経済審議会第7回経済社会展望部会議事概要

1.日時:

平成10年2月26日(木)10:00~12:00

2.場所:

経済企画庁特別会議室(1230号室)

3.出席者:

香西泰部会長代理、稲葉興作、岩田一政、角道謙一、川勝堅二、黒田晁生、小長啓一、小林佳子、佐々波楊子、奈良久彌、成瀬健生、濱田康行、樋口美雄、ロバート・アラン・フェルドマン、村田良平、村本孜、師岡愛美、八代尚宏の各委員。
糠谷事務次官、林官房長、高橋企画課長、中名生総合計画局長、貞広審議官、高橋審議官、大西計画課長、大森計画官、田坂計画官、涌野計画官、染川計画官、安井計画官、塚原計画官、赤井計画官、荒井計画官、渡辺電源開発官、道上計画企画官、福島推進室長 他。

4.議題:

(1)各ワーキンググループ(以下WG)報告(グローバリゼーション、雇用・労働、金融)

(2)展望部会のとりまとめの方向性(案)について

5.審議内容:

(1)グローバリゼーション、雇用・労働及び金融WGの座長より各WGについて報告。これに対して委員からの主な意見は以下のとおり。

【グローバリゼーションWG報告に関連して】

  • グローバリゼーションの定義を明確にすべき。グローバリゼーションとは、同じルール、同じ哲学のもと行動することであるが、すべて同じということは現実にはあり得ない。グローバリゼーションと言う場合に、どこまで共通化していくのかということを明確にした上で議論するべき。
  • 1ページの1.に「財と企業のグローバリゼーション」が重要であり、高コスト構造是正に向けた規制緩和・競争促進には「企業のグローバリゼーションが必要」とあるが、企業の立場からするとこれは逆の話である。すなわち、企業は規制があるからグローバリゼーションを進められないのであり、規制緩和をすれば、その結果として企業のグローバリゼーションが可能になる。
  • 東アジアの危機はグローバリゼーションが行き過ぎた結果なのか。むしろ、不十分なグローバリゼーションの結果ではないか。日本から何を学ぶかについては、果たして日本と韓国がこれまでやってきた段階的自由化というのが望ましいのか。これらの点について検討すべき。
  • グローバルスタンダードというのは自分の国をよくするために行うものであり、調和や調整ということよりもチャンスだと考えるべき。ある国が自分の基準を捨てて高い基準に達成しようとするとき、調和しましょうというのはおかしい。高い基準に達することは、自分の為になるということがグローバリゼーションの大事なポイントである。

【雇用・労働WG報告に関連して】

  • 雇用の量より質が大事というのは、非常に新鮮であり、「キャリア権」を強調することは重要。しかしながら、それと、雇用保障がマクロ経済へ与えるインパクトついての記述は、矛盾しているのではないか。つまり、今の問題は十分な企業の雇用保障が弱まっている為、消費が減って、景気が悪くなっているということだが、それは今までの日本の企業が「キャリア権」を犠牲にして、雇用の量的な保障一本槍できたことを追認することになるのではないか。労働者が将来に不安を感じて貯蓄するというのは合理的な行動であり、それを踏まえて政府が適切にビルトインスタビライザーの機能を果たさなければいけない。政府がちゃんとしたビルトインスタビライザーの機能を果たさずして、雇用保障を企業に要求するというのは役割分担として間違いではないか。
  • 企業のOJT市場を解放するというのは重要であるが、そのためには労働法の規制緩和が必要。
  • 報告書の2ページの⑤雇用保障のあり方のところで、マクロ経済の面からみた雇用保障のメリットについて言及しているが、これに加えて、国民所得を分配する方法として、雇用による分配が最も世間の納得が得られる方法であるという社会的な積極的意義も書き込む必要があるのではないか。

