経済審議会企画部会(第1回)議事録

時:平成 10年 9月 24日

所:経済企画庁特別会議室( 436号室)

経済企画庁


経済審議会企画部会(第1回)議事次第

平成10年9月24日(木)15:30~17:00

経済企画庁特別会議室( 436号室)

  1. 開会
  2. 経済企画庁長官 挨拶
  3. 経済企画政務次官 挨拶
  4. 議事の公開方法について
  5. 企画部会の検討テーマと審議スケジュールについて 
  6. 閉会

(配布資料)

  1. 資料1 企画部会委員名簿
  2. 資料2 企画部会の議事の公開方法について(案)
  3. 資料3 企画部会の趣旨及び主要テーマについて
  4. 資料4 企画部会の審議スケジュール

(参考資料)

  1. 参考資料1 現行経済計画(「構造改革のための経済社会計画」(1995年12月)における経済成長率等の見込みと実績
  2. 参考資料2 将来の我が国経済社会の基本コンセプト( 各種報告書にみられる考え方)
  3. 参考資料3 経済審議会報告書(平成10年6月)における将来の経済社会の基本コンセプトに関連する記述(抜粋)
  4. 参考資料4 経済戦略会議主要テーマ

経済審議会企画部会委員名簿

部会長
 小林 陽太郎 富士ゼロックス(株)代表取締役会長
部会長代理
 香西  泰 (財)日本経済研究センター会長
委員
 跡田 直澄 大阪大学国際公共政策研究科教授
 荒木  襄 日本損害保険協会専務理事
 伊藤 進一郎 住友電気工業(株)専務取締役
 角道 謙一 農林中央金庫理事長
 小島  明 (株)日本経済新聞社論説主幹
 小長 啓一 アラビア石油(株)取締役社長
 佐々波 楊子 明海大学経済学部教授
 ポール・シェアード ベアリング投信(株)ステラテジスト
 嶌  信彦 ジャーナリスト
 長岡  實 東京証券取引所正会員協会顧問 日本たばこ産業(株)顧問
 那須  翔 東京電力(株)取締役会長
 樋口 美雄 慶応義塾大学商学部教授
 星野 進保 総合研究開発機構理事長
 堀  紘一 ボストン・コンサルティング・グループ社長
 松井 孝典 東京大学理学部助教授
 水口 弘一 (株)野村総合研究所顧問
 村田 良平 (株)三和銀行特別顧問
 八代 尚宏 上智大学国際関係研究所教授
 吉井  毅 新日本製鉄(株)代表取締役副社長
 吉川  洋 東京大学大学院経済学研究科経済学部教授
 鷲尾 悦也 日本労働組合総連合会会長


〔 部会長 〕 ただいまから、第1回の企画部会を開催させていただきます。当部会の部会長を務めさせていただきます。よろしくお願いいたします。本日は委員の皆様方には、大変にお忙しいところをお集まりいただきましてありがとうございます。

 企画部会では、平成7年12月に閣議決定されました、「構造改革のための経済社会計画」の残存期間が残り2年ちょっとということで、将来の経済社会に対する長期ビジョン等を念頭に置きながら、現行経済計画のフォローアップのための議論を中心に行っていきたいと考えております。

 特に、ここ1年ぐらいの間に計画の前提となったものというか、いろいろなものがかなり大きく変わりつつあります。そういう基本的なところも含めて、ぜひ委員の皆様からは、忌憚のないご意見を頂戴できればありがたいと思います。

 委員にご就任いただきました方々は、お手元の委員名簿のとおりでございますけれども、今日は初めての集まりでもありますので、事務局から本日ご出席の委員の皆様をご紹介願いたいと思います。  

〔 事務局 〕 それでは、ご紹介いたします。五十音順でございます。

荒 木   襄 委員でございます。

伊 藤 進一郎 委員でございます。

小 島   明 委員でございます。

小 長 啓 一 委員でございます。

嶌   信 彦 委員でございます。

長 岡   實 委員でございます。

星 野 進 保 委員でございます。

水 口 弘 一 委員でございます。

村 田 良 平 委員でございます。

八 代 尚 宏 委員でございます。

吉 井   毅 委員でございます。

 後ほど、松井委員はお見えになることと思います。

 それから、本日出席の事務局の方は、手元の座席表のとおりでございますので、これは省略させていただきます。  

 以上でございます。

〔 部会長 〕 ありがとうございました。 

 後ほどご出席の委員は、おいでになったときにご紹介いたしますが、部会長代理につきましては、香西委員にお願いをしたいと思っておりますので、ご了解いただきたいと思います。香西委員は、今日はご欠席ですが、皆様の了承を前提の上でご了解をいただいておりますので、ひとつよろしくお願いいたします。

 それでは、今日の議題にこれから入りますが、その前に、大臣からご挨拶をいただきたいと思います。

〔 大臣 〕 本日は皆様、ご多忙のところ、わざわざ当部会にご出席いただきまして、誠にありがとうございます。

 経済審議会は、今、部会長からもご挨拶がございましたように、前の計画を立てまして、それは村山内閣のときだったようでございますけれども、そのときにはかなりの経済成長率を見込んでおりました。構造改革を進めれば3%以上の経済成長がありうる、こういう前提でございます。その計画を作りました翌年は 3.2%の経済成長をしたのですが、その後はマイナスになってしまいまして、今年も、もうひとつパッとしません。

 このあいだ、QEを発表いたしまして、去年は 1.9%の経済成長を見込んでおりましたが、実際はマイナス 0.8%、今年も 1.9%を見込んでおりましたけれども、恐らく、マイナス1%台の高い方のマイナスになってしまうのではないかというような観測が専らでございまして、IMFとかOECDの予想も大体そんな数字が出ております。

 したがいまして、現行の5カ年計画を作ったときとは経済の状況が大きく変わってしまいました。もっとも、この5カ年計画で書いております、「構造改革が必要」だという基本路線は全く間違いがございません。したがって、これは大いに進めなければいけないと思っておりますけれども、そういった状況の中で、この企画部会におきまして、今後どのような状況で日本経済を考えたらいいか、中長期的な問題をご検討いただきたいと思っております。

 現在、小渕内閣では、経済再生を最大の課題といたしまして、現在の金融危機、不況の克服に努めている次第でございますけれども、日本の経済全体が中長期的な発展をし、21世紀にふさわしい「多様な知恵の時代」を形成するにはどのような構造改革を推進しなければいけないか、当面の経済とあわせて、こういった構造改革問題は極めて重要であります。

 小渕内閣は、ご承知のように、別途、経済戦略会議というのをつくりました。当経済審議会と経済戦略会議とはいかなる関係にあるか。ご疑問をお持ちの方々もおられるかと思いますが、経済戦略会議は、できれば本年中、遅くとも本年度中、非常に短期集中的に現在の不況の克服のための改革案、これは中長期的な改革案も含みますけれども、そういう一点突破型の審議をするということが中心でございます。経済審議会におきましては、より構造的な問題をより長期的な視点からバランスのとれた議論をしていただきたいと思っております。一方は、目下のことを突破するための一点突破型の提案をしていく。そして、早い機会に国民に1つの安心感を与える、その意味では非常に臨場的なものだと思います。

こちらはぜひ、より構造的な問題について議論をしていただきたいと思います。

 特に今日、我が国は少子・高齢化、グローバル化、ソフト化というような、これまでになかった大きな問題に直面しておりまして、経済社会のシステムを再構築しなければならないところに来ております。また、ご存じのように起業家精神が非常に衰えておりまして、新しい創業が少なくなっております。こういったことも改革をして、起業家精神に溢れた新しい日本、21世紀の日本をいかにつくっていくか、そういったことも考えていただきたいと思っております。

 現行経済計画は、構造改革のための経済社会計画といたしまして、残存期間2年ございますけれども、最初に申し上げましたように、経済情勢にかなりの差が出ておりますので、そういったことも含めてご議論をいただきまして、時期をみて、これに代わるものを作っていきたい。その基本的な問題を皆様方にこの部会でご検討いただければ幸いと思っております。

