経済審議会経済主体役割部会(第9回)議事録
時:平成10年4月24日
所:経済企画庁特別会議室(436号室)
経済企画庁
経済審議会経済主体役割部会(第9回)議事次第
日時 平成10年4月24日(金)14:00~16:00
場所 経済企画庁特別会議室(436号室)
- 開会
- コーポレートガバナンスの再構築について
- 起業と退出がしやすいシステムの構築について
- 地方分権型行政システムにおける行政サービスの新たな構築について
- NPOワーキング・グループ報告書(案)について
- その他
- 閉会
(配付資料)
- 資料1 経済主体役割部会委員名簿
- 資料2-1 コーポレートガバナンスの再構築(論点整理)
- 資料2-2 コーポレートガバナンスの再構築(説明資料)
- 資料3-1 起業と退出がしやすいシステムの構築(論点整理)
- 資料3-2 起業と退出がしやすいシステムの構築(説明資料)
- 資料4-1 地方分権型行政システムにおける行政サービスの新たな構築(論点整理)
- 資料4-2 地方分権型行政システムにおける行政サービスの新たな構築(説明資料)
- 資料5 NPOワーキング・グループ報告書(案)
- 資料6 雇用・労働ワーキング・グループ報告書
- 資料7 民民規制ワーキング・グループ報告書
経済審議会経済主体役割部会委員名簿
部会長 | 水口 弘一 | (株)野村総合研究所顧問 |
部会長代理 | 金井 務 | (株)日立製作所取締役社長 |
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荒木 襄 | (社)日本損害保険協会専務理事 |
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潮田 道夫 | 毎日新聞経済部副部長 |
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浦田 秀次郎 | 早稲田大学社会科学部教授 |
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奥野 正寛 | 東京大学大学院経済学研究科教授 |
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川勝 平太 | 早稲田大学政治経済学部教授 |
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河村 幹夫 | 多摩大学経営情報学部教授 |
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神田 秀樹 | 東京大学大学院法学研究科教授 |
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公文 俊平 | 国際大学グローバルコミュニケーションセンター所長 |
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ポール・シェアード | ベアリング投信株式会社ストラテジスト |
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末松 謙一 | (株)さくら銀行相談役 |
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竹内 佐和子 | 長銀総合研究所主席研究員 |
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鶴田 卓彦 | (株)日本経済新聞社代表取締役社長 |
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得本 輝人 | 日本労働組合総連合会副会長 |
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豊島 格 | 日本貿易振興会理事長 |
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那須 翔 | 東京電力(株)取締役会長 |
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西村 清彦 | 東京大学大学院経済学研究科教授 |
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樋口 美雄 | 慶応義塾大学商学部教授 |
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グレン・S・フクシマ | 在日米国商工会議所(ACCJ)会頭 |
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星野 進保 | 総合研究開発機構理事長 |
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星野 昌子 | 日本国際ボランティアセンター特別顧問 |
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本間 正明 | 大阪大学経済学部長 |
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森地 茂 | 東京大学大学院工学系研究科教授 |
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諸井 虔 | 秩父小野田(株)取締役相談役 |
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山内 弘隆 | 一橋大学商学部助教授 |
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山口 光秀 | 東京証券取引所理事長 |
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吉野 直行 | 慶応義塾大学経済学部教授 |
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米倉 誠一郎 | 一橋大学イノベーション研究センター教授 |
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和田 正江 | 主婦連合会副会長 |
〔 部会長 〕 それでは、定刻になりましたので、まだお見えになっていない委員の方もいらっしゃいますけれども、ただいまから、第9回の経済主体役割部会を開催させていただきます。
委員の皆様方には、ご多用中のところをお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。 さて、本日は議題が4つございます。1つ目は「コーポレートガバナンスの再構築について」でございます。2つ目は「起業と退出がしやすいシステムの構築について」でございます。3つ目は「地方分権型行政システムにおける行政サービスの新たな構築について」でございます。4つ目は「NPOワーキング・グループ報告書(案)について」でございます。
今日は、議題が盛り沢山でございまして、資料もお手元にありますとおり数センチにわたっておりますが一つ一つの議題についてご審議いただくお時間が十分ではないかもしれませんが、積極的にご意見をいただき審議が滞りなく進みますよう、ぜひともご協力をお願いしたいと思います。 まず第1の議題、「コーポレートガバナンスの再構築について」と、第2の「起業と退出がしやすいシステムの構築について」は、いずれも企業部門に関する話題でございますので、事務局より一括して説明をお願いします。事務局の方も、簡潔に、しかも要領よく説明をお願いしたいと思います。
それでは、どうぞよろしくお願いします。
〔 事務局 〕 それでは、簡潔にご説明申し上げたいと思います。
まず、資料2-1でございます。資料2-1は、「コーポレートガバナンスの再構築」というテーマで4つの論点を立てて整理させていただいたものでございます。
論点1は、我が国の従来型コーポレートガバナンスの特徴ということで、これは従来からご議論いただいているところを整理したものでございます。すなわち、持合い構造に支えられたメインバンクシステム、経営者を含めた企業内部労働市場の存在の2つの要素により安定的なシステムとなっていたということでございます。
1枚おめくりいただきまして、論点2は、80年代後半以降(特にバブル経済期、バブルの発生から崩壊に至る過程)においての、従来型コーポレートガバナンスの問題点という整理でございます。第1点は、企業の内部におけるチェック機能が脆弱であった。これに伴い、経営規律の緩みが起こったのではないか。第2点は、間接金融から直接金融への流れの中で、メインバンクの企業に対する交渉力の低下、あるいはメインバンク自身のガバナンスがうまくいかなかったのではないか。3ページですが、第3点は、そういったメインバンクを中心とした金融機関に対する行政の監督、これがうまくいっていなかったのではないか、というような整理でございます。
以上を踏まえて論点3と論点4が、このペーパーの趣旨でございますコーポレートガバナンスの再構築の方向という整理でございますが、まず論点3の方は、企業内部におけるチェック体制、統治機構の問題をどう考えるか。
第1は、企業内部におけるコンプライアンス体制を整備する必要がある。
4ページ目ですが、第2は、「企業統治機構の改革」。ここで1つは、株主総会は形骸化し、そのチェック機能はもはや有効に機能していないという論点から、例えば、株主総会はいわゆる議会のようなものの構成員を選任し、その議会のような存在が取締役会あるいは業務執行を監視していくという、言うなれば間接民主制のような考え方は導入できないだろうかという論点を立ててございます。そのほかに、社外取締役、社外監査役等、従来議論されているところもあわせて整理しておりますが、このあたりは、人材の供給のために、企業経営を経験した人材の輩出と登用が容易になるような環境整備が必要ではないかという整理をしております。
そのほか、「企業経営そのものの柔軟性と効率性の向上」という観点から、自社株買いの活用、M&Aの活性化等についても付言しているところでございます。
5ページ目の論点4でございますが、外部からのモニタリングの強化という観点から、1つは「情報開示と説明責任」、これは既にご議論いただいているところでございますが、会計制度の改革における時価評価の導入、あるいは各種あります企業情報の開示内容の調整を図ること。あるいは、6ページ目ですが、企業においては積極的にインベスター・リレーションズ活動を推進していってもらいたいということを言っております。
2番目は、会計監査人監査、このチェック機能をさらに強化していく手だてが必要ではないか。 3番目は、「純粋投資家によるモニタリング機能」ということで、これも従前ご議論いただいたところでありますが、7ページ目で、具体的には、投信の活性化、401Kプランに代表されますような確定拠出型年金、これは本来的には、資産選択の幅を広げるという視点でございますが、こういったものが導入されることによってガバナンスの部分も多少は出てくるのではないかということでございます。
5番目に「金融機関の検査・監督体制の整備」ということで、8ページですが、最初の方は「金融検査・監督行政のあり方」、これは現在、議論が進んでいるところでございますが、この中で1つの問題提起で、現在、銀行法等で、銀行につきましては株主の帳簿閲覧権が否認されているわけですが、このあたりは、市場による金融機関のチェック機能の活用ということで見直していく必要があるという視点を立ててございます。それから、「金融検査・監督の民間への委託」という仕切りの中で、例えば、英国で導入されつつありますような、業界内に規制・検査・監督を行う自主規制機関、その活動経費自体は加盟事業者によって負担されるということで、いわゆる受益者負担の考え方でございますが、こういったものを設けて、官民一体となった、より効率的な検査・監督を行っていく仕組みについても検討すべきではないか、といったような指摘をさせていただいております。
以上がコーポレートガバナンスに関する論点整理でございます。
