経済審議会経済主体役割部会(第7回)

時:平成10年2月19日

所:共用第1特別会議室(1212号室)

経済企画庁


経済審議会経済主体役割部会(第7回)議事次第

日時 平成10年2月19日(木) 14:00~16:00
場 所 共用第1特別会議室(1212号室)

  1. 開会
  2. 経済役割主体部会のとりまとめの方向性について
  3. 年金基金の活性化を通じた市場機能の活性化について
  4. 公的なサービスの供給主体の移行について
  5. その他
  6. 閉会

(配付資料)

  1. 資料1 経済主体役割部会委員名簿
  2. 資料2 経済主体役割部会のとりまとめの方向性(案)
  3. 資料3-1 年金基金の活性化を通じた市場機能の活性化(論点整理)
  4. 資料3-2 年金基金の活性化を通じた市場機能の活性化(説明資料)
  5. 資料4-1 公的なサービスの供給主体の移行についての論点整理(案)
  6. 資料4-2 公的なサービスの供給主体の移行について(説明資料)
  7. 資料5 今後の審議スケジュール(案)

経済審議会経済主体役割部会委員名簿

部会長
 水口 弘一 (株)野村総合研究所顧問
部会長代理
 金井 務 (株)日立製作所取締役社長
 荒木 襄 (社)日本損害保険協会専務理事
 潮田 道夫 毎日新聞経済部副部長
 浦田 秀次郎 早稲田大学社会科学部教授
 奥野 正寛 東京大学大学院経済学研究科教授
 川勝 平太 早稲田大学政治経済学部教授
 河村 幹夫 多摩大学経営情報学部教授
 神田 秀樹 東京大学大学院法学研究科教授
 公文 俊平 国際大学グローバルコミュニケーションセンター所長
 ポール・シェアード ベアリング投信株式会社ストラテジスト
 末松 謙一 (株)さくら銀行相談役
 竹内 佐和子 長銀総合研究所首席研究員
 鶴田 卓彦 (株)日本経済新聞社代表取締役社長
 得本 輝人 日本労働組合総連合会副会長
 豊島 格 日本貿易振興会理事長
 那須 翔 東京電力株取締役会長
 西村 清彦 東京大学大学院経済学研究科教授
 樋口 美雄 慶応義塾大学商学部教授
 グレン・S・フクシマ 在日米国商工会議所(ACCJ) 会頭
 星野 進保 総合研究開発機構理事長
 星野 昌子 日本国際ボランティアセンター特別顧問
 本間 正明 大阪大学経済学部長
 森地 茂 東京大学大学院工学系研究科教授
 諸井 虔 秩父小野田(株)取締役相談役
 山内 弘隆 一橋大学商学部助教授
 山口 光秀 東京証券取引所理事長
 吉野 直行 慶応義塾大学経済学部教授
 米倉 誠一郎 一橋大学イノベーション研究センター教授
 和田 正江 主婦連合会副会長


〔 部会長 〕  皆様方には、ご多用中のところをお集まりいただきましてありがとうございます。定刻になりましたので、ただいまから、第7回の経済主体役割部会を開催させていただきます。

さて、本日の議題は3つございます。

第1は、「経済主体役割部会のとりまとめの方向性について」でございます。第2は、「年金基金の活性化を通じた市場機能の活性化について」でございます。第3は、「公的サービスの供給主体の移行方策について」でございます。

それでは、第1の議題であります「経済主体役割部会のとりまとめの方向性について」、事務局より説明をお願いいたします。

よろしくお願いします。

〔 事務局 〕 それでは、お手元の資料2をご覧ください。これまで6回の質疑を通してご議論いただきましたところを踏まえ、これから最後の報告に向けどのようなことでとりまとめをしたらいいのか、その考え。それから、その具体的な中身としてどのようなことを盛り込んだらいいのか、ということでの事務局としての案をお示ししたものでございます。

大きく3つに分けておりますが、最初は、「部会報告のねらい」でございます。基本的な認識としまして、日本経済がこのような形で長期低迷にあるというのは、いろいろな意味で問題があるわけでございます。その要因としては、2つ目の○に書いてありますように、4つほどの点を述べております。こうした要因を取り除きまして、あるいはシステムそのものを再構築することによりまして、日本経済を全体としてうまく機能するよう立ち直らせていく必要があるわけでございます。このためにも、政府としては6大改革をはじめ様々な施策を進めているところであります。この経済審議会としましては、2つの部会を設けているわけでありますが、こうした改革により日本経済がどのように立ち直っていくのか、その上で持続的・安定的な成長経路を辿っているのであろうかということで、その改革の道筋・姿につきましては経済社会展望部会で検討をしているところでございます。当部会では、そういったことで改革を推し進める上での経済の各主体に必要とされる機能について検討して、現在の機能の中で見直すべきところは何か、あるいは新しく導入していくべきことは何かということについて提言をしていこうというものでございます。

なお、展望部会ではどのような議論をしているかということを一言で申し上げますと、大きく2つの課題があろうかと思っておりますが、1つは、成長軌道に乗せるための、つまり成長軌道に回復するための施策ということで、その政策の優先度、あるいはタイムスケジュールというものをまず議論をし、その上で2010年の改革後の姿というものをご議論いただいているところでございます。

こういった報告のねらいを踏まえまして、2つ目の「目標とする経済社会の姿と各主体の役割」ですが、目標とする経済社会の姿とそれに係わる各主体の役割はどうであろうかということを、次のような形で整理してみました。ただ、こういった整理をするにあたりましては、これまでいろいろご議論いただきましたように、例えば、グローバルスタンダードといったような観点からみて国際的に日本経済のどこにシステム上問題があるのか、あるいはこれまでの日本経済の姿を振り返ってどこに問題点があったのか、そういったものを踏まえて姿を明らかにしていこうということでございます。

1番目は、そういった意味で目標とする経済社会としては、市場が的確に機能し、かつ活性化することが大前提であろうということであります。

この市場機能によって、経済の好循環メカニズムが蘇り、経済の各主体そのものが役割を発揮しやすく、自由で躍動的な経済社会が再現されることが必要であろうということであります。そのために、現行システムの破壊と再構築という手段をとることも厭うべきではない。

さらに、市場原理を徹底させていく中で、市場に対しては、政府の役割としては市場環境の整備あるいは事業に必要なサービスの提供に特化していくということであるし、同時に、企業自身がその中心のプレーヤーですが、そのガバナンスの強化と意思決定の迅速化を図っていく必要があるということであります。

2番目としましては、これは特にパブリックセクターについての議論の姿でありますが、政府の機能は可能な限りスリム化する。行政組織を簡素化し、意思決定を迅速かつ効率化していく。 国の行政は国でなければできないことに限定し、極力住民に近い行政主体、これが公的なサービスの業務を担当していくということであります。

そうしたことによりまして、このことは同時に国民の間では受益と負担との関係を明確化していくという基本的な原則につながっていくことだろうと思いますが、こうした結果、国民負担を少なく、かつ社会環境の変化に素早く対応しまして、需要側のニーズに応じた効率的なサービスを供給することが可能になるのではないか、ということが2つ目の経済社会の姿でございます。 3番目としましては、次のページにありますが、企業、個人につきましては、その活動の自由度が増し、かつ自分の能力が活かされる社会が望ましい。しかし、自由ということは同時に自己責任をその裏に求められる社会であろう。つまり、「リスクとリターンを自己管理する社会」こそが新しい経済社会の姿であるということであります。

4番目としましては、加えて、市民が自ら参画するための媒体として、NPOの機能を見直して改革をすることによって、政府あるいは民間の機能がより一層強化されることになる、そういった経済社会の姿ではなかろうか、その4つに議論を集約したところでございます。

こうした経済社会を実現するために、それでは、今の機能の中で見直すべき点、あるいは新しく導入していくべき機能は何かということで、それをIIIのところに「『目標とする経済社会』を実現するために何をなすべきか」ということでまとめたところでございます。

第1は、市場機能が大前提であるということを、経済社会の姿としてありますから、そういう意味で、市場機能の活性化をいかに図るかということで、4つほど挙げております。

1番目は、「規制緩和の更なる徹底と民民規制の見直し」ということであります。市場機能を活性化するために、公的規制による規制緩和ということはこれまでも議論をされましたし、経済審議会でも、あるいはこの部会でも、規制緩和につきましては報告書を出し、あるいはフォロー・アップの報告書を出したところでございます。しかしながら、かなり議論が進んでまいりますと、公的規制だけではなくて、民民規制といった問題についても考えていくことが市場機能の活性化ということでは重要ではないかということでございます。

この点につきましては、民民規制ワーキンググループが設けられておりますが、そこでの議論をここに取り上げていこうという考えでございます。現在、民民規制ワーキンググループの議論としましては、民民規制については、一般に漠として存在を感じているものの、その実態と弊害がなかなか認識されていないということで、その実態とその弊害を具体的に示すことによって問題提起をしよう。そして、対応策を示していくことではどうか。そうすることによって、民民規制の見直しの視点というものが出てくるのではなかろうか、こういうことでございます。もう一つ、民民規制で必ず関わりの出てくる業界団体の役割についても提言をしていこう、こういうことでございます。こういった議論の中心点を、エッセンスをここに組み入れていったらどうかということでございます。

