第2回経済審議会・企画部会議事概要

1 日時

平成10年10月28日(水) 14:00~16:00

2 場所

経済企画庁特別会議室(436号室)(第4合同庁舎4階)

3 出席者

(部会) 小林陽太郎部会長

跡田直澄、伊藤進一郎、ポール・シェアード、嶌信彦、樋口美雄、堀紘一、
松井孝典、水口弘一、村田良平、八代尚宏、吉井毅、の各委員

(事務局) 今井政務次官、塩谷事務次官、梅村企画課長、中名生総合計画局長、牛嶋審議官、大西計画課長、染川計画官、涌野計画官、塚原計画官、青木計画官、
佐々木計画官、林部計画官、佐久間計画官、荒井計画官、福島推進室長、岩瀬計画企画官

4 議題

  1. (1)現行経済計画の想定と現実との乖離
  2. (2)将来の経済社会のマクロ的変化

5 審議内容

(1)現行経済計画の想定と現実との乖離

事務局より、資料2「計画の想定と実績の乖離」資料3「経済計画で具体的に記述された政策の進捗状況」資料4「社会資本の整備目標(暫定版)」資料5「計画の想定と実績の乖離の要因」について説明、その後討議。委員からの主な意見は以下の通り。

  • 〇外需の見通しの誤りは、ほとんど輸入からきているのだから、内需が原因である。問題は、政府支出であり、この見通しの誤りは政府の責任。財政再建のデフレ効果を過少に評価するために、計画ではあえて政府支出の伸びを大きくしたのではないか。どういう根拠に基づいてこういうことをしたか、事後的に検証すべき。
  • 〇消費性向の低下の要因分析が必要。雇用不安が大きいのではないか。
  • 〇アジア危機を外生的に受け止めるのではなく、日本の不況、円安、内需の落ち込みがアジアの通貨危機に与えた影響をどう評価するのかを議論することが必要。
  • 〇経済計画の進捗状況は、方向だけ合っていればいいというものではない。例えば有料職業紹介や労働者派遣事業のネガティブリスト化では、実際はサービス業・製造業のほとんどが入っており、何のためのネガティブリスト化か分からない。また、社会資本の整備についても、例えば保育所の数にしても地域により偏在していることがより問題で、全国平均で評価してもあまり意味はない。
  • 〇予測値と現実の乖離については、外生変数の想定の設定の問題と、モデルの予測力の問題の2点に分けることができる。今回はどちらが大きいのかを検討すべき。現実の公的固定資本形成をモデルに入れたらどの様になるかをモデルで導いてみてはどうか。
  • 〇95年当時に、本気で計画のような姿が実現すると考えていたとは思われない。成長経済下ではサプライサイドを刺激すれば景気が良くなったが、成熟経済下ではそうはならない。今は経済の論理は全く変わってしまった。特に、消費マインド低下の要因について力を入れて解明すべき。
  • 〇見通しを誤ったのは、政策の整合性を十分に図らなかったからではないか。事前に全体の計画に問題点や矛盾を内包していることにどうして気がつかなかったのか反省すべき。
  • 〇97年の経済の低迷については、金融システム問題があったにもかかわらず、財政引き締めを行い、危機的状況にあるという暗いイメージを政府が国民に送ってしまったこと、ビッグバンの実施が短期的には金融界に打撃を与え、金融危機が勃発したことで、消費マインドが冷え込んでしまったことが背景にある。金融システムの不良債権処理を5年かけてやろうとしたこと、情報を隠してやろうとしたことを反省すべき。土地政策については、97年2月までは、地価を引き下げる方向で行われていたが、計画策定の時点で土地政策も切り換えるべきであった。また、97年2月には、土地政策を大転換したと思ったが、その後何も進んでいない。
  • 〇社会インフラに未達があることについては予算配分が変わらないことが問題であり、それは政治の問題でもある。
  • 〇3%~5%の成長が10年間続けば不良債権もなくなると企業経営者は思う。このような見通しが出されたために、積極的な不良債権処理が進まなかった面がある。政府の見通しは厳しく出すべき。
  • 〇日本の輸送コストは国際的にまだ高く、その解消は重要な課題。例えば米国の高速道路料金はほとんど無料。
  • 〇アジアの問題を皆が見誤ったのは、通貨経済・マネー投機の問題の大きさを認識していなかったため。通貨システムやヘッジファンドを中心とした通貨投機の問題を今後どう考えるのかが重要。
  • 〇計画策定にあたっては、201×年の我々の生活はどうなっているのか、生活者・消費者にあった居心地の良い社会システムや、国際社会の中で尊敬される日本を思い描くべき。感性で分かる社会・経済システムを描くべきで、そのためには何が問題になっているかを明らかにしないと、国民のエネルギーがでてこない。
  • 〇5カ年計画の位置づけを明確にしておいた方がいい。民主主義、市場経済の日本では、中国等とは違い、政府の占める部分はもともと小さい。規制緩和をいかに進めるかが重要になる。数字は現実的な期待値であるべき。政策対応が悪かったのは現実の理解がまずかったためであり、現実を正しく見ていくことが必要。また、財政のディシプリンや官民のモラルハザードの防止も必要。さらに、マーケットの動き・展望は、心理的要素もあるが、今後も無視できない重要なものである。
  • 〇長期の議論の際には、財政収支は内生化して考えるべき。赤字が累積すれば実物経済にも影響を与え、政府自身も維持できなくなる。今のような国債発行を続けていると、1、2年のうちに財政は破綻して、平成のドッジ・ラインのようなものが必要になる。
  • 〇昨年来の不況の深刻化の原因が、実物面か、金融面かという分析を掘り下げるべき。金融面の要因が大きいと考えられるが、従来の一般均衡的モデルは金融面の分析が弱い。短期の不況の原因を分析する手段を開発できないか。
  • 〇計画には、ある程度夢があってもいいのではないか。目標値が長期的にマイナス成長だと、少なくとも1人当たりの成長がないと国民が希望を持てない。
  • 〇東アジア向けの輸出に今後影響が出てくるものと思われ、これからの計画では、東アジアとの連関をいかに考慮するかが重要。430億円の資金を、いかに有効に活用するかがポイント。日本経済の建て直しだけでなく、東アジアの国々の内需をいかに建て直すかも重要。
  • 〇内需活性化のためには、環境の変化に応じ、従来型の仕組みを変えることが重要。例えば、公共投資の配分でも、地方交付税により全国にパイを均等に分ける仕組みは壊していくべき。
  • 〇日本企業は世界的な価格競争と世界一高いコストを抱えて費用が圧縮できず、低い利益率の中で企業を存続している。アメリカのように短期の収益をみてリストラすることができない。そうした日本企業の特殊性を考えた、成熟経済における社会構造・政策を考えていくべき。
  • 〇情報化投資等社会資本整備の進捗していない分野に、日本の21世紀がかかっている。今後は、いかに有効需要を創出するかの観点からも、新しい分野に資金を投入していく必要がある。
  • 〇ゴールが定まっていない状態で、モデルと実績との乖離を分析することに意味があるのか疑問である。ゴールを明確にすることが重要ではないか。
  • 〇冷戦終結、バブル等予想を超える転換期をここ数年に迎えた。転換期だからこそ、政治のリーダーシップを求められている。経済は民間中心であり、政治はその環境整備に責任がある。20世紀の始末をつけなければならない。
  • 〇金融システムが健全であれば、9兆円の財政再建ができたと思うが、あと4年かけないと金融システムは再生できないというのが計画作成当時の認識。金融を直した後で財政再建をやればこれほど状況もひどくならなかったのではないか。時間的な順序の吟味が必要。