続きまして、資料3-1でございます。「起業と退出がしやすいシステムの構築」というタイトルで、6つ論点を立ててございます。経済活性化のためには、業を起こすという、いわゆる単なる「起業」だけでなく、経済全体として「起業」から「展開」、それから「退出」、退出後の「懐妊」、それから再「起業」( 新たなる起業ということ) のメカニズムを全体として活性化していく必要がある。こういった観点をもちまして、以下の6つの論点を整理させていただいております。 第1点、新規株式公開(IPO)の推進でございます。第二店頭市場の開設等IPOの推進については、種々の環境整備が行われておりますが、なかなか実態が進んでこない。これについて、2ページですが、実際に登録しようとする企業の負担軽減のための努力をすべきではないか。あるいは投資家に対して、そういった市場がハイリスク・ハイリターンであるが、魅力がありかつ身近な投資先であるという意識を定着させる必要があるのではないか。さらには、投資家と起業側のマッチメーカーとなるべき専門の証券業者の出現を待つべきではないか。あるいは、それが存立しうるような環境整備をすべきではないか、ということを言っております。それから、IPOは、起業家育成の観点に立ちますと、大企業に就職して安定的な収入によるよりもベンチャーをした方が得であるというインセンティブを示すという意味においても重要ではないか、ということも言ってございます。
論点2は、資金面だけでなく、総体的なサポートを含めた創業支援の活動が重要であることを言っておりまして、3ページ目に、支援を受けるベンチャー側のPR等の意識改革。それから、職業会計人や弁護士等の専門家集団による総合的な支援。現在、一部総合商社等で進められています新規企業のための総合的支援、こういったものに触れております。
論点3は、全く新しいベンチャーではなく、企業の中からコーポレートベンチャー、ないしは分社化という形で事業を再編成していく手段として、持株会社制度の活用は重要ではないか。そのために必要な環境整備でございますが、例えば、4ページで、連結ベースのディスクロージャーの充実、あるいは連結納税制度の導入、あるいは持株会社、親会社と子会社の従業員の間の雇用条件の整備、こういったようなことについて指摘してございます。
論点4は、同じく経営資源の社会的な継続、あるいは新規分野への進出という観点から、M&A市場の活性化を進めていくべきということで、5ページですが、M&Aの成功例のPR、匿名方式等による売買市場の創出、あるいは合併方法の多様化の方策といった点を指摘しております。 論点5は、タイトルで言いますと「退出」のところに当たるくだりでございますが、労働力や蓄積された技術・ノウハウ等の経営資源を、倒産という形で、ある意味では空費といいますか、してしまう可能性もあるのではないか。したがって、現在の倒産法制を見直した上で、より柔軟な、再建型の倒産制度の再構築を促進させていくべきではないか。現在の、例えば会社更生法はかなり重装備でございますので、時間がかかる。その時間がかかっている間に、場合によってはスポンサーが見つからずに清算に移行してしまって、そのために、本来有用である経営資源が空費されてしまうのではないか。あるいは、現在、入り口で、更生でいくか清算でいくかという選択を迫られるわけでございますが、このあたりも、例えば経過観察期間のようなものを設ける考え方はないか、といった点でございます。これは現在、法制審議会で検討が始められたところでございますが、そういったものをさらに進めながら、なおかつ、例えば6ページの2の(b)ですが、企業の財産の評価方法について、多様な方法が考えられないか。あるいは、事業管財人の選定をもう少しオープンな方式にできないだろうか。さらに、(e)ですが、すべての倒産処理に共通する申立ての一本化などの考え方を検討できないだろうか、こういった点を指摘してございます。
論点6は、若干精神論に近くなりますが、「失敗」と「再挑戦」を正当に評価する社会風土・環境をどのように醸成していくかという視点でございまして、これも7ページで具体的にいくつか述べておりまして、大きな柱の1つは、人材育成・人材確保という観点から、例えば、NPOを仲介としたボランティアによるビジネス教育、これは資料に「米国における『ジュニア・アチーブメント・プログラム』等」と書いてございますが、そういった考え方はどうか。あるいは、そもそも新しい業を起こすために必要な労働力の確保ということで、労働移動の円滑化、適材適所の促進といった観点から、例えば、現在進められています有料職業紹介の一層の自由化、あるいは企業年金のポータビリティの確保、こういった点が重要ではないかと指摘しております。最後に、「起業家の輩出を促進するような社会風土の醸成」ということで、「失敗」を通じて会得した教訓を活かし再度挑戦していくという精神を尊重し正当に評価するような社会風土を醸成すべきである。特に、退出した後も再度の起業に向けたシーズの開発・発掘のチャンスを積極的に与えるような、言葉は必ずしも練れてございませんが「避難所(シェルター)的機能」が地域に根付くことが望まれているのではないか、こういった点を指摘しているところでございます。
簡単でございますが、以上2つのテーマにつきましてご説明申し上げました。
〔 部会長 〕 簡潔に、ありがとうございました。
それでは、ただいま説明のありました2つの問題につきまして、どちらでも結構でございます、あわせてご意見をお伺いしたいと思います。
〔 A委員 〕 今、産構審の方でもコーポレートガバナンスの問題をいろいろ議論しているのですが、ごく最近の議論で、そもそも、社長を一体どうやって育てるのだ、あるいは、日本の企業の伝統的な社長の選び方ということで、これから日本の企業はやっていけるのだろうか、という点が大きな問題になっています。
ですから、コーポレートガバナンスという言葉の意味をどうとらえるかということもあるのですけれども、これは実は、かなり重要なポイントではないのか。
特に、日本の企業の場合は、大学から新規卒業生をとって、これが同期生の間で競争をしながら、徐々に年功序列で上がっていって、その中から管理職が出ていって、その中からまた役員が出て、その中から、結局トップが出てくる。年功序列のスタイルの中からトップが出てくる。 昔のように右肩上がりで、企業というもののやることがほぼ決まっていたときは、そういうスタイルで社長を選んでも問題はないのでしょうけれども、今のように非常に戦略的な考え方が大事なときに、年功序列の中でトップが選ばれるような方法でいいのか。戦略的な考え方をとろうとしても、そういう訓練もしてないし、また、バックにいるサラリーマンたちの利害を考えるとなかなか思い切った決断が下せない。そういう形でトップをつくり出すという、この形で一体日本の企業というのはこれからやっていけるのか。
例えば、今、金融機関の問題が非常にクローズアップされていますけれども、アメリカのあれだけ大きな金融機関でも、ダイナミックに大きな合併をやっているわけです。日本の金融機関の場合にはなかなかそれができない。なぜできないかというと、行内の従業員のことを考えるものだから、なかなか思い切ってできない、というようなことが大きいのではないかと思うのです。 そういうことで、日本の銀行の経営というのはこれからやっていけるのか、というような問題が具体的にあると思うのです。これは銀行だけではなくて、あらゆる業界にもあてあまることであると思います。
そういう問題は、ここでは取り上げないのかという点を、ちょっと申し上げたい。
〔 部会長 〕 どうもありがとうございました。この辺につきましては、非常に重要なご指摘だと思います。事実、コーポレートガバナンスの中でCEOをどうするか。特に、レポートの中では取り上げておりませんけれども、労働市場の問題では、CEOのマーケットがないというようなことを含めまして議論にはなっておりますが、Bさん、何かご意見がございますか。
〔 B委員 〕 特に、コーポレートガバナンスのところでは、私の考えなどがかなり反映されて、今さらコメントすることもないのですけれども、起業と退出の部分では、今ちょっと議論になったのですけれども、例えば、投資家の間では、日本の場合には労働基準法とか、あるいは70年代に下された最高裁判所による判決・判例があって、日本の場合はなかなか経営者が人員整理に踏み切ることができない、ということがよく言われているわけです。ですから、もしかすると、日本の労働体系とか判例がより積極的な再編成のネックになっているのではないかというような気がいたします。
そういうことを考えますと、例えば、米国流のコーポレートガバナンスの土台を作り、仕組みを用意したとしても、ほかのところでネックがあって動かないということになりかねないわけで、ますます市場と日本の経営者との間の不信感みたいなものが生じる可能性があるわけです。そういうことを考えますと、労働市場の流動性というのが1つの大きな課題となる。コーポレートガバナンスの仕組みを整理すると同時に、それに見合った形の労働市場の整備もあわせて考える必要があるのではないか、という気がいたします。
〔 部会長 〕 どうもありがとうございました。この問題につきましては、A委員ご指摘のとおり、1つの問題点として取り入れていきたいと思います。私自身も、金融ビッグバンというのはマネージメントビッグバンである、という考えを個人的には強く主張はしておりますので、その辺はまた今後取り入れていきたい、このように考えております。
〔 C委員 〕 「外部からのモニタリング」のところでいろいろなことが書かれているのですけれども、これはどうも誤解されそうだなと思うのは、確定拠出型年金を導入して、それによって、例えば株を保有することによって外からいろいろな形でチェックをするという、これも1つの方法であるということは否定はしませんけれども、今の企業年金の場合には,この拠出型年金は多分、企業年金と同じだろうと思いますが、退職金がベースになった形で、いわゆる公的年金に上乗せされているわけです。そうしたときに、言ってみれば、この原資が確かにプラスにもなったりマイナスにもなったりするわけで、安易な形で入れていいのかどうかというのは、今、年金の問題との関係で非常に大きな論点になっているのです。ですから、退職金がベースになっているのだとしたら、例えば支払保証とかの面については、きちんとした議論をして、明確にした上で導入を検討するということにしないと、ダイレクトにこういう言い方がいいのかどうかというのは、非常に私は疑問だと思っております。
いろいろな面で、ガバナンスの面をチェックする視点を広げていくということについては、決して否定的ではありませんけれども、こういうダイレクトの導入という形の書き方については、ちょっと書き過ぎではなかろうかと思っています。
意見です。
〔 部会長 〕 事務局サイドで何かございますか。
確定拠出型年金の導入ということは、非常に重要な問題でありまして、これについてさぼど異論はないかと、僕は思っております。ただ、コーポレートガバナンスの中に、いきなりこういう形で入ってくるということに対してのご意見でしょうか。
〔 C委員 〕 そうではなくて、アメリカの401Kプラン型云々と、前にも議論がありました。あれの背景には、エリサ法というのがあってちゃんと、言ってみれば支払保証とかが明確になっているわけです。ところが、日本の今の、例えば厚生年金であるとか、適格年金等々については、支払保証はあるのかないのか。この前とうとう、どこかの紡績会社で解散したケースなどがありました。そういうように非常に曖昧な形になっているのを、曖昧な状態のまま、こういう形の導入とかって言われると、問題をより大きくしてしまうのではなかろうか。そういう意味で、私は、ダイレクトに導入という形でこういう書き方をするのがいいのかどうか、ここを指摘したつもりです。
〔 事務局 〕 今の点については、正式に書くときには、今ご指摘のあった問題点もあるということを明記するような形で、少し工夫を今後してみたいと思います。
〔 D委員 〕 コーポレートガバナンスの問題は、今、本屋でコーポレートガバナンスの広告を出したら、わっと人が集まってくる。買って読もうと思って、私も大分買ってきて探究しようと思ったが、さっぱり読めないのです。それから、セミナーでも、これを出すとうんと集まるのだそうです。ちょっとはやりになり過ぎている。
一番抜けているのは、それぞれが、例えば商法学者がコーポレートガバナンスというと監査役のあり方とか株主総会のあり方を言う。金融の詳しい方は、メインバンクのどうこうと言う。挙げ句の果ては資料にあるように、銀行の監督の仕方が悪かった、という話にもなってくる。ということになると、一体何をここでやるのかがちょっとはっきりしないという感じががします。