「起業と退出がしやすいシステムの構築」ということを方策の2番目に挙げております。当然のことながら、市場システムの活性化ということは、起業と退出が自由に行いやすくすることが重要であります。そこで、まず起業をしやすくするためにどのような仕組みがあるかということで、ここに3つほど挙げられております。こういったことに加えまして、ときに、市場に合わなくなった企業につきましては、退出について、やり直しがきくように、あるいは極力迅速にかつ失敗のコストを小さくして退出ができる、こういうようなシステムを構築することによって市場機能を活性化させていくことが必要ではないかということであります。この点につきましては、4月に具体的な中身をもう一度詰めてご議論いただくことではどうかと考えております。

3番目ですが、3番目はタイトルがあまりよく内容を表していないように思いますが、言ってみれば、市場機能を活性化させる新しい仕組み、あるいは新しい刺激剤として、401Kプランのような年金の新しいシステムを入れたらどうか、そういう内容でございます。

この点につきましては、今日ご議論いただくところでございますが、年金市場をみますと、これは展望部会でも議論されておりますが、公的年金だけでは恐らく将来不十分であろう。そうすると、それを補うものとして、それをカバーするものとして、企業年金あるいは個人年金というものがどうしても必要とされる。同時に、金融ビッグバンによって個人の資産を運用するという取組みが可能になってくる。そこで、そういった両方の点を踏まえるならば、アメリカの例にならって401Kプランを導入するようなことはどうなのであろうか。そういったプランを導入することによって、運用主体あるいは個人投資家の企業活動に対する関心が高まっていく。そうしたことが、外部的な力としての企業ガバナンスにいい影響を与えるのではないか。あるいは、ディスクロージャーという問題についても改善が図られるのではないだろうか、こういうことを書いて、そういう問題点でご議論を願い、結論を出していただくことはどうであろうかということであります。 3ページにまいりますが、そのときに、こういったシステムの恩恵を受けない人については、新たな金融商品なりを提供する必要があるのではないかということを、なお書きで述べたところでございます。

4番目としましては、市場機能の中で、これまで何回かご議論いただきましたが、コーポレートガバナンスという問題が出てまいります。それを再構築することによって市場機能を強化したらどうだろうか。

この点につきましては、これまでも議論いただいておりますが、4月に再度その議論を総まとめする形で、ここに方策をお出ししたいと思っております。その際の視点といたしましては、バブルの発生から崩壊に至る過程で、結局、コーポレートガバナンスが有効に作用していなかったのはなぜか。では、それを踏まえて今後の日本経済を考えるときに、市場機能を正常に働かせ、市場を活性化させるためのコーポレートガバナンス強化の具体策はどうあるべきか、そこのところを盛り込んでいってはどうかということであります。これまでの議論を踏まえるならば、1つの大きな点としましては、外部的なチェック機能の強化というところが1つの方策の柱になるのではないかというふうに思います。

それから、あるべき経済社会の姿としまして、パブリックセクターにつきましては「国民の負担と受益の関係の明確化」ということが、その方策としては必要だろうということで、その観点に立って、官のスリム化という問題と、「国から地方へ」という問題を2つ提言していこうということでございます。

第1の点につきましては、これまで2回足らずご議論をいただいておりますので、今日、これまでの議論を整理したところを示しております。これまでの議論を整理しますと、ポイントとしましては、「官」から「民」へ移行するに当たって、PFIの考え方、特に、イギリスでとられているようなPFIの考え方というのが、日本として今導入をすべき、あるいは考慮すべき1つの大きな要因ではないだろうかという点。

では、それを具体的に社会資本整備に適用した場合に、どのように適用していったらいいのだろうか。

それから、「官」から「民」へいう中で必ず問題になってくる第三セクターの問題などについては、具体的にどのように解決を図るべきだろうかという点でございます。

それから、これは次回にご議論いただこうかと思っておりますが、「官」から「民」へという中で、公的金融の問題が取り上げられます。特に、財政投融資という問題が、行政改革との関連でもかなり議論ができるような形になってまいりましたので、この点につきましてはどのように考えていけばいいのか、次回に議論を整理してご議論をいただき、提言をまとめていったらどうかということでございます。

第2の点でございますが、これは「国から地方へ」ということで、むしろ地方の事業を進めていく上での観点についてまとめてみようというものでございます。「国から地方へ」という問題を考えていく場合に、いくつか問題が挙げられるわけですが、これまではどちらかというと国が政策を決めて、それを地方に流す。それが地方が主体となるべき政策であるべきなのに、結局はこれまでは、地方が主体となって考えられるようなシステムにはなっていない。それから、地方で使える資金の枠という概念がなくて、どちらかというと、必要な資金については陳情ということで中央から持っていく。そういうことのために、地方における優先度というものがはっきりしてこない。それから、そういう意味で費用対効果という分析ができていない。それで、一度始めたプロジェクトもなかなかやめられない、というような問題点があるわけでございます。そういった問題点を考慮したときに、さて、公的な業務を担う役割が国から地方へ出てきたときに、そういった問題点をどのように、むしろ克服していったらいいのだろうか。その上で、地方における行政の効率的な進め方について考察をしたい。そのときに、社会資本整備を例にとりながら、いろいろ具体的な改善の手段あるいはやり方というものを提言していってみてはどうだろうかということでございます。 この提言を読んだときに、それでは、地方自治体の職員なりが、自分たちもそのやり方をひとつヒントにして何か考えてみようかと、そういう具体的な提案ができればということで、この点につきましては、一度ご議論いただいておりますが、4月に、今言ったような問題意識で、もう一度整理をしてみたいと思っているところでございます、その際に、一番下に書いてあるような、各地で同じようなプロジェクトを作っているが、そういうことがいいのか。そうすると、むしろもう少し連携という問題も含めて考えるべきではないか。あるいは、意思決定の方式というものについても、何らかの具体的な点を加えながらやっていったらいいのではないか、そういう内容でございます。

3番目に、あるべき経済主体の姿として、自由と、それからリスクの自己コントロールということを挙げたわけですが、そうしたときに、一人一人が自分の能力を最大限に発揮できる環境を整備することが1つの大きな方策になろうかと、これまでの議論を通して言えるのではないかということでございます。特にこの点につきましては、労働ワーキンググループの成果をここに取り入れたらどうかと考えたところでございます。

その内容は、ここにありますように、「個人が自己責任原則の下で、職業選択や能力の向上等職業生活の各方面にわたって、自由な活動を行っていくために、阻害となっている要因」。 これは前回、若干ご議論いただきましたが、例えば、年金のポータビリティ、あるいは既婚女子パートタイム労働者等の勤労意欲や職業能力向上意欲にディスインセンティブになっているような、そういった制度を見直すべきだ。あるいは、次のページにございますが、個々の労働者、これからは組合を通して何かを交渉するということのほかに、個人個人の問題が解決される仕組みというのが今はあまりないわけですが、企業の内外にそれを実現できるような紛争処理システムを整備することが必要ではないか。このようなことをこの中に織り込んではどうかということでございます。

4番目は、新しいNPOの力によって民間あるいは政府の機能をさらに強化していったらどうかということでございます。この点につきましては、NPOワーキンググループでご議論いただいている、その成果を取り入れてはどうかと考えております。

現在、NPOワーキンググループでは次のような議論をしております。つまり、NPOというものを、これまで、これもNPOの1つでありますが公益法人、それが1つの中心的な役割を果たしてきたわけですが、これはどちらかというと、1つの目的に向かって、ややもすると行政の意向に沿ったような、そういうように活動をしてくる、あるいは1つの目的に従って意見を出すというような活動をしてきたわけであります。これに対しまして最近、非常に役割が見直されているのは、新しい意味でのNPOでありまして、これはどちらかというと自発的な市民参加、こういったものによって多様な意見をもった、多様な有り様をもった組織が、政府あるいは民間あるいは個人の場でもって活動を進めている、そういうものを取り入れていこう。それをどのように位置づけるかということで議論がなされております。

この際に、いろいろ言われていることでありますが、特に、このワーキンググループの中で議論されていることは、誰でもがボランタリーにそういったサービスを提供できる。同時に、必要になった場合にはそのサービスを誰もが受ける、そういう二面性を新しいNPOはもつ。そういう形で市民参加が行われるのだ、というふうに議論が進んでおります。

そのNPOと行政との関係、あるいはNPOと企業との関係、あるいはNPOと個人との関係、あるいはNPOと労働組合、あるいはNPOと地縁組織という形で、具体的な事例を踏まえて議論がなされております。

できる限り、NPOが持っている新しい優れた面を導き出しまして、それを具体的に紹介することによって、今後の経済社会における新しい役割というものを提言していきたいというのが、ワーキンググループの基本的な考え方であります。

その際に、そうしたNPOの活動にはもちろん問題もあるわけですが、できる限りNPOの活動を今言ったような形で引き出すための方策をいくつか提言していきたいというのが、ここの流れであります。

