第1回国際マクロ経済問題研究会議事概要

1.日時:

 平成10年10月9日(金)14:30~16:00

2.場所:

 経済企画庁官房特別会議室(729号室)

3.出席者:

近藤剛座長、中山真一、高阪章、黒柳雅明、岡田靖、石本聡、小川英治、大坪滋の各委員
中名生総合計画局長、高橋審議官、牛嶋審議官、染川計画官他

4.議題:

  1. 議事の公開方法について
  2. 国際マクロ経済問題研究会の趣旨及び主要テーマについて
  3. 各検討テーマにおける論点について

5.審議内容:

1 冒頭、中名生総合計画局長から挨拶

2 議事の公開方法について

事務局から、資料2「国際マクロ経済問題研究会の議事の公開方法について(案)」について説明。委員からの異論はなく、本件は了承された。

3 国際マクロ経済問題研究会の趣旨、主要テーマとその論点について

事務局から説明の後、討議。委員からの主な意見は以下のとおり。

(国際マクロ経済問題研究会の趣旨及び主要テーマについて)

○国際資本移動等「カネがらみ」のテーマに対して、参考1の論点整理図では、貿易と投資に重点をおいた「モノがらみ」の論点が多い。例えば、金融のフローにおける相互依存であるとか、日本の資本市場がアジア地域において持つ役割、ポテンシャルを明記したほうがよい。

○この研究会でどこに重きを置くのかが重要。貿易のフローを見るのであれば、地域の視点が必要であり、資本移動あるいはマネーを考えるのであれば、先進国、途上国とで責任と役割というものが異なってくるという視点になる。短期の話であれば後者、中長期の話であれば前者という形で考える必要があるのではないか。

○労働市場については、国際労働移動はないという前提で議論を進めているようであるが、そのような捉え方でよいか確認したい。

○労働市場について、昨年のグローバリゼーション・ワーキンググループでは、グローバル化によって一部の地域では労働移動が生じるかもしれないが、世界的に労働が動くようになるとは考えにくいという結論になった。

○国家と国際機関の役割、国家と企業の役割についても触れる必要があるのではないか。


(資本移動について)

○我が国の個人資産が外国に出て行くと言われ続けている。アジアは数百億ドルの規模の流出で危機が生じたが、日本の場合はそれをはるかに超える規模で流出が起きるのではないか。日本の家計のポートフォリオの中に不安定要因が含まれると、それが海外に与える影響も大きい。

○80年代後半以降のアジアの台頭が、例えばヨーロッパ諸国の不振をカバーしてきたこともあり、世界のどこかで収益が得られ投資先も存在したということから、アジアを視点に入れるのが面白いのではないか。アジアから資金が流失した一つの要因として競合する投資先が生じてきたことが挙げられ、そうした状況下でのアジア地域を見てみることもできるのではないか。


(通貨・金融危機について)

○通貨・金融危機の原因の類型化はよいが、実際はこれらいくつかの要因が複合的に起こっていることを認識しておくことが重要。

○短期的な面だけ見れば、カネの話に集中するのはよいが、中長期的な面で見れば、直接投資や技術移転、及び途上国の脆弱な金融仲介部門を如何に克服していくかという視点も必要ではないか。

○ミクロ、マクロ、グローバルマクロのミスマッチが生じている。それぞれのミクロ(企業)レベルでは行動が正しくとも、金融仲介の歪みによって儲かってしまうというシステム自体を持ちつづけたことに問題があった。

○過去の危機(昨年のアジア危機、95年のメキシコの危機、80年代の中南米の危機)は全てアメリカの金融政策に影響を受けている。基軸通貨国の問題は大きい。


(世界経済安定化の枠組みについて)

○IMFがモラルハザードの原因となっているかについては、【1】コンディショナリティーがきつすぎる、【2】IMFはすぐに助けてしまうという2つの見方があって、両面の見方が必要。

○途上国にあっては構造問題を必然的にはらんでいて、これを経済成長によって解決していくものである。だからある時点だけをとって、構造問題をとりあげると議論が本末転倒になる危険性もある。IMFのガイドラインの問題もこのあたりにひとつの原因があるかもしれない。

○各国の銀行部門の制度について、制度面の国際的な調整は必要であるが、そこまで踏み込むのか否か。

○途上国にとって、産業構造の高度化等、お金を借りつづけなければならないという現状があり、実物経済と金融との結びつきを借り手側(需要側)の論理から考えることが必要。

○実物経済の国内経済と海外経済の結びつきと金融経済の国内経済と海外経済との結びつきでは、サイズもスピードも異なるという点に注意が必要。


(三大経済圏のマクロ経済運営について)

○テーマ4について、あえて「経済圏」と規定することについて言葉上の問題がある。テーマ4についての切り口はこれでよいか。「日米欧を中核としたマクロ経済運営について」ということではいかがか。

○「三大経済圏」に賛成だったが、「G7で政策協調をするという時に、アジア等の非G7地域に対する影響がある」ということも考えるというように、世界全体を見て日米欧の政策協調も考えるということであれば賛成。

○日米欧だけでは日本としてはウェイトが低すぎる。NAFTA、EUのウェイトを少し低くして議論するのはどうか。

○「為替制度と金融政策の関係や財政赤字の水準を考慮した財政の弾力的運営について」といった論点は、日本に関してなのか、アジアに関してなのか、あるいは危機に陥った途上国に対する処方箋一般のことなのか。

○KeyCurrencyを持っている国の協調なくして世界経済の安定化はありえない。


(ストックとフローの関係)

○アジアの危機もストックがある水準になって崩壊した。フローのマクロ経済政策だけではうまく行かないことが生じている。ストックの面からのアプローチが必要。

○短期においてストック面が重要になっている。資産市場で起こった変化がどのようなメカニズムで実物経済に波及していくのかが実はよく分っていない。

○実物経済成長モデルでショックが与えられた場合、金融が実物経済に影響を及ぼすとしても一時的なシフトは起こるが成長率には影響が及ばない、というのが従来の成長モデルになっている。これは希望であるが、貨幣の中立性についてこれを根本から変えるような考え方ができれば、それが実物経済と金融との結びつきについての基本的な考え方になるのではないか。

6.今後のスケジュール:

次回の国際マクロ経済問題研究会(第2回)は10月26日15:30~17:00に開催する予定。

なお、本議事概要は、速報のため、事後修正の可能性があります。

(連絡先)

経済企画庁総合計画局国際経済班

Tel 03-3581-0464