 こうしたことを念頭に置きまして、委員の皆様方のご貢献で新しい21世紀のビジョンづくりというものの基本を指し示していただければ幸いかと思います。

 大変ご多忙の中でございますけれども、よろしくお願いいたします。

〔 部会長 〕 大臣どうもありがとうございました。 

 続きまして、政務次官よりご挨拶いただきたいと思います。

〔 政務次官 〕 先生方、大変ご多用のところをご出席を賜りまして、誠にありがとうございます。

 大臣を補佐いたしまして、一両年のうちに景気を回復軌道に復帰させ、中長期的な安定成長につなげていくため、経済対策の推進等の経済運営に万全を期するとともに、構造改革を着実に進めてまいりたいと思っております。現在の日本の経済的、社会的ファンダメンタルズといった基礎体力は非常に高く、適切な経済対策あるいは政策の対応によって不安感の払拭により十分経済を再生する能力はあるものと考えております。こうした我が国経済の潜在的な力を十分に発揮させていくためにも、将来の明確な経済ビジョンと、それを実現するための政策体系をご議論いただくことは誠に重要であると考えている次第でございます。

 経済審議会企画部会の委員の皆様方のご指導とご鞭撻を切にお願い申し上げまして、ご挨拶とさせていただきます。

 よろしくお願いいたします。

〔 部会長 〕 どうもありがとうございました。

 それでは、本日の議題に入らせていただきます。

〔 大臣 〕 失礼いたします。

〔 部会長 〕 大臣、どうもありがとうございました。

 まず、当部会の議事内容の公開についてお諮りしたいと思いますので、事務局からご説明をお願いいたします。

〔 事務局 〕 資料2をお開きいただきたいと思います。当部会の議事内容の公開につきましては、次の3点をお諮りしたいと思います。

1.経済審議会企画部会については、原則として議事要旨を会議終了後2日以内に作成し、公開するものとする。また、議事録を会議終了後1カ月以内に作成し、公開するものとする。ただし、議事要旨、議事録ともに発言者名の公開は行わないものとする。

2.配布資料は、参考資料も含むわけですが、原則として議事要旨とあわせて公開するものとする。

3.会議開催日程については、事前に周知を図るものとする。

 以上3点でございます。

〔 部会長 〕 今ご説明がありました当部会の議事内容の公開について、何かご意見がございますでしょうか。

 それでは、この3点に従って公開をするということでご了解をいただきたいと思います。当部会の議事内容の公開については、本会合の冒頭にさかのぼって、そのようにさせていただきますのでよろしくお願いいたします。

 続きまして、当部会の検討テーマ、それから審議スケジュールについて、事務局よりご説明をお願いいたします。

〔 事務局 〕 それでは、お手元の資料3に沿って、検討テーマについてご説明を申し上げます。

 「1.趣旨」ということで書いてございますけれども、先ほど、部会長、それから大臣からもお話がございましたように、現行経済計画「構造改革のための経済社会計画」、計画の中で毎年計画のフォローアップを行うということが定められておりますけれども、昨年、一昨年とフォローアップをして報告を作っていただいてまいりましたが、今年の場合には、来年になりますと、その先2000年までの計画でございますので、残るところは翌年までという形になります。また、マクロフレームの姿というのは、計画で想定をした姿からかなり現実の経済の動きは乖離してきているということもございます。そういう意味で、大臣のご挨拶にもございましたように、将来のビジョン、先についての考え方というものを含めたフォローアップをご審議していただいてはどうかと考えております。

 「2.主要テーマ」ということで5つに分けて書いてございます。

 第1は、「1) 現行経済計画の想定と現実との乖離」の問題ということでございます。

お手元にお配りしています資料の「参考資料1」で、計画で想定しておりました実質成長率、物価上昇率、失業率等のマクロのフレームと、96年度、97年度の実績を示した表を掲げてございますけれども、さらに98年度については経済成長率等の当初見通しを現在見直している作業の最中でありますが、当初の想定からかなり乖離した経済の動きになってきております。こういう乖離について、それがどういう原因で生じたのかということをまずご検討いただく必要があるのではないかということでございます。

 その下には、いくつか考えられる要因を、「その原因として」ということで書いてございますが、1点としましては、不良債権処理問題及び金融システム不安の経済全体に与える影響の大きさということですが、これはもちろん現在の経済計画の中でも、不良債権問題というのを早期に処理すべきだということで書かれておりますけれども、現時点で考えますと、この問題の深刻さということが必ずしも十分ではなかったのかという反省もございます。

 2点としましては、現在の計画の特徴として「構造改革」というのを全面に掲げておりまして、フレームの面でも構造改革が実現した場合、それがうまくいかなかった場合ということで2通りのフレームを示しているわけですけれども、そういう構造改革というのが十分に進んだのかどうか。さらには、そういう構造改革が進んで、それがマクロ経済のパフォーマンスにあらわれるまでの間というところに、時間的なラグがあったのかどうかという問題もあろうかと思います。

 3点としましては、アジア経済をはじめとして我が国を取り巻く国際経済環境というのが、当初考えていたものと違った動きになったということがあるのか。

 もちろん、ここに書いてあります3つのほかに、例えば、総需要政策が適切であったのかどうかとか、あるいは当初考えていた我が国の潜在成長力が実情に見合ったものであったのかどうか、多くの論点があろうかと思いますが、まずは現行経済計画の想定とその後の現実の経済の動きの乖離、それがどうして生じたかというご議論を賜ればと思っております。

 第2は、現在の極めて厳しい低迷している状況から中長期的な成長軌道に回復していくためのマクロ政策ということで、どういう政策を講ずるべきであるかという問題でございます。とりわけ雇用の問題につきましては、失業率あるいは有効求人倍率という統計がいずれも、統計をとりだして以来最も悪い数字になってきている現状を踏まえ、特に雇用の政策ということをご議論いただく必要があるかと考えております。

 マクロ経済政策については、景気浮揚のために何をするかということもございますし、もう一つは、財政構造改革法が現在凍結という状態になっておりますけれども、これを中長期的な観点からどういうふうに考えるかという問題もあろうかと思っております。

 2ページのところで、雇用の問題。これはこれまで経済審議会の展望部会等でも種々ご議論をいただきましたけれども、先ほど申し上げましたような大変厳しい、それも一層深刻になっております雇用情勢を踏まえまして、さらに具体的にどういうところで失業が発生しているのか、あるいはそれを吸収する分野としてどういう分野が期待できるのか、そこに労働者が円滑に移動していくためにはどういう施策が必要か、ということをご議論いただきたいということでございます。

 第3は、2ページ目の(3)ですが、「将来の経済社会のマクロ的変化」が書いてございますが、現下の非常に厳しい景気の動向、これを抜けた後というのは、80年代の経済といいますか、前の姿に戻っていくというよりも、これだけの大きな不況期を過ぎた後の経済の姿というのは、また違った形の成長軌道という形になっていくのではないかと考えられますので、そういう不況のトンネルを抜けた後はどういう姿になるのかについてのご議論をいただきたいということでございます。

 そこで、「例えば」ということで6点書いてございます。最初に書いてございますのは、従来、中期的な我が国の成長の姿というものを考える場合には、労働力の伸び、資本の伸び、生産性の動向、そういう供給サイドからの検討というのが中心であったと思いますけれども、それに見合った需要というのはどうなるかという問題。

 2つ目に書いてございますのは、我が国は既に相当高齢化は進行しているわけですが、高齢化が進んでいきますと消費性向は国全体としては上がっていくというふうに考えられていますけれども、現実には、家計調査などで見る限り、消費性向というのはなかなか上がっていないという形になっております。それから、設備投資の面でも、足元のところすは大変設備投資が落ち込んでおりますけれども、それでも、なおかつGDPに占める設備投資の比率ということで考えますと、14、15%あるということで、欧米に比べますと設備投資の比率が大変高い構造になっておりますけれども、こういうのを先に伸ばしてどういうふうに考えるかという問題もあろうかと考えております。

 3つ目に例示で挙げておりますのは、今後、実質の成長率あるいは名目の成長率というのは、これまでよりも低いという姿になってまいりますと、当然、それに合わせて金利も、今は超低金利でありますけれども、この異常な状態が戻ったとしても、昔のような金利水準にはならないということが考えられるわけでありまして、それがいろいろな経済活動主体、経済の各分野にまたいろいろな影響を与えてくるという問題があろうかと思います。

為替についても同じような問題が考えられるということでございます。

 4つ目に挙げておりますのは、現在行われております将来の展望というのは、いずれも少子・高齢化、トータルとしての人口が今の中位推計ですと2007年ごろから減少に転じるということが前提になっておりますけれども、そういう人口減少という動き自身について、何かそれに歯止めをかけるということが有効な政策があるのかないのか。もし別な形の問題としては、そういう国内の労働力人口も、人口の動きにつれて減っていくという場合に、外国人労働力の受け入れというのは、経済だけといいますか、社会全体のコストも含めてどういうふうに考えるべきかという問題もあろうかと考えております。

