経済審議会企画部会(第3回)議事録

時:平成10年11月10日

所:共用特別第一会議室(404号室)

経済企画庁

経済審議会企画部会(第3回)議事次第

平成10年11月10日(木)10:00~12:00

共用特別第一会議室(404号室)

  1. 開会
  2. マクロ政策、雇用政策等
  3. 経済計画フォローアップ報告スケルトン(案)について
  4. 閉会

(配布資料)

  1. 資料1 企画部会委員名簿
  2. 資料2 マクロ政策
  3. 資料3 雇用政策
  4. 資料4 経済計画フォローアップ報告スケルトン(案)

(参考資料)

  1. 参考資料1将来の我が国経済社会の基本理念
  2. 参考資料2 経済計画の機能と役割

経済審議会企画部会委員名簿

部会長
小林 陽太郎   富士ゼロックス(株)代表取締役会長
部会長代理
香西  泰   (財)日本経済研究センター会長
委員
跡田 直澄   大阪大学国際公共政策研究科教授
荒木  襄   日本損害保険協会専務理事
伊藤 進一郎   住友電気工業(株)専務取締役
角道 謙一   農林中央金庫理事長
小島  明   (株)日本経済新聞社論説主幹
小長 啓一   アラビア石油(株)取締役社長
佐々波 楊子   明海大学経済学部教授
ポール・シェアード ベアリング投信(株)ストラテジスト
嶌  信彦   ジャーナリスト
長岡  實   東京証券取引所正会員協会顧問
         日本たばこ産業(株)顧問
那須  翔   東京電力(株)取締役会長
樋口 美雄   慶応義塾大学商学部教授
星野 進保   総合研究開発機構理事長
堀  紘一   ボストン・コンサルティング・グループ社長
松井 孝典   東京大学理学部助教授
水口 弘一   (株)野村総合研究所顧問
村田 良平   (株)三和銀行特別顧問
八代 尚宏   上智大学国際関係研究所教授
吉井  毅   新日本製鉄(株)代表取締役副社長
吉川  洋   日本大学大学院経済学研究科経済学部教授
鷲尾 悦也   日本労働組合総連合会会長

〔部会長〕おはようございます。ただいまから、第3回の企画部会を開催させていただきます。お忙しいところをお集まりいただきましてありがとうございました。

今日は議題が2つございます。1つ目が「マクロ政策、雇用政策等」、2つ目が「経済計画フォローアップ報告(案)」についてでございます。

早速でありますけれども、第1の議題であります「マクロ政策、雇用政策等」に入らせていただきます。事務局から説明をお願いします。

〔事務局〕資料2「マクロ政策」がお手元に配付してございますが、中長期的視点に立ったマクロ政策の議論ということで、なかなか資料の整理が難しいのですけれども、一応、いくつか用意させていただいております。

「論点メモ」ということで6点ほど書いてございますけれども、まず、現在の情勢の下でのマクロ経済政策の議論として非常に重要なのは、過去のことになりますが、財政構造改革等の財政引締め策が今回の景気低迷のきっかけになりましたけれども、今から考えると「非常に誤った政策である」というような論評も可能ですけれども、その時点での判断として、財政から民間需要主体の経済回復にということで一応の理解ができたわけで、他の景気回復局面と比較しても著しい相違はなかったということで、失政であったというような評価もあるわけですが、その時点での判断としては難しいものがあった。そういう場合のマクロ経済政策の政策決定というのはいかになされるべきかというのは、今後とも非常に重要な論点になるのではないかということでございます。

2としては、景気が低迷状態に陥ったということが認識されるまでのラグ。これは我々自身も非常に責任があるわけでございますけれども、あるいは認識されてから実際に政策が行われるまでのラグというものについて、果たしてツゥレイトであったかどうかという論点があろうかと思います。

3としては、これまでも各種の公共投資あるいは減税等の施策が取られてきているわけですけれども、そういうものが経済に浸透しなかったような感じがありますが、それはなぜなのか。

4としては、やや中長期的な視点になりますが、最近、消費マインドが冷えきっているということが言われますが、その背景に、将来不安ということが挙げられるわけです。これについて本審議会でも、96年末ですけれども、財政社会保障ワーキンググループの報告で、俗に「破局のシナリオ」という、財政も国際収支赤字に、双子の赤字に陥るということで、年金の改革の必要性を強調したわけですけれども、人によっては、これが将来に対する不安を煽ったという意見もございます。また現在、中長期的視点から行われるべき年金の改革についても、短期的なデフレ効果を恐れるということで先送りするような議論もございます。こういう短期の景気刺激と中長期の財政再建の兼ね合いをどういうふうに取っていくのかというのは非常に重要なポイントだろうと思います。

5としては、そういう反省に立った上で、財政を緩めっぱなしにするのではなくて、中長期的にきれいな姿にしていくということにすると、今般の経験に鑑みてどういうことに、我々政策当局として気をつけなければいけないのか。

6としては、ちょっとコントラバーシャルだと思いますけれども、規制緩和で財政のデフレ効果を相殺するということを我々は目標にして規制緩和に取り組んできたわけですが、プラスの効果よりも、どちらかというとマイナスの効果が目立つ。規制緩和の効果というものは時間がかかるものなのか、あるいはいろいろな分野一斉に進展が見られないと、目に見えたプラスの効果というのは期待し得ないのかと。これもなかなか検証が難しい問題だと思いますけれども、こういう点についてもご議論いただきたいと思っております。

あと付属資料でいくつか付けてございますので、簡単にご説明申し上げたいと思います。

1ページめくって2ページに「90年代の経済情勢」、当時を振り返ってみると、民需への転換がうまくいっていたかのように見えるというグラフでございます。上のグラフが年度、下のグラフが四半期ですが、黒で塗りつぶしてあるのが民需、白抜きになっているのが公的需要ということで、95年度には公的需要である程度下支えをしておりましたけれども、民間需要の回復というのがかなりはっきりしてきた。96年度になりますと専ら民間需要主導の経済回復ということで、あたかも従来の景気回復軌道が実現されたかのような感があったわけでございます。

下の四半期の図を見ていただきますと、97年の1~3月期と4~6月期(9702と書いてあるのが4~6月期です。)、消費税の引上げをきっかけに、それまで経済回復の主体であった(黒で塗りつぶしてある)民間需要がパタッとなくなって、最近時においてはこれが非常にマイナスの方に寄与している。ここら辺は、後から見れば、境目がここであったということが発見できるわけですが、その時点あるいはその直前の時点でどういう判断ができたのかということが非常に問題であろうと思います。

3ページにいっていただきますと、それを過去の景気循環と比べてみたものです。民間最終消費支出、民間住宅投資については、特段の差異はございません。ここに「第11循環」と書いてあるのが、いわゆるバブル期にかかった景気循環で、資産効果で最終消費支出などはかなり強い伸びをしております。それに比べて今回は弱いわけですけれども、かと言って、極端に消費支出が弱いわけではない。それから、日本の場合は住宅投資はあまり景気感応的ではないわけですけれども、今回、実線で示している線を見ましても、それほど景気の足を引っ張っているというわけでもないということでございます。

4ページ目に「民間設備投資と実質国内総生産」が書いてございますが、民間設備投資については、今回は、過去の景気循環と比べても低い水準で推移している。これは1つには、第11循環というバブル期にかかった循環の非常に高い設備投資の反動であるとも言えるわけですが、ただ機械的な反動というだけではなくて、バブルの崩壊に伴う期待成長率の低下というものが背景にあって設備投資が非常に弱いということが、今回の非常な特徴であろうと思います。

5ページ目に移っていただきまして、政府需要でございますが、上の図の政府最終消費支出は、トレンドとしては過去の景気循環とそれほど違いはない。ちょっと技術的になりますが、第11循環でちょっと政府最終消費支出がシフトダウンしておりますけれども、その谷に当たります86年の末に昭和天皇御在位60年の金貨が発行され、それが政府支出にカウントされたりして、統計上ちょっと攪乱が生じております。トレンドとしては、その谷からの動きということで言えば、ほかの循環とあまり差異はない。目立って違いますのは、前回も触れさせていただきましたが、公的資本形成、公共投資でございまして、今回は、途中までは非常に弱い動きをした後、10期目ぐらいに今度は、「ゴー・アンド・ストップ」のゴーの方になっていまして、その後逆に、それが失せるという形でストップということで、振れが見られます。これは95年の夏(これは第7期に当たります。)に総合経済対策が決定され、この10期の山になっています96年の第2四半期にかけて、非常に公的需要が積み上がった時期です。その後は、公的需要が逆に急激な縮小に転ずるということで、大きな振れが生じている。こういう大きな振れをこの時点で実施したということが1つの議論の材料であろうかと思います。

6ページの「外需と消費性向」ということですと、外需の方の図は、谷を100としておりまして、その100という水準が、第9循環は非常に小さいものですから、振れが非常に大きく出ておりますけれども、あまり大きな動きはございません。それから、消費性向につきましても、今回は、90年代に入って下がっているという傾向はあるのですけれども、四半期で見ますと、この谷の時期から第13期・97年初めまでの時期ですと、そう大きな動きは生じていないということでございます。

過去の対策がなかなか効果を持たなかったように見えるという1つの原因は、前回もご議論いただきましたが、不良債権をはじめとする金融の問題でございまして、8ページに実質金利の図が白書からの引用で書いてございますが、名目水準では非常に低いわけですけれども、最近の物価の低迷ということを考えますと、最近時においては、国内卸売物価で計った実質金利というものが若干上昇ぎみであるということ。何をもって実質金利とするかということは議論がございますけれども、名目で見ると低いけれども、企業あるいは家計のとらえる実質金利というものは必ずしも低くはない、というふうにも言えるのではないかと思います。

それから貨幣の流通速度ということで、信用収縮の関連でございますが、9ページに貨幣の流通速度が書いてございます。直線あるいは点線が期間を変えて計ったトレンド線で、87年から91年ぐらいまでのバブル期においては、マネーが過剰であった。逆に92年以降、最近に至るまで、マネーの量が過少であると、これは過去の経験則からしてということですけれども、言えると思います。ただ、この動きがトレンドから異常に乖離しているというふうに読むのか、あるいは今起こっている間接金融から直接金融へのシフトというものを反映しているのだとすると、トレンド線自体も、今後変わっていくということで、果たしてこの図だけで過少なのか過大なのかという議論は尽くせないものがあると思います。

10ページの上の図が信用乗数でございます。これは、バブル期からかなり低下をしてきているということで、信用収縮の1つのあらわれであるというふうに思われます。ただ、民間研究機関などの報告では、アメリカと比較して、(過去においてはそんなに日本とアメリカと信用乗数が違わなかったわけですけれども、)アメリカのバブル崩壊期と日本のバブル崩壊期とを比べると、まだ日本の信用乗数は下がりきっていないということで、さらなるベースマネーの増加を主張するような向きもありますので、これもただ、下がってきているので問題だというとらえ方と、さらに下がる必要があるのではないかというとらえ方と、両方ご議論があろうかと思います。

下の図は、「現金預金比率の推移」、現金/預金でございます。これが最近急上昇しておりまして、手元流動性をなるべく持っておこうということが、家計のみならず企業においても目立っているということでございます。

こういう現象がございますと、いくら名目金利を下げたところでなかなか金回りがよくならないため、そういうものを財政政策とか金融政策というマクロ政策でなかなか面倒見切れないということで、金融面の対策が非常に重要になってきていると思います。

