイナス2%ぐらいのところへ来るのではないかというような感じがしております。来年もマイナスなら、3年続きのマイナスという戦後初めての事態が起こるわけでございまして、誠に厳しい経済情勢になってまいりました。
これに対応して、この経済計画というのも、来年からは新たに作り変えたいと考えております。
来年からの経済計画におきましては、もはや計画というような発想でいいのかどうか、これ自体が問題になってくるのではないかと思います。
そもそも経済計画というのは、戦後始まったわけでございますけれども、社会主義とまでは言いませんが、1つの目標を持って国が経済をリードしてきた時代の発想でございました。ところが、今や国の統制・治世・指導というものがだんだん減りまして、民間企業・民間個人の活力で生きるようになりました。ここで特に大きな問題としては、いわゆる会社人間の社会というのがなくなってくるのではないかということでございます。
戦後の社会というのは、いわゆる55年体制と申しますけれども、これは単に政界・政局にあっただけではなしに、政策としての55年体制というのもありました。これは内政的には経済政策の上では供給者を育成する、対外的には対米協調・西側陣営に属する、これが両立した時代であります。また、企業経営におきましても、年功賃金・終身雇用という閉鎖的雇用慣行があり、なるべく内部留保を厚くして配当を低く抑えて先行投資をする、先行投資型財務体質であり、そして集団的意思決定機構である、こういう日本的経営がありました。それで規格大量生産を目指した社会がありました。
そこに属した人間とは、まさに会社人間でございまして、終身雇用に守られて会社に属する。血縁社会にも地縁社会にも縁がなくて、すべて職縁社会、職場の縁、職業の縁だけつながった人間がつくられた。
こういった全体像が今、崩れつつあるというときに、次の社会はどうすればいいか。表面的には、少子・高齢化という現象がありますし、またグローバル化という現象があります。グローバル化というのは、従来言われた国際化とは全く違いまして、垣根のない時代、国際化が塀があって門戸を開いている形とすれば、塀そのものがなくなって、いつの間にか出たり入ったりする時代でございます。
それから、ソフト化という現象がございます。これまた、従来言われていた情報化とは概念が全く違いまして、従来の情報化は、根底に物財の流通・生産があり、その物財の生産・流通を支えるものとしての金融や情報があったのですが、これからのソフト化時代は、情報そのものが値打ちを持つ、知恵の値打ちの時代である、こういった変化が出てくるだろう。そういった時代に、一体何を考えればいいのか、日本のあるべき姿というものをどう考えていけばいいのか、これを次には考えなければならないのではないかという気がしております。
そういう意味では、成長率というような概念は、これからも続くのかどうか。これも非常に疑問に思う次第でございますし、どんな図を描くのか。
私が通産省に入りました1960年代でございますと、成長・開発・進歩というようなのがキーワードでありました。それがやがて安全と平等が大きなキーワードになり、規格大量生産の時代を推進するようになりました。そして、やがてそれにも飽きて、ゆとりと豊かさと活力という言葉に変わりました。今や、豊かさとか活力とかいうのも、ほとんど影響力のない、空虚な言葉になりました。この次の計画では何を一体目指すべきなのか。これまた非常に大きな問題だと思います。そろそろゆとりと豊かさと活力に代わる新しい概念が生まれてこなければいけない、そんなことを思います。
さらに、作り方でございますけれども、これもできるだけ広く衆知を集める形で日本の多くのシンクタンクや研究者、特に東京以外の地域からみた目で、全国・全世界を評価できるような方々の情報も加えていきたい。
今回の不況で、東京情報で動かされたことが間違いのもとだっだのだ、と言うような人もおりますけれども、そういうより多くの人々に参加していただくような方法もとれないだろうかということも考えております。
そういったことを総合して、この次の新しい計画といいますか、中期的な展望、あるべき姿の描き方というものを、来年早々から、できれば半年ぐらいで考えたい。
今、不況の中で大きな問題は、将来が見えない、日本の未来や自分たちの老後というのが見えない、というのが大きな問題になっております。そういったことも考えますと、財政の問題、年金の問題など現実的なところから、日本の誇りと主張というものをどこに求めるかというところまで、多くの問題があると思いますが、そういったことを大きな目で皆様方にみていただく、そういった計画といいますか図表が今必要ではないかという気がしております。
今、不況のさ中でございまして、日本の経済国難と言われるときですが、このときこそ、皆様方のお知恵を拝借して、将来のあるべき姿を指し示すようなことをお考えいただきたいと思っている次第でございます。よろしくお願いいたします。
〔部会長〕大臣ありがとうございました。
30分と申し上げましたが、15分ぐらいということで、あと5分ぐらいしかありませんが、お話しいただいたこと等について、せっかくですから、ご意見その他がございましたら、どうぞおっしゃっていただきたいと思います。
〔A委員〕今、大臣からお話を承りまして、時代認識として、大臣がおっしゃったとおりだと私は思います。経済計画というと、すぐ5カ年と考えるわけでございますけれども、5カ年というのはどうも中途半端だし、5カ年計画というと何か、鉄鋼生産の合理化5カ年計画だとか、そういうのをすぐ思い出す、こういうことになる。そういう意味では、大臣が、具体的にはおっしゃらなかったのですが、恐らく、例えば2007年ぐらいから人口が減少に転じてしまうわけですから、そういう折れ曲がるところがかなりよく見えているのだとか、それから、今はどんどん景気対策のために兆円単位で国債を発行して平気でいられる瞬間ですけれども、いずれこれを戻そうとすると、レーガン以来のアメリカがやっているように、景気が持ち上がって消えてしまうのか、それとも、大臣もちょっと言われたように、本当に財政の問題あるいは年金の問題をもうちょっとステディにやっていくということを考えると、とても5年でははまる話でもない。そうなると、これからの(展望で結構なのですけれども、)展望について割合長い目でみたことをやらないと、とても懐に入らないのではないかという気がするわけです。
大臣は両方お持ちで、長期展望と、それから毎年の対策をお持ちでございますので、具体的な政策の方は5カ年計画ではなくて、今たしか、来年度経済政策とか何とかがありますけれども、あれをOECDのように3年ぐらいの、短期なのだけれども、ちょっと長期の具体的な政策ということで実行される、こういう組み合わせの時代にもう来ているのではないかと思うので、この辺で、大臣のときに、5カ年計画というやり方はもうおやめになっていただくのは非常にいいのではないかと私は思いました。
余計なことでございますが。
〔堺屋経済企画庁長官〕ありがとうございます。5カ年計画というような発想でなしに、年次を一定にしなければいけないのかどうか。例えば、2007年から2010年ぐらいの間に達成すべき日本の姿というような発想もあっていいのではないかと思うのです。これだけ経済成長率が揺れ動くときですから、その辺も、何年までにこうするというようなことでなくていいのではないかという気もするのです。
〔B委員〕今、堺屋さんから、成長率概念というのがいいのかという話があって、僕も本当にそう思うのです。つまり、来年は成長率が2%になる、3%になると言っても、恐らく国民の多くは、心は何も踊らないのではないかという感じがするのです。
今の話は、聞いていて、かつての成長・開発・進歩から、安心・ゆとり・豊かさ・活力、つまりこれは感性の話です、言ってみれば。そういう意味で言うと、今の景気を見ていても、成長率を見るとマイナスだけれども、世の中を見ると結構豊かではないかとか、女性はホテルでもずいぶんおいしいものを食べているじゃないかとか、団体旅行もずいぶんしているじゃないかとか、つまり、そういう落差がすごくあるわけです。これは何かというと、数字でモノを計るということだけではない何か新しい世の中にもうきていて、そういう感性などにウェイトを置いたような生活というか、そういうことを今考え始めているのではないかなという感じがするのです。
