経済審議会経済社会展望部会(第10回)議事録

時:平成10年4月27日

所:経済企画庁特別会議室(436号室)

経済企画庁


経済審議会経済社会展望部会(第10回)議事次第

平成10年4月27日(月)14:00~16:00

経済企画庁特別会議室(436号室)

  1. 開会
  2. 経済社会展望部会報告書スケルトン(案)
  3. 経済審議会展望・役割両部会合同報告書スケルトン(案)
  4. 閉会

(配布資料)

  1. 資料1 経済社会展望部会委員名簿
  2. 資料2 経済審議会経済社会展望部会報告書スケルトン(案)
  3. 資料3 経済審議会展望・役割両部会合同報告書スケルトン(案)
  4. 資料4 経済審議会経済社会展望部会の今後の審議スケジュール

経済審議会経済社会展望部会委員名簿

部会長

小林 陽太郎

富士ゼロックス(株)代表取締役会長

部会長代理

 

香西 泰

(社)日本経済研究センター会長

稲葉 興作

日本商工会議所会頭

 

石川島播磨重工業(株)代表取締役会長

井原 哲夫

慶応義塾大学商学部教授

井堀 利宏

東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授

岩田 一政

東京大学大学院総合文化研究科教授

角道 謙一

農林中央金庫理事長

川勝 堅二

(株)三和銀行相談役

黒田 晁生

明治大学政治経済学部教授

 

日本経済研究センター主任研究員

小島 明

(株)日本経済新聞社論説主幹

小長 啓一

アラビア石油(株)取締役社長

小林 佳子

(株)博報堂キャプコ取締役

佐々波 楊子

慶応義塾大学経済学部教授

下村 満子

(財)東京顕微鏡院理事長

清家 篤

慶応義塾大学商学部教授

鶴田 俊正

専修大学経済学部教授

中井 検裕

東京工業大学大学院社会理工学研究科助教授

長岡 貞男

一橋大学イノベーション研究センター教授

長岡 實

東京証券取引所正会員協会顧問

 

日本たばこ産業(株)顧問

奈良 久彌

(株)三菱総合研究所取締役会長

成瀬 健生

日本経営者団体連盟常務理事

濱田 康行

北海道大学経済学部教授

樋口 美雄

慶応義塾大学商学部教授 

ロバート・アラン・フェルドマン

モルガン・スタンレー証券チーフエコノミスト 

深海 博明

慶応義塾大学経済学部教授

福井 俊彦

日本銀行副総裁

村田 良平

(株)三和銀行特別顧問

村本 孜

成城大学経済学部教授

師岡 愛美

日本労働組合総連合会副会長

八代 尚宏

上智大学外国語学部国際関係研究所教授

吉井 毅

新日本製鐵(株)代表取締役副社長

吉川 洋

東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授

鷲尾 悦也

日本労働組合総連合会会長


〔 部会長 〕 それでは、時間でございますので、ただいまから第10回の経済社会展望部会を開催いたします。

お忙しいところをご出席いただきましてありがとうございました。

今日は、我々の経済社会展望部会の報告書のスケルトン、経済審議会合同報告書スケルトン(案) についてお諮りしたいと思っております。

経済審議会では、現在、私どもの部会の他に役割部会においても審議が進められております。審議会の豊田会長、役割部会の水口部会長ともご相談いたしまして、経済審議会としての両方の部会での議論をわかりやすく紹介する。その目的のために合同の報告書を出してはどうかというふうに考えております。

そういうことで、今日は、取りまとめ作業が進んでおります展望部会の報告書スケルトン、それに加えまして後ほど合同報告書のスケルトン(案)も是非ご議論いただきたいと考えております。

それでは最初に、展望部会報告書スケルトン(案)について事務局よりご説明をお願いいたします。

〔 事務局 〕 それでは、資料2経済社会展望部会報告書スケルトン(案)を簡単にご説明申し上げたいと思います。

スケルトン(案)は2章プラス補論という構成になっております。

I.危機脱却に向けた政策運営の基本的考え方と回復は、足下から回復に至るフェーズに関しての中身でございます。

3ページの下4行目ぐらいからII.我が国社会の構造改革の展望というタイトルに基づきまして、長期的ないろいろな展望を盛り込んでおります。そこから後ろの方3ページぐらいから、こういう展望を具体的に国民生活、あるいはライフスタイルという場に翻訳した展望を行っているという構成にスケルトン(案)ではさせていただいております。

まず1ページのI.でございますけれども、足下から回復に至るフェーズということで、このチャプターが全体で3節構成になっております。まず1節の我が国経済の長期低迷の要因ということで、冒頭、長い景気低迷の背景を4つのキーワードで簡単に触れております。すなわち「負の遺産」の処理の遅れ、「サプライサイドの対応の遅れ」、「将来への不透明感」、4として、「これらの中で生じたアジア危機等を踏まえて全体の総需要が下がっている」。こういう4つのキーワードを述べた後、以下【1】から【3】で、特に「負の遺産」、「供給システム面の対応の遅れ」、「将来への不透明感」というキーワードを簡単に説明するという構成にしております。

第2節は、政策体系(優先度と重点)のあり方ということで、「我が国経済を成長軌道に回復させるためには、『負の遺産』の迅速な処理、『供給面への対応』、『総需要喚起』、『将来への明確な展望』といった4つの柱を政策体系の基本とするべき。」、いわゆる4本柱がパッケージになった政策体系ということの重要性を触れた後、その視点として2つの「・」がありますけれども、最初の「・」は、どちらかというと政策のプライオリティー、あるいはシーケンスという観点で、まず金融システムの安定化を最優先とする。他方、と同時に改革路線の堅持ということを書いてみてはいかがかというふうに考えております。

その後、いくつかの留意点ということで短期、長期のトレード・オフ、改革には痛みが伴うというメッセージを出しつつ、2ページに入りまして、さらには、政策体系というのは内向きであってはならないということで、世界の潮流にマッチした外向きの政策を行うべきということを書いてみてはいかがという構成にしております。

その後、具体的な政策体系の姿ということで【1】から3ページに至りまして【5】まで5つの観点で書いてみてはどうかということであります。

まず2ページの【1】最優先課題としての金融システム不安の解消ということであります。言うまでもなく金融システムの安定ということは最優先課題だということで、ただし、その際でも中長期的視点に立った市場原理との整合性の確保ということを書いてみてはいかがということであります。

【2】は、いわゆる不良資産問題への対応ということで、土地ワーキング・グループからいただきましたメッセージをここに書き込んでみてはいかがということです。「・」の2つ目で、その際のアプローチということで、後にも述べますように中長期的には収益性に基づいた地価形成がなされるということを考えますと、市場における障害を取り除いて収益性の向上を図ることが重要であるという観点から、原則市場メカニズムということを書いた後、ただし、公的支援ということの必要な場合もあるだろうということで、土地ワーキング・グループでいただいたメッセージをここに書いてみてはいかがということであります。

【3】財政構造改革とマクロ経済政策ということで、最初の「・」は、財政の健全化は不可欠と言うと同時に、他方で弾力的な経済のマクロ政策の展開ということで、低迷を続けている現在の状況を考えると、いくつかの減税政策というのも重要であろうということであります。

「・」の3つ目、ただし、その場合の歳出面の一層の合理化ということと同時に、歳出内容についても選択的な配分を行っていくことが重要ではないかということを書いてみてはどうかということであります。

【4】は、サプライサイド政策の一層強力な推進ということであります。特にここでは有効な生産要素、資源を生産性の低いところから高いところにシフトさせるという視点での構造改革の重要性ということを書いた後、この際、特に重要なのが労働市場の需給調整機能の強化ということに触れております。

3ページにまいりまして、こういう調整機能があってはじめてマクロ政策の有効性を高めて、改革の果実を享受できるということを書いてみてはどうかということであります。

【5】でございますけれども、特に現下の厳しい雇用情勢ということにかんがみて、政策体系の5番目ということで、雇用政策に配慮した政策展開というのを1項目起こしてはいかがかということであります。

その際、労働需要は今の派生需要ということでありますので、景気回復ということに期待せざるを得ない面があるわけでございますけれども、以下の点に特に留意ということで、1)、2)、3)のようなメッセージを出してみてはいかがかということであります。

以上のような政策体系の下に、我が国経済は現在の低迷からどのように脱却していくかということで、若干数字を使いながら、あるいは係数を使いながら、適宜、今後の中期的な回復径路を示すということであります。

特に不良債権の処理の展望でありますけれども、本日はまだ作業の途上でお示しはできませんけれども、データの制約等いろいろありますけれども、もし可能であれば、不良債権は今後どうなるのかという視点で何か書けたらなというふうに考えております。

もう一つは、我が国経済のマクロの中期展望ということで、我が国経済は中期的に安定成長軌道に乗るかどうかということを、先週金曜日の総合経済対策、今後の財政構造改革等を織り込んだ中期の展望をお示しできたらということで作業を進めております。

なお、第II章にもつながりますけれども、今後の中期的なポテンシャルグロースをどのように考えたらいいのかということを、定量的、定性的に何か考え方をお示しできればと思っております。

以上を踏まえまして、若干文学的な表現になっておりますけれども、(3)「失われた10年」から「新たな10年」ということで、以上の分析あるいはステートメントを踏まえて第II章へのつながりとして、いくつかの課題を確認するというようなことをしてみてはいかがかということであります。

続きまして第II章我が国経済社会の構造改革後の展望というチャプターでございますけれども、まず最初に第1節としましては、「我が国経済が長期的に克服すべき課題は何か--」という書出しの下、こういうクエスチョンを出した後、中期的な課題を克服した後の我が国の長期的な課題を3ページから4ページあたりにまず書いておく。

4ページに移らせていただきまして、その後、いくつかのポイント、いくつかのエグザンプルを出して、現在の日本経済の長期の姿に関して、先行きに関していくつかの不安材料があるということを認識しまして、いくつかの例示を出す。こうした漠然とした不安感に以下答えるという形にできるだけしてみたいということであります。

これを踏まえた後、新しい我が国経済社会を見る視点は何なのかということで、この部会でもご議論を賜りました3つのキーワード「透明で公正な市場」、「環境と調和した社会」、「プラスのストックの未来への継承」という視点をここで述べております。

続きまして第2節、以下1つ1つのキーワードがずっと続いていきます。まず第2節は「開かれた透明で公正な市場システム」というタイトルを受けまして、以降、各ワーキング・グループからのメッセージを整理したものになっております。

(1)透明性と効率性の確保ということで、具体的には~「透明で公正な市場システム」が有効に機能するための前提条件は何か~ということで、4ページの下段【1】で情報開示と市場モニタリングシステムの強化ということに関していくつかのポイントをここで触れております。例えば下から2つ目ですと、市場モニタリングシステムの強化ということで、労働市場におけるいくつかのこういうルールの遵守ということについてのモニタリング機能の強化というようなポイントも触れてみてはいかがかというふうな案になっております。【2】生産要素等の柔軟な移動の確保というのも1つの前提条件であろうということで、市場メカニズムが有効に働く経済社会というのは、経営資源が価格をシグナルとして効率的に配分されるための柔軟な移動が前提ということで、ここでは、ヒト、モノ、カネという3つのリソースに関して少し基本的なことを書いてみてはいかがかという案になっております。

ヒトにつきましては産業間のモビリティー、それから後ほども出てまいりますけれどもエイジフリー、ジェンダーフリーという視点でのモビリティー。もう一つは、ライフスタイル・ワーキング・グループからいただきましたメッセージでございますけれども、年齢を問わず労働と学習を自由に選択し、各人の人的能力を高めることができるような環境を整備すること。いわば複線型ライフコースの考え方でありますけれども、こういうポイントを入れてみてはどうかということです。