 さらに、そこに書いてございますように、世界的な環境・資源制約の問題、あるいは、グローバル化、情報化による経済の効率性の改善は、全体の経済のパーフォーマンスにどういう影響を与えるかという問題もあろうかと考えております。

 第4は、「将来の経済社会の基本理念」でございます。ここでは、お手元の「参考資料2」でいくつかの経済計画、その他の報告で書かれている基本理念といいますか、社会をとらえるコンセプトということについて書いてございますけれども、例えば、経済計画に則して申し上げますと、現行の計画では「構造改革」というのがキーコンセプトになっておりまして、その前の計画の場合には「生活大国」というのが中心的な概念になっておりました。さらに、もう一つ前の計画の場合には「世界とともに生きる日本」という形で中心的な命題というのが示されているわけであります。

 この基本理念という面では、今年6月までご審議いただきました、例えば展望部会の中では、「透明で公正な市場」、「環境と調和した社会」、「プラスのストックの将来世代への継承」ということが重要ではないかというご指摘をいただいております。

 さらに、3ページの【3】に書いてございますけれども、この国会での小渕総理の所信表明演説では、【3】の初めに書いてございますように、「大量工業生産の社会から21世紀には智恵の豊かさを生かす社会へ移る」、そういう時代認識というものが示されております。そういうふうに歴史の中での現在の日本の経済社会というのをどのように捉え、何をキーコンセプトとして考えるかということについてもご議論いただきたいと考えております。

 最後に第5は、「経済計画の機能・役割」でございます。経済計画については、従来から、実態的に命名すれば経済計画というよりも、むしろ中長期のビジョンと経済戦略といいますか、政策体系、経済政策のプライオリティというのがその中身ではないかと考えられますけれども、これから次の経済計画というものを目指す場合にいくつかご検討いただきたい点ということで、ここにも例示的に論点を挙げてございますけれども、

  •  将来における財政の配分をトータルでどういうふうに考えるか。
  •  計画の期間をどのくらいに想定するのがいいのか。あるいは、それを年々改定するようなリボルビング方式というものは適切であるかどうか。
  •  例えば現行の計画でも、「もし構造改革が進まなかった場合には」という形でもう一つの裏のフレームというのも示されているわけですけれども、複数のシナリオを考えるという必要があるのかどうか。
  •  政策の優先順位をより明示的に、実質的に示すにはどういう方策があるか。

ということでございます。

 以上、5つに分けてお示ししてございますけれども、かなり盛り沢山な検討項目となっております。

 もう一つ、「資料4」という一枚紙がございます。「企画部会の審議スケジュール」が書いてございますが、本日の第1回の後、10月、11月の上旬でそれぞれご議論いただき、11月の下旬の第4回でフォローアップ報告ということを考えております。

 したがいまして、ご審議を年内にいただく回数というのは必ずしも多くないものですから、大変盛り沢山なご検討項目ということではなかなか消化が大変な面もございますが、この資料3に書いてございますようなことで、欠けている視点、論点はないかどうか、あるいは逆に、どういう点に重点を置いてご議論をいただいたらいいかという問題、さらにそれぞれの項目の内容についてのご意見というのを今日、委員の方々から賜ればというふうに思っております。

 以上でございます。

〔 部会長 〕 ありがとうございました。

 今日は5時まででございますので、5分前ぐらいまで、主として今の資料3の「何をやるか」というところを中心に、皆さんからご自由にひとつご意見をいただきたいと思います。また、それとの関連で、今お話があったように、今日を入れて4回しかございませんから、結果的にもう少し絞ってやろうかとか、絞るならどこをやろうか、ということも含めてお話しをいただければ大変にありがたいと思います。

〔 A委員 〕 とりあえず、皮切りに申し上げたいと思います。

 1つは、先ほど大臣からご説明がありましたけれども、経済戦略会議、これが一般的なアドバイザーグループではなくて、8条の機関となっているという関係で政府機関ということになります、その関係のご説明はありました。ただ、手元に「経済戦略会議主要テーマ」の9月10日付のものが配られていますが、これを見ると、経済審議会でやること、あるいはやってきたことと同じではないかという感じがいたします。大臣のおっしゃったのは、「短期集中的、一点突破型ということで年末あるいは来年の春まで」ということであります。そうすると、この中の5項目のうちの第3の「短期的政策のパッケージ」ということになってくるのだろうと思いますが、その辺を、大臣がいらっしゃいませんので確認できませんけれども、先ほど言われたような棲み分けということであればそれはそれとして、こちらは構造的な中長期的な基本的な問題をやっていく、というような理解でよろしいかと思っております。

 あと、内容につきましては2つほど申し上げたいと思います。1つは、もう少し強調したいと思いますのは、2ページの4の「4) 将来の経済社会の基本理念」の【1】、経済審議会報告(98年6月) で掲げた「透明で公正な市場経済」、まさにそのとおりであります。ここの市場経済という場合は、言うまでもなく「グローバリゼーション」という問題と「インフォメーションテクノロジーの発達」ということで瞬時に全世界に伝わる。それに従って、マーケットがあらゆる予測を加えながら動くということがありますので、マーケットのグローバル化という問題、情報化という問題。同時に、そこで非常に必要なのは、最近も金融株の暴落という問題に対して、例えば空売り規制の問題をどうしろというような問題、あるいは虚偽のディスクロージャーの問題、あるいは風説の流布とか、いろいろな問題が言われておりますけれども、それ以上に、マレーシアにおける市場閉鎖の動きであるとか、世界の自由市場と言われた香港においても政府が介入して、恐らく香港、上海銀行などは相当の株数を政府が持ってしまって、今は空売りするにも株券がなくなってしまったというような状況もあっての空売り禁止となって、いや解除ということになっているわけですから、やはり市場という問題と政府という問題。個別の企業だけの問題ではなくて、政府という問題は、特に政府の関係の方は現在は、いろいろな不祥事件があったりして証券市場とか金融市場に対して、政府の方は断絶状態になって全く情報も入らないというような状況になっているだけに、こういう審議会の場でもうちょっと具体的なデータを含めながら、あるいはヒアリングをしながらやっていただくことが必要ではないか、というのが第1点です。

 第2点は、最後のテーマであります、5)の「政府の経済計画の位置づけは何か」という問題です。特に今問題になるのは、成長率の予測、これはかつてもみんな委員の間では、「そんな高い成長率は無理だ」という話もあったりはしているのですけれども、結局、今度は 1.9%というのが新長官になって大きな槍玉に上がったわけですけれども、その辺は。もちろん、民間のシンクタンクの作る、あるいは国際機関のOECDとかIMFがやるものとはちょっと違う、一国の政府として経済のあるべき姿をどうみていくかということに非常に政策的な問題があるわけですから、その辺の位置づけということは今ここで議論はする余裕はありませんけれども、5)に提示されている問題というのは非常に重要な問題だと思いますので--と言って、これがたびたび変わってしまっていいのかという問題もありますし--、スタート時点が、設定をどうするかということは非常に慎重な議論が必要ではないかということです。

 それから最後に、総理も、1、2年のうちに景気回復の軌道に乗せるのだ、こういうことを言われているわけですが、その場合、景気回復とはどういうことかということを基本的にもう一度よく検討する必要があるのではないか。例えば、潜在成長力が今いくらかという問題、あるいはGDPギャップがいくらあるか、これはそれぞれの見方によってかなり違うわけですけれども、かつてのように、例えば2ないし3%の成長率が日本にとって安定的成長率であるということで、それに乗せるということになると、私の考えでは、この1、2年の間にそれに乗せていくというのは非常に無理であって、むしろバブルの後遺症を全部きちっと処理していくということにウェイトがかからざるを得ないのではないかという感じはしておりますけれども、この辺の問題、「景気回復軌道に乗せる」という景気回復とはどういうことか、ということはやはり議論が必要ではないかと思います。

以上でございます。

〔 B委員 〕 現在の状況は、確かに大変危機的状況になっているのではないか、これは皆さん共通した感じだと思うのですが、これから申し上げることはそれぞれの方によって意見が違うと思うのですけれども、私は、日本の経済というのは非常に力強いというか、非常にしぶといものを持っているにもかかわらず、なぜここのところでこんな悪くなってきたかというと、基本的に政策の過ちが大きすぎるのではないかなと。