特に、銀行という、これもまた横並び性があり過ぎたから私企業と言えないのではないか、という議論もまたあるかもしれませんが、その監督の仕方という形で一律なものにしてしまうのもいかがなものか。これからのコーポレートガバナンスというのはそれぞれの企業が自分で考えるべきであり、均質なコーポレートガバナンス像を出してしまうと、今ここで議論する意味合いというのが非常に薄らいでくるのではないかという心配があります。せっかく今、世の中でこういう問題が出ているときに、幅広い議論をどういう方向に終結させていくかということを、もう少し見据えた末で、まとめていただけるといいのではないかという気がします。そうでないと、むしろ、企業の自主性が活かされず、企業が総じて横並び的になってしまう。評定をやるとトリプルAが一番いいのだというのではなくて、Bクラスで活力あるところがいいんだ、というようなことだってあるわけですから、コーポレートガバナンスと言う以上は、その辺のことをもう少し広く見ていただいた方がいいのではないかという気はいたします。
ただし、今度の資料は、いろいろなことが書いてあるから、私は非常に勉強させていただいた。しかし、こういうことを経済審議会でまとめるときに、何が言いたいのかを、聞かれて答えられるような形にまとめていただいた方がいいなという気はいたしております。
特に、商法について言えば、今の株主代表訴訟制のように制度ができてから慌てるようなことがないようにしないといけない。日本みたいに、総会屋が跋扈するような社会において、株主代表訴訟制というのを出したらどうなるかぐらい、事前にわかったはずです。今度また、それをどうするかというような議論になり、ますます画一的な方向に進んでいくと、いい方向に行く面もあるけれども、また悪さも画一的になっていく。そういう社会ほどおもしろくないところはない、という気は私はいたしております。
この点のまとめ方について、お願いしたいと思います。
〔 部会長 〕 検討の視点ということ、その辺に今のご意見をよく踏まえてと思います。 今のような点は、Aさん、産業構造審議会との平仄はいかがなものですか。
〔 A委員 〕 平仄というよりも、ちょうど同じころに多分出ると思うから、向こうはそれを取り上げていて、こっちが取り上げていないということは、ちょっと意識しておいた方がいいのではないかという意味で申し上げたのです。
〔 E委員 〕 コーポレートガバナンスの資料の最後のページに、金融機関に対する検査・監督を民間の自主規制機関に一部委ねたらどうかというご提案があります。私は、その趣旨そのものは、決して反対ではございませんが、これにはかなりいろいろな吟味が必要ではないかと思います。 その具体的なことは、実は、先だってこちらでご報告いたしました民民規制のワーキング・グループの報告書の中にも少し触れておきましたが、この種の業界における自主規制機関のあり方については、かなり気をつけて運営しないと、いわゆる民民規制の温床になる危険性があるということではないかと思います。
具体的には、こういういわゆる自主規制機関が行う検査・監督等の規制について、それが本当に必要な規制かどうかということをまず、もちろん十分吟味する必要がありますが、それらのことがいずれにしても、法律等によってきちんと明らかに定められておかなければならないのと、それから、自主規制機関である機関の内部的なガバナンスの問題といいますか、その機関が本来の目的を正しく達成しながら活動するということを担保するためには、その機関の意思決定のあり方ですとか、内部的な牽制のあり方ですとか、そういうことについていろいろと配慮する必要がある。その業界の人たちだけではなくて、その検査・監督によっていろいろと影響を受ける、例えば消費者であるとか、金融機関の利用者のような人たちも、その構成員に含める必要があるということを、ワーキング・グループの報告書の中に指摘しておきました。いずれにしましても、検査を民間に一部を委託するというのは、発想としては、私は決して否定いたしませんが、その際にはいろいろな配慮が必要ではないかという点をもう少し書き加えていただいた方がよろしかろうということであります。
〔 部会長 〕 続きまして、いかがでございますか。
〔 F委員 〕 コメントですが、最後のところに関連するのですが、最近、格付機関による金融機関の評価あるいは企業の評価というのがあるわけですが、それがわりあい直近のデータとか機械的なデータによる分析が多くなっているような気がいたします。それから、S&Pとかムーディーズという、アメリカ系の格付会社の評価が影響力を持っている。本来、日本でもそういう格付機関のような評価機関、あるいは検査機関みたいなものが育成できればと思っておりまして、果たして、今のような格付のやり方が本当にいいかどうかという点については、今後の検討課題であるように思います。
〔 G委員 〕 起業のところについてちょっと申し上げたいのですが、2ページの論点2のちょっと前のところに、「大企業に就職して安定的な収入によるよりもベンチャーをした方が得であるインセンティブを示す」ということになっているわけですが、私は、税制のところで、特にこれがどうも問題になっているのではないかというような気がするわけです。特に所得税制のところで、単年度主義というようなことになってきた場合に、所得に関しての変動が非常に大きくなってくる社会において、従来のような税制のままでいいのかどうかというような問題が出てくる。 現行の税制の下においては、少なくとも安定している方が、手取り収入、可処分所得に直せばいいわけですから、そこのところの問題は触れないでいいのかどうかということについて指摘したいと思います。
といいますのも、前にMITの卒業生と東大・東工大の工学部の卒業生について、30年後に自分はどうなっていたいかという調査をある機関がやったわけですが、そこでは明らかに、MITの方は、自分の企業を持ちたいというような結果が出ており、東大・東工大の方では、大企業の管理職になりたいというような話が出ている。そのときに、所得が可処分所得ベースに直すと雲泥の差があるというようなことがありまして、例えば、総額の税引き前所得では同じであっても、波が大きい・リスクが大きい・変動幅が大きいような所得の場合には現行税制で非常にその点がデメリットになってしまうというようなことがありますので、そこのところは書かないでいいのかどうか、ということについてちょっと申し上げたい。
〔 部会長 〕 非常に重要なご指摘で、税制の問題は重要な問題として入っていませんでしたか。我々経済界は、年来そればかり言っているものですから、どこにでも入っているものとばかり思って見ていましたけれども。わかりました。これは非常に重要な点、最も重大な問題だろうと思います。
部会長がこういうことを言うのはおかしいのですけれども、コーポレートガバナンスのところの6ページで「純粋投資家によるモニタリング機能」というのは、純粋投資家と不純な投資家というのがいるのか。その点は、意味はわからないでもないですが、どういうわけで「純粋」ということにしたわけですか。
〔 事務局 〕 「不純」の対抗の「純粋」ではなくて、メインバンクなどの持合い投資家に対するものとして「純粋な投資家」という表現を使っております。
〔 部会長 〕 特に、税制の問題はいろいろな関係はあるにしても、これは前の行動計画委員会のときも常に、最後にぶち当たるのは税制ということに。労働市場の問題も、あらゆる問題も税制ということになっておりますので、これは政府でも十分に考えているところではあると思いますけれども、ぜひ入れる必要があると思います。
ほかに、この2つの分野についていかがでございましょうか。
〔 H委員 〕 コーポレートガバナンスの問題になりますけれども、問題点の摘出は十分していただいていると思います。ただし、コーポレートガナンスというのは、いろいろ言われていますが、一律な価値観でこれは律する必要は全くない。企業家というものは個別の価値観で、自分の会社の価値観で仕事をして、その結果をステークホルダーに提示して、評価を受ける。こうなると、大事なことは、キーワードとして言うとすれば、ディスクロージャーとかアカウンタビリティになるかと思います。このあたりに収斂されるような議論の立て方のほうがいいのではないか。今、日本の企業に要求されているのは、独自な経営や自分の価値観で仕事を進めていくことであるけれども、いずれの場合においても、ディスクロージャーとかアカウンタビリティは重要な問題となる。 4ページの下の方に、例えば、過剰なキャッシュ・フローを持つとバブルを起こすよということも書いてありますけれども、キャッシュ・フローと言っても、どこまでが過剰でどこまでが過剰でないかということは、企業の判断でもある。私は、この問題については、企業の独自の判断というものが十分尊重されてしかるべきであると考えます。ただ、その経営の姿勢とか、それからステークホルダーに対するディスクロージャー、アカウンタビリティ、この問題に尽きるのではないか。そういう方向に集約すればいいのではないかと考えます。
〔 部会長 〕 非常に重要なご指摘で、先ほど、D委員からもご指摘がございましたので、十分に踏まえてやっていきたいと思っております。どうもありがとうございました。
まだ、いろいろとご意見があろうかと思いますけれども、時間の関係もございますので、第1、第2の議題につきましては、ここまでとさせていただきまして、第3の議題、「地方分権型行政システムにおける行政サービスの新たな構築について」ということで事務局より説明をお願いいたします。
〔 事務局 〕 資料4ー1、資料4ー2でございます。「官から民へ」「国から地方へ」ということで行政のあり方が大きく変わりつつある中で、「官から民へ」というところで、前回、PFI等のご説明をして議論させていただいたわけですが、今回は、「国から地方へ」という「地方分権型行政システムにおける行政サービスの新たな構築」ということでご議論いただきたいと思います。なお、この点につきましては既に、地方分権推進委員会、行政改革会議等でかなり議論が進められているところでありますが、そうした中では、この1ページ目に書いてございますように、分権型行政システムの基本ということで、1つは団体自治、1つは住民自治、特に地域のことは住民に身近な地方公共団体が自立性とか自主性をもって首・闔臂陲砲△辰森埓・鮓﨓・・帽圓辰討い・△修ΔいΠ嫐・任涼賃亮・・・修譴・蕁・楼茲旅埓・禄嗣閏・箸・・・燭舛之萃蠅靴董△修寮嫻い蘯・・燭舛・蕕Α・海亮・雰萃蠅伴・弊嫻い僚嗣閏・・箸いΔ里・貘里箸覆辰匿覆瓩蕕譴討い・海箸箸気譴討・蠅泙后・・鹿霈w) そこで、論点でございますが、2ページ目をお開けいただきまして、1つは団体自治の観点からは、まずは地域の財政的自立が不可欠であるということを前のページでも載せておりますが、地域住民の受益と負担の関係を明確にすることが必要でありますし、同時に、限られた財源の下での効率的・効果的政策運営を可能とするための政策評価のシステム化、それから評価の基準の明確化・ルール化、または政策実施の事前事後の客観的評価、その評価に係わる情報開示というのが求められるわけでございます。
そこで、3ページ目のように、このような政策評価のルールとして具体的に、例えば地方公共団体の皆さんに私どもがお示しできるとすれば、これは既にいろいろなところでいろいろな試みがなされているわけですけれども、このような政策の立案過程、実施後の環境の変化を踏まえた評価、それから再評価によって見直しがなされたときの考え方というものを整理してみたらどうだろうかということでございます。
まず1つは、3ページ目に書いてございますように、立案過程におきましては、事業目的の明確化、目的の達成度を計測するための客観的な成果指標の設定ということを、まずそれぞれの行政の中で自分たちでわかりやすいように、また自分たちで実際に取得できるデータで整理をするというのが必要ではないか。さらには、費用対効果分析をそれぞれの政策について実際にやってみる。これは現在、国の社会資本整備につきましてはいろいろ検討が進められているわけです。必ずしも、全体的に明らかになっているわけではございませんし、横並び的に見ても、必ずしも同じようなレベルに至ってはいないわけですが、今後このような国・地方、補助事業も含めまして、かなり客観的なルール化というのをやってまいりますので、それとあわせた上で、それぞれの地方において費用対効果分析をこのレベルでやっていただく。
2番目のステップでございますが、事務事業、政策を開始した後の環境変化を踏まえた評価ということてございます。これは環境変化の有無についての定期的な点検を行う。当然、事業を取り巻く社会状況、住民要望の変化というのが刻一刻変わっていくわけですが、それを定期的にチェックして、その事業のその時点における妥当性とか、さらに成果を上げるための余地はないかどうかというのを検討していく。