この点につきましては、4月の部会にNPOワーキンググループの報告がなされますので、そのときにご議論いただけたらどうかと思っております。

最後に、前回ご議論いただきました市場機能、あるいは政府の機能、あるいは個人の活動、あるいはNPOの活動を通じまして、「経済社会全体にとって核心的な役割を果たす情報開示、説明責任及び評価システムのあり方の明確化」ということで大きくまとめてみたい、あるいは提言をしてみたいということであります。前回のご議論が中心になりますので、ここに書いてありますような、「情報開示、説明責任、評価・監視システムが重要になってくる」。

それにつきまして、それぞれの機能を強化するルール、システム等を次のような形で提示してみたらどうかということでとりまとめてございます。

以上のような具体方策を踏まえ、「結び」といたしまして、これは今後またご議論いただくことでありますが、「今後めざしていくことは、従来の我が国のシステムについて見直すべきところは見直すこととした上で、グローバル化に対応して、他国のシステムの良いところも取り入れつつ、新しいシステムを構築していくことではないか。これにより、経済の好循環メカニズムが蘇生することを通じて、日本経済が再び活性化し、国民が将来の経済に対する自信を回復させていくことが期待」、こういうような認識でまとめてはどうかというのが、事務局で提案をする内容でございます。

以上でございます。

〔 部会長 〕  どうもありがとうございました。

ただいま、今後のとりまとめの方向性ということでご説明いただきましたけれども、一言私から付け加えますと、1ページの「部会報告のねらい」の最後のところで、「そうした改革によって日本経済はどのように立ち直り、持続的安定的な成長経路を辿っていくのだろうか。その改革の道筋・姿は経済社会展望部会で検討しているところである。当部会では--」云々となっておりますが、いずれ展望部会の方の検討のプロセスも踏まえまして、当部会と、方向性と、きちんとした考え方とを共通のものとするということで、これは展望部会のほうとも綿密な打ち合せをしながらやっていきたい、このように考えております。

それでは、ただいまのご説明につきまして、どうぞご意見をお願いいたします。

よろしければ、今日久しぶりにお見えいただきました部会長代理、それからA委員からお願いしたいと思います。

〔 部会長代理 〕 まず、経済主体の役割というのは非常に難しい命題だったと思うのですけれども、市場メカニズムを機能させるには何をしたらいいかというような問い掛けになっていて、全体としてはずいぶんまとまってきたのではないかと思っております。

これは今話があって、私も前回、書類で差し上げたのですけれども、今の中で「核心的役割を果たす情報開示」という話がありましたけれども、この前も申し上げたのですが、ルールの監視とか、紛争解決機能の強化というのも、同じように大事ではないか。これからグローバルな経済環境になってきますと、当然、経済的紛争がどんどん増えてくるわけでありますが、今、私どもの経験しているところでは、訴訟はしにくく、時間はかかる、金もかかるというふうなことで、それが結局、行政に依存しているとか、あるいは裁量行政につながっているとか、最近のいろいろな問題もかなりそれにディペンドしているところがあるのではないかということで、情報開示の問題と、司法的にこれに対処する仕組みというのは同じぐらい重要ではないかということを1つ感じました。 もう一つ、NPOの話。これは今、ワーキンググループでやっていただいているわけですから、今、これということで特に申し上げることはないのですが、いろいろ読んでみますと、NPOをうまく管理しようというような感じがないわけではないような気がするわけです。公益法人の場合と、いわゆるNPOという2つあったわけですが、後の方のNPOというのは、自発的に作られているのがNPOとかNGOで、過剰な関与というのはよくないのではないか。むしろ、なぜNPOの機能がもっと政府の中に取り入れられないのか、取り入れられる部分はないのか、というようなことを検討することが1つかなり本質的な問題ではないかという気がしますが、これはワーキンググループで議論をしていらっしゃるので、その方に期待したいと思います。

以上です。

〔 A委員 〕 おっしゃるとおり、あまり出てこなかったものですから、全体のトーンを十分理解していないそしりは否めないと思いますが、ちょっと拝見して感じたことを一、二発表させていただきますと、「目標とする経済社会」に市場機能の活性化というのがありまして、そこの3番目に「年金基金の活性化を通じた市場機能の活性化」というのがあるのですけれども、年金基金というのは、確かに今話題になっていることは事実ですけれども、ここでどうして年金基金を取り出して市場機能の活性化の表現に使ったのか。市場機能の活性化といえば、投資信託などを含めたいろいろ機関投資家の活躍とか、そういうのがこれから大きくなってくるだろうと思うのですが、その中で年金基金というものを限定して挙げることは、ちょっと奇異な気がします。

それから、全体の感じとしまして、それぞれの項目については意欲はわかるのですが、かなり個別の各論的なものが多くて、私はいろいろ考えながら思ったのですが、一番この下敷きになっているのは、今までの日本が結果の平等を追ってきたのが、今度は、むしろ機会の平等に哲学が変わろうとしている。そういう表現をという意味ではございませんが、そういうものがどこかにないと、今の流行りのいろいろな単語ばかりが並んでいて、今までのどこが本当にいけなかったのか、どこが残るのか、そういうことがもうひとつ見えてこない気がするので、そういう不安だけが残ったということを申し上げます。

以上です。

〔 部会長 〕 どうもありがとうございました。

年金基金の活性化という問題、これは私の理解も、今、A委員のおっしゃったとおり、機関投資家であるけれども、その中で特に年金基金がアメリカに比べて規制が多くて全く活性化していない、そういうようなことが背景にあったのではないかと思いますけれども、事務局の方から何か追加の説明がありますか。

ここの表現は、今後どのようにするか、もう少し考えさせていただきます。特に、具体的にという中で、401Kプランの導入ということは、1つの目玉として取り上げたいというのもありますから。

それから、機会の平等、結果の平等につきましては、受益と負担という問題との絡みもありますから、これは今後、十分考慮すべき問題と考えます。

B委員、どうぞお願いいたします。

〔 B委員 〕 私も、前半の方はあまり出てなかったので、あるいはもう決着済みの議論なのかもしれないのですけれども、トーンとして一番ベースになっている市場原理への移行ということは、私はもちろん大賛成なのです。ただ、誤解をおそれずに言いますと、それでは市場原理というのは目的なのか、市場というのはオールマイティなのかといえば、それはそうではないだろうと思います。市場原理は、目的ではなくて、手段である。市場は、オールマイティではないのだろうと思います。

昨日も、加藤幹事長が代表質問でやっていましたけれども、今の日本が市場原理と相当遠いところにあって、それが大問題で、市場原理を導入することで経済の活性化を図ろうという、そのこと自体は間違っていない。では、一体どこまで市場原理を拡げていくのか。例えば、アメリカのようなかなり格差が激しい、そういう社会をねらっていくのかどうか。現状をもっと自由化しなければならないのは事実なのだが、一体どの辺まで行くつもりなのかという点を、やはりきちんと出しておく必要があるのではないか。

私は、非常に大ざっぱな言い方をすれば、今の日本と今のアメリカの真ん中辺ぐらいであるというような感じではないかと。という意味は、市場原理が徹底していれば、当然、格差が非常に大きくなっていって、社会の中にはだんだん不満が蓄積して、民主主義政治でやるわけですから、当然そこでまたいろいろな社会問題が発生してくるというようなことで、いずれの先進国も、結局、平等と自由というものの矛盾というのか、その折衷点をどこに求めるかということに非常に腐心をしているわけです。そういう中で、日本は一体どこをねらっていくのかという点をはっきりさせておく必要があるのではないか。

というのは、もう一つ、ここで経済主体の1つとしてNPOを取り上げるということ、それとの論理的な脈絡がどうなるか。私は、一方で自由化を進めていけば、当然、格差が拡がり、あるいは敗者やら弱者がたくさん出てくる。それに対して社会としては一体どうするのだ、という問題を片方でちゃんと持っていないといけないと思うのです。そのところに、またNPOというものの必然性が出てくるのだろう。これは恐らく決着済みなのかもしれないのだけれども、その辺の論理的な脈絡を明確にしてもらいたいということであります。

〔 部会長 〕 どうもありがとうございました。

A委員のご意見と、今のB委員のご意見、ある意味では共通問題でありまして、非常に重要な問題であろうと思います。

経済審議会では、行動計画委員会のとき、それから、一昨年の末に出しましたレポートでは、この辺は、ともかく市場機能を活かしていくということにわりあいすっきりと行って、本委員会の席上では、たしかI委員からであったと思いますが、競争の結果敗者が出たという場合はどうするのかと問われたのに対して、橋本総理は、競争の結果の敗者は救いません、弱者の救済の手段、これは政策的に考えると明言されたわけですけれども、考え方とか文字の上ではそうなりますが、現実問題となってきたらどうなるかということは非常に重要な問題であろうと思いますので、決して決着がついている話ではございません。

私は、私見からいえば、大きく市場主義の方に振らないと、今のままでいったら、またあらゆるものが先送りされてしまって、また10年間、同じ誤りを繰り返すのではないかという非常な危機感を、個人としては持っているということだけ、申し上げておきたいと思います。

〔 B委員 〕 私も、今のようなことを、さっき「誤解をおそれずに言いますが」と言ったので、これは誤解されたり、悪用されたりする危険性はかなりある。しかし、我々としてはきちんと考えておかなければいけないことだと思います。

