第7回スペースとゆとり研究会議事概要
1.日時:
平成10年5月27(水)12:00~14:00
2.場所:
経済企画庁729会議室
3.出席者:
樋口廣太郎座長、奥谷禮子、叶芳和、堺屋太一、坂本春生、西藤冲、藤川鉄馬、クリスチャン・ポラックの各委員。
尾身経済企画庁長官、糠谷事務次官、林官房長、中名生総合計画局長 他。
4.議題:
- (1)「スペースとゆとり研究会」報告(案)について
- (2)スペース倍増緊急アピール(案)について
5.審議内容:
開会の後、中名生総合計画局長より、これまでの議論を整理した報告案及びアピール案について説明の後、委員より以下のとおり意見・提案があった。
○ 旅行などに行かなくとも、例えば学校の校庭の開放を広げていくことなどにより、日々の生活の中で身軽にスポーツや人と会合できるような環境を整えることも重要。今までどおりの考え方に基づく消費刺激策では、消費者の潜在需要に十分働きかけられない。その意味で実効を上げる為にもスペースの倍増が緊急である、というように訴えるべき。また、駅ビルにも駐車場をもっと増やし、パーク・アンド・ライドを進める必要がある。こうしたことの見直しも含めて、日本では、まちづくりの政策をもっとしっかりやっていく必要がある。
○ 足下は非常に厳しい経済情勢になっているので、マクロ経済政策もしっかり講じた上で、さらに広く「スペースとゆとり」というような提案をしているのだ、ということが分かるように訴えないと、国民が見た時、随分のんびりしたことを言っているととられる。定期借家権問題について、与党三党が改正案を提出するようだが、考えていたより早く実現しそうである。住宅を持っていない人への対策がどうなるか注目している。
○ 「都心居住の推進」に関しては、単に「通勤楽々」を進めるだけでなく、通勤の不要なテレワークの促進も図るべき。
○ 日本の相続税は高すぎる。相続税の在り方を見直すことについても触れるべき。土日の路上の有料駐車場の整備について、有料では十分アピールできないので無料にすべき。フランスでは土曜日は買物のために、日曜日は文化的な目的(美術館等)のために出かける。日曜日は店は休みだが人々は集まるし駐車場は無料である。
○ 高齢者マーケットの拡大に向けては、ベンチャーと高齢者をどうリンクさせていくかが課題。現行の相続税制度では、ベンチャー起業の意欲が抑えられてしまう。また、高齢者の就業意欲を高めるためには、所得を得ることによって受給年金額が減少するという現行の制度を抜本的に改める必要がある。働き方の自由度の拡大については、就業規則よりもむしろ正社員としての働き方を前提としている労働基準法の在り方が問題。パートタイマー労働者の社会保障問題や、正社員の働き方を多様化させる方向を考えなければならない。さらに、国民の休日に旅行が集中して交通や宿泊の料金も高くなっている状況を改めるためにも、国民の祝日をなくし、かわりに各個人が欧米並みに30~40日まとめて休みをとれるような制度をつくるべき。
○ 「不動産取引所」について、「情報の集中」はよいが「取引の集中」にはどういう意味があるのか。日本では現在プライバシー保護のため取引価格は公開されていないが、欧米では課税台帳の閲覧や行政当局が取引情報を集約して土地価格マップを公開する等の工夫がされている。我が国でも、取引価格を登記簿に掲載して閲覧可能とすることによって、不動産取引の透明化につながり、取引価格の適正化が達成されるのではないか。また、土日の路上の駐車場というのは、商店街の人々はむしろ車や自転車をどうやって路上にとめてもらわないかを考えているので、別途駐輪場などを整えることの方が重要ではないか。銀座で定期的にイベントを行い、そのノウハウを地方の銀座通りに広げるというよりも、各地方が独自性を持って考えることが重要。農地をより多目的に利用するということについては、食料安保の点から農地の使用目的を簡単に変更させないという哲学があり、直ちに変わるものではない。これに、風穴を開けていくには、何か鋭い針のようなもので突くような発想がないと一蹴されるおそれがある。
○ パリでは、登記簿の内容は誰も信用していない。何らかの税制上のメリットを与えるとともに、虚偽の登録をした場合には罰則を与えるなどにより、不動産取引所に取引を登録させない限り情報と価額の分断は解消されないままであろう。価格が不透明な現状では、企業の土地取引担当者は1年間物件を探し続けても高値で土地を購入したのではないかという批判を恐れて取引に手を付けられない。商店街の整型についても税制上の恩典は不可欠である。現在58,500ある街区公園の活性化、近代化の為には公園の使い方等についてあらゆる種類のコンペを行い活用を図っていく必要がある。住都公団については、行政改革では縮小の方向に議論が進んでおりビッグプロジェクト主義が見直される状況にあるが、総合経済対策では土地有効利用のために住都公団を活用するという一見逆行的な位置付けがされている。これをどう考えるか。農地は、完全自由市場制の中で余っている状況にあり、日本は土地の余っている国だということを国民に知らせるべきだ。山林に至っては、ただでも貰ってくれない。しかし、農山村空間を残して有効に利用するという点でグリーン・ツーリズムなどは進めていく必要があろう。駐車場については、住宅よりも固定資産税が高くなってしまうが商店街など皆が必要とする所では、税を下げて駐車場の整備を促進するべきである。
(これまでの意見に対し、尾身長官より以下のとおり説明)
定期借家権については、新規の借家についてのみ適用し、既存のものは除外するということで何とかまとまった。また、住都公団については、不良債権の処理が終わっていない現在の状態で虫食いの土地を整備していくには、パブリック・セクターでも使える能力は使っていこうということから対策に取り入れられた。
閉会に当たり、以上の討議において出された意見を座長一任のもとでとりまとめ、報告及びアピールとしてまとめることで了承された。
最後に、尾身長官より、各委員より熱心な議論を頂いてまとめる運びとなった報告書及びアピールを有効に活用していきたい、委員各位に改めて御礼申し上げる旨挨拶があった。
以上
なお、本議事概要は、速報のため、事後修正の可能性がある。
(連絡先)
経済企画庁総合計画局計画課経済構造調整推進室
(担当)福島、押田
TEL 03-3581-0783(直通)