経済政策のラグについては、何をもってラグとするかということで難しいわけですけれども、11ページ、12ページに、経済白書に載っていた「経済対策の実行ラグ」。本当は認知ラグの方が問題ではないかというご議論があろうかと思いますが、計り方が非常に難しくて、月例経済報告の表現ぶりとかいうもので追ってみても、認知ラグというのがあまりはっきりとらえられないので、ここでは実行ラグだけをお示ししております。これはそれぞれの経済対策が決定された時点と、それに関連する補正予算が国会に提出された時点、さらに、その補正予算が成立した時点ということで、「合計」の横に書いてある数字が、経済対策の決定から関連した法案が成立するまでということで書いてございます。上から3段目の昭和58年あるいは昭和60年ぐらいの対策ですと、100日を超える実行ラグがありましたけれども、最近どうかということで見ますと、12ページの一番上の左の欄「緊急・円高経済対策(平成7年4月14日)」では35日、その右の「経済対策(平成7年9月20日)」では28日。それから、最も最近の平成10年の総合経済対策では54日ということで、実行ラグに関してはそんなに遜色がない結果になっております。

もっとも、先ほどちょっと申しましたけれども、本予算の編成が通常は夏に概算要求が行われ、年末に原案が決定されるという時間のかかる予算編成方式になっている。あるいは、その中で特に最近では、財革法を巡る政治責任の論議などがあって、果たしてこの対策の決定から補正予算の成立までのラグが短いからといって、対策が迅速に行われているということでは必ずしもない、ということは申し上げておきたいと思います。

次に、今申し上げた財革法の動きと経済の動きを関連させて書いてございますけれども、私、個人的には、不幸なタイミングだったと思いますが、財革法の動きを左側の欄で見ていただきますと、97年夏ぐらいに大体骨格が決まっていた。6月の段階では、97年度1~3月の消費税引上げ前の駆け込みもあって、実質経済成長率が年率で6.6という非常に強い数字が出ていたということで、9月11日にやっと4~6月期のQEが公表になって、消費税引上げの反動が大きかったということがわかったわけですが、そのときには既に法案が閣議決定をされる直前であった。なかなか修正の難しいようなタイミングであったということでございます。その後、政府経済見通し、98年1月に1.9ということで掲げてございましたけれども、なかなか難しいということがわかってきたのが、その後ということでございます。

財革法の関連でいきますと、公布されたのが昨年12月で、改正法が成立したのが今年5月ですから、1つの法律の改正にしては、5カ月で改正をしたというのは経験がないという批判もありますけれども、改正の動き自体はそんなに何年もかかるということではなくて、割りと機動的になされたのではないかというふうに、私、個人的には評価しておりますけれども、また、委員の方々のご議論をいただきたいと思います。

それから、経済政策の効果があったかなかったかということで、14ページに、最近、経済研究所で公表しました日本経済モデルの乗数が書いてございます。左上の四角を見ていただきますと、実質GDPの乗数が、80年代は1.30、1.31、0.86、これはGDPの乖離率でございます。それから、90年代に入りますと、1.21、1.31、1.24ということで、需要の面から見た乗数がそう顕著に低下しているということではないということでございます。ただ、公共投資の効果という場合に、橋をつくっも、セメントとか鉄を使う、そのことによる需要効果ということと、それから一般に言われている効果--その橋が使われることによる効果・経済活性化効果--というものは別のもので、需要効果は必ずしも落ちていないわけですけれども、その供給面からの効果というものは、もう一度吟味してみる必要があるということは言えると思います。

ただ、供給面の効果といいますと、分野別の公共投資のストックですとか、地域別の公共投資のストックの統計がなかなかしっかりしたものがありませんで、分析によっていろいろな結果が出るということでございます。

15ページに「景気循環の好循環の弱まり」、これは矢印が太い方が因果関係が強いということですが、80年代に比べて90年代は、企業収益から設備投資というような企業関係の循環が弱まっているということで、これも先ほど金融面のご説明とあわせまして、今回非常に力が弱いという1つの理由だろうと思います。

時間もありませんので、後は簡単に説明していきたいと思います。16ページに「国民の将来不安」ということで、アンケート調査の結果が書いてございます。これは日本がどっちに向いているかという設問をしまして、「悪い方に向いている」と答えた人に「何が悪いか」と聞いた結果で、財政と答えた人が最近急増している。ほかに、外交とか、手法とかあるわけですが、財政を挙げた人の割合が非常に急増しているということでございます。財政の悪化ということが、これもコントラバーシャルな点ではありますけれども、消費マインドの悪化に寄与している1つの可能性を示唆するものだと思います。

17ページに「老後に対する不安」ということで、90年に入りましてから、折れ線グラフで見ますと80年代からですけれども、老後に対する不安感が徐々に高まりつつあるということでございます。

18ページに「年齢階級別消費性向」の図が書いてございますが、下の表を見ておわかりのように、これも世論調査の結果なのであまり厳密に解釈することは正しくないかもしれませんが、比較的若い人に消費性向の低下が著しいということで、若い人が老後の心配をしているという感じがしないでもないということでございます。

19ページの「老後を心配している世帯比率」、これも傾向的に上昇しております。91、92年で質問形式が異なってちょっとジャンプしております。最近の調査では、老後の生活費としていくら必要だと思いますかという金額を書かせた後で、「老後の生活に不安ですか」という設問をしたので、不安だと思う人がその設問によって増えているという、世論調査の技術的な理由で増えております。傾向的にずっと増えているということでございます。

こういう不安感をどうやれば払拭できるか。先ほど、年金のことで申し上げましたけれども、ご議論いただきたいと思っております。

轍を踏まないために何をすればいいかということで、20ページから「今後の進め方」ということで書いてございます。これは白書から引用したわけですが、OECDの調査からもともとは引用しております。OECD諸国の財政再建の経験で言いますと、成功・失敗を分けてございますが、失敗の方は、経常収入のところの増え方が大きい。つまり、増税で財政再建をしようとすると失敗することが多い。逆に、成功の方で見ていただきますと、政府支出の削減で財政再建を行った場合に成功している。それも経常移転のような非投資的な支出を削減することが財政再建にとって、経験則から言うと一番いいのではないかというような示唆が得られております。

21ページ、構造改革の効果をちょっと楽観的に見すぎたのではないかということで、これも足元の景気が低迷していて生産性が下がったり、構造改革がそのために進んでいないということがございますので、資料としてなかなか難しいのですが、これは興銀のアンケート調査(98年2月時点)で「構造改革が設備投資の増加要因となる」という企業が全体で1/3ぐらいありますけれども、逆に「設備投資の抑制要因になる」という企業もそれに相応するぐらいあるということで、必ずしもプラスの効果だけではない。プラスの効果を発揮するためには、少し時間がかかる、あるいはいろいろな分野で諸般の施策が進められなければいけないということを示唆するものだと思います。

22ページに「今後の構造改革の進め方に対する企業側の見方」ということで、これも見方によって、全体として構造改革を実行すべきとする企業が多いとも読めますし、今年2月の時点では、右から2番目にございます「構造改革のスピードを緩め、景気対策に重点を移すべき」という企業が数としては一番多いということで、企業の姿勢にも若干躊躇した点が見られるのではないかと思っております。

簡単でございますけれども、以上でございます。

〔部会長〕ありがとうございました。

今の事務局からの説明について、皆さんからご意見をお願いいたします。

〔A委員〕今、事務局からご説明いただいた、政策の事後的な評価の重要性というのは、私も全くそのとおりだと思います。ただ、それを評価するに当たって、今日ご説明いただいた資料がどの程度、例えば計画局計量班独自のものがどれだけあるのかというと、やや疑問ではないかと思います。

前回の委員会でもI委員から明確に指摘されたように、公共投資が今回落ち込んだことがどの程度景気を悪化させたかというのは、一種のヒストリカルシミュレーションをして初めてわかることでありまして、現実のGNPの推移を標準ケースとして、仮に増税とかいうことをしなかったらどの程度乖離ができたかと、まさにモデルをこういうところで使わなければ、いつ使うのかということであります。

こういうふうに過去の景気循環との比較をやっても、あるいは民間の機関がやっているようなこういう分析をしても、わかることは限られているわけで、この際、モデルのシミュレーションという効果を見なければ、この問題の決着はつかないのではないかと思います。

それから、たとえ増税とか社会保険料の引上げが今回の不況の責任ではなかったとしても、前回お示しいただいたように、公共投資の予測が極めて楽観的であったということとは、これは関係ないわけであって、なぜ公共投資の政府自らが決められる変数の予測があれほど誤ったのかということは、将来に同じ問題を繰り返さないためにも、ぜひ事後的な評価の大きな柱にしなければいけないのではないかと思います。

それから、それにもかかわらず、4ページの過去の景気循環との相違のグラフで明快に示されているのは、設備投資が今回非常に回復力が遅いというわけで、これは「若干弱い」というような、上に書いてあるような文章ではかなりミスリーディングではないか。明らかに低いわけで、なぜそうなのかということを考えなければいけないのではないかと思います。

そこで大事なのは、中長期的な成長率の屈折ということを今回、考えていなかったのではないか。過去と同じような中長期的な、3%程度の成長を前提とすれば、財政再建をしても景気は十分だったという判断が背後にあったのではないかということであって、これは前回の経済審議会からも繰り返し言っていることですけれども、なぜ中長期的な成長率が今回屈折したのかということを、これもモデルを使って、構造ダミー等を使って分析してもらわなければわからない話ではないかと思います。

ですから、繰り返し申し上げますが、ぜひモデルを使った分析を次回以後は見せていただければと思います。前回の計画でモデルはできているはずでありますから、それを使うのは決して大変ではないと思います。

それから、メインイシューにあります不安感の問題ですけれども、これは96年にやりました「財政社会保障ワーキンググループ」の報告等が人々の不安をかき立てたと、一部にそういう意図があるということですが、これは、私は国民を愚弄するものであって、政府が将来にバラ色の計画を示したら国民は安心して消費をする、厳しいことを言ったらこわがって消費しないということはないわけです。政府が言おうが言うまいが、実態はかなりの程度わかっている。これは前回も、部会長自らがそういうことを言っておられたというふうに私は理解しております。

ですから、大事なことはきちっと情報公開することであって、例えば、今の年金制度改革だって、このままでは持つはずのない年金をあたかも持つかのように言うことの方が、かえって人々の将来の不安を煽ることになるわけですから、削減自体、改革自体が不安を煽るのではなくて、改革によって確実に制度が持つということを示すことの方がはるかに今重要ではないか。

したがって、中長期的には改革というものと経済の安定・維持というのは決して矛盾するものではないのではないかと思います。

それから最後に、規制緩和があまり効果がなかったのではないかということですが、これは、私は、かなりミスリーディングであって、そもそも規制緩和がどの程度できたのかどうかと。経済計画に曖昧に書いてある文章と、各省の審議会で曖昧に規制緩和するという文章を照らし合わせれば、文章上ではある程度進捗したかもしれませんが、どの程度実体経済に与えるような規制緩和がそもそも行われたかということを言わなければ、規制緩和がどの程度経済効果に対してプラスかマイナスかということ自体が議論できないわけであります。私も今、政府の規制緩和委員会のメンバーですけれども、本当にマイナーな規制緩和をするにも各省の猛烈な抵抗がある中で、とても今回の規制緩和がそもそも進んだという認識はないわけであります。あくまても言葉の上の規制緩和にすぎないのではないか。

ですから、こういう形で規制緩和をしてもだめなのだというような、あきらめのような論調が出ることを極めて恐れているわけであります。そういう点を若干のコンメントとして言いたいと思います。

〔B委員〕前回、伺えなかったので、もうご議論の出た点かもしれませんけれども、若干、今ご説明いただいたことを、順序が逆になりますけれども、伺いたいと思います。

まず、政府の財政再建をした場合に、どういう方法を取った国で成功しているか。財政の拡張的でなく、支出を抑えたところの方が成功しているというご指摘でしたけれども、逆に、今回の景気回復につきましては公共投資待望論、それを金融政策の方が効かないというお話のご説明が縷々ございましたので、それのみというような論調なのを大変気にしております。

と申しますのは、14ページに、公共投資乗数が顕著に低下していないというのは、金融政策その他の条件を一定にした場合は、ということですけれども、まさに金融政策の効き方が変わってきている下で一定でないというところが論点ではないかと存じております。