この間も、生活白書で“中高年の不安”というのが出ましたけれども、数字で出されても何となく不安になってしまうけれども、それをつまり、我々が65歳ぐらいになったときにどういう社会が住みよいのかと、そういう住みよい構想図。数字で出すのではなくて、例えば、どこかへ行ったときには安く行けて、アウトドアの生活も楽しめるとか、病気になったらすぐ頼めば介護のヘルパーさんが来てくれるとか、そういう我々の身近な生活感覚の中から、まず理想図みたいなものを描いて、それができないのは一体どういう規制があるのかとか、それができないのはどういう邪魔をする団体があるのかとか、そのような発想でモノを考えていかないと、国民にとってエキサイティングでリアリティのある図が出てこないのではないか、と。
僕は新聞社にいましたから、1985、86年、プラザ合意の後に日本が不況になったとき、あのとき日本も構造改革ということを盛んに言われたわけです。そのときに、試みに、200X年の社会はどういう社会だろうというようなことを、なるべく当時の数字から考えてリアリティのある数字を出しながら、200X年の社会構造というものを、40回かの続き物にしたことがあります。そのときに、例えば、建設現場などでは、多分、外国人労働者が来ていて、日本語ではなくて、英語が飛び交っているのではないかとか、いろいろなことを書いたことがあります。
そういうふうに、例えばあと15年後ぐらいに、中高年の団塊の世代が不安になるときに、不安にならないような生活……。それを成長率とか、年金がいくらだとか、そういう数字で示すのではなくて、物価体系がものすごく安かったり、あるいは介護のシステムがきちんとできていれば、たとえ300万円だって豊かな生活ができるわけです。そういう、数字ではなくて、もっと感性から来たような、そしてリアリティのある、そういうものをまず我々は描いてみる、そういう方法論をとることも大事ではないかと思います。
〔堺屋経済企画庁長官〕申しわけございません、参議院の本会議が始まりますので、失礼させていただきます。
〔部会長〕ありがとうございました。
それでは、先ほど説明がありました「経済計画フォロー・アップ報告(案)」に戻って、皆さんのご意見を伺いたいと思います。
〔C委員〕その前に、今の議論の若干続きです。感性も大事でございますが、アドホックなものではなくて、基本となる数字というのはやはり押さえなければいけないので、数字だけで議論してはいけないというのはそのとおりですが、基本になる数字をわざわざ捨てることの意味は何もないと思います。年金でも、財政でも、基本は成長率であって、成長率をどういうふうに料理していって、そのより具体的な生活像に結び付けるかというのが、工夫が大事だというのはそのとおりだと思いますけれども、基本となる数字を捨てて得られるところは何もないと思います。それがまず第1点です。
今のフォロー・アップのご説明を聞いて、それぞれ非常に具体的な点についてご議論があったのはそのとおりですが、要するにどうだったかという結論が、残念ながらよくわからない。つまり、現経済計画の予測と実績の乖離の原因ということです。
ある意味においては乖離はなかったのではないかという見方もあるわけで、先ほどもご説明がありましたように、構造改革なき場合は1.75である。財政デフレが1%と0.6で合わせて1.6である。足元が、先ほどは0.7ということですから(平均すれば)、合わせますと2.3で、別に構造改革なき場合とそんなに違わないのではないか。要するに、構造改革というのは話だけで、何も実現しなかったと考えれば、乖離は何もないわけでありまして、そうなのかどうか。
それとも、構造改革はある程度あったのだけれども、それ以上に構造変化が起こったからこうなったのかという結論が、残念ながら評価がない。
そうなると、結局、次の政策にも結び付かないわけで、この前、紙だけで書いてあった規制緩和を含めた構造改革を更に推進するのか、それだけではだめなのかという、次の計画のメインポイントにもつながらないわけで、ぜひ、この構造改革が本当にあったのかないのか、その効果がなかったのかあったのかという点はきちっと評価しなければ、次の計画に結び付かないと思います。
それから、海外要因と国内要因の問題ですけれども、東アジアの危機というのが、あたかも外生的に起こったように書いてありますが、これは一部は日本の不況とか円安から生じたという要素もあるわけで、簡単に外的要因と内的要因を分けられるかどうかということも重要だと思います。
それから、財政のタイミングを気をつけなければいけないということですが、果たしてタイミングだけの問題かどうか。国民負担が増えたことの最大の問題点は、国民負担が増えればあれくらいになるということは当初からわかっていたわけですが、少々デフレになっても支えるだけの潜在成長力があるという前提で、消費税の増税とか、特別減税の打ち切りをしたわけですから、問題の潜在成長力が予想外に低下していたという認識が大事だと思います。
そうであれば、まさに企業は、今後は売上高に依存するのではなくて、コストの削減であるとか、過剰投資の調整であるとか、ポートフォリオの調整であるとか、つまり、低成長が永続するという前提で今はリストラをしているわけで、財政も同じようにリストラをしなければいけない。高度成長型の財政を低成長型の財政にリストラしなければいけない、ということが次の計画のメインになっているかと思います。
年金は既に、給付水準の抑制ということで明確に、ある意味で望ましい方向を打ち出したわけですけれども、地方交付税などは全く手がつけられていない。そういう潜在成長力の低下に見合った財政リストラの方向をどうやっていくのかという、具体的なところが次のポイントになろうかと思います。
それから、人口減少ということですが、これを必ずしもマイナスだけで考える必要はないわけです。労働力が減ってくるということは、賃金さえ弾力的になっていれば労働市場が売り手市場になるということですから、これは労働者にとっはむしろプラスの面があるわけです。だから逆に言えば、規制緩和のデメリットがそれだけ小さく、メリットが大きくなるという世の中にこれからなるということの明確な認識である。
ですから、そこは基本的には、労働力の数字であるとか、経済成長の数字であるとか、そういう基本的な数字を押さえた上で、もう一度、今ご説明のあった予測と実績の乖離の最も基本的な要因は何なのだろうか。それに応じて今後のあるべき方向として、一層の規制改革というか、市場国家日本を目指していくという方向を打ち出すのか、それではだめで、全く別のヨーロッパ型の社会民主主義に行くのかどうか、そういう基本的な点を議論しなければいけないのではないかと思っております。
以上でございます。
〔部会長〕最終的に、どういうふうに表現するか、書くかは別にして、C委員が今おっしゃったことは、第2章「乖離の要因」以降の中でいろいろ書いてありますけれども、構造改革の効果のところが少し甘すぎるということですか、基本的には。本当はもっと辛い点をつけなければいけないのではないか、ということをおっしゃっているわけですか。大筋は。
〔C委員〕もっと言いますと、構造改革がかなり進んだのに、その効果が予想外に弱かったのか、それとも、そもそも構造改革自体が、作文だけで生じなかったのかということは、非常に重要な点で、それはさらに今後同じ構造改革を進めるか進めないかという基本的な点に係わるという認識でございます。
〔部会長〕それはどちらかということについては、C委員はご意見がございますか。
〔C委員〕私は、全然進んでいないという方向でございます。だから、もっと進めなければいけないということでございます。
〔D委員〕今の点、どの程度このフォロー・アップに織り込むかですが、例えば16ページを見れば、構造改革を進めていく場合の中心になるべき6つの分野について、正直に、「ようやく最近になって実際の措置がとられたもの」、要するに、今まで非常に遅れているもの、あるいは「なお検討中ないし準備中であるもの」ということも書いてある。要するに、今の構造改革路線ではだめだからこうなったので、別の道を選ぶというよりは、率直に言ってテンポが遅かったということは、ここにはわりあいに正直に書いてあると思うのです。
それはそれとして、今の大臣のお話を伺っていまして、従来型の経済計画を新しく策定するのには今、ものすごく難しい時期だなぁということで気が重かったのです。ということは、要するに5年間なら5年間の従来の形で、どのくらいの成長率だとか何だとかいうことをやりだすと、甘い計画を作れば、それが1~2年たってそういかないときに、ますます政治不信とか政府不信に結び付く。そうかと言って、あまり厳しいことを書けば、これはディスカレッジしちゃってどうにもならない。どういうふうにすべきかということで、私個人としては、大変つらいときだなという感じだったのですが、それと別に、今の堺屋長官のお話からいくと、従来の経済計画という考え方がどうなのか、あるいは成長率という考え方がどうなのかという、非常に基本的な問題に触れたご発言があって、それを本当に考えていくと、この第4章を全部書き換えなければいけないということにならないかどうかというところが一番心配なのです。これは問題提起です。
