経済審議会経済主体役割部会(第11回)議事録

時:平成10年6月9日

所:経済企画庁特別会議室(436号室)

経済企画庁


経済審議会経済主体役割部会(第11回)議事次第

日時

平成10年6月9日(火) 14:00~16:00

場所

経済企画庁特別会議室(436号室)

  1. 開会
  2. 経済主体役割部会報告書(案)について
  3. 経済審議会経済社会展望部会・経済主体役割部会合同報告書(案)について
  4. その他
  5. 閉会

(配付資料)

  1. 資料1  経済主体役割部会委員名簿
  2. 資料2  経済主体役割部会報告書(案)
  3. 資料3  経済審議会経済社会展望部会・経済主体役割部会合同報告書(案)
  4. 参考資料 経済社会展望部会報告書(案)

経済審議会経済主体役割部会委員名簿

部会長   水口 弘一 (株)野村総合研究所顧問

部会長代理 金井  務 (株)日立製作所取締役社長

      荒木  襄 (社)日本損害保険協会専務理事

      潮田 道夫  毎日新聞経済部副部長

      浦田 秀次郎  早稲田大学社会科学部教授

      奥野 正寛  東京大学大学院経済学研究科教授

      川勝 平太  国際日本文化研究センター教授

      河村 幹夫  多摩大学経営情報学部教授

      神田 秀樹  東京大学大学院法学研究科教授

      公文 俊平  国際大学グローバルコミュニケーションセンター所長

      ポール・シェアード  ベアリング投信株式会社ストラテジスト

      末松 謙 一  (株)さくら銀行相談役

      竹内 佐和子  東京大学大学院工学系研究科助教授

      鶴田 卓彦  (株)日本経済新聞社代表取締役社長

      得本 輝人  日本労働組合総連合会副会長

      豊島  格  日本貿易振興会理事長

      那須  翔  東京電力(株)取締役会長

      西村 清彦  東京大学大学院経済学研究科教授

      樋口 美雄  慶応義塾大学商学部教授

      グレン・S・フクシマ  在日米国商工会議所(ACCJ)会頭

      星野 進保  総合研究開発機構理事長

      星野 昌子  日本国際ボランティアセンター特別顧問

      本間 正明  大阪大学経済学部長

      森地  茂  東京大学大学院工学系研究科教授

      諸井  虔  秩父小野田(株)取締役相談役

      山内 弘隆  一橋大学商学部教授

      山口 光秀  東京証券取引所理事長

      吉野 直行  慶応義塾大学経済学部教授

      米倉 誠一郎  一橋大学イノベーション研究センター教授

      和田 正江  主婦連合会副会長


〔 部会長 〕ただいまから、第11回の経済主体役割部会を開催させていただきます。

委員の皆様方には、ご多用中のところをお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。さて、本日の議題は2つでございます。

第1は「経済主体役割部会報告書(案)について」でございます。第2は「経済審議会経済社会展望部会・経済主体役割部会合同報告書(案)について」でございます。

まず第1の議題、「経済主体役割部会報告書(案)について」でございますが、前回、第10回の部会におきまして、報告書の素案ついてご審議をいただき、貴重なご意見を数多く頂戴いたしました。本日お手元に配布しております資料2は、これらの意見を踏まえ、事務局で取りまとめていただきました報告書案でございます。事務局より、報告書案の概要につきまして、素案からの変更点を中心に説明をお願いいたします。

〔 事務局 〕 それでは、資料2をお開きいただきたいと思います。

前回、第10回の本部会でのご審議、その後、各委員からいただきましたご意見、それと正確を期すために、各省庁にも一度見ていただきまして、その上で若干不正確な記述等につきましても訂正をしたところを取りまとめたものでございます。そのところを中心にご説明を申し上げます。訂正箇所はアンダーラインを引いております。

最初に6ページをお開きいただきたいと思います。

個人のところで、前回、「教育を含めた」と書いてありましたが、教育システムあるいは教育制度、それの再構築ではないか、という本部会でのご意見がありましたので、そのとおり直させていただいております。

政府のところで、政府の役割はきちっと書いた方がいいだろうという指摘がございまして、「民間部門がその活力を最大限に発揮できるよう、経済の体質を改善・強化し、競争を促進し、弱者の保護にも配慮しつつ自己責任の原則を貫徹する条件を整えるなど、発展のための基盤を整備していく。」ということで、3行を加えました。ほかの下線のところは、それに伴う変更でございます。 次に、第3章の「システムを再構築するために何をなすべきか」ですが、10ページに線を引いてありますのは、民民規制を定義したところが1点でございます。

下にありますのは、正確を期するために、「行政指導の撤廃等」適切な対応を求めるということで、言葉を補ったところでございます。

11ページ、「消費者契約法(仮称)」のところにつきましても、正確な言いぶりとして言葉を若干補わせていただきました。

その下にあります業界団体の機能のところですが、「競争制限的な手段によらないこととするほか」として記述に正確を期したところでございます。

12ページ、四角囲みの下のところ、前回は「不確定性」と書いてありましたが、正確な表現ではないということで、「不確実性」と訂正させていただきました。

3)のところで、情報開示がタイムリーになされる必要があるというご指摘が前回ありまして、それを入れてございます。

4)のところで、IR活動に正確な名前と説明を入れておきました。

13ページ、5行目の「証券取引法により」というのは、正確を期したところでございます。 一番下のところで、司法制度、全体の問題も含めてこの改革が必要であろうと前回の部会でご指摘を受けました。そこで、どこに説明を加えるのがいいかと考えまして、ここに5行を加えてございます。「以上述べてきたことに加えて、規制緩和・撤廃の推進やルールの整備が実効を上げて、市場機能が十分に発揮されるようにするためには、司法インフラの充実強化が不可欠である。具体的には、経済実務に通暁した者を含めた法曹関係者の充実、司法手続に係る時間的・金銭的コストの低減、国民の司法システムへのアクセスの改善等、司法制度改革への取り組みが必要である。」と記載させていただきました。

コーポレートガバナンスのところですが、16ページ、いわゆるメインバンクに対する監督機関の問題でございます。これは表現に正確を期すために、前回は、メインバンク自身のコーポレートガバナンスについて主として金融当局が役割を担っていたと書いたものを、もう少し正確な表現にさせていただきました。「メインバンク自身のコーポレートガバナンスを正常なものに保つことについては、金融当局も大きな役割を担っていた」。その下は、裁量的な行政指導とありましたが、「裁量的な」というのは余計だということで、行政指導自身、それだけで裁量的とわかるということで、言葉の重複を避けました。それから、前回は「経営体質」と書いておりましたところを「経営の健全性」という言葉で正確を期しました。それから、「考えられる」あるいは「ではなかろうか」というのは、第1、第2の文章の書きぶりと合わせたものでございます。

17ページ、アンダーラインを引いたところは、前回は株主総会と取締役会との間で間接民主的な案も検討に値するだろうという表現でありましたが、その後、若干ご意見がありまして、今議論されている提案をいくつかきちっと併記をしておいた方がよかろうということで、3案を併記して、それが検討に値するという形で、説明の記述を直させていただいております。「例えば、株主総会で選任される監査役会が経営の妥当性についても一定の範囲で取締役会を監視する役割を担うこととする制度、取締役会のなかに監視委員会と執行役員会を明確に分離して設置し前者が後者を監視するという制度、あるいはその二者の中から選択することができるような制度などが検討に値すると考えられる。」ということで記述を改めました。

その下の「上述したように、監視」というのは、今の記述の訂正に伴うものでございます。 18ページですが、前回、雇用システムとコーポレートガバナンスについては、企業に対する記述等からすると非常にバランスを失しているのではないかというご指摘がございました。そこで、これまでの議論をもう一度整理をして、その論点を事務局で考え直したのでありますが、雇用システムとコーポレートガバナンスにつきましては、今の日本の雇用システムの、言ってみれば流動化というものがコーポレートガバナンスの強化に役に立つという意見、それから、これまでの雇用慣行システムを維持することがコーポレートガバナンスにとってはかえって安定的な要因になるのではないか、という2つの意見がありました。どちらにもそれぞれの意見があって、それを1つとして記述することは、これまでの議論を整理するとそこまでのコンセンサスを得られないということで、むしろコーポレートガバナンスと雇用システムとの関係については明確なコンセンサスがこの部会では得られなかったのではないか。そうすると、それをここに記載することは少し無理があるのではないか。これまでの議論の中で、大方の意見のコンセンサスがあったのは、雇用の流動化が進む中で、企業自身の効率性が高められる、その高められることがむしろ外部からより優れた人材を招く。逆に、外部からより優れた人材を招くようにコーポレートガバナンスをさらにいいものにするという好循環、そういったことが雇用慣行とコーポレートガバナンスとの間では見られるのではないか。これについてはコンサセンサスがあるということで、その点を記すということで、アンダーラインの4行「さらに」以下を記したところでございます。「さらに、労働市場の流動化が進む中で、企業外部から適材適所に人材を確保していくためには、企業の魅力を高め、アッピールしていくことが一層重要になる。こうした努力が、企業経営の効率性を向上させることにつながっていくものと考える。」という記述をしたところでございます。