 これは別に私が科学的に分析したわけでも何でもないのですけれども、最近の金融の状況を見ておりますと、先ほど事務局が、金融システム不安がますます経済全体に与える影響が大きくなってきたとおっしゃいましたが、住専処理のころから今に至るまでずっとフォローしてみると、一体我々は何をやってきたのだろうか。

 それから、消費税を引き上げたのが急速に景気を悪くしたというのが一部のエコノミストあるいは予測屋さんのかなり有力な説になっている。これも確かだと思いますが、消費税についてみると前に減税していますから、それを取り戻すのだということで、これはある意味では政策当局としては当たり前の路線だったのかもしれませんが、それをやって、なぜその結果悪くなってしまったかというようなことについて、本当にみんなでもう一回きちんと整理してみる必要があるのではないか。

 今回の経済審議会企画部会がやることでフォローアップということが非常に重要だと私は思いまして、その中で従来のように「この数字とこの数字がこういう関係だから」という説明なら、今日ご提出いただいたような非常にきれいな作文ができ上がってくるのだろうと思うのですけれども、もう少し自分たちが、経済審議会を含めて、どういう政策判断をそのときはしたのだけれども、結局そういうふうにならなかった、ということをフォローアップでもうちょっと率直にやってみたらどうだろうか。

 決して、当時の政策担当者が悪いとか、そういう犯人探しではなくて、政策というのはどうもそういうものなのかなという気もするのです。つまり、世界の状況の変化に対する我々の認識のなさが逆に言うと、消費税引上げを「約束だ」といって平気でやってしまったとか、そういうことは人間ですからままあるわけですが、こういうことは二度しては本当はいけないわけでありまして、そういうことをきちんと整理するのが、実は今度のフォローアップの一番重要なポイントではないか。

 経済戦略会議の方でA委員が言っていましたが、経済戦略会議は経済戦略会議でやってもらったらいいと思いますが、ここでやることは一つ本当のフォローアップをやってみたらどうだろうかという気がするわけです。

 ビジョンの方は、いろいろな方がいろいろな事を言われていますし、そういうビジョンの問題というのは確かにフォローアップとつながる話でありますが、実はビジョンの中で一番大事なのは、世界経済のシステムはどうなるのかということだと思うのです。30何兆ドルという機関投資家のお金に対してIMFの資金があまりにも小さすぎる。せいぜい対応するのに100億ドルか 200億ドル、これでは勝負にも何にもならないわけでありまして、あれだけ非常にセンシティブな機関投資家のお金が動いているときに、今のままのIMFのあり方でいいのかどうか。そういう世界的な仕組みの方から我が国の経済の仕組みというのを、逆に投影してみるということが非常に重要なのではないか。

 我々の今のやり方は、世界貿易がどうなるかとか、その程度のことから日本の国内から世界をみるというやり方をやっていたわけですけれども、もう今やそうではないのではないかという気がするわけです。その中で一番重要なのは、世界のまさにそういう金融システム、あるいはもっと大げさに言えば、世界のブレトンウッズ体制のニューバージョンというようなのはどうなるのだろうか。それに対応するためには日本はどうなるのだろうか、こういう観点でフォローアップをされないと、またいつものフォローアップと同じで、書棚の横の方に置いておくフォローアップになってしまうという気がいたしますので。自分自身に言い聞かせているので、皆さんに言っているわけではないのですが、ぜひそういうことをやってみたいなぁと思うわけであります。

〔 部会長 〕 G委員、L委員がいらっしゃいました。ご紹介いたします。

 では、C委員、ご発言をどうぞ。

〔 C委員 〕 別に手を挙げたわけではないですが、せっかくご指名があったので言わせていただきます。

 今のご意見、僕も賛成です。今日たまたま日米首脳会談が終わって、日米摩擦の問題がここで出てきているわけですけれども、ここ数年間の日米摩擦をみていると、第1期クリントン政権の時代というのは、カンターさんを中心に、モノとサービスで攻めてきた。自動車包括協議とか、移動電話とかいろいろなことがあった。第2期クリントン政権になると、僕は、ルービンを中心に金融戦争を仕掛てきたという感じがするわけです。それが恐らくかなりアメリカとしては行き過ぎてしまって、それが自分の方に火の粉が降りかかってきた。ロシア、中南米まで波及してきてしまったということで、今ちょっと困って、そして日本を中心にもう一度金融再生ということを求めてきたという感じがするのです。

同時に、アメリカ側からみていると、つい最近までは、90年代ぐらいまでは、日本の官庁を中心とした政策運営というものにかなりの信頼を置いていて、そこを攻めていけば何となく立ち直っていくというふうに見えたのだけれども、ここ数年間の金融再生処理では、官庁が次々と失敗していく。それにより、官庁から政治主導型に移ったというのがここ2、3年の動きだったのだろうというふうに思うのです。しかし、アメリカから見ていると、その政治主導もどうもうまくいかないというのが、僕は、ここの日米首脳会談の結論だったのではないかな、と。

 そういう意味でいうと、アメリカがもっと個別的な介入を今強めてきている。それが存続可能な公的資金をもっと投入しろだとか、あるいは中南米、ロシア、そういったところにもっと協力しろとか、そういうことを言ってきている。しかし、この日米首脳会談の中身というのは、アメリカの国益を中心とした経済論議が中心なのではないかという感じがするのです。

 したがって、そういう中でアメリカをどうみるかということで、それにどう対応するかということを我々は考えることが必要なのですけれども、もう一つ大きな問題は、B委員がおっしゃられた、今、世界全体がかつてのモノとサービスを中心としたIMF、ブレトンウッズ体制というものから、マネー経済を中心とした金融取引を中心とした世界経済へと大きく動いている。そのバックグランド、インフラが情報化とグローバル化ということだろうと思うのですけれども、そのことがアジアとか、日本とか、ロシアとか、中南米を次々と壊してきている。

 それに対して、アメリカも相当、今気がつき始めてきているのだけれども、それを一体どういうシステムで今後運営していっていいのかというものが、まだよくみんなわかっていない。そういう意味で言うと、僕は、この10月に開かれるIMF総会というのは転換点になる重要な意味を持っていると思うのですけれども、21世紀になってきて、ロシアとか、中国とか、インドとか、恐らく世界の人口の半分以上を占める国々が自由主義社会のシステムの中に入ってくる。そういう国々を旧来型のモノとサービスを中心とした自由主義システムの中だけで、取り込んで生きていけるのかどうか、ということを実は問われているのではないのか。

 そういう中で、マレーシアとか香港などは個別に規制をやったりとか、アメリカも規制がないように見えるけれども、聞いてみると空売りなどについて慣行的な規制があったりいろいろしていますけれども、新しいそういうマネー経済のシステムというものをどう作るかということをきちっと考えていかないと、いくら個別に対応してもなかなか無理かなという感じがするのです。

 そういう意味で言うと、中長期的には、マネー経済と、それからモノとサービスの経済というものをどういうふうに考えるかということが1つすごく重要な問題かなというふうに思います。

 それから、2、3日前の新聞を見ると、日本の経済はサービスのウェイトの方がモノの経済を上回ってきたというふうに出ていますけれども、日本の官庁とか日本の企業の中には、モノを中心に経済をみるという思考方法が非常に強いわけです。雇用を増やしたり、あるいは新しく消費を増やすとか--ここにも「楽しむ経済」というふうに書いてあるけれども--、それをやるためにはサービスというもののウェイトを本当に肌身で、もうちょっと大きくみておかないと、本当の構造転換とか規制緩和とかいうことも、僕は進まないのではないかと思います。日本の社会ではどうも、士農工商ではないかもしれないけれども、まだサービスというものに対して低く見過ぎている。しかし、実態経済は非常に高くなってきている。そこら辺のシステム改革というものを、規制も含めてどうするのかということはすごく重要なのかなと思います。

 もう一つだけ加えると、こういうタイミングでなぜ年金の問題とか、こういう暗い話を出すのか僕はよくわからないのだけれども、日本はどうも介護の問題にしろ、年金の問題にしろ、お金ですべてを考えようとするわけです。つまり、負担がどうだとか、税金を投入するかとか。あるいは介護の問題にしても、国と自治体と企業と個人がいくら、例えば負担をするかという話ばかりするのだけれども、そういう中にもっとシステムを変えることによってお金の問題を解決するとか、そういう発想が僕はあってもいいのではないかという気がするのです。