〔 部会長 〕 非常に重要なご指摘だろうと思います。

続きまして、ご自由にご意見をお願いいたします。

〔 C委員 〕 ちょっと細かいことですが、一番初めの「現行システムがうまく機能しない要因は何であるか」、その3つ目に、将来に対する不安感の増大。これは要因ではなくて、結果ではないかという気がするのです。解釈の違いだと思うのです。

それから、同じページで下から4つ目の○ですが、「同時に企業のガバナンスの強化」が非常に気になるのです。ガバナンスというのはあり方ですから、それを強化するというのはほとんど意味をなさない言葉で、どういったガバナンスがあり得るのかということだと思うのです。これは4月にやられるということですが、3ページ目にも同じようにあるのですが、「市場を活性化させるためのコーポレートガバナンスの強化」、これもちょっと理解不能な言葉で、ガバナンスを強化するというのは、ガバナンスのあり方をどういうふうにするかということだと思うのです。

これは、今のB委員のお話と同じなのですが、本当にアメリカ型の株主だけが強い経営形態にしていいのか。これはガバナンスのあり方をどういうふうにするか、従業員と経営者と株主のバランスですから。僕は、GEのジャック・ウェルチは非常に強い経営者だと思いますけれども、彼は株主をしっかりと重視しているから、2つのガバナンスが強いのです。ところが、新しい産業を生み出しているかというと、生み出していないです。そういうことを考えると、ガバナンスの強化というような表現はちょっとまずいのではないかと。

同じように、2枚目ですが、「起業と退出がしやすいシステムの構築」。起業をしやすくするために、ここに3つ挙がっていますが、これは本筋ではない議論でありまして、新規企業を上場させる。それをどうやって気楽に上場させて、上場益を上げるか。また、そこに何回でもトライできるという仕組みを作るかだと思うのです。今の日本の状況を考えると、総合商社や企業内ベンチャーや持株会社の方が適切ではないかというふうに思われるかもしれませんが、実態は、意思決定が遅すぎて、このやり方だと本質にはならない。起業がどんどんできてくるという仕組みにならないので、ぜひ一番メインのポイントから議論なさって、それのほかに、こういうこともあるというような議論をされることが重要ではないかと思うのです。

その次の3ページのコーポレートガバナンス、これについては単純に、「ガバナンスの強化」ということ自身は意味をなさないですが、株主重視のガバナンスを全企業にとれということがいいのか、そこは任せて、そうではなくて、どういうガバナンスをとっているとどういうチェック機能が働くかというシステムを整備するべきかと、そこの議論をはっきり分けていただく方がいいような気がいたします。

もう一つ言えば、4ページのNPO。NPOは非常に重要ですが、これはちょっとかけ離れた言い方ですが、都市の分散とか国の分散に非常に係わっていまして、今、一極集中のままでのNPOというのは概念的に矛盾するので、ぜひそのことも踏まえて考えていただけたらと思います。

〔 D委員 〕 今の意見とも関連するのですけれども、「市場機能の活性化」というテーマですが、これからの経済主体として一番どこにどういう期待をし、どういう役割をするかというときに、ここで一番重要なのは、企業という主体がどういう役割をこれから日本の社会の中でやっていくかというのが、経済主体としては非常に重要だと思うのです。ただし、企業の役割というものについてのとらえ方が、市場という言葉にあまりにも置き換えられてしまいすぎて、しっかり書いてないような感じがするのです。つまり、今の世の中というのは、まさに外圧の中で日本の経済社会は沈滞して、もっと内需拡大が必要だとか、消費の活性化が必要だと言われて、今、その役割がすべて政府の方に振られてしまって、政府がもっと景気対策をやれというような議論になっているわけですけれども、一時過ぎれば、日本経済のあり方を決めていく中で一番重要なことは、やはり企業だ。企業がどういう役割をするかということをはっきり書いていない。

今、C委員の話を聞いていた中にも1つありましたけれども、例えば、企業の役割の1つは新しい産業を生み出す担い手である。これは政府がやるのではなくて、今キャッシュ・フローを持っているリーディングセクターの企業は、どうしてもやらねばならない仕事にもかかわらず、そういった新規投資を怠っているとか、そういうことが発生していまして、日本全体が不景気なのではなくて、そういった新しいニーズをキャッチして新規投資を行っていく企業が全体的に非常にサイレントになってしまった。そういうこともあって、1番目は、新しい産業を生み出す担い手である。 2番目は、消費者のニーズ、つまり豊かな生活をしたいという消費者のニーズを的確に吸収して、それを具体的な形に直していくという、いわゆる商品とサービスに変えていく力、これもやはり、もしアメリカ型の市場原理というものを考えるのであれば、どうしても企業がやらなければならない2つ目の役割。

3番目は、公共サービスの新しい担い手として、PFIの話も書いてあるのですが、ここはあまりはっきりしていなくて、企業主体として公共サービスを提供していく積極的な担い手となるというか、ここをもう少ししっかり書いていただかないと、経済主体の何の議論をしているかよくわからないです。

今、退出しやすいシステムの話も書いてあるのですが、この目線がちょっと高いというか、ニーズに合わなくなった企業は退出しやすくした方がいい、やり直しがきくようにした方がいいと、ちょっと目線が高いというか、親が子供に、「やり直してもいいよ」と言う感じがあって、みんな命をかけて頑張っているので、もうちょっとクールな書き方というか、何といいますか、この話はその中の本当にワン・オブ・ゼムの話で、大きく言えば、日本の経済というのはまさにこれから企業というものが今までとは違った役割を担っていくというか、そういうことが必要。その間に、官がいろいろな規制とかテリトリーをなるべく民に渡していく。しかし、そこで発生した問題に関して言えば、極めて第三者的な機関が、何らかのレフェリー役を官に代わってやっていく、みたいな道筋があっていい。

消費者は、どういう消費者像が求められているかというと、その企業に対して、こういう商品とサービスが明確に欠けているというサインをはっきりと送り続ける、そういうようなことが必要。 今の、欲しいものがない買いたいものがないという多くの原因は、企業の方にもありまして、ないから 1,600万人も外国に行って、ほしいものを買ってくるわけで、何かちょっとしたところがまだ日本の商品とサービスには欠けているのだというようなことも考えていきますと、コーポレートガバナンスの話だけではとても十分ではないし、もう少し日本の今までの経営者の役割も含めて、バンカーの役割もあるのでしょうけれども、今までの経営者がやってきた役割ではなく、もっと新しい経営者像なり、そういうものをここにも明確に示していただけないか。

何か市場原理がすべて日本の経済社会の最高の原理であるというふうな感じで、(2)の頭のところにも書かれていて、「自由で躍動的な経済社会」、「経済の好循環メカニズムが蘇生し」というふうな書き方をされているのですけれども、ちょっとリアリスティックではないというか、こんなところまで言っていいのかなと。言葉だけが先に行っちゃうとどうかなという感じもいたしますので、ちょっと意見でございます。

〔 E委員 〕 今のD委員のコメントにも関係するかもしれないのですが、1点だけ申し上げたいのです。これは部会のとりまとめの方向性ということですので、抽象的といいますか、一般論でよろしいかもしれないのですが、私の感想を申し上げますと、方向性そのものは特に異論はないのですが、最も私が期待しているのは、実現するためにどういう具体的な措置をとるか、どういう方策をとるのかを最終報告書に入れることです。

ですから、2、3例を申し上げますと、ディスクロージャー、あるいは情報公開、あるいは明確なルール化等、そういうことは抽象論的には多分、皆さん同意するのではないかと思いますけれども、そのためには、法制度の整備とか、弁護士の数を増やすとか、裁判所の機能を強化するとか、いろいろ実現するためにしなければいけないことがたくさんあるのではないかと思うのです。 もう一つ例を申し上げますと、例えば、民民規制を減らすためには、前に申し上げましたけれども、日本の独占禁止法を強化するのが1つの手段だと思います。しかし、それだけではなく、独占禁止法を1つの役所が適用するのではなく、私人、つまり民間が独禁法を適用できるようにする。あるいはNPOのことでも、やはり抽象論的に、NPOの役割を尊重しましょうとか、そういうことは大変結構なのですけれども、具体的に法律とか、税制とか、官庁の影響からもっと独自に自立して機能できるようにするといった制度論、つまり、仕組みそのものを見直す必要性があるのではないかと思います。抽象的なレベルで一般論として報告書をまとめても、実際に行動がついていけるのかどうか、ちょっと懸念しているわけです。

ですから、私が個人的に一番期待していることは、こういうことを実現するためにどういう措置を、具体的に例えば目標を作って立てることです。

以上です。

〔 F委員 〕 重なるところが多くて、私もちょっと驚いたのですけれども。私の場合は、特に、行動計画委員会からずっとやっておりまして、そのうちの特に住宅・土地というところに絡んでおりますので、そういう観点からみますと、現行システムがうまく機能しない要因は何であるかというときに、市場における過剰な規制の存在、その他いろいろ書いてあるわけですが、それよりも、恐らく住宅・土地の点からすれば一番大きいのは、書いてあることを実行するというところが今まではなかったというか、なかなかできなかった。それは基本的には司法の問題。特に、住宅の問題や土地の問題をやりますと、経済取引、それから法的な問題というのが常に一体となって実はいろいろなものが起きているわけです。つまり言葉で、例えば、いろいろな規制とか何とかが書いてあるわけですが、規制があった、では、その規制を本当に実行しているかというと、実行していなかったりということがあるわけです。例えば、違法建築に関して言うならば、それは非常にいい例です。そういったものが大きな問題である。