〔部会長〕新しい経済計画を一緒にご発言いただいていますから、分けなくて結構です。
〔E委員〕新しい計画については、私、どちらかというとC委員の考え方に近い方で、基本的な経済見通しというのは、何年にするかは別としまして、出しておかないといけないだろう。そうしないと、国民生活審議会とか、ほかの審議会とこの経済審議会の位置づけというのをどういうふうに考えていくのかというようなところで、かち合うといいますか、もしかしたら経済審議会はいらなくなるかもしれないというようなこともありますので、経済像、国民生活像を描く上でも、基本的なところはやはりはっきりさせておくことが必要ではないだろうかと思います。
本文についてですが、20ページのところで、「成熟経済下での下振れリスク」という話が出てきます。この成熟経済下というのを、どういうふうに受け止めたらいいのだろうか。成熟経済というのが、どうしても回避することのできないような日本の状況なのだということなのか。ほかの国、例えばアメリカあたりでも、80年代というのは、かなり成熟経済だと言われながらも、リエンジニアリングを進めていって、また活性化してくるということがあるわけですから、これを運命論的に受け止めてしまうというのは危険ではないか。むしろ、成熟経済というものを回避するといいますか、もう一度日本経済を建て直すためには一体何が必要なのだろうか。そして、その中で構造改革というものも必要なのだ、というような位置づけをはっきりさせた方がよろしいのではないかと思うわけです。
といいますのも、成長率、特に潜在成長率の低下要因をいろいろ分解して考えてみますと、労働力人口が伸びなくなってきたというようなこともあるわけですが、1人当たりのGDPの成長率の伸びの鈍化をほとんど説明するのは、TFP・総要素生産性の伸び、これが落ちているというようなことでなってくるわけですが、これはある意味ではブラックボックスで、技術進歩の代理指数だというふうに考えられますが、ほとんどは残差のところです。いろいろな要因説明をしていって、説明できないところがこの要因なのだ、というふうになっているわけです。そこがなぜそんなに落ちてしまっているのか。特に、日本でそれが問題になってきて、ほかの国では、先進国ではそうではないわけですから、日本でなぜそれが問題になってきているのかということについてぜひ議論していくべきではないかと考えております。
〔部会長〕E委員の言われた、成熟経済の「成熟」という意味は、非常に単純に言って、日本が成熟だとしたら、アメリカや、フランスや、ドイツや、ああいう国々は成熟なのか成熟ではないのか。あるいは、どういうのが成熟で、どういうのが成熟ではないのか、それなりにディフィニションがあるのでしょうか。人口の問題だとか、そういうのにとって……。
〔事務局〕確かに今、E委員からご指摘がありましたように、20ページに書いてある「成熟経済」という言葉は、厳密な定義があって使われている言葉ではないので、ご指摘の点もあろうかと思いますが、今お話がありましたように、成熟経済というのを運命論的に考えるかというお話で、成熟経済という言葉は少し曖昧な言葉ですから、成熟経済ということがどのくらいの、例えば成長率(というものについてのご議論がいろいろありましたが、)を考えるかということがありまして、例えばヨーロッパ、アメリカなどを含めて考えて、2~3%の成長でありますとか、それから、全要素生産性で言いますと、今のアメリカが大体年1%ぐらいだと思いますけれども、そういうのを含めてここでは成熟経済というのを考えているので、例えば今のマイナスは例外としましても、全く伸びない経済、そういう意味での成熟経済という使い方ではございません。
〔部会長〕感覚的に言うと、70年代の終わりから80年代の初めぐらいのアメリカの経済、あのころのアメリカの多くの人の心理状態というのは、今の日本の心理状態に似ているところがあって、しかし、いろいろなアクションをとってめざましい形で活性化した。全く同じことをやると言わないけれども、かなり基本的に似たことをやれば日本だって活性化するという可能性は、かなり感じられるという、ドリカム的だとすれば、この辺の成熟経済という言葉は少しセレクティブに使った方がいいかもしれない。
〔F委員〕今のいろいろのご議論は、半分賛成半分反対なのですけれども、今の成熟経済云々というところで言えば、成熟というのは停滞を意味しない。成熟すると、もう成長しないでいいというのは大間違いであって、常に活性化というものがない経済というのは成熟ではなくて、停滞である。というので、成熟化というものの中に常に新しいものが出てこなければいけないというのが経済の非常に基本原則だというふうに思います。
構造改革のないケースというので、参考図表の1―1を拝見しますと、先ほどC委員のお話だと、構造改革を不進展のケースではなくて、不進展よりも今のところは低いわけです。というのは、構造改革と言うけれども、それは古きものの改革ではなくて、つまり新しいものが出てこなかったということではないかと私は思っているのです。といたしますと、今大臣は「計画という言葉は云々……」とおっしゃったのですけれども、その計画の意味ですけれども、今後新しいものが出てくるとすれば、構造改革というか、いらないものを取り除くのは政府の役割であるかもしれないけれども、その中から出てくるのは個人の責任であり、個人の企業であるという明確なメッセージが伝わればよろしいのではないというふうに思います。
そうしますと、計画という言葉云々……ではなくて、どういうふうにとったらよろしいのかわかりませんけれども、将来というものは元来、個人が担うものであって、それは多様なものであるのだ。先ほど、地域全体から声を集めてということでしたけれども、私の拝見いたしますところ、あまりにもこの国はモノトーンになっているのではないかと。それが個別の新しいモノが出てくるところをふさいでいるのではないかという気がいたします。
今までのご意見に半分賛成で、半分反対しているような発言でございます。
〔G委員〕計画とか、先ほどのC委員の問題提起に関係してですが、僕は、予測なんていうことはそもそも意味がないのではないかというか、少なくともこの図を見る限り、こんなものは誰がどう見たって、合っているとか合っていないとか、いくら数字を並べてもほとんど意味のないことです。
それはなぜなのかというと、本文の中にも出てきますけれども、いろいろな歴史的な転換期、その歴史的な転換というのは何なのかと。経済システムというのは、我々が生きている社会全体の中の1つのサブシステムなわけです。そのサブシステムというのは、そのほかのサブシステムと当然つながっているわけですが、つながっているところの相互依存というか、関係が従来と全く変わってきたのではないか。
サブシステムを集めた全体からみると、そういうサブシステム間の結び付きが強くなってくると、全体としてはある種複雑形になっていくわけです、普通は。複雑形というのは、予想不可能なものです。自然界だって実際にはそういう現象はいっぱいあるわけですし、ましてや、人間の社会のいろいろな現象というのはほとんど複雑形に近いということがあらわれても不思議はないわけです。そうすると、そもそも予測するということが意味がない、予測ということ自体が。
だから、その辺から考えていかないと、なかなか説得力のある議論というのは出てこないと思います。
成長率とか何とかいう概念は、予測可能というか、制御できる何かがあって先が見通せるというようなところがあると思うので、そこのところが全く認識が変わっているのではないかと思うのですが、その辺の議論をちゃんとしないと説得力がないのではないか、理解が得られないのではないかと思います。
〔部会長〕G委員が言われたことは、さっきの成熟経済の問題とも似ているわけですけれども、しかし―「しかし」とあえて言わせていただければ―、例えばアメリカの経済を見たときに、はるかに日本より複雑形というのはもっと先行していて、まさに大転換期を通っているにもかかわらず、アメリカの経済の場合には予測可能で、日本の場合には予測できないというのはどういうことですか。
〔G委員〕僕は、アメリカの経済が予測できるとは思わない。
僕の見方でいけば、アメリカが発展したのはニューフロンティアをつくったからではないですか。実体というか、実物経済の代わりに何か金融みたいな、サイバーワールドみたいなものをつくって、そこにニューフロンティアをつくったから、一見、成長するようなことが実現しただけであって、比較するものが違うから……。
