経済審議会第11回経済社会展望部会議事概要

1 日時:

平成10年5月18日(月)14:30~16:30

2 場所:

経済企画庁特別会議室(436号室)

3 出席者:

香西泰部会長代理、岩田一政、角道謙一、黒田晁生、小島明、小林佳子、佐々波楊子、長岡貞男、長岡實、奈良久彌、成瀬健生、濱田康行、深海博明、村田良平、師岡愛美、八代尚宏、鷲尾悦也の各委員
糠谷事務次官、林官房長、高橋企画課長、貞広審議官、高橋審議官、大西計画課長、染川計画官、涌野計画官、塚原計画官、大森計画官、安井計画官、田坂計画官、赤井計画官、小島計画官、荒井計画官、渡辺電源開発官、道上計画企画官他

4 議 題:

  1. 【1】経済社会展望部会報告書素案
  2. 【2】経済審議会展望・役割両部会合同報告書素案

5 審議内容:

【1】経済社会展望部会報告書素案について事務局より説明。これに対して委員からの主な意見は以下のとおり。
  • ○ 雇用問題については、3頁では「失業が生じるのはやむを得ない」との意識が根底にあるようだが、結果として生じる失業の痛みについてはそれを和らげる政策を示すことが必要である。もちろん構造改革を妨げるようであってはいけないが、失業があっても成長につながるとは思えない。
  • ○ 労働市場の改革については、先に労働市場のルールを整備することが必要であり、例えば、6頁の「(2)雇用問題に配慮した政策展開」の【2】については「労働市場のルール整備を図りつつ」ではなく、「ルールの整備を前提として」であり、11頁の「【2】労働・資本等の柔軟な移動の確保」についても同様のことが言える。
  • ○ 12~13頁の結果の平等と機会の平等について、その趣旨はわかるが、結果の平等を指向したことがいかに労働者のモラルを上げているかについて明確に述べるべきである。従って、結果の平等を相当程度尊重した上で、機会の平等を図るシステムが望ましいと考える。
  • ○ 21頁の「流動性と安定性を兼ね備えた労働市場」については、労働者の職業能力開発を図ることは重要であるが、本当に安定性が確保されるのか労働者は不安に思っているので、それが可能であることを提言すべきである。
  • ○ 高齢者が働く条件を整備するということも書いておくべきである。高齢者が稼ぐことによって後世代に負担させないようにすることが重要であり、社会保障制度だけを目の敵にするのはおかしい。
  • ○ 不良債権は長期化債権とは異なるので区別すべきである。例えば、4頁にあるような「希少な経済資源とみなされ収益性に基づいた地価形成がなされる」ような土地は不良債権ではなく長期化債権であり、時間をかければ回収できる。政府の金融政策も着実に行われているので、時間をかければ解消できるということも書くべきではないか。
  • ○ 報告書は誰を対象にしたものか、国民全体か、経済界、産業界、政策担当者が対象か。国民全体を対象にしたものであるならば、表現や用語に問題があるのではないか。例えば、1頁に「漠然とした不安感」(3頁4行目も同じ)、「誤解がある」との表現があるが、国民の不安感は「漠然」ではなくより真剣なものであり、国民が「誤解」しているとは思わない。また、外国語の表現が多く、例えば14頁のシステミックリスクについては具体的に何を指しているのか内容的な説明がない。6頁の「消費者態度の悪化」は国民のことを考えた表現にすべきである。
  • ○ 9頁に「3つの視点」と書かれているが、「プラスのストック」については10頁に少し触れてあるだけなので、詳しく書く必要がある。10頁の第3パラは何を言っているのかわからない。また、「透明で公正な市場システム」で環境問題が解決できるのか。「環境と調和した社会」は10頁の第2パラで大上段に書いてあるが、これと両立できるのか。両者はある面ではトレードオフの関係にあるので、書き振りを考えるべき。
  • ○ 素案を読むと内向きで一国主義的な印象を受けるが、日本はサミット参加国として国際的な貢献を求められていることから、CO2対策のための対外的な技術移転など外向きのメッセージを出すことはできないか。
  • ○ 地球環境問題については、本質的に解決すべき問題があるはずであるが、ある部分だけが強調されている。例えば、15頁の「環境と調和した社会」において、『地球環境問題への対応策には「市場的な側面」がある』とあるが、環境問題には市場の失敗もある。COP3の90年比6%削減というのは地球温暖化を防止するための第一歩に過ぎないとの認識を持っていた方が適当である。合同会議対策については、供給面での対策が実現できることが前提であるとともに、それを実現することが本当に可能かという問題も存在する。この様な問題を正面から取り上げる必要があるのではないか。
