第2回情報通信及び交通関連社会資本の整備に関する研究会議事概要
1.日時:
平成10年4月7日(火)10:00~12:00
2.場所:
経済企画庁会議室(732号室)
3.出席者:
月尾嘉男座長、柴田潤、谷口栄一、土井正幸、中島洋、浜野保樹、林紘一郎、山内弘隆の各委員。
高橋審議官、大西計画課長、安井計画官 他。
4.議題:
交通関連社会資本の整備に関する議論
5.議事内容:
安井計画官より、交通関連社会資本に関する論点について資料に沿って説明。
資料1の論点について、空港・港湾・陸上の各交通関連社会資本に関する以下の観点を中心に自由討議。
(1)従来のハード中心(施設を作る)の社会資本整備から、今後は既存施設を有効利用するためのソフトの付加が重要。
(2)戦略的競争(アライアンス、デファクトスタンダード)等今後の国際競争の問題。
(3)規制の問題、政府の役割分担等国内の問題。
各委員からの主な意見は以下のとおり。
【空港に関して】
- ハードの面では整備の後れはない。首都圏のように局所的な問題はある。首都圏については需要が伸びているのでこの問題に対してどうするかということである。ゲートウェイ機能ではなく、首都圏の経済ポテンシャルを高める議論は大事。
- 国に旅客需要がある国とそうでない国があって、日本は前者である。韓国・シンガポール等は、後者であり、ハブ化により非航空収入を伸ばしているので、空港の国際競争はそんなに意識することはない。日本においては国内の旅客需要をどうするかが問題である。
- ソフトの面では、管制の問題がある。空港の有効利用のため、もっと管制能力を上げられないかという問題がある。ただし、社会資本の概念にどこまで取り込んで議論するかが問題。
- 空港へのアクセスが問題である。アクセスを比較的良く整備している関空の場合、空港本体の投資は約1兆円であるが、関連の施設(アクセス道路や鉄道)で2.5兆円とかなり大きい。関連施設に付随した効果も大きい。
- 空港の利便性に関する比較をすべき。アメリカで国内アクセスは国際航空でも1時間だが、日本では1日がかりである。空港の利便性は海外の方がよい。
- 漁業権の問題もあるのではないか。日本の空港は埋め立てが多いわけで、そのため、空港建設コストがかさみ、時間もかかる。漁業権が設定されてから50年たった今、一度見直してみたらどうだろうか。関空でも1000億円近くかけている。
【港湾に関して】
- 空港の議論と同じになるが、シンガポールなどは、8割が中継輸送であって、その港湾荷役で取扱量を増やしている。日本でも1割から2割くらい中継輸送はあるが、基本的に荷主国である。国内の需要に対してどうするかということが重要である。中継輸送はそう多くなく、国際競争に関する問題も高まっているわけではない。
- 海運のアライアンスは、2国間協定に基づかないので非常に自由に動いている。実力あるもの同士が組んでいる。港湾に与える影響としては、船社の再編により港湾施設の整理統合の可能性がある。
- 将来の環境を考えると、道路主体の物流であるが、今後港を使った船にモーダルシフトする必要がある。物流について、鉄道にはほとんど期待できない。道路50%、内航海運45%、鉄道5%程度である。港と道路の接続に関して規制緩和をしていく必要がある。廃棄物の輸送など速達性が重視されないものは、もっと船を使うべき。船を使う場合も、橋げたが下がってきているので、河川などは大量輸送には向かない。
- インターモーダル、モーダルシフトとなると第一には鉄道である。ただ、整備新幹線の進展で在来線による物流ネットワークが切断されつつあり、首都圏特に中京圏ではボトルネックで貨物が走れない状況である。市場メカニズムの世界ではあるが、社会資本の基本として、物流の基礎インフラを維持するかどうかの議論をしなければならない。
- 鉄道貨物は衰退の一途をたどっている。国の政策としててこ入れをしなければならないが、市場メカニズムの中で競争力を発揮するためには、相当の初期投資が必要で民間で出来るものではない。
- 物流は単に運ぶだけでなく、CALSのように生産システムから一環してシステムが出来上がっている。鉄道貨物は非常にシステムにのり遅れている。今は、鉄道貨物をいかにシステムに組み入れるかということが重要で、ソフト面からどう取り組むのかということと物流の基礎インフラが無くなってしまうのをどうするのかということである。
- 自由時間重視の社会にに向けた対策として、プレジャーボート用港湾整備をどうするか考えてみる必要がある。
- 国際競争をする場合考慮しなければならないこととして、港湾荷役のオープン化がある。
【道路に関して】
- ITSのような国家のインフラストラクチャーのコンセプトは、一つの集中した部門で検討し、方針を立てないと、個々に最適化を追うと全体最適になっていない心配がある。アメリカはUSDOT一つであるが、その中でITS関連は5局に分かれている。局間の調整をする組織を設定している。また、ITSアメリカは、USDOTに直結した技術諮問委員会であるので、コンセンサスは、高速で行われる。日本は5省庁にまたがるため、アメリカの5から10倍かかっている。日本では、民と学で構成したVERTISという組織があるが、方針を決めても5省庁の了解がいることになっている。ワンストップオーガニゼーションの組織が日本にはない。
- ITSは、インフラと自動車を一緒にやらないといけない。インフラからの情報で車をコントロールしていく場合、交通管制情報をどこかに集中させるのか、車に分散させるのかという議論が大切である。
- ITSの情報を車だけでなく、ウェアブル(着用できる)コンピュータに提供すれば、もっと拡張性が高くなる。
- 韓国の新幹線などフランスは政府が直接交渉している。ITSも企業にとって国際マーケットを考えると、どういう体制で売るかということを考えなければならない。
- 戦略的な技術に対して政府がどういう役割をするかということを提言しなければならない。
6.今後のスケジュール
次回第3回研究会は6月12日(金)に開催する予定。「情報通信関連社会資本の整備に関する議論」という内容で開催する予定。
以上
なお、本議事概要は、速報のため、事後修正の可能性があり得ます。
(連絡先)
経済企画庁総合計画局計社会資本班
(担当)田中
TEL 03-3581-0764(内5544)