モノについては、産学官の連携ということで、幅広く技術を必要とする分野に技術全体が幅広く波及するという視点とか、技術革新ワーキング・グループからもう一ついただきました新しい社会的ニーズ、すなわち地球環境保全とか、高齢者社会への対応ということが、こういう技術の波及ということで重要ではなかろうかという視点が入っております。

もう一つは資本ということであります。

【3】グローバリゼーションの視点から見た透明で公正な市場ということで、透明で公正な市場システムにとってグローバリゼーションが持つ意味合いをとりあえずここに入れてあります。言うまでもなく、ここのパートはグローバリゼーション・ワーキング・グループからいただいたメッセージが盛り込まれております。

もう一つのポイントとして(2)新しい市場システムにおける公正(フェアネス、ジャスティス)な位置づけということを5ページの下半分から書いております。

まず【1】の基本的考え方ということでありますけれども、これまでの結果としての平等重視が大変成功してきたわけでございますけれども、これがもたらす非効率性という下に、これまで日本経済の場合は成長と平等がある意味では好循環をしてきたわけでございます。これを支えた1つのシステム、制度があったわけでございますけれども、高成長が期待できない今後でも、こうした結果としての平等を過度に重視したことをやれば、かえって非効率性の罠に陥るのではないかというメッセージを出してみてはどうかということです。

これを踏まえまして~新しい公正基準としての「機会の平等」と「再挑戦可能性」~ということで、当部会でもご議論されましたけれども「機会の平等」とか「再挑戦可能性」というキーワードで物事を考えてみたらいかがかということでございます。

6ページの上になりますけれども、「結果としての平等」から訣別して、今後は構造改革による効率の一層の追求によって経済全体のパイを大きくするということが、結果的には公正につながるというふうに考え方を変えて、公正の新しい基準として「機会の平等」、「再挑戦可能性」というのを考える。一定の条件のもとに経済全体でのある程度の「結果としての不平等」を容認することが必要というふうなメッセージにとりあえずさせていただいております。

~「透明で公正な市場経済」は所得分配を過度に悪化させるか~というクエスチョンの下に、ここにありますようなことを書いてみてはいかがかと思います。

【2】セイフティネットの考え方ということで、セイフティネットは基本的にはもちろん必要。ただし、結果としての過度の平等をもたらすものであってはならないわけで、「機会の平等」とか「再挑戦可能性」を担保する必要最小限のものであることが必要というようなことを書いてみてはいかがかということです。その際の課題ということで、真の経済的弱者と見せかけの経済的弱者をどう識別するかとか、モラルハザードの問題をどう回避するかという課題ももちろんあるということも触れてみてはいかがかということです。

もう一つは【3】として、透明で公正な市場システムにかかる問題として、21世紀におけるシステミックリスクへの対応、システミックリスクへの備えと管理ということで、2つの「・」がありますけれども、ここにありますようなことをとりあえず書いておきました。

3.環境と調和した社会(市場システムと調和した低排出型社会)が、6ページの下半分から始まっておりますけれども、(1)CO2 排出削減対策の経済成長への影響ということであります。CO2 排出削減対策は経済活動にどのような影響を与えるのかということで、前回の当部会で深海座長からご紹介のありました、地球環境ワーキング・グループのメッセージを6ページから7ページあたりに書き込んでおります。

それを受けて(2)、これも地球環境ワーキング・グループからのメッセージで、低排出型社会に向けた見取り図ということで、「技術」、「産業構造」、「社会システム・インフラ」、あるいは「ライフスタイル・社会意識」という4つの側面から少し丁寧に書いてみてはいかがかということで、【1】技術、【2】産業構造・企業行動、【3】社会システム・インフラという順番に簡単に書いてございます。

8ページが【4】ライフスタイル・社会意識、【5】低排出型社会の構築へ向けての施策等。【5】はこういう中での政府の対応ということで、政府は規制的措置、あるいは経済的措置を適切に組み合わせることによってCO2 削減効果を確実なものにしていく。それから、地方自治体の役割、NPOの役割ということもここに書いてみてはいかがかということであります。

4.プラスのストックの次世代への継承。3つ目のキーワードでございます。これについては、まず(1)が柔軟・創造・挑戦型産業構造と書いてありますけれども、以下、各ワーキング・グループの主要なメッセージのポイントをここにずっと書いていくという形にしてあります。

(1)の柔軟・創造・挑戦型産業構造は、まず規制緩和ということで、非製造業の生産性が相対的に上がります。こういう中で柔軟・創造・挑戦型産業が構築される。こういう中でいわゆる仲介機能の役割の強化の重要性の高まりということを触れております。

その次が技術革新ワーキング・グループからいただきました~今後の技術革新の姿はどうなるのか~ということで、いただきました4つの視点ということを8ページに盛り込んでございます。

9ページにまいりまして、~産業構造はどのように変化していくのか~ということで、産業構造ワーキング・グループからいただきました試算等を盛り込んで定性的にこの部分で述べております。

(2)流動性と安定性を兼ね備えた労働市場ということで、雇用・労働ワーキング・グループからいただきました視点ということで、新しい雇用の創出、構造調整に耐えうる安定性、その結果としての調整コストの最小化というメッセージをここで書いております。その後、疑問ということで、「労働力供給の減少により経済成長の制約要因は高まるのか」というクエスチョンに答える形で、「質」・「量」の両面から対処していけば、労働供給の減少による成長制約要因は緩和されるというふうに考えていいのではないかということで、ここでまず女性、高齢者が労働市場に参加し得る環境を整えること。それから、比較劣位部門から比較優位部門への労働のシフト、3つ目が労働節約的な技術進歩に期待する面であるということを書いております。

10ページにまいりまして、~就業構造はどのように変化していくのか~、雇用・労働ワーキング・グループからいただきました産業別就業者、あるいは職業別就業者のシェアについてここでは定性的に書いております。

(3)効率的で魅力ある金融・資本市場ということで、金融ワーキング・グループからいただきました今後の展望、ビッグバン後の展望を金融の担い手、金融商品という視点から定性的に書いております。

さらに、~ 1,200兆円の個人金融資産はどのように運用されていくのか~というクエスチョンの下に試算をしていただきました。アメリカ的なことがもしあるとすると2010年ぐらいには大体こういうポートフォリオになるよという試算も織り込んでみてはいかがかということであります。

その後、土地・住宅ワーキング・グループからいただきました~住宅金融市場は今後どのように変化するのか~というクエスチョンの下に、2 つの「・」、個人向け住宅金融債権が魅力的な投資対象になるということ。公的金融のこういう中での役割ということを書いております。

~株式による資金調達が主流となり銀行の機能は縮小するのか~というタイトルの下に、全体としては借入金が減ってきて直接金融市場が高まるという中で、11ページにまいりまして、大企業は直接金融を通じた調達が増加。中小企業はまだ銀行借入が残るだろう、こういうようないただきましたメッセージを書いてございます。

(4)が財政・社会保障ワーキング・グループからいただきましたポイントでございますけれども、まず書出しは、今後の高齢者社会をめぐる悲観論に触れた後、ここでのメッセージとしては、高齢化については経済と調和がとれたような、そういう制度設計を行っていけば対処可能ではなかろうかというメッセージを冒頭に書いた後、1つ1つの疑問に答える形で、まず潜在的な世代間の不平等はどのぐらいあるのかということで、世代会計の計算等を踏まえた話を入れる。その後、~社会保障制度改革のインパクトは?~ということで、年金については、前回の本部会でご議論賜りましたいくつかのシミュレーションを書いてみる。そういうことを述べた後、こういう社会保障改革をやっていけば、マクロの経済のパフォーマンスという観点からもいいのではないかというようなメッセージが出せるのではないかということでございます。

【2】では医療制度改革と介護ということで、ポイントとしましては、競争原理の活用、医療と介護との連携というような視点をここに入れてみてはいかがかということであります。以上を踏まえまして~財政・社会保障制度改革による果実~ということで、1つは、世代間の分配を過度に悪化させないようなスタイル、ここではジェネレーションニュートラルという言葉で呼んでおりますけれども、ジェネレーションニュートラル、ジェンダーフリー、エイジフリーな1つの制度設計をイメージしてはどうかということで、具体的には世帯単位から個人単位への変化。12ページにまいりまして、賦課方式的な要素が強い現在の制度を縮小させていくことによって、より世代中立的な方向の制度の設計になるのではないか。それからエイジフリー的な制度設計、それから、第3号被保険者の見直し、介護施設の充実を図るなど、男女双方が応分に家庭における役割を担うという、いわゆるジェンダーフリーの制度ということを触れた後、こうして制度全体としては経済と整合的な形での社会保障と経済との間のポジティブなフィードバックがもたらされて、中期的な経済成長にも資するのではないかというメッセージにとりあえずはしております。

(5)ゆとりのある土地・住宅環境ということで、いただきましたメッセージ、土地の需給、中長期的に言えば緩和基調ということになるだろう。そういう中で地価の形成は先ほども申し上げましたけれども、土地の収益性に基づいた地価形成がなされていくということを触れてみてはいかがかということであります。

あとは、今後の住宅事情はどうなるのかということで、新規住宅の今後の動向、あるいはストックの時代、多様な住宅というようないただきましたメッセージをここに入れてみてはどうかということであります。

5.は、以上を踏まえまして、もう一度マクロの係数で、内外経済の長期展望をしてみるとということで、(1)世界経済の長期展望、~グローバリゼーション進展後の世界経済の姿はどうなるのか~ということで、グローバリゼーション・ワーキング・グループでの試算を踏まえながら定性的、定量的に述べるというのが第1点。

(2)が我が国経済の長期展望。具体的には~我が国マクロ経済の姿はどうなるのか~ということ。

以上、各ワーキング・グループのいくつかのメッセージを、すべてではありませんけれどもマクロの変数として置き換えたときの姿を描いてみてはどうかということで、その後、もう一度、12ページの最後ですが、~プラスのストックが我が国経済に持つダイナミズム~ということで定性的に触れてみてはどうか。

13ページにまいりまして、~主要なメッセージ~ということで、少子・高齢化は悲観すべき事象ではなく云々ということで、「透明で公正な市場システム」及びそれと整合的な「環境と調和した社会」を基盤とし、「プラスのストック」を未来に継承することで、将来世代は、活力と魅力のある「日本」を享受できる。こういうメッセージを出してみてはいかがかということであります。

以上のマクロの各セクター、マクロの姿を踏まえまして、これを具体的な生活の場に下ろしていくというのが「補論」ライフスタイルの展望と生活指標でございます。

1.ライフスタイルの変化。いただきました総論の部分でございますけれども、「画一的・標準的」なものから「多様化・脱標準化」なものへ、「結果の平等」から「機会の平等」という中で、「多元価値実現化ライフスタイル」ということを冒頭触れた後、2.仕事(働き方)と学習ということで、複線型ライフスタイルコースの中身をここで説明する。あるいは職業能力開発の重要性に触れる。3.居住環境ということで、自己実現を図るという視点からの生活の場の選択はだんだん可能になっていくとか、住宅についても多様な選択が行われる。13ページから14ページにかけて、具体的に賃貸住宅でどのぐらい安い賃貸住宅が供給可能かといういただきました試算の結果等をここでご紹介申し上げるということです。

4.ビッグバン後の金融資産の運用ということに触れた後、5で介護と年金ということで、介護については多様なサービスの選択。社会保障制度は女性とか高齢者の職業選択を妨げないようなこういう姿になっているのではないか。さらには、もし可能であれば、年金改革によって、各世代別の年金の受取・支払がどういうことになっていくのかという試算結果もご紹介できればというふうに考えております。