ただ、人々のマインド、心としては、確かに夢が新たに出てくるとか、一時的に豊かになるとかで、景気としてはよくなるかもしれないけれども、あれが永遠にずっと続くとも思えない。
〔部会長〕もちろん、そうではなくて。具体的にはそれに当たるもの、先ほどは「新しいものがなかったのではないか」とF委員はおっしゃったけれども、しかし、レーガノミックスをやっていたプランナーたちも当たったか当たらないかは別にして、今、G委員がおっしゃったニューフロンティアとかいろいろと言っているわけですが、そういうものをやることによってどのくらい効果があるかとか、どのくらいのものを目指そうとか、みんな絵を描いていたわけです。ですから、G委員のおっしゃることは、そういうこと自体意味がないのではないかとおっしゃっていると僕は聞いたわけですが、しかし、アメリカの場合には、結構そういう絵を描いて、結果的にそういうことがオレにとってどういう得があるのかと(これは日本人とアメリカ人は違いますが)、それが数字であって、それにアピールして、それが実現をしてきているのに、日本の場合には、そういう定量的なものは全く意味がなくなってしまうというふうに本当に言い切ってしまっていいのかどうか。
〔G委員〕それは、要するに時期によるわけです。ゴールが決まって、こういう方向に行くのだと、ある程度境界条件も決まれば、その中では議論できると思うのです。その境界条件が全く決まらない中で、ふらふらしているところで、いくら議論しても、それは全く意味がないわけです。
だから、経済計画だって、今まで例えば、戦後のある枠組みが決まっているときに、過去の外挿で未来が決まっているときは、そんなに乖離がひどいということはなかっただろうと思うのです。それは何かといったら、境界条件が同じところで議論していれば、そのモデルというのは有効だと思うのです。だけれども、現在というのは、モデルそのものを取り巻く境界条件が非常に定義できないというか、従来にないような変化をしている。その中でいくら計画を立ててもだめなのではないか。むしろ、ゴールみたいなものを先に決めて、その境界条件をある程度フィックスさせてモデルを走らせるのなら、それは計画になり得るのではないかということです。
〔部会長〕その場合のゴールは、主として定性的なものですか。
〔G委員〕ゴールというのは定性的なものというより、非常に感性的な……。さっき大臣が言ったような、何かこういう社会にしたいとか、そういうもの。
〔部会長〕絵を描いて。
〔G委員〕絵を描いて、それを数字に変えるのは……。だから、境界条件が決まれば数字には変えられると思います。
〔H委員〕これからの計画の問題になると思いますけれども、今日いただいた資料の「長期経済計画の変遷」に今までの目標と実績をずっと並べてあります。これを見ましても、計画が今まで実現したことはほとんどないはずです。必ず、その途中の年度で、あるいは最後に近づいていくと、計画変更をやっているわけです。
問題は、大臣がさっき言われたのは、計画というものの意味、言葉の意味を非常に重くとらえているので、それを展望とか、目標とか、もう少しリジットでないもの、そういうものとして考えられないか。そういうことをおっしゃっているのではないかという感じがいたします。
そういう意味では、いろいろな数字は、予算内、いろいろな計画を作るのにほかの計画との整合性を考えて、ある程度の基本的な数値というのはどうしても必要だと思います。ただ、それがあまりリジットに、計画経済みたいにこうしなければいけないのだとか、そういうものではないと、まず理解してもらうことが先ではないかという感じがいたします。
したがって、相当程度フレキシブルなもの、同時に今、この時期を考えてみますと、将来展望というのは非常に難しいと思います。特に数値で表現するというのは、まずできないという感じがします。歴史的大転換期と思います。また今、構造改革ができたかできないかという話がありますけれども、今の経済社会計画の副題が「活力ある経済・安心できるくらし」と書いてあります。今の時点で誰が、活力ある経済とか、安心できるくらしだというふうに思うかということ、この表題自体も今の計画と全く違うということを明らかにあらわしているのではないかという感じがいたします。そういう意味で、これから議論がいるのだろうと思いますけれども、中身なり表題、どういう方法でやっていくか、それは十分検討した方がいいのではないかと思います。
〔I委員〕数字か、そうではなくて何かほかのものかという話にちょっと関連するのですが、私はあまり出席がよくなかったので偉そうなことは言えないのですが、この中にいろいろなことが全部触れられてはいるのです。ところが、数字がある計画ができていて、そしてそれがどういうふうに狂ったかという反省もできている、ある意味では分析もできている。それから、そのためのリスク・原因の考慮などという話も項目はある。だけれども、そのときのリスクというのが、ここにある3つとか4つとかのことがリスクではなくて、要するに、リスクがあったから数字は間違ったけれども、あの数字はあのときは間違っていなかった、という言い訳に使うのでは意味がない。リスクは常にあるのだ、人間の生活のまわりには。だから、リスクがあったときには、この数字は当然変わるということを考えた政策を立てるということが、経済計画などでは一番大事なこと。
だとすると、リスクというのは、数字を壊す悪いものではなくて、必然的にどの時点かでは起こるものだということで、リスクをもう少しはっきり想定して、そのリスクのときはどういう政策にするか、それに数字を当てはめた方がいいけれども、当てはめられないこともある。しかし、それを全部発表してしまったら、経済だって相手がいる社会なのですから、そのリスクを全部裏をかくということになるから、そんなことは発表しなくてもいいけれども、しかし、リスクについては常に考えて、そのときどきの政策当事者が必ず、リスク第何号に基づくとこれはこう変える、というふうにものをきちっと作っておくというのが、これからの経済政策ではないか。そういったことをもう少し言っておく必要が、今の数字かどうかということにもあるのではないかと……。
リスクというのは、困ったことだ、人知の限りのことではないと言わないで、リスクを考えて対策を作るということの方が……。ここの文章の中にそれがちょっと薄いのではないかという気がいたします。
〔部会長〕今、I委員がおっしゃったことは、これからやるものを計画と呼ぶかどうか別にして、何かを作るときに、難しい予測はありますが、たくさんとは言わないけれども、いくつかのシナリオとか、ある種のコンテニェンシープランとか、ある程度読める範囲―まさに境界領域はある程度はっきりしなければいけないけれども―、そういうことを予めある程度書いておかなければいけない、そういうことをおっしゃっているわけですか。
例えば、今度の場合も、これは非常に結果としては甘かったし雑だったということになりますが、構造改革が進んだ場合・進まない場合という話があって、3%と1.75%というのが、結果的には構造改革そのものの進むか進まないかについての判断が甘かったということもあるかもしれないし、また一方で、不良債権問題などについての経済に対するマイナス効果についての読みが甘かったとか、これは率直に言ってかなり政治的な要因が入って、必ずしも純経済的な話ではないと思いますけれども、これは一部で、乖離がなぜこうなってしまったかというところでかなり踏み込んで、そこまで思い切って書くか書かないかという問題と、今おっしゃったことに絡めば、かなりそういう政治的なことも含めて、リスクの問題というのはもう少し現実的に、本当はもうちょっと厳しくみておかなければいけなかったという、それは判断としてあるかもしれません。
だから、将来に向かってまで、ポリティカルなことを経済展望の中に入れるか入れないかというのはなかなか難しいことだと思いますが、できれば、その先の大きなオルタナティブの、どっちかというときにはどうなるかということは入れておいた方がいいのではないかと、そういうことをおっしゃっているわけですね、将来について。
〔I委員〕そういうつもりで申し上げたのです。今度の中で、計画は明らかに狂ったけれども、これは我々の発想せざるところによって起こったと考えないで、あのときだって考えたけれども、その分の考え方が足りなかった。さっきから、スピードがなかったというのがあります。つまり、すぐ対応できなかった、議論ばかりやっていた、反省ばかりやっていた、それでは困るので、もう反省はほどほどにして次の行動に移っていなければならない時期に反省している、ということが今度の一番の反省ではないかというふうに思います。
