第10回経済審議会経済主体役割部会議事概要

1.日時

  平成10年5月19日(火)10:00~12:00

2.場所

  経済企画庁特別会議室(436号室)(第4合同庁舎4階)

3.出席者

(部 会)
水口弘一部会長、金井務部会長代理、荒木襄、川勝平太、河村幹夫、ポール・シェアード、末松謙一、
西村清彦、樋口美雄、グレン・S・フクシマ、星野進保、星野昌子、和田正江 の各委員
(事務局)
糠谷事務次官、林官房長、高橋企画課長、中名生総合計画局長、高橋審議官、貞広審議官、大西計画課長、染川計画官、涌野計画官、塚原計画官、大森計画官、安井計画官、田坂計画官、赤井計画官、小島計画官、荒井計画官、渡辺電発官、道上計画企画官、福島推進室長

4.議題

  1. (1)経済主体役割部会報告書(素案)について
  2. (2)経済審議会報告書(展望・役割両部会合同報告書)(素案)について

5.審議内容

(1)経済主体役割部会報告書(素案)について
  • ○事務局より資料2(経済主体役割部会報告書(素案))に基づき説明。
  • ○主な意見は次のとおり。
    • ・提言の実効性をどう担保するかが重要。例えば、金融ビッグバンのように、期限を設定するなど、拘束力をもたせることはしないのか。
    • ・市場機能を発揮させるために評価機能が必要とあるが、評価する主体は誰かが不明確。評価主体には公正性、中立性が必要。
    • ・個人の役割のところで、「教育を含めた、個人が自立していくための基礎的インフラの整備」が必要とあるが、現在までに整備されたシステムではうまくいかなかったという認識であるのだから、「整備」ではなく「再構築」とすべき。
    • ・「官から民へ」とあるが、この場合の「官」は主として中央政府を指しているようだが、地方政府のスリム化も必要。
    • ・ベンチャー優遇税制等、税制の問題についての記述が不十分。
    • ・情報開示のところで、「利用者にとって分かりやすい情報開示がなされるような仕組み」とあるが、これに加えて、利用者が必要なときに情報が得られることが重要。
    • ・企業に関する部分については、労働市場に関する記述が少なく、バランスがとれていない。コーポレートガバナンスの再構築と雇用流動化はセットで考えるべき。
    • ・今後の政府の役割・あり方については、安全ネットの整備が重要。例えば、今後失業率が上昇すれば、失業手当や職業訓練等の労働市場の安全ネットが必要になる。
    • ・持株会社についての提言は具体的でない。特に、連結納税制度の導入については、財界やマスコミも反対しておらず、より積極的な記述にすべき。
    • ・個人の自立のための教育については、もう少し書き込んだ方がいい。
    • ・市場原理の徹底等を踏まえれば、司法改革についても触れるべき。
    • ・日本で新しいベンチャーが出て来ない要因として、ベンチャーキャピタルの質の問題がある。日本のベンチャーキャピタルは金は出すが口を出さない。技術力はあるのだから、後はベンチャーキャピタルの技術的裏付けやガバナンスを確立することが必要。
    • ・3.9%という現在の失業率を考慮すると、失業について強い認識を持った方がいい。 素案は職を持っている個人を前提としている。
    • ・展望部会では、失業を全面的に取り上げている。役割部会でも入れるか否かは検討して欲しい。
(2)経済審議会報告書(展望・役割両部会合同報告書)(素案)について
  • ○事務局より資料3(経済審議会報告書(展望・役割両部会合同報告書)(素案))に基づき説明。
  • ○主な意見は次のとおり。
    • ・日本経済がグローバリゼーションにどう対応していくかについてはうまく書けているが、国家間の関係が変化していく今後は、もう一歩先を踏まえ、アジア等地域経済のことを考え、どのようにグローバリゼーションに対応していくかを考えることが重要である。
    • ・最近日本では生産性の低下が問題であると言われるようになったが、モノづくりの生産性ではなく、管理(間接部門)の生産性が非常に低いことが問題であり、その点にも触れた方がよい。また、間接部門の余った人員を如何に新規事業に向けるかが重要である。
    • ・構造的な失業を検討する際には、トレンドをとって、各国比較を行って、低いとするだけでは機械的であり、説得力に欠けるのではないか。
    • ・日本においては、地方と中央政府の関係が大きな問題である。現在の公共事業のかなりの部分が地方に対する所得移転の制度となっており、地方の中央に対する経済的依存の関係を変えなければ、構造改革そのものが進められないのではないか。
    • ・失業に関する認識が、どちらかと言えば甘いのではないか。例えば失業率の上昇は、労働市場の構造変化を反映した自発的な失業が大きいとなっているが、過去3カ月を見ると失業率が急激に上がっており、非自発的失業(足元の景気低迷に伴う景気循環的な失業)の問題も前面に出すべきである。
    • ・労働市場の流動化がなぜ進まないかについては、職業紹介等の規制の問題もあるが、現状の認識として、労働需要が不足しているという点をもっと強調すべきである。
    • ・日本が直面している全ての問題をとらえ、報告書全体として整合性のとれた戦略的ビジョンを出していくことが望ましく、利用価値も高まるのではないか。
    • ・不良債権問題については、その処理見通しを試算するよりも、根本的に問題を解決するためには、今後の処理をどうすればよいのか、例えば期間を設け集中的に一気に処理するというような方法を提示するという形も考えられるのではないか。
    • ・構造改革の痛みの分析については、例えば循環的、構造的、過去のストックの3つの観点に分けて議論を整理すればよいのではないか。記されている2つの痛みに加え、不良債権問題のような一気に解決できる従来のシステムのストックの痛みがあり、その点の議論をもう少し整理すべきではないか。
    • ・株式持ち合いについては、解消の方向に着実に進むと思われるが、縮小するのか完全に崩壊してしまうのかを区別して、はっきり記述すべきである。また、年金基金等の機関投資家は安定的に株式を保有という表現があるが、むしろ個別銘柄では不安定的で、厳しく企業を見て投資スタンスを決めることによって、ビッグバンのプラスの効果が出て、企業、経営者、従業員ベースの自己責任が生きていくようになるのではないか。
    • ・コーポレートガバナンスについて、企業間での株式持ち合いの解消に伴って、株主がその役割を強めていくという記述があるが、曖昧であり、もう少し具体的に表現すべきである。
    • ・不良債権問題に関して、銀行のクレジットクランチ問題という表現は信用収縮という意味であって、そういう事態があったかどうかは議論が分かれており、そういう表現をする際は細心の注意が必要である。
      (速報のため、事後修正の可能性あり)

連絡先 

経済企画庁総合計画局物価班

TEL 03-3581-1538