19ページは、いずれも内容がわかりやすいように注釈を入れたところでございます。 20ページの線を引いてあるところは、銀行に関する株主帳簿閲覧権というものは銀行法で今は否認されておりますが、その否認を緩和したらどうだ。ただし、その緩和に当たっては留意すべき事項があるのではないかというご指摘がありまして、「なお」以下で、「なお、預金者等の個人情報流出の防止、信用秩序維持、ひいては銀行の公共性といった観点に留意すべきである。」という留意点を付け加えさせていただきました。

22ページ、4)の「マーケットメーカー」は、言葉を正確な表現にさせていただきました。 23ページは、前回の部会で、創業するに当たってはベンチャーキャピタルあるいはエンジェルの役割について記すべきではないか。あるいは、税制のことについてもきちっと記述をすべきではないかということで、その指摘を受けまして、線の引いてあるような記述をさせていただきました。最初に、ベンチャーキャピタルあるいはエンジェルが企業の資金調達について重要な役割を果たしていること。それから、我が国のベンチャーキャピタルの現状をみると十分でない点があること。また、エンジェルについても、資金供給の促進等の点から制度の利用が進むことが期待される、ということで、それぞれに「創業支援機能の充実を図るため」として、最初に、ベンチャーキャピタルに関する提言として、「例えばある分野や業種に特化し他社との差別化を図るなどの努力をし、専門的な技術評価能力を蓄積した上で、新規企業への資金供給の面ではその中心的な担い手であるという認識を持ち,より企業側のニーズに合致した、かつ初期段階の投資に注力していく姿勢が求められる」。それから、エンジェル税制について、これは昨年6月に導入されておりますが、エンジェル税制については創設されたばかりで実績が上がってきておりませんので、「積極的な利用が図られるようその促進に努める。」という提案をしております。

24ページですが、線を引いてあるところは記述を正確にしたところでございます。

次の「持株会社の設立の容易化」の真ん中のアンダーラインのところ、これも記述を正確にしたところでございます。

問題は、24ページの下の方でございます。税制面ですが、前回は、連結納税制度の導入ということを書いておりましたが、積極的な導入が必要ではないかというご指摘がございましたので、「連結納税制度の積極的な導入」と「積極的」という言葉を入れさせていただきました。そのために、その理由として2つ掲げております。「我が国企業の活性化を図る観点から企業分割を促進する」、あるいは「企業形態に対する税制の中立性を維持する」ということでございます。

さらに、その場合にも若干留意点があるということで、「企業経営の実態や、商法等の関連諸制度のあり方、さらには租税回避や税収減の問題といった諸点」についても、今後の検討に当たっては留意が必要ということで、その点を述べているところでございます。

それから、持株会社と労使関係、この点については主体をはっきりさせるべきだということ、その後政府ではどういうような取り組みをしているのかという2つのご指摘がありました。そこで、「持株会社制度の下でも、労使の合意による自主的かつ建設的な話し合いが、円満な労使関係を維持していく上で有効であると考える。」、それから、政府においては、去年持株会社制度が通った後、労使協議の実を高めるために今いろいろ水面下で努力をしているところですので、その点を踏まえまして、「政府においても、労使協議の実が高まるよう」という形で表現を変えたところでございます。

26ページは、内容を正確に記述したものでございます。

27ページも同様に、内容を正確に記述したものでございます。

29ページ以下で30ページまでは、いわゆる税制上の問題、あるいは公的年金の被保険者制度のところについて、これも内容を正確にもう一度記述したものでございます。

その下の「個別交渉」のところも、「公平で透明な査定・評価制度を整備する」という言葉を補うのがより正確だということで、その文章の内容の正確性を図ったところでございます。 32ページは、確定拠出型年金の導入に当たっては、問題点についても書き込んでおくべきではないかというご指摘が部会でございました。そこで、その問題点の指摘事項を加えたものでございます。 34ページは、前回の部会で、国の行政のあり方だけではなく、地方による行政のあり方についても「官から民への基本原則」というのが必要だということで、その原則の記述を加えさせていただきました。

37ページに、PFIについての法律が5月26日に国会提出されましたが、その点を受けて若干の政府内の推進体制の問題を加えさせていただきました。

それから、第三セクターのところについては、文章をもう一度明確にしたということで、内容的な訂正はございません。

少しとびましてNPOのところ、45ページでございます。「財政基盤の強化」として、いろいろな方法があるわけですが、前回は「強化するため」と書いてありましたが、税制の控除等も一つの手段だろうという指摘がございまして、そのとおりだということで、「一つの手段として」という言葉を補わせていただきました。

前回から、各提案の頭の方に理解をしやすくために、四角囲みを設けまして<ポイン ト>として(提案の考え方)、それから(主要な提案)という形で、この<ポイント>を追っていけば一通りこの報告書の内容が理解できる形として、読みやすくさせていただきました。

次に、「参考図表編」ですが、ここに付け加えた表は、理解をしやすくためのもの、それからなるべく経済企画庁がオリジナルとして作ったものを中心に選ばせていただきました。これまでの部会で提出させていただいたものですので、説明は省かせていただきたいと思います。

以上でございます。

〔 部会長 〕 どうもありがとうございました。

それでは、ただいま説明のありました「経済主体役割部会報告書(案)」について、ご意見をお伺いしたいと思います。どうぞご自由にお願いいたします。

〔 A委員 〕 今、意見を申し上げるのは気が引けるのでございますが、大変具体的なことまで意欲的に書いていただいているので大変結構だと思うのですけれども、こういうことで進んでしまっているのに今さら意見を申し上げるのは失礼かと思いますが、若干気になる点は、例えば、政府の役割のところの34ページからの記述で、前にも、政府の役割を書けということで、はっきりされたというのですけれども、政府は単に民間のやれることをやるのではなくて、「それは任せろ」ということでなく、政府としてポジティブにこういうことが大事だという感じであった方が、これを単独に読まれる方にはわかりやすいのではないか。トピック的というか、非常に注目すべきことを3つぐらい引き出されておりますが、そのコンテクストがどうか。それから、例えば公共事業であれば、配分の問題とか、発注の仕方とか、いろいろ基本的な問題があるのに、そこは全く触れてなくて、これだけがポッと出てくるという、いろいろご議論があったのだと思いますけれども、そんな感じがいたしますということ。

あとは細かい問題ですけれども、例えば、最初のところに、「政府と民間のガバナンスが非効率」と書いていますけれども、これは非効率というよりガバナンスがちゃんとできていないという問題。非効率というのは、やっているけれども能率が悪くて、無駄なことが多いということですけれども、これは、やるべきことがちゃんとやれていないという言葉としてはどうなのでしょうか。 そのたぐいのことが若干あるのですが、この辺は既にご議論が終わっているのかと思いますので、一々申し上げるのはいかがかと思いますが、そんな感じがいたします。

〔 部会長 〕 今回は、官から民へ、あるいは国から地方へ、そちらの方へ非常に力点が置かれている。そういう点からいきますと、コーポレートガバナンスあるいはベンチャービジネスということに相当に力点を置いているのですが、その辺はB委員はいかがでございますか。

〔 B委員 〕 これまでいろいろと積極的な議論がありまして、私は、これは全体として非常に行き届いたいい報告になったと、私もメンバーの1人として非常にうれしく思っているわけであります。ただ、もう少し親切にしようと思えば、例えば、インベスター・リレーションズの方には説明がちょっと書いてありますけれども、そのレベルでいけば、例えばエンジェルとか、わかっていることでしょうけれども、エッセッシャル・ファシリティとか、そういった種類の言葉についてはもう少し親切に多少オリエンテーションがあった方が読みやすいのではないか、ということを感じました。

〔 部会長 〕 できましたら、付属資料か何かで、言葉の解説のようなものはきちっと置くということにしたいと思います。

NPOを初めて取り上げたということですが、C委員、いかがでございますか。

〔 C委員 〕 特にございません。先回までの発言で結構でございます。

〔 A委員 〕 3ページで「個人(自己責任意識の不足)」というのは、「結果の不平等に対する責任の転嫁という形で」と、確かに弱者優遇の問題はこういうところがあると思いますけれども、例えば、いろいろな安全規制とかでも、何でも事故が起こると「政府はけしからん」という体質から規制が細かく行き過ぎるということで、「結果の不平等に対する責任の転嫁」ということに自己責任の原則をやっているというのは若干狭すぎる。「結果の不平等に対する責任の転嫁」というのは、そういう面も一部ですけれども、もっと大きな問題があるのではないか。

そういうたぐいのことで、恐縮です。

〔 D委員 〕 前回にも申し上げたのですが、報告書の内容そのものは大変いいものだと思うのですが、今日もう一度見て感じたことは、「はじめに」と「おわりに」のところがちょっと短いのではないかという感じがするのです。というのは、中身そのものは個別の案件を取り上げて大変いい分析あるいは提言があると思うのですが、「はじめに」とい うところに、変化の必要性とか、なぜこういう改革が必要かということをもう少し強く打ち出すことをしなければ、読者のインパクトが薄くなるのではないかという懸念があります。

