第3回経済審議会・企画部会議事概要

1 日 時

平成10年11月10日(火) 10:00~12:00

2 場所

共用特別第1会議室(404号室)(第4合同庁舎4階)

3 出席者

(部 会) 小林陽太郎部会長

跡田直澄、伊藤進一郎、小島明、佐々波楊子、ポール・シェアード、嶌信彦、長岡實、那須翔、樋口美雄、堀紘一、松井孝典、水口弘一、村田良平、八代尚宏、吉井毅、の各委員

(事務局) 塩谷事務次官、中名生総合計画局長、高橋審議官、牛嶋審議官、大西計画課長、涌野計画官、塚原計画官、青木計画官、佐々木計画官、林部計画官、荒井計画官、渡辺電源開発官、岩瀬計画企画官

4 議題

  1. (1)マクロ政策、雇用政策等
  2. (2)経済計画フォローアップ報告スケルトン(案)について

5 審議内容

(1)マクロ政策、雇用政策等

事務局より、資料2「マクロ政策」について説明、その後討議。委員からの主な意見は以下の通り。

〇事後的評価は重要だが、この資料の分析には独自性がない。公共投資の落ち込みが景気の悪化にどの程度影響を与えたか等をヒストリカルシミュレーションする等、モデルを使って分析するべき。設備投資の伸びが明らかに低いのは、中長期的な成長率の屈折を考えていなかったことによると思うが、これもモデルを使って分析すべき。

〇政府がバラ色の展望を示せば、国民も明るくなるとはいえない。正しく情報公開をすることが重要。例えば年金制度改革にしても、改革によって制度が維持できることを示すことが重要。

〇規制緩和の効果がなかったというのは間違いである。効果が出ていないのは規制緩和が実体上進んでいないからである。効果がないと言うと規制緩和に対する諦めムードが出てしまい、不適切。

〇92年以降87兆円の事業支出をしても、十分な効果がないのは心理的問題が大きい。

〇景気が回復しないのは需給ギャップが大きく、設備投資が出ないことによる。過剰設備をどう廃棄するかといったリストラをどう進めるかに当面は大きなウエイトが置かれている。

〇破局のシナリオを示したのはいい試みだった。楽観的シナリオは戒めるべき。

〇日本経済は、成長経済から成熟経済に入っている。従来と今回の景気循環ではトレンドが全く違う。かつては供給過剰にあっても、需要が供給を追いかけてきたが、成熟経済の今日ではそうはならない。

〇他の景気循環と比較して、今回は金融システムの問題で異なる。計画では、漸進的な情報開示を行い、公的資金を導入せずに、銀行に5年間の猶予を与え、金融政策と拡張的財政政策によって支えるはずだった。その方針を成功させるためには拡張的財政政策を続けるべきであった。97年度に財政を引き締めた際には、同時に、公的資金を入れる等の政策をとる必要があった。

〇財政再建について、政府は危機的状況にあると宣伝したが、マクロ的に見れば、日本は債権大国であり、将来的に危機的な状況ではなかったはず。民間部門の蓄積を公共部門にどう持っていくのか、公共部門の赤字をどう減らすのかを議論すべきであったし、将来的にはネットで黒字であることを言うべきであった。

〇日本国内だけでなく、供給・需要両面での東アジアとの関係をも見ることが必要。その際、単に輸出入のみならず、投資面も踏まえるべき。

〇政治と経済は本質的に違うものであり、政治は合意形成が必要でそもそも時間がかかるのに対して、経済にはスピードが求められる。ラグを縮めるには、認知を早くするしかない。

〇経済モデル分析は、従来のもので変化をどれだけ説明できるか、新しい変化がどの程度影響しているのかのメルクマールとして必要で、予測力の改善のためにも検証が必要。

事務局より、資料3「雇用政策」について説明、その後討議。委員からの主な意見は以

下の通り。

〇米国は、第一期クリントン政権で輸出により雇用確保を図る一方で、情報インフラ等の整備や軍民転換を行った。第二期同政権で金融政策や株高で国民生活を向上させた。こうした戦略的な政策が必要。日本は、規制緩和などで産業構造の転換を図り、雇用を創出していくべき。

〇今までは経済成長すれば、雇用、福祉、環境等の問題も解決されたが、成熟経済では市場経済に、雇用、環境、福祉等をどう組み込んでいくかが大事。環境対策はコストがかかるもので景気が悪くなるとできないものであったが、市場経済に組み込めば、新しい産業にもなる。福祉も同様。

〇雇用は長期と短期を分けて考えるべき。93年以降失業率は悪化の一途をたどっていることは、雇用吸収力が落ちていることを示している。正社員がパートや派遣で置き換えられており、雇用条件の格差も拡大している。景気への即効性については、労働市場の問題だけでは解決できない。

〇いくつかの省が関係し、それらが動かないとどうにもならないものがある。退職金や年金の問題がネックとなって労働者も企業も動かない。また、今の日本では、就社によって会社のプロにはなるが、専門性がない。中高年、若年層の失業問題も専門性の欠如が原因。これらの問題に関しては、相当数の省庁が真剣に考えるべき。

〇成長経済から成熟経済となるにしたがって、企業は大事業部制から分社により小さく専門化しており、その中での雇用形態を考えるべき。日本企業はリストラできない中で新しい事業形態をを模索している。また、現在の企業の大きな負担を考えると401Kプラン等を入れていかないと、企業はやっていけない。

〇雇用対策は、将来に対する不安の問題と大きく関係している。失業してもすぐ就職できる安心感を持てるように能力取得への支援といった、就業中においてもセーフティネットを確立することが必要。

〇雇用の流動化は、労働市場での再就職の他に、M&Aにより企業のある部門の所有と経営が変わることによっても可能であるという認識が必要。また、労働組合が労働の流動化や市場の整備にどう関係するのかも重要で、その役割は大きいと思う。

〇雇用対策に関する論点は、現在の体制や不安感の払拭のために今やるべきものに絞るべき。

〇雇用政策は、この2、3年でやるものと、コンスタントにやるものが両方あるが、どこに重点を置くか考えるべき。

〇雇用対策は、市場介入型である補助金政策か、市場活用型である規制緩和策かに論点が分かれている。また、正規雇用にどこまでこだわるかも問題。規制緩和は即効性がないというが、その例外が労働市場であり、労働市場の最大の論点は派遣事業の自由化である。現在、企業は正規雇用は増やさないが、派遣などの非正規雇用はできれば増やしたいと思っているところが多い。


(2)経済計画フォローアップ報告スケルトン(案)について

事務局より、資料4「経済計画フォローアップ報告スケルトン(案)」について説明、その後討議。委員からの主な意見は以下の通り。


〇作文よりも、経済企画庁独自の分析が重要。計量モデルに比較優位があり、シミュレーションできる技術もあるはずである。

〇分析のあり方・ツールについては工夫が必要。特に金融に関しては、実際の金融市場をよく見て、例えば金利の指標として何をとるかを考えないといけない。無担保コールの金利は現在意味がない。



なお、本議事概要は速報のため事後修正される可能性があります。

(本議事概要に関する問い合わせ先)

経済企画庁総合計画局計画課

西岡、阿部

TEL03-3581-1041