〔J委員〕計画と現実の乖離のところが私は非常に重要だと思いますが、その問題は、今まさにご議論いただいている、予期せざるファクターがどうだったか、予期しなかったということ自体がどうだったかということもありますが、計画と実際の乖離のところで非常に重要なのは、構造改革というものをどう評価するかということが中心にならざるを得ないと思うわけです。そういう意味で、いわゆる構造改革というものがなぜそれだけの力を発揮できなかったかというのは、構造改革を進めようとしたこれまでのプロセスに、構造改革の外側から来たいわば予期せざるいろいろな要素の影響ということもあるのですが、10分野の行動計画とか、あるいは6分野の改革ということがあったわけですけれども、どうも各分野毎の構造改革というのが少しばらばらというか、評価の方も各分野毎の構造改革の進捗状況はどうかという、各分野の相互間の評価・全体としての評価というより、少しミクロになってしまっているのではないかという気がいたします。
そういう点で申しますと、16ページあたりに、そもそもある分野の構造改革というものがどうしてほかの分野に波及しなかったのかという非常に重要なポイントが書かれておりまして、私は、この点をもっと掘り下げる必要があるというか、特に、この後の経済計画、あるいは構造改革を推進していく上では、どうしてある分野のある程度の構造改革が波及効果をもたなかったのかと、その波及を阻害している要因は何かというようなことを、私は掘り下げる必要が非常にあって、ぜひ次の計画の検討の中では、この辺の議論を深めていただく必要があるのではないかという気がいたします。
以上です。
〔部会長〕今、J委員のおっしゃったこと、これはF委員に、しろうとエコノミストして伺いたいのだけれども、制度的補完性などという言葉がありますね、インスティテューショナル・コンプリメンタリティという。その考え方は、まさに波及効果の大きなポリシーの組合せをどうやって見つけるか、と。ですから、個々には結構効果があったって、まさに問題になっている波及効果の大きいものを複数、一番効果のあるやつを追っていくのが経済政策としては、少なくとも理論的には効果があるのだというふうに制度的補完性というのは使われているというふうに承知をしていますし、しろうとなりに経済同友会の経済政策委員会でそういう考えからいくつかのポリシーを追ってやったことがあるのですが……。
この間、たまたま青木正彦先生が、同友会の集まりに見えてお話をされたときも、たまたま制度的補完性の話をしていらしたのですが、今後、まさに波及効果のある、例えば土地とか住宅は波及効果がある、そういう種類の話だけではなくて、いくつかの複数の政策間でトータルに波及効果のあるようなものというのをどういうふうに、少なくともある程度理論的に見つけていくことができるかということについて……。これは、事務局でもある程度考え方の枠組みみたいのがあるわけですか。
〔事務局〕今、J委員がおっしゃった点でございますけれども、水口座長にお願いをしております構造改革推進研究会の方で、構造改革を今後進める上での課題として、まさにJ委員がおっしゃったような、それぞれ個々の分野の進んでいない面もあるわけですが、ある程度成果が上がっている分野もある、それがどうしてほかの分野に波及していかないのかという問題意識でいろいろ検討を行ってきております。まだまだ新しいアプローチですので取っかかりという形ですけれども、ある程度、例えば企業間取引というものの従来のあり方が、電気通信分野なり物流の各個別の分野なりの成果を分野全体あるいは経済全体に波及することを妨げている大きな要因であるというような分析結果も出しております。まだまだ深めなければ政策まで直接つながっていくという段階にないものですから、今回、こういう方向で政策を考えていく必要があるということでおまとめいただいておりますが、次期の計画策定に当たっては、そういう方向を念頭に置いて、また今、部会長がおっしゃったような制度補完性といったような観点からも検討を深めなければいけませんし、そういう問題意識に立ってやっていきたいと考えております。
〔部会長〕その結果は、このフォロー・アップの最終案に反映するには、ちょっと間に合わない。
〔事務局〕ここの文章の中では、そういうことが必要であるという表現で入れてございます。
〔部会長〕その部分について、最終フォロー・アップもそういう形ですか。
〔事務局〕現在、かなり抽象的な物言いではございますけれども、そういう形で…。
〔D委員〕どの辺ですか。
〔事務局〕16ページの下から3行目のところ「様々な分野の施策がそれだけで十分な効果をあげられるものではなく」から17ページにかけて。それから、20ページのところでも(構造改革の効果についての認識)ということで、この16ページ~17ページを受けておりますが、下から6行目あたりに、「お互いに補完的になっているため、規制緩和等の効果については、ある個別制度が遅れると、それがネックになって全体」が進まないというようなこと、一番下に、「同時並行的に実施していくことが不可欠である」と書いてあります。こういうことを一応入れさせていただいております。
〔部会長〕そういう観点から、実際にこれをフォロー・アップしてどうだったという結論は、どこかへ出すのですか。
〔事務局〕実は、この企画部会のご議論とは別に、今、ご説明申し上げました、局長の研究会としての構造改革推進研究会というのがございまして、そちらの方で今、中間報告をまとめる段階にございまして、その成果もこのフォロー・アップにできるだけ盛り込むわけでございますが、今の時点で盛り込めるものとしては、この紙においてはこのぐらいであるというふうにお考えいただければと思います。
今のお話を承っていて、ここの紙にも書いてございますように、確かにおっしゃるように、6分野以来、個別の分野についての検討を中心にやってきております。それで、先ほどC委員からもご指摘のあったように、全体としてどう効いているかというところがかなり辛口には書いたつもりですが、やや評価的に不十分だというご指摘もあり、最近では、今のJ委員のご指摘のあったような、相互の関係とか、全体としてどうやって発現させればいいのだということについて強い関心を持つようになって、今、申しわけないのですが、オン・ザ・ウェイで検討しているという状態で、このフォロー・アップとしてはこの程度の表現になっているというふうにご理解いただきたいのでございます。
〔K委員〕先ほど来、アメリカの話が出ましたけれども、私、欧州連合の最近の動向、それから各国の選挙結果等を見まして、ご案内のとおり、15の国の中の13カ国が左派ないし中道左派ということになっているわけです。これは数年前と比べますと大変大きい変化です。
しからば、EUあるいは個別の構成国が、我が国で言うような意味の計画というものを作っているかというと、大体そういうものはないです。先ほど大臣が「展望」という言葉をお使いになりましたが、まさにそれが一番ぴったり当たる、そういうアプローチをEU全体としても、それから個別のフランスなり、ドイツなりも考えているということです。
それで、選挙の結果というものを踏まえて、それを展望とうまく組み付けていくのがヨーロッパ式のやり方だと思うのです。
私なりにみますと、最も大きい点は2つで、1つは、膨大な、しかも構造的な失業を抱えておりまして、これを何とかしなければいけないのに、どうにもできない。さらには、社会的な弱者に対する法というものがちゃんとできていない、という民衆の意識がありまして、これに対しては、左派にこの際はやらせてみなければ仕方がないということをヨーロッパの人々が考えたということ。それから、アメリカは、非常にある意味で成功しているけれども、アメリカ式の資本主義は我々は持ちたくない、という考えがあって、その2つが展望の基礎になっているのではないかというふうに思います。
そういう意味では、私は、日本の経済計画というものが世界でも非常に独特のもので今まであったし、これから計画というものと、展望というものと、どちらでもいいのですが、将来の目標として、ヨーロッパの例で失業を挙げましたように、そういう具体的な非常に重要な問題で、かつ国民の関心のある点というものを踏まえない計画であれば、それは数字を入れようと入れまいと、あまり意味がないのではないかと思います。
〔C委員〕部会長がおっしゃった、制度的補完性の問題なのですけれども、なぜある分野の構造改革が別の分野に進まないのかというときの説明として、それは日本では、例えばメインバンク、終身雇用、企業間関係等、それぞれの固定的な関係がお互いに補完的なものを持っているから一部だけ変えたってだめなのだというのが、青木先生とか、奥野さんの理論だと思います。