 これは暴論かもしれないけれども、例えば、高校と大学といろいろなところで、介護の講座みたいなものをつくって、例えば老人介護などに行けば単位が取れるとか、そういうようなことをやっていることによって、お金がかからないで、例えばシステムを変えることによってお金の問題を解決するなんていうことはいくらでもできるわけです。

 本当は、構造改革というのはお金の問題とかそういうことではなくて、どうやって世の中が居心地のいい社会になるかというシステムに変えていく。そこのシステムを変えるに当たって、恐らく規制だとか、利害団体だとか、そういったことは必ずぶつかってくると思うけれども、その問題をあぶり出して、それをどうやって変えていけばシステムが変わるかというような視点を、僕は、取り入れていくということがすごく重要ではないかと思います。

〔 部会長 〕 今、B委員、C委員、A委員からお話があって、非常に重要な問題だと思うのですが、政策そのものが実はニュートラルなポジションでいいか悪いかというのは、正直言って、みんなそんなにおかしな人が作っていませんから程度問題だと思うのですが、タイミングの問題というのが非常にキーですね。

 今非常に重要なのは、マーケットの方は、皆さんがおっしゃっているように、まさにグローバル化とIT。いいか悪いかは別にして、かつてとは問題にならないスピードで動いている。問題は、ポリティカルプロセスの方は、それとは全く無関係のスピードで動いている。しかも、日本の場合には、残念ながら”ねじれ現象”であって、ここについては明白に参議院に行ったらどうなるかということはわかっている。ただ、そういうジレンマから一体どうやって抜け出るのかというのが、今、焦眉の急で、その辺は経済戦略会議でやっていただくのかもわからないですが。

 ただ実際は、先ほどおっしゃった住専問題から、この計画が始まったころはまさか--今真性デフレに入ったかどうかはどうは別にして--デフレの可能性なんていうことはあまり考えていなかったと思うのですが、実際には今もう入ったかもしれないとか、そういう状況に入ってきて、完全に将来に向かっての政策ポリシーが違ったものを考えなければいけないかもしれないというところに来ていて、その1つは、はっきり言ってポリティカルプロセスが長くかかりすぎる。拙速がいいときがあるとすれば、今こそ拙速がいいので、どうもそこは非常にジレンマだと思うのです。

 そこのポリティカルプロセスが、そう言ったって、そう急に変わるわけがない。そうすると、表現はおかしくて、先ほど日米のお話があったけれども、意図したかしないかは別にして、今、これのデッドホックに対して何か効果あるものとすれば、外部からのプレッシャーとか何とか、アメリカも含めて、いやいやしょうがなく「アメリカが言っているから、しょうがない」という形である種のコンプロマイズも出てこないと、本当にグリッドロックで動きようがないようなところへ来ていると思うのです。

 いずれにしろ、政策の問題は、おっしゃるように、過去に別のことをやっていたらどうなったのか、ほかにチョイスがあったのかということは、将来に向けてのインプリケーションということで大いに分析をしなければいけないと思いますが、その中で、今のようないわば真性デフレか、そういう状況の下でなおかつ2、3年前にやっていたポリシーそのものの、そういう意味でのレビューがどれだけ意味があるのかということもあわせて検討しなければいけないかなという気がいたします。 どうぞご自由にご意見をおっしゃっていただいて、フォローアップの中に生かして。経済戦略会議も、先ほど大臣からはっきり言っていただきましたけれども、必要があれば、経済戦略会議のメンバーは皆さんもご存じの方なので、その辺は自由に少し意見交換したり、どういう感じかということはこっちから向こうにインプットしても、逆があってもいいのではないかという気もしておりますけれども。

〔 D委員 〕 B委員がフォローアップとおっしゃられて、恐らく徹底的に重要だろうと思うのです。ただ、フォローアップというのは、少し手直ししてこれを生かすのではなくて、なぜこれまでこんなに実態と離れてしまったか。恐らく今議論になっている銀行で言えば、債務超過でこの計画は破綻処理をどうするかという話ではないかと思うのです。多少のビジネスの報酬を加えて、何とか残存期間をやるというのは、全く計画そのものが社会的な信用を失うということだと思います。

 なぜこんなに計画が実績と離れてしまったか。外的な要因がどうのこうのとありますが、外的な要因という面では、日本の経済パーフォーマンスはこの7、8年、欧米のどの国よりも悪いということです。この逆転現象をどうやって説明するのか。恐らくこの乖離は、外的な問題ではなくて、みんなホームメイドだと思うのです。

 どこがいけなかったか、そこの点検がしっかりしない限りは、恐らく計画をいくら作っても、これからまじめに計画を作っても、誰も信用しない。計画の機能ということを、先ほど局長もおっしゃいましたが、機能そのものが自動的に失われたら、誰も信用しない。したがって、参考にされない計画ということになると思うのです。

 日本だけがどうしてこれだけ悪いパーフォーマンスになったかというところを、客観的に点検し直すということがないと、このままいくら計画を積み重ねていても全く無駄、むしろますますそれによって計画に対する信頼が失われる。恐らくコンフィデンスクライシスが今起こっていると思うのです。

 その機能そのものの原点を考えますと、なぜ破綻したのかと、破綻を認めることです。日本の経済政策も政治も今動かないのは、今は危機であるという現状認識、戦争、エマージェンシーと言われてもぴんとこない、そういう実態認識があると思うのです。そこからは、将来の本当の経済危機意識等に根ざした政策も出てこないし、部会長がおっしゃられた政治のプロセスも動かない。政治はなぜ動かないか、危機が生まれないから。マーケットに一番遠い人たちがやっていることであって、実際に起こっている危機に対する現状の認識がない。

 我々も、この計画を議論するのであれば、今の計画はもう完全に死んでしまったのだという認識を持てるかどうか。そうしたら、これを延長して、多少手直しをしてビジョンを作るという発想でなくて、全く違うアプローチで我々は議論しなければいけないと思います。

 どうも現状は、21世紀を議論できるような状況になくて、だんだん21世紀が遠くなっているような感じがします。ですから、それに近づけるためには、今の足元までの本当の意味のフォローアップを、なぜこうなったかというところをまず押さえた上で、次の展開問題を議論していただきたいというふうに思います。

〔 E委員 〕 3年前にも係わっていた立場といたしまして、今のお話を聞きますと、自分の反省の意味を込めましていろいろ考えなければいけないなという感じがするわけですけれども、誰を責めるということではなくて、一言で言えば、事態の変化が想像よりも激しかったということに尽きるのではないかという思いがするわけであります。現行計画の中にも、先ほどの大臣のお話にもありましたけれども、構造改革路線などというのは踏襲していい話でもあるわけですから、すべて白紙というのはちょっとオーバーだとは思うのですけれども、とにかく、3年前に想定をした事態よりもはるかに事態の進展が早くて、それについていけなかったという点は率直に認めて、非は非として認めた上に立って具体的なフォローアップをしていくというスタンスで、その結果、フォローアップをした後に、この計画はベースになっている事態認識が全然変わってきているのだから、むしろ新しい計画の作成に取り組めというようなフォローアップの結論になっても、これはやむを得ないのではないかという感じがいたしますし、むしろそうあるべきかもしれないという感じがするわけであります。

 そういう中で、今日ご指摘になりましたいくつかの問題点で、経済戦略会議との重複の問題も含めて、あえて2、3を私、指摘をさせていただきますと、当面及び中長期の観点で大変重要なのは、雇用対策の関係。それとの関連における新しい産業づくりをどうやっていくのか。新しい産業というのは、別にモノづくり産業ということではないわけでありまして、情報産業も含めたソフトな産業分野というのも係わってくるわけですが、そういう雇用機会はどういう形で創造していくのか。それについて、これは従来からもいろいろな角度で言われて、それぞれの省が具体的に担当してきているわけですけれども、どうもひとつピリッとした前進というのが見られていないというのが正直な実態ではないかと思うわけであります。