4ページ目でございますが、具体的に「開始後の環境変化が認められる事業の再評価」ということで、北海道の時のアセスメントというようなことを1つきっかけにしたわけですが、既に公共事業においては、先般、国の直轄事業や補助事業を対象にして、事業採択後5年を経過した時点で、未着手の事業ですとか、事業採択をして事業を始めたのですが、5年、10年たってもまだやっている事業というものについて、一定のルールにおいて見直しをしようというのが決められております。そういったものを参考にしながらやっていく必要があるのではないか。
そうしたときに大事なことは、(4)に書いてございますけれども、1つは、政策評価につきましては、客観性・透明性の確保が不可欠でありますので、行政内部の評価にとどまらずに、第三者機関における評価を導入していくことが重要であるということでございます。
それから、再評価をして、結果的にその事業を中止したときに、残る債務を誰がどういうふうに負担をするかという非常に大きな問題が出てきておりますが、これも、最初の時点でそれに関するルールを明確化しておく必要があると思います。
さらには、そういういろいろなことを考えていくにあたりまして、客観的な指標ということで、4ページの下の方に書いてございますが、現在、国の方としてはそれぞれの県別ではございますが、「新国民生活指標」ということで、各地域の生活水準の豊かさを指標化して評価するという試みを行っているわけですが、これも各地域レベルに少しブレークダウンしたような形で、それぞれの地域がどういう状況にあって、他の地域とどこがどのように違っているか、自分たちの行政をする、あるいは住民サイドのそれぞれに情報を与えていくということも必要ではないかと思っております。
論点の2でございますが、これも以前から、住民参加ということでいろいろ言われていることですが、今回は、計画段階から積極的に参入する意味で「参画」という言葉をあえて使っております。1つは、住民自治の観点からは、ナショナル・ミニマムを越える行政サービスについては、地域住民による自主的な施策の選択、優先度をどう付けるかというようになりますと、結果的に地域間で政策の差異が出てくる。当然、サービス水準が変わってくるというわけですが、こうしたときに必要なことは、そういう政策過程において地域住民をどのように参画させて、その地域住民と合意形成をどのようにとらせるかという、そのシステムを整えることが必要になってまいります。 このために、行政側としても、1つは住民が参画できるような環境整備が必要となってまいりますし、5ページ目の下に書いてございますように、行政と住民のパートナーシップを可能とするために、NPOの存在というのも今後は大事になってくるだろう。1つは、ここに書いてございますのは、住民サイドが専門知識が乏しい。行政が提案する案についての具体的な批判ができない。あるいは、自分たちはこうしたいのだという、その気持ちを具体的な案として提案できないというときに、そういうシンクタンクとしてのNPOを活用して代替案を作成して、行政と調整するというのも考えられます。
一方で行政サイドで言えば、これはあまり声高に言うとまた問題があるかもしれませんが、行政サイドも当然、専門家を抱えているわけですが、その専門家の言葉が必ずしも、住民サイドに伝わらないというときに、専門的知識を保有するNPOとパートナーシップを組んでやっていく、ということも重要になるのではないかということでございます。
論点の3番目でございますが、これは行政と住民がパートナーシップを保ちながら、場合によってはNPOも協力してもらいながらということで、将来の地域を考えるにあたっての視点でございますが、1つは、1つの地域でクローズして見ないということではないかと思います。他の地域、隣接する地域、あるいはものによっては若干その地域を離れていてもいいのかもしれません。そういう他地域と協力して望ましい将来像というのを実現するのが必要であるということでございます。
今、「地域連携」という言葉でいろいろなことをひっくるめて言っているわけでございますが、身近な例ですと、ごみ処理とか、福祉とか、資料の方にいろいろ載せておりますが、そういう多くの市町村が、複数の市町村が共同して施設を整備、利用する。当然、今ある施設を再び、どの町のものをどういうふうに使うかというのを含めて、検討していくシステムが考えられます。そのためには、これもまたさまざまな地域で今試行されているわけですが、それぞれの首長さんのレベルですとか住民レベルでの、市町村を越えた連携という運動がなされているわけで、そういう連携意識の醸成を進めるということ。もう一つは、既に、広域連合で動いているところもありますが、そういう地域連携の具体的な形成が目指されている、そのような取組みに対して国も支援するということが必要ではないかと考えております。
もう一つは、そういういろいろな運動が展開されている、まさに試行錯誤している中で、地方公共団体と住民が共に考える地域づくりのマスタープランを構築したらどうかという提案をしております。もちろん、各市町村には基本構想とか都道府県の総合計画というのが今定められているわけですけれども、バラ色のことばかり書いてあるとか、総花的だというふうに言われております。大事なことは、その中から地域の新しいニーズをどのような優先順位で、しかも、住民の意思を反映しながら選択していくかということに尽きるのではないかと思います。資料には、各地でいろいろな試みがなされているものを載せておりますが、住民をそういう地域づくり全体のマスタープランの計画段階から参画させながら、みんなで納得する、しかも、ある部分では、そういう参画した市民・住民の責任というのも踏まえながら、そういうものを作っていく必要があるのではないかと思っております。これによりまして、真の市民社会の基礎となるようなものができるのではないかという思いで、これを書いております。
資料の説明は省きます。以上でございます。
〔 部会長 〕 どうもありがとうございました。
それでは、ただいま説明のありました「地方分権型行政システムにおける行政サービスの新たな構築について」ご意見をお伺いしたいと思います。
〔 I委員 〕 論点1について、内容的にはこれでいいかと思うのですが、整理の仕方が、4ページ目のところは書き分けた方がいいのではないか。具体的に言いますと、地域のサービスとか、あるいは地域サービスの効率性とか、そういうある断面の状態を評価する部分と、それから何かそれに対して政策の手を打った、その政策自身を評価するものを分けて書いた方がいいのではないかと思います。
といいますのは、非常に理想的なことを言いますと、ある地域の状態が市民から見て正確に意識されていて、どこが隘路になっているということがわかり、そういうところからいろいろな社会資本整備だとか、あるいは行政サービスの改善についてのニーズが出てきて、それがプランにつながって、その政策がまた評価される。こういうルーティンですから、常に新しくやることだけを評価しているというよりは、分けた方がいいのではないか、これが第1点です。
2点目は、最後のマスタープランのところですが、今ご説明のように、国の全総から始まって地域のマスタープランまで、往々にして時間と空間が明記していない。外国からみると、計画と呼べない。何となくムードを書くようなものがこの国には大変多い。その辺をどう考えるか、それ自身に意味がないわけではなくて、意見が多様化しているときにある方向性を与えるというのは大変重要なことですし、計画立案に際して、そういう議論を広くするということは意味があるのですが、それはそれとしておいて、もう一つ時間・空間をはっきりさせた計画を作って、特に、計画自身の実現を事後的に評価するプロセスをもう一回入れるようなことを考えた方がいいのではないか。つまり、ばらまき的なことをたくさん言っていて、5年たったとき、それをどこまできっちりチェックしているかというところが、特に地方自治体の計画では欠けているような気がいたします。 3点目は、これも資料の方には書いてあるのですが、住民という概念を、「住民登録をしている人」というふうにとって、それであらゆるプランニングの舞台に行っていいのかどうかというのは大変疑問があります。例えば、東京の都心の交通計画を作るときに、そこに住んでいる人だけでやっていいわけがない。この辺が、パブリックという概念を住民と訳してしまった日本の若干の歪みがあらゆるところに来ているような気もいたしますので、もう一度そこのところをクリアにすることを訴える必要があるのではないかと思います。
以上でございます。
〔 部会長 〕 どうもありがとうございました。非常に重要なご指摘だろうと思います。
〔 J委員 〕 今のI委員と同じ点をまず指摘したいのですが、資料の3ページの「新規事務事業の立案過程における評価」ということで、私もI先生のご意見に賛成で、現状の評価と政策の評価というのは書き分けた方がいいと思います。それと同時に、特に現状の評価のときにそうなのですが、それと情報公開みたいなものが結び付いていないとあまり意味がないということです。また、その情報公開があれば、2つ目の論点にありますけれども、NPO等の活動と結び付いて地域間比較のようなものができないか。
例で言いますと、私は前に水道料金のことをやっていたことがあるのですが、ご承知のとおり水道料金というのは国内で1対10ぐらいの格差が地域によってあるわけです。それでも、いろいろ地域の事情によっても違うのですが、例えば、それをグループ化して比較するようなヤードスティック的なことも可能なことは可能なわけです。それをどこがやるかということになると、受け手としては、NPOみたいなものがこれから出てきて、それぞれの地域の事業評価を相対化するということが可能になるので、そういう点をちょっと書いていただければいいかなと思います。 2点目は、費用対効果分析ですが、この種のことは今、国でもやられておりまして、いろいろと手続をルール化しているわけですが、私、実際にそれに携わっている者なので、ちょっとここだけ注意を喚起しておきたいのですが、この手のルールづくりというのは、かなり恣意的なところがあるといいますか、よく言えば、決めなければならないところがたくさんありますので、逆に言うとそれは恣意的になる可能性があるわけです。ですから、例えば、地方自治体で何かやるという場合に、どういう形でやるのかというのに客観性をもたせるような大まかなガイドラインといいますか、そういうものをちょっと確認しておかないといけないし、そういったものの研究がこれから必要だということも書いておいていただければありがたいと思います。
以上でございます。
〔 I委員 〕 今のJ先生のお話と絡むのですが、私自身は、地方分権したときに、中央政府の大変重要な役割は、外部評価を客観的に行うことではないかと思っています。NPOという立場の評価もあるのでしょうけれども、中央政府のいろいろ専門家がおられるところからいろいろな、PLIは企画庁のものですが、それぞれの立場からそういう評価をされる。例えば、運輸省は町ごとの交通の評価をするとか、あるいは自治省は公営交通の効率性の評価をするとか、こういうことがわりあいオープンにされることが大変重要な役割ではないかというふうに思っています。
〔 部会長 〕 続きましてどうぞ。
〔 F委員 〕 1つは、一番最初のページの(基本的視点)の(3)のところですが、ナショナル・ミニマム、シビル・ミニマム、この定義自身が日本がなかなかされていないのではないかと思いますが、それがありませんと、いろいろな自治体が「これはナショナル・ミニマムだ」という形でどんどんそれを引き上げてきますと、行政サービスが増えてしまうような気がいたしますので、どこかで触れられたら、最低限こういうものが大まかにナショナル・ミニマムである、水とか水道とか電気ですね、そういうようなことも少し含めていただければと思います。
それから、先ほどJ先生がおっしゃっていたコスト・ベネフィット分析のときには、恐らく、情報を一番持っているのは、それをやっている当事者であると思いますので、その計算を出すときに、どういうやり方で、そのコストなりベネフィットを出したかということまで情報公開することが必要ではないかと思います。
以上です。
〔 J委員 〕 今の先生のご指摘に付け加えるとすれば、ナショナル・ミニマムとシビル・ミニマムというのは、学説的に言うとナショナル・ミニマムははっきりしている、シビル・ミニマムはあまりはっきりしていない概念だと思うのです。それで、ナショナル・ミニマムとはどういうものなのかという、ご指摘のとおり、何か具体的な線引きというのか必要だと思いますが、例えば、今運輸などで言いますと、規制緩和をして過疎地の交通・足をどうしましょうというようなことを考えるときに、ナショナル・ミニマムという概念が1つ入ってきます。ですから、これまで言われたナショナル・ミニマムというものに、そういった新たな、今までは目に見えなかったところの足の確保みたいなものが少し入ってきていますので、その辺もご考慮いただきまして、ナショナル・ミニマムの概念というのをまとめていただけるといいと思います。