「おわりに」も、これは外から英語的な感覚でみて感じることですが、総論的といいますか、一般論的なことで、1つには変化の必要性、もう一つは、変化しなければどうなるかということ、あと、変化するためにはどうしたら実現できるか、つまりこの報告書の内容をどう実行し、目指していることを実現できるか、そういうことに関してもう少し思い切った形で言及していただきたいと私は個人的に思います。

というのは、これも外から見た感覚で失礼かもしれませんが、日本の政府機関あるいは研究機関が報告書はたくさん出版するけれども、どれだけ本気でそれを実施するかということが外から見た場合は悪く言いますと、猜疑心をもって見られていると思うのです。そういう意味でも、内容そのものは、私は何回も申しましたように、大変いい内容ですばらしいのですが、緊急性といいますか、切迫感をもう少し打ち出して、それをどう実行するか、どう達成するかということについて、もう少し強い文章を入れていただければ効果があるのではないとか思います。

〔 E委員 〕 報告書の感想だけを述べさせていただきます。27ページに「人材育成と人材確保」とありまして、そこの感想です。最近、学生を見ていますと、どうもこのままいくとイギリス病になるのではないか、一部そういう感じがありまして、何とか危機感を持たせるといいますか、子供の教育に対して、あるいは学生の教育に対してもっと危機感をもった、そういう教育が必要かなと。もう一つは、多様な人材の発掘というのが、企業の方の採用の中でも少し欠けている面があるのではないかと思いまして、感想ですけれども、人材の確保と育成と同様に多様な人材、それから、教育の中身でも、いい社会に住んでいる子供たちに対して少し危機感を与えるような、そういう教育も将来必要かなと思いました。

これも感想でございますが、42ページの12行目に「ナショナルミニマム」という言葉が出ておりますが、ナショナルミニマムが何かという定義がありませんので、「ナショナルミニマムを確保する観点」といいますと、いろいろな地方の政治家は「これもナショナルミニマムだ、あれもナショナルミニマムだ」という形でいろいろなものをつくり出すとまた困ることになる。ですから、どこかでナショナルミニマムの定義なりをする必要があると思います。

最後のコメントとしましては、社会資本のところでは、コストベネフィットのベネフィットの政策評価といいますか、そういうものも今後はきちんとしませんと、何でも社会資本の充実ということでつくられてはまた困るな、というのが印象でございます。

最後に言葉の問題でございますが、これはD委員がおられるので伺いたいのです。18ページの第3パラグラフに「アッピール」と書いてありますが、アピールの方がよろしいでしょうか。細かいことで恐縮です。

〔 部会長 〕 「学生を見ていると」というのと「イギリス病」というのは、具体的にどういうことですか。

〔 E委員 〕 アジアの学生を見ていますと、必死に中国人の学生などが日本で勉強いたします。それに対しますと日本人の学生というのは、どちらかというと、のほほんという感じで、どうにかやってくれるだろうという感じがあります。

アメリカに留学している日本人でも、昔は必死に頑張りまして、日本人で留学している人の成績はよかったという話ですが、最近はアジアの学生の方がいい成績で、日本からアメリカに留学している人は中にはそれほど優秀でない方もおられる。

そういうように、全体的に学生の雰囲気が、いわゆるイギリス病といいますか、そういう形にならなければいいなというのが実感でございます。

〔 D委員 〕 英語に関してですが、この「アッピール」あるいは「アピール」という言葉の使い方は日本的な使い方で、英語としてはあまり使われていない使い方ですけれども、これは日本語の文章としては結構です。

英語に訳されるとすれば、「アッピール」でも「アピール」でも使わない方がいいと思います。

〔 部会長 〕 事務局の方で英訳版を作るときには十分に気をつけてお願いいたします。 Fさん、いかがでございますか。

〔 F委員 〕 今度は欠席が多くて、誠に申しわけなかったです。この議論に参加できなかったので、特にコメントする資格はないと思いますので、私はこれについては何も申し上げません。

〔 C委員 〕 内容ではないのですけれども、資料の最後に「主なNPO関連の団体数」ということで1ページございますけれども、6のNGOのところに括弧して(国際協力分野における)とか何とか入れた方がいいと思います。実は、「NGOは国際協力分野で働いている市民団体」というふうにNGO活動推進センター(JANIC)が10年以上前にダイレクトリーの表紙に書いたことによって、日本では非常に大きな誤解がありまして、NGOという言葉を国連が作ったから、国連会議に、自分の地域の足元の問題を、例えば環境であるとか、まちづくりにしろ、安全な食の問題にしろ動いているような、つまり5の「市民活動団体」であっても、そういうテーマで行われた国際会議に出ればNGOの席しかないわけです。ということは、国際協力をやっているNGOも実はNPOという大きな枠組みの中の一部分であるにもかかわらず、日本ではNGOという言葉の方が先に入ってきて、しかもJANICのダイレクトリーの表紙の定義に「国際協力に係わる市民団体、非営利団体」というふうに言ってしまったので、日本ではそれが定着しているわけです。ところが、国際的にいきますと、今は何も国際協力をしていなくても足元の市民活動、福祉でも何でもいいのですけれども、まず情報がインターナショナライズされていて、インターネットで情報をとるとか何とかいうことで、内容は国際的につながっているというので、ここの「351」という数は、国際的にはちょっと不思議にお思いになると思うのです。つまり、5の「85,786」の中にもNGOになる可能性は非常にあるし、既にNGOとしての国際的ないろいろなネットワークを持ちながら仕事をしているところも含まれているのです。

それについては、私はJANICの方に申し上げていて、今年のは私はまだ見ていないですが、新しいダイレクトリーの表紙には、国際協力分野で働く市民活動団体をNGOと呼ぶ、という説明は落としてくださっているはずです。

この表に関して言えば、この「351」のNGOというのは、海外の人が考えるとすれば、日本以外の人が考えるとすれば、国連の承認を受けた団体だろうか、と。ところが、このJANICの「351」の中には国連によって認められているNGOは、このうちのまたほんの一部です。そういう意味で、今回の逃げとしては、この辺の了解をすっきりさせる必要があると私は思っているのですが、「6.NGO(国際協力)」とか何とか書いておいていただければ、事実には間違いがないということだと思います。

〔 部会長 〕 G委員、何かコメントがございますか。

〔 G委員 〕 今までいろいろとご注文申し上げまして、大体直していただいておりますが、全体の印象としては、私は大変よくできていると思います。今までの役所のこういう審議会で出した、作文と言うと怒られますけれども、作文以上に出ているのではないかという気がします。 Dさんが先ほど、作文に対して実効性あるようにということを言われたのは、まさにそのとおりですけれども、この作文をよく見ると、実に実効性を含みながら慎重に書かれていて、かなり実現していくのではないか。また、もう動き出している部分がかなりありますから、そういう意味では、私は非常に時宜に適した大変立派なリポートにしていただいたと思っております。

褒めただけでは審議会の役は立たないのかもしれませんけれども、褒めたいものですから、褒めました。

〔 部会長 〕 H委員、いかがでございますか。

〔 H委員 〕 NPOが入ったというのは、新機軸であるということで大変評価しているのですけれども、基本的な経済主体として3つあって、個人、企業、政府。個人については自己責任、政府や企業については効率的で情報開示をして監視をきっちりしなさい、ということでもっともなことです。

さっき、イギリス病のことが出ましたが、これは1970年代に非常に言われたことですけれども、その後、ご承知のようにサッチャーさんが競争原理を導入しまして、非常にある意味でイギリス的なものが失われかねないような激しい競争社会になっているかと存じますけれども、一方で、自分たちの資本主義がどういうものであるかということについての議論が、必ずしも政府からではありませんけれども、アカデミズムから出ていまして、それは例えば、「ジェントルマンリィキャピタリズム」である。自分たちの資本主義というのは、必ずしも産業資本主義とか、競争一本のものではなくて、イギリス人の独自の資本主義社会をつくりたい。それは、個人的にはジェントルマンになることであろう、という議論も出ているわけです。

そこのところがもし足りないとすれば、どなたかが言われた「はじめに」と「おわりに」のところで何かもう一つ、魂を入れるための言葉が入ればと。すなわち、個人の自己責任はわかっている。そのためには、教育制度や教育システムを変えなければいけない。また官もスリムにならなければいけない、ということでリスクも負わなければならない。しかしながら、ハイタリーンも得られるだろうということですが、そういう日本人の新しい形というのを、歴史や伝統や文化の中でどうコンセプトにしていくかということができれば、「はじめに」と「おわり」のところが十分に書けまして、この書かれた内容というのが相当生き生きとしてくるだろうと思うのです。