また、逆になりますけれども、9ページのご指摘のときに、過去のトレンドから大して変わっていない。変わっていないというのは、今、直接金融に移行しているというフェーズにあるから、それを織り込めば大してトレンドから外れていないのではないかというようなご指摘だったかと……、ちょっとよくわからないですけれども。そうだとすれば、一体、金融政策が効かなくなっているというような現状を、直接金融・間接金融との構造変化の中でどういうふうにお考えになっているのか。

金融政策が効かないというのが縷々ありますのは、なぜ効かないというような認識なのか。実質金利がむしろ上がっているということであれば、実質金利も何も信用収縮が起きているという現状の下でマクロモデルをお回しになるときに、今まさに起きているような構造変化をどういうふうにとらえるか。それが伺いたいというか、気になった点でございます。

もう一つ、13ページで、政策の速度の話をなさっていたのですけれども、引き上げるときに最悪であったというような……。この点を非常に気にしておりまして、例えば、早期是正措置ということを言いますけれども、これは訳語がいけないのではないかというふうに思っておりますのは、もともとプロンプト・コレクティブ・アクション・プロビジョンの訳だと思うのですけれども、プロンプトを「早期」と訳したために、物事をやるときにはプロンプトにやらなければならないというようなのが消えてしまったのではないかという気がしておりますので、外国の政策と引き比べますときには、その根本にあるような精神を生かした訳語でないと、マクロモデルもうまく回らない。それは蛇足でございますけれども、どうぞよろしくお願いいたします。

〔C委員〕若干重複しますけれども、4点ほど申し上げたいと思います。

1つは、論点1の「『事後的』な解釈に過ぎない可能性はないか。」と、いかにも軽く見ているという感じがします。これはよく株式市場では、ヒキヤとゴウジャクということが言われるのです。ゴウジャクというのは、強い弱いということです。要するに、全部終わってしまってから、こういう理由で高かったのだ、いやこういう理由で安かったのだ、こういうことを言われるわけですけれども、事後的云々ということは余り意味がないので、むしろ、あの9兆円ということよりも、92年以降今までで、事業規模で87兆円という支出をしていて、なおかつ今は恐慌になるかならないかと言っていることの方をもうちょっときちっとやるということの方が、これから何をやろうかという場合に重要ではないか、このように考えております。

87兆円という場合も、どこからどこまでを取るかというのもあるかもしれませんが、あと、真水論というのがよくありますけれども、真水論が民間シンクタンクなどでも、そのうち40兆円だという意見もあれば、いろいろありますので、その辺の問題を……。真水などということは、アメリカの連中までが「マミズ」などということを生意気に言い出すような事態でありますので、この辺ははっきりとさせておくことが企画庁として必要ではないかと思います。

もう一つは、これは心理的な問題が非常に大きかった。したがって、あの9兆円が、エセエコノミストを含めて、何か国民的な認識になってしまった。心理面というのは非常に大きかったと思いますので、単なるモデルだけではなくて、そういう心理的要素というのは今後、どういうふうにやっていくか、考慮していくかということは非常に重要な問題ではないかと思います。

第2番目、時間的ラグ。これは認知ラグ、決定ラグ、実行ラグ、全部が一緒になってツゥレイトになったわけですから、日本的な議会制民主主義の下でこうなるということもありますけれども、もうちょっとマーケットということをよく認識して、よく見ながらやっていくということが必要だろうと思います。

それにつけても、政策決定する場合に、株式市場の動向ということ、あるいは金融市場・公社債市場の動向ということは非常に大きな要素になるわけですけれども、と言って、デフィジョン・インデックスなどにはこれが落ちてから10年近くになりますか、株式指標の中には全然入ってこないということで、この辺をどう位置づけるかということもお考えをいただきたいと思います。

第3点は、これは私は前から言っているのですけれども、景気が回復しないというのは、需給ギャップがものすごくでかいわけですから設備投資は起こらない、ということをずっと主張してきているのですが、まさにその状況でありますので、こちらがさらに民間にシフトしていくということは、この1、2年はまず不可能だろうと考えております。そういう点は、4ページで、先ほど八代先生が言われた意見に全く同感でありますけれども、私は、この設備投資関係というのは、相当悲観的に見ている。むしろ、過剰設備投資をどう廃棄していくかというリストラ計画の方が……。今、各社とも全部大リストラ計画、これは人員整理も含みますけれども、やっております。そちらの方のマイナス面を償却していくということの方が、当面はまだ大きなウェイトがあるのではないか、このように考えております。

最後は、皆さんおっしゃることですけれども、政府としたら、心意気を示すということはいいけれども、やたらに楽観的なことを言わずに、事実のディスクロージャーをはっきりしていくということ。僕は、この前の「破局のシナリオ」というのは非常にいい試みだったと思うのですが、あれがうまく浸透しなかったというのは非常に残念であります。ここでまた妙に楽観的なシナリオを書くということは、厳に戒めなければいけない。厳正に現実をよく見ていくことが必要ではないか、このように考えております。

以上です。

〔D委員〕この部会が、タイムスパンというのをどう見ているかということによって大分違うと思うのですけれども、1ページの「論点メモ」というのは、すごく短期のことと中長期のことが、ごちゃ混ぜとは言わないけれども、全然整理されて書かれていない。例えば、財政構造改革でも、規制緩和でもいいのですけれども、そんなものが短期的に経済をプラスに働かせるなんて誰も考えてないわけです。諸外国の例を見たって、最初はちょっと落ち込むけれども、その後よくなるのだという、そのタイムスパンの問題がある、と。

もともと橋本さんのときは、そういう認識もあったのでしょう。それが、足元が悪くなってしまったので、いろいろな意見がばーっと出てきて、皆さんの方も、そっちも逮捕しなければいけない、こっちも逮捕しなければいけないということだとは思うのだけれども、タイムスパンというものを、我々は12カ月の話をしているのか、36カ月なのか、60カ月なのか、それをきちんとしないと議論が進めにくいなというのが最初の印象です。

2つ目は、4ページのグラフでも顕著なのですけれども、これは前回もちょっと申し上げたのですが、新しい経済というか、要するに、成長経済ではなくて成熟経済に入っているわけですから、このグラフで言っても、第9循環、第10循環、第11循環というのは、大体トレンドラインが似たようなところに乗っているわけです。ところが、今回の循環というのは明らかにトレンドラインが違うわけです。これは何が違うかといったら、偶然違うのではなくて、成長段階と成熟段階では、グラフ1本引いてみても全く違うということがあるわけですから、そういう意味では、過去との比較は大事だけれども、過去との比較だけで話していてもだめだ。

今おっしゃられたように、例えば、「設備投資が全く起きないよ」という意見は、僕も、24カ月ぐらいで言えば、全くそのとおりだと同じように認識させてもらっているのです。それはなぜかというと、それはいろいろな理由があるのですけれども、基本は、成熟経済であって、供給能力過剰になっているという現実があって……。今までもありました、過去にも。けれども、そのときは成長経済ですから必ず需要がほどなく追いかけてくるわけです。それで何となくギャップが埋まってしまう、こういう話があった。ただ、造船などを見ていると明らかに違って、設備廃棄などに進んでいくわけです。

そういう意味では、マクロ経済的に見ることはいいのだけれども、もうちょっと近時モデルとして、業種別に今の日本経済の置かれている状況に、10年前とか、20年前に遭遇している業界というのがありますので、そういうところのデータを洗ってみて、それとのグラフの乖離などにおいて類似性があるのかないのかというのを見ていかれると、話がもうちょっとクリアになるのではないかという気がするのです。これはどういうふうにお考えなのか、意見というよりぜひお聞きしたい点なのです。

私はそう考えるのだけれども、見ているとどうも、そうではないという前提でやっていらっしゃるみたいなので、荒井さんのご意見などを教えてもらいたいなと思っているのです。

〔部会長〕それでは、あとお1人に伺って、今までにいくつかのご質問も出ていますから……。

〔E委員〕どうしてこういうふうになったかというところですけれども、ほかの景気回復局面と比較して著しい相違はなかったということを出そうとなさっているわけですけれども、ある観点から見たらそうかもしれませんけれども、前回触れましたように、この観点から見ると、全然ほかの局面と違うということがあるのです。それは何かというと、金融システム・銀行システム問題です。

前回の繰り返しになるのですけれども、非常に重要なポイントとして、97年度の状況を振り返ってみますと、金利安定5カ年計画が発足したばかりの時期だったのです。私の解釈では、この5カ年計画は非常に特殊なもので、ある意味で非常に日本的なものだったのです。大きな柱が2つあったのです。1つは、不完全な情報開示が制度化されたということです。つまり、5年間かけて銀行がどのような問題を抱えているのかということを斬新的に情報開示する。その必要な段階に応じてまた手当てする。先送り方式です。これが非常に制度化されたものだったのです。

もう一つは、銀行が不良債権問題を片づけるのに公的資金を導入しない、というのが出発点だったのです。つまり、何がそこで前提となっていたのかといいますと、銀行に5年間の猶予時間を与えて、その5年間に毎期毎期のフローの収益を使って、バランスシートのストックの痛みを治す、改善する。ただ、この政策を支えているのが2つあったわけです。1つは金融政策、これは従来どおり、緩和政策が続いたわけです。もう一つ大きな支えとなっているのは、拡張的な財政政策です。ですから言ってみれば、マクロの観点からだけでこの問題をとらえると、重要なポイントを逃すことになります。

つまり、そこでは、言ってみれば5年間計画を成功させるのに、むしろ拡張的な財政出動を続けるべきだったのです、ある意味では。にもかかわらず、97年度に入ったら強烈な財政引締め政策を打った、というのが1つの大きな問題です。

私は、それをやるべきでなかったというふうに言っているのではないですけれども、そこで出ている政策のメニューの中では自滅的な行為に等しいということです。

ですから、もう一つのやり方としては、例えば本当にそこで財政再建をやるのであれば、即座に、これを補う形で公的資金を導入するとか、あるいは当初5年間の計画だったものを、短縮させて2年間で終わらせる。そこで、つまりポリシーミックスを整合性の取れた形にするべきだったのではないかという気がします。

毎回、同じことを指摘しているわけですけれども、非常に重要なポイントだというふうに感じております。

ついでにもう一つ、財政再建とか財政構造改革という点で、これは非常に複雑な議論で、なかなか短時間ではカバーできないのですが、いつも気になるのは2つあるのです。1つは、その当時、財政構造改革が出たとき、日本の財政事情が非常に危機的な状況にあるというような宣伝ぶりだったわけです。これは、片方はそうですけれども、それこそマクロ的な見地から考えた場合は、日本国という1つのマクロの単位で見た場合は、決して日本は危機的な状況にはなかったはずです。日本は、世界の中の大変な債権大国です。ただ、民間部門が大変な蓄積があったけれども、政府部門は大変な赤字を抱えて、それを足せば、経常収支尻の黒字ということで出てくるわけです。ですから、問題は、日本国民か将来に対して非常に危機的な状況にあるというメッセージを送るのが非常にまずかった。むしろ、日本の国内のシステムの中で、システム論として、それこそ財政構造改革の論として、どういうふうに民間部門の方に蓄積されているものをより効率的な形で公共部門の方に持っていくのか。あるいは逆に言うと、どういうふうにその公共部門の赤字の部分を減らすのか。ただ、その減らす局面においては、みんな暗い話ばかりではなくて、実は日本は相変わらず大きな経常収支大国になっている、と。ですから、日本国ネットで見た場合は、将来に対する不安がないはずです、ある意味では、極論ですけれども。ですから、これもこの議論をするときに重要なポイントになってくるのではないかという気がいたします。

ここでは、ときには財政構造改革という言葉も出てくれば、また財政引締め政策という言葉も出てくるわけですが、この話を議論するときには、この2つの、つまり構造問題と、循環的な引締めか拡張的にするかということを区別する必要があるのです。