6.消費生活ということで、多様な財・サービスの選択ということと、もう一つは環境対応における個人の意識の変化ということを入れる。

7.は、まだ記述がありませんけれども、具体的な個人あるいは世帯ということで、長期的な家計の家計簿というのをお示しできればというふうに思っております。

以上でございます。

〔 部会長 〕 ありがとうございました。

以上が展望部会の報告書のスケルトンになるわけですが、皆さんからご意見を是非伺いたいと思います。

お気づきのように、一番最初のところで我が国経済の長期的低迷の要因の3番目に、改革後の姿の不透明性に起因する問題、これはまさに展望部会が対処しなければいけない問題で、この不透明性が今の報告書でかなりクリアになるのかどうか。その辺も含めて皆さんからご意見を伺いたいと思います。

〔 A委員 〕 今、部会長が言われたように、このスケルトン、各ワーキング・グループの報告書を採り入れてクリアになっていると思うのですが、ちょっと気がついたところを2点申し上げたいと思います。

1つは、非常に技術的なことかもしれませんけれども、3ページの上から4行目ぐらいのところから情報通信、流通、福祉サービス等、そういういわゆる非製造業部門における効率化とか生産性の向上を図ることが特に重要ということが書かれておりまして、これはもちろん非常に重要なことだと思うのですが、たまたますぐ下の方に【5】雇用に配慮した政策展開というところで、「需要が見込まれる福祉産業等での雇用創出を図り」ということが書いてあるものですから、おそらく後者の方は福祉産業等へは、まさにそこへのサービスの需要が高まるので派生需要としての雇用が増えるだろうということと同時に、多分ここのところはもう一つは一般的には製造業に比べてこういったサービス業というのは生産性が低いですから、雇用の誘発効果も大きいということを期待してもしかしたら書いてあるのではないかと思いますので、両方とも正しいステートメントなのですけれども、たまたま同じページに書いてあるものですから、ちょっとインコンシステントなことが出てきているかな。つまり、前半の方では福祉等のサービスの効率化とか生産性の向上を図らなければいけないと強調していて、そこは正しいのですけれども、同じように福祉産業等での雇用創出に期待するというのは、ある面では、これは製造業に比べて多分雇用誘発効果が大きいからということですから、べつにこれ自体は必ずしも矛盾することではなくて、もちろんサービス業の生産性を上げても製造業よりも雇用の誘発効果が相変わらず大きいということは論理的には正しいわけですけれども、ちょっと「オヤッ」と思うかなという感じを受けました。

もう一つは、好みの問題かもしれませんけれども、例えばわかりやすさを強調するためかと思うのですけれども、トレード・オフとかセイフティネットという言葉は日本語に直さない方がわかりやすくていいと思うのですけれども、ジェネレーションニュートラルとか、そういう言葉と、これを日本語に直した場合の世代間中立的とかいう言葉とどっちが同じぐらいわかりにくいかというと、同じぐらい難しい言葉なので(笑)、ある面では、先ほど部会長が言われたように、できるだけ透明性を高めるということから言えば、少し難しそうに聞こえるカタカナ文字は避けた方がいいかな。ですから、ジェネレーションニュートラルとかは「世代間中立的」とか言い直せるでしょうし、あるいはエイジフリーなんていうのも「年齢を基準としない」とか、そういうふうに言った方がわかりやすいかなと思いました。

〔 B委員 〕 私どもが地球環境ワーキング・グループで報告した内容に関しまして、6ページから8ページ、非常に明確に要約してくれて、主旨はある意味では通っているとは思うのですが、実は、これはどちらかと言うと積極的、楽観的な側面が強調されすぎているのではないかという感じがしてなりません。私どものワーキング・グループの報告書をどう読むべきかということともかかわると思うのですが、全体の展望が前向き、積極的に何とかしていこうという主旨に沿ってまとめられている限りにおいては、これで問題はないのですが、実はこういう形で本当にうまく地球環境問題の対応がいき、CO2 削減対策が経済成長率に影響なくいくのかどうかという点から言いますと、私自身はこのワーキング・グループの報告書のメッセージは、表面的には非常に楽観的ではあると思うのですが、私は次の4点から考えて、それほど楽観的にはならない。むしろ非常に深刻な問題であるというインプリケーションもあるということをちょっと強調させていただきたいと思うのです。

どういうことかと申しますと、ここに書いてございますように、確かに合同会議対策という、約 5,600万klの省エネがスムーズに実行できるとすれば、それによって問題はかなりスムーズに解決できるという、そういう前向きのメッセージが挙げられているのですが、逆にそういう政策が実行されずに、CO2 削減ということになるとしたらどうなのかという、むしろそれが達成できない場合の問題という方が、ある意味では強調されるべきではないかと私は個人的には思われてならないわけです。

細かなことはくり返しませんけれども、経済成長率自体が非常に大きく落ちてくる。2 番目として、産業構造調整による吸収という形になるので、非常にドラスティックな産業構造調整が必要になってくる等々、そういう面で非常に--。ですから、合同会議対策がもし実行できないとしたら非常に大きな問題がある。しかもそういう調整の結果としては、これはシャドウ・プライスということでなっているわけですが、炭素排出1t 当たり数万円の炭素税ないしは排出権取引市場で価格がつくというような、そういう調整がないと難しいのだという面があるわけでございますので、これを前向きに受け止めていただくことはいいのですが、もし、こういうものが実現できない場合の経済の実体への影響というか、そういうものを勘案したというか、そういう意味で慎重に取り扱っていただいた方がいいのではないか。

第2点は、私どもがやりましたこれは、いわゆる合同会議で決めました需要消費面の対応策ということでありまして、第2点は供給面での対応策ということは実行できるという前提条件になっているわけです。これは皆さんご存じだと思うのですが、供給面に関しましては原子力発電20基程度 7,050万kWの発電設備ができる。あるいは新エネ供給が 1,910万klということで約3倍ぐらい増えるという条件が書かれているわけですが、これはそのままできるという前提条件の下に私どもが計算した。

今のところ、私もそういうエネルギー政策に関連している立場で、こんな公開の場で言うことを避けたいと思うのですが、あえて言わせていただくと、今、ほとんどの方々、専門家も含めて、例えば原子力発電20基を2010年までに実現できるとは思えないというところがございまして、そうなると、供給面でそれが実行できないとすると、ますます省エネに積み増しが起こる。先ほど言いました合同会議対策を実行することすら大変なのに、そういうCO2 目標が達成できるのかどうかという、いわゆる需要面における1の点の合同会議対策が実行できるという前提条件の下にこれは行われている。しかもそれだけではなくて供給面での新エネルギーあるいは原子力発電所の増設が可能であるということでございますので、例えば供給面の例えば原子力発電がゼロになるとか、あるいは半分しかできなかったという、そういう想定の下でやるといたしますと、こういう形にはなり得ないという点が第2の点でございます。

第3点は、現行、政府が当面実行しようという、いわば経済の再生、再活性化のために実行しようとしている基本的な政策。私どももここに関連しているわけですが、例の高コスト構造是正、内外価格差是正という方策でやっております主要なエネルギー対策としてやられていることは何かというと、1つは発電部門の自由化をしよう。そこで独立発電業者というIPPのシェアを増やそうとしているわけですが、電力の自由化によってIPPの供給がどんどん増える。これは価格は安くなることは事実ですが、実は、その代替電源は何かというと石炭ないしは重油等々、いわばCO2 の排出部分が圧倒的に多いものによって代替されるという形になっておりますし、また、先ほど申しましたような意味でエネルギー価格が安くなったときに、どういう形で省エネが進んでいくのか等々。

ですから、あえて悲観論を申し上げようというのではなくて、こういうシナリオというのは合同会議対策、あるいはそれ以上の政策の積み増しが容易に行われるという前提条件の下であり、これをどういうふうにやっていくのかという課題はものすごく大きい。しかも、供給面が達成されるという前提条件を組み込んでこういうふうに書かれているわけですから、それが達成できないという状況下においては、それへの新たな対応が必要である。しかも現行のエネルギー対策その他をみる限りで言えば、CO2 問題を解決する方向ではなくて、その解決を困難にする方向に、今、対応策がとられている。

最後は、いわゆるこういう形で経済の再生、再活性化が進んでいくとすれば、それがまたエネルギー全体の需要を増やすという波及効果を持つかもしれないということがございますので、ある意味で言えばあらゆる前提条件が達成されればこのようになるとは思うのですが、私があえて申し上げたいメッセージは、確かに計算上はこうなるのだけれども、これが現実に達成されるという可能性はむしろ乏しいかもしれない、あるいはかなり深刻な対応が求められる問題が存在しているという認識の下に、この問題を是非皆さんに論議していただければありがたいということでございます。

〔 部会長 〕 ありがとうございました。

C委員、どうぞ。

〔 C委員 〕 3点あります。1つは、レポートのセールスポイントとして、国民に、こういうビジョンを持っていますよという点がいるのではないかと思います。レポートを読みますと、経済企画庁がいろいろなものを非常にうまく整理していると思いますけれども、日本を、初めて高齢化に対応して成功した国にする、こういうのはビジョンとしていいのではないかと思います。

この前、ある政界の方とお話しして、ビジョンはどういうものがいいのかと話していたときに、資本効率を3倍にした国とか、利益率を高くしたというサジェスチョンを申し上げましたけれども、すぐ「あ、それはリストラだ」ということを言われた。「それはビジョンにならない、政治的に困る」ということでしたけれども、高齢化に対応して世界で初めて成功した国にするということだったら非常に納得できるビジョンかなと思います。

ただし、その点で、今、B委員がおっしゃいましたけれども、やはりアメとムチを正しく使わないと、「あ、動かなければならない」という心理にならないから、例えば長期成長率、2010年で止まるかどうかわかりませんけれども、潜在成長率を測るときに「ゼロになる可能性もありますよ、マイナスになる可能性もありますよ」ということをはっきり書いておいた方がいいと思います。

私が最近書いているものの中で、日銀のワーキング・ペーパーの中で、もしかしたらゼロだという結論を出して、お客さんに「こういうペーパーがあります」と出しましたらすごい反応です。ですから、そういうムチの部分を強調して、その次にビジョンを持ってくるということが1点です。

もう1点は、スケルトンを見る限りでは、いろいろなものが書いてあります。これは非常にいいことだと思いますし、いろいろな方が頑張って作ったと思いますけれども、やはり中心原則にどういうふうに各部分が結びついているかということをはっきりすべきではないかと思います。

例えばライフスタイルのところは、14ページですか、介護と年金のところですけれども、いろいろなことがあるのですけれども、こういうことをうまくやらないと労働参加率が下がったり、生産性が上がらないという結論を出さないと、人口動向、生産性という大きな原則のつながりができないわけです。だからそれをはっきりする。各パラグラフをどこか直接中心原則と結びつきを作る。

最後ですけれども、いろいろな部会のレポートを見ますと、提言がどのレポートにもたくさんあります。だから、どこか、スケルトンの中でもいいのですけれども、最後のレポートでダーッと2,3ページ分の提言のページを入れたらどうかということです。以上です。

〔 D委員 〕 最初に、先ほどA委員が言われた3ページの福祉のところですが、これはこういうふうに書きますと、確かに先ほどA委員が言われたように批判が当然出てくるわけで、福祉産業というのはこれまで公的福祉の世界で、とにかく措置という市場を無視したような制度が主であった。それが今は介護保険とか福祉の市場化という動きの中で、より民間部門の創意工夫を生かせるような仕組みに変わりつつある。そういうことを通じて生産活動も高まり雇用も出てくる。そういうようなメッセージがここからははっきり出てきませんので、そういうことを是非補強していただきたいと思います。