〔 H委員 〕 伺っていて感想なのですけれども、私もそうなのですけれども、地方公共団体の意思決定のプロセスと政策意思の決定プロセスということを、実は、住民と言われる人々はあまりよく知らないのではないか。今まで、そういう説明というものはあまりなされていないし、区役所でも、市役所でも行けば教えてくれるのでしょうけれども、そういうことはない。ですから、住民と地方公共団体との距離がなかなか埋まらないのではないかと思うのです。
アカウンタビリティということをもし言われるとすれば、その一番の入り口のところというのは、そういった地方公共団体の意思決定のプロセスというものを住民にわかりやすくまず説明して、そして1つの同じプラットホームに立たないと、これからいろいろなことが起こった場合に、結局、すれ違いの議論ばかりしているのではないかと思うので、機会があれば、そういうことを地方公共団体の方で積極的に住民に対して行うという、それもアカウンタビリティだと私は思うのですけれども、そのあたりを考慮していただければありがたいと思います。
〔 B委員 〕 これは全く感想なのですけれども、具体的な提言にはなっていないのですが、国と地方の分権という議論を聞いていると、非常に地理学的なとらえ方が根本になっているという気がしてならないのです。つまり、中央があって、国があって、それから地方がある。人間がそっちに住んでいる。でも、今はインターネットとか、通信技術が激変的に普及している現状を考えますと、実は、地方に住みながら、例えばインターネットに接続することによってグローバルシチズンになっている。その国のシチズンだけではなくて、グローバルシチズンになるというような可能性が十分あるのです。ですから、ある地方に住んでいるから、そこの地方の行政からいろいろなサービスを、あるいはそこの行政のサービスしか受けられないという、これが昔のパターンだったと思うのですけれども、現在になってくると、恐らく、いろいろなところからいろいろマーケットのサービスと行政のサービスを受けることができる。ですから、恐らく21世紀になればなるほど、この辺の側面が出てくるでしょうけれども、例えば、ではどういうふうにそのユーザーペイのルールを実施するかとか、実際いろいろな行政機関が提供しているサービスを、そこだけの地域に住んでいる人たち向けに提供しているのかどうかという問題があって、ちょっと別の角度からこの問題を考えたら、恐らく、いろいろな違う見方が出てくるのではないか、という感想です。
〔 部会長 〕 非常に新しい観点からの、マルチメディア時代の発想ということで、また事務局の方でも検討させていただきたいと思います。
この問題をずっとやってこられて、A委員、何かご意見がございますか。
〔 A委員 〕 私は、ここに書いてあることについては異論は全くございません。これはこれで結構だろうと思います。
地方分権というのは、とても分権委員会だけでやれるものではありませんので、いろいろな審議会で取り上げて、いろいろな形で提言していただくのは大変結構ではないかと思います。 ただ、さっきから先生方のご意見を伺っている中でちょっと気になったのは、地方のやっていることを、中央の官庁がもし画一的な価値基準で評価したらどういうことになるのか。むしろ個性的な地域の発展ということが必要だとした場合に、それと今の中央集権的な形というものとどういうふうに分けて考えるのか、という点です。これはやり方によって、もちろん、いくらでも方法はあると思うのですが、もし画一的なことになってしまうとまずいのではないか、という感じはいたします。
〔 部会長 〕 どうもありがとうございました。
〔 K委員 〕 一番最初のページの(基本的視点)の(2)のところに、「地方公共団体の財政的自立が重要である」と入っているのですけれども、私の申し上げることがピント外れなのかもしれませんが、この全体の中に「財政的自立」というところの書き込みがもう少しあってもいいかなという気がするのです。それはご説明があれば伺いたいと思います。
それぞれの地域でできるだけ、税金にしろ何にしろ、自分たちの身近なところで納める。そして地方自治体の身近なところが、例えば交付金なり補助金という形ではなくて、徴税も大変なところを頑張ってやって、そして私たちも身近なところで納めて、そのかわり、それを何に使うのかというのはしっかりと見ていく、というのが大事だろうと思うのですけれども、その辺のところはどこかに入っているのだと思うのですけれども、大変素人で読んでおりますと、その辺のところがちょっとわかりにくいという気がいたします。
それと、それぞれの地域が、さっきお話の出ていましたナショナル・ミニマム、ここのところはあるとしましても、それを超える行政サービスというのは、隣の町はああいうことをやっているんだ、こっちはああなんだという、その差が出てきていいのではないのか。そのかわり、その差をわかりやすく情報を出して、住民がそれを見て、住むところを変える人もいるかもしれないし、逆に、あっちでやっているのだから自分の住んでいるところでもこういうやり方はできないのかなと、そういう視点が大事ではないか。
感想程度でございます。
〔 部会長 〕 非常に重要なご指摘で、今のご指摘の問題に対しまして、特に財政的自立は大きな第2項目になっているわけですが、それは項目として大きく挙がっているところはないのかもしれませんが、何か事務局の方からご説明がありますか。
〔 事務局 〕 それは非常に大きな問題で、逆に言うと、あまりにも大きいので、もっと時間をかけてやらないとできないというので、ここでは「それは非常に重要だ」ということだけの説明にとどまっているわけであります。
ここでそれを取り上げて議論をしようとすると、これは一からもっと含めていろいろと議論をしなければいけない。中でも、そういうことをもっと出すべきではないかということもあったのですが、今の段階では、力がその点についてはまだ及んでいないというのが実態で、そういう意味でここに取り上げていないということであります。
次の機会とか、そういうときにこの辺はもう少しやるべきだということであると、この審議会なりにもう少し議論するということも考える、というのが今の段階かと私自身は思っているのです。
〔 A委員 〕 その点は、実は、地方分権推進委員会の勧告についても批判の多いところなのですけれども、全体として地方財政は、大体1/3を地方自体の税金・地方税で賄っていて、あとの2/3というのは交付税とか、補助金とか、あるいは国の認可による地方債で賄っているという格好です。だから、おっしゃるように、地方で上がってくる税金だけで、その地方のことを全部やるというのは一番理想的なのだけれども、自治体によっては、国税から何から全部をその自治体にあげたとしても、全体の支出の数%しかないというようなところが、たくさんあるわけです。県レベルでも、結構あるわけです。その辺をどうするかという基本問題がなかなか解決できない。 ですから、交付税というものは、今の段階では、どうしてもやめることができないのでしょうね。あとせいぜい、今言っているのは、補助金をなるべく一般財源化したらどうなのかということを言っているわけです。
基本的にそういう矛盾があることはわかっているのだけれども、それをやると、地方の財政はまたどうにもならなくなってしまうような面があるのです。
九州全体の国税と地方税を全部九州の各県・各市町村に渡しても、なお数兆円足りないというような現実があるわけです。
〔 部会長 〕 どうもありがとうございました。この辺は非常に難しい問題で、私が関係しております地方制度調査会や財政制度審議会でも常に問題になる話でありますけれども、問題点指摘だけで。あるいは今、税制調査会でも、特に税体系の抜本的見直しという場合には必ず、個人の所得税あるいは法人税と含めて出てくる問題だろうと思います。また、キャピタルマーケットの立場からいきましても、私も昔から、地方債というのは地方自治法の下で、公募団体というのは一応自治省の認可団体になっているのですけれども、これは条件がみんな画一的な政府保証債ということになっている。今は、民間債はそれぞれレーティングが出てきて、東京電力債は常に一番上だとなっているわけですけれども、地方は必ずしもそうなっていないので、これも地方債の格付をやれということをずいぶん言っているですけれども、なかなか自治法の建前でできないとかいろいろな問題がございまして、これから非常に早急にいろいろなところで詰めていく問題だろうということで、経済審議会としましたら、今、事務局からご説明がありましたように、問題指摘ということにしておきたいと考えております。
〔 A委員 〕 地方債の認可などは、ちょっと時間がかかりますけれども、やめるということは決定はしてあります。
〔 部会長 〕 それは、大きな進歩です。
この問題についてはほかにいかがでございましょうか。
それでは、貴重なご意見をいただきましてありがとうございました。できるだけ取り入れて、また次のペーパーにしたいと思います。第3の議題はこれまでとしたいと思います。
次は、第4の議題、「NPOワーキング・グループ報告書(案)」についてでございます。本部会には、雇用・労働ワーキング・グループ(これは経済社会展望部会と合同でございます。)、民民規制ワーキング・グループ、NPOワーキング・グループと3つのワーキング・グループがございますが、前回、雇用・労働ワーキング・グループと民民規制ワーキング・グループからそれぞれ報告書(案)についてご報告をいただきまして、この報告書は過日公表させていただきましたのでご参考までにお手元に配布しております。それぞれジャーナリストによってかなりの取り上げ方をされております。
本日は、残るNPOワーキング・グループから「報告書(案)」についてご報告をいただきたいと思います。
それでは、「NPOワーキング・グループ報告書(案)」につきまして、同ワーキング・グループの座長でいらっしゃいます本間委員が現在こちらに向かわれておりますので、お見えになるまでの間、事務局より概要をご説明願いたいと思います。
〔 事務局 〕 それでは、「NPOワーキング・グループ報告書(案)」をご説明申し上げたいと思います。
資料5をご覧いただきたいと思います。クリップを外していただきます。そうしますと、報告書本体と、その次に一枚紙の概要をまとめた図と、それから資料という3部作になっております。 本ワーキング・グループは、その報告書を3枚をめくっていただきますと、委員名簿がございますが、今ちょっと遅れておりますが、本間座長、それから今日ご出席の星野委員を含めまして、7名の委員で審議しております。
次に、報告書の概略でございますが、報告書の次に付いております一枚紙をお開きいただきたいと思います。この一枚紙に基づきましてご説明申し上げたいと思います。
NPOといいますと、民間非営利組織の略語でございますが、こういった民間非営利組織というのは1980年代から、市民活動あるいはボランティア活動の活発化ということで注目を浴びてきまして、特に1995年の阪神・淡路大震災のときに、非常に国民的・全国的な注目を浴びたわけでございます。
その背景として考えられますのは、一枚紙のちょうど左の一番上の「発展の背景」というところをご覧いただきたいと思いますが、発展の背景としては、ちょうど80年代以降、日本の経済社会システムが成熟化するとともに、一方でほころびも見えてきたということと軌を一にしまして、例えば、政府の限界、これは行政の肥大化あるいは非効率化ということで、行政に任せておいたのでは必ずしも国民のニーズが満たされないのではないかというような流れ。あるいは、企業の国際競争力の低下。あるいは、企業の反社会的な行動に対する批判というもの。それから、高齢化あるいはコミュニティーの衰退という中で、政府あるいは企業以外の社会的な受け皿が必要になってきた。こういったことがその発展の背景にあるのではないかと考えられるわけでございます。 NPOと一言でいいましても非常にいろいろなとらえ方があるわけで、代表的には公益法人制度に基づきます公益法人、あるいは市民活動の受け皿としての組織というような見方があるのですが、本ワーキング・グループでは、このワーキング・グループが経済主体役割部会、経済の中の各主体の役割のあり方を見直すというなかで、NPOはどういう役割を果たすのかと、それを含んだ新しい経済社会システムというのはどういうものがあり得るのかを検討するということが目的ですので、ここでのNPOのとらえ方というのは、非常に広く政府・企業以外の分野、第三セクターと申しますが、そういった広いとらえ方をするのだということで、具体的には本文の中に書いてございますが、ジョンズ・ホプキンス大学で国際的なNPO研究がなされているわけですが、そこで取り入れられています定義を用いております。