(2)将来の経済社会のマクロ的変化

事務局より、資料6「将来の経済社会のマクロ的変化」について説明、その後討議。委員からの主な意見は以下の通り。

  • 〇消費性向が今後上昇すると見られるのは、人口減少のためではなく、高齢化が進むことによるもの。政策面では就業率を上げることで消費性向の上昇に歯止めがかけられるのではないか。資本係数については、日本はすでにかなり高いのに、長期的に更に上がるというのはどういうことか。資本の収益率は今後下がっていくのにどういう形で投資のインセンティブがあるかが疑問。単純に労働を資本が代替するというわけにはいかない。
  • 〇このところ欧州諸国の政権は中道左派、左翼がほとんどになっており、環境、福祉、雇用の問題と市場経済をどういう一つのシステムにしていくかが大きな議論になっている。こうしたことを理念的に整理しておくのは重要。
  • 〇ここでのシミュレーションは労働力が減るという前提で行われているが、これから日本が開かれていくときに本当にそれでいいのか。モノとカネの自由化が進んだ後には、労働の移動が起こり始めると思われるのに、それが考慮されていないのは非現実的。

なお、本議事概要は速報のため事後修正される可能性があります。

(本議事概要に関する問い合わせ先)

経済企画庁総合計画局計画課

西岡、阿部

Tel:03-3581-1041