それから、潜在成長に関して言えば、短期の対策と中長期の政策との整合性ということが財政政策でもよく言われているのですが、雇用政策の面においても、新聞等を見ますと、今度の景気対策の中に例えば雇用保険における雇用補助金の範囲を拡大させるというようなものが入っていたわけなのですが、そういう固定的な雇用慣行に依存して企業にわずかな補助金を出すことによって雇用を維持するという政策が、本当に長期的にサステイナブルなものかどうか。そういう政策は特定の雇用者の雇用は維持できるけれども、その分、別の雇用者の雇用を削減しているという、雇用の創出よりは雇用の代替という要素が強いわけで、そういう後向きの政策よりは労働市場の効率化、ここにも書いてありますけれども、そのカギとなる有料職業紹介と派遣事業とか、そういう面により規制緩和というか、そっちの方を重視することが長期的な雇用創出には重要なのではないか。

今、C委員もおっしゃいましたけれども、具体的な政策論争となっている点を是非強調して、できれば一覧表みたいにしていただくというのは大事かと思います。

住宅のところですが、これは前にも申し上げたと思いますが、13ページの居住環境、これを見ますと真ん中の「・」で、「住宅については賃貸住宅など幅広い選択肢の中で居住スタイルを選択することになる」とか書いてありますけれども、具体的にその手段としては14ページに書いてあるのは「定期借地権付住宅による」とか、「容積率の特例」とか、依然として持家住宅的な志向が強いのではないか。今、問題になっておりますのは、どんどんマンションもできているのですけれども、そういうのがほとんど単身者向けのワンルームマンションである。この最後に書いてあるような「利用者にとってさらに安価なファミリー向け賃貸住宅の供給が可能」というのはほとんどウソでありまして、そんなものを作る人は誰もいない。それは結局、定期借家権というものが認められてないからであります。一たん貸せばほとんど採算が取れないような借家制度が現状である。それに対して、この前、新聞等で報じられましたけれども、ようやく定期借家権を作ろうという動きが今国会で出ているわけで、こういう重要な政策的なイッシューをここで全く無視しているというのは、これができ上がったときには極めてアウト・オブ・デイトになるものではないかと思います。そういう今のイッシュー、派遣の問題も今、労働省の審議会で争点の1つになっておりますし、定期借家権というのも大きな争点である。そういうものが残念ながら、もし部会報告で出てこなければ、是非、本部会から強いコメントを入れていただきたいと思います。

ちなみに、定期借家権というのは、ある意味で行政改革の1つのポイントとしても興味ある点であります。すなわち所管の省庁が全く動かないときに、議員立法というものを使うことによって、そういう省庁を迂回して構造改革をやろうという1つの試みでもあるわけでありまして、そういう意味でも極めて興味深いものでありますし、それから、これまでの住宅というのも家計にとって大きな投資であるわけなのですが、何でもかんでも持家で住宅をやろうと言えば、当然投資は出てこないわけなのですが、家を建てる能力がなくても借家ならば入るという消費者の志向に住宅産業が応じるという道を開く、極めて戦略的なポイントでもあるという点を強調させていただきたいと思います。

〔 部会長 〕 ありがとうございました。

E委員、どうぞ。

〔 E委員 〕 先ほどから問題になっている3ページの問題ですけれども、くどいようですけれども、少しコメントさせていただきますと、需要が見込まれる産業というのは、本当に需要が民間で見込まれるのであれば、あえて雇用創出を政策的に図らなくても出てくるはずで、それに対して規制緩和を取ってしまえば、需要が本当にあれば、後は市場メカニズムで出てくるはずです。

ところが、規制緩和のところは2)で書いてありますから、そうすると、ここで1)というのは、規制緩和をしても、なおかつ社会的ニーズが高いにもかかわらず市場では出てこない。要するに採算が取れないようなところに対して公的に何らかの補助金なり、公的な財政的な援助をして雇用創出を図った方がいいのだというふうにも読み取れるのですけれども、そうであるのかどうかというのはもう少しはっきりさせた方がいいのではないかと思います。

D委員の説明ですと、要するに基本的に規制緩和で解決するのだという問題のようにも見受けられますので、そのあたりどうするのか。

それから、もう一つ4ページの2.開かれた「透明で公正な市場システム」ですけれども--。

〔 部会長 〕 最初におっしゃったのは3ページのところですね。

〔 D委員 〕 規制緩和だけではなくて、私の説明が十分でなかったのですが、介護保険というのがカギであって、介護保険というのは措置制度による公的な補助金の量は変わらないのですけれども、出し方が変わってくる。つまり、公的な補助金を社会サービス事業者に与えるのではなくて個人に与えることによって個人がそれを使うという、公的補助金の量は同じでも出し方を変えることによって新しい雇用が出てくる。そういう主旨でございます。必ずしも規制緩和だけではないということです。

〔 E委員 〕 もう1点は、4ページの2.開かれた「透明で公正な市場システム」というところで、生産要素の柔軟な移動の話が出ているのですけれども、この「ひらかれた」というタイトルからしますと、ここで労働市場の柔軟な移動の話をしますと、1つ問題になるのは要するに外国人労働者が日本に入ってくるという問題に関してどういう立場をとるのか。その点がここで全然触れられていないのですが、現実問題として単純労働者が不法な形でかなりの規模日本に入ってきているわけで、それが社会保障とかいろいろなひずみを生んでいるのが事実としてあるわけですけれども、これから将来を考えるときに、本当に開かれた透明な制度にしていくとすれば、外国人労働者の受入れに関してもある程度触れておいた方が、より国民にわかりやすいという展望が開けるのではないかと思います。非常に難しい問題ですけれどもあえて言わせていただきました。以上です。

〔 部会長 〕 ありがとうございました。

F委員、どうぞ。

〔 F委員 〕 お話全体を伺っていて、非常に総論的なことになるかと思うのですが2点ばかりございまして、最初の点は、見通している時期というのは、最初のときにも議論したかと思いますが、経済審議会報告のスケルトンでは新世紀初頭ということですから、いろいろな意味で2010年ぐらいを狙っているのだと思いますが、1つは、ここ2,3年、私どもがずいぶん感じたのは、グローバルとかボーダレスということが頭の中で考えている以上に実感として貿易財の世界では起きてしまった。円高で10何年前から起きていたのが、いたるところで現実感覚で起きてしまった。外為法が4月1日から改正されると、いわばドルの世界というのをみんな本気で考えるようになってしまっている。こういう社会になっているわけです。

こういう中で2010年というと10何年変わるわけですから、大変に変わると思うのです。今の頭の中で今の延長線上で考えていっていいのかなという感じが非常に漠としてはしているわけです。そういうことから言いますと、1つのキーワードが「グローバル」、本当にグローバルになってきているなという感じがしています。そういう中で、日本の中では二極分化していますから、そういう二極分化している生産性の低いところも取り上げられていますし、全般的には論じられているのですけれども、やはり全世界から見た日本の国、あるいは東アジアから見た日本の国がどういう期待をされ、役割を担うのか。あるいは日本がどういうことになるのだろう、これが非常に重視されているのではないかと思います。端的に言えば日本の景気対策自身がそういう目で要請されているわけですし、環境問題について私は逆に、やはり日本の中で極めて特異な重箱の隅に入るのではなくて、地球環境というのは世界ですから、時間も 100年、 200年というオーダーで追求しないといけない問題ですから、そういう視点は非常に重要なのではないか。2010年まで、いわば現状の仕組みの中で必死になって6%とか、鉄だったら10%ですけれども、それをやっていきますけれども、これを未来永劫同じ仕組みの中でやるわけではないわけですし、全世界の中で日本が占めているシェアは経済の比重からみたら非常に低いわけです。そういった視点からの論点がいると思っています。非常にグローバルな視点が--。最後の方にいろいろありますけれども、全体に流れるものはグローバルだということです。

2つ目は、国の評価、いわば日本の国というのは「国」という意識が希薄になっていると思います。しかし、いろいろなことを議論される中では、国ということが、為替もそうですし税金もそうですから、必ずそういうことになる。そうすると、国として存立している評価は何か。例えば鉄鋼業というのは大きくなりましたけれども、いわば成熟産業で将来型ではないと言われています。日本もひょっとしたらそういう国かもしれない。だけど、そのときに、日本というのはどういう国であるべきなのか、こういう大きな意味ではそういうスタンスがいるのではないか。逆に経済の成長率ということではなくて、1人当たりとか、生活水準とか、何か違う尺度を大きくしていく必要がある。当然、伸びないとそういうことにならないので伸ばす必要もありますけれども、そういった議論が是非いるのではないか。そういう中で、私はアメリカ型システムというのは、C委員は反対かもしれませんけれども、アメリカ型システムというのは全くいいと思っておりません。生産性が上がっているとも思ってないし、1%の人が40何パーセントの所得を取っているわけですから、20年間8割の人が実質所得が落ちているわけです。こういう国を真似る必要は全くないと思います。いわゆるグローバル・スタンダードというとアメリカの基準が入ってきているわけで、それと日本の非常に長い歴史の中で培ってきた日本型システムをどう調和させるのか、こういう観点が背景に流れている必要があるのではないか。

3点目は、私はどっちがいいかわかりませんが、先ほどお話がありましたように、労働制約というのを必ず出してくるとすると、日本の特殊性というのは外から人を、これは優秀な人も含めてですが、入れない仕組みでいろいろな議論がされている。こういうことかなというのはこの議論と離れるかもしれませんけれども、非常に重要な議論にいずれなってくると感じております。以上です。

〔 部会長 〕 ありがとうございました。

G委員、どうぞ。

〔 G委員 〕 10ページの(3)効率的で魅力ある金融・資本市場のところですが、1点だけ、質問を混じえたコメントをさせていただきたいと思います。

2つ目の「・」でありまして、各金融機関の今後の戦略のようなところですが、ここには、低収益分野から撤退して、ある何かフォーカスをしていくというスタンスで基本的に書かれていると思うわけですが、従来、金融機関の戦略を考える場合、やはり米銀のフォーカス戦略というものが頭にありまして、自分が得意なところに資源を重点的に投資していく、それが生き残る道であるというような受け止め方を、私を含めてしていたわけですが、最近の、皆様ご承知のとおり、シティバンクとトラベラーズの合併というのは、おそらくフォーカス戦略のまた次の新たな局面を迎えているのではないかというような話でございまして、シティバンクとトラベラーズの合併が意味していることは、いわゆるフォーカス戦略でかなり強くなった金融機関同士が再び一緒になってかなり幅広いことを実はやり出すというような状況が多分今起きているということであります。これを称して日本の金融機関は、従来は1周遅れていたわけですが、今回の合併によって2周遅れになったという表現をしている人もいるわけでありまして、したがって、2010年という非常に長いところを見ていった場合に、従来、米銀がフォーカス戦略をとっているので、基本的に日本の金融機関もそういう方向を目指していけばキャッチアップできるのだという考え方、基本戦略自身を見直す必要があるような、そういう局面にどうも入っているのではないか。私はそう思うわけですが、その辺をこの報告書の中でどういうふうにとらえられるのかという質問です。

〔 部会長 〕 クエスチョンマークで残っているものは、後で少し皆さんのご意見を伺うことにして、スケルトンその他についてのご意見を先に伺っておきたいと思います。

〔 H委員 〕 2点だけ申し上げたいと思います。

これは質問ということかもしれませんけれども、1ページ目で、日本型経済システムの制度的補完性が効率性を喪失したと書いてあるのですが、これは、勝負がもうついたという話なのかどうか。これはいろいろな意味でもっと選択の自由を認めるということだと思うのですが、結果として日本型の雇用環境も含めて生き残るという可能性もあるでしょうし、現時点で効率性の喪失というのは、やや、どうなるかわからない結果を先取りした判断ではないかという感じがいたしました。