同じように、例えば、住宅・土地で言うならば、過剰な規制が存在していると書いてありますが、過剰な規制が存在しているということすらわからないわけです。

例えば、私は、東京都の臨海副都心に絡んでいますけれども、臨海副都心に何かものを建てるときに、一体どれだけの規制がかかってくるのかというようなことに関して正確な知識を持っているところは非常に少ないわけです。ところが、本当にものを建てたいためには、そういった知識が必要になってくる。

しかも、様々な抜け道が実はありまして、例えば港湾法で言いますと、港にホテルを建てることはできないわけですが、しかし、船舶の船員の宿泊施設は建てることができるわけです。実際上、船舶の船員の宿泊施設としてホテルが建っているケースがあるわけです。

そういったような、何が本当に起きているのかということすら実はよくわからないというところが問題で、それがない限り、市場システムがうまく有効に働くようなシステムを作らなければいけないと言ってもほとんどお題目である。

したがって、書いたものを担保できるようなもの、そういうものをどこかに付けていかないと、また同じことを、ただ何度もきれいな言葉を並べ立てるというだけに終わってしまうのではないかという気がいたします。特に司法、それから実際に行政事務をするところまでおりていった、その実際のところでの実効性をどうやって高めるか、そこら辺をどこかで書いておかないと、書くだけではなくてやらなければ、ほとんど意味のない作文がまた再び出てくることになりはしないかというふうに危惧を抱いております。

以上です。

〔 G委員 〕 全体の印象として2、3述べさせていただきます。恐らく、方向性としては、日本のシステムに、より競争原理、市場メカニズムを導入するということは誰も反対するはずはないのですけれども、方向性としては良いのですけれども、トーンとしては、私は2つのことが浮かんでくるのですが、まるで今までは日本では市場メカニズムが全然働いていなかったかのような書き方がされているわけです。これが1つの錯覚だと思います。

もう一つは、今までの日本のシステムは、いいところがなかった、あるいは今いいところが全然ないというような悲観論的な見地が非常に浸透しているような気がするのです。もちろん、改革をやろうとするときに、どうしてもそういう書き方になると思うのですけれども、より現実的になって、例えば、現在のシステムは実は市場メカニズムがかなり働いている部分がある、これを認める。ただ、そうではないところもずいぶんある。ですからもう少し限定して、例えば、先ほどの話のように、分野を限定して、実はここのところがうまく機能している、こういう産業もうまくいっている、なぜか。実は、こういうところが機能しない、破綻している、というふうにもう少し峻別して、選別して書いた方がいいという気がするのです。

もう一つの観点としては、現在のシステム、もちろん限界的なところまで来ているのですけれども、いいところもずいぶんある。例えば、日本の協調的な労使関係とか、あるいはいろいろな取引コストの節約ができるとか、あるいは企業内部の技術の蓄積ができるかとか、いろいろないいところがあるわけです。ではいいところは何なのか、悪いところは何なのか、これを区別してこの作業に取り組んだ方がより現実的なものが出てくるかなという気がするのです。

もう一つ、構成に関してですが、私の印象としては、非常に抽象的なところもあれば、非常に具体的な項目が出てくるわけです。ですから、もう少し組織立てたアプローチがあった方がいいかなという気がします。

例えば、日本のシステムの立て直し、それから市場原理を取り入れるとか、こういう切り口から始まると思うのですけれども、いくつかのキーワードがあるのです。流動化を高める、例えば金融システムの流動化、それから労働システムの流動化。あるいは、透明性を高める、あるいは自己責任の原則を確立する、各経済主体が直面する選択肢の幅を増やす、あるいはセーフティネットの整備とか、いくつかかなり抽象的ですけれども、具体的な切り口があると思うのです。これをまず設定しておいて、そこから各論に入る。例えば、年金システムの改革、あるいは労働市場の流動化を高めるための措置、あるいはガバナンス機能の立て直し、官民の役割分担とか、あるいは非常に具体的な話としては、公的部門、公的資金、金融部分をどういうふうにするのかということとか、そういう一般論から少しずつ各論の方に入っていくという構成の方がより説得力が出てくるのではないかという気がいたします。

〔 H委員 〕 今のご意見に近いのですけれども、今回の方向性の中にところどころものすごく具体的な言葉が出てきていて、401Kとか、PFIとか、コーポレート・ガバナンスとか、NPOとか出てきて、これが恐らくこの報告書の目玉といいますか、具体的な提案として売り込む1つの方策になるということはよくわかるのですが、ただ、それを全体的なフレームワークに組み込むときにどういう論理でやるかというところに、いくつかの問題点があって、今ご指摘のように、もう少し上の抽象レベルで方向性をはっきりした中で具体性を帯びたものにしなければいけないというのは、おっしゃるとおりだと思うのです。しかし、これは方向性ですから、非常に抽象的なところと具体的なところとまだ遊離していますが、それを結び付ける作業というのをこれからやられるのだと思うので、それはその中で出てくるのかなというふうに思います。

ただ、そうだとしても、いくつか論理としてどうかなというところがあって、例えば、私の関係で気がついたのは、3ページの「国民負担と受益の関係の明確化」の(1)で「官のスリム化」、(2)で「『国から地方へ』の進め方」という形になっているわけですが、「官のスリム化」の内容というのは、仮に1つのPFIだということになれば、確かにPFIというの受益者負担で何かものをつくろうという発想ですから、2番という大きい項目の「国民負担と受益の関係」に結び付くのですが、それと「官のスリム化」という表題がすぐに結び付くかというと、なかなか難しい、そこは内容を見ないと。しかも、公的金融の話などが入ってくると、どういうふうにここのところを位置づけるのかという、そういう問題が出てきます。

もっと難しいのは(2)で、「国から地方へ」と地方分権の話があって、意思決定の主体も地方分権に移せという話ですが、これはそれ単体としては正しい議論だと思いますが、その問題と「受益と負担の関係」というのがなかなか結び付かないということになっていまして、しかも、その例の中で、地方の行政の効率化をしなければならないと書いてある。その下の例として、住民参加の意思決定プロセスという話ですが、これは内容をまだ伺っていないのでちょっとわかりませんけれども、これだけを読むと、どういうふうに効率化と結び付くのかなと。あるいは、意思決定のシステムを作れば効率化ということなのかもわかりません。その辺の論理立てがこの辺で気になっております。

ただ、2の「国民負担と受益の関係の明確化」ということでとらえるとすれば、もっと大きいフレームとして、今のご意見にも関係するのですが、例えば、市場機構とか、そういうものが流れとしてあって、基本的に政府の役割、行政の役割というのをまずスリム化するという一方の方向があって、それ以外のところに市場機構を持ち込んでくるとこうなりますとか、あるいは分権的な意思決定機構も入れてくるとこうなります、そういう文脈で書かないとなかなか難しいのかと思います。

一番気になったところはそういうところですが、全体でも、恐らくほかにもそういうところがあるのだと思います。

私の意見は以上でございます。

〔 I委員 〕 もう既にご意見が出ておりますけれども、抽象的なところと具体的なところというのは、何人かの方からご指摘がありましたので、これからの文章の整理の問題として1つ感じております。

もう一つは、これから市場機能を活かしていく、市場原理でやっていくのだという方向性については、新しいルールによって自由で公正な競争という世の中になっていくのだと思いますけれども、そうすると、そこでは独禁政策の強化なり、その充実なりということが明確にもう少し出された方がいいのではないかということを感じております。

それから、「国から地方へ」というのは、また4月に再検討ということで、そこで議論が深められると思いますけれども、それぞれの地域での競争もあり、それから新しい連携もありという、いろいろな課題に目を向けていく必要があるなということを感じております。

次に、NPOのところが主要な位置を占めていく世の中にはなっていくと思うのですけれども、これもまたワーキンググループ報告があって、具体的にもう少し議論を深めていくことになると思いますが、既にご意見の中にもありましたように、自発的な市民参加ということと、NPOというのがこういうところに文章としても登場してくるのも初めてなわけで、その辺のところで、政府と民間の機能を前向きに強化していく、行政の管理と言ってはちょっと言い過ぎなのかもしれませんけれども、その辺のところの度合いがどの辺なのかというのが、今出ている文章だけを見ますと、どうなっていくのかなというような懸念を感じております。

それから、3ページに戻りまして、3の「一人一人が自分の能力を最大限に発揮できる環境の整備」、その一番下に、例えば「配偶者控除等」ということが出ておりますけれども、この大前提としましては、男性であれ、女性であれ、個としての確立ということが大前提にあるということが認識の上で一番元のところに必要になってくるのではないかという感じもいたします。それから、配偶者控除が、これは非常に具体的にぽんと出ておりますけれども、この辺のところがいろいろ幅広く考慮していく、検討していく必要があると感じております。

