第11回経済審議会経済主体役割部会議事概要
1.日時
平成10年6月9日(火)14:00~16:00
2.場所
経済企画庁特別会議室(436号室)(第4合同庁舎4階)
3.出席者
(部会)水口弘一部会長、金井務部会長代理、荒木襄、川勝平太、河村幹夫、鶴田卓彦、豊島格、那須翔、グレン・S・フクシマ、星野進保、星野昌子、吉野直行 の各委員
(事務局)尾身大臣、糠谷事務次官、林官房長、高橋企画課長、中名生総合計画局長、高橋審議官、貞広審議官、大西計画課長、染川計画官、涌野計画官、塚原計画官、大森計画官、安井計画官、田坂計画官、赤井計画官、小島計画官、荒井計画官、渡辺電発官、道上計画企画官、福島推進室長
4.議題
- (1)経済主体役割部会報告書(案)について
- (2)経済審議会経済社会展望部会・経済主体役割部会合同報告書(案)について
5.審議内容
(1)経済主体役割部会報告書(案)について
- ○事務局より資料2(経済主体役割部会報告書(案))に基づき説明。
- ○主な意見は次のとおり。
- ・政府部門については、単に民間の補完という位置づけだけではなく、政府としてやるべきことをポジティブに書いた方がよかったのではないか。例えば、公共事業の配分や発注の問題等にも触れた方がよかったのではないか。
- ・政府や企業のガバナンスが非効率とあるが、非効率というより、むしろやるべきことができていなかったということではないか。
- ・エッセンシャル・ファシリティ等、難解な用語があるので、用語集を作ったらどうか。
- ・個人の自己責任意識の不足の原因として、「結果の不平等に対する責任の転嫁」をあげているが、この他にもあるのではないか。
- ・中身には問題ないが、「はじめに」と「おわりに」が短い。変革の必要性、変革しなかった場合はどうなるのか、どうやって変革を実現するか、といったことをより強く打ち出した方がよかったのではないか。
- ・最近の日本の学生をみていると、一所懸命勉強するアジアの留学生に比べ、積極性に欠けている。学生にもっと危機感を持たせるような教育が必要。また、企業においても、多様な人材の育成・確保の視点が必要。
- ・「ナショナルミニマムを確保」とあるが、「ナショナルミニマム」の定義を明確にしないと、あれもこれもナショナルミニマムだから必要だ、ということになる。
- ・英国では、1970年代には英国病に悩まされ、その後サッチャリズムによって英国的なものが失われるような競争が起こった。しかし、そのような中でも、「自分たちの資本主義とは何か」という議論がアカデミズム側から起こり、「ジェントルマン・キャピタリズム」という概念が提示された。本報告書においても、新しい日本の経済社会を言い表すような言葉があれば、魂が入るのではないか。
- ○以上の議論の後、基本的に報告書(案)は了承された。
(2)経済審議会経済社会展望部会・経済主体役割部会合同報告書(案)について
- ○事務局より資料3(経済審議会経済社会展望部会・経済主体役割部会合同報告書(案))に基づき説明。
- ○主な意見は次のとおり。
- ・誰がこの報告書を読むのか明確になっていない。例えば、消費者という立場から見たとき満足できる内容とはいえない。労働者という立場では頑張らなければいけないというメッセージがあり、年金は今後維持できるということはあるが、物価について触れられていない。内外価格差の問題、消費者としては高い物価、企業としては高いコストでの生産が大きな問題である。物価については、為替の推移、構造改革の進展で内外価格差がどうなったのか、適正な価格になったのか、下がりすぎているのか、まだまだなのか、そういったことに触れていってほしい。消費者は雇用、年金、物価に関心があるから、物価に触れていけば消費者という立場も満足するのではないか。
- ・不良債権処理の問題で、内容はいいが、果たしてこんなに早く不良債権が調整できるのか。不良債権は定義によっても変わるが、一般に指摘されている他にも様々な分野を合計すればもっと大きな問題ではないのか。さらに今後も増えていく可能性が高い。政府としても相当思い切った覚悟がなければならないのに、対策が小出しであるから効果が少ないのではないか。アジア経済低迷との関連においても、日本の責任もあるのではないか。
- ・資源配分・財政負担の問題では、2010年に焦点を絞ってさらに詳しく検討するべきではないか。この問題では、将来、各経済主体の負担をどうするのかが問題である。法人税・所得税の問題、税率構造の問題がこのままでいいのかということをもう少し突っ込んで議論する必要があるのではないか。税金以外に、医療保険もかなり大きな問題である。こういった基本的な問題において各経済主体がどういった財政負担をしていくべきか、あいまいにしないで議論していくべきである。
- ・雇用の問題で、少子高齢化が進むとしたら、今後も企業に年金の負担能力があるのか、またはそのような能力がある企業を育てられるのかといった問題がある。高齢者対策の早道である定年制の年齢延長等も企業に負担となる。このような企業の負担をどうやって調整するのかといったことを整合的に考えてみなければならない。各省庁間で問題が起こることを恐れず議論を行い、政治がリーダーシップを取って短期、中長期の対策を発表すべきである。
- ・不良債権についてはこの合同報告書に書いてあるよりかなり深刻ではないか。どういう手段、措置でいつまでに問題を解決するべきかもう少し明確に書いたほうがいい。次に、外部要因としての輸入の役割、国民経済にどのような影響を与えるのか、特に物価に対して輸入が果たす役割、競争を促進するとか、経済を活性化する要因としてどうなのか分析をしていただきたい。
- ・グローバリゼーションの問題で、日本には外部からの投資が少ないとあるが、投資が増加すればどのように経済にいい影響があるのか少し書いていただきたい。新たな雇用、技術革新、税収など経済に関していい結果が期待できるのではないか。
- ・不良債権の問題では、様々な方策が必要であろう。アジア経済の低迷に関しては欧米からの短期的資金の流入と引き上げが大きな原因であるとも考えられるため、先ほどの指摘に関しては、この報告書の記述のままでよい。
- ・雇用の問題が気になっている。今の足元の数字は4.1%であるから、現実の雇用情勢 の厳しさをもう少し表現したほうがよいのではないか。高齢社会と雇用不安が大きな関心をひくと思っているが、雇用問題について厳しい認識を示した上で将来の姿を示すことが大事である。
- ・2010年のコラムはやや明るいスケッチがあり、非常に気に入っている。ただ、報告書の中に2010年とは関係のない記述がある。全体のバランスからいえば、2010年に時間的な軸を合わせて記述すれば統一がとれて非常によいのではないか。
- ・厳しい現実の中、このような報告書を出す必要がある。どのような社会システムを作るのかという表現方法で、手段・目的・経済や文化が記述されている部分が弱いのではないか。最終的に環境と調和した社会が作られたときの日本の姿で、どのようなコンセプトを目的として出せるのか。手段が目的化されていたり、さらには経済や文化といったものとのつながりが今一歩はっきりしていない。全体としてはよくできている。
- ○以上の議論の後、報告書(案)の内容については部会長に一任された。
(速報のため、事後修正の可能性あり)
連絡先
経済企画庁総合計画局物価班
TEL 03-3581-1538