付け加えて、もう一つ問題は、循環問題と構造問題の中に入ってくるのは、バブルの問題です。

〔部会長〕時間の関係もありますが、いくつか具体的なご質問も出てきていますから、皆さんのご意見についてのコメントは別にしておいて、ご質問のところに簡単に事務方からコメントがあればしてください。

〔事務局〕いろいろなご意見をありがとうございました。

時間も限られていますので、数点に絞りたいと思います。前回それから今回、I委員、A委員のご指摘ですが、事後的評価にモデルを使う。これは逆に、B委員からは、金融政策の効き方が一定でないときにそういうモデルでやってどうするのだというような話。C委員からは、心理面の効果というものが非常に重要だということで、私どもにすると、相反するというわけでないですけれども、両方あると思うのです。

計量モデルでやりますと、別に何もやっていないわけではなくて、9兆円の国民負担増というのはGDP比にすれば2%強ということがあるわけです。そのほかにも、公共投資が相当程度削減されている。これは、伸びると見ている場合に比べて実際減っているというのを往復で勘定しますと、10%ポイントぐらいの差はある。それに通常のモデルの乗数を掛けて考えると、大まかな話で言えば、GDPに対する効果としては2とか、21/2とかいうぐらいの効果はあるわけです。ただ、そのときに重要なのは、それと同時に金融政策が緩和されているというような点、それから為替レートが円安に振れているというような点で、そこが問題になるわけですが、そういうものの効果を通常モデルではじいた数字を効果として信じるのか、あるいは、B委員のご指摘もそうなのですけれども、その金融緩和の効果というのが実際に財政からのデフレ効果をオフセットできていないというのをどう考えるかということで、ここは、E委員のご意見もあるわけですが、金融の不良債権の問題というものが、前回もちょっと申しましたけれども、モデルというものではなかなかとらえきれない。もちろん、心理的なものというのも、なかなかモデルではとらえきれない。そういうのが我々の結論で、そういう金融の問題とか、企業の期待成長率とか、あるいは家計の将来に対するコンフィデンス、こういうものをいかにリストアーしていくかということ。その上で、マクロ政策というのはどういう役割を果たせるのかということが一番重要な論点だろうと思います。

もう一つあるのは、規制緩和の緩和の効果ということですけれども、C委員、D委員から、今需給キャップが大きくて、むしろリストラが主眼であって、設備投資はここ数年出てこないという見方がございました。私も、非常によくそれはわかるのですが、一方で、A委員の規制緩和に関するご指摘のように、規制緩和が進めば経済効果というのは過大評価ではなくて、きちんとあるのだということもあるわけです。そこを、予測として考える場合と、政府の目標として考える場合と、経済計画というのはどちらかというと構造改革をすることによってこれだけの経済成長を実現するのだという数字で、3というのがあったわけですけれども、予測としてとらえると、なかなかそこまではいかない。そこを、C委員のおっしゃったように、楽観的ではいけないということですが、自らやる部分を含めて、どういうスタンスで経済計画なり長期展望というものを我々が作っていかなければいけないかというのが、非常に大きな論点だろうと思います。

簡単でございますけれども、以上でございます。

〔部会長〕いろいろご意見もあろうと思うのですが、まだ2つございます。次の雇用の問題、これも少し時間をかけなければいけないところもありますし……。

しかし、具体的にモデルの問題、いくつか変数を変えてたたき込んでみて回してみたら、かなり違うか、違わないか。仮に、あまり違わなかったときに、回した結果として、もう一ぺんそれを検討するという意味はあるような気もしますが、まだ回してはいないわけですね。回した結果はあるわけですか。

〔事務局〕ちょっと数字を申しましたけれども、とりあえず、非常に簡便法ですけれども、やってみて、2から21/2と。単年度のインパクトシミュレーションですけれども、そういうような結果は出ております。

〔部会長〕もう一つは、C委員はさっき民間設備投資はあまり期待できないと、いろいろな理由を挙げられました。非常に単純に言うと、そうすると全体としても当分、期待するのはやめようということなら別ですが、少し何とかならないかというと、残りは消費と公共投資ではないか、政府投資だと。そういうところに少し集中をして少し議論する余地があるのか。公共投資もいろいろ議論はあるけれども、どうか。消費も、不安感があるうちはどうにもならない、ということになるとトータルとしては、設備投資ばかりではなくて、設備投資も、ダブルセクターのスペンディングも、消費もそれぞれネガティブだ、トータルも当分の間はあまり期待しない方がいい。C委員の全体感はそういうことですか。

〔C委員〕そうではなくて、ちょっと追加しますと、そこで構造改革という問題になるわけです。産業構造が大きく変わる、本当は90年代もっと早くからやっておくべき、それが規制緩和・規制撤廃ということだと思いますけれども。特にアジアにこれだけの供給能力ができてきている場合に、日本の国内は本当に産業構造改革をしなければならない。したがって、痛みは伴う。したがって、オポチュニスト的に「痛みはなく、必ず2%の成長へいきますよ」という楽観的なことを言ってはいけない。

そういうことで、産業構造を変えていく、構造改革をする。したがって、規制の撤廃・緩和をしていくということが非常に重要であると思います。

したがって、先ほどA委員からもありましたけれども、ここへ出てきた興銀のアンケートというのは、規制緩和を望まない分野が圧倒的に多いわけですから、こういう結果が出るのは、最初から、アンケートをすればそうなるというところがわかっております。

したがって、勇猛果敢に構造改革をしていくというのが年来、私の結論でございます。何もするな、ということではないわけです。

〔部会長〕ただ、それも結果として数字に出ていくのは、どこかに出てくるのだけれども、それは当分出てこないという感じですね。そういうことですね。

〔F委員〕それは重要な問題だと思うのは、先ほど、どなたかがおっしゃった、成長経済時代は需給のアンバランスが出てくると、主として財政政策が出動していったということで需給のギャップを埋めたりしてきましたけれども、成熟型の経済になったときに、要するにGNPに占める需要項目からいって、日本ではIgは極端に高いのだと。それから、IPも高いと思うのです、たしか。そうなったときに、これを今後どういうふうに見ていくかというときに、今、一生懸命いろいろな政策をやって民間設備投資をもっと増やそうとすることが将来どうなるのかという点についての疑問というものは、当然、出てきていいと思うのです。Igもそうだと思うのです。

そうすると、残りは、一番大きな問題は個人消費だ。そうなったときには、生活の安定とか、将来の見通しとかいうものが大事になるし、これから議論する雇用政策が非常に大きな意味があるのではないか、私はそう思います。

〔G委員〕日本の国内的な問題に、皆さんの焦点が当たり過ぎている。世の中、グローバルになっている中で、東アジアとの関連というものを非常に大事に。日本の国内だけの内需なのだ、こういう感覚というのは相当に間違っているのではないか、こういう感じを持っています。

こういう分析でも、東アジアとの関連といいますか、そういう要因の分析というのは相当きちっとやっていただきたい。今後ものすごく変わってくると思うのです。

〔部会長〕具体的に言うと、東アジアとの関係での輸出入の問題とか、投資の問題とか、そういうことですか。

〔G委員〕対日の輸出輸入、そういう目で見てはいけないのではないか。

〔部会長〕投資の問題も含め、そういうことですか。

〔G委員〕ええ。

〔部会長〕具体的に関連を持たせると、そういうところしかないですね。

〔G委員〕我々国内の目で見れば、そうなのです。だから、需要という感覚を、例えば東アジアで需要がずいぶん起きているわけです。その中で、国というのは日本になっていますけれども、日本の国として供給責任なり何なりというのは、当然あると思うのです。彼らだって、伸びるステップがあるわけです。そういう中で、どう日本の経済というのは組み込まれていくのだと。これは、僕は、非常に大きな問題だと思っていますので、国の中だけで考えてマクロ政策というのは成り立つのか、こういう感じを持っています。

〔部会長〕それでは、雇用の問題について、事務局から説明をどうぞ。

〔事務局〕それでは、資料3「雇用政策」につきまして説明したいと思います。本日の議題は、「適材適所の人材の配置を達成するための課題と対応策」ということでございますが、資料3につきましては、1ページから、論点についてまとめたもの。4ページからが、最近の雇用情勢の資料、17ページからが論点の関連資料という構成になっておりまして、3分割になっておりますので、分けてご覧いただければと思います。

それでは、最初に、最近の雇用情勢につきまして、簡単に説明したいと思います。

4ページをお開きください。「完全失業率と有効求人倍率の推移」ですけれども、皆様ご承知のとおり、完全失業率は97年後半以降上昇テンポを早めておりまして、98年9月で4.3%と過去最高水準で推移しております。また有効求人倍率は97年末以降急速に低下し、98年9月で0.49倍と過去最低水準で推移しておりまして、いずれも、こういう統計を取り始めてから最悪な状況になっております。

次の5ページで、「求職理由別の完全失業者の動向」でございますけれども、最近では、倒産、解雇、定年等の非自発的理由により離職した者の増加が大きいこと。また、自発的理由により離職した者や、新たな職を探し始めた者など、さまざまな理由による者がいずれも、90年代に入りましてから増加傾向を続けております。

次の6ページ、「求職理由別、年齢階層別の完全失業者の動向」でございますけれども、離職失業者について、年齢別・求職理由別にみますと、55~64歳では非自発的な離職による者が多くなっておりまして、また、増加してきております。他方、25~34歳などでは自発的な離職が多く、また、これも増加してきております。なお、98年に入ってからは、35~44歳など比較的若い層でも非自発的な離職による失業者が増えているというのは、ご覧のとおりでございます。

次に7ページ、「年齢階層別の失業要因分析」でございますけれども、今までは、20歳代までの若年層においては、労働力需給のミスマッチの拡大が顕著に見られるということ。他方、55~64歳、65歳以降の高年齢者について、雇用機会(需要不足)が著しくなっていました。しかし、今年に入ってから若年層においても、雇用機会の不足が大きく影響してきているというのが現状でございます。

次に8ページ、「完全失業率と均衡失業率の推移」でございますけれども、均衡失業率は長期的に上昇傾向にあり、バブル期に一時期低下したこともあり、上昇テンポはバブル崩壊以降、むしろ高まっているということでございます。

次に9ページ、「新規学卒就業者の離職率の動向」でございますけれども、新規学卒就業者の在職3年以内の離職率は、ここ数年の雇用情勢の厳しさにもかかわらず、やや高まりがみられ、高水準で推移しております。例えば、高卒では40%ぐらい、大卒では25%ぐらいの者が、就職後3年以内に初職を離職しているということです。こういった傾向は一時、低下してきたのですけれども、またつい最近、増加傾向を示しているということでございます。

次に10ページ、「職種別にみた労働者の過不足判断の特徴」でございますけれども、「管理」「事務」につきましては、「不足」するという事業所の割合がバブル崩壊後一貫して低い中、最近の「過剰」とする事業所割合の高まりによって過不足判断D.I.の「過剰」超過幅が拡大しているということでございます。要するに、「不足」が従来ともに非常に低いところにあって「過剰」判断が大きく振れたということから、全体としての過剰感が大きくなってきているというのが、管理・事務職であるということでございます。

次に11ページですけれども、他方、「専門・技術」また「販売」につきましては、最近、過不足判断D.I.の「不足」超過幅が縮小はしておりますけれども、「過剰」とする事業所の割合が高まる一方、「不足」とする事業所割合も、ある一定水準ありまして、これらについてはまだ採用機会があるということでございます。

次に12ページ、「産業、職業別の雇用増減」ということで、92年から97年の間、建設業、製造業、商業・金融、サービス業につきまして、その間の産業別、職業別の雇用の増減を見たものでございます。産業別、職種別の就業者数の推移を見ますと、管理職は全産業で減少しており、事務職の増加も低くなっております。他方、専門職や保安職、サービス職は増加しており、特に、「商業・金融」や「サービス業」での増加が著しいものになっております。

