第6回スペースとゆとり研究会議事概要

1.日時:

平成10年4月22日(水)12:00~14:00

2.場所:

経済企画庁729会議室

3.出席者:

樋口廣太郎座長、奥谷禮子、叶芳和、堺屋太一、坂本春生、玉田樹、西藤冲、藤川鉄馬、クリスチャン・ポラックの各委員
糠谷事務次官、中名生総合計画局長 他

4.議題:

  1. (1)「広くて安く美しい住宅供給」について
  2. (2)「スペースとゆとり研究会の論点整理」について

5.審議内容:

開会の後、中名生総合計画局長より次回研究会のテーマ、本日の議題に関連する参考統計等につき紹介。

議題に移り、まず(1)について、1名の委員より以下のとおり意見発表があった。

  • ○ 「ウサギ小屋」と言われる日本でも、持家の一戸当たり床面積は国際水準並。問題は借家である。現行借地借家法の下では、一旦、借家に家族が住むとなかなか出ていかないため、東京23区内には家族向けの良質な借家がほとんどない。だから、遠くて高くて狭いマイホームに住むことになる。また、家族向け借家の供給が制限されているため、家賃が高止まりしている。借地借家法が弱者保護のためにあるというのは全く逆である。土地の有効利用、低所得者層への住宅政策という意味でも、定期借家権を創設して、質の良い借家が安く借りられるような政策が必要。
  • ○ 山手線の内側の低層住宅を容積率の規制緩和によって高層化すれば、建設ブームが起こり、景気も回復する。
  • ○ 定期借地権は、あまり活用されていない。50年という期間を短縮すれば、もっと都心に近い所で借地の需要も供給も増えるのではないか。
  • これに対し、他の委員からの主な意見は以下のとおり。
  • ○ フランスでは、定期借家権ができたことにより、建設ブームが起こり、家賃が安くなった。日本でも考えてはどうか。
  • ○ 容積率を決めている論拠、基準は何か。
  • (上の意見に対し発表委員より以下のとおり回答)
  • ○ 基本的には、下水道、交通といった公共のキャパシティの問題。その他に、ここは一等地、あそこは二等地という裁量が働いている可能性もある。
  • ○ 定期借家権の導入だけでは、キャパシティに限界あり。都心の住宅供給をさらに増やすというよりも、市街化調整区域は、原則として都市化できないことになっているが、特別に知事が地区計画を作れば都市化できることになった。こういう制度を活用していけば、郊外でも安くて美しい住宅供給が起きる。
  • (これまでの意見に対し、糠谷事務次官より以下のとおり補足説明)
  • ○ 田園都市住宅法が議員立法で動いており、都市郊外で農地転用などを認めつつマルチハビテーションを実現していくという方向になっている。定期借家権は、議員立法の動きがはっきりしている。容積率は基本的には、公共インフラとの関係で決まる。昨年11月の経済対策で既存不適格ビルの建てかえを認めた。
  • ○ 定期借家権ができると、住都公団や都営住宅もこれを活用したいという話になる。これにより、公営住宅の永住権を巡る問題を解決できるのではないか。
  • ○ 日本の借家の一戸当たり床面積が狭いことの理由には、ワンルームマンションに住める裕福な学生が多く、それが統計に含まれているため。全体を通じて、日本の住宅が「ウサギ小屋」だというのは、既に実態ではなくなっている。1年償却の仮設住宅と45~65年償却の恒久住宅との中間に、10年償却の建築(ロフト)を認めてほしい。10年契約で土地を貸したいといっても、65年償却のものしか認められていないので、土地の流動化・有効活用の障害になっている。時代にそぐわない腫線制限などはやめるべき。
  • ○ 昔は日照権という概念はなかった。日が当たらなくても建物の間隔があれば、それ程窮屈感はない。容積率というのはほとんど道路で決まるが、交通の問題を考慮しない容積率の拡大は無意味である。新しい借家については、現行の借地借家法でも特段の問題が発生するとは思えない。問題は古くからの借家であろう。定期借家権導入の効果は限定して考えるべきではないか。
  • ○ 家を貸す方がリスクを負っている現状を改め、これを解決するようなインセンティブを与えることが重要。また、それとともに、貸す側を法的に保護するような政策が必要ではないか。
  • ○ 地方でのマルチハビテーションを考えれば、安くて広くて美しい住宅の普及というのは簡単である。住宅建設等に、困窮者援助だけでなく、豊かさを目指す者のための政策支援を盛りこむことはできないのか。
  • 引き続き(2)について、経済企画庁事務局の用意した資料について中名生総合計画局長より説明の後、委員より以下の意見・提案があった。
  • ○ 住宅用地、商業用地、工業用地、公共用地という用途別の横割りと、税制、建築基準法、地域分散といった項目別の縦割りとで、マトリックスを作ると分かりやすいのではないか。地方分散につながるような公共事業や、大都市で地域開発につながる方策は何なのかを考えていきたい。また、今回の報告書が出るのを機会に、土地問題についての総合対策関係閣僚会議のようなものを開いてもらい、第1回目はこの報告書を題材に話し合ってもらうこととしてはどうか。そして、できれば関係各省の責任者とこの研究会のメンバーとが会う機会もつくってもらいたい。
  • ○ 用地の5番目として、農地・山林も加えてはどうか。また、課題をただ並べるだけでなく、優先順位をつける工夫をする方がいい。消費の喚起の在り方、ライフステージに対応した住み替え、地域分散というテーマをもっと膨らませたい。訴える相手として、国民はもとより、政治を動かせるようなアプローチも考えるべき。
  • ○ 手法面で、PFIを含めた公民パートナーシップのようなものを入れた方がいいのではないか。
  • ○ まだ問題意識が固いので、なぜスペースを拡大するとよいのかという点を、もっとやわらかく説明した方がよい。また、働く場所についての言及や、都市向けの話だけでなく農村のことも入れた方がよい。水田の崩壊により国土保全のための保水力が失われていることに憂慮を示すべき。さらに、5年先、10年先、50年先といった時間的視点の考慮や、企業や個人に対して求めるべき美的センスや街並の美的感覚を強調した方がよい。不動産取引の活性化については、例えば不動産投資格付など、制度的な基盤の整備が必要。

以上の討議までで定刻を迎え、閉会に当たって樋口座長より、事務局において各委員の発言を踏まえてとりまとめのためのたたき台を用意するよう指示があった。

6.今後のスケジュール

次回第7回スペースとゆとり研究会は5月27日(予備日として、6月2日)の午後0時から2時に開催する予定。

以上

なお、本議事概要は、速報のため、事後修正の可能性がある。

(連絡先)

経済企画庁総合計画局計画課経済構造調整推進室

(担当)福島、押田

TEL 03-3581-0783(直通)