  • ○ 4頁において「経営の破綻した金融機関については市場からの円滑な退出」、「不採算の金融機関の思い切った整理」とあるが、その結果雇用が失われることとなるので、「雇用維持の努力を前提に」や「地域経済への影響に配慮しつつ」という表現を但し書にでも加えるべきである。
  • ○ 14頁の(4)について「公的資金の導入は、市場メカニズムの原則に則って」とあるが、先日行われた公的資金の導入が市場メカニズムに則ったものと言えるのか。もう少し言葉を補った方が良いのではないか。
  • ○ 23頁、34頁において、比較劣位産業から比較優位産業へ労働力が移動すべき旨の記述があるが、比較優位産業は省力化された産業が多いことから、比較優位産業では雇用を吸収しきれないので、雇用確保のために新規産業が必要であることにも力点をおくべきである。
  • ○ 将来そんなにひどいことにはならないという印象を持たせることが重要であるが、本素案ではそれに沿った形になっている。
  • ○ 失業問題について、政府の対策も重要だが、日本ではこれまで民間の労使関係がそのほとんどを解決しており、その結果失業率が低いことも事実。その辺りについて触れるべき。
  • ○ 不良債権について、土地を如何に流動化させるかについては触れられていない。極端な話をすれば、2年間くらい譲渡所得税をゼロにするくらいのことをやってマーケットを作れば、その間に民間はほとんどの土地を流動化させるだろうし、その結果残ったものを政府で対応するというように、思い切った対応が必要ではないか。
  • ○ 報告書で将来は悪くならないということを示すのは意味があるが、報告書が発表される6月、7月の時点で見たときに、報告書の内容どおりにうまくいくかが問題である。丁寧に分かりやすく中身を書くべきである。
  • ○ 地球環境問題についてはCO2中心に書かれているが、それ以外の温室効果ガスはどうするのか、また、排出権取引や森林吸収はどうするのかといった幅広いとらえ方が必要ではないか。
  • ○ 不良債権問題の解決のために必要な施策は十分か。米国の場合のREITなどのように不動産そのものの証券化について更に民間のビジネスを引き出す政策が必要ではないか。
  • ○ 不良債権問題については、情報の非対称性が存在するので、アメとムチの政策、具体的には、正確な不良債権額を早く公表した者や不良債権を早く償却した者が得をするようなメカニズムが必要ではないか。
  • ○ 金融機関が70兆もの不良債権を抱えているという話が出てもだれも驚かない。問題はそれだけの不良債権を抱えながら、製造業や米国の例と比較して金融機関のリストラが進んでいないことである。金融機関からの失業が増えれば、全体の失業が減るのではないか。金融機関の本格的なリストラなしには何も動かないのではないか。
  • ○ 22頁においては、女性や高齢者が参加し得る環境について具体的に踏み込んでいるので評価できる。
  • ○ 23頁の「我が国経済の比較劣位産業が途上国に代替される」というのは好ましくない。検討した方が良いのではないか。
  • ○ 合同報告書は読まれても部会報告書まではなかなか読んでもらえないので、1~2枚の要約版を作ってはいかがか。
  • ○ 不良債権については、7年間待って、その上でもっと待てというのでは商業銀行ではない。
  • ○ 明るい展望を書くのと厳しい内容を書くのとでは、かなりギャップが大きいので、どのように取りまとめるかが難しい。
  • ○ 今回出た質問には、事務局から文書で回答することとしたい。
【2】経済審議会展望・役割両部会合同報告書素案について事務局より説明。これに対する委員からの主な意見は以下のとおり。
  • ○ 合同報告書は部会報告書よりも暖かい内容になっている。部会報告書は内容が冷たすぎるので、合同報告書のトーンの方が良いのではないか。
  • ○ 日本型とアングロサクソン型のシステムのうち良いものを取り入れるという考え方には異存はないが、それぞれを比較するだけではなく、日本にとって良いシステムがデファクトスタンダードとして取り入れられるようにすることが必要ではないか。

6 今後のスケジュール

次回第12回経済社会展望部会は6月9日の10時00分から開催する予定。

以上

なお、本議事概要は、速報のため、事後修正の可能性があり得ます。

(本件に関するお問い合わせ先)

経済企画庁総合計画局計画企画官室

電話:03-3581-0977