私は、イギリス病というのはもう言う必要はないだろうと。むしろ、今はかなり学ぶべきところがあるかもしれない、というふうに思っております。

〔 部会長 〕 合同報告書の「むすび」というところで、その辺のところはかなり言葉としては出てきておりますが、またよく検討させていただきます。

I委員、何かございますか。

〔 I委員 〕 同じものを2、3度よく読ませていただきましたので、だんだんと私としてはよく理解できたつもりだし、全体としては非常によくできていると思うのですが、しかし、改めて見直すと、確かに先ほどもご指摘があったように、やや難しい言葉がないわけではないので、先ほどのご指摘のとおり、何か言葉について解説するようなものが1つあった方が読みやすいだろうということと、それから、やはり言葉の問題でありますけれども、47ページの「おわりに」の真ん中ぐらいに「世界大の市場の中でも」というような、意味がわからないことはありませんけれども、言葉としてあまり一般的ではないような言い回しなどもありまして、この辺はもう少し滑らかになるといいかと思います。

〔 部会長 〕 それでは最後に、Jさんいかがでございますか。

〔 J委員 〕 遅れてまいりまして大変失礼いたしました。

訂正されたところの線を引いたところなど、大変苦労してお作りになっていることを十分肝に銘じております。勝手なことを申し上げたこともありましたが、でき上がったものは、私としては全く異議ございません。どうもご苦労さまでございました。

〔 部会長 〕 ありがとうございました。

ご意見を皆様から伺いました。各委員におかれましては、細部に関してご意見もあろうかと思いますが、一応議論はこの辺までといたしまして、当部会としては本報告書案について了承したいと思いますが、いかがでございましょうか。

             (「異議なし」の声あり)

〔 部会長 〕 ありがとうございました。

それでは、そのようにさせていただきます。

それでは、経済主体役割部会報告書につきましては、この会合の終了後に公表するとともに、経済審議会総会へ報告したいと思います。

続きまして、第2の議題であります「経済審議会経済社会展望部会・経済主体役割部会合同報告書(案)について」でございます。こちらも、前回、素案という形で一度ご審議いただいておりますので、素案からの変更点を中心に事務局より、報告書案の概要につきまして説明をお願いいたします。

〔 事務局 〕 お手元の資料3をご覧いただきたいと思います。資料3は、経済審議会の合同報告書案でございます。

前回版との比較を中心にご説明申し上げたいと思います。なお、お手元に経済社会展望部会の報告書の現時点でのものがございますので、ご覧いただければと思います。

表紙でございますが、「合同報告」とございまして、その下に「構造改革に挑戦、経済社会にダイナミズムを」という副題を入れております。

1ページめくっていただきまして、目次がございます。前回申し上げたと思いますけれども、全体をわかりやすくするために補論を作ってみたいということを言っておりましたが、補論は2010年ごろの国民生活というイメージでございまして、後ろに補論としてアタッチするよりも、中に入れてはどうかと思いまして、この中にコラムの形で補論が入っております。後ほどご覧いただきたいと思います。全体の構成は、素案のときと同じでございます。

「はじめに」から始まっておりますが、ここも特に大きく変わっておりません。多少字句を直したりはしておりますが、2つ目のパラグラフにございますように、昨年7月以降、経済社会展望部会(これは本日の午前中にいたしまして、もう一回を予定しておりますので、全部で13回になるかと思います。)と経済主体役割部会(本日で11回やっていただきました。)において検討を重ねてきて、両方合わせて展望としてまとめるのだということを言っております。

第1章は、「構造改革の推進と成長軌道回復への道筋」、プロセスということでございます。 1枚めくっていただきまして4ページ、1の「構造改革の痛みへの対応」ということで、これも基本的には前回ご覧いただいたのと同じでありますが、「古い構造を破壊する過程での痛みと、新しい構造に移ることのできない痛み」とがあるということで、こういった点について構造改革の重要性について書いているパラグラフでございます。

2の「財政構造改革と足元の景気停滞」につきましては、若干文章整理をしておりますが、基本的には前回ご覧いただいたものと同じでございます。ロ)のところで、今般の「4月の「総合経済対策」を実施するために、必要な経費の追加等を行う98年度補正予算が○月に成立した」と仮に書いてございます。それから、「こうした財政面からの刺激策は、最近の厳しい状況に対応し、我が国経済を力強い回復軌道に乗せるために、必要な措置であった。」という書き方でございます。 3の「金融システム改革」、こちらの方も前回ご覧いただいたものと同じでございますが、ここでは、金融システム改革の推進により、我が国の信頼を回復しなければいけない。以前は、信頼を損なうことになる、と逆から書いておりましたが、ポジティブに改めて書いております。内容的には同じでございます。

4の「不良債権処理の目途はいつつくのか」ということで、こちらは5ページから6ページにかけまして、5ページのイ)は、公的資金の準備等の金融システムの安定確保策を言っております。ロ)で、アメリカでも大規模なリストラが進められているということで、我が国の金融機関もリストラが重要だということを言っておりまして、ハ)では、ここも同じでございますが、アメリカでは早めに償却を進め問題が解消されたのに、我が国では、まだ依然処理途上にあるということを言っております。

少し書き加えましたのが、ニ)からのところ、6ページの真ん中から下の方ですが、98年3月期の不良債権の償却の数字が出ておりますので、その数字をここにございますように、これは19行ベースですが、上から4行目あたりに、98年3月期に19行ベースで合わせて3.9兆円の赤字決算を組み、10.5兆円の不良債権の償却を行った。その結果として、0.9兆円減少しているということであります。ただ、今回新たに開示された、これまで6カ月であったものを3カ月にした延滞債権などを加えますと、不良債権は21.1兆円になるということでありますが、これが今後新しい不良債権の発生がなければ、銀行の大幅なリストラなどが前提とされなければなりませんけれども、早期に引当を終了することも可能とみることができる、というふうに書いております。

ただ、我が国は、アメリカと違いまして、資産価格の下落が続いているという面があって、不良債権が長期間にわたって発生し続けております。98年3月期にも多額の引当をしたにもかかわらず、まだすべてというわけにはいかないということで、今後においても資産価格の下落などによって、新規に不良債権が発生しいてく可能性はあるということで、目途がついたということで楽観視をしてはいけないということを、少し渋めに書いております。

そこで、不良債権をバランスシートから外すということ、それによって円滑な金融機能を回復するといった方策について、現在、政府及び与党で積極的に検討されていることはご承知のとおりでございます。今後、一刻も早く景気回復を確実にし、新たな不良債権が発生しないように努めるとともに、金融機関の一層の合理化努力に加え、不良債権及び担保不動産の流動化といったトータルなプランを進めることにより、不良債権問題の早期抜本的解決を最優先の課題としていくことが必要である、というまとめをさせていただいております。

その下には、日米の不良債権の処理の比較を付けておりますが、97年度の数字を入れております。97年度をご覧いただきますと、不良債権引当率88.6という数字がございますが、これに対して括弧書きで、破綻先の3カ月以上とか、経営支援先債権などを入れた広い概念にいたしますと、まだ58.1という数字がご覧いただけるかと思います。

7ページでは(不良債権担保土地の流動化)ということで、7ページの下から8ページにかけまして、前回よりさらに詳しく書かせていただき、整理をさせていただいております。特に、「本年4月の『総合経済対策』においては」というのが8ページの6行目にございますが、こういった施策をとり、「土地の流動化、有効利用のために不動産ビジネスの活性化」ということを最初のパラグラフの終わりのところに付け加えさてせいただいております。

5として「成長軌道回復のシナリオ」でございます。ここでは、「負の遺産」の処理、構造改革によるサプライサイドからの活性化、適切な総需要喚起、国民が明確な展望をもつ、という4点が重要であるということを前回も強調しておりますが、その観点から「総合経済対策」が明確に中長期的な成長軌道に向けてポイントを切り換えたものであるということ、さらに、ハ)で、経済構造改革の効果というものが重要であるということを言っております。

ニ)で「雇用問題に十分な配慮を行うことが重要である。」と言っておりまして、この点は前回も、失業について、この後でも失業の問題が出てくるパラグラフがございますが、いろいろご指摘もいただきましたが、この点を少し書き直して丁寧に書かせていただいております。具体的には、9ページの上にございます 1、 2、 3ということを積極的に進めていく必要がある、という整理にしております。

9ページの下の段から第2章「構造改革後のマクロ経済の展望」、つまり長い方のマクロ経済の展望でございます。こちらの方も前回ご覧いただいたものと同じですが、その際もご紹介しましたように、2010年に向けては「負の遺産」を解消して、新しく未来に向かって継承していくべき時期であるということであります。

以下で代表的な6つの不安を取り上げております。順次ご紹介をしますと、

1の「経済成長率や生活水準は低下していくのか」というのが10ページにございます。こちらの方も、前回と基本的には同じでございますが、総人口が2007年をピーク、それ以降減少に転じると見込まれているとか、生産年齢人口ですと、1995年をピークに減少に転じているなど、少し丁寧に書かせていただいております。

 10ページ、ハ)ですが、成長率が低下するので活力を失うのではないかという不安がございますが、そこは人口が減るということが大きいわけで、1人当たりでみていくということではないかということが、ここに書かれております。