それから、先ほどお話が建築のことでちょっと出ておりましたけれども、法律なり、そういうところに出てこない面でいろいろ「そんなことがあったの!?」というようなことがありまして、私も以前にも発言しましたから重複して細かく申し上げるのは避けますけれども、そのときにご出席にならなかった方がおいでになるかと思いますので、ちょっと具体的な例で申し上げますと、私どもは今、事務所のあります主婦会館を、千代田区で建て直しをしておりますが、ある大きさ以上になりますと、住宅の設置義務というのが、これは法律でも条例でもなく、あります。私ども会員が本当に長いこと寄付を集めたりいろんなことをやりながら新しい会館を今建て直しています中で、ある程度の大きさ以上なものですから、住宅の設置義務がかかります。これが、地域住民を増やすという、その方向はいいのですけれども、千代田区のそういう場所において住宅をつくって、なおかつそれの目的以外に使用される場合には、費用を払わなければいけないと、これは法律にもよらず、条例にもよらず、そういうものが実際のところあります。

それで、私どもも今、住宅をつくるのがいいのかと。住宅をつくるとなると、夜も開けておかなければならないわけです。私どもは今のところ、夜は警備会社に頼んで、閉めてしまうつもりでいるのですけれども、住宅を入れるとなると、そうはいかないわけです。なおかつ、まわりで伺いまして、そこに住宅をつくっても、ワーンルームマンションのようなところでも非常に高い家賃で、結局使わないで、目的外の使用になると、億に近いようなお金を払わなければいけないというようなことが現実にあります。

その辺のところ、まさに現実にどういうことがあるのかというところを十分に調べてみるというか、そういう情報を収集する必要があるということを感じております。

以上でございます。

〔 C委員 〕 書き方ですけれども、H委員と同じなのですが、相互補完性があると思うのです、ここで挙がっている問題は。例えば、コーポレート・ガバナンス、株主重視にしなさいというと、僕は、D委員と違って、それをやればやるほど大企業は新しい産業を創出しなくなると思うのです。だから、一方で、する仕組みが必要なのだとか、ここで書いてあることは、それを強化すると必ずだめになるものがある、だから、こうすべきだ。そういうのがたくさん散在しているのですが、その補完性をよく観察して書かれると、整合性のあるものになると思うのです。

〔 J委員 〕 ごく手短に申し上げます。目標観の喪失ということが今、日本において非常に大きな問題なのですけれども、1ページ目で、「目標とする経済社会」という言葉が出ておりまして、それが括弧して(ROLEーPLAYABLE SOCIETY)となっています。これから目標とする我々の経済社会は、これは英語ですけれども、日本語に直せば、例えば役割発揮可能社会というふうなお考えでこう書かれているのかと思うのですが、これはかなり大きなテーマだと思うのです。このあたりはちょっと議論しないと、果たしてこういうふうに役割発揮ができる、「ROLEーPLAYABLE SOCIETY=目標とする経済社会」ということなのだろうかということを、議論させていただくことが必要ではないか。

第2点は、企業年金の充実ということが書かれておりますが、401K、これは当然のことながら、現在の確定給付型から確定拠出型に変わるという前提でのご議論。しかし、確定給付型と確定拠出型を比べた場合に、果たして確定拠出型の方が年金制度の充実なのだろうか、これも大変な議論だと私は思うのです。こういうふうに年金の問題、充実になるのかどうかということは、私は大変議論があるというふうに思うのです。

その2点だけを申し上げます。

〔 部会長 〕 どうもありがとうございました。まだまだご議論は非常に多いと思いますけれども、私、部会長として、このとりまとめの方向性ということで、当初、スタートの役割部会が、経済主体にはこれだけのものがあります、それらの役割はこれだけです、というところは極めて単純素朴な割り切りができたと思いますけれども、方向性ということになった途端に、かなり抽象化されてきた。しかも、これらを貫くものが、一応、マーケットメカニズムという考え方でやってきているということもございますので、今までのご意見を大体お伺いしまして、もっと具体的にものをはっきりと出せというようなご意見に集約されると思います。その場合、ケース・スタディとして、F委員あるいはI委員の言われるような具体的な問題の、これが一般的な代表的であるというようなケースがあって、それをケース・スタディとして出せれば一番いいのですが、出した場合に、「いや、それは特殊な例だ」というようなことを言われてしまうと、また非常に具合が悪いということで、これはまたいろいろ検討をさせていただきたいと思います。

皆様のご意見、非常に貴重なご意見をたくさんいただきましたので、これをもとにして、方向性の案につきましては、抽象的には、基本的な方向性とはこういうこととしながら、今、J委員もおっしゃった、ROLEーPLAYABLE SOCIETYということを基本的に云々と、あるいは年金の基本的な問題というのは、さらに、ほかの審議会でやっている議論も踏まえながら、検討する必要があると思いますし、方向性としたら、こういう方向性でご理解いただければありがたいと思います。ただ、考え方とか、あるいは具体的、抽象的、一般論との間が錯綜しておりますので、この辺は十分な検討を、今の委員の皆様方のご意見を踏まえてやっていきたいと思っておりますが、そういうことでよろしゅうございましょうか。

それでは、大分時間は経過いたしましたけれども、今のご意見を踏まえまして、事務局には必要な大修正をお願いして、基本的な方向としてはこういう方向でやっていきたいと考えております。 それでは、第2の議題として「年金基金の活性化を通じた市場機能の活性化について」ということで、この表題自身からまず問題だと思いますが、まずご議論をお願いしたいと思います。その前に、事務局より、説明をよろしくお願いします。

〔 事務局 〕 それでは、簡単にご説明申し上げます。資料3ー1に(論点整理)、資料3ー2に(説明資料)ということで分けてご提示しておりますので、両方をご覧いただきながら、ごく手短に申し上げます。

まず、資料3ー1(論点整理)の方で、最初の1では、先ほど、とりまとめの方向性の中でご説明申し上げました問題意識を簡単に提示しております。1つは、金融ビッグバンの進展とともに、企業の資金調達手段の多様化や個人の資産運用手段の多様化等が図られていく。2つ目には、高齢化の進展の中で、公的年金だけでは老後保障には不十分となる可能性が高く、したがって、企業年金のさらなる活性化が期待される。こうしたことの背景の中で、1つには、株式市場の活性化、あるいは個人資産の有効活用、さらには、株式市場、株式運用を通じたコーポレート・ガバナンスの強化等に、糸口が見つかるのではないか、というような問題意識を提示しております。

大きな2でございますが、こういう観点から、まず、企業年金制度の国際比較を簡単にさせていただきまして、これは資料6~11にいくつか付けさせていただいておりますが、簡単に申し上げますと、諸外国の企業年金制度は、近年、拠出建て年金への傾腫が高まってきているということでございます。同時に、ここ数年の年金制度改革の中で、年金受給権の保護を内容とする制度改革が進められてきているという点が挙げられるかと思います。

1枚おめくりいただきまして、2ページの(2)で、では我が国の企業年金制度はどうなっているかということでございます。これはご承知のところだと思いますが、厚生年金基金、適格退職年金等を含めて、1つは、先ほど申しました拠出建て年金への選択が認められていないということ、いま一つは、受給権の確保、特に税制適格年金についてですが、受給権の確保に欠けるきらいがある。こうした点を踏まえて、今後の経済社会の変化に対応した企業年金制度のあり方を検討していく必要があるという問題意識でございます。

大きな3でございますが、では、年金の資金を運用活性化する可能性というのはどういうものがあるのかということで、(1)で、先ほど申し上げました、アメリカにおけるERISA法の制定、確定拠出型年金の導入、特に、401Kプランの急速な拡大により年金資本主義とも言うべき状況が生まれつつあるということを申しております。

(2)では、では我が国にはどうかということで、金融ビッグバンの進展で 1,200兆円にのぼる個人金融資産の運用形態の多様化が進む。それから、ただいまも議論されておりますが、規制緩和の推進、特に、厚生年金等の資産運用に係る規制の撤廃・緩和等により、今後の運用活性化の期待が大きい分野である。その一方で、企業年金基金の現状をみますと、バブル崩壊等の影響を踏まえて、かなり経理状況等が圧迫されているという状況があるということでございます。

1枚おめくりいただきまして、(3)でございますが、以上を踏まえつつ、我が国の年金制度に、アメリカにおけるような401Kプラン、あるいは個人勘定を前提にした確定拠出型年金、これは資料の14ページ以下にいくつかの数字、ないしは401Kプランとは何かということでお付けしておりますが、こういったものの導入を検討して、自己責任に基づく資金運用の選択肢を拡大させる。そして、このことを通じて、株式運用への可能性を拡げて、株式市場の活性化を促す。あるいは雇用の流動化をサポートする側面から、年金のポータビリティの確保ができる等々を含め、さらに、3つ目の○でございますが、個人が企業年金をめぐる議論を通じて投資判断能力を高めるとともに、企業活動に対する関心を強めることになる。これが、ここでまた出てまいりますが、そのこと自体がコーポレート・ガバナンスの強化を間接的にもたらすことではないか、というような点を提示しているわけでございます。

