経済審議会第10回経済社会展望部会議事概要
1 日時:
平成10年4月27日(月)14:00~16:00
2 場 所:経済企画庁特別会議室(436号室)
3 出席者:小林陽太郎部会長、井堀利宏、岩田一政、角道謙一、黒田晁生、小島明、小林佳子、清家篤、長岡貞男、長岡實、ロバート・アラン・フェルドマン、深海博明、村田良平、師岡愛美、八代尚宏、吉井毅の各委員
糠谷事務次官、林官房長、高橋企画課長、中名生総合計画局長、貞広審議官、高橋審議官、大西計画課長、染川計画官、涌野計画官、塚原計画官、大森計画官、安井計画官、田坂計画官、赤井計画官、小島計画官、荒井計画官、渡辺電源開発官、道上計画企画官、福島推進室長 他
4 議 題:
- 【1】経済社会展望部会報告書スケルトン(案)
- 【2】経済審議会展望・役割両部会合同報告書スケルトン(案)
5 審議内容:
【1】経済社会展望部会報告書スケルトン(案)について事務局より説明。これに対して委員からの主な意見は以下のとおり。
- ○「福祉等サービス産業の分野における効率化、生産性の向上」という表現と、「需要が見込まれる福祉産業等での雇用創出」すなわち福祉産業は生産性が低いから雇用誘発効果が高いということは、一見矛盾しているように読める。言わんとすることはわかるが。
- ○福祉については、規制緩和をしてもなお採算がとれないならば、補助金等により雇用創出を図るという意味で書いているのか。
- ○福祉については、規制緩和のみでなく、介護保険、すなわち公的補助を個人に与えるということがカギである。
- ○「エイジフリー」や「ジェネレーションニュートラル」はカタカナを使うより日本語のほうが分かりやすいのではないか。
- ○地球環境問題について、楽観的な側面を強調しすぎではないか。試算上はワーキンググループ報告書のとおり経済成長にあまり大きな制約はかからないとしても、これを実現することは、(1)需要面での「合同会議対策」を実行することは重要であるが、それは必ずしも容易ではない、(2)供給面での対応(原子力発電の推進)も必ずしも容易ではない、(3)高コスト構造是正のための施策は価格の低下を通じてエネルギー消費の増加を招く可能性がある、(4)経済の活性化もエネルギー消費の増加につながる、といった面で楽観視はできない。
- ○国民へのセールスポイントとして「日本を高齢化への対応に成功した世界で最初の国にする」というような明確なビジョンを示す方が良いのではないか。ただし、良い面のみを強調するのではなく、例えば「潜在成長率は0又はマイナスになるかもしれない」などと、悪い面もはっきり書いた方が良い。
- ○各論においても、中心となる原則との関わりを明確にすべきではないか。
- ○部会報告でも各ワーキンググループ報告における提言を書き込むべきではないか。
- ○福祉は今まで公的なもの中心で市場が無視されていたが、今後は民間の創意工夫を活かせる制度へ変わり、それによって福祉分野の生産性や雇用が伸びるとの考え方を明確に書くべきである。
- ○雇用政策における長期と短期のトレードオフについて、今回の景気対策でも雇用調整助成金の拡充が盛り込まれているが、むしろ、労働市場の効率化の方が長期的な雇用創出にとって重要である。このように具体的な政策論争となっている点を一覧表にしてはどうか。
- ○住宅問題について、報告書は定期借地権付住宅や容積率の特例など持ち家住宅的な思考であり、議員立法の動きがある定期借家権について触れられていない。これを無視すべきではない。
- ○開かれた「透明で公正な市場システム」の中で労働移動について述べるならば、外国人労働者に対してどういう立場を採るかについて触れたほうが良いのではないか。
- ○近年、グローバル化やボーダーレス化が頭で考える以上に実態として進展しており、2010年には更に進展することとなるだろう。このような状況では、東アジアや世界から見た日本がいかなる役割を果たすかとのグローバルな視点が必要ではないか。
- ○米国の制度をまねる必要はないが、米国の制度と伝統的な日本の制度を如何に調和させるかとの観点が重要である。
- ○「『日本型経済システム』の制度補完性が合理性・効率性を喪失」とあるが、日本型システムが生き残る可能性もあるのではないか。