さっき補論の話を申し上げましたが、11ページの真ん中あたりにコラムが付いております。2010年の生活というのをこういう形でコラムとして書いてはどうかということでご提案申し上げるわけでございます。

午前中の展望部会で、このコラムをご紹介いたしましたら、いわばコーヒーブレークのようなもので、読んでいって、ここで少し休むという部分もあるのだね、というお話がございましたが、かなり大胆な推計をとって、できるだけわかりやすくということを目指しているものでございます。そのときにご指摘されたのですが、中には、かなりきちっと詰めた数字と、かなり大胆に計測した数字とが混ざっているものですから、そのあたりはもう少し精査をしなければいけないと思っております。

11ページをご覧いただきますと、住宅のスペースの話を言っております。2010年にはどうなるかということが定性的に書かれておりますが、定期借地権、借地権の付いている住宅の普及とか容積率の拡大ということで、価格が割安となる。書斎ができ、あるいはパーティが開けるのではないか。それから、現在検討が大きく進んでおります定期借家権、借家の方の問題でライフステージに応じた住み替えが可能になる、といったメッセージを書いております。

数字といたしましては、1人当たりの住宅床面積が、93年の数字を使っておりますが、3割ぐらい増えるのではないかということを書いております。

その後の社会資本の整備につきましては、これは経済計画で目標としております数字、例えば下水道の排水処理の割合とか、歩いて行ける公園が全国に整備されるということ、これを2010年までには達成するということを目指しておりますので、それを書かせていただいております。 次に、2の「我が国経済は少子・高齢化の負担に耐えられるか」ということでございますが、ここでは「年齢別の役割分担」というものを取り払って、イ)の12ページの2行目にありますが、「役割分担を柔軟化し、働きたい人は何才になっても働ける年齢にとらわれない社会」、あるいは「高齢者に限らず若者であっても中高年であっても、自分自身の人生設計に基づいて学習、仕事、余暇に時間を使うことのできる、組み立て自由型の社会が望ましい」ということを書いております。 その下にまたコラムがございまして、(2010年のキャリア形成は)ということで、大学生のうち、これは通信教育なども入りますが、社会人になられたあと、また大学に入っておられる方の現在の人数を調べまして、それを伸ばしてみたという簡単な推計ですが、大学生の11人に1人という増加をするのではないかということを紹介してみました。

ロ)に、性別にとらわれないということを書いております。

12ページのハ)の上から3行目あたりから、社会保障改革の一定の仮説の下での推計をした場合に、国民負担がどのようになるだろうかということ、社会負担率はどのようになるかということがございます。

13ページの3の「地球環境問題による成長の制約はあるか」というところですが、こちらの方は前回ご覧いただいたのと大きくは変わっていないと思います。メッセージは、合同会議でまとめました対策をきちんとやっていけば、経済成長をそれほど低下させることなく、CO2 排出量を抑制することは可能となるということで、13ページの下から4行目あたりに書いてございます。 14ページにまいりまして、ハ)のところでは、「合同会議対策」の実施への投資需要額は3兆円程度あると見込まれると、これは地球環境ワーキンググループで試算なさったものでございますが、それが書いてあります。

4として「失業率が上昇し、生活不安が高まるのか」というのがございます。ここについては前回、ご意見をいただいております。前回は図表で、非自発的失業率と自発的失業率というものがあって、自発的失業率の方が伸びているという表を入れておりますが、いろいろご意見をいただいたことで、そういった分け方でなく、図表グラフはやめまして、改めてきちんと整理をさせていただくことにいたしました。イ)で言っておりますのは、 「足元の景気低迷に伴う景気循環的な失業」、「労働市場の構造変化を背景とした構造的 失業」がある。構造的失業というものについて考えると、労働者の意識変化による自発的なもの、産業構造の調整などによります非自発的、そういう失業というものがあるということです。それで、「今後は、より適材適所の雇用を求めた動きを活発化させることにより、自発的な失業が増加すると見込まれる。このような失業については、労働移動の円滑化を図ることにより、転職に伴う失業期間をより短くすること」ができるということ。それから、新しい雇用の受皿であります「ベンチャー企業を含めた新規産業の成長による新しい雇用機会の創出」というものが必要であるということで、本年4月の「総合経済対策」での対策などをご紹介しております。

前回は、我が国の失業率はまだまだ先進国と比べても低いということを強調していたのですが、そこも少しさらりと書かせていただいております。

5で「我が国経済はグローバリゼーションの波に耐えられるか」というところですが、こちらの方も基本的に前回とそう変わっておりません。特にこちらでのメッセージとしては、産業の空洞化に対して、16ページの7行目に、我が国が「国際的に特異な点を、今後経済構造改革の一環として修正」しようということを言っております。法人課税の高いということ、例えばテナントですと契約期間が極めて短期であるという点を、例に上げております。あるいは民民規制の紹介もしておりますが、こういった点を「修正していくことの重要性を認識すべきである。」ということを言っております。

16ページの6の「経常収支赤字国となり、豊かさが失われてしまうか」、こちらの方は全体に少しコンパクトにさせていただきました。

17ページに、第3章「新しい経済社会システムの姿」ということで、マクロの議論を終わりまして、システム論を書いてございます。こちらは、最初のイントロにございますように、マクロ経済の不透明性のみではなく、どういうシステムを前提に、どのような変革があるのかということをもう少し解き明かせないか、そういう問題意識が最初の柱書きに書かれておりまして、従来型の日本システムの特徴を言って、その変革が必要なのだということを、1の「従来型システムの特徴とはーその変革の必要性と方向性」のイ)で言っております。

それから、基本的には前回と同じでございますが、18ページのロ)のところでは、いろいろなシステム、すなわち雇用、企業、公的セクターというものに変化の兆しは現れておりますが、「動きが部分的にとどまっており、全体として変革に弾みがつかない」ということでありますが、補完性がありますので、全体が弾みがつけば一気に大きな変革の方向性が見えるというところを強調しております。

2としまして、では、その基本原則は何かというのは、前回から強調しております「透明で公正な市場」であります。市場を支える柱として4つあるということで、「機会の平等」、「自己責任原則」、それから19ページにまいりまして、「多様な選択肢と十分な情報開示」、「ルールの重視」であります。

19ページのハ)で、「市場原理による効率性を追求するとともに、弱肉強食ではない温かみのある社会を確保する必要がある。」、すなわち「社会政策的配慮を行う等のセーフティーネットの整備が必要である。」ということを付け加えております。

その後にまたコラムがございますが、こちらは、先ほどの(2010年の生活)といった形のコラムではなくて、日本型市場システムか米国型市場システムかといった、前回もご覧いただいたコラムでございます。

それから、「新しい経済社会システムの具体的姿」として、「企業システム」で(雇用システム)、(コーポレートガバナンス)等を書いてございます。ここも大まかに3つの類型が雇用形態になるのではないかということを言っておりますのは前回と同じで、20ページの真ん中にコラムを付けております。こちらのコラムは、2010年の雇用形態はどうかということで、なかなか難しい問いでありますが、2010年には、「長期雇用を前提としない雇用」を主流とする企業が半数近くになるのではないか。「即戦力・専門性を重視した人材確保」を主流とする企業も6割を超えるのではないか、というような大まかな見通しを書いております。

それから、(コーポレートガバナンス)がございます。

21ページには、(企業の発生と退出のシステム)ということですが、こちらも基本的に、多少文章を付け加えたりしておりますが、同じであるとお考えいただければと思います。

なお、コラムとして、(株式持ち合いの解消は、長期安定経営を不可能にしてしまうのではないか)というのがありまして、下から2行目に、「年金基金や投資ファンド等の機関投資家が安定的に、株式持ち合いに代わる役割を果たす」と書いていたのですが、ご指摘をいただきまして、「安定的に」というのを落としております。いずれにしても、株式持ち合いに代わる役割を果たすということは期待できると思います。

22ページの(2)の「公共システム」のところも基本的に同じでございますが、先ほど、政府の役割ということをおっしゃっておられましたが、この中でも、イ)の下から5行目あたりに、「政府の役割は市場整備・監視や危機管理等にウエイトを移す」ということでございます。 コラムでさらに書いておりますのは、その下のコラムの2行目あたりに、「市場ルールの整備、監視という役割や危機管理、更には、消費者保護、市場競争における敗者復活や弱者救済を可能とする政策的機能」ということで、この中で「消費者保護」というのを付け加えてみました。ここで言いたいのは、スリムな行政ということで、政府の役割をリファインして、それに早く行政資源のウエイトを移そうということを言いたいわけであります。

それから、(公的金融)は、基本的に前回ご覧いただいたのと同じでございます。

23ページのコラムでございますが、下の方で、1所帯当たりの金融資産で見るとどれくらいあって、そのポートフォリオがどう変わるだろうかというかなり大胆な推計でありますが、金融ワーキンググループで、75年~95年の間のアメリカのポートフォリオの変化率を借用しまして日本に当てはめるとどうなるかというのを推計したものがございます。ご覧いただきますと、有価証券が60数%増えておりますし、定期性預金は半分になるというのがこれでご覧いただけますが、そういった変化率であったということであります。

