第4回スペースとゆとり研究会議事概要

1.日時:

平成10年3月31日(火)18:00~20:00

2.場所:

経済企画庁729会議室

3.出席者:

樋口廣太郎座長、伊藤滋、叶芳和、堺屋太一、坂本春生、玉田樹、西藤冲、藤川鉄馬、クリスチャン・ポラック、松田義幸の各委員
尾身経済企画庁長官、糠谷事務次官、林官房長、中名生総合計画局長 他

4.議題:

(1)「タイムバジェット(人生80年70万時間の活用計画)という視点からの生活の質の向上」について

(2)「地域(過疎地域)のスペース活用」について

5.審議内容:

開会の後、中名生総合計画局長より次回研究会のテーマ、本日の議題に関連する参考統計等につき紹介。

議題に移り、まず(1)について、1名の委員より以下のとおり意見発表があった。

○ 人生80年70万時間の人間化のために、時間の流れを60歳までは労働、60歳以降は隠退というリニア型配分から、一生を通じて労働と教育・レジャーの時期を交互に何度も繰り返したり、両者を並行して行うリカレント型配分に転換して、どのような人生のやりなおしが可能か、1人10色の生き方が可能かを検討する。そして、その受け皿としての社会システムをどのようにリフォーミング、イノベーションすべきかを検討する。

○ 調査によれば、日本人の意識はすでにリニア時間配分からリカレント時間予算配分へと変わってきている。また、OECDでもトレンドとなっている。

○ 経済企画庁で、教育をはじめとした様々な分野で人生80年70万時間の人間化のためのモデル事業を行ってはどうか。

これに対し、他の委員からの主な意見は以下のとおり。

○ フランスでは社会人が大学で学ぶ動きが活発である。日本で社員の再教育を認める制度が不十分であることが残念。本人、大学、社会にとって益するものとなるはず。また、より根本的には男性中心主義の日本社会の考え方を変えないと自由時間を活用できるようにはならない。

○ 時間の流れをリカレント型配分にするには、そのようなリズムをつかめるような住居の中のスペースが必要。サラリーマンも書斎を持とうと呼びかけたのは1つのやり方。しかし個人の生き方としてはリカレント型もリニア型もあってよく、それぞれにとって対等にチャンスがあることが重要。女性がこれからの活発な生き方をリードしていくという言い方の裏には、現在女性に働くチャンスが十分ないために、仕事以外の様々な分野で男性よりも自由で活発な生き方を追求しているという面もある点に注意が必要。

○ リカレント型の生き方の実行上最もボトルネックになっているのは人々の気持ちの問題ではないか。また、通勤時間の影響も大きい。パリでは、自宅を持つのは農家か小売業で、サラリーマンは会社の近くに借家を借りて通勤時間を短くするのがよいという考え方もある。自宅主義でいくか借家振興でいくかによっても進め方は大きく変わってくる。重要なのは住居の選択の自由を回復するように制度・税制を変えていくことではないか。また、統計上は先楽後憂型の人生を選好する人は少なくでているが、世の中の実態は先楽後憂型が増えてきていると思う。理論と証拠が逆になっている。

○ リカレント型への変更は、個人で生き方を変えるということなのか、政策的にボトルネックがあるということなのかがもう一つ理解できない。考えるための手掛かりはないのか。

○ リカレント型というのは男性にとってまだまだリスキーな側面がある。経済的に家族を支えなければならない。

以上の意見に対し、発表委員からは次のとおり回答があった。

○ リカレント型への移行が難しいことの理由には、意識の問題だけでなく、今の社会の仕組みが全て人生50年間いかに働くかという視点からの制度になっていることがある。総労働時間7万時間に対し総余暇時間は25万時間と捉えられているのに、その時間を活用するための教育がなされていない。労働時間の短縮よりも、25万時間をどう配分すべきかに関心を持つことが重要。例えば遊休化している大学の付属施設や図書館などの公共施設の活用を図るべき。

引き続き(2)について別の1名の委員より以下のとおり意見発表があった。

○ 地方の過疎化に歯止めをかけ、豊かで美しい地方を残していくことが、日本を新しく再生させるキーポイント。地方のリーダーシップの下に新しい国創りを始めなければならない。

○ そのためには、1.直接民主主義を通じた地方における政治的スペースの増大、2.都道府県よりも広い地域を行政単位として再編し中央政府の権限を委譲、3.地方スペース利用のための政府機関の地方移転と地域主導の産業育成、4.地域に住む人々の意識改革を通じた地域のアイデンティティーの確立、5.地域の特性を活かした海外との交流による国際化が有効ではないか。

これに対し、他の委員からの主な意見は以下のとおり。

○ 地方の活性化のためにも、住む地方を自由に選べる選択機会の確保が重要であり、その意味でも家・土地を死ぬまで守るという考えをやめ、土地を資産でなく資源と捉える発想が必要。

○ 土地の有効活用は、結局は税制と情報の流通の問題。後者のために不動産取引所を設けることが重要。また、空き地が目立ってきた商店街に高齢者用マンションを創設し、高齢者が街へ出て行きやすくすることが有効。なお、土地の開発・流通に官が介入すべきではなく民間に任せることが重要。地方分権について、30年間検討してきたが、結局首都機能移転しか方策はないのではないか。諸機能を東京へ集中させる政策はそろそろやめるべき。

○ 65歳位で戸建住宅を処分して、都心のマンションに移るという動きが増える。50歳前後に戸建住宅を建てても、実際に自分が使える時間は意外に少なく、無駄が多い。その見直しの一つの方法として、都心の再開発に係る公共事業を拡大して、高齢者を便利な地域に多数収容できるようにする。街中の方が地方よりも平均余命が長く、高齢者は街中の方が生活しやすいのではないか。もう一つの方法としては、購入した土地の一部を菜園などに転用することを支援する。菜園付き住宅で地方が美しくなる。

○ スペースの活用のために定住型だけでなく交流型も考えるべき。既存旅館業との仕分けを適切に行いながらグリーンツーリズムの振興に成功しているフランスの例を見習うべき。また、地域間の格差是正の立場から行った公共事業は、農村の自然景観を破壊した面がある。今後は地域の個性を尊重しアイデンティティを高める方向へ持っていくことが重要。

以上の討議までで定刻となり、閉会。

6.今後のスケジュール

次回第5回スペースとゆとり研究会は4月13日の午後0時から2時に開催する予定。

以上

なお、本議事概要は、速報のため、事後修正の可能性がある。

(連絡先)経済企画庁総合計画局計画課経済構造調整推進室

(担当)福島、押田

TEL  03-3581-0783(直通)