 これは高度成長時代の20年前ぐらいのことをちょっと思い起こしてみますと、例えば、通産省が工業再配置というような形で新しい産業をどこにつくるべきだということを言えば、それに連動する格好で建設省がそれに関連した道路整備をやり、運輸省がそれに関連した港湾整備をやるというような形で、全体として整合性のとれた政策が遂行されたという事実があるわけですけれども、その後の新産業の創設の分野について、そういう過去にとられたような機動的な整合性のある政策というのが全政府的にとられているのかどうかということについて、もう一回反省もしながら、新しい雇用機会なり産業創出についてのスキームを、やはりこの経済審議会の場で一回でフォローアップをしていただくのは大変重要ではないかという感じがいたします。

 そういう中で、最近の時流に乗った言い方をするわけではないのですけれども、NPOの果たす役割というのが大変大きいのではないか。アメリカでも 1,000万を超える雇用機会を作っているという形になっているわけですけれども、まだ日本ではそれほど社会的な認知も必ずしも得ていないというような分野でもあるわけです。この辺を経済審議会あたりで、もうちょっと社会的認知を受けるような格好にしていただいて、それに対してある種の政策支援をするということも考慮していいのではないかという感じがするわけであります。

 それから、新雇用機会、新産業分野の創出との関連で、やはり避けて通れないのは、少し長いレンジにはなるのですけれども、「経済戦略会議主要テーマ」の中にも書いてございますけれども、創造的な人材を輩出するための教育環境の整備にどういう形で取り組んでいくかというのも大変重要テーマではないかと思います。

 それから、労働者の流動化を促進する施策の一環として、最近よく言われてますエンプロイヤビリティ、他に転職するにしてもそこで使える職業能力をつけるということについての政策もより強化をしていく必要があるのではないかということで、私は、特に新雇用機会、新産業創出という点を強調したいと思います。

 もう一点は、これも経済戦略会議とダブっているのかもしれないですけれども、住宅環境の整備、それに関連した住宅産業の充実。それに関連したいろいろなインフラの制度的なバックアップシステムということについても、これは短期的な視点というよりも中長期的視点を踏まえた具体的な展望を出していただく必要があるのではないかと思います。

 以上でございます。

〔 F委員 〕 私も、今まで既に多くの委員がおっしゃったように、将来展望のためには、まず足元の評価というのが非常に重要であるかと思います。90年代平均して今までの1%成長、足元ではもうゼロパーセント成長、マイナス成長ですけれども、何がその原因であったか、需要面の制約だけだったのか供給面の制約が大きいのか、それから先ほどもご指摘がありましたように、景気回復とは何かの定義であって、中長期的な回復軌道というのは何パーセントを考えるのか。そもそも「何パーセント」という発想がおかしいのであって、景気対策というのはむしろデフレスパイラルを防止することであって、それさえ防止すればあとはもういい、という考え方すらあるかと思います。これは当面の問題で、これだけ生産が落ちてくると必ず雇用に響き、雇用に響けばまた消費に響くわけで、もうデフレスパイラルがあるかないかという議論よりは、それに対してどう対処するかということを考えなければいけない時期であろうかと思います。

 そのときに、2番目の、将来の経済社会をどう考えるかということですが、どこまでを将来と考えるかということが大事であって、少子化の問題もそうですし、あと外人労働者の問題というのは、むしろ2005年以降の問題であって、それまではより需要の面が重要であるという意味で、需要不足から供給不足への転換というのがこの次の計画の大きなポイントではないかと思います。ですから、きちっとターゲットになる時点、例えば2005年までとそれ以降というのを、前回もやったとおりですけれども、きちっと分けて議論しないと、極めて混乱が起きてくると思います。

 4番目の、基本理念というところですが、これは部会長代理が繰り返して言っておられますように、「もうお説教は結構です、作文も結構です」ということで、具体的な制度改革へのコメントがなければいけない。例えば、「透明で公正な社会」というようなことが打ち出されているのですが、それは具体的にどういう意味なのか、例えば、今、労働市場の改革、農業基本法、教育・年金改革という非常に重要な改革が他省庁で行われているわけですが、その議論が極めて混乱している。この「透明で公正な社会」という基準に照らして言えば具体的にどういう改革がどうなのかというところまで、本当は踏み込んで議論しなければいけないかと思います。

 それから、経済審議会の役割というのは、数量的なベースがあるということです。例えば今、新聞等では年金審議会でどうも「給付を1割カットする、保険料は場合によっては凍結する」というようなことが議論されているのですが、そういうことで本当に年金の安定性が保たれるのかという数量的な議論は残念ながら厚生省では全くされていない。少なくとも、されていても、外には出てこない。そういうときに、経済審議会でマクロモデルを持っているわけですから、その程度のカットではとても安定できないということをはっきり言うべきです。できることとできないことがゴッチャになって議論されているわけです、年金でも、ほかの審議会でも。ですから、何が可能で何が可能でないかという数量的な位置づけをきちっと示すというのがこの審議会の大きな役割ではないかと思います。

 それから、先ほどからほかの方も言っておられますように、過去の政策を変えたらどうだったか。これはヒストトリカルシミュレーションと言われるやり方で、例えば1990年時点で財政政策を変えていたら現在はどうなっていただろうかというようなやり方で、これはあまりやられていませんが、実はこういうフォローアップには極めて重要な手法であって、単に将来の政策を変えることによって将来の経済成長がどうなるかというより、既に実現した成長率が過去の時点でどう変えていたらどうなるかということは、技術的にはできるはずであります。

 そのときに大事なのは、できる限り変数を内生化することであって、例えば、東アジアの危機というのを外生変数で考えるのか、あるいは、あれ自身が日本の円安によってかなり影響を受けた面もあるのではないかと、そういう国際的にもできる限り内生的な変数を入れることによって考えるということが大事かと思います。

 それから、E委員がおっしゃったように、雇用対策というのは非常に重要ですけれども、ただ、そのときに雇用機会の創造というのは何を想定して考えているのか。これまでのように、新産業を育成して正規社員の雇用を確保することが雇用対策なのか、それとも今後の低成長ではもう企業は到底終身雇用の正社員は増やせないわけで、増えるのは専ら非正規社員であるとすれば、それなりの対策が必要である。そこはもう真っ向から今考え方が分かれていることで、今の通説は、非正規社員の雇用を拡大するような派遣法とか職業紹介の拡大というのは、望ましくない働き方を増やして、むしろ正規社員を代替するというネガティブな雇用政策というふうに受け取られている面もあるわけで、その点をきちっと、本当にそれが正しいかどうか、何が望ましい働き方かということを政府が勝手に決めていいのかどうか、そういう面も含めて考える必要があるかと思います。

 新たな政策を考えることも重要ですが、むしろ邪魔な政策がいっぱいあるわけで、それをいかに整理していくかという規制改革、規制緩和の考え方というのが、残念ながら不況によってずいぶん後退しているかと思いますので、今、規制緩和委員会でもその点はやっているのですが、非常に関心が低い。ぜひ経済審議会では規制緩和委員会等々と連合を組んで、そういう規制改革のあり方というものをきちっと数量的に把握するような形の議論をする必要があるのではないかというふうに思っています。

 以上でございます。

〔 G委員 〕 私も、何人かの委員の方が発言されたのと大分オーバーラップするかもしれませんが、まず第1に、足元で計画とずいぶんズレてしまった。この理由は、私は、需要不足ということに尽きると思います。ただ、それならば需要を増やせばいいではないかと、車で言えばアクセルをただ踏むだけの話だというほど簡単ではないというところに大きな問題があると思うのです。

 それは、この委員会でも既にキーワードとなっている「構造改革」というようなものと非常に密接に関係していると思うわけです。つまり、経済成長というのは、ごく簡単に言えば、我々の生活を変えるということに尽きるわけで、それは必ずしも数量だけではない。リンゴの数を1から2に増やすというのとは実際には大分違うわけであります。

 E委員が言われたことと非常に関係するかもしれませんが、例えば、高度成長期でも、成長というのは何も数量をただ増やしているだけではなくて、例えば、エネルギー源ということでも、ご承知のとおり、石炭から石油へ転換するというようなことを日本はやったわけです。それがもちろん結果として需要も増やして高度成長に結び付いた。そうした具体的な構造改革ということがなければ、経済というのは成長するものではないというふうに私は考えます。

 そういうことからすると、我々のニーズは何か、現在の日本にとって非常に大きなニーズは何かと言えば、これまた既にいろいろな報告でもうたわれているし、何人かの委員が既に挙げられた住宅、あるいは今後医療システムというところが大きな目玉になるかと思います。実は20年来、あるいは20年以上にわたって、住宅とか、都市環境とか、そういうようなことが言われてきたと思うのですが、税制面でも、その他ずっとこうしたことが放置されてきたというところに、現在日本の問題があるのではないかと私は考えます。