それから、5ページに、日本のいままでの経済政策は結果としての平等を追求してきたという、累進課税等当たっている面もあると思うのですが、しかし、規制などの評価を見れば、規制産業の方が賃金が高いとか、そういうこともあって、本当に規制のあり方が結果としての平等を目指してきたというふうにキャラクタライズできるのかどうかということがちょっと疑問として感じられる。むしろ、規制は不平等をもたらして、かつ非効率ももたらしてきたという面もあるのではないかという感じがいたします。

〔 部会長 〕 先ほどG委員が言われたこと、I委員、図表を書かれた中の、将来の日本の金融機関がどうなるかという話ですけれども、単純に言うと、私もアメリカのあれを見ていて、一方でグラスティーガルがだんだんなくなっていくというのは実態としてわかりますが、それプラス規模の問題についてのアンティテラッサの判断というのはどの程度残っているのかどうか。ですから、規模のメリットを狙っている部分がけっこう多かったのが、今度は全く違った特殊スキルを持ったところが一緒になって、なおかつ規模のメリットをという、従来あまりなかったケースが出てきているところでしょうけれども、1つは、この報告書にそういう具体論まで書く必要があるのかどうかという、その辺は当事者に任せておけと言えばいいのかもしれませんけれども、参考までに、あそこで書かれていた将来の日本の金融機関の姿というところに代表すると、先ほどのG委員のご質問はどういうふうにイメージとして受けたらいいのでしょう。

〔 I委員 〕 我々のレポートでは、基本的には日本の金融機関というのは、さまざまな分野に特化し、あるいは多様化が進むというとらえ方をしていたわけですが、ただ、全体的には世界的な規模でのメガアライアンスですとか、メガコンペティションが進むという環境の下で、日本の金融機関というのは特化ないし多様化していくでしょうというとらえ方をしております。

それで、確かにアメリカを見ますとダイナミックな展開を遂げていて、日本の場合もこれまで思いもかけなかったところと従来の銀行がアライアンスするとかというようなことは当然起こり得るのではないかと思います。

ただ、文章上果たしてそういう動きまで書くかどうかというと、基本的には我々の認識の範囲内の出来事ではないかと考えております。

〔 J委員 〕 まず5ページの(2)新しいシステムにおける公正の位置づけのところですけれども、基本的な考え方のところで表現されていることについてはわかるのですけれども、評価のシステムがない中での平等といいますか、必ずしも現状の中でもそうなっていない部分というのもありますので、こんなふうに言い切ることがどうなのだろうかと、私はちょっと気になるわけです。

先ほど、C委員も、先にきちっと正すべきところの表現は起こして、その後にアメの部分、元気の出るようなあり方ということを記述したらどうかということをおっしゃったのですけれども、そういうふうに読み込んだとしても、その後に表現されています6ページの一番最初の「・」のところも含めて、これはあまりアメにもならない、「結果としての不平等を容認することが必要」という表現になっておりますので、少しこの表現はどうなのだろうかと気になる部分として申し上げておきたいと思います。

もう1点は、11ページの社会保障制度の改革のインパクトの部分なのですけれども、これは、現在、年金問題でも基礎部分をどうするのかというところがあまり抜本的には議論されていないのではないかと思うわけです。今、基礎部分のところの見直し、数の問題も含めて考えますと、これは前回にもK委員から申し上げたかと思いますが、将来的には、私は個人的にも税方式ではないかというふうにみるわけです。先ほども出ておりましたけれども、措置制度ということが社会保障政策の中で、「個人的な--」というところと非常に結びついていないといいますか、世帯単位から個人単位へというところは、後のところにも項目として起きているわけですけれども、そうするのであれば、基礎部分も含めて積立方式ということが、今の現状から見てもどうなのかというふうに私としては思いますので、その意見を申し上げておきたいと思います。

〔 部会長 〕 H委員がおっしゃった、結果の公平、結果の公正から、機会の平等、これはいろいろ議論のあるところなのですけれども、割り切って考えると、機会の平等とか機会の公正をアメと考える人とムチと考える人と実際には両方あって、端的に言えば、いままでは結果の平等がアメだと思っていた人にいろいろな制度をそろえてきたのだけれども、そろそろ少し、日本もゲームに負け始めてきたから、負けているときはやはりゲームを変えなければいけない。ちょっと単純な言い方で申し訳ないのですけれども、そういう節目にきているのではないか。ここはやはりしばらく機会の平等がアメだと思う人に少しチャンスを与えて思い切ってやったらどうか。単純に言うと大きな節目というのはそういうところだと思いますが、結果の目茶苦茶な不平等を容認しろということではなくて、これはアメリカでも結果の大きな不平等についていろいろ議論も出てきている。アメリカでもそれに対していろいろ意見、問題を指摘している人がいるということは、それなりにアメリカの社会の1つのバランスを示しているのではないかと思いますし、表現などはさらに皆さんのご意見も十分に踏まえてよく考えていかなければいけないかなと思います。

いままでのご意見に対し、事務局からコメントを申し上げるところはありますか。

D委員が出された定期借家権の話。あれはワーキング・グループ報告のときも一度ご指摘がございましたよね。

〔 事務局 〕 これ、すっかり忘れて大変申し訳ございません。後ほど入れさせていただきたいと思います。

〔 部会長 〕 特に他にありませんか。

あるいは合同の方をやってから、また戻ってもいいですけれども。

〔 事務局 〕 そうしていただければ--。

〔 部会長 〕 今のご意見はさらに報告書の素案作成に反映させていただきますが、最初にお話ししたように、合同報告書スケルトンというのができておりまして、それを事務局から説明をしていただきましてご意見を伺って、そのときに、なおかつ展望部会の報告書にさかのぼってご意見を伺ってもけっこうでございます。

それでは、合同報告書の方をお願いいたします。

〔 事務局 〕 お手元に資料3経済審議会報告スケルトン(案)というのをお配りしてあると思いますが、そちらをご覧いただきたいと思います。

3月に両部会長、長岡(實)会長代理にお集まりいただきまして、合同報告を作ることや、取りまとめの方向性などについてご議論をいただきました。それをもとに事務局でスケルトンの案を作成しております。

これは展望部会のスケルトンよりさらに骨格でございまして、骨ということでございますが、主旨は、両部会の報告を一体としてわかりやすく紹介する。両部会との重複感はできるだけ避けるという要請を持っておりまして、合同報告では総論的にエッセンスを取りまとめるというつもりでございます。

経済審議会報告スケルトン(案)-新世紀初頭の経済社会を展望して-という副題をつけておりますが、これは全くの仮題でございまして、こういった副題もつけてみたいということでございます。

構成は第1章が、構造改革の推進と成長軌道回復への道筋。第2章が、2ページの下の方でございますが、構造改革後のマクロ経済の展望。第3章が、4ページでございますが、新しい経済社会システムの姿ということで、足下の話、マクロの話、システムの話という3本立てになっております。

これはまだスケルトンなものですから、「はじめに」もございませんで、「おわりに」もございませんで、マクロ的、全体的見方の中心の整理になっておりますので、もう少し読まれる方に身近に書けないかという意見もございまして、本日のご意見を賜りさらに検討してまいりたいというものでございます。

第1章構造改革の推進と成長軌道回復への道筋。ここはご紹介いたしました展望部会のものとほとんどマッチングしているとお考えいただいていいと思いますが、そこで言っております最初の柱書きは、構造改革が短期的に痛みを伴うということで、特に今のように足下が低迷しておりますと、このまま構造改革を進めてさらに悪くならないのかという不安感が強くなってきているということから始めております。

(1)では、痛みへの対応として2つ痛みがあるということを言っております。古い構造を破壊する痛み、新しい構造に移るに当たっての痛みがある。古い構造を破壊する方の痛みは、どうしても痛みの回避と改革の痛い、痛いと思う気持ちと、改革の推進が二者択一的にとらえられているが、それは問題であるということや、後者の方の痛みにつきましては、改革をより加速することが痛みを和らげることにつながるというようなことを少し書こうということでございます。

次の○は、改革のペースが全体として遅いではないかという意見もある中で、政府に対する信頼感とか、あるいは民間企業相互の信頼感の低下という問題が起こっていないかということを言っております。ここでは「信頼感の低下」ということがキーワードでございます。

(2)は、財政構造改革と足下の景気停滞のバランスの問題を説いております。こちらの方では財政構造改革と足下の景気停滞というのを先に挙げておりますが、ここで財政改革路線の重要性を改めて説いております。ここは簡単に紹介しているご覧のとおりでございますが、実は、今、財革法の改正の動きや先週の金曜日に発表されました総合経済対策などと矢継ぎ早に動きがございまして、こういったことを踏まえながらさらに作文をしていきたいと思っております。

(3)は、金融システム改革でございます。1ページめくっていただきますと、(4)で不良債権処理はいつまで続くかということで、金融システム改革と不良債権処理の問題を続けて扱っております。(3)も(4)もいわば金融システムの改革と金融システムの安定化という両方の、これもバランスの問題で考えられる問題でございますが、構成といたしましては(3)で金融システム改革の重要性を説き、(4)で不良債権処理の促進、これが金融ビッグバンの前提である。極めて重要なことだというような意識でこのように書き分けているところでございます。

1ページに書いてございますのはご覧のとおりでございますが、ここで言いたいのは、金融システム改革の頓挫が世界的に我が国の信頼を失うことになってはいけない。改革そのものが金融システムの安定化に資する、あるいはディスクロージャーの徹底は不可欠であるというようなこと等。それから、これも強調したいと思っておりますが、金融システム改革、ビッグバンが経済のさまざまな側面と関連していて、これがその他のさまざまな社会全体の本格的な変革の起爆剤になるのだということをここで強調したいということでちょっと書いてございます。

2ページにまいりまして、(4)不良債権処理はいつまで続くかということで、ここでは、先ほど展望部会の方にもございましたが、金融システムが経済の最も重要なインフラであるということ。安定化は最優先課題だということ。2つ目の○では、97年の金融機関の破綻の話や、今年になりましての金融システム安定のための30兆円の公的資金の準備などによってシステム全体の安定は確保されているといったことを紹介しておりますが、3つ目の○で、さらに金融機関の自己改革による体力増進が重要である。アメリカでは、足下の景気はいいわけでございますが、先ほどのシティバンクとトラベラーズのように、いろいろな改革が進められているということでございます。4つ目の○は、日本の不良債権問題の処理が、アメリカに比べて遅れているではないかというようなことなどを言っております。

その2つ下の○ですが、実際には足下の景気低迷もありまして、新規に不良債権が発生することも想定されるけれども、これを緩やかに進めようとすると、将来にわたって利益あるいは自己資本比率についてのマイナスの影響が残る。したがって、早期の不良債権の足枷からの脱却が必要であるといったことを強調したいということでございます。

なお、一番下の○は、不良債権の担保土地の流動化促進などが、全体としての不良債権処理を進める必要があるということで、土地・住宅ワーキング・グループでいただきましたメッセージなどをここに書いてみたいということでございます。

(5)は、成長回復軌道のシナリオということで、先ほど展望部会でございました4つの視点が重要であるということで、そういった点を指摘するという構成になっております。

次に第2章の構造改革後のマクロ経済の展望でございます。

ここでは、形として6つの不安材料を取り上げまして、これに答えるというQ&Aの形をとってみようと思っております。それによってマクロ経済の明確な将来像を示し、現在の先に豊かな社会が実現可能であるということを示す。これは心意気でございますが、そういう構成をとってみたいと思っております。