次に13ページ、「産業別にみた新規開業と雇用」でございますけれども、これは91年~96年の間を調査したものですが、サービス業、小売業、飲食店等で新規開業に伴う従業者数の伸びが大きい。今後の成長が期待されているサービス業では、特に、「専門サービス」(専門サービスとは、法務、財務、会計等です。)「他事業サービス」(他事業サービスとは、各種の検査業、ビルメンテナンス、民間職業紹介事業等です。)「医療業」「娯楽」等で活発な新規開業により雇用機会が増大しているということでございます。

なお、これは、企業事業所群の中でも、もちろん増加するもの、減少するものがありますが、ネットでみたときの数字をあらわしているものでございます。

次に14ページ、「開廃業率の動向」でございますけれども、上のグラフは日本の開廃業率の推移ですけれども、開業率は1970年代以降低下傾向にあり、近年は廃業率を下回る程度で推移しています。対照的に、アメリカでは、廃業率の水準が高いものの開業率もそれを上回る水準で推移しており、企業の参入・退出が活発に行われているということでございます。

以上、最近の雇用情勢を簡単にご説明いたしました。

これらの最近の雇用情勢を踏まえまして、「適材適所の人材配置を達成するための課題と対応策」につきまして、「雇用創出」「就業形態の多様化」「人材育成」「需給調整機能」の4つの観点から論点についてまとめたものが1ページ以降の各論点でございます。簡単に論点をご説明したいと思います。

まず、論点1としましては、現在の起業や新規事業展開の促進方策としては、ベンチャー企業の育成、中小企業支援、あるいは、産業分野ごとの規制緩和等を中心に実施されているところですけれども、こういった方策が雇用の創出を図る上で十分なのか。

論点2としましては、「雇用創出と労働移動」でございますけれども、労働市場に流動性がないことが起業家が育たない大きな要因の1つであるという議論がある一方で、労働は派生需要であることから、企業や新規事業の展開がない以上、労働の流動化は生じないという議論もございます。この点、どういうふうに認識したらいいのかということをご議論いただきたいと思います。

論点3としましては、「就業形態の多様化」でございますけれども、「今後の雇用創出に向けた取り組みにおいては、いわゆる正社員だけではなく、多様な就業形態(パートタイム・派遣労働・自営など)を勤務形態の柔軟化(在宅勤務・SOHOなど)を視野に入れて進めていくことが必要ではないか。その際には、労働者が多様な就業形態による働き方を積極的に選択することができるよう、正社員に比較して遜色なく、安心して働くことができる環境を整備することが必要ではないか。」ということで、具体的には、

・正規社員と非正規社員の処遇格差の適正化

・特定の就業構造に対して労働供給抑制的な効果を持つといわれる税制や社会保障制度などの見直し

・雇用関係になくとも労働者性が高い者(今後生まれてくるような在宅勤務、それから請負などが入ると思います。)については適切な保護を図ることができるシステム作り

・就業形態の多様化に対応した新たなワークルールの整備

ということでございます。

論点4としましては、「労働時間の短縮」でございますけれども、女性・高齢者の雇用機会を確保するという観点からも、労働時間の短縮を図っていくことは必要ではないか。

2ページですが、また、「労働時間の短縮促進は、労働者の自己啓発機会を時間面から拡大させるものとして重視すべきではないか。」ということで、具体的には、

・所定外労働の一層の削減

・年次有給休暇の取得促進や多様な休暇制度の充実

というものを図っていく必要があるのではないかということでございます。

論点5としましては、「エンプロイアビリティの向上」でございますけれども、「職業能力の陳腐化のスピードが早まるなどの雇用環境の変化の中、個々の労働者が主体的に職業能力開発を図り、自らのエンプロイアビリティ(雇用可能性)を常に高めていくことができる環境を整備することが必要ではないか。」ということで、具体的には、

・大学の社会人受入れ体制の充実

・教育訓練にかかる費用の支援

・教育訓練に係る費用の税控除制度の見直し

・奨学金制度の拡充

さらに、「失業者が労働市場へ再参入しやすいよう、失業時の職業能力開発支援の強化が必要ではないか」。今まで失業対策といいますと、所得保障が中心であったわけですけれども、今後は、職業能力開発の充実も図っていく必要があるのではないかということでございます。

論点6としましては、「情報提供環境の整備」でございますけれども、「人材需給情報と教育訓練情報をリンクさせることにより、需要に応じた職業能力開発を的確に行うことができるようにするなど、労働力の需給ミスマッチの解消に効果的で利便性の高い情報提供環境を整備していくことが必要ではないか。」ということでございます。

論点7としましては、「規制緩和」でございますけれども、「ベンチャー企業のスタートアップ時や外資企業の対日進出時における人材確保に資する環境を整備することが必要ではないか。」ということで、具体的には、

・有料職業紹介事業の更なる規制緩和や「委託募集」(委託募集というのは、被傭者以外の第三者に、労働者の募集を行わせることでございます。)の規制緩和等により労働力の需給調整機能の強化

 を図っていく必要があるのではないかということでございます。

論点8としましては、「転職者に不利益な制度是正」でございますけれども、「労働移動を円滑化するためには、転職者に不利益となっている制度を労働移動に対して中立的なものとすることが必要ではないか。」ということで、具体的に、

・勤続年数に則した退職所得控除制度の見直し

・給与所得と比較し有利な退職所得課税の在り方の検討

・受給権を持ち運びできる確定拠出年金制度の導入検討

をていく必要があるということでございます。

論点9としましては、「中高年齢者対策」でございますけれども、「職種転換・再就職が相対的に厳しい中高年齢者の支援策を充実する必要があるのではないか。」ということで、具体的には、

・職業経験の豊富な中高年齢者の就業機会としての独立自営を支援する施策等の充実

(これは、企業のアウトソーシング化に対応した専門サービスの自営業というものの受皿としても成り立つのではないか。)

・(先ほどエンプロイアビリティと同様の趣旨から)失業時の能力開発支援の強化・余儀なくされる転職や進路変更に伴うリスクの軽減(セイフティネットの確立)

 を図っていく必要があるだろうということでございます。論点10としましては、「若年者対策」でございますけれども、「若年者が的確な職業選択が行うことができるよう、支援環境を充実することが必要ではないか。」ということで、

・インターンシップや職場訪問等の職業体験機会の充実・高校生の文書募集解禁日の繰り上げ

 というようなことを図っていく必要があるだろうということでございます。資料3につきましては説明は以上でございます。

 〔部会長〕ありがとうございました。それでは、先ほどのマクロ政策についてもご意見がまだある方もあると思いますので、それを含めて、雇用問題を中心に皆さんからご意見、ご質問を受けたいと思います。

〔H委員〕これが参考になるかどうかわかりませんが、僕の印象ですけれども、例えば、アメリカは第1期クリントン政権というのは、カンターを中心に、輸出を増大することによって雇用を確保する、「100万人、200万人……」という話がありましたけれども、そういう大きな政策を取っていたような気がするわけです。その間に、一方で、情報インフラをある程度整備し、そして、文民転換という基礎を作っていった。第2期クリントン政権になると、ある程度内需拡大してくると、今度はルービンさんが中心になって、金融を中心とした政策を打ってきている。そして、株高によって国民生活を向上させる。そういうところで見ると、雇用政策も含めて、非常に戦略的な感じがするわけです。そういうようなことが、僕は、これからは必要になってくるのではないかという感じがするのです。

さっき、需給ギャップの話がありましたけれども、今の雇用の問題を見ても、非自発的な失業が増えてきているということは、重厚長大産業を中心として、設備がものすごく過剰になっている。したがって、そこのところは高年齢者を中心に、非自発的な失業が増えてきている。一方で、これを見ると、サービスとか、保安とか、そういったところでは逆に雇用は増えているわけです。要するに、世紀末的な今の社会が抱えている課題に規制緩和をし、それに新しい雇用を見つけていくというようなことをしない限りは、雇用問題は解決していかないのではないかと。

アメリカの場合は、それを1期、2期ときちっと分けてやっていったことが、失業率が下がり、景気をよくしたということに関連しているのではないかという感じがするわけです。

もう一つは、経済政策の目的とは一体何なのかということ。これは、僕は、前回のこの会議で言ったのか、別の会合で言ったのかは忘れましたけれども、経済政策の目的というのは、今までは、成長あるいは景気をよくする。そうすれば、雇用も増えるし、財源も増えて福祉的な対策もできるし、あるいは環境問題が起こっても、企業はそういうことをやる余裕が出てくる。だから、成長と景気さえよくすれば経済政策の目的は達せられるのだ、という発想があったと思うのですけれども、こういう成熟経済の時期になってくると、僕は、必ずしもそうではないのではないかと。

最近、ヨーロッパで、第3の道とかいろいろなことを言っていますけれども、つまり、市場経済をもとにしながらも、雇用とか、福祉とか、環境という世紀末的な課題を、むしろ市場経済の中にどう組み込むかと、そういう発想で新しいシステム経済というものを考えていくということが大事なのではないかと。

例えば、景気が悪くなると、雇用拡大のために公共事業をやる。公共事業というのは、景気をよくするためもあるかもしれませんけれども、一方で、失業対策事業というか、そういう側面も非常に強いわけです。あるいは、環境というと、市場経済とは別に、何となくコストがかかるもので、景気が悪くなるとなかなかできないというふうに言うけれども、しかし、この間の京都会議などで、CO2は90年代レベルに下げるとか、まさに市場経済の中に組み込んでいく。そして、環境だってある程度やれば、そこから新しい産業が生まれてくる。福祉も、新しい産業も生まれてくる。そういう雇用とか、福祉とか、環境という21世紀の課題みたいなものと市場経済というものをどう融合させるかということが、これからの大きな目的になってくるのではないのか。単に経済政策の目標というのは、成長と景気だけを議論していたってダメなのではないか、そういう感じが1つするわけです。

それから、さっきのことに関連するのですけれども、政策の認知と実行ラグの問題で一言だけ言っておきたいと思うのです。僕は、政治と経済というのは本質的に違うものだという認識を持つべきではないか、と。

つまり、政治というのは合意形成を中心とするわけです。合意形成には時間がかかるのです。経済にはスピードが大事になっているのだけれども、それを政治に求めようとしても、基本的に無理ではないか。

政治というのは、合意形成というところで物事を決めていく本質というのがあるのではないか。経済というのは、市場原理とか、あるいはスピード感とか、情報化・グローバル化の中でやっていく。それを、経済政策と政治との実行がうまくいかないというところを何とかしようとするところに、経済の本質と政治の本質とを見極めながらこれから問題を考えていく必要があるのではないか。

そういう中で、さっきの認知と、政策と、実行ということを考えた場合は、それを何とか縮めるとすれば、認知ということを早くしない限りは、合意形成も遅れてしまうということになるのではないか。

そういう意味で言うと、僕は、ある程度の政治が政策を決めて、それを実行に移すまでには相当な時間がかかるのだというのは政治の本質なのだ。しかも、多党化、連立化してくれば、ますますそういうことになるのだ。そういうことを前提とした上で、経済政策というのはこれから考えていかなければいけない。そのためには、認知というものをもっと早く見つける方法というものをしていかないと、僕は、今後の経済政策というのは、常に、この認知ラグと実行ラグ、あるいは経済政策と実行との乖離というものは起きてしまうのではないかという感じがいたします。

それから、1点だけ。僕はちょっと遅れて来ましたので、これは、もしかしたら先にご説明があったのかもしれませんけれども、たしか経済白書か何かでは、消費税の問題がとらえられていたと思うのです。消費税の導入ということが、景気の腰折れに大きな影響があったというようなことがありましたけれども、この辺は一体どう考えておられるのかということです。

それから一方で、今、これとは別に商品券が今度出される。8,000億円といったら相当な額です。しかも、これは景気のためにやろうと言ってたのが、何となく福祉対策的なことになってきて、しかも、お年寄りと子供だということになれば、使う範囲は、多分、外食産業かそんなものだろうという感じがします。そこから設備投資が生まれ、景気がよくなってくるとはとても思えないわけです。そういったことに対して、経済官庁なんかは何もものを申さないのか、というようなことも含めて、結局、政治は政局に利用されてきているのではないかという感じもするのですけれども、その辺についても意見があったらお聞きしたいと思います。