ただ、同時に制度間の代替性もあるわけです。例えば、終身雇用というのはパートタイマー、派遣社員と代替だし、メインバンクは直接資本市場の機能と代替的ですし、それぞれの金融市場・労働市場の中でも代替性のメカニズムはある。
ですから、波及しない原因として、制度的補完性だけを言うのではなくて、私は、共通した要因として規制というのがあるわけで、例えば、労働市場の規制がここまで社会主義国のようにがちがちになっていなければ、もっと終身雇用からの転換も早くいっただろうし、メインバンクからの直接資本市場への転換もうまくいっただろうし、キーワードとしては、規制というものを見直さなければいけない。これはどんなに強く言っても言い過ぎることはないと思います。
別途、規制緩和委員会でどんな規制が問題かというのはもう既に出て、間もなく来週、発表になるのですが、経済審議会としては、個々の規制がどれだけのマイナスの経済効果をもたらしているかというのを、モデルではなくて実の手段でも結構ですから、何らかの計量的な方法で分析する努力をしなければ、複雑形だから何をしてもだめだという悲観論では、私たちは、経済審議会の役割を果たせない。これは物理学と同じであって、経済学だってそれなりに科学だと私は思っておりまして、不十分かもしれないけれども、それなりにこれまでそれぞれの発展はしているわけで、その成果を生かす努力は捨ててはいけないと思います。
それから、I委員がおっしゃったリスクという点も非常に大事でありまして、もちろん、リスクがどんなものが来るかはわからないですが、予めどんなリスクがありそうだということは想定できるわけで、できるだけリスクに強いような制度にしておくというのが大事です。例えば、年金制度ですと、出生率の見通しが狂う可能性がある。そうすると、狂っても大丈夫のような制度にしたらどうなるかというと、それが賦課方式よりは積立方式になるわけです。日本の制度もこれまで、あまりにも人口とか年齢構成に依存してきた面が強すぎるわけで、それをできるだけ人口・年齢に中立的な形に変えていくというのは、リスクに対して強くするという意味で非常に重要だと思います。
キャッチアップ期は目標は明確であって、今は目標は不明確だというのはそのとおりですが、同時に、人口・労働力の制約が強まっているということは、境界条件もまた強まっているわけで、逆に言えば、経済の動く自由度も非常に小さくなっているわけです。ですから、今回は金融という面で、これまで所与としていた要因が大きく変わったという点でいろいろな不確実性が起こったのですが、幸いにして、金融市場がきちっとこれからは市場型で動くとすれば、また新たな境界条件が生まれるわけで、その中での予測というのは、私は、決して不可能ではないというか、ある意味では、これまでよりもやりやすくなっている面もあるのではないか。ですから、その意味でも、計量的な分析ということの努力は決して怠れないと思います。
以上です。
〔部会長〕今までのところで、何かございますか。
〔事務局〕私の方から1つ申し上げたいと思いますのは、先ほど、大臣のご挨拶の中で、経済計画ということではない発想でというお話がありましたが、この点については、H委員からもさっきご発言をいただきしたけれども、最近の経済計画の中でも、そもそも計画経済のようなリジットなものではないということは非常にはっきり、いわば展望であり、同時に政府がやるべき政策を書いていると言っているわけですが、大臣がおっしゃったのは、恐らく、経済計画という名前が付いていると、そこがどうしても誤解を招きやすいのではないかということを言われたというふうに私は理解をしております。
もう一つは、GDPあるいは経済成長率という数字についてのご発言もありましたけれども、それは、例えばこれから作る展望といいましょうか、そういうものの中で主要な数字がいらないというお話ではなくて、例えば、G委員からもゴールという形でお話がありましたけれども、将来のあるべき姿というのを描いてみて、それに持っていくためにはどういう経路が必要なのだろうかと。そういう意味で、初めに数字ありきではなくて、そういう将来の姿を描く、それに伴って必要な数字が出てくる、そういうご発想で言われたのではないかというふうに考えております。
〔D委員〕今までの計画の型で言うと、堺屋大臣が言われたのは、中曽根さんのときのものにやや似ている、何とかの展望と指針とかいう、そういう感じを受けますね。
〔事務局〕今お話がありましたように、一番明確な形でそういうのが計画を策定する過程で議論が出ましたのは、中曽根内閣のとき、計画という言葉ではなくて「展望と指針」ということで作ろうと。その後、経済運営計画でありますとか、いろいろな名称を使いましたけれども、ものの考え方としては、H委員からもご指摘がありましたように、そもそも経済計画というのはそういうリジットなもの、目指すべき具体的な生産目標があったりする、そういうものではないというのは共通のご理解だろうと思っております。
〔部会長〕参考資料2をご覧いただくと、一覧がありまして、確かに中曽根内閣のときの表題は「1980年代経済社会の展望と指針」ですが、これは全部数字が入っている―この入れ方はどうやって入れたのかは別にして―、実質経済成長率から、名目から、失業率から、消費者物価から、経常収支……。
完全に定性的な計画というのが、少なくともここに入っている限りは……。
〔D委員〕私の記憶では、数字はある程度入っているのですけれども、今までみたいに厳密に細かい数字にとらわれない、少し幅があって、1つの目標値であるというぐらいのウェイトの置き方で作れというのが、中曽根さんの最初のお考えでした。
〔部会長〕あと10分ぐらいです。実は、フォロー・アップの方は、今日ご意見をいただいたのは、どちらかというと新しい経済計画に絡んでの方が多いのかもしれませんが、この21日の総会に基本的にはご意見を踏まえて修正をした上で出すことになっていますので、新しい経済計画の表現もあれですけれども、フォロー・アップのことで、特に次の展望にしろ何かをやるときに、今度の乖離の原因等についてはもう少し踏み込んで……というお話もありましたし、特にこの辺は更に強調しておきたいというご意見がありましたら、ぜひ伺っておきたいと思います。
〔L委員〕途中からで恐縮ですけれども、僕は、基本的な考えは前回も申し上げていますけれども、せっかくここまで作っていただいて水を差すようなことを申し上げて恐縮ですけれども、もちろんテーマがフォロー・アップということは、前の計画のフォロー・アップということがテーマにあるにしても、90年代のバブル崩壊後の経済運営、経済の実態というものが資産デフレなり複合不況と、いろいろな意見はあるわけですけれども、この前の計画自身も、その前の「生活大国5カ年計画」が途中で破綻したというような意味も含めてやり直した。恐らく、そういう繰り返しということもあるので、一言、90年代の経済計画、あるいは経済展望という問題に対しての、もうちょっと中長期的な反省なり批判という延長で今回の問題もフォロー・アップする、その継続性というのが1つは必要ではないか。
というのは、従来と全く違う、新しい観点で今後の計画なり展望を作っていこうという場合に、従来の問題は一応ここで総決算しておくということが必要ではないかと思います。
〔A委員〕ちょっと細かいことで恐縮ですけれども、15ページの一番下に下3行ほど書いてありまして、「現行経済計画の想定と現実との乖離の大きな要因となった」と、要するにバランスシート調整が、ということが書いてあるのですけれども、ここは数量は出ていないのです。フローの方は、1だとか、0.○だとか出ています。ここは出ていなくて、ここだけ「大きな要因」だったというのは、何か変な感じがするなという気がしたのです。
もっと言うと、ちょっと意地悪いのかもしれませんけれども、19ページをご覧いただきますと、下から第2パラグラフを見ると、3%成長でいけば、バランスシートの調整を進展させて、こんなふうにはならなかっただろう、こう言っているわけです。そうすると、3%成長を狂わせたのは何か。何かトートロジーになってしまっているのではないか。ここはちょっと整理された方がいいのではないか。
それ以上言うと全体が狂っちゃうから、今から立て直すのは大変だと思うのですけれども、少し整理された方がいいと思うのです。つまり、最初のフロー面での政策の失敗が実はインパクトになって、それが本来は大きかったというふうにも読めちゃう、この3つを組み合わせると。要するに、インパクトがあったから、3%成長ができないから、今度はバランスシート調整もうまくいかなくて、バランスシート調整ができなかったから、これが大きな要因になりました、こういうふうにつながってしまう可能性があるわけです。これは皆さんの本意ではないだろうと思うのです。それぞれの要因というのは並列して複合的に効いてきたのだと言いたいのが、皆さんのこの報告なのだと思うのです。だとすれば、もう少し整理された方がいいのではないかと思います。