 ですから、言ってみれば、今の日本の問題というのは、「石炭ではだめだ、どうもこれはいろいろな意味で問題がある、石油に負けるであろう」ということははっきりしても、明確に石油に乗り換えるようなインフラも整えない。石油に変えるといっても、港湾設備もいるだろうし、タンカーもつくらなければいけない、いろいろなその他のインフラを整えなければいけないということがあると思うのですが、都市環境とか住宅というのは、言ってみれば個人の範囲を越えたいろいろな大きなも問題があるわけで、そこを何とかしなければ到底需要というものも出てこないというふうに考えるわけです。

 ですから、例え話的に言えば、私は、今の問題は、だめなところはいろいろなところが目についてきて、いわば石炭はだめだ、しかし、石油の方に変わるべきかなという漠然とした掛け声はありつつも、具体的に石油に変えるというような手当てが全くできていない。

 ついでながら、財政の方も、とりわけ支出の方は、これもE委員が言われましたけれども、本来は民間の投資をクラウドインするようなものがなされるべきであるわけですけれども、実際には、クラウドインどころか、ほとんど不透明なトンスファーになっているというあたりが非常に大きな問題ではないかというふうに考えます。

〔 部会長 〕 例えば、住宅、住環境を含めて具体的なところへ、しかも、ずいぶん長いこと意識されていながら進んでいない。それを進むように焦点を定めてやるためには、何がされなければいけないとお考えですか。

〔 G委員 〕 それはいろいろなことがあると思いますけれども、例えば、素人的に思いつけば、コミュターというのですか、例えば、電車のようなものを複線にするとかいろいろなことが出てくるでしょう。つまり、コストダウンを図るということです、住宅で言えば。

〔 部会長 〕 G委員がおっしゃったのは、そういう意味で、さらに今のような具体的な策が提示されていないから、一般にはわからない。

〔 G委員 〕 税制も非常に大きいと思います。

〔 部会長 〕 税制も、いろいろな案が提示されてきて、そっちの方へ動かないのは、何も案がないわけではありませんね。ずいぶんいろいろなことを今でも言われているわけだけれども。

〔 G委員 〕 住宅に関しては、減税をするというのも結構だと思いますけれども、そういうことだけではなくて、例えば、農地に係わる税制とか、相続税からはじまって、その他諸々の非常に大きなことがあると思います。

 あるいは都市の環境でも、商店街をどうするかというような話になりますと、大店法の話もいろいろあるでしょうし、あるいはここでも税制のいろいろな問題がある。そういうことを念頭に置いて発言しました。

〔 H委員 〕 諸先生方が大変立派な話をされましたのに、私も若干ダブルところがあるのですが、私は、実際に経営にタッチしております一私企業の者だということでご認識を賜りたいというふうに思っております。今、我々経営者にとって最大の問題は、先がなかなか見えないということでございまして、政府の実際の方針とか、あるいは将来見通しというのが、確かに計画は狂っているのだけれども、それについてのフォローアップとか何かをやっても、具体的にそれではどういうような制限項目があってできなかったのかという、その制限項目のところをはっきりしてもらわないといけないわけです。

 我々今、ボーダーレスエコノミーの中でやっておりますので、世界一高い人件費と税制と、それからインフラのコストを抱えた中で、しかも成長が止まると、企業は必然的に収益が上がらないという状態になっているわけですから、今の段階で企業が収益を上げてゴーイングコンサーンの企業をやろうと思えば、現在時点での大幅なリストラをやらなければいけない。これは各社いっぱい発表されていますけれども、大幅なリストラをやらなければいけない。それには人の問題についても、日本だけがリストラがなかなかできない国だと世界的に言われているわけです。

 先日、私は、スリーエムのトップと話をしたのです。世界各国で努力をやるけれども、日本だけは、要するにリストラができない。それは人の問題があって、なかなか首も切れない。そうすると、そういう人を抱えて日本経済がコストが高い中でやっていかなければいけない、というような条件の制限項目の中で、今我々は悩んでいるわけです。

 したがいまして、経済審議会というのは、私の気持ちとしては、いろいろあろうかと思いますけれども、やはり中長期的なビジョンを明確に出してほしい。もちろん、それについては砂上楼閣をやるのはいけませんから、何らかの論理的な一貫性はありますけれども、あまりそれにとらわれるよりも、むしろそれのための問題点と制限項目を出して、各省庁に明確にその指示をしていただきたい。

 それをすべきところがないというところに問題があるのではないかと思いますので、私は、今日の資料は大変立派ですし、事務局の方が、要するに大変精緻して作られているというふうに思いますので、こういうものがベースで結構でございますけれども、このスケジュールを見ますと、「主要テーマの検討」と「フォローアップ報告」ということで終わってしまうわけですけれども、次のテーマと、それから次の数字はいつ出るのか、大雑把な形でもいいからそれを早く出して、それの制限項目を明確にすべきではないか。

 先ほど大臣が、経済戦略会議の方は短期指向で、これは長期でとおっしゃいましたけれども、短期と長期は相容れないものではないので、絶えず私どもは経済戦略会議のメンバーとも対話しつつ中長期問題を考えるべきではないかと思うのです。向こうでも、恐らく中谷先生とかが中心になっていろいろなことを言われると思いますけれども、我々としても、早くビジョンというものを出すべきではないか。そのビジョンの見直しをやるべきではないかというふうに思います。これは経営者の1人としてあえて言いたいのです。私ども実際に経営に携わっている者の、要するにこれは願望でございます。

 以上でございます。

〔 I委員 〕 この検討項目に関連したレジュメの中でもちょっと触れられているわけでありますが、これまで経済審議会を中心としていろいろなことがまとめられてきた、政府の経済計画に対する国民の信頼性を回復するということが--これでは「予測」ということが書いてありますが、予測についての信頼性を回復しようということですが--、日本は、自由主義経済といいますか、市場経済の国ですから、経済計画といってもおよそ、かつての社会主義体制での経済計画とは全く違うはずでありますし、そういう意味でいうと、もともと経済計画という言葉がいいかどうかという問題も含めて、果たしてその中で言われているようないろいろな、特に数量的なことがなかなか当たらない性格が基本的にあるのではないか。

市場というのは、大変コントロールが難しいというところが特徴だし、特にこのグローバル化した中では制御が難しい。中でも、金融の分野というのは、先ほどご指摘があったとおり大変難しい問題を持っていますから、果たして経済計画というものをどういうふうに考えるかというのが根っこにあって、それぞれいろいろな思いがあって、その中で政府の予測に対する信頼性をどう考えるかということがあるのだろうと思います。

 現実的に考えれば、経済は市場によって動いているわけでありますから、経済計画といってもなかなか本当に中央統制的なものができるわけがないわけでありますから、そこのところは政策中心に考えていくしかないだろうと思います。 そういう面で言いますと、例えば、住宅問題などを考えます場合に、これから住宅を手に入れようという人たちは、これだけ地価が不安定で下降傾向にありますと、これから土地を買って家を建ててという気にならないのだろうと思うわけです。今はそういう状態です。それから、かつては、ともかく地価の右肩上がりを前提にしていろいろな投資も行われ、また金融の面で言えば過剰な融資が行われたということがある。そうすると、ここずっと一貫して、日本の場合には、土地政策というのでしょうか、土地、特に地価の制御システムをどうするかというところが決定的にまずかったのではないか、そういう考え方があまりなかったのかもしれませんが。これから、これまでやってきたようなことではなくて、土地政策、特に地価をどう考えるか、どういうふうに制御していくかということを考えなければいけないし、経済計画というものをもし考えるとすればそういう点が非常に重要ではないかという気がいたしました。

〔 部会長 〕 先ほど、H委員からビジョンという話があったのですが、ついこの間まで何人かの委員とご一緒しました展望部会というのがありまして、ほやほやのビジョン、展望があるのですが、新内閣になってから、僕も全部を聞いているわけてはありませんが、国会の中で現行の展望が議論されているとはひとつも聞いたことがありません。今おっしゃったように、そもそも経済計画とかビジョンなんかを作ることの意味が、逆に、本当にあるのかどうかと。

 実は今度の展望も含めて、すばらしいビジョンがたくさんあるのですけれども、できてしまうと、どこかに行ってしまって、誰も取り上げてもくれない。自民党の先生も、ほとんど知らないのではないかと思うのです。