〔I委員〕先ほどから議論に出ております点と関連しまして、雇用問題を考えるときにも長期と短期を分けて考えた方がいいのではないだろうかと思います。

先ほどから、93年から景気回復してきたというような議論がずっとあったわけでありますが、例えば、失業率を見ますと、この間もずっと悪化の一途をたどってきたということがあります。これはただ単にミスマッチが増えているだけではなくて、長期的にみても、日本の雇用吸収力は落ちてきているというようなことがあるのではないだろうか。

例えば、雇用の伸びを見ても、93年からの景気回復過程においてもそう大幅に伸びているわけではない。特に正社員についてみると、この伸びというのが非常に小さくなってきていまして、非正規社員といいますか、パート、嘱託、派遣、こういった人たちにおいて代替されてきている、置き替えられてきているのが実態だろうと思います。そうした場合に、パートの人たちの雇用条件が正社員と比べて改善しているというようなことがあるのであれば、自発的に、短時間で働きたいというような人たちも多くなってくるわけですので、必ずしも悲観すべきことではない、むしろ歓迎すべきことだろうというふうに思うわけでありますが、実態は、どうもそうなっていないのではないかと。かなり格差も拡大している傾向があるのではないだろうかと思うわけであります。

このところ、特に短期的にみたときに、ここに雇用政策として掲げられているもので、即効性が期待できるものというのは、恐らく労働市場の改革だけではないわけでありまして、どうしても公共投資であるとか、そういったところに頼らざるを得ないというような、財の需要、サービスの需要が拡大しなければ、何と言っても労働需要というのは増加してこないのだというような事実があるわけですから、即効性といったところについては、なかなか労働市場の問題だけでは議論することができないということが実態ではないだろうかと思います。

雇用不安と関連して私が懸念しておりますのは、雇用条件の悪化の問題であります。雇用不安がただ単に、自分が職を失ってしまうというようなことを懸念するばかりではなくて、給与面において大分変化が起こってきている。これは1つマクロで考えた場合に、例えば、毎月勤労統計の7月~9月の数字が対前年で名目で、給与が5%下がったというような数字が出ているわけですが、それは1つは、良好な雇用機会というのが減少している。それに比べて、どちらかというと賃金の安い人たちが増えてきているという、そういうコンポーネントな変化。それと同時に、ボーナスであるとか、そういったところで前の年を大きく正社員についても割り込んでくるというようなところがありまして、これをどういうふうに評価したらいいのだろうかと。

これはあくまでも均衡点に向かう過程であるわけですから、いたしかたのないことなのだというふうに受け止めるのか、いやそうではない、そういうものが消費面にも影響を及ぼして、消費の停滞といったところに影響が出ているのではないか、というような判断をするのかといったところが1つ大きな問題だと思いますが、雇用不安の中で雇用条件の悪化というものをどういうふうにとらえたらいいのかというのは、念頭に置いておかなければいけないということです。

もう一点だけ、前半部分でのマクロ政策の経済モデルのことについて申し上げたいのです。確かに経済モデルには相当な限界があるということは十分承知しているわけであります。それで、心理的な変化であるとか、金融問題という新しい問題が起こってきたときに、なかなか経済モデルでは対応することができない、これも事実だろうと思うわけです。しかし、問題なのは、そういった従来のものによってどこまで現実の変化というのを説明できるのだろうか。逆に、新しいこういう心理的な変化というものが実態の経済にどれだけ影響を及ぼしているのかというような、何かメルクマールを持ってこなければいけない。そのメルクマールを持つときには、モデルというものが頼りになるわけでありまして、これまで説明していたものがなぜ説明できなくなったのだろうか。そして、そのモデルではどこの部分を改善していくべきなのか、というようなことができて初めて、予測力というのは高まってくるわけであります。そうしますと、これまで行った、ある意味での予測の過ちというものを、将来の予測の改善につなげるためには、どうしても陽表的な形でモデルを構築し、そして、それの説明力というものがどれだけあるのかというのは検証していかなければいけないことだと思うわけでありまして、はなから、経済予測のモデルには予測力がないのだということによってこれを放棄してしまうというのは、私は、この部会にとってプラスにはならないというふうに判断しています。

〔D委員〕論点2と論点8というのはかなり裏腹の関係にあって、あと論点5と論点9・10も裏腹の関係にあると私は思うのです。

私が何年か前に書いた本で、2005年に失業率は7%になると書いて、大分いろいろな人に怒られたのだけれども、実態はそっちの方に移ってきているわけです。

特に論点8みたいな問題は、ちょっと考えただけでも、労働省、大蔵省、厚生省がこれに深く係わるわけです。では、その3省間でこういう問題について一緒に何か解決しようという会議体というのがあるのかないのか、僕は知らないけれども、多分ないのではないか。あっても、形式的ではないかと思うのですが、そこはちょっと教えてもらいたいのですけれども。

これは相当深刻だ、と。論点8で言えば、【1】は、企業が変えればいいことかもしれないけれども、【2】は、どう考えても大蔵省が動かなければだめだし、【3】は、労働省と厚生省が相当動いてくれないと、大蔵省も絡むでしょうけれども、これはどうにもならないわけです。

私が知っている例でもたくさんあるのですけれども、今いる会社にあまりオポチュニティがない。本当は辞めたいわけです。辞めると、退職金の問題なんかで具合が悪いから、しょうがないからいよう。一方では、ある種の才能―営業でも、経理でも、何でもいいのですが―を非常に求めている。これは新しい業種であり、新興企業が必要なのですけれども、まさか退職金や年金まで全部補填して、よっぽど魅力的な人ならそういうことも可能でしょうけれども、一般論で言えばそういう人は少ないわけで、結局、労働の移動がスムースに起きていない。これは日本の産業構造が変わって、これからいろいろなことが変わるときに、私は、みんなも思っている以上に大変由々しき問題だという気がするので、今、実際にそういうようなことで各省間でどんなことをやっているのかを教えてほしいのと、やっていないなら、ぜひやっていただきたい。

それから、論点5のエンプロイアビリティというのは、実は大変な問題で、これもよく言われていることですが、日本では基本的には就社というのをします。それで、会社のプロにはなるわけです。例えば、経済企画庁は多少専門家かもしれないけれども、ほかの役所みれば、省に入るのであって、では何かお前を使えるかというと、局長かなにかをやった後はあまり使い道がないわけです。だから、天下りという話になって、それがまた問題になる、こういうことです。なぜかというと、専門性がないわけです。

たまたま、次元は非常に低いですけれども、山田洋二さんが「学校Ⅲ」という映画を作られて、この映画は僕は、お忙しいでしょうけれども、見に行かれるといいんじゃないかと思うのです。職業訓練校のことを扱ったストーリーラインですけれども……。

中高年の労働対策というものも、なぜ中高年がこういうことになってしまうかというと、専門性がないわけです。論点10の若年者も同じことなのです。若年者も定義によって専門性がないわけです。

今、労働市場は、専門性のない人はいらないよと。東大を出ているとか、局長をやったとか、そんなのは大して意味がないではないか。早い話が、会社にどういう貢献をしてくれるんだということになるわけです。

そういう観点からいくと、相当の数の省庁が(あまり多くなってしまうと、また会議だけの会議になってしまって、実が伴わないのでしょうけれども、)相当に真剣に詰めていかないと、国の将来を誤るなと。

いずれにしても、失業者が多くなって国家財政がうまくいくなんていう話はあり得ないわけですから、とにかくみんな働いてもらって、所得税を払ってもらうのが一番いいわけです。そういう意味でぜひ……。

いいこと書いてあると思うのですけれども、こうバラバラに書かれてしまうと「みんな問題だ」みたいな話で、ごもっともみたいなことで終わってしまうので、もう一歩先へぜひ突き進めてもらいたいと思います。

〔J委員〕私も一言。皆さんと重複する点がありますが、企業に携わっている者としては、部会長も、私も、G委員もそうですけれども、今の企業の実態から言いますと、正社員を十分採用していくという体制ではないと思うのです。恐らくこれからも、人はそんなに採用しない。むしろパートの人を雇うとか、そういうことのウェイトが高くなると思います。これは、事業の形態が変わってきている。つまり、成長産業から成熟に入ってきているという事業形態の変化もあるわけです。それから、企業の形態、ゴーイングコンサーンを我々は考えて経営していきますけれども、大事業部制の中の事業形態から、いくつかの軍団の会社をつくって、それにできるだけ専門性をつくったものを与えて、そしてディファクトスタンダードを確立して、企業を小さく・たくさんつくって組織的に経営していこうという形態に変わってきていると思うのです。

そういうような成熟した社会と新しい事業の創出というのが行われている中での雇用形態というのを考えていかなければいけない。そうすると、D委員もおっしゃっているように、論点8とか論点2とかいうのは一体となっていろいろ考えていかなければいけないと、私は思うのです。

例えば、アメリカでいきますと、80年代に年金企業会計が変わったわけです。それに伴って401Kが出てきた。日本も来年度は財政再計算で厚生年金が5年に一ぺん切り替えようとされているときですから、今のそういうときに、このように新しい事業あるいは雇用形態というものを日本の企業が模索している中において―つまり今、日本企業はリストラがなかなかできないわけです、世界一リストラができない日本の中において、新しい事業形態というのを我々は模索しているのです―、論点8のところは十分にこの経済審議会の中でうたっていただきたい。

つまり、401Kなどというのは、日本は2001年から年金企業会計が変わるわけです。そうすると、企業の負担はものすごく膨大になるわけです。恐らく、SEC基準でやっている会社は23社ぐらいありますけれども、これは予定利率をどう計算するか、経済指数がどうなるかによって変わってきますけれども、1社当たりの年金の過去勤務債務があるとも言われている。私は、少なくとも1,000ぐらいあると思います。そうすると、今の企業の経営状態から言えば、債務超過になるのがたくさんあります。ですから、そういうような中での企業の負担というものを考えますと、例えば401Kのように確定拠出型のものを入れていかないと企業はやっていけない。

そういう実態も踏まえていただいて、このあたりの論点というのは極めてよく整理されておりますが、先ほどもおっしゃったように、多少バラバラになっているので、統合していただくと大変ありがたいと思います。

D委員の意見とよく似た意見ですけれども、以上です。

〔K委員〕今の雇用の問題につきまして思うところは、最初のマクロの方にもありますように、将来に対する不安感ということと大きく関係する問題だろうと思います。もちろん、短期的な問題もあるでしょうけれども、長期的に考えていく雇用政策という点で、不安感というもの。

これは、結局何が必要かというのは、払拭してやる必要があるのでしょうけれども、1つは、リタイアに近い方たちは、今、J委員がおっしゃったような401Kもあると思いますけれども、現役で働いている人たちの中にそういう不安感があるわけですから、それを払拭してやるというか、要するに、失業の発生する可能性は確実にあるわけですけれども、それが発生しても、次の職にすぐに行けるような形のヒューマンキャピタルの蓄積というのを常にできるように、今現在の自分が就いている職の中での能力以外の能力を付けていく、そういうシステムを作っておいてやる。会社で雇用されている側からするとかなり問題かもしれませんけれども、要するに、時間外において専門学校へ行かせるとか、コンピュータの手習いに行くとか、そういうようなことを支援してやるようなシステムがあれば、今現在の雇用に不安があっても、次にまたどこかに行けるのではないかという安心感が持てるようになります。

そういう意味で、論点9「中高年者対策」、これは中高年というより若年でも言えると思いますけれども、「進路変更に伴うリスクの軽減(セイフティネットの確立)」と単に書いてあるのですけれども、こういう部分をもう少し現実味のあるセイフティネットというもの、失業してからの雇用対策事業ではなくて、就業中においてもそういうものができるようなのが必要ではないか、というのを追加的に申し上げておきたいのが第1点です。