視覚的にわかりやすく申し上げますと、別刷りの資料の表紙をめくっていただきますと、図表1「NPOの概念図」というのが出てきます。この図表の中で、点線で真ん中に四角く括ってあるのが、いわばジョンズ・ホプキンス大学の研究におけるNPOの定義でございます。ご覧いただきますように、従来、日本の法制度の中で法人格が法的に認めらているようなもの、その中には労働組合も含みますが、そのほかに、法人格はないけれどもNGOあるいは市民活動団体という形で活動しているNPOを広く含むということになります。ただ、ここでは政治的な性格の団体、あるいは宗教的な性格の団体、それから共済組織のようなもの、あるいは地縁組織のようなもの、そういったものは一応便宜上、研究の対象から外されているということで、本報告書でも一応、対象の外に置いて検討を進めてきました。
それでは、そういう定義をされたNPOというのは経済社会全体の中でどのくらいのシェアを占めるのかということでございますが、同じく、資料編の今のページから2枚めくっていただきたいと思います。そうしますと、図表3「NPOの経常支出のGDP比」、これは1990年の資料でございますが、そこに各国のNPOが各国のGDPの中でどのくらいのシェアを占めるかというのを示しております。日本は一番左ですが、3.2%です。その隣のアメリカが6.3%で一番高いです。それから一番右に、ちょうどこの研究の対象になった7カ国の平均4.6%という数字がございます。すなわち、日本は、国際的に見ますとまだNPOの発達が遅れているということが言えまして、逆に、この分野での先進国はやはりアメリカであるということで、その割合は6.3%ということで、国民経済全体から見ても無視し得ないような比重になっているということでございます。
また、一枚紙の概要図にお戻りいただきたいと思います。そこの左の真ん中の「経済社会における新しい主体」というブロックでございます。NPOというのは、政府あるいは企業との対比でどんなプラスの機能があるかというのを挙げてございます。
まず第1点目は、NPOというのは、個人の自由あるいは選択の多様性を求めるという個人の価値観の変化から生まれた自主的な社会参加、そういうものに端を発する動きであるということが第1の特徴として言えるわけです。
そういった自発的社会参加というところから、次のイノベーション機能というものが生まれてくるのではないかということが言えるわけです。具体的に申しますと、そういった社会参加からできるネットワークというのは、非常に信頼関係のある、あるいは社会的協力関係のある関係でございまして、そういったものは経済パフォーマンスを引き上げるというような効果があるわけです。例えば、シリコンバレーの経済的な成功の裏には、こういったNPOをベースとしたネットワークがございました。
もう一つは、価値観の異なる者が各々が仲間をつくりまして、各々のいいとするサービスを供給したり、あるいはサービスを求めたりすることによって、いわゆる多様な公共性、多様な公共サービスというのが可能になるという特徴がございます。
次に、需要者と供給者の二重の役割ということを書いておりますが、NPOは一方で、国民のニーズを掘り起こすとともに、逆にそれのニーズに合ったサービスを供給するという供給者の役割も担うということで、この2つの役割を担うということが逆に、国民のニーズに非常に的確に対応する特性をもたらしているということが言えるわけでございます。
それでは、こういったNPOを仮に経済社会の中に埋め込んだ場合にはどんないいことがあるかというのを、右のブロック「新しい経済社会システム」というところにまとめてございます。期待される役割ということで、各々既存の経済主体との関係でまとめてございます。
まず初めに、<政府との連携>。パートナーシップを結ぶことによって政府のいろいろな機能を補完することができるということで、4点ほど挙げております。1つは、例えば政策の選択肢の多様性をもたらすために政府に提言するようなシンクタンク機能、あるいは政府とか企業が必ずしも効率的に提供できないような公共サービスを提供することができる。あるいは、先ほどテーマに上がっておりましたが、住民と地方自治体のコミュニケーションをよくするということによって地方自治の活性化にも役割を果たします。それから、グローバルな面で見れば、現在、国境を越えたグローバル化というのが非常に進展しておりまして、国とは違う視点に立ったNPOの活躍の場というのが広がっているわけです。例えば、国内紛争から生じているいろいろな難民問題、あるいは地球環境問題のような地球規模の問題、そういったものにおいてもNPOというのは国とは違った立場からいろいろな活動をしているわけです。
次に、企業の関係でございますが、これは<企業の発展>を支えるというように考えることができるということでございます。例えば、「企業の発展に資する地域社会の振興」と書いてございますが、企業の立地する地域社会の、例えば教育レベルがよくないといい人も集まりませんし、生活環境もよくないとあまりいい人材が会社に集まってこないということですので、地域社会がよくなることは非常に経済発展にもプラスになるわけです。その企業が地域社会に根づくために、その仲介役として非常にNPOが役割を果たすということでございます。
次に、「ビジネスインフラの整備」と書いてございますが、情報産業などを例にとりますと、1つの共通の技術をいろいろな企業が使うというプラットホーム技術というのがそのベースにあるわけですが、そういったものの研究開発というのが非常にNPOが行うには向いているということが言われるわけです。そういった技術開発のほかに、顧客情報、顧客情報のネットワークのようなものも、こういったビジネスインフラの1つととらえることもできると思います。
それから、企業活動のモニターということで、これは本日の1番目のテーマにも関係しますが、最近、企業のいろいろな反社会的な活動が問題になっておりますが、そういったものを企業の当事者あるいは消費者の目からチェックするということが必要なわけですが、それを補完する上でも、NPOというのが一定の役割を果たし得るのではないかということが言えるわけでございます。 次に、個人の関係でございますが、個人との関係では、職場以外の、仕事以外の個人の活動の場合を与えるということで、<個人のライフスタイルの多様化>ということが言えるわけです。「能力発揮の場」というのは、1つは、アフター5といいますか、週末の活動の場といいますか、そういった仕事以外の活動の場を与えるということで、これは特に女性ですとか、高齢者ですとか、障害者ですとか、必ずしも雇用に簡単に結び付かないような人たちについても、活動できるような能力発揮の場を与えることができるという特徴がございます。
それから、当然、これは普通の会社と同じように雇用機会も創出いたします。
それから、「能力開発の場」とここに書いてございますが、NPOの活動に参加することによってリーダーシップあるいはマネージメントというような能力を身につけることもできるという意味でございます。
次に、<労働組合、共済組合、地縁組織の活性化>と書いてございますが、これは政府、企業、個人といった主要な経済主体のほかに3つの組織を挙げているわけですが、こういった組織は、その各々の時代に活躍してきたわけですが、最近は、労働組合の場合ですと組合員のニーズというのは職場以外の、もっと社会的な拡がりをもってきたとか、あるいは消費生活協同組合の場合ですと、コンビニエンスストアの発展とか女性の職場進出ということで、なかなか最近は組合員を募ることが難しいというような話ですとか、地縁組織の場合ですと、都市化・情報化ということで生活が非常に広域化していてかなり空洞化が進んでいるというようなことで、比較的最近の経済社会の発展の中で活動が鈍ってきたような組織も、NPOと連携することによって、再び活力を取り戻すことができるというようなことがあるわけでございます。
以上申し上げましのたは、NPOが非常にいい形で社会の中で育ってくればそういったことが可能だということでございます。
それでは今、日本では国際的に見ても非常に未発達なNPOをどうやって育てていったらいいのかという問題がございます。それに対する対応策ということで、左の一番下の「健全な発展のための環境整備」というブロックを作っております。1つは、NPOというのは育てるという意味もあるのですが、もう一つは、NPOといいますと民間非営利ということで、一言でいうと非常にいい印象を与えるわけですが、実際はNPOという名を語って利潤追求したり、あるいは内部の関係者が利潤配分を受けるようなモラルハザードを起こす。そういった非常にマイナスの面の問題もあるわけでございまして、そういった問題もクリアするような対策を考えていく必要があるということでございます。
今年の3月ですが、特定非営利活動促進法という、一定のNPOを法人格の取得を容易にするような法律が認められたわけですが、従来この分野では、NPOが社会的に活動する上で法人格というのが重要だと、その取得が難しいので容易にするような方法はないかというような問題提起があったわけですが、それが特定非営利活動促進法によってかなり改善されてきたということが言えるわけでございまして、では、そのほかにどんな問題点があるのかということで、4点ほど挙げております。
1番目は、「活動評価のためのシステムと情報公開」ということでございます。これは言ってみれば企業のガバナンスに相当するようなものだと思います。NPOの活動を健全に育てていくためには、行政あるいは政府がいろいろ指導する、監督するというのではなくて、むしろ、NPOが情報公開することによって、国民が支持するNPOにはボランティアのような人、あるいは寄付金のようなお金が集まる。そうでないところは、消えていくというような評価システムができてくることが望まれるわけでございまして、そういった評価システムができれば、逆に、NPOがいろいろな問題を生じたときに、行政が介入するのではなくて、国民の自らの手でそういったものを改めていくということも可能になるわけでございます。
2番目は、「寄付金の控除制度など税制上の優遇措置の検討」と書いてあります。もちろん、NPOの財源基盤の強化というのは非常に重要なテーマでございまして、いろいろな、例えば公共サービスをやる場合にも、政府が一元的に税金を国民から集めて、それを公共サービスに投入するという方法と、もう一つは、国民が自らの判断で、こういったサービスをするべきではないかというところで、寄付をすることによって公共サービスの財源を多元的に作っていくという方法、大ざっぱに分けるとそういった2つの方法が考えられるわけですが、そういった2つの方法の比較の上において、どういった程度でこういった税制上の措置を認めていったらいいかということを検討していく必要があるのではないかということでございます。
3番目、「政府、企業、大学、NPOによる人材の交流、雇用市場の整備、人材の育成」と書いてありますが、NPOが発展するためには、よい人材が集まることが必要ですが、現在、人材というのは、政府、企業、大学に集まっておりまして、こういった人材がNPOとの間に交流を深めるようなシステムができると非常に都合がいいのではないか。ゆくゆくは、アメリカのようにNPOで働きたい人のための雇用市場が整備されたり、あるいはNPOのマネージメントを行うような専門家、企業で言えばMBAのような、修士課程のコースが企業経営にあるのですが、それに相当したNPOのマネージメント専門家育成コースというのが、アメリカでも大学で100近くあるわけですが、そういったものが日本でできていくことが期待されるわけでございます。
4番目は、「事業体、シンクタンク機能、ネットワークの一体的推進のための政府の支援」と書いてございます。NPOが発展するためには、財務、組織、マネージメント、人材、情報等々、いろいろ活動基盤というのが強化されなければいけないわけですが、日本のNPOというのは実態としては、専従が1人とか、せいぜい2、3人とか、財源も非常に弱いというようなところが多くて、国際的な比較で日本のNPOを発展させるためには、こういった活動基盤というのが強化されなければいけないということでございます。現在、神奈川県のような県単位で、こういったNPOの活動基盤をサポートするようなセンターがあったり、民間レベルでも、いわばNPOの活動をサポートするようなNPOというのは各地でできておりますが、そういった活動を支援していくこともNPOの発展のためには必要ではないかというような提言でございます。
以上でございます。
本間座長が今見えられましたので、私は非常に事務的なご説明を申し上げましたので、もう少し基本的なお考えのようなものを、本間先生の方からお願いいたします。