余計なことを言って混乱させて申しわけないと思いますが、冷静に読むと、どうもそういうふうに読まれて、そこだけ取り上げられると後で困るのではないかという気がしたものですから、細かいことですけれども、申し上げたいと思います。
〔部会長〕ここは、今おっしゃったように、非常にクルーシャルな部分で、言いにくいことがあるかもしれないけれども、もう少しきちんと言え、と。
確かに、様々とか、極めていい加減な言い方で、もうちょっと……。「さらに」から「一層大きくすることになった。」というところは、非常に意地悪な読み方をすれば、いろいろ言っているけれども、何も言っていないではないか、ということと同じだというふうに取られる可能性がありますね。
〔H委員〕12ページの「乖離の要因」ですけれども、ここで「政策の影響」ということで、政策の評価をされているのは非常に結構だと思います。ただ、これで受けた印象は、一つ一つみんな要因は書いてあるのですけれども、その要因が全体としてどのように関連したというのは、私の感じでは、全く私見ですけれども、みんな複合的に起きているような感じがするのです。
これは全く私見で、しろうと考えですけれども、この中にも書いてありますけれども、この計画を作ったときの7年から8年の初めにかけて、ある程度景気がよくなり、GDPも上がった。そこで、ここにも書いてありますが、これは一時的なものだったと。その当時は、みんながこれは一時的とは思わなかった。このまま構造的によくなっていくという認識だったのではないかと思います。そのために、例の6大改革が一斉にぱっと出て、しかも、それが相互の関連なしに、同時並行的にずっと進んでいった。それが更に翌年の春の消費税の引上げだとか、特別減税の廃止だとか、公共投資の抑制とか、医療保険の引上げ。引き金になったのは、8年秋の6大改革を同時一斉にやりだしたこと。それがそのまま9年秋には行政改革、あるいは財政改革。こういうのが政策変更なしに、そのままずっと来たと、私などは感じているわけです。
この中にも書いてありますけれども、認知ラグを短縮して、できるだけ早く政策転換をやれば大分変わったのではないか。これは政治の問題もあります。
そういうような点が、ちょっと見ていると「あの時にこうしていれば」あるいは「もう少しやっていれば、こういう事態は防げたのではないか」と、あるいは「弊害が少なかったのではないか」というような感じがいたします。
もう一つ、金融の立場から言いますと、不良債権問題顕在化と書いてありますけれども、実は金融機関としては、バブルの最後のころから、不良債権処理はずいぶんやったはずです。ところが、土地の価格あるいは資産価格が落ちていくということで、次から次へ資産が悪化していった。いくらやってもやっても仕方なくて、不良債権問題が大きく取り上げられた。顕在化というのは、もともとあったものでなしに、むしろ景気あるいは経済の悪化に伴って不良債権問題あるいは金融機関の問題は大きくなったのだと。これは私の感じで、あるいは皆さん方とは違うかもしれませんが、そんな印象を持っておりますので、そのことだけをちょっと申し上げたいと思います。
〔B委員〕また最初の議論に少し戻って申しわけないのですけれども、つまり今歴史的な大転換で、成熟社会だという中で、どういう計画を立てるかというのが大きな議論だと思うのですけれども、経済審議会というのがほかの委員会などとどういう関係をもっているかは僕はよくわかりませんから、そこのところは何とも言えませんが、例えば、成熟社会と言ったときに、これは単に数字の問題で言っているのではないだろう、という感じがするのです。社会のあり方とか、くらしのあり方とか、生活のあり方とか、そういう、つまり成長率が落ちたから成熟社会と言うのではなくて、もっと積極的にとらえるならば、我々の結果の有り様が成熟するのだ、ということが我々が積極的にとらえる成熟社会だろうと思うのです。
先ほど、部会長がおっしゃられたけれども、例えば、アメリカも確かに活性化しているのだけれども、この成長率を見ると、よくて3%ぐらいなわけです。イギリスだって、4%いったかどうか。そういう意味で言うと、かつてのような成長社会というのはもうないわけです。そういう状況の中で成熟社会のあり方を考えると、数字を2だとか、3だとか、そういうことを言うことの意味は、僕はあまり意味がないのではないかという印象は受けるのです。
参考資料2の「長期経済計画の変遷」を見ると、ここに出ている数字は実質経済成長率、名目経済成長率、完全失業率、消費者物価、経常収支尻となっているわけです。つまり、こういうものでずっととらえていくと、成熟社会のイメージというのは、僕は出てこないのではないかと思うのです。
僕は、数字がよくないということを言っているのではなくて、数字のとり方ももっと、例えば会社に行くとき、家から30分以内で行けるようなところに住むためにはどうしたらいいかとか、病院に行ったら30分か40分以内にちゃんと診察が受けられるようにするとか、あるいは老後になったときには、頼めばすぐ認定してヘルパーさんが来てくれるとか、そういうことができるのが僕は成熟社会だろうと思うのです。そういう、別の物差しの指標というのですか、つまり、我々が将来望ましい社会の数字というのですか、そういうものから、例えばどの規制が問題なのか、どの構造改革が問題なのかという議論をしていくと、読んでいる人もエキサイティングになるし、何か心が踊ってくるのではないかなという感じがするのです。
もちろんこういう数字を出すことは僕はいいと思うのですけれども、それを従来の形でまた同じように、実質成長率だ、消費者物価だ、雇用だ、何がかんだというふうに出していっても、成熟社会の豊かなイメージというのは、僕は出てこないのではないかと。
さっき堺屋さんが、かつてのような感性的なスローガンで言うと、ゆとり・豊かさ・活力というふうに、次のスローガンは何なのかというのも、国民の心をとらえるような、そういうスローガンが必要なのかなと。
ここでは、活力ある経済というふうに書いてあります。僕は、「安心できるくらし」というのは必ずしもできていないと思うけれども、「活力ある経済」というのは、例えばどのくらいのことを言っているのか、1~3ぐらいだったら、これは言わなくてもいい。つまり7とか8を目指しているのだったら、「活力ある経済」と言えるかもしれないけれども、恐らく、そういうことはあり得ないわけです。アメリカを見たって、ヨーロッパの全体の数字を見ても、せいぜい1から、よくて4という感じですね。それが成熟社会だと思うのです。そうすると、成熟社会のコンセプトの中でもっと別な数字を出しながら、もっと生活にマッチしたような数字を出しながらやっていくことがすごく重要な気がするのです。
〔G委員〕僕も、今、B委員が言ったようなことを感じたのです。要するに、最後のあれだけでいいのですけれども、「計画の目的」と書いてあります。計画の目的と、その横に数字の並んでいるところがあるのだけれども、どうしてこの数字になるのかというところをもっと明確に言わないと、少なくとも……、それは専門家はわかるかもしれない、いろいろ事情を知っている人は。だけれども、専門家でない人にとっては、今言ったような「自由で……」とか「豊かで安心できる」とか「地域社会への……」というのと、この数字とがどう関わり合っていて、それがどこで乖離したのか、あるいはどこが失敗したのかということを言わない限り、議論している本筋にならないです。
一番最初に議論したときに、ゴールは何か、ゴールがあるから計画というのは意味があるのだ、という話をしたのだけれども、ここのところが関連性がなかったら全く意味がなくなってしまうわけです。
そういう意味でこれをみると、この報告書というのはわかりやすいかな?、という疑問は出てきますね。
〔部会長〕1つは、仮に名前が「経済展望」でも、これからどうなるかというものを、主として誰に関心を持ってもらって、誰に読んでもらうか。これは結果的には個人の年金の問題にしろ、まさに生活の質のいろいろな中身にしろ、個人の観点からみれば、そういうところに関心を持つ人がもちろん大部分で、そこにポイントを当てて、多くの人に関心を持ってもらって、どこか一部の人が作っている計画ではなくて、自分たちの関心があるものなのだと思っていただく、これが非常に重要なところです。