最初のマクロの方では発言しなかったのですけれども、これも成熟した社会の中での不安感というものが蔓延しているために、いろいろなものが効かなくなってきているという認識を、そろそろ持った方がいいのではないかと私自身は思っております。つまり,経済構造が全く新たなものに変わってきている。これはむしろ80年代の中ごろから既に変わってきているのが極端に出ているのが今現在ではないかと思いまして、今日の資料の中でモデルを使って、80年代と90年代の乗数を比較しているというのは、これははっきり言って、ごく最近の成熟社会の中では変わっていないということであって、成長経済の中での乗数と比べれば、かなり変化しているのではないかと。なぜ、80年代と90年代で比較されているのかがわからない、というのもあります。

それから、成長経済から抜けきれていないような偏微分でみた乗数の理論だけで比較をしているということ自体が少し問題ではないか。これは、B委員が最初のころにおっしゃったことと関係していると思います。そういう点で、今日の資料の中のお話というのは、問題ではないかと思います。

あと、不安感を払拭するというので申し上げておきたいのは、供給サイドをきちんと締めない限りは不安感は除かれないのではないか。つまり、明確に政府が構造改革という形で、意志をもって小さくなる。単に歳出を削減するというような構造改革のお話でやったらば、また同じことが起こると思いますけれども、きっちりとした理念の下で歳出を削減していく、まずは構造改革という形で、何を政府が目的として小さくなるかと。そして、小さくなったならば、そのお金をちゃんと民間に回しますよと。それで、民間にお金が入って初めて需要が発生する可能性が出てくるわけです。今のように、むやみやたらに減税をしても、赤字が増えるだけで、それで安心して需要を増やせるかと言えば、恐らく、誰も増やせないわけですから、将来の不安感を払拭する政策としては、現在やられているようなのも、ほとんど無意味に近いのではないかと、私自身は思っておりまして、今日の資料の中での構造改革のお話というのも、少し、前半の不安感というところとも結び付けて、将来、次のステップの構造改革の話、ないしは経済計画の中に組み込まれたらどうかということでございます。

以上でございます。

〔E委員〕何人かの委員の発言のように、この問題は非常に体系的に捉える必要があると思います。日本の場合は今までは、労働市場が非常に内部化された形だったのですけれども、これから市場経済に移行するというのが1つの大きな前提になっているわけですから、市場型の労働市場になってくると思うのですが、今日の話を聞いていてちょっと気になるのは、労働市場のマーケットの観点が欠けているような気がするのです。例えば「適材適所の人材配置」というのがキーワードになっているのですが、私は、日本のシステムがより市場型のシステムに移行する中では、今までの非常に内部化された労働市場をどういうふうにもっと開放的な労働市場にするのかと。そこでは、いろいろな労働市場整備の問題が出てくるのですけれども、こちらの観点からとらえた方がいいのではないかという気がいたします。

もう一つ、今日の資料を見て、例えば17ページの「雇用政策概念図」にも出ているのですが、ちょっと市場の観点が欠けている。もう一つは、経営者・雇用主不在の議論になっているかなという感じを受けます。究極的な雇用主は株主です。ですから、労働市場の改革と金融システムの改革が、車の両輪だというふうに理解しているのですけれども、この観点からの分析も必要ではないかという気がします。

具体的な話を1つだけします。労働流動化というのが大きな課題ですけれども、その流動化のやり方としては2つあるのです。1つは、労働者が企業から離れて、離職して、市場を通して再就職を探すというパターンです。これは、恐らく、皆様の頭の中にあると思います。もう一つは、例えばM&A市場として、企業が不採算部門をほかの企業に売却することによって、この部門の所有と経営形態が変わる。これは労働側から見たら、もしかすると同じ職場に就職するということになるのですけれども、資本市場の面から見たら、これは大変な流動化になる。ですから、流動化のやり方は根本的に2つあるという認識を持っていただきたいと思っているのです。

その中で、もう一つ欠けているのは、企業システムの話です。例えば労働組合、これからどういうふうにこの議論に絡んでくるのか。今まで日本の場合は、企業内組合でしたけれども、流動化とか労働市場の整備ということになってきますと、経営者だけではなくて、企業内組合の役割が大きいのではないかという気がして、あまり出てこないというのが不思議な感じです。

〔L委員〕労働問題のことで言いますと、論点がたくさん出ているように、非常に大きな論文を書くというような構えのようで、今の経済に応じて労働対策で今やるべきことはどうだと、短期と長期というお話がありましたが、それに絞ってやらないと……。労働問題を言うのなら、例えば外人労働者をどうするかとか、日本からの外国への転出をどうするとか、いろいろな問題がもっとあると言えばあるのです。

だから、現在の体制を、あるいはさっきの不安感是正のための政策として「今何をやるか」というように、この論点をもっと絞って。つまり、頭にそれを置いておいて労働問題を考えないと、さっきのご説明のように、矛盾するのではないか。矛盾もいいのだけれども、「今何をやるか」で絞ってしまわないと、欠けているものはもっと出てくるということがありそうで、さっきのマクロのときにもちょっとそんな気がしたのですが、今やるのは何かということに絞ってやられた方が、労働問題などは特にそうではないかという気がいたします。

そこまでです。

〔部会長〕この後、スケルトンの案がありますが、実際にはマクロの問題も、雇用も含めて、いろいろまだご意見があって、まだ何となくすっきりしないところでスケルトンに行くのもどうかなという気もしますが、事務局の方でスケルトン案のポイントを説明していただいて、皆さんのご意見は後ほどいただくということにしたいと思うのです。

雇用の問題、L委員のご意見に絡みますし、さっきH委員が、アメリカの場合にクリントンの第1期、第2期にかなり戦略的に……というお話もありましたけれども、実際にはマクロのところに行くと思うのですけれども、1つは、何人かの方から「成熟経済だから、その前とは違うのではないか」というご質問がありました。そのときに、日本は確かに成熟経済なのでしょうが、アメリカは成熟経済でないのかどうか。アメリカは、かつて、少なくとも今の日本よりもひどい、超双子の赤字でもあったし、どうにもならないのではないかと言われたときに、どうして日本ぐらいの成長をするのかと。別に成長はノーというわけではなくて、やりようによっては、成熟経済だって成長―上限がありますが―がありうるのではないかと。

アメリカ自身は、実際にはクリントンさん自身の優れた点もありますが、クリントン政権というのはかなりいいところで舵取りしているという位置づけにあるのではないかと思うし、カーターさんが一番貧乏くじを引いているけれども、リストラの種というのはカーター政権にまかれて、レーガン政権で……、とそれなりに時間をかけてやっている。

特に、ここは僕はきちんとしなければいけないと思うのですが、雇用のところで、まず認識の第1点としては、失業率が上がっているという認識があるわけですが、ここはきちんと整理をして、まさに成熟経済になった日本の現状とか将来を見通したときに、2%台とか3%台という失業率を求めることが現実的であるのかどうかというところはきちんと整理しておく必要があると思うのです。もう一つは、本当に日本の3%、4%というのは国際的に計算したら何%かということもきちんとしなければいけませんが、実際には、かつての2%台の失業率というのは国際的には非常に低い生産性をベースにして、はっきり言えば、たくさんの人がシェアしているから―それがいいとか悪いとかでなくて、これはいい面もあるわけですが―、ある面では国際的な生産性の幅の最低レベルにまで行かないと競争力が持てない状況にだんだん来ている。それを考えたときに、マニュファクチュアリングはかなりそういうところに来ているわけですが、マニュファクチュアリングといえども、完全に国際なレベルには来ていない。サービスに至ってはまさにそうで、銀行関係を見ていても、いろいろな形での連携が行われていて、ホワイトカラーで失業する人がかなり出てくることは、もう間違いないのではないか。

これも皆さんご記憶だと思いますが、かつて、宮崎勇さんが経済企画庁長官でいらしたころに、1つのモデルとしてニュージーランド経済というのを日本中で研究した。その後、失敗したように見えますけれども、基本的には、大改革をやって失業率は4%から8%、10%ぐらいに上がって、それでまた4%に下がって、その間の上がったところというのは、大変な痛みだったわけです。ですから、日本の場合にも10%、という意味ではありませんが、ある程度リストラをやる以上は、そういう現象というのは覚悟しなければいけない。

ただ、それの痛みをミニマイズするためにいろいろなことをやらなければいけないので、論点がたくさんあるわけですけれども。

そういうことを考えていくと、本当にノーマルな失業率というのはどの辺なのかということを、もう一度きちんと見当をつけなければいけないということと、私の感じとしては、パーセンテージから言えば、今の4%台というのはノーマルに近いのではないかと、さっき7%というお話もあったけれども。しかし、そこへ落ちつくのに、少しもっと高いところに行くかもしれない。それについて、まさにL委員がおっしゃったように、当面、ここ2、3年でかなり重点的にやらなければいけないことと、それから動きだしても、ここに書いてある10の項目というのはかなりコンスタントにアピールしていかないと。今だからやらなければいけないというのではなくて、コンスタントにやっていかなければいけない論点がこれに書いてあると思うのです。

私もちょっと忘れてしまったのですが、人材活性化に絡む小委員会・部会がありましたときも、大体この辺の話は、エンプロイアビリティと、それからいろいろなもののポータビリティの話というのは非常に重要な項目として出てきたと思います。ですから、今まで出てきたものを、あれも労働市場そのものの流動性を高めようということが目的で出てきたのですけれども、ある意味で平時といえどもそういうものをきちんとやっていかなければいけないのですが、今、移行するときに、この論点の10なら10のうちのどの辺を重点にやっていかなければいけないかということと、それをやった上でも、落ち着く先というのはどの辺なのかということについては、もうちょっときちんとしておく必要があるのではないかという気もいたします。

時間が押せ押せで誠に申しわけないのですが、さっとスケルトン案についてご説明をいただいて、それについてはご意見を伺えないかもしれません―時間が余ればご意見をいただきます。事務局からスケルトン案を説明していただきたいと思います。

〔事務局〕資料4「平成10年度フォローアップ報告(スケルトン案)」でございます。これはスケルトンということでたたき台としてお示しをしておりまして、大変粗粗に書かれております。

認識としましては、今の深刻な経済状況を踏まえますと、現行計画が十分機能していないということは明らかで、前回やりましたように、その乖離の要因、なぜこのように乖離したかということを、目次の2のところで分析をして、幅広い観点から反省を含め検討を行う、と。このような反省の下に、4のところですが、将来ビジョンの策定は必要ではないかということを指摘しようとしております。

今いろいろご意見をいただきまして、本日のご議論は、これで言いますと3の1)、2)に入る予定になっております。本日のご意見を少し整理しなければいけないわけですが、一応、1)が足元からから短期、2)が中長期、という整理になります。

それから、具体的な政策の発動とか、政策の運営などにつきましては、例えば今、経済対策を取りまとめ中ですし、あるいは経済戦略会議などでもいろいろご議論があるところでございまして、そのような動きも見てということでございますが、今このスケルトン案の時点では、具体的なものは踏み込んで書いてはございません。必要がありましたら、また書き込んでいかなければいけないと思っております。

前置きはそれぐらいで、中を見ていただければと思います。1ページをめくっていただきますと、1が「内外経済情勢の展開」ということで、「国際経済情勢」、「我が国経済の現状」、「現行経済計画との乖離状況」というのがございます。

2の「乖離の要因」を、「諸要因の整理」ということで分析しております。いろいろ書いてございますが、要するに、フローでは経済の好循環の兆しがあったのだけれども、ストック面では、不良債権問題をはじめ、なお未解決であって、大きな問題を抱えていたということを言っております。