- ○最近のシティバンクとトラベラーズの合併のように強化された有力な金融機関同士が合併することにより総合力を強化する戦略が現れてきているが、当案では、金融機関の多様化する戦略を描いており、メガアライアンスの記載等、そのような動きも視野に入れたものとなっている。
- ○従来の規制が結果としての平等を指向してきたとのことであるが、被規制産業の方が賃金が高い例もあることから、非効率のみならず不平等をももたらしたのではないか。
- ○結果としての平等が非効率をもたらしたとのことであるが、評価する方法がない中で断定することは可能か。
- ○機会の平等については良いと考える人も悪いと考える人もいる中で、従来は結果としての平等のみを重視してきたが、近年の厳しい状況を受け、今後は機会の平等を重視する人にチャンスを与えようということである。しかし、これは結果の大きな不平等を容認することではない。
- ○公的年金制度改革について、基礎年金部分の改革については現在あまり議論されていないが、世帯単位から個人単位への移行を考えるなら、将来的には税方式が適切ではないか。
- ○現在の日本の社会には悲観論はあっても改革が必要との危機意識が薄いのではないか。改革を行わないシナリオでは現状維持どころか今よりひどくなることを明確にするとともに、改革を行うことによりどのような展望が開けるかを明らかにした方が、改革を進めることについての説得力を持つのではないか。
- 【2】経済審議会展望・役割両部会合同報告書スケルトン(案)について事務局より説明。これに対して委員からの主な意見は以下のとおり。
- ○産業構造調整だけでなく、成長産業でも競争の激化により非自発的失業が増える可能性もある。また、スケルトンでは「全体としての失業がそれほど深刻化することはない」とあるが、中高年労働者が増えるということは彼らにとっての失業が深刻化するのは事実であることから、「失業は深刻化するが、政策により深刻さを弱めることができる」との記述にすべきではないか。
- ○雇用システムについての記述は大企業のシステムに限った話であり、大部分の人はこういう制度の下では働いていないのではないか。
- ○「教育改革の強力な推進」とあるが、教育改革において必要なのは規制緩和と選択の自由の拡大であり、政府主導で推進するわけではないことを強調すべきである。
- ○改革に伴う痛みについて、社会の中では痛みを他人に押しつけようとする人もいることから、痛みをいかに分け合うかという公正の問題がある。
- ○財政構造改革と足元の景気停滞について、健全な財政なしに健全な民間経済なしとのニュアンスで書かれているが、逆ではないか。また、需要対策面の機動的な財政運営が必要のみでなく、中長期的な視点から税制の改革も検討する必要があるのではないか。更に、財革法については、赤字国債をゼロにする等の規定により供給面で必要な支出ができないなど、政策の自由度を奪っていないか。
- ○金融システム改革について、金融機関の持つ不良債権の担保土地に対して公的支援が必要との記述があるが、このための支出と財政構造改革との関係が不明確である。
- ○構造改革後のマクロ経済の展望として、悲観論とそれに基づく縮小均衡の悪循環の中で将来を前向き、積極的に展望しようという趣旨には賛成であるが、その中にも条件や慎重論を埋め込むべきではないか。
- ○グローバリゼーションについては、国内の改革が遅れればそのデメリットが大きくなり、国内の改革が進めば逆にメリットが大きくなる。このため、グローバリゼーションを外圧のように消極的に捉えるのではなく、国内の改革を進めるための手段であることを明確にすべきである。
- ○報告書の「経常収支赤字国になってしまうか」との問いには、赤字国になってはいけないとの強い価値判断があると思うが、2025年又は2050年の高齢化のピークには赤字になるのがむしろ望ましいのではないか。高齢化で貯蓄が減るなかで赤字にならないということは投資も減るということを意味する。
- ○経常収支同様、失業率も一時的に上昇するのは避けられない。しかし、その結果どうやって良い状況に持っていくのかについて説得力を持たせることが重要。そのためには政治的な問題にも触れる必要があるかもしれない。
6 今後のスケジュール
次回第11回経済社会展望部会は5月18日の14時30分から開催する予定。
以上
なお、本議事概要は、速報のため、事後修正の可能性があり得ます。
(本件に関するお問い合わせ先)
経済企画庁総合計画局計画企画官室
電話:03-3581-0977