〔 部会長 〕 どうもありがとうございました。
ただいま事務局の方からは、一枚紙を中心にして説明をいただきましたので、座長であります本間委員の方から、別の立場から、座長としてコメントをぜひお願いしたいと思います。
〔 本間座長 〕 飛行機の関係で遅れてしまいまして申しわけございません。
今、事務局の方からお話しをいただいたと思いますけれども、私は、もともとガバメントセクターの効率的な運営というものに直接的な関心をもっている者でございますけれども、私が、NPOに対して興味をもった発端は、外国生活をいたしておりまして、非常に見えざるインフラとしてのNPOの力をさまざまな局面で実感をしたというのが実態でございまして、そのことが経済システムの中で官・民・非営利というものの組み合せをどのような形で社会の中に位置づけていくことが、基本的に人間の幸せ、あるいは社会的な厚生の向上に役立つか、こういうような問題意識からNPOに対してのめり込んでいったというのが実態でございます。
私は、もともと、政府・権力のいわば行使を学問にしておりましたから、この分野に非課税措置を導入しろとか、あるいはNPOに対して資源等を移転しろ、こういうようなものの言い方をいたしますと、みんなが私のことを奇異の目で見ておりまして、当初、私は、「本間はミイラ取りに行ってミイラになった」というような、NPOの実体をミイラにたとえて、私はそれに興味をもったことをミイラ取りになったと、こういう言葉遣いの中で、もう15年近くになりますけれども、非常に侮蔑の対象になったというのが実際でございます。
しかし、阪神・淡路大震災を直接的な契機として、この分野に非常に関心が集まってきたということは、私どものように前からこの分野に興味をもつ者にとっては非常にありがたいことでありますし、今年の3月に、問題点はあるにしても、いわゆるNPO法案が成立し、日本の中にNPOが位置づけられたということは、私たちにとっては喜ぶべきことであるという具合に考えております。
今、事務局の方からお話があったと思いますけれども、しかし、日本の位置づけのNPOは、まだ依然として縦割り型の中に位置づけられた、そういう状況にあるということはご認識をいただきたいと思いますし、NPO法が成立したということが、すべての問題を解決したことにはならない。例えば、法制面におきましても、いわば公益法人、民法34条の特別法の位置づけと、このNPOの位置づけをどう考えるかということになりますと、現状では、これは実はNPO法の成立によって身分が3つに分かれた、NPOが3つに分かれたというのが実際であります。公益法人の中における特定公益増進法人、普通の公益法人、そして今回のNPO法の直接な対象になりますNPOの新たな参入、この3者の関係というものは、税あるいは補助金等において差別をつけられたような状況になっています。入り口ベースでこの判断をし、その結果として、パーフォーマンスにもかかわらず、これが3者の間での乖離を生ぜしめているということが実態であります。
このことは、実は、我が国のシステムを考えてまいりますときに、共通の問題である。つまり、事前的なチェックというものを公共部門が独断の立場から判断をして、それに対しては、後は野となれ山となれという形で、サーベイランス、監視機構が存在しないという事後的なチェックシステムのなさ。これが休眠法人等の問題点を生んでいる。これは単にこの分野だけではございませんで、あらゆるところに事前介入、いわば公共部門の独占的な判断というものがある。このことを打破していくことが、日本のいわばガバメント・ガバナンスの観点から、あるいはコーポレートガバナンスの観点から、あるいはNPOのガバナンスの観点から、極めて重要な論点になっている。このNPOの位置づけというものをぜひ、事後的なパーフォーマンス基準に従って既存の公益法人法も含めて見直していくということが、次のステップに必ず必要になってくるということでありまして、そのことは、事後的なチェック・判断基準というものを通じて、システム全体の効率性の向上に役立てていくことが期待されるということであります。
もちろん、日本のNPOはまだ「ひよこ」の状況でございまして、非常に多くの問題点を抱えております。この問題に対して我々は、個人的なレベルから組織的なレベルにどのように活動を高めていくか、あるいは一過的活動を継続的な活動にどのような形で高めていくか、あるいはアマからプロの感覚に持っていくためのNPOの教育等の問題、さまざまな課題を抱えているわけでありますけれども、このNPOが民のニーズを把握し、供給体制の欠陥を是正していくために触媒作用として、日本のシステムの中に位置づけられていくということは、極めて重要な役割分担になっていく。この触媒効果なしには、現在の既存のシステムの効率性というものは、私は、自浄作用だけでこれを期待するということは無理であろうと考えております。
NPOがボーダーラインのところを切磋琢磨することによって、役割分担の自ずからのディビジョンが可能になってくるのではないか。その点で、NPOをハンデ線なき扱いをしていただきたい。公は補助金をもらい、税も優遇してもらう、こういうような状況であるのに対して、NPOというものは無手勝流でやっている。志だけでやっている。こういうことはフェアな競争にはならないということでございまして、真にNPOが育っていくためには、多元主義的な価値観を十分に認めて、一元的な狭い公共性というものの概念から解き放って、多様なチャンネルを通じて、さまざまなニーズというものを汲み上げるということが社会全体の厚生の向上に役立っていく。そのような視点から、このNPOというものをぜひ社会の中に正当な位置づけを与えていただきたいというのが、我々のこのワーキング・グループの総意であるということであります。
細かい説明はいたしませんけれども、今の日本の状況というのは、量的な面で申し上げますとやはり欧米に比べて低い水準、就業人口的なもの、あるいはお金の問題、あるいはお金の原資の問題等さまざまな問題点を抱えておりますので、これに対して、今までの周辺的なユニットということから、堂々としたセクターとしての認知というものを、公の部門の方々、あるいは民間経営体の方々も、積極的にその培養をしていただくようなサポートをお願いいたしたい、こういう具合に考えております。
以上でございます。
〔 部会長 〕 どうもありがとうございました。
それでは、ただいま本間先生からも、その意義という問題について深い見識と経験によるご説明がございましたので、事務局の説明とあわせまして、「NPOワーキング・グループ報告書(案)」についてどうぞご自由なご意見をお願いしたいと思います。
〔 H委員 〕 先ほどご説明いただいた一枚紙の右側の「新しい経済社会システム」というところで、経済主体別な分け方で、政府、企業、個人ということになっているわけですが、企業の部分について、これは少し誤解を招くことがありはしないかと多少心配になっております。「企業の発展に資する地域社会の振興」ということで、企業というものが非常に表に出ていますけれども、これに対応する資料5のところは9ページ以下ですが、この9ページの内容を拝見しますと、「地域社会の振興」ということになっております。ここで言われていることは、よりよい地域社会をつくるために、また地域社会を改善するために、企業の一部門ないし全体が直接・間接にNPOとして参加する。その結果、よりよい地域社会ができる。その結果として、その中にいる、地域社会の一員である企業もメリットを受ける。こういうふうな構成ではないかと思うのです。それは正しいと私は思うのですけれども、企業のために、要するに企業に町に来てほしいからということは、果たしてNPOがそのためにあるのだろうか、またはあっていいのかな、というようなことを私は感じるわけです。できればこの辺のところをご説明いただきたいなという気もするのですけれども、私自身は、この<企業の発展>というような表現が誤解を招くことはないかなと。むしろ、ここははっきりと「地域社会の振興」ということでいいのではないかという気がいたします。
以上です。
〔 部会長 〕 どうもありがとうございます。
何か事務局の方でご説明がありますか。
〔 事務局 〕 一枚紙の方は、わかりやすくということで短絡的に書いてありますので、先生のご趣旨はよくわかりますので、誤解を招かないようにしたいと思います。
〔 本間座長 〕 企業のNPOにおける位置づけというのは、資本主義社会においては、実は非常に難しいテーマでございまして、なぜ企業が人材やお金を使って社会に貢献するのだ。株主や、そういう狭い意味でのステークホルダーに対して、これは障害になる。あるいは、労働者に対してその一部の資金を地域に還元をする、あるいは労力を提供するということはマイナスだ、こういうようなことが1930年代の前半にいろいろ議論になったということであります。資本主義の中で企業がなぜ地域の振興に対して役立つかということは、ブレークスルーするためには、地域の活性化を支援することが、回り回って自分の企業にとってもプラスになるということを論理的に結び付けていくということが、資本主義における企業のいわば社会貢献に対しては非常に不可欠なステップであった。その延長線上で我々は書いています。
つまり、私たちは、慈善的な関係で、気持ちで企業というものをやっているわけではなくて、そのことを通じて企業もまた、これはエンライテンド・セルフインタレストという言い方をいたしますが、私的な利潤を追求していく上でも、社会に対して貢献をしていくということがプラスになる。そういう意味で、9ページの一番下の地域社会で貢献をすれば、いい従業員がその企業に勤めようと思う、こういうような書き方になっているわけでありまして、決して狭い意味で言われているわけでなくて、資本主義の論理と企業の社会貢献のできるだけ矛盾のない形でのステートメントをここで使って表現をした、このように理解を願いたいと思います。
〔 部会長 〕 どうもありがとうございました。
一枚紙ですから、若干表現に問題があるかもしれませんので、内容は、今おっしゃったとおりだろうと思います。
続きまして、どうぞ。
〔 L委員 〕 イノベーション研究センターなので、「イノベーション機能」ということが若干気になりますので申し上げます。
どんな主体もイノベーションはできるのであって、ここに「NPOの特徴」で「イノベーション機能」と言うよりは、今の事務局のお話も、本間先生のお話も、言っていることは、市場は失敗するし、政府も失敗するので、その間を補完する、つまりこの下に書いてある「需要者と供給者の二重の役割」ということと同じように、政府と企業、その間の相互補完をやるセクターとして非常に重要なのだと。そういうところで新たなイノベーションが起こるという話ならば、むしろ、そういうふうに書くのがよいのであって、いきなり「イノベーション機能」と書かれると、ちょっと違うのではないかなというふうに思うのが、1つです。
もう一つ、一枚紙の「健全な発展のための環境整備」。私は、まだこの審議会の意味がよくわかっていないのかもしれませんが、先ほどのコーポレートガバナンス等もそうですけれども、この審議会がなぜこういう答申をするのかという、その基軸が見えていない気がするのです。私は、初めから期待していて、そういうふうに思っていたのは、ここで政府の自己批判をするのだ。政府がいかに非効率であるかと。それをかなり民間にシフトする過程で、たくさん生じてくる問題を、先ほどH委員がおっしゃいましたように情報とか、情報公開、そういうものを軸にきれいに整理していく。それを担っている部会だと思ったのですが、そういう視点がどんどんぼやけていって、かなり、どこにでもあるような報告書である、多様なことをごった煮的に書いているような印象を受けるのです。
そのことの関連から言いますと、「健全な発展のための環境整備」で一番初めにくるのは、政府がいかに不必要な規制を行っているか。そこら辺を、優遇税制もそうですけれども、こういうことで阻害している。その阻害要因から常に書いていくというような姿勢。これは、ほかもそうです。コーポレートガバナンスでも、おっしゃっられるように、コーポレートガバナンスというのは企業の自主的な判断ですから、それを政府が、あるいは審議会がどうこう言うというのはおかしな話です。コーポレートガバナンスがもしうまく機能しない、あるいは日本の大きな問題があるとすれば、それは何なのかというようなことの視点、そういう一貫性を持った審議会の視点というのが、各報告書に貫かれていてもいいのではないかというふうに思います。
もちろん、ご異論はあるでしょうが、私は、この審議会に政府の自己批判ということを期待しております。
〔 部会長 〕 どうもありがとうございました。