23ページの(社会保障制度)、こちらの方も、前回ご覧いただいたのを少し文章を整理しておりますが、年金、医療、介護全体として調和のとれたものとすること、それが主なメッセージでございます。

24ページ、(3)の「社会システム」としまして、(社会的規律と信頼の回復)と(教育改革の重要性)というのがございますが、こういったところも多少舌足らずでございましたので、少し表現を工夫しております。24ページのイ)のところは、上から3行目に、社会に優勝劣敗の要素がさらに強くなっていこうが、社会的規律を回復していくためには弱者保護対策に政策面で配慮しなければいけない。こうした中で、新しいシステムでは市場ルールの確立が国民の行動のよりどころとなり、社会的規律というものが回復していくのではないかということであります。

それから、(教育改革の重要性)のところも、多少文章を工夫させていただきまして、ここのメッセージは24ページの一番下にございます、「教育機関の間で競争原理を働かせる」ということでありますが、それに加えまして、「内容や機関についての学ぶ側の選択肢を増やすという方向での改革が必要とされている。」ということを付け加えております。

それから、(個人の社会参画システム-年齢・性別にとらわれない社会)ということで、先ほどのエイジフリーとかジェンダーフリーというものをもう一度整理をし、女性が職場に出ていくことについて、改めて意識改革を求めているところでございます。

その下のコラムは、(2010年の高齢者、女性の就業環境は)ということですが、ここにございますように、60歳台前半の労働力率が高くなる。あるいは、30歳台の女性は出産育児で労働力率が低いわけですが、これが託児所などの充実によって、64%に上昇するものと見込まれるといった試算、これは雇用・労働ワーキンググループのご検討を踏まえて書かせていただいております。その下に、女性の管理職が2倍ぐらいになるのではないかという推計を付けております。 (4)でNPOは、「経済社会の新しい主体として」という副題を特に付けておりまして、26ページの方でご覧いただきますように、3つの主な機能があるということを紹介しており、NPO法が制定されたという紹介をしております。

最後に、(2010年のボランティア活動の広がりは)ということで、コラムといたしまして、世論調査などでNPOの活動に参加してみたいという数字がございますので、それを元に、3人に1人ぐらいは何らかの形でボランティア活動、NPOに参加されるのではないかという数字を付けてみたところでございます。

最後に「結び」がございます。

全体に、わかりやすくということ、それから、以前も申し上げておりますが、役割部会と展望部会との重複感をできるだけ取って、かつ先ほどのコーヒーブレークも入れてと、そういうことでいろいろ工夫はしてみたものでございますが、まだまだ不十分だと思いますので、ぜひ、ひとつよろしくご検討をお願いしたいと思います。

〔 部会長 〕 どうもありがとうございました。

それでは、ただいま説明のありました「経済審議会経済社会展望部会・経済主体役割部会合同報告書(案)」につきまして、ご意見をお伺いしたいと思います。

〔 G委員 〕 ないものねだりになるのかもしれませんが、このレポートを誰が読むのかということから考えてみる必要があるだろう。確かに、皆さんが大変疑問に思っていることにお答えになっているという意味ではおもしろく読ませていただいたのですが、消費者という立場からみた場合に、果たして全部に答えてくれているのかなという気がいたしました。

雇用問題はかなり詳しく方々に入れていただいて、自分はこれから頑張らなければいけないのだなというメッセージがあったような気がいたしました。それから、社会保障についても、年金はまあまあ何とか行くのだなというものはあったのですが、物価について全然触れていないというのはどうしてなのだろうか。

つまり、あれだけ内外価格差問題をさんざん議論してきたわけなのに、ここに来て、なぜ物価の問題がないのだろうか。つまり、内外価格差問題というのは、あだやおろそかにやったわけではなくて、海外より日本人は高いものを買わされているのだ、こういう消費者被害意識があるかもしれませんが、そこが一番問題だったのが1つでありますし、企業にとっても、流通や何かについて、より高いコストで製品をつくらなければいけない。だから、内外価格差問題というのは大きかったわけでありますが、今回は、物価について何も触れていない。一体なぜだろうか、非常に疑問に思いました。

物価については、恐らく、非常に重要な問題でありまして、レートが変わったから、円安に振れたから内外価格差はなくなってきたという部分があると思います。これだけ一生懸命何年間も続けて構造改革をやってきた、その効果もあるはずであります。同時に、今、当面の景気から言えば、非常にデフレ循環に入ったのではないかということで、今日も卸売物価が何%か下がったことについて、非常に神経質になっているわけでありますが、それを政府は、油が下がったから、とかいうことで説明しておられるわけですが、油が下がったのも、多分、構造改革の1つの効果であったかもしれません。もちろん、海外市況が大きいと思います。

そういうことで、できれば、物価について国民が、我々は海外より高くないものを買わされているのだ、買えるようになったのだというのか、あるいは、今はそれ以上に物価が下がってしまったというのか、あるいは、まだ我々はとてもそんなところに行かないのにデフレの危険にあっているのだというのか、そこらについてこのレポートの中でお答えいただけると消費者は、雇用、年金、物価という問題についてよく分かる。あとは、あえて言えば、さっき「ないものねだり」と言ったのは、金融資産に対するイールズです。要するに、我々は0.5%かなんかの定期預金で今苦しんでいるわけでありますが、構造改革をやったことによってアメリカのように5%、6%になるのかどうか、これは非常に重要なことだと思いますが、これについても、ただ不良債権の解消だけを述べていて、何も触れておりません。消費者は、これを読んだら、週刊誌調で言うと「雇用と年金については、まあ歓迎するでしょうけれども、なぜ消費者に対して答えをくれないのだろうか」ということで、恐らく評判悪いと思います。

以上です。

〔 部会長 〕 どうもありがとうございました。価格の問題、これは物と金・資産の金利の問題と、ご指摘の点は非常に重要な問題だと思います。

〔 F委員 〕 これまであまり議論に参加していないで、今日の段階は合同報告書案となっていますから、いろいろ注文申し上げても無理な段階だということはわかっておりますので、私の申し上げることに関して、文章その他、修文すべき点は全くございませんけれども、感想のようなことをちょっと申し上げてみたいと思うのです。3つほどあります。1つは、不良債権の処理の問題。内容的にはきちっと書いてあるのですけれども、果たしてこんなに早くうまく不良債権が調整できるのかどうか。そんな程度の不良債権なら、ほとんど問題にしなくてもいいのではないかと私は思うのです。

先ほども数字を挙げて、10兆円とか20何兆円という数字が出ておりますけれども、19行に関してだけ見ても、もっと大きな不良債権があるのではないか。もっとも、何が不良債権ということの定義の仕方によって大分変わってまいりますけれども、現在のところは、利子を払っていればそれは不良債権ではないという規定に大体なっているようですけれども、利子を払っているからといって不良債権ではないということはあり得ないです。私は、厳密に計算したわけでもないし、それだけの資料があるわけでもないですけれども、非常に大雑把な感で申しますと、今よく言われているような不良債権の額に対して、その数倍はあると私は思います。金額にして、100兆円あると思います。都市銀行19行を中心とする銀行。昔の地方銀行、地方銀行は額は少ないですけれども。生保、損保、ここに相当な不良債権がある。それから、ノンバンクの不良債権はどうとらえているか。それから、ゼネコンの不良債権、さっき担保不動産の流動化の問題が出ておりましたけれども、ゼネコンは相当な不良債権を抱えています。それから、ここまで言うのも問題かもしれませんけれども、今アジアが非常に経済的な困難な立場に立っている。まだ表立った不良債権にはなっておりませんけれども、やがて、このうちかなりの部分が不良債権化するのではないかと私は見ております。そうしますと、今まで議論されている額に対して、相当大きなものがあるということで、これは政府としては相当思い切った覚悟で臨まなければいけないと私は思うのです。   まさにこれからの景気回復、需要不足をどう補うかというのはもちろん大事ですけれども、それと同時に、金融システムの安定化のための不良債権の処理というものを本気になって、それこそ考えなければいけない、そういう段階に来ているのではないか。

今までもいろいろ手は打ってきておりますけれども、今日は経済企画庁長官もいらっしゃいますけれども、はっきり言って、小出しだ。少しずつ手を打っているから、これでは効かないです。やるなら、思い切ってやる。

アメリカのレーガノミックスのときの減税などを見ますと、日本は特別減税を2年にわたって4兆円とか言っておりますけれども、日本の今のお金にすると、20兆円ぐらいやっているのです。その20兆円とは言わないけれども、そのくらい思い切った、それこそ清水の舞台から飛び下りたという、そういう実感が出てくるような対策を講じないと、これはどうにもならぬのではないかという感じがいたします。

先ほど文章を読んで、まだ全部を正確に読んでないので私は大変失礼なことを言うかもしれませんけれども、コメントの中に、アジアの経済が悪くなった影響を日本が受けているという表現がありますけれども、そういうように私は理解したのですけれども、それはちょっと問題ではないかという感じがする。

