経済審議会第9回経済社会展望部会議事概要

1.日時:

平成10年4月16日(木)10:30~12:40

2.場所:

経済企画庁特別会議室(436号室)

3.出席者:

小林陽太郎部会長、井堀利宏、岩田一政、角道謙一、川勝堅二、佐々波楊子、清家篤、鶴田俊正、長岡貞男、成瀬健生、濱田康行、ロバート・アラン・フェルドマン、深海博明、村田良平、村本孜、師岡愛美、吉川洋、鷲尾悦也の各委員。

糠谷事務次官、高橋企画課長、中名生総合計画局長、貞広審議官、高橋審議官、大西計画課長、大森計画官、田坂計画官、涌野計画官、染川計画官、安井計画官、塚原計画官、赤井計画官、荒井計画官、小島計画官、渡辺電源開発官、道上計画企画官、福島推進室長 他。

4.議題:

各ワーキンググループ(以下WG)報告

5.審議内容:

【1】地球環境、財政・社会保障WGの座長より各々のWGについて報告。これに対して委員からの主な意見は以下のとおり。

【地球環境WG報告に関連して】

  • ○提言の中で「省エネルギー関連技術を促進するためには、鍵となる技術を政府が指定し、…」という記述があるが、政府にそうした鍵となる技術を指定するのに必要な情報が十分あるのか、また、企業戦略ともなりうる技術を企業が政府に提供するのかといった点を考えると、政府が技術を指定するという実現可能性は低いのではないか。
  • ○低排出型社会におけるライフスタイル・社会意識と社会システム・インフラとの関係に着目した議論をもう少しすべきではないか。ライフスタイルWGでの成果をどのように環境問題のシュミレーションの中に織り込んでいくのかということについては、すぐに答えが出せないものの、少なくとも問題提起はすべき。
  • 【財政・社会保障WG報告に関連して】
  • ○年金などに関しては世代会計は明解だが、政府の支出入全体についての場合、特に支出の方は、世代間按分をどのように行ったのか。第三者にも理解し得るような解釈を付けることが望ましい。
  • ○社会保障と経済パフォーマンスの関係について、報告書の中で「経済パフォーマンスを阻害しない社会保障制度の構築」とあるが、あたかも社会保障制度は経済パフォーマンスを阻害するというような表現はいかがなものか。これまで社会保障制度は、セイフティネットという意味合いも含めて経済発展に大きく貢献している部分もあった。
  • ○公的年金制度改革については、国民年金の未加入者、未納入者の増加による空洞化問題がある。空洞化が基礎年金の財政に影響を与えているにもかかわらず、その点の指摘が全くない。これについては、税方式か社会保険方式かの選択による問題でもあり、社会的公平性を確保する観点にたてば、税方式に切り換えることも考えられるのではないか。報告の中では、社会保険方式の優位性を強調しているようにとれる。
  • ○財政方式として、積立方式と賦課方式を挙げているが、例えば積立方式にして、膨大なお金が集まってきた際に、金融ビッグバンの中、実質的な運用成果を上げることは可能なのか。そのことの経済的効果はどうなるのか。
  • ○医療制度改革の問題について、医療費の増大の要因の一つに過剰な薬の投与があるが、その点全く触れられていない。薬価制度の改革の視点も盛り込むべき。
  • ○参考資料の図表10について、雇用者に占める女性の割合が上昇しているのは、パート労働の増加によるものである。フルタイム労働をみると、産業全体に占める農業の割合の低下等産業構造の変化を反映してむしろ低下しているのではないか。この資料のみをもって今後の男女共同参画に結びつけるのは無理がある。

 就業形態がフルタイムの場合とパートの場合とでは公的年金制度の適用が異なることが問題。将来的には世帯単位で捉える制度の見直しというが、これはパートの話。フルタイムについては、すでに現行制度が個人単位の適用となっている。今後、フルタイムで働く女性が増えていったときには、育児や介護支援が必要であり、そのために税制や年金制度がどのようにかわっていくかを考慮されたい。

【2】技術革新、グローバリゼーション、産業構造、雇用・労働、金融、土地・住宅、ライフスタイルWGの各座長(雇用・労働、ライフスタイルWGについては、座長欠席の為、事務局)より、 前回の各WGの報告以降の変更点を中心に5分程度の報告があった。

委員からの主な意見は以下のとおり。

  • ○雇用・労働WGにも触れられているが、女性の勤労意欲や能力を発揮していくためには、如何に子育て支援、介護の支援策等社会保障制度の整備を行うかが重要。現行の家族制度に基づいたものから、個人主体のものへ社会保障制度を組み換えていく必要性を強調すべき。
  • ○産業構造と雇用・労働で共通する問題として、失業問題があり、その対応としていずれの報告書においてもセイフティネットに言及しているが、これと併せて新規雇用創出ための政策についても一層強調すべき。
  • ○連合が派遣労働における規制緩和に反対している理由は、マーケットにおけるルールが明確になっていない状況の中、派遣労働が拡大すると、労働市場が適正に機能しないのではないかと懸念されるからである。
  • ○金融ビッグバン自体は必然だと思うが、その過程では当然雇用の問題が生じる。過渡的な段階で生じる問題についてどのように対応するのか。

6.今後のスケジュール

次回第10回経済社会展望部会は4月27日の14時00分から開催する予定。

以上

なお、本議事概要は、速報のため、事後修正の可能性があり得ます。

(本件に関するお問い合わせ先)経済企画庁総合計画局計画企画官室

  道上、吉野

電話:03-3581-0977