 ですから、そういうものを作ることの意味というのが果たしてどれだけあるのかということも、まさにH委員もおっしゃったようなことで。

 本当は、ここ2、3年のものだけを持ってきただけで、奥田さんが「経済戦略会議でやることは、みんな本に書いてあるじゃないか」とおっしゃったそうですけれども、最近の経済審議会で出たものを数冊読んで、きちんとまとめるだけでも、実はやるべきことというのはみんな書いてあるのではないかという気がするのだけれども。しかし、それは一般の国民はもちろんそうですけれども、為政者という方たちもほとんど無関心なのではないかという気がしています。

 これはPR上の問題なのか、おっしゃったように、そもそもこういうものを作ることに実際に意味があるのか、と。

〔 J委員 〕 私、今日は承る役に徹したいと思っていたのですけれども。まさにその問題で、私などは古い官僚ですけれども、最近の各省各庁はこういう問題についてどういう目で見ているのでしょうか。要するに、「経済審議会でやらせておけばいいんだ」ということなのか。それとも、自分たちの省庁に関係のあるものについては本当に関心をもって我々の議論を受け止めて、やれるもの、もれないものということを議論してくれているのか。

 例えば、ごく一部で申しますと、住宅問題の重要性というのは前の内閣のときにも話が出て、「21世紀を切り開くための緊急経済政策」というのがございました、あれなどはずいぶん細かいことまで触れているのです。ああいうものは一体その後どうなっているのだろうか。ただ、できただけでもって、本当に細かい点に関係省庁は取り組んでくれているのかどうか。取り組んだ結果、うまくいかないのなら、どこがうまくいかないのかということは、どこかにはね返って出てこなければいけないわけです。

 当然のことながら、行政府並びに官僚は、その限界を心得て仕事をしていかなければいけないけれども、膨大な1つの組織、あるいは政策集団としても機能しうるような各省庁が、経済審議会の議論なり、その結果なりに対して、自分たちと関係のある問題だと思ってくれているのかどうかというところが、私は、どうも心配でしょうがないのです。こんなことを申し上げてもあまり意味ないですけれども。

〔 A委員 〕 私もずっとやってきた一員として、部会長と同じように。だから、私は、各大臣は就任したら、少なくとも自分の所轄官庁の出している数年間の報告書はみんな読め。同時に、経済審議会のは全部読むべきだ。特に経済企画庁長官には、全部本当に読んでレクチャーしているのか、ということを事務局の方にも言ったのですけれども。

 というのは、僕の場合は、経済主体役割部会--ここに要約がありますが--、あるいはその前に96年12月に出した行動計画委員会でもあらゆることを取り上げて、今日の委員の中にもいらっしゃいますけれども、先ほどの奥田さんの話ではないけれども。これは各委員会あるいは政府としても本当にPRといいますか、国民によくわかる言葉でやっていくということが非常に必要だと思いますけれども、また内閣が変わると全部捨てて、新しいことをすぐやりだすという無駄な労力を、我々としても、いつまでもやってられないよ、という気持ちが実際問題としてありますので、その辺はこれからかなり厳密に、コストダウンということもありますし、やっていく必要があるのではないかと思います。

〔 政務次官 〕 実は、善きにつけ悪しきにつけ、かつての日本は日本の世界戦略というか国家戦略があったような気がするのです--私、よくわかりませんけれども、モノを読むだけですが--。今の日本の置かれている現状で、そういった日本の国会の戦略みたいなのがあるのかなぁと思ったときに、どうも縦割りでそれぞれのセクションでそれなりのビジョンをこしらえたり、あるいは整理をしたりしているのでしょうけれども、そのトータルの日本の国として世界の経済とか世界の安全保障とか、そういう世界戦略みたいなものが全くないのではないか。もしないとして、ばらばらにやったら日本の国は将来えらいことになるのかなぁという危惧を抱いている1人なのですが、その辺のところをお教えいただければと思うのです。

〔 部会長 〕 これからおもしろくなりそうなのですが、ちょうど時間がきました。どなたか特にございましたら伺いますが。

 今のようなことはあるのですが、皆さんがおっしゃったように、そういうことも踏まえてフォローアップのところで、なぜこうなったのか、過去のアクションを振り返って別のオプションがあったかどうか、それをやったらどうかということなども少しきちんと固めて。ただ、これは非常に難しいところですけれども、この前の展望部会というか、経済審議会の中でも、多くの人が持っている現況における不透明感、それは政治に対する不振とか、トータルなシステムに対する不安感とかいろいろ含めて、それを何とかしなければいけないというお話がありました。これは具体的にどうやったら。これは経済審議会そのものの対象なのかどうかは私もよくわかりませんが。

 それから、あそこでかなり議論されていたのは、いろいろあるのだけれども、まず不良債権問題をきちんとやって、そこから金融システムの問題について、とにかくめどをつけなければいけないと言っていたのに、今は「めどがついた」と言うべきなのか、しかし、進み方は非常に遅々としている。

 アメリカのときもそうですし、日本のこの前の、戦前のデフレのときなども、みんなやっていることはかなりはっきりしていて、非常にスピーディに必要な金を注ぎ込んで、しかも、それは公的資金もそうだし、それが非常に重要な大きな決め手になっていて、S&Lのときだって、あれでも遅すぎたという議論があるわけですけれども、いい意味で言えば日本は非常に民主主義を大切にしてプロセスを大切にしているので、むしろ、そういうことより、プロセスがはっきりしないと、と言っているうちにどんどん事態は悪くなっている、そういう状況にあると思うのです。

 先ほどG委員が出された問題も、そういう具体的ないい案が起きているのに、正直に言えば、具体的な案に対してイエスと言う人もいれば、それでは困るという人がいます。しかし、それを動かしていくのはかなり政治プロセスと、もう一つは、合理的にそれがいいのだと多くの人に思わせるマーケティングがちょっと足らないのか。ここは経済審議会としても少し知恵を働かしてもうちょっと、いやだいやだと言う人は別にして、いいよいいよと言う人を増やす何か手はないか。この辺は、これからの回数が少ないですけれども、そういう皆さんのご指摘の問題に答えられるようないろいろな資料や材料をひとつ事務局の方に頑張っていただいて、次の議論のときには少し具体的なところに突っ込んだ問題について皆さんからご意見が伺えるようにぜひしていきたいと思いますので、次の「10月の下旬」というのは日にちは具体的に決めますが、それまでの間にさらに皆さんからお気づきの点は、私にでも、あるいは事務局でも、どんどんお寄せいただきますようにひとつお願いしたいと思います。

 まじめな話、A委員のお話ではありませんが、これは政府との関係ではなくて、日本として、本当にこんなことを何べんもやっていたら全く生産性が悪いというか、非能率というか。そうなると、「日本というのは、本当に悪くならなければわからないのか」と。みんなそう言っていると思うのですけれども、しかし、そこまで行く前に何とかしたいと思いますので、ぜひお忙しいところを大変恐縮ですがご協力をお願いしたいと思います。

〔 K委員 〕 来月の終わりぐらいまでに事務当局にお願いしたいことなのですけれども、我々の作業をやるに際しては、国際経済がどういうふうにこれから数年間展開するかという一応のめどといいますか、想定を取りまとめていただくことは非常に有意義かと思うのです。

 東南アジアの問題から始まりまして、私個人の見解から言えば、中国も、例えば本年になって8%の成長ということは非常に苦しい状態になると思います。それから、ロシア、ブラジル、ベネズエラ等々を見ていきますと、一番最後に行き着くのはアメリカでありまして、これは全く私個人の考え方でありますが、アメリカ経済の成長の終わりの始まりが最近起こっている、そんな認識でいるわけです。

 その辺を、およそどう見るかということなしには日本自身の政策が練れないと思いますので、ひとつご苦労ですけれども、そういう作業をお願いしたいと思います。

〔 部会長 〕 ちょっと時間が過ぎつつありますけれども、スケジュールについて、事務局から特に何かございますか。

〔 事務局 〕 ただいま部会長からお話がありましたように、次回は、10月の下旬を予定いたしております。日程を早急に決めましてお伝えしますので、よろしくお願いいたします。

〔 部会長 〕 それでは、第1回の企画部会はこれで終わらせていただきます。なお、この後、記者レクで今日の経過をお伝えすることにしております。本日はありがとうございました。

-以上-