(1)は、成長率や生活水準は低下するのかということで、労働力人口の減少は今後の引下げ要因ではありますが、一方、全要素生産性の上昇率などは成熟化に伴い低下していくものの、製造業の技術開発力をさらに伸ばし、これを第3次産業に拡大することなどにより伸びる余地があるということで、こういった構成をとってみたいと思っております。

3ページにまいりまして、モデルによる成長率の試算などを入れまして、メッセージとしては、成長率全体の低下をもって悲観する必要はないということで、いかに効率性の高い経済社会を実現できるのかということが重要であるということで、規制緩和などによる経済の活性化効果が重要であるということを、ここのあたりで強調したいと思っております。

先ほどもご指摘がありましたように、これからはトータルのGDPというよりも1人当たりのGDPに着目して考えていく、あるいは効率性の高い社会、豊かな社会というものを考えていく必要があるといったことを少し強調してみたいと考えております。

次の問いかけは、少子・高齢化の負担に耐えられるかという問いかけでございますが、確かに労働力率の低下、国民負担率の上昇といった問題が経済に影響を与えるわけでございますが、現在はどうも年齢別の役割分担を固定的に考えすぎていないかということであります。この点は、ワーキング・グループでもいろいろそういう意見が出ていると思います。働きたい人は何歳になっても働く社会、あるいは高齢化が必ずしもマイナスでない、あるいは性別にとらわれないような社会を作っていくことが必要であるということで、ここでは、先ほどご批判をいただきましたがエイジフリーとか、ジェンダーフリーという言葉を使っております。

社会保障制度が長期的な財政の展望でどのようになるかということで、年金・医療・介護といったものがトータルで維持可能であるということを、このあたりで提示できればというふうに考えております。

(3)では、地球環境問題による成長の制約はあるかという問いでございますが、先ほど展望部会の方で、成長の制約などの議論が詳細にございますので、ここでは、ご覧のように総論的に少し整理させていただければと考えております。

(4)では、失業率が上昇し、生活不安が高まるのかということでありますが、こちらでも失業を景気循環的な失業の増加と、構想変化を背景にした増加といった2つの要因に分けておりまして、構造的な失業は今後とも上昇すると見込まれるけれども、自発的であって不安を高めるものではないといったことや、3つ目の○でございますが、非自発的な失業率が一時的に上昇する可能性もあるけれども、3ページから4ページにかけまして、基本的にマーケットが引き締まり基調で推移する他、流動化の円滑化の施策、あるいは新規産業の成長といったものにより、全体としてそれほど深刻化はしないというメッセージが整理できるのではないかと思います。

(5)は、グローバリゼーションの波に耐えられるかということであります。ここでは、外から押しつけられて考えるのではなくて、「効率性向上」というのがキーワードでございますので、それを積極的にとらえていこうということだけ書いてございますが、今、いろいろご指摘もいただきましたので、もう少し書き込んでみたいと思います。志としては、日本で「国際化」という言葉がございますが、国際化とグローバリゼーションというのはだいぶ違う。そして、むしろもっと前向きにグローバリゼーションということをとらえていくのだということを少し考えていきたいと考えているところでございます。

最後に(6)で経常収支の赤字国となってしまわないかということでございますが、ここで、高齢化の進展で貯蓄率の低下要因になるわけですけれども、全体として設備投資の伸びの低下や企業部門の投資超過幅の縮小であろうか。したがって政府が大幅な赤字にならない限り国内の貯蓄投資バランスは大幅に悪化しないのではないかといったようなことで、一定の答えが出せるのではないかといって、ちょっと頭だしをしてみたところでございます。

第3章でございますが、ここは新しい社会システムの姿ということで、国民の将来に対する不安感がマクロ経済の不透明だけではなくて、日本の経済社会のシステムが変化して、我々はどういうシステムを前提にどういう原理に基づいて行動するか不透明ではないかということ。戦後構築されました日本型システムと言われているものが基本的に維持されてきておりますが、その変革・改善のダイナミズムが欠けていて、どうもかなりの大転換期に入っていると映って、またそれが不安を呼ぶということではないかという問題意識でございます。

ここで、新しい経済社会と言っておりますが、これは構造改革により競争原理を徹底することによりまして、日本のシステムがよりダイナミックに見直されていく、そして新しい段階を模索するのだというような意味でありまして、あまり最初から、例えばA+Bを2で割ってこんなものになるとか、あるいはAがBの方に行くのだというふうに決めつけているものではございませんが、システムが変わるということをかなり原理原則を立てて強調する必要があるということを考えております。

(1)従来型システムの特徴とは-その変革の必要性と方向性というふうに書いてございますが、ここで、従来の日本型システムの特徴はということで、安定的な関係を基礎とした協調のメリットを生かしている。リスクは小さければ有効に機能するけれども、4ページの下の○にございますように、経済成長が終わりますと自らフロンティアを開拓していくことが必要になってくるとなかなかこれまでのようなものではなくて、効率性、競争原理の追求がさらに不可欠になるということが書かれております。

5ページにまいりまして、雇用システム以下のサブシステムそれぞれにおいて変革の兆しが現れておりますが、その動きが部分的にとどまっておりますと全体として変革に弾みがつかないのではないかというようなことが5ページの上の方の○にございまして、各サブシステムは相互の補完性の上に全体として構成しているので、全体の方向性を見極めた上で同時に強力にシステムの変革を進めていかなければいけないのではないかといったようなことを書いております。

このあたりは考え方について少し整理をいたしました。

その次の(オープンなアプローチによるシステム形成を)というのは、先ほどちょっと申し上げましたが、あまり現時点で固定化して考えるのではなくて、可能性をオープンに受け入れまして、その中で自然淘汰的に残していくというアプローチが日本に今求められているのではないかということで、先ほどのサブシステムごとには全体としての相互補完性の下で機能しますが、適合しなくなったものからできるだけ早期に脱却して、このようなシステムが制度補完性によって他のシステムに結びつき固定化してしまうことを回避していったらどうか。

このあたりは日本のシステムの変革が必要である。その下の2)にございますような基本原則にのっとって変革していくのだ、そういった実験をするのではないかということを少し書きたいと思っておりまして、ここは、骨子なのですけれども少し骨が出っ張っておりますが、全体としてはそれほどの文章ではなくて、こういった考え方で整理をしてみたいということで、本日、お示ししております。

(2)で新しい経済社会システムの基本原則ということで5つ立ててみました。1つは「透明で公正な市場」というのが基本原則である。これは1でございまして、基本原則は5つございますが、1+4というふうにお考えいただければと思います。

2つ目は、ただいまご議論のありました「機会の平等」。それから、最近とみにうるさく言われております「自己責任原則」。それから、これも極めて重要でございますが「多様な選択肢」があるということ。それから、それについての「十分な情報開示」があるということではなかろうか。最後に「ルールの重視」。この下の4つが「透明で公正な市場」を支えるということで1+4の基本原則ではないかということでお示ししております。

いろいろ言っておりますが、それでは(3)新しい経済社会システムの具体策ということで、6ページから、それぞれのサブシステムごとに書いております。まず【1】企業システム(雇用システム)でありますが、雇用の流動化が進むとともに年功序列から能力評価型に変化。最近は人材の自己評価などと言われておりますが、変化をするのではないか。ただ、終身の雇用制が完全に崩壊するということを意味するものではなかろう。

2つ目の○は、大変大まかに思い切って3つに分類しておりますが、【1】終身雇用型と【2】専門能力を身につけた流動型雇用者、【3】定型化された作業とか事務を処理する非正規雇用者というような3形態となるのではないか。こういう多様な選択肢の中で労働者も企業もそれぞれ最も望ましいものを選ぶということではなかろうかというわけであります。

これは企業を中心に書いておりますが、例えば公務員の世界も同じように類推して考えることができるかもしれません。

次に(コーポレートガバナンス)でありますが、持合の解消が進み、コーポレートガバナンスにおいて株主がその役割を強めていく。メインバンクの話でございますが、企業と金融機関の関係は金融機関の機能が先ほどの話で多様化ないし分化していく中で、それぞれの状況においてメインとしての取引関係を異なる機能の金融機関の中から選択するようになるのではないか。言ってみればメインの金融機関を多様な選択肢の中で企業と金融機関の間で選ぶといったことではないか。そういったことによってより透明性の高いコーポレートガバナンスになるのではないかと考えて書いてみました。

それから、ここはあまり十分に書けておりませんが、持株会社の活用がこういった面でも出てくるでありましょうということをチラッと書いてございます。もう少し書き込んでみる必要があると思っております。

次の(企業経営のシステム)というのは、これもコーポレートガバナンスの一環の話でございますが、社外重役などの話でございまして、社外取締役が多数起用されて外の意見、あるいはアウトサイドカルチャーをより多く採り入れるようになるということで、企業経営の方向に変化が起こるだろう。内部の職員についてはストックオプション制度の活用で企業経営に関心を持つといったことになるということが言えるのではないかと思います。

(起業と退出のシステム)につきましては、新規ビジネスが次々に生まれてくるということ。既存企業が市場から退出する場合にM&A市場の有効な機能が期待される他、円滑な倒産制度といったものの整備が必要であるといったようなことを少し書きたいなと思っているところでございます。

(企業間取引システム)でございますが、7ページにまいりまして、従来型の親企業対下請企業という固定的な系列的な取引関係は縮小するのではないか。中小企業は経営リソースを得意分野に集中投資するとともに、足りない部分について他の中小企業のノウハウを活用するといったような形で、その時々のニーズに応じて随時組み替えられるといった緩やかな連携関係を構築するのではないかと書いてみております。

7ページの【2】は公共システムの話であります。公共システムにつきましては、民間に委ねられるものは可能な限り民間に委ねる。行政のスリム化・効率化、重点化を図るということであります。

今般の総合経済対策に盛り込まれましたPFIの推進法の成立を図るというのも、その効率性の追求の一環であるということでありますが、これによって裁量的な行政関与が極力排除されまして、政府は市場監視・整備あるいは危機管理にウエイトを移すということで、この点も強調して書くべきではないかと思っております。

その下の○は、国から地方へと権限を委譲し、住民に身近なレベルでのサービスの提供を行う体制というもう1本の行政関与の柱を立てるということであります。

(公的金融)でありますが、ここは、特に一番上の○を強調したいわけでございますが、金融ビッグバンを通じまして市場原理が徹底され、効率的な資金配分が達成されるために、公的金融は民業の補完に徹すべきである。スリム化・重点化を図らなければならないということであります。

下の○は、市場規律、財政規律が徹底するシステムへと変革するために、コスト分析手法の導入、あるいは公的金融の手法の多様化、あるいは市場と調和する資金調達といったことが求められるというようなことをもう少し書込みたいと考えております。

(社会保障制度)でございますが、ただいまいろいろご議論をいただいたところでございますが、維持可能な制度とするために経済パフォーマンスを阻害しないシステムであるということ。そしてその下に年金・医療・介護というふうに少し書き分けておりまして、特に 401K(確定拠出型年金)の導入、これも総合経済対策で検討を進めるというのが入っておりますけれども、そういったことをそれぞれ頭だしで書いておりますが、もう少し全体として総論的に整理しようかなと思っております。

介護は、介護サービスの市場が伸びて、ニーズに合った介護サービスを必要なだけ受け取ることができるというようなことも少し書いてみました。

8ページにまいりまして、【3】社会システムというのを立ててみました。ここでは、(社会的規律と信頼の回復)という、やや経済審議会的でないことも書いておりますが、いわゆるソーシャルディスインテグレーションのような話について一言書きたいというので書いてみたものでございます。最近、マーケットの信用の縮小も言われておりますが、先ほど、最初の方にもございましたように、やや信頼の縮小みたいな話も出ております。