【金融WG報告に関連して】

  • ベンチャー企業の起業について2つの意見がある。一つはベンチャー企業をやるぐらいの心構えがある人間なら、自分の全財産を投じて金を借りてやるべきという意見と、もう一つは、有限責任だからこそ企業は育ってきたのであって、有限責任を無視して無限責任を課すとますますベンチャーが育たなくなるという意見。かつては銀行は個人保証をしない会社には貸さないといっていたが、今はそういう時代ではなくなってきた。そうした議論もすべき。
  • 中小企業金融等の分野における公的金融の役割に関連し、僻地や生産性の乏しい業種向けにおいては、中小協同組合組織の金融はそれなりに社会的意義を有している。ぜひこうした視点を付け加えるべき。
  • 日本が「アジアの金融取引の中心としての存在」というのはこれからの大きな課題。日本のこれからの金融制度の構築については、慎重かつアジアの模範となるように行わなくてはいけない。
  • これからは自己責任が重要。それができない金融機関の経営者は、進退を明らかにしなければいけない。バブル期の金融機関の行動は自らの経営意識が希薄化し、利益至上に走った為、あのような結果になったのではないか。
  • 金融機関の検査監督においては、コンピュータリゼーションに対応できる体制が必要ではないか。海外では監査法人を使ったり、コンピューター専門家を採用したりしている。
  • 経済力が強く、民主国家である日本、つまり東京がアジアの中心であることが重要である。東京がシティやウォールストリートと並ぶ為には、税制、規制、生活コスト等も含めて考えていくべきである。
  • グローバリゼーションにも関連するが、G7ではアジア通貨危機の原因は日本の政策(低金利、円安誘導等)にあると言われたが、そうではないと考えているのであれば、結論部分でそれに反論すべきではないか。報告書の結論部分を読むと、製造業と同じような形で、遅れているアジアを日本が引っ張るというようなイメージが強いが、本当に金融市場では、日本はアジアより進んでいるのか。むしろ、シンガポールのように日本より優れている面もあるわけで、それから学ぶという姿勢も必要。
  • 「我が国の金融資産がアジア経済に円滑に供給されることが期待される」と書いてあるが、今の日本のシステムのいろいろな弊害から金余りと貸し渋りが共存しており、過剰な資金がアジアに流れたことがアジア通貨危機の原因という見方もある。日本からの資金が過剰だからこういうことが起こったのか、または少なかったから起こったのかについても検討すべき。
  • 金融関係の専門家が育たないのは何故かということが重要。日本的雇用慣行というものは専門家を作らないシステムである。金融業というのは本来専門家の集団であるべきにもかかわらず、日本の中で一番強い年功制をもっているところに問題がある。
  • 日本の金融業の付加価値、必要な資本、人員等がどれくらいであるかといった推計を行ってはどうか。仮に資本が過剰にあるとの結果が出れば、公的資金を導入する必要はなくなるのではないか。
  • 6ページのところで、公的金融の純化した意義における可能性のある役割の一つとして、ベンチャー企業の初期段階への資金供給があるが、ベンチャー企業の初期段階の資金調達に地方公共団体が導入した公的資金を利用するという試みは、今のところうまくいっていない。その意味で、協同組織金融機関について何らかのメンションを残して欲しい。協同組織金融機関は地域に密着していて、担保ではなく人に金を貸す機関である。こうした機関は新規企業の初期段階にお金を出せる一つの候補ではないか。
  • 10ページの郵便貯金に係る記述が玉虫色であり、社会政策的役割と市場原理徹底のどちらに方向性が向いているのかわかない。全体のロジックからすると後者に向いているものと思われるが、それぞれについて具体的な内容を書くべきである。
  • 市場インフラの整備に関し、金融機関の会計制度については、国際会計基準の金融プロジェクトの作業がグローバルスタンダードとなることを前提として、持ち合い株式についてどう考えるか。金融商品全般が時価評価となる中、持ち合い株式を時価評価した場合どうなるのか。これは邦銀にとっても大きな問題となろう。
  • ディスクロージャーについては、企業サイドからの積極的な開示が必要。IR(インベスターリレーションズ)という形で、今後株主をはじめとした投資家に対して企業が何を訴えていかねばならないのかという視点も入れるべき。
  • 決済システムについては、2010年においてEDI、証券総合口座など預金以外の決済システムも含めて決済システムがどのような形になっているかが問題である。決済システムがどうなっているかにより、金融機関の破綻処理のあり方、例えば、どこまで預金保険の保護の対象とするのかといった問題とかかわってくる。

(2)展望部会の取りまとめの方向性(案)について、事務局より資料3に基づき説明。時間の関係上、本案についての討議は次回に持ち越すことになった。

6.今後のスケジュール

次回第8回経済社会展望部会は3月19日の12時15分から開催する予定。

以上

なお、本議事概要は、速報のため、事後修正の可能性があり得ます。

また、本議事概要中に記載されている部会資料につきましては、経済企画庁広報室及び総合計画局計画企画官室で配布しております。

本資料に関する問い合わせ先; 経済企画庁総合計画局計画企画官室

道上、丹野

連絡先;電話 03-3581-0977

ファックス 03-3581-0953