日本が長期にわたる景気停滞によってアジアの経済は悪化したという、どちらが卵か鶏か因果関係がどうかということははっきりしませんけれども、そういう受けとめ方をしている向きも相当あると思うのです。そういった意味では、こういう表現はいかがかという気がいたします。 何と言っても不良債権の処理の問題は相当思い切ってやらなければいけないだろうということが第1点です。

第2点は、資源配分の問題というか、財政負担の問題というか、2010年あたりに絞って、もっと厳密な分析をした方がよろしいのではないかという感じがするわけです。

各経済主体、例えば個人とか企業とか、この負担をどうするのかというのが具体的には問題になるわけです。ここの審議会ではそこまで見込んで書くというのはできないかもしれませんけれども、企業の法人税はどうするのだとか、個人の所得税の税率構造は今のままでいいのかどうか、課税最低限が今度の特別減税をやりますと490万円に上がる。アメリカが240万円ですから、その2倍以上になる。そういう形でこれからもいけるのかどうかというような問題、もう少し突っ込んで議論する必要があるのではないかという気がするわけです。

それから、財政負担の問題では、税金以外に、例えば医療保険制度などで高齢者負担分というのが相当あるのです。これはどこの企業でも同じだと思いますけれども。私どもの会社で見ますと、ちょうど医療の給付基金と同額くらいのお金を国に高齢者のために収めるわけです。こういうシステムになっている、これはえらいことだと私は思うのです。その結果として、医療保険制度が赤字になっているところがたくさんございます。だから、そういうところを基本的に直す必要があるのではないかという感じがあります。どういうような各経済主体が財政の負担をしていくのか、これは非常に重要だと思います。

これは政治の問題だということで、その辺になるとどうも表現が曖昧になりますけれども、私は、曖昧にしないで、その中に入っていった方がいいのではないか。あえて議論を呼び起こした方がいいのではないかという感じがするわけです。そういう負担の問題です。

第3点は、これも非常に重要なのですけれども、雇用の問題です。少子・高齢化がまだまだ進む。2050年あたりからはそうでない構造になるかもしれませんけれども、当面はこれは進んでいくと思うのです。その場合に、例えば公的年金の支給開始年齢を65歳にするとか、年金給付の賃金に対する比率を6割程度に抑制する、その他いろいろ書いてあります。それは方向としては私は正しいと思うのです。正しいと思うのですけれども、そういう資金を拠出するだけ企業に能力があるのかどうか、そういう能力を持った企業を育てられるのかどうかという問題です。

もう一つは、もう少し高齢者対策として早道なのは、企業が今の定年制を延長するのが一番いいと思うのです。大体60歳が多いと思うのですけれども、65歳という形で定年制を延ばしますと、体の弱い人では辞める人もあるかもしれませんけれども、このごろは非常に健康がよくなっておりますから働けると思うのです。そうなると、これは1つの解決方法だと思うのですけれども、企業の負担が増えます。その企業負担を、どうやって調整するか。それは法人税の減税とかそのほかいろいろありますけれども、そういうことを整合的にいろいろ考えてみなければいけないのではないか。

今度の合同報告書は大変やさしく書いてあってよろしいのですけれども、何かもう一つ、ここではそれ以上突っ込めないのかもしれませんけれども、もう少しピリッとしたものがあってもよいのではないか。それをやると各省間でいろいろ問題が起こると思います。起こっても、あえてそれをやらなければいけないのではないかという感じが私はします。

今さら、ここへ来てこの文章を変えてくれということは失礼ですから、そういうことはいたしませんけれども、これとは別に、せっかく大臣もおられますから申し上げたいと思うのですけれども、この機会に政府は、こういったものをベースにして、参考にして、実行計画というのを別に作られたらどうですか。中長期に、あるいは短期の問題もまだ解決しておりませんけれども、当面のそれこそ「緊急対策」、中長期をどう日本経済を持っていくのか、そういった実行計画。これは閣議の中で、内閣の中でやればいいことであって、こういった考え方もいろいろ出ているわけですから、それをベースにした実行計画というものを早急に作り、それで国民に協力を求めていく。そういうことをやる必要があるのではないでしょうか。内閣でやらないと、なかなか各省間でいろいろ議論し合っているとだんだんと肝心なところが薄まっていって抽象化してしまいますから、できない。それこそ、政治のリーダーシップだと思うのです。ぜひそれをやっていただくようお願いをいたしまして、私の発言を終わります。

ありがとうございます。

〔 D委員 〕 3点ほど申し上げたいと思います。

第1点は、私もF委員と全く同感で、不良債権に関して、この報告書で書かれているよりかなり問題が深刻ではないかと実感しています。ですから、不良債権に関する5ページ~9ページですが、これは米国との比較とか、いろいろ分析はされていますけれども、これをどう解決するか、どういう手段、どういう措置をとっていつまでに具体的に問題を解決するかということに関して、もう少し明確に書いていただきたいと思います。

2点目は、外部要因として、輸入の役割に関して、国民経済にどういう影響があるかということを、どこかでもう少し分析をしていただければと思います。先ほどG委員もおっしゃったように、物価に関する影響など、物価問題に関して輸入が果たす役割、特に競争を促進したり、あるいは経済を活性化したりする要因としての輸入です。これは特にアジアからの輸入のことを考えています。

3点目は、これも外部要因なのですが、15ページのグローバライゼーションに関する説明で、直接投資、日本における対日直接投資が比較的ほかの先進国と比べたら低いと書いてあるのですが、単に低いだけでなく、なぜ直接投資を増加することによって経済にいい効果があるのかということも少し書いていただきたいと思います。雇用の創出や雇用体系の新しいやり方、あるいは技術導入・技術革新とか、組織変革とか、税収とか、いろいろ対日直接投資が経済に対していい影響を与えると思うのですが、それをもう少し強調していただきたいと思います。

以上です。

〔 E委員 〕 大きく3つあるのです。1つは、こういうふうに数字をお示しいただくときに、私などは計量モデルを自分でやっていますと、どういう仮定のモデルなのかというのが非常に重要な気がいたします。ですから、例えばマネーサプライというのはどういう形でこの間推移すると仮定されているのか、それから、G委員、D委員からございましたけれども、物価、地価、為替レート、これの違いがすへて実質成長率に影響してくると思いますので、もし可能でしたら、そういうのも脚注などで入れていただければと思います。

第2点は、不良債権です。早くに解決できれば一番いいでしょうが、国鉄の赤字だってまだまだ続いているわけですから、そういう意味では、不良債権を塩漬けにするようないろいろな方策を考えていただいて、早期にやるということが必要だと思います。

それから、先ほどF委員からアジアの経済のことで日本の責任ということがご説明ございましたが、アジアは、一部日本の責任もございますが、私が調べたところですと、短期の資金がアメリカあるいはヨーロッパから相当流れて、それが急に出ていったという面も強いと思います。ですから、ここでは書き方としては、このままでも私はいいのではないかと思います。

以上です。

〔 B委員 〕 ちょっと気になっていることなのですけれども、雇用の問題です。この報告書の中で、例えば8ページ、9ページあたりに雇用の問題が出ておりまして、それでは特に雇用問題には十分な配慮を行うことが重要であるということで、現下の雇用情勢はかなり厳しいというトーンがあります。一方で、15ページのハ)では、「構造的な失業率の水準が上昇する可能性はあるものの、労働市場の整備がすすむことにより、失業の痛み」、この痛みという言葉は私はちょっと気になるのですけれども、何に対する痛みなのか、誰の痛みなのかということはあるのですが、国民経済にとって失業の痛みという意味か、一般に労働者という意味かはよくわかりませんが、「失業の痛みは緩和されると期待される。」と、さらっと流しすぎているので、トーンがちょっと違うのではないか。

私は、将来、そうなりたいと思いますけれども、しかし、現実の雇用環境の厳しさということはもう少しきちんとここで認識をした表現にした方が確実ではないか。我々が今一番不安なのは、高齢社会の問題と雇用不安だと私は思っているわけですけれども、その1つの雇用問題について、きちんとした厳しい認識というものを示した上で、将来こうなるのだという姿を示すことが大事ではないかというのが1点です。

もう一点、2010年のコラムですけれども、私は、これを非常に楽しく見ていたのです。といいますのは、今、我々は10年後にどういう世の中に生きているのだろうということについて考えるときに、なかなかそういうビジョンがというか、ピクチャーが出てこないです。それが今回、コーヒーブレークとか何とかということはありますけれども、2010年にはこうなっているかもしれないよ、というやや明るい感じのスケッチが出ている。

ところが、真ん中あたりで、2、3箇所でしたけれども、2010年と関係のない、いわば2010年というタイムゾーンを外れた表現がいくつかありましたので、これは全体のバランスからいけば2010年ということに時間的な軸を合わせてしまって、その中で可能な限り、ご指摘というか、主張される点を主張された方が全体としては非常に統一性があっていいのではないかと思います。