作成過程の話が出ているのも、その辺の事務局の苦心のあらわれなのですが、そのことと、しかし一方で、それは何もないところから出てくるのではなくて、それなりにリソースがなければ出てこないから、その部分は、まさに専門家用のところだけに限ったっていいではないか。GNPに関心のある人と、実際にこれから実質自分の所得がどのくらい上がるかという関心と、どっちが多いかといったら、多分、その後者の方が多いのではないかという話もある。
アメリカでも、マクロのレベルでは、ここのところずっと大統領が強調しているのは、一方は、年金だとか医療の改革、例えば財政赤字をどうやって減らすかという、GNPの話というのはあまり出てこないところがあるかもしれません。
確かに、基本数字が大切で、それをきちんとやっていかないと……。「活力ある」なんていう話が出たのは、1つには、生活大国5カ年計画などをやっているときに、何もやらないで出てくるのではないかという感じでは、これはいけない。基本的には経済が元気でなければ……、そういうのもあって、たしか「活力ある……」というのが出てきたと思うのです。
ですから、ベースは数字がないと計画というものははじけませんが、最終的に出していくところは、かなりアクセントを付けて、国民の多くの人が何を求めているかというところがよくわからないと、見当外れのアクセントになりますけれども、そういう打ち出し方を一つ考えたらどうか。そのときに、計画と呼ばないで、展望とかいう呼び方の方がいいかどうか。しかし、かなりまじめというか、「そんなことを言ったって、いい加減にいいことばかり言っているのではないか」という批判にきちんと答えられるように、押さえるところはきちんと数字で押さえてあります、というようなものが出てくれば、皆さんから示唆していただいた、あるいは大臣も考えておられるようなイメージに少し合ってくるのかなという気もいたします。
もう少し見えてくれば、ある程度、またその計画というのが出てきたって一向に抵抗もないのかもしれないけれども、どうも今、計画というと非常に固定化してしまうというニュアンスが非常に強いというのがあるのかもしれません。
ただ、今までは計画という言葉を使っていて、一ぺんは「展望」というのがありますから、表題は思い切ってそういうものを出したって一向に差し支えないのかもしれないという気もしますけれども。
〔D委員〕私、ちょっとお先に失礼するものですから発言をお許しいただきたいのですけれども、最後の計画のところは、今いろいろ議論が出た問題ですから、もう一回ご整理いただいていいのですけれども、フォロー・アップのところは、諸先生のご意見を伺っても、基本的にこの計画で描いた構造改革を進めていこうという路線が間違っていたのだということではなさそうだ、そういうご意見があればともかくとして。だから、フォロー・アップとしては、3年進んで、その計画どおりにいかなかったのはどうだということが書いてあって、それから、それは全部予期せざる事態だけではなくて、例えば、ある分野だけが進んで、ジグザグになったりしてうまくいかなかったということに対して、そのままにしておいたことは悪かったという反省ははっきり書いてあるわけだから、それをきっちりと、ここにあるものをもう一回場所を変えるなりして整理されれば、1つのフォロー・アップとして体を成すのではないかと私は思うのです。
〔F委員〕フォロー・アップについて希望があるのですけれども、今、不良債権のお話が出たので、もうちょっと長く取っていただけないでしょうか。
というのは、金融の改革については、86年、87年でかなり業際の話が出ました。それがバブルに入って、まだやらなかったの?、という感じがかなりありますので……。
〔部会長〕長くというのは、期間を。
〔F委員〕期間を。
つまりプラザ合意以降、86年、ヨーロッパですと改革の行われたときですし、アメリカはその後91年までごたごたいたしましたので、もうちょっと長くとっていただけないかと思います。
〔K委員〕この報告自体は、審議会から政府にあてられたもので、日本国民にあてられたものではないと思いますけれども、にもかかわらず、国民はこれを読むわけです。今、日本国民にとって最も大きい問題は、心理的な不安感ということでありまして、27ページのところに「人々の将来不安の解消」ということでその点には触れてはあるのですが、一番基本的に、本来、日本経済は強さがあって、決して心配する必要はないのだというメッセージがないと、全体として暗いトーンの報告になっているのではないか、という私の感触をお伝えします。どう書き換えてくれとまでは言いませんけれども。
〔部会長〕ありがとうございました。
ほかによろしゅうございましょうか。それでは、第4章以下のところは、計画と使うかどうかも含めて、ひとつ工夫をいただく。大臣は、どちらかというと計画ではなくて、展望という形がいいという、そういうご意向ですかね。
皆さんのご意見としては、かなり定性的なものを色濃く出すにしても、基本的な数字はやはり押さえておかなければいけないというお話でしたから、ここは少し工夫のいたしどころだと思います。
フォロー・アップは基本的にはこれですけれども、先ほどH委員がおっしゃったこと、F委員のおっしゃったことを含めて、1つは、長い目でみれば不良債権問題について、アクション、手をつけるのが遅かったということがあります。それから、さっきおっしゃった、一時的に3%になるのではないかと、3%になったときに、これは結果論ですけれども、どこかに書いてありましたけれども、財政均衡路線に走ったこと自体、あそこで少し早くそっちに踏み切り過ぎたことが後を引っ張っちゃったというところなど、もう少しはっきり書いた方がいいかどうかということですね。
ですから、先ほどA委員のおっしゃったところですけれども、確かに、誰もが何もしないで3%にいくとみんなが思ったとは思わないけれども、そうあってほしいと思ったことは事実で、そこでもう少しアクションのとり方があったのかどうかということ、結果論としては、財政均衡の方に少しウェイトをシフトし過ぎたということが、今でも多くの人は言っているわけですが、必ずしもニュースではないけれども、かなりこういうところではっきり言った方がパンチが効くということでしょうか。
〔L委員〕最後に1つだけ。今、F委員からありました、私がフォロー・アップを90年代を通してという意見を申し上げたのは、特に金融不良債権問題に絡む自分自身の経験からしても、92年の春からずいぶんと言ってきた。それが突如としてこうなったのではなくて、遅れ遅れでこうなってしまったということがありますので、それが必要だということで特に申し上げました。
もう一つは、既に議論されているのかもしれませんけれども、新しい経済展望なり経済計画の策定という場合、今、例えば小渕総理が国際公約だなどと言われている話で、99年度、来年はマイナス成長には絶対にしないと。2000年から、民活路線を軌道に乗せるということを言われても、それはそれとして、政治的にはいいのですけれども、本当に1経済の実態としてそういうことが……、先にこれありきではなくて、実態として本当にそんなことができるのかという問題を、今度の計画なり展望を策定する場合にどう関連づけるかということは、かなり重要な問題です。また宙に浮いたような明るい展望だけ出しても全く意味がない話になります。といって、深刻な話ばかり出しても、これもいかがなことか。その辺をどうするかということは、非常に重要な問題ではないかと思います。
問題提起だけしておきます。
〔部会長〕そうですね。そこは数字が出ない方がいいかもしれない、ということはあります。
しかし、まじめな話、そこはきちんと考えて、次の新しい展望の初年度あたりのところはどういうふうに考えるかというのは、実際には、最終がゼロであるか、プラスであるか、マイナスであるか別にして、中の個々にプラスの部分、そういうことはかなり強く出ていくということが必要ではないでしょうか。全部ならしたときに、ぜひプラスにしたいというのはみんな思っていますが、これははじいてみなければわからないというところがずいぶんあるのではないかという気もします。
大臣も既に、今年はマイナス2%、1.8%、2%とおっしゃっているから……。
大分時間が長くなりました。いろいろなご意見を本当にありがとうございました。事務局には、宿題がたくさん出てしまって恐縮ですが、一応、今日のご意見を反映させていただいて、フォロー・アップの報告は21日の総会に提出をさせていただきますので、細かいところについては、部会長と事務局の方にお任せをいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
どうもありがとうございました。
---以上---