その要因を4つに分けて整理ということで、「【1】需要の下振れ」から始まっておりますが、【1】の上のところ、1)のところの下から6行目からですが、「また、その背後には、我が国をとりまく大きな潮流変化に対して、我が国経済社会の変革が十分に進んでいなかったこともある。」ということで、いろいろ今ご指摘をいただきました潮流変化に対する認識というものについて。これは【1】以下の要因の分析というのは、需要の下振れとか、供給サイドの問題とか、不良債権等負の遺産の処理の遅れとか、将来の不透明感という、展望部会で4つの問題点を出しましたが、それに従って書いてございますが、その前に、そういう潮流変化についての認識ということが1つあるのかなと思っておりまして、この辺も少しご議論いただき、また少し書き込んでみたいと思っている点でございます。

3ページのところでは、(国際経済環境の変化)ということで、前回少しご議論いただきましたので書いてございます。これは骨でございますので、もう少し書き込みたいと思っております。

【2】では、「不良債権問題等負の遺産の処理の遅れ」ということで、金融機関の不良債権問題、バランスシート調整の遅れ。

【3】では、「供給面での対応の遅れ」ということでございます。ここは構造改革の進捗がどうかという議論でございまして、4ページにかけて書いてございますが、昨年のフローでは、「高コスト構造是正・活性化のための行動計画」では10分野を挙げておりますが、それぞれの行動計画としてのフォローアップを細かくしております。今年も、別紙の形で「高コスト構造是正・活性化のための行動計画」の10分野についての整理をしようと思って、今作業を別途しております。ここでは2、3行しか書いてございませんが、一定の進展が見られる分野もありますが、なお不十分なところもあるということを整理してみたいと思っております。

それから、2)の「今後に向けての留意点」とございますが、最初に、経済のストック面にも留意した経済運営が必要だということで、そのあたりは、「不良債権問題に関する的確な状況認識があったならば、異なった政策を選択できた可能性がある。」とか、「不良債権処理を徐々に進める中で、財政再建や金融ビッグバンを進めるとうい政策は整合性を欠くのではないか」というようなことを、少し書いてみました。

それから、成熟経済下での下振れリスクというものの認識が重要であるということでございます。

5ページの方では、構造改革の効果について、今のような状況では効果がなかなか顕在化しにくいということで、「計画の想定における構造改革の効果は過大」ではなかったかと。これは反論の余地があると思いますが、そのようなことも少し出してございます。

3は、先ほど申し上げました「今後の経済運営の方向性」ということで、1)で、足元から成長軌道を回復するため、2)で、中長期ということで、「マクロ経済政策」と書いてございますが、まだここは具体的に何も書いてない状態でございまして、本日の先ほどのご議論を踏まえ、少し書き込んでみたいと思っております。

6ページの方で、【3】の雇用政策、先ほど論点がたくさんあって、それをもう少し整理して……ということでございましたが、ここでは(ア)(イ)の2つに整理しておりますが、さらに不安感の払拭とか、エンプロイアビリティとか、そういうあたりを強化して書きたいと思っております。

4の「将来ビジョンの策定」というところで、1)で「将来ビジョンの策定の必要性」というのを説いておりますが、ここでは具体的に、将来ビジョンにどういうものが求められるかということを少し書き込もうとして、6ページの(ア)から7ページの(オ)まで書いてございますが、さっきから読み直しておりましても、どうも頭の整理がうまくできていないなという気もしております。1つは、政策体系の整合性のとれたものとしなければいけないという話とか、それから、この中でリスクの下振れとか、リスク要因を十分に念頭に置いて議論をして、それに応じた政策を組み立てなければいけないのだということを少し言いたいものですから、そんなことを少し書くのかなと思っております。あるいは、(エ)にございますような、政策のプライオリティや時間的順序、そういった総合的に政策体系を整合性をもって組み立てるということが必要ではないかと思って、少し「将来ビジョンの策定」というところに書いてございます。

なお、本日の資料といたしまして、資料4の下に参考資料1と参考資料2が付いてございます。これは第1回目に、ここでの検討テーマとして挙げておりまして、まだ積み残しているものでございます。参考資料1の方は「将来の我が国経済社会の基本理念」ということで、後でざっとご覧いただければと思いますが、わりあい大きな話でございますけれども、今後の基本理念をどのように考え、あるいは、リスク要因をどのようにとらえるか、あるいは発想をどう転換するかというようなことで、少し資料を作ってみたものでございます。参考資料2は、「経済計画の機能と役割」ということで、1ページに簡単な論点メモがございます。

こういったものを一応用意させていただきましたが、時間の関係で、次回以降お願いしたいと思っておりまして、本日は、資料だけをお示ししております。

以上でございます。

〔部会長〕ありがとうございました。

さっきH委員から、もともと経済計画の目的は何かというご質問があったわけですが、過去にさかのぼって「経済計画の機能と役割」、あるいは「将来の我が国経済社会の基本理念」というのも、そういう点では考え方を整理する点では参考になるのではないかという気もします。

少し時間がありますので、皆さんのご質問を受けたいと思いますが、その前に、この後の予定だけご案内していただけますか。

〔事務局〕次回は、12月11日の2時からを予定しております。

〔部会長〕少し時間がありますので、どうぞ。

〔A委員〕今、フォローアップ報告案のスケルトン案のご説明があったのですが、ぜひ要望したいことは、作文より分析ということであります。作文は、もう嫌というほどあるわけですから……。経済企画庁の比較優位は、作文より分析にあるわけですから、繰り返しお願いしたいと思います。

しかも、その分析というのは、銀行の調査月報に載っているようなものではなくて、企画庁独自のものである。企画庁が比較優位を持っているものとして計量モデルがあるわけでして、先ほどI委員が明確におっしゃったように、計量モデルには限界があるけれども、だからといって使わないのでは意味がないわけです。それから、計量モデルを使うというのは、単に世界モデルの乗数を比較するというような雑なものではなくて、きちっと先ほど過去の景気循環との比較で出されたようなグラフを、まさにモデルを使って書くということで、それはできる技術はあるはずです。何のために企画庁の若い優秀な人が残業してそういうモデルを作っているのか。それを使わなければ、全くそういう労働が無駄になってしまうのではないかということであります。

それから、雇用の点について言えば、先ほどもL委員ほかからいろいろありましたけれども、もっと論点を絞る必要がある。具体的な絞り方としては、市場介入的なものか、それとも市場を活用するものかということで、補助金をばらまくような労働省の政策と規制緩和を通じた新しい雇用の活用、そこが大きく争点だと思います。

それから、I委員がさっきおっしゃったように、正規雇用にどこまでこだわるのかどうか。規制緩和は即効性がないと言われますけれども、その例外がこの労働市場の規制緩和であって、私は、今、企業というものはとても長期的な経済成長というものがはっきりしない中で、正規雇用者を雇う元気は全然ないわけですけれども、非正規雇用であれば雇ってもいいと思っている企業は多いのではないか。そうすると、なぜかこの雇用の論点には全く触れられていませんが、今最大の争点は、派遣事業の自由化ということであって、これをぜひメインに持ってきていただきたい。つまり、派遣労働者をどう考えるかというのが、まさに今の労働市場の最大の争点でありますので、これを無視したら全然雇用政策の視点はぼけてしまうのではないかと思います。

以上でございます。

〔M委員〕今、A委員がおっしゃられた分析の問題とも関係しますし、それからスケルトンの中に繰り返し出てきます乖離の問題とか、強調された潮流変化に対応する認識とかいうのと関連するのですが、まず分析のやり方、あるいはツールについて、従来の企画庁のやっていたものでいいのかどうかということを点検してほしいと思うのです。

最初に説明を受けましたマクロのところの、資料2の8ページ、これは全く意味がない、こんな分析のツールでやっているのでは不安は、雇用の先行き不安ではなくて、経済企画庁の分析能力に対する不安ということを感ずるぐらいです。

というのは、国債も、無担保コールも、今の経済の実態を反映していないはずです。今、何を我々は議論しているかというと、昨年の11月の金融市場パニック以降、金融の仲介機能が麻痺しているということが議論になっています。ですから、社債とか、貸出金利とか、CPとか、そういうものの金利が重要であるわけです。無担保コールというのは、要するに銀行間のレートです。日銀がそれを操作しているのですから、そこでの操作金利が貸出金利に行かない、あるいは積極的な貸出しにならないということである。

それから、マネーサプライとか回転率を流通のところで言っていますが、マネーサプライも今は、要するに預金通貨のサプライというのは意味がないのです。預金通貨は今どんどん増えています。なぜ増えているかというと、株式がだめだから、その資金をとりあえず預金にする。あるいは、生保・保険を解約して預金にする。問題なのは、預金が増えて、従来は当然それとセットになって貸出が増えたのですが、そこが切り離されてしまった。預金が増えても、貸出残高がマイナス。年率3%で10兆円以上の信用縮小になっている。したがって、貸出の面から分析しなければ、昨年11月、つまり過去1年間の経済は全く分析できない。

国債金利がなぜ下がってきたかというのは、銀行が貸さないで、政府の貸金庫みたいな国債を買っているからどんどん下がってきた。異常な金です。

ですから、こういうたぐいの指標を堂々と載せてあるというのは、過去1年間の我々が真剣に議論し始めている金融デフレの実態についての認識が、全くこのツールとして反映されていないというふうに思いますので、そういうことも含めて厳しく自己点検していただきたいと思います。

まさに国債と社債との金利のギャップは大変な問題になっています。CPも、先ほどの話で直接金融の話がありましたが、今直接金融が限界になって縮み始めた。CPも売れません。大手の企業が出しているCPも、市場で売れないために、日銀が金融機関をトンネルして買っているのです。したがって、日銀が今持っているCPが10兆円になりまして、異常な事態になっています。それが全然こういう金融のメカニズムの分析ツールに入っていないわけです。ぜひとも、最近の市場を見てほしい。

だから、基本的には、企画庁は、市場、市場と議論をしますが、実際の市場を見ていないというのが、私の最近の印象です。

〔C委員〕今のM委員の意見に全く賛成です。私、さっき、マーケットということで、株式市場と金融市場ということを申し上げましたけれども、特にジャパンプレミアムの問題などは大変な問題であります。この間の経済白書には、金融システムの問題はわりあい真正面から取り組んだという評価を私はしておりますけれども、これからの問題についても、これが最大の問題ではないかと。特に国際的にもそう思いますので、ぜひお願いします。

〔M委員〕今のジャパンプレミアムが出ているだけでなくて、今、トップバンク1行ぐらいが、ようやくドルを海外で調達できるのです。それも今は、昨日会ったそのトップバンクの幹部に聞きますと、ブレミアムを0.8付けなくては……。それでとっても、採算は合わないです。

それから、ある中堅の商社が格付けがかなり上位の銀行よりも高いので、少しドルが余計取れる。それを今、銀行に融通しているという状況です。金融というのは、本当に死にかかっていますので、そこをちゃんと押さえないで、リアルエコノミーの分析は恐らく無理だと思います。

〔部会長〕大変に貴重なご意見をありがとうございました。特に分析をきちんと、なおかつ、経企庁の比較優位を活用して実態をきちんと反映するようなツールを使ってというご意見をいただきました。実際に今日いろいろ皆さんからご意見をいただいた問題については、最終的に、スケルトンの書き方にもよりますが、今のような分析をもとにして、これは将来の政策に反映をすることが目的ですけれども、実際にはいくつかのところで「本当はこうやるべきであった」とか、あるいは「結論は出ないけれども、こういう可能性もあったのではないか」ということをかなりはっきり書かなければいけないところも出てくるのではないか。最終的にそうすることは難しいかもしれないけれども、今後の政策そのものの参考にするためには、あるいはそのくらいの勇気が少し必要かなという感じも持っております。

それでは、次回は12月11日午後2時から4時までということでございますので、よろしくお願いいたします。

〔J委員〕次回は、このスケルトンについて議論するということですか。

〔部会長〕基本的にはそうです。今日の2つのマクロの問題等について更にご意見がございましたら、ひとつ事務局の方にお寄せいただきたいと思います。

長時間、どうもありがとうございました。これで閉会いたします。

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