最後に申しました、年金基金の運用活性化とコーポレート・ガバナンスという観点からは、大きな3でございますが、(1)で、説明資料で申し上げますと34ページ以下に、アメリカの年金基金を中心とする機関投資家がどういったガバナンス活動をしているかということでお示ししてございますが、1つの例として、カリフォルニア州公務員退職年金資金、CALPERSですが、コーポレート・ガバナンス活動として、企業の活動に発言をするような影響力の行使が広がってきているという例えも1つ紹介させていただいております。

最後に、(2)、(3)で、背景として、我が国のコーポレート・ガバナンスをめぐる動きとして、近年、当部会でも何度かご議論いただきましたが、企業経営の長期低迷の中で、メインバンクの監視力の低下や経営の不透明性・恣意性といった点がある。それらに替わる外部からのチェック機能あるいはガバナンス機能の問題等を直すために、市場に立脚したガバナンスの変革を図る。こういった観点から、(3)の 2でございますが、企業年金基金等を通じてコーポレート・ガバナンス活動の重視、洗練された投資家への成長ということをご検討いただいたらどうかということが、この資料の筋でございます。

最後に、「提言1」ということで、既に、先ほどのとりまとめの方向性にも出ておりますが、「日本版401Kプランを導入し、年金に対する加入者のガバナンスを確立するとともに、雇用の流動化等に対応したポータビリティを備えた年金制度の整備、さらには個人資産の有効活用や資本市場の活性化を促進する。」というものを掲げさせていただきまして、関連する情報開示でありますとか、調査能力向上等の環境整備を「提言2」として掲げさせていただいております。

簡単ですが、以上でございます。

〔 部会長 〕 どうもありがとうございました。

それでは、ただいまのご説明の内容につきまして、どうぞご意見をお願いいたします。

〔 K委員 〕 多分、年金受給者のサイドからいうと、選択性があって401Kプランというのはいいなという気がいたしますけれども、それをどうやってより高利に回るように運用するかというのは大変な問題だと思います。

ただ、コーポレート・ガバナンスに関しては、10年前に、隣にいるEさんたちと日米でさんざん議論した。要するに、四半期毎に成果を調べられて、長期投資をしないのではないかというのが日本側の主張だった。Eさんたちは、日本は株式の持ち合いみたいなことをやって非常にクローズドではないか、と言ってさんざん我々をいじめたわけでありますが、これはまだ決着がついていないと思うのです。

日本はまだまだ、アメリカのようにカリフォルニアの年金ファンドみたいなものにすぐ依存するような基盤もできていないし、だから、それを喧伝するほど大きいものではないのではないか。ただ、いろいろな選択肢があるということはおもしろいことだから、そういう意味では、こういうところで注意を喚起するというか、そういう提案をするのもいいと思うのですが、先ほどどなたからかご意見がありましたように、これだけですべてガバナンスがより民主化するというか、株主重視になってくるということに、すぐ一足飛びにいってしまうのは、ちょっと問題かなと思うのです。まだ議論を尽くさないといけないのではないか。あるいは、経験を積んでみないとわからない。決してアメリカ型が私はいいと思っていないものですから、特にそういうことを申し上げるわけであります。

〔 部会長 〕 どうもありがとうございました。

続きまして、どなたからでもどうぞ。

〔 C委員 〕 これを読んでやっとわかったのですが、ここの部会では、コーポレート・ガバナンスをイコール株主というふうに解釈しているようなので、それは違うと思いますので、ぜひ分けて、コーポレート・ガバナンスというのは統治形態でいろいろなものがある。その中で株主重視型もあれば、そうでないのもある。そのバランスをどう作るかということ。それが混在しているようなので、ぜひ直していただきたいと思います。

同時に、今、K委員がおっしゃられたように、これは非常にチョイスの問題なので、これだけに係わるのではない。

もう一方では、新しい産業を起こすためにもこういう年金基金があらわれていますから、それを両方併存しないと、大企業はどんどん株主重視でショートタームになっていって、新しい産業が生まれない。これも先ほど言ったとおりなので、ぜひいくつもの相互補完性を考えながら議論をしていただけたらと思います。

〔 G委員 〕 さっき申し上げましたように、年金問題1つとってみても、この制度を全面的に改革しなければいけないということが明らかなわけですけれども、その理念的なところ、その大局的なところをはっきりする必要があると思うのです。

例えば、では日本の将来にとってはどういう金融市場における資源配分メカニズムが望ましいのかとか、あるいは、例えば確定拠出と確定給付型の2つのシステムがあるのですけれども、ではこの2つのシステムは経済学的には、あるいは哲学的にはどういうふうに違うのかということをはっきりしておいた方がいいと思います。それをやってから、その具体的な作業に入るという順番がいいと思います。

この2つの制度がどういうふうに違うかというのを1点だけ言いますと、どういうふうに社会的なリスクを吸収して負担するのか。ある意味では、確定拠出の方は、同じ世代の中でリスク分散化効果をねらう。それから、確定給付の方は、ある意味では世代間のリスクシェアリングメカニズムが発揮できるという違いがあるのです。ですから、この観点1つからみても議論できると思うのです。

もう一つは、全体のトーンとしては、こういう意図はないかもしれませんけれども、ちょっと株価対策的な色彩があろうかと思うのです。これは逆に、年金システムの改革という問題は非常に重要な、息の長い、根本的な問題であって、あまり短期的な株価対策的な思考で議論されるべきではないという気がいたします。

それから、日本版401Kプランとかいう話が出ているのですけれども、私は、方向性としては、先ほどの選択肢の幅を増やすという観点からいっても、こういうものを取り入れた方がいいと思いますけれども、言ってみれば二者択一的なことではなくて、恐らく、具体的な話、現実的な話としては、こういうふうに改革しても現にいろいろな年金システムがあるのですから、確定給付型の方が大きな割合を占めるようになるでしょう。ですから、1つの選択肢としてこれを整備するという意味合いにおいては、非常に意味があると思うのです。

もう一つは、構成という話でいいますと、いきなり企業年金の話に入っていくわけですけれども、それよりも1つ前の段階としては、年金制度そのものに関するとらえ方、議論が必要ではないか。

それから、いつもの私の繰り返しになるのですけれども、年金市場を見て一番大きな役割を占めているのは公的部門の方です。ですから、私的部門の方だけをピックアップして、401Kの目玉商品を持ってきて大騒ぎするのもいいのですけれども、実は、これと並行して、では公的資金の部分をどういうふうにするのかという議論の方も、地味ですけれども、あるいはいろいろ反対する意見も出てくるだろうと思いますけれども、非常に重要です。

特に、企業年金、厚生年金の改革を考えた場合は、ご存じのように、企業厚生年金のところには、公的年金の部分も入っているわけで、公的システムと私的システムがそこで絡んでいるわけですから、これは切り離すということはなかなか難しいのではないかという気がするのです。 それから、非常に細かいところでちょっと恐縮ですけれども、例えば、401Kプランを論じるところでは、ではどういうふうに確定給付型と違うのかという対比があるのですけれども、資産運用のところでは、401Kプランの場合は従業員が決める。それから、確定給付の場合は企業が決めるというふうにおっしゃっているわけですけれども、これで非常にわかりやすいのですが、実は、実態は恐らくそれほど変わらないのではないかという気がするのです。従業員が本当に決めているのは、どの機関投資家が出しているファンドに投資するのかというレベルの話であって、実際の運用は相変わらずプロの世界で行われているということがあって、その点に関しては、言われているほど変わらないのではないかという気がするわけです。

いくつか、そういう印象がありまして、コメントさせていただきました。

〔 部会長 〕 事務局の方から追加説明がございます。

〔 事務局 〕 今、G委員からご指摘がありましたように、年金制度というのは公的年金の部分が非常に大きいわけですから、この部分についてどう考えるかというのは大変大きな問題だろうと思います。

実は、お手元に資料を参考としてお配りしておりますが、展望部会の方では、財政社会保障ワーキンググループというのがございまして、そこでは年金というものについてどういうふうに考えたらいいのかということで、特に世代間の公平という問題の観点、あるいは財政負担という問題、そういうことで議論を進めております。この間、展望部会に報告された骨子というか、それがお手元にあるものでございまして、ここでの議論は主として、厚生年金も含めまして公的年金というものをどのように構成するのが今後の我が国の経済状況の中でいいのか、そういう議論としてなされているわけであります。ただ、もちろん厚生年金そのものが企業年金的な性格を持つわけでありますが、その上に立つ、いわゆる三階建ての部分と言うべき企業年金ということについては、この中では議論されておりませんので、若干唐突に企業年金ということだけが今、議論をされているような感じがありますが、この辺も含めまして、現実に最終的に報告書に書くときは、その辺も配慮した形で、確かに選択肢の1つとしてこういうことはいろいろな意味で役に立つのではないかというようなことで、もう一回整理してみたらどうかと思う次第でございます。

〔 部会長 〕 私、ちょっと追加で申し上げますと、今、G委員から、株式市場にウェイトを置きすぎているのではないかというお話ですけれども、私の考えは、従来の年金は公的・企業年金ともに制度論ばかりで、かつて出ている本を全部読んでも、みんな制度論ばかりで、加入者が今後どうなっていくのだという運用についての話がほとんどなくて、我々の方はそれで運用の勉強会をずっとやってきているわけです。そういう意味では、A委員のおっしゃるように、ここは機関投資家の1つとしての年金基金という位置づけは非常に重要だと思います。同時に、投資信託の問題などにも触れる必要があるのではないかと私は考えているのです。