それで、我が国で取り戻すべきものとして、社会的規律と経済主体間の信頼は何か。国民相互の信頼の希薄化というのはちょっと決めつけで問題でありますが、そういう危機感を持っているということであります。社会的規範が一層失われていかないような配慮が必要であるということで、ここでは市場ルールの確立が国民の行動のきちんとしたよりどころとなって、それをもとにさらに社会的規律と信頼の回復ということをきちんとつないでいかなければいけないのではないか。

大変稚拙な文章でございますが、少しこんなことも考えてみたいと思いました。

その下は、さらに難しい問題でございまして、(教育改革の重要性)について何か書けないか。ご承知のように「6つの改革」の中に教育改革は重要な1つを占めているわけでございますが、最近の子どももいろいろな問題など、人材の育成という面を何らかの形で言及したいというので少し頭だしをしております。

それから、(個人の社会参画システム-年齢別、性別の役割分担)とございますが、余り固定的にしないフリーな社会として、十分に社会に参画していけるようにということで、役割部会のメッセージを踏まえて少し書き込みたいと思っております。

最後に【4】NPOでございます。既存の経済のセクターが果たしきれなくなった機能を強化するという方向で、新しい経済社会の中での大きなやり方を果たすということで、具体的に【1】と【2】で機能として書いておりますし個人が社会貢献をする場として職場以外の第三の場を提供することで、個人のライフスタイルの多様化を促進するということであろうと思います。

これは、経済の主体というよりも、むしろ経済活動の枠組みというよりも、もう少し多様な個人が自主的に参画すべき方向性ということであろうと思いますので、少し骨太に何か書ければということで、現在、考えているところでございます。

以上、第1章、第2章、第3章構成で作っておりまして、実はこの中に、市場原理のシステムとか、あるいは環境と調和とか、プラスのストックの次世代への継承といったキーワードもまだ入っておりませんので、そういったものも盛り込みたいと思います。

展望部会のスケルトンに比べましても、これは極めて骨ばったものでございますので、不十分なものであろうかと思いますが、本日のご意見を承りまして、さらにリファインしてまいりたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

〔 部会長 〕 どうもありがとうございました。

お気づきのように、合同報告書のかなりの部分、我々の部会でない役割部会で議論されたものも入っておりますから、こんなこと聞いたことあるかなとおっしゃるかもしれませんが(笑)、ひとつ、その辺をご勘案の上、あまり時間がありませんけれども、合同報告でもけっこうですし、展望部会で言い忘れたというようなことがございましたら伺っておきたいと思います。

〔 A委員 〕 今ご説明のあった部分について気がついたことを4点ほど申し上げたいと思います。

1つは3ページの一番下のところに失業のことが書かれている中で、構造改革の過程で「産業構造の調整に伴い非自発的な失業率が一時的に上昇する可能性もある」というふうに書いてありますけれども、これは確かに構造調整の中で衰退セクターから成長セクターへ人が移っていく過程で非自発的な失業が発生するということだろうと思いますが、同じように、これはもしかすると成長セクターの中でもさまざまな規制の緩和が進むということは市場競争が激化するということですから、市場競争激化の結果として、例えばこれから伸びていくと思われる金融セクターの中でも、あるいはハイテクセクターの中でも非自発的な失業が発生する頻度は高まっていくと思います。したがって、これは構造改革の過程の中だけではなくて、市場競争が厳しくなるということで、ここのところは増えていくのだろうと思います。

もう一つ、4ページの同じ失業のところですけれども、(5)の前に「全体として失業がそれほど深刻化することはない」と書いてありますけれども、特にこれから短期的には失業がかなり深刻化すると思われますので、あまりこういうことをはっきり書くとちょっと反発を招くおそれは強いと思います。

もう一つは、企画庁の経済研究所の研究報告などでも既に首・闔臂敕・妨Φ罎気譴討・蠅泙垢韻譴匹癲△海譴・蘆羚眷・力・・圓・・┐討【4】泙垢函⊆唆箸凌執鐡戮漏里・帽發・覆辰討い・・・・△襪錣韻任后・臆奪灰好箸・鷯錣紡腓【4】・覆蠅泙垢・蕁⇒廚垢襪砲△觴錣竜伺修世箸・△△觴錣了唆箸紡燭・里發里魎獷謀蟆爾靴討靴泙辰討い誅・・圓・唆箸垢詆囘戮・發・覆襪里如△修Δいμ未任呂爐靴躰唆箸凌執鐡戮・發泙覯椎柔【4】・△襪隼廚い泙后・・修蕕・颪韻襪里蓮⊃執鐡戮・發泙襪韻譴匹癲△修譴鬚修海暴颪い燭茲Δ弊・・砲茲辰銅紊瓩襪海箸・任【4】襪箸いδ・戮里海箸任呂覆い・覆隼廚い泙后・・鹿霈w) 3つ目は、これはよく出てくる議論ですけれども、6ページに日本の雇用システムがこういうふうに変わる。確かに具体例を出した方がイメージがわかりやすいのでいいと思うのですが、これはよく指摘されるわけですけれども、そもそもこういう従来の雇用システム、例えばここに書かれているような終身雇用システムですとか、年功的なシステムというのは、日本の大企業モデルなわけです。あるいは大企業及び官庁のモデルなわけで、こういうようなことを、例えば経済雑誌とか、特に大企業のサラリーマン向けの経済雑誌なんかに書くのであれば全然問題はないと思うのですが、一般的な国民に対するメッセージとしては、大部分の人はもともとこんな制度では働いてないんだよというふうに言われてしまうと、ちょっと返す言葉がないという感じになってしまうかもしれないと思います。

最後に、これはもしかしたらD委員がコメントしてくださるかもしれないのですが、8ページに教育改革の重要性というのが書いてありまして、私も教育改革の重要性というのは非常に大切だと思いますが、ここに「教育改革の強力な推進が必要」と書いてあるのですが、このやり方について、私は、教育改革で何よりも必要なのは教育についても規制緩和と選択の自由ということで、間違っても政府主導で強力に推進したりしない方がいい。そこのところは強調しておいた方が--、政府というのはもう少し言うと文部省とかそういうことだと思いますが。以上です。

〔 C委員 〕 報告の中で、「痛みを伴う」というフレーズもありましたし、「制度が変わりますよという印象を与えるべきだ」ということがあったと思いますけれども、これは結局、公正の問題だと思います。というのは、「痛みを伴いますよ」ということを言われたら、普通の人だったら、自分が死ぬなら、例えば足を怪我したときに切る必要があるから、先生は大体「切らないと死にますよ」って言って、みんなは「はい、はい、じゃあ切って」ということを言います。でも社会ですから、「痛みを伴いますよ」と官庁の先生が言った場合に、「じゃあ、他の人を殺してよ」ということを言う人が多い。ですから、公正に痛みを負担するということが非常に大事なことで、その点で公正がもちろん入りますよね。

ちょうど今、税制の議論が活発になっている中で、公正的な税制とは何なのかということを取り上げて話す必要があるのではないかと思います。特に納税者番号制度の導入ということの非常に大きなポイント。それが導入されたら、じゃあ、これから1つの非常に悪い点が直されるから、私も痛みも、足の指ぐらい切ってもいいということになるかと思います。

もう1点は、やはり「痛みを伴う改革」ということを国民の納得を得たということが必要です。国民が納得したというはっきりした証明が必要です。今、投票率が下がっている中、果たして国民が「ウン」と言ったかどうかということがちょっとあいまいになります。ですから、どうやって投票率を挙げるかということですけれども、この点でオーストラリアのやり方が非常にいいと思います。というのは、選挙に行かない人は罰金ということです(笑)。他の場所では2回続けて行かなかった場合には投票権を1回ぐらい休んでもらうというやり方があるのですけれども、これはあまり効き目はないと思います。むしろ行ったらお金をもらうか、行かなかったらお金を取るという、どちらかですけれども、そういう行ったらお金をくれるという制度をとると死んだ人も投票するのです(笑)。ですから、やはり罰金だということをつけて投票率を高めて、改革を公正に実行できる、国民の納得を得た形でできるということになるかと思います。

〔 I委員 〕 1ページの(2)財政構造改革と足元の景気停滞というところについてコメントを申し上げたいと思います。

ここに書いてある3つの点というのは、おそらく展望部会の方の2ページの【3】の財政構造改革とマクロ経済政策というところを、ある意味では要約しているのだと思うのですが、ただ、やや要約の仕方がニュアンスが違っているところがあるのではないかと思うのです。それは、1ページの(2)財政構造改革と足下の景気停滞というところの2つ目の○「財政構造改革の必要性、緊急性は依然として高い。財政構造改革の基本路線を堅持し、引続き推進していくことが、経済の活性化を図るうえで重要である」という文章があるのですが、私の読み方が悪いのかもしれませんが、どちかと言うと、「健全な財政なしに健全な民間経済なし」というふうにやや読めるのです。私自身はそういうふうには考えていませんで、逆さまだと思っておりまして「健全な民間経済なしに健全な財政はあり得ない」と考えております。言ってみれば今回の政策の失敗というのは、そこを逆さまにしたためではないかというふうに思っております。

そことの関係で、最初の○で、「景気の低迷感が強まる中で、機動的な財政運営が必要」というのと、「機動的な財政運営」の中身にも関係があるわけなのですが、「機動的」ということで目標年次が2年延ばされたわけですけれども、ただ中長期的な観点からしますと、今回の対策はどちらかと言えば需要対策という面が強くて、特別減税も税率等は動かしていません。恒久減税でないわけです。そうすると中長期的に必要なことは、つまり活性化するために必要なことは、限界税率をやはりもう少し下げるべきではないかと思うのです。いままでの書き方ですと、そこまで踏み込んでないのですが、展望部会の方で多少減税の話が出ているのですが、ここでは全く触れられていないわけです。社会保障の方を見ますともう少し踏み込んだことが書いてあって、積立方式が望ましいとか、税制面についてもう少し、もちろん税制調査会とかそういうことはあるでしょうけれども、中長期的な観点から日本の経済を活性化して健全にしていくためには、限界税率をもう少し引下げていくことが必要だ。これはちょっとアメの方になりますけれども、そういうことも必要ではないかと思うのです。

もう一つ、今回の機動的な対策ということで、なぜ需要対策だけになってしまったか、あるいは伝統的な公共事業中心になってしまったかというところには実は今の財政改革の基本路線、つまり3つのポイントがあって、1つは財政赤字を3%以内にする、赤字国債はゼロにしなければいけないという縛りがあって、毎年、赤字国債の額を減らしていかなければいけないという、それとキャップというのがあるわけですが、1つの主な例外がいわゆる公共事業、補正予算でやる公共事業の分だけということになっていて、それが非常に政策の自由度を奪っているのではないかと思うのです。私自身は歳出にキャップをかぶせることは非常に健全な考え方で、キャップはきちっと維持した方がいいと思いますけれども、歳入の面まで赤字国債で不可能だというと、それをちゃんと守ろうとすると、おそらく恒久減税が不可能なわけです。そこに矛盾が残っているのではないか。つまり現状の財政の目標、構造改革の目標というのは、もう少し考え直す必要があって、つまり、それは建設国債と赤字国債の区分の問題でもありますけれども、例えば供給面で必要な歳出を増やすことができるのか、それはできない、赤字国債を減らすという範囲内でしかできないという問題点があるのではないかと思います。