私は、2010年のこのスケッチは非常に評価しているわけです。

〔 H委員 〕 こういう厳しい現実ですので、報告書としては、元気の出る見通しを書く必要があると思いますので、第2章の6つの書き方は、ちょっと見て驚くぐらい楽観的に、しかし、力強く書かれていて、私は非常に結構であると思います。しかしながら、今、各委員からご指摘がありましたように、この現実は非常に厳しいと思うのです。

それで、一番最後のパラグラフに、それではどういうふうな社会をつくっていくかということで、「透明で公正な市場システム」と「環境と調和した社会」、これが資産だということですが、これは2つ並びますでしょうか。前者の方は、手段、ルールです。しかし、社会というのは、手段ではなくて、目的であろうと思うのです。

14ページに、「世界各国の模範たる『環境と調和した社会』を実現し、さらに技術を含めてその成功のノウハウを全世界に提供していくことにより、この分野での日本発のグローバルスタンダードを形成することを目指す」ということですけれども、事実、これは目的として書かれていると思うのです。

その次に、これに加えて、「人的能力、技術、文化」を並べてありますけれども、こういう手段と目的と、それからその他、例えば文化などというもの、つまり経済と文化との関係などが並列に並べてあるところが、この報告書の弱さではないかと思います。

それに加えてちょっと申し上げますと、先ほどの関係ですけれども、これからこういう危機を脱出するために効率性のある、また情報開示してやらなければいけないということですけれども、しかし一方で、経済主体のところでありましたように、NPOというのは自己責任を原則としている、また情報開示というのも原則であります。しかし、彼らはノンプロフィットでありますので、必ずしもプロフィットを目指さない。そして、効率性を目指すものではない。したがって、自己責任や情報開示というものを原則とした場合に、必ずしも経済におけるダイナミズムが生まれるかどうかわからないわけです。ですから、その辺のところが経済主体報告の方でのちぐはぐのような感じを生むのではないかと思うのです。そうしますと、最終的に、環境と調和した社会というようなものをつくったときの日本の姿を、例えば、先ほど言いましたようなイギリスのジェトルマンリィキャピタリズムのような、例えば日本の場合にはサムライの資本主義と言えるのかどうかわかりませんけれども、そうしたコンセプトを目的として出せればいいかなと。

何か手段が目的化されている、あるいは経済、文化、それから人間の生き方というものについての一番基本的なところのつながりがもう少しはっきりしないというふうに思いました。しかし、全体として、この報告書はこれでいいというふうに思っております。

〔 I委員 〕 中期的に、例えばGDP比の成長率ですとか、失業率の推計をおやりになる過程で、民間設備投資がどういうふうになるかというのは、恐らく、いろいろな仮定の中の一部として考えていらっしゃると思うのですが、しかし、それはこれには出ておりませんが、民間設備投資のところでは、先ほどもちょっとご指摘がございましたように、16ページに対内直接投資の問題点が述べてられているわけですけれども、対内直接投資の問題も含めて、民間設備投資全体を現在の非常に鎮静化しているといいますか、相当冷えきっている民間設備投資をどうやって立ち上げていくかという政策的なことも含めてお考えを明らかにしていただいた方が、数値のリアリティがあるかなという気がいたします。

〔 部会長 〕 どうもありがとうございました。ほかにいかがでございましょうか。

それでは、本日いただきましたご意見につきましては、特に消費者の立場からの物価、あるいは金利、あるいは不良債権、雇用問題に対する深刻さという問題も踏まえまして、経済社会展望部会の小林部会長とも調整した上で、経済審議会総会に報告したいと思います。

つきましては、時間の関係もございますので、本報告書の内容につきましては、部会長である私にご一任いただきたいと思いますがいかがでございましょうか。

             (「異議なし」の声あり)

〔 部会長 〕 ありがとうございます。では、そのようにさせていただきます。

さて、経済主体役割部会の会合は、本日、第11回目で最終回でございますので、最後にご出席いただいております尾身経済企画庁長官よりご挨拶を頂戴したいと思います。

〔 尾身大臣 〕 経済主体役割部会の委員の皆様におかれましては、昨年7月以来11回にわたりまして、大変精力的にご審議を重ねられ、本日、ここに報告書を取りまとめていただきましたことに、深く感謝申し上げます。

本部会は、構造改革後の経済社会や国民生活の将来像をわかりやすく国民に提示するために、改革により新たな対応を求められている各経済主体の役割と課題等についての検討を目的として設置され、経済社会展望部会とあわせて、いわば車の両輪として、幅広い見地からご議論をいただきました。

本部会が設置されましてから1年弱が経ったわけでございますが、我が国の経済社会の最近の現状をみますと、昨年末以来の経済の先行きに対する著しい不透明感にはやや落ち着く兆しがみられますものの、最終需要の停滞が生産や雇用等実体経済全体に及ぼす影響が強まっておりまして、景気は停滞し、一層厳しさを増していると考えております。

このような景気低迷の背景には、金融機関や企業の不良債権問題、日本的な経済システムの制度疲労の問題、産業の空洞化の問題等がございまして、早急にこれらの問題の解決を図る必要があると考えております。

このため、政府といたしましては、これまでも経済の実体に応じまして、昨年11月の緊急経済対策や、金融システム安定化対策等の迅速かつ的確な執行に努めてまいりました。さらに、本年4月24日には、総合経済対策を取りまとめたところでございます。

こうした状況の中におきまして、今回、取りまとめていただきました報告書では、現在の我が国の経済システムの問題点を明らかにした上で、現在進行中の諸改革の過程や改革後の経済社会におきまして、各経済主体がどのような役割を果たしていくべきか、そのために必要な制度上の改革は何か等につきましての具体的な提案が行われております。

具体的に申し上げますと、

規制の緩和・撤廃、民民規制の解消、情報開示と説明責任、評価システムの構築など、透明で公正な市場に向けた共通のインフラ整備のための施策に加え、

企業につきましては、コーポレートガバナンスの再構築や、新規事業やベンチャー企業を創出するシステムの構築、

個人につきましては、安心して働ける労働市場の環境整備や、自立した個人による投資・消費活動を支えるための環境整備、

政府につきましては、PFIなどの公共サービスへの民間活力の導入や、地方分権型行政システムの構築、

NPOにつきましては、その活動のさらなる活性化に向けた諸施策、

といったご提案をいただきました。

このような内容を含みました本報告書は、我が国経済社会システムの再構築に向けて、1つの羅針盤となるべき貴重なご提言であると考えております。

経済企画庁といたしましては、総合経済対策に盛り込まれました諸施策を着実かつ速やかに実行してまいりますとともに、この提案の実現に向けて最大限努力してまいり、国民や企業のコンフィデンスをさらに高め、我が国経済の回復を確かなものとし、活力ある21世紀を実現してまいりたいと思います。

本日、本部会は最終回ということでございますが、委員の皆様のご労苦に対しまして改めて厚く御礼申し上げる次第でございます。 なお、先ほど委員の先生方から、内外価格差の問題、あるいは金融・資産のリターンが非常に低いという問題、不良債権の処理の問題、アジア問題、財政再建の問題、雇用をどうするかという問題、対日投資の問題、環境と調和した社会の問題等々いろいろなご意見をいただきましたことは、私自身が現在の政策を行っていく上におきまして、実は大変頭を悩ましておりますし、また、取り組んでいる問題でございます。新しい経済社会システムを作り上げる過程の中で、景気対策もし、経済を順調な回復軌道に乗せていかなければならないというふうに考えている次第でございまして、先ほどの経済主体役割部会の考え方の方向、つまり、民間の活力を最大限発揮させるような枠組みを政府として作っていく、そして弱者の保護にも配慮をしていくというのが基本であろうかと思っているわけでございますが、そういう中におきまして、例えばベンチャーを育てていくとか、あるいは金融システムのより効率化を図っていくとか、自己責任の原則を貫いていくとか、そういういろいろな課題を抱えているわけでございますが、私自身の実感では、短期の景気対策は対策として不良債権の処理も含めてやってまいりますが、しかし、この際、日本をグローバルスタンダードに合わせたような形で効率的な経済システムとして直していかなければならない、そういう問題も同時に解決していかなければいけないと考えておりまして、今日ご意見をいただきましたことも大いに参考にさせていただけるのではないかという思いでございます。

これからも皆様のご教導をいただきながら、経済企画庁全体としても全力で頑張って、日本経済の活性化、そしてまた健全な発展のために努力してまいりたいと考えております。今後ともどうぞよろしくお願いを申し上げます。

本日は本当にありがとうございました。

〔 部会長 〕 尾身大臣、どうもありがとうございました。

それでは、経済主体役割部会の会合はこれで終わりとさせていただきます。なお、本日の審議内容等につきましては、私の方からこの後、記者クラブにてブリーフィングをさせていただきたいと存じます。

この部会の議事進行にあたりまして、各委員にご協力いただきまして心から感謝申し上げます。皆様、長期間のご審議、大変ありがとうございました。改めて御礼を申し上げます。

以上