今の政府に対する批判という点につきましては、この審議会、私はこの前は、行動計画委員会の委員長を拝命してやっておりまして、そのときにデレギュレーションを中心として規制緩和・撤廃ということで大きく「あるべき論」を出しまして、これはまた行政改革委員会の方で具体的な問題を全部まとめて、3月末には相当の項目が全部まとまってきているわけでありますが、そちらの方のフォロー・アップは今、これとは同時並行的に行っております。大体6カ月ごとに経過は報告するということで、それらの上で、各経済主体はどのような役割を果たしていくかという中で、政府の役割というのがありますので、そこにおいては、L委員のおっしゃるような政府の自己批判といいますか、そのものも入れるところは入れていくことが必要かと思いますが、流れはそういうことだろうと思います。
〔 M委員 〕 NPOの重要性ということと、重要であるにもかかわらず、日本ではNPOがまだちゃんと育っていない、未成熟であるということはよくわかりました。
そこで出てくる提言のところですが、一枚紙の下の方にある(提言)なのですけれども、3の「政府、企業、大学、NPOによる人材の交流、雇用市場の整備、人材の育成」。確かに人材の育成というのは非常に重要なことであると私も思います。これは既に、多分認識があり、わかりきっていることであるから書かれていないのかもしれませんが、先ほど言いましたように、日本での状況があまり成熟していないということで、1つは、国際交流というのをもっと活発にやることが、多分、人材の育成にもつながる。また、NPOの重要性というものの認識がさらに深まるというような気がいたします。そうであれば、その辺を明示的に書かれたらいかがかなという気がいたします。
次に、マイナーな点なのですが、今の同じ(提言)の3のところで、大学とNPOというのが別々に分かれているのですけれども、ジョンズ・ホプキンスの研究の分類によりますと、NPOの中に大学が入っているみたいですので、そうであれば、そこは直された方がいいかと思います。 ただ、もう一つ付け加えておきますと、NPOの中に属する組織間の交流というもの、それもきっと含まれているとは思うのですが、その重要性というのを明示的に書かれるということも必要かなという気がいたしました。
以上です。
〔 部会長 〕 どうもありがとうございました。
星野委員、何かご意見がございますか。
〔 星野(昌)委員 〕 意見ではないですけれども、先ほど事務局の方でご説明になった、日本のNPOのパーセンテージが、恐らく、皆様方がお感じになっていらっしゃるより、「わりとましじゃないか、いいじゃないか」という数字のイメージだと思うのですが、それは事務局も初めにおっしゃったように、今、本間先生がおっしゃった、三分化されている特定公益増進法人であるとか、公益法人であるとか、この10年、15年、20年起きてきたような市民、その3つの領域を含めて今回の報告の中には、座長もおっしゃったように、首・闔臂陲呂修了絢坿屬紡腓【4】別簑蠅・△襪錣韻任垢韻譴匹癲△任癲∈2鵑諒鷙陲蓮△匹海鯒喀釮垢襪箸・いΔ海箸覆靴某修珪紊欧討い襪箸海蹐法△い蹐い蹈錙璽【5】鵐亜Ε哀襦璽廚箸靴討盒譴靴ど・・・△襪錣韻任后・・鹿霈w) ですから、私立大学もジョンズ・ホプキンスのところでは含めておりますけれども、このほかに私立の病院も含めているので日本は3.2になっているわけです。そのようなものが、日本の中の感覚では、いわゆるNPOというふうに私立大学や病院というものをとらえてこなかったということもありまして、その辺がワーキング・グループでは十分討議をして、今回はこういう広い範囲も含めての報告をしようということで、この統計も出ているわけです。
今、本間座長がおっしゃったようないろいろな問題、今後解決されなければならないというようなところは、むしろ、この近年起きてきた市民によるNPO、この図の中でもある、小さい部分ですが、そこがもう少し力を得るために障害になっていることとか、そこが2つになっているものですから、ほかの皆様方にその辺をご理解いただければと思います。
〔 部会長 〕 わかりました。
1つ教えていただきたいのは、討議の途中で、今、先生のおっしゃったような私立大学であるとか私立病院の方々というのは、自ら、NPOとしての意識は非常に持っておられるのですか。
〔 本間座長 〕 お金の出所の部分のところが、料金収入と国家からの補助的なものが混在しているということもございまして、市民とか、あるいは寄付者に対しての意識というのは非常に希薄であるということは事実でございまして、この辺のところ、日本の主体としての意識改革というものも、ぜひ進めていかなければならないのではないかと思います。
もう一つ、大学とNPOをここで区別しておりますけれども、我が国は、国立大学という大きな存在がございまして、これは公共セクターのところに入っておりますので、あえてここでは、NPO型の大学とは区分をしてやっているということであります。
国際交流は、確かにご指摘のとおり、重要な論点でございまして、実は、国際的な学会が5年ぐらい前に発足をいたしまして、ISTR、インターナショナル・ソサイエティ・オブ・サード・セクターというので、私が日本から理事として入っておりまして、こういう学際的な交流を通じながら、この分野での知的交流プラス、現実のそれぞれ財団等の交流を積極的に進めて、智恵をある意味では借りるということは当然必要になってくるかと思いますので、ぜひここの部分については、ご指摘のように、入れさせていただきたいと思います。
〔 部会長 〕 どうもありがとうございました。
ほかにご意見をどうぞ。
〔 B委員 〕 全く素人の観点からの発言ですけれども、私、この報告書の中でもうちょっと強調していただいた方がいいなと思うのは、NPOの、政府に代わる福祉の担い手としての性格です。報告書の中では、公共サービスの提供というところでは、そういうふうに論じられていますけれども、特に高齢化社会でこれから出てくる福祉問題とか、あるいは財政再建の問題を考えますときには、NPOに積極的にできる部分だと思います。政府に代わる福祉の担い手の性格ですね。 提言の中では、(提言)の2として、NPOの財政基盤強化というところでは、寄付金の控除などの措置を検討すべきだという提言があるのですけれども、これを、その観点から考えますと、何のための控除かという観点から考えますと、提言と内容が直結してくるのではないかという気がするのです。
長年日本に住んでいて、1つ感じることとしては、募金活動の少なさです。阪神・淡路大震災でちょっと燃え上がったのですけれども、私はオーストラリア人ですけれども、オーストラリアに住んでいると、毎週のように募金活動をするために人が家にやって来るのです。嫌になるほど、やって来るのです。
ちょっと個人的な話をすると、私は、今、オーストラリアには税金は納めていないのですけれども、あるNPOに寄付をしている、微々たるものですけれども。個人としては、市民としては、政府に税金を納めて、どういうような使われ方がするのかわからないようなことよりも、自分が好む福祉団体のNPOに寄付して、ほかの人を助けるということの方が、ずっと個人の意識としてはいいし、小さな政府の目的にも合致する。そういう観点を報告書の中に取り上げたらいかがかなという気がするのです。
〔 G委員 〕 一点、教えていただきたいのですが、3章の(4)のところに労働組合の話が取り上げられているかと思います。(3)のところまでというのは大体一般的な話になっているわけですが、(4)のところで、労働組合と消費者組合というような具体的なものが取り上げられる。それを取り上げた特別の理由は何かあるのか、というところを一点教えていただきたい。 もう一点は、労働組合のようにいろいろな機能をもっている組織になっているわけです。ここに書かれているような公的な意味合いがあるの同時に、やはり特定の企業の労働者の利益を守るというような形で、必ずしも、公的サービスとは直結しないような、そういう機能を持っているところもある。そうなっているときに、その棲み分けといいますか、書きぶりで、例えば税制の問題も多少触れられていますので、そういったところをどういうふうに考えていらっしゃるのかというところを教えていただけたらと思います。
〔 部会長 〕 本間委員、お願いできますか。
〔 本間座長 〕 まず、Bさんのご質問の方からお答えさせていただきたいと思います。私どもも、実は、例えば介護等の問題に対して、公共部門が直接、措置というような形でやるのがいいのか。あるいは、プロフィットセクターが、フォープロフィットで介護をやるのがいいのか、あるいはその中間でノン・プロフィット・オーガナイゼーションの組織体が、非分配という形でそれをやった方がいいのか、この3者の競合関係が競争状態の中でイーブンなコンペティションを通じながら、高齢化の中における介護市場をどういう具合に棲み分けていくかということは非常に重要であると考えております。
NPOの最もメリットというのはニーズを的確に感知し、センシティビティのある形での介護の供給というものは可能になるのではないか。そして、心を込めることによって、よりチープな形での介護のサービスができるのではないか、こう考えておりまして、その面において、我々は、あまり露骨には出しておりませんけれども、ニーズのいわば把握者としての機能と、心を込めた供給者として、その双方が公共セクターのいわば代替物として社会の中に位置づけられる。そして、その公共性を担保することによって税制上の優遇措置等、これを社会的にエンドースするというような論理構成で、私どもは書いているつもりでございまして、その点で不十分であれば、また検討させていただいて、最終報告等のところでは、少しその点について触れてみたいと考えております。 G委員のご質問でございますけれども、確かに、普通のNPOに、我々は公共性というものを強調するきらいがございますけれども、NPOというのは、実はノンプロフィットオーガナイゼーションでございまして、これはもともと公共性を即インプライするものではない。したがって、広い意味でのアソシエーションということが、このNPOでございますから、クラブ財的なものであっても、これはNPOの中に位置づけられていく。そして、その行為が、その組合メンバーシップだけの方々にサービスが行き渡る場合でも、NPOの中での公の位置づけというのは与えられてくるわけです。
しかし、そうは言っても、ローカルな利益だけを追求するものに対して、税制上の優遇措置というようなことは、当然、これは社会的に担保できるものではございません。しかし、そのことが労働者の権利を守るとか、あるいは労働組合全体が阪神・淡路大震災のときに貢献をするとか、そういうような派生的な形での公共性を追求するという余力は十分にあるわけでありますし、意識的にも、それを担おうとする労働組合というものも増えてきつつある。そういうもののない組合というのは、将来性もないような状況というものが恐らく出てくる。そういう意味で、我々は日本的な特徴として、労働組合ですとか、あるいは地域の団体ですとか、そういうものもこの中に入れ込みながら、まちづくりや、あるいは人間の生活の基盤向上に積極的に、いわば特殊性を担保する形で位置づけていくということは、過渡期のやり方としては十分意義があるのではないかと考えて、このような位置づけをしたということであります。
〔 部会長 〕 どうもありがとうございました。
C委員、最後に何かご意見がございますか。
〔 C委員 〕 おっしゃるとおりで、今は、ただ単に自分らの権利だけを守るというだけでは、労働組合は21世紀に存在意義がなくなる。そういう面では、地域の住民でもある、市民でもあるという、そこの視点は今後非常に重要になってくる。そういう意識で改革を進めつつありますが、なかなか十分な状態にはなっておりませんけれども、その視点は非常に大事だと思います。
〔 部会長 〕 どうもありがとうございました。
まだ、いろいろとご意見もあろうかと思いますけれども、時間の関係もございますので、第4の議題につきましては、ここまでとさせていただきたいと思います。
なお、このワーキング・グループ報告につきましては、前回もご説明いたしましたが、本部会でいただきましたご意見等をワーキング・グループで検討していただきまして、今後の取扱いにつきましては、ワーキング・グループで取りまとめた段階で、適宜公表していただくこととしております。
最後に、次回の日程につきまして事務局よりご説明をお願いします。
〔 事務局 〕 次回第10回の部会につきましては、5月19日火曜日午前10時からということで開催させていただきますので、またよろしくお願いいたします。
〔 部会長 〕 どうもありがとうございました。
それでは、第9回の経済主体役割部会の審議は以上にいたしたいと存じます。本日は長時間のご審議、誠にありがとうございました。次回もよろしくお願いいたします。
---以上---