それから、3番目には、金融システムの改革ということで、国鉄の清算事業の分の28兆円というのは、公的金融の問題点と民間の金融システムを改革する上で、土地についても公的支援がある程度必要かもしれないという記述があるのですが、そういう支出は果たして財政構造改革の全体の中でどういう位置づけになっているのか、そこのところが明瞭ではないのではないかと思います。以上コメントです。

〔 B委員 〕 2ページから4ページに書かれております第2章についてでございますが、構造改革後のマクロ経済の展望という意味で、今、どちらかというと悲観論というか、それに基づく縮小均衡の悪循環みたいな状況下で、むしろ前向き、積極的に良循環というか、展望しようという、この主旨には大賛成であるのですが、ただ、先ほど3ページの(3)について申し上げたように、こういう可能性は確かにある。しかし、こういうものはどういう前提とか、どういう条件になっているのか、あるいは4ページの(5)我が国経済はグローバリゼーションの波に耐えられるか。むしろ消極的なのではなくて積極的に前向きにこれをやれというのはこのとおりだと思うのですが、同時に、グローバリゼーションに伴うマイナス面とかそういったものへの対応とかいうようなことで、私は、基本姿勢で前向きに書かれ、そしてそういう可能性があるということを強調されるということはいいと思うのですが、是非、条件付きとか慎重論を若干入れ込んだ形でこういうものを書いていただければ。

先ほど、あまりに悲観的に地球環境ワーキング・グループの受け止め方を申し上げたので、むしろ積極的に書いていただくことはとてもいいと思うのですが、そういう場合に条件とか、やや慎重さを取り込んでいただければということでございます。

〔 D委員 〕 まず第1点は、A委員の言われた点と全く同じでありますが、失業率は短期的には需要不足から4%近くなる可能性も非常に高いし、また、それを超すことも十分あり得ると思います。だけど、それにうろたえて、ヨーロッパ型のように6%、8%、10%にいくというものではないという点を踏まえた上で、ここをきちっと書く必要があると思います。

2番目は、今、B委員のおっしゃったグローバリゼーションのことですが、グローバリゼーションの本質は、ここに書いてあることもそうですけれども、グローバリゼーションのメリット、デメリットというのは、一方でそういうのが進む中で国内の改革が遅れれば遅れるほどグローバリゼーションのデメリットは大きくなってくる。国内の改革が進めば進むほどグローバリゼーションのメリットが大きくなるわけで、単にグローバリゼーションを外圧のように、それに対してどう消極的に考えるかというものではなくて、まさに国内の改革を一層進めるためのムチであるという点をはっきり書く必要があるのではないかと思います。

3番目は、その次の4ページの(6)です。これは経常収支赤字国となってしまうかという疑問なのですが、これは別の言い方をすると赤字国になってはいけないという強烈な価値判断が報告書にあるかのようにみられますが、それは本当はおかしいのではないか。要するに高齢化のぺースというのは一貫していくわけではなくて、2025年に第1のピークがあり、2050年に第2のピークがあるわけです。その間は若干ながらまた緩和されるわけです。そういう高齢化のピークには赤字になることがむしろ望ましいので、なぜかというと高齢化のピークに赤字にならなかったら何のためにいままで黒字をためてきたかということになるわけで、これは貯蓄のライフスタイル仮説とも整合的であるわけです。むしろ黒字が続くというのはどういうことかというと、貯蓄が落ちていく中でそれと同じペースあるいはそれ以上のペースで投資が落ちていくときに黒字になるわけで、これは長期的な経済停滞の状況であるわけです。ですから、今後とも投資というのはできるだけしていかなければいけないわけで、そのときには一時的に赤字になるということはむしろ望ましいわけでありまして、このような非常に偏狭な赤字性悪論というものをもって、しかもそれにわざわざマクロモデルを合わせるようなことがあってはいけないと思います。これはかつての「2010年委員会」でも明瞭に示したことで、2000年から2010年の間に赤字になるというのは、既に過去そういうレポートも出しております。それは依然として正しいと思っております。

〔 L委員 〕 今のD委員の意見に全面的に賛成です。

それと、報告全体についての一般的な感想なのですが、個別の具体的内容ということについてでなくて、報告書がこれから出てきたときに、どのぐらいのインパクト、影響力を持つかということです。1つの問題は、まず資料2の展望部会のスケルトンの最初のページですが、1番目の「・」危機脱却に向けたという「危機」なのですが、今の日本の社会にどのぐらいの危機意識とか危機感が生まれているのかどうか。悲観論はありますが、変えなければいけないという強烈な力のある危機意識というのは意外とないのではないかと思うのです。最近の調査を見ても、仮にちょっと調子が悪い、先行きよくならないということだけれども、今ぐらいの生活の状況が維持できればまあまあではないか、そういう回答をする人が60%以上いるということです。しかし、回復しないというシナリオをとった場合に、一体どういう世界になるのか。「まあまあ」がどのぐらい「まあまあ」でなくなるのかということをちゃんと出してやるということが重要だと思います。高齢化という与件も変わりますし、海外との競争という条件も変わりますし、急激に内外の環境が変わる中で「まあまあ」で何もしないシナリオというのは、現状維持できるどころか大変な状況になるということだと思うのですが、その辺をしっかりしてやらないと、再三出てくる「痛み」の話が先行してしまう。改革はまだやっていない、しかし「痛み」をめぐる議論だけがワーワー出てきてしまっている気配がどうもあるのではないか。

そのジレンマを下げるためには、今のままの場合にどういう理由で、どういう状況になるのか、将来、20年後の状況でどういう痛みになるのかということをわかりやすく出してやる。

今の痛みについて言えば、いまの痛みを飲み込んだ場合に、具体的にどういう展望が開けるのかという、ですから、改革をしない場合とした場合のもう少しわかりやすい、これまで閣議了解もされた計画の中でも再三取り上げられているのですが、今の社会にある危機意識の欠如、希薄な状況を考えますと、それをわかりやすくくり返し説明してやるということが改革を進める上での非常に重要なポイントであり、したがって、それが、この報告が説得力を持ちうる条件だろうと思います。

悲観論はあるけれども危機意識に至らない状況が一番具合が悪いのではないか。C委員もおっしゃいましたけれども、デモが起こるわけでもないし、投票所に行くわけでもないしということですから、おそらく危機意識は全くないという状況なのかもしれません。しかし、このままでは危機が来るのだというところをちゃんとわかりやすく、納得させられるような格好で提示することが重要である。そうでないと、ただ観念的一般教養になってしまうという感じがいたしますので、是非とも、その辺、具体的で非常に明快なわかりやすい何かの仕掛けを作っていただけたらと思います。

〔 部会長 〕 実は、L委員が一番最後に言われたことは、ジャーナリズムに大いに期待をしなければいけないことだと、まじめな話そうだと思うのですが、今日、いくつもの非常に重要な問題が出てまいりまして、例えばグローバリゼーションというような問題、今の進み方から言うと、かつてこういう分野の学者の方々が言われたように、グローバリゼーションと国際化は違うのだという種類のところは全く違った次元に物事は進んでいて、実体としてそれをどう受けるかということの方が非常に重要になってきていると思います。かつてはインターナショナリゼーションとグローバリゼーションは違うとかいう種類の話がわりに話題を呼びましたけれども、今はもうそういうことではないのではないか。しかし、どう受け止めるかというのはかなり重要な問題だと思います。

先ほど、D委員が言われたことですけれども、実は経常収支の一時の赤字化は避けられないのではないかというのは、あえて言いますと、失業率がかなり上がることも一時的には避けられないということも同じように受け入れなければいけないのではないか。これはニュージーランドの例が 100点かどうかは別にして、やはり一時的にああいうことというのは起きる。ですから、先ほどの痛みの問題と離して、やはり変えていくときにはどこかひずみが一時的におきるということはやむを得ない。誰でも自分の痛みとか、自分に影響しないものならいいというのは確かに洋の東西を問わず人間はそうなのですが、しかし、本当に一時のひずみを通ってもやっていくことが結果的にいいところに行くのだということを、どういうふうに説得性を持たせるかというところが本当にキーだと思うのです。おっしゃるように危機感というのは、そういう意味では中小の事業主の方は本当に大変だと思います。首を括ろうかと思っている方も嘘ではなくたくさんおられると思いますが、一般的な意味で、地方なんかに行けば、いい悪いは別としてそういう生活者の人たちのところで、そんなに逼迫感がないというのは事実でしょうし、そういう中で嫌なことをどういうふうに受け入れていくのか。そうなると、実は政治の話が出てきてしまうので、先ほどI委員がおっしゃったことも一部政治のところに入ってきますが、経済審議会で政治の分野に立ち入ること自体は、どうもプロダクティブではないような気もするけれども、全くそれを避けて通るというのも--、ですから、合同報告では何か上手に触れる必要があるのではないか。その部分なしに、今、比較的のんびりしている中で厳しいことをやらなければいけないのをどう受け止めるのか。極端なことを言うと、国際的な状況を無視すれば、むしろ日本だけを考えればむしろ徹底的に苦しんだ方がいいのだという筋書きは依然としてヴァイアブルだと思うのですが、どうも国際的な環境で考えれば、それはいけないのではないか、いや、それは甘い、むしろ徹底的にやるべきだという意見もあるかもしれないし、徹底的に悪くなれば心配しないでみんなよくなることは間違いないので、沈みっきりということはないのではないかと私は思っていますが、それは好ましくないという--。ひとつ、この辺は明るい展望を書いて、しかし、それは痛みなしとしないとか、あるいはいくつか条件があるとかいうこともきちんと書いていく。

ただ、1つ筋書きがそれなりにロジカルで整合性があるというところはわかりやすく、骨太にきちんと書けるようにしていきたいと思います。

ただ1つだけ、本当は展望部会の方のスケルトンの2ページに、【1】から【5】と書いてありまして、単純に言うと金融機関のリストラ、不採算な金融機関は思い切って整理する、ここから失業も出ます、2番目に思い切って不良資産問題に対応します。もちろんマクロの経済政策と財政構造改革、まさに今やっていることがそうなのですけれども、そして構造改革も一層強力に推進します。実は5番は何か配慮しながらというより、本当はその結果出てくる雇用問題については責任を持って対処しますと言った方がいいのではないかと思いますが、パラでやっていくと4番目までのものが全然パンチがなくなって中途半端になっちゃうという気がするのですが、しかし、今、これを一生懸命やろうとしているのではないか、それなりに株価が下がり、円安になるのはどういうことかということなので、これは1つ1つのやり方がまだ足りないのか、特に1なんかについてはまだ徹底してやりきれてない。ですから、そういうところを当面はもっと強く出していくのかどうか。これはひとつ今日の皆さんのご意見も踏まえて、合同報告書の方は水口部会長ともご相談しなければいけませんけれども、是非、リアリスティックなトーンがきちんと出るように、また具体的にイッシューとなっているようなものをあえてここにきちんと入れていくようなことも、皆さんから非常にいいご意見をいただきましたので、さらに整理させていただいて、5月18日の次の部会で素案を皆さんにお諮りすることになりますので、その段階までにさらに反映させていきたいと思います。

今日は、時間が過ぎてしまいましたけれども、次回以降の日程について事務局からご説明をして、今回の会議を終わりたいと思います。

〔 事務局 〕 お手元の資料4に1枚紙でございますように、今、部会長からご紹介ございましたように、次回は5月18日の2時半からこの部屋で、本日スケルトンでお示しした部会報告を素案の形で、それから合同報告書も素案の形でお示ししてご議論を賜りたいと考えております。以上でございます。

〔 部会長 〕 それでは、本日は長時間にわたりまして、どうもありがとうございました。

--以上--