例えば、この数年来、90年代を見て、アメリカがミューチュアルファンドが95年にもう銀行預金より多くなってきた。日本はどんどん減って、株式投信は10兆円を割り込んできた。92年には45兆円あったわけです。そういうような実態はどういうことかということも含めて、やはり重要な問題としてやる必要があるのではないかとは考えております。

続きまして、どうぞ。

〔 D委員 〕 この制度がうまくいくかどうかの影響については、私もG委員と同じで、この影響はあまり大きくないとみております。それはなぜかといいますと、アメリカの金融ビッグバンが成功し、あるいは年金資金の活性化がうまくいった背景には別の要因がある。貯蓄不足であって、なおかつ非常に消費が活性化している。それと日本のマクロの基本的な条件が今は非常に違いますので、貯蓄過剰という、いわゆる消費が非常に低迷している、実需がないという状況をきちっと見据えた上でやらないと、資金ばかりがマーケットに流れていっても、実際にどの投資をやっていいかというときのバランスというものがちょっと見えない。悲観論を言ってしまって申しわけないです。

2番目に、日本の年金制度との関係で401Kプランというのを、どういう分野の人に適用したいのか。例えば、厚生年金しか持っていないような方々なのか、あるいは自営業で二階建てがない方々、それから専業主婦でこれから始めようかという方々をイメージしているのか、今本当にポータブル性が必要だと思っている人たちのニーズというものはどこかというところに、ちょっと疑問があります。

私のイメージだと、自営業で、転職なさって厚生年金から離れた方が、まずその二階建て部分をうまくつなげるというか、そういうイメージではないかと思いまして、そういう個人年金の定性適格というのですか、そういうものを本当に必要としている層のイメージをきちっと出していただくというのが1つ。

それから、今、日本にそれらしき個人年金みたいなものがあります、生保で売っているような。あの年金が今非常に問題です。つまり、生命保険と一緒になっているものですから、どこからどこまでが確定拠出型で、どこまでが保障といいますか、生命保険の部分かというのが非常にわかりにくい。途中で解約してしまうと、実際上積み立てた部分がよくわからないという話があって、ポータブルな年金というものの設計というのはどういうものなのかということについて、ちょっとイメージがわからないのです。今の生保が扱っている金融商品では恐らくないだろう。そうすると、どういう性格のものかというのをきちっとしなければいけないし、今売られている個人年金では、恐らくここに当てはめることは非常に難しいだろう。そこの金融商品としての曖昧さというのを、すっきりとさせていただきたい。

3番目に、先ほどI委員がちょっと触れた点なのですけれども、女性の労働者の話。これもポータビリティと関連があるとさっき議論がされていまして、I委員の方から心強い、女性も個の確立だという話なものですから、やはり年金も、専業主婦も含めて、個人個人が負担するのは当たり前の話で、ここだけが1人で2人分がカバーされているというのは、とんでもない制度です。これはきちっと、自分の年金は、少なくとも基礎年金に関しては個人が負担するということを徹底的にしなければ、消費税がいくらあっても足りない。少しでも働いて所得税を払い、そういうふうにしていくことによって、今は専業主婦は 1,200万人ですか、この 1,200万人の人が1人でも働くようになって所得税を納める、国民年金を納めるということ以外に、日本の経済の活性化はないと私はみていまして、消費の活性化もこれしかないと思います。その場合には、厚生年金というのを恐らくあてにする人がいないので、そういう人のために国民年金プラス・アルファの部分をポータブルでやったらどうですか、万が一の場合は夫の方からも少しくるけれども、自分の厚生年金もきちんと、というような個人できちっと最後まで自分の資産管理できる部分というのを作っておくというのは非常に重要なので、むしろ、女性の個の確立というのは徹底的に、さっきの骨子の方も含めて、きちっと書いていただきたい。

それと、「既婚女子パートタイマー労働者」という言葉、既婚で、女子でというのはちょっとモダンではないというか。

さっき言ったところに戻って申しわけないのですけれども、「ディスインセンティブに及ぼしている配偶者控除」と書いてありますが、配偶者控除だけではないので、ここの層の方々が、何かもっとすっと労働マーケットに入れるようなイメージを付けていただきたいと思います。

〔 部会長 〕 どうもありがとうございました。

いろいろご意見はあろうかと思いますけれども、今までのご意見を踏まえまして、それから特に経済審議会の中でも、先ほど事務局からお話がございました経済社会展望部会でもこの種の問題をやっておりますし、あるいは機関投資家という意味では大蔵省証取審、あるいは年金問題については厚生省・労働省を含めまして、政府部内でもいろいろ検討がなされておりますので、それらの成果も取り入れながら今後、さらに検討を続けていきたいと思っております。

それでは、時間の関係もございますので、第2の議題につきましてはここまでとさせていただきます。

次に、第3の議題であります「公的サービスの供給主体の移行方策について」、難しい表現になっておりますけれども、これについて事務局よりご説明を申し上げたいと思います。

〔 事務局 〕 それでは、資料4ー1と資料4ー2をご参考にしていただきながら、ご説明したいと思います。

先ほどのご議論にも多く関係しますので、若干この資料のとおりにご説明できるかどうかわかりませんが、時間もありませんので、手短にポイントだけ説明させていただきます。

官のスリム化というところで、公的なサービスの「官から民へ」、それから、官の中でも「国から地方へ」という原則が既に、土光臨調のときから打ち出されているわけですが、なかなか進まないという中で、先般の行政改革委員会の最終報告を見ましても、「行政関与の在り方に関する基準」では、1ページの下の方にも書いてありますように、「民間でできるものは民間に委ねる」ということで、行政の活動を必要最小限にする。その背景は、将来世代への負のストック軽減と、将来世帯が納税者としてサービスを選びうるという背景があろうと思います。もう一つは、行政のサービスというのもある程度できた社会の中で、より豊かな、品質の高い多様なニーズを求める、そういう国民からの要請に対して、それは市場化テストといいますか、そういう一般の市場原理を導入するサービスに移すべきだ、そういう背景があったと思いますが、そういうことで行政の活動を必要最小限にということと、「国民本位の効率的な行政」ということで、常に行政は効率性ということで監視をされている。国民が必要とする行政を最小の費用で行う。それから、国民に対するアカウンタビリティを果たす、という3つの基本原則の下に、さらに全般的な基準として、下に書いています4つの項目で位置づけをされております。

要は、これをいかに迅速に実現していくかという観点で、実は先般、PFIというイギリス版の民間活力の導入ということをご紹介いたしました。前回、いくつかご質問がありましたので、後で資料をざっとご説明する中でご質問にお答えしたいと思いますが、その中で私どもがまさに進めようとしている「官から民へ」という動きの中で、2ページ目の上の方ですが、バリュー・フォー・マネー(Value for Money) という考え方、これはまさしく行政改革の方向に沿った考え方でありますが、特に、PFIというものをよくみてみますと、民間に移転するリスクと、民間の収益機会を明らかにして、その結果、契約を結んだ内容に基づいて、あと行政は一切責任をとらない。書き方がちょっと極端ですが、そういうリスクの分担の明確化という原則が確立されていること。それから、これは英国の例ですが、議会直属の会計検査機関が設置されていて、問題がある場合には改善勧告を公表するという、チェック機能がその中に組み込まれていること。それから、公共部門であっても事業実施にかかるコストを明らかにし、効率性において民間との競争にさらされているという、常に緊張した事業実施環境にある、ということで参考になるのではないかと思ってご紹介したわけです。

資料4ー2の8ページをご覧いただきますと、「イギリスにおけるPFIの実施過程」ということで、フローで示しておりますが、この計画段階の最初の「目的の明確化」、これは9ページ以降にいろいろ説明が書いてございますのでご覧いただきたいと思いますが、費用対効果、そういう分析も含めて、それぞれの事業が果たして効果のある、一定のコストパフォーマンスのあるものであるかどうか。それから、それを市場で、特に民間活力を導入してやれるものかどうか。これについては様々なアドバイザーということで、法律家とか、財務のアドバイザーとか、技術のアドバイザーとか、外部のアドバイザーと一緒にその市場調査を実施して、民間がどういう条件であれば公共サービスに興味を示すかというテストをして、その結果、興味を示すような条件をある程度考慮した上で、ではこの事業をどういうふうにデザインして、PFIでやっていこうかという方針を決めるわけです。

公報についても、EC公報への告示というものをしてから、入札者を募集して、さらに、それをふるいにかけてやるわけですけれども、その中で、リスクの分担をどのようにするか。例えば、11ページに、DBFO道路ということで、これは道路を民間主体でつくって、交通量に応じて官側が毎年支払うというシステムの道路です。その真ん中の辺に書いてありますように、企業体が負うリスク、それからハイウェイ・エージェンシーという発注者側、官側が負うリスク、それから協議によって契約で規定されるものと、はっきりこういうスタートラインから議論をし始めて、もちろん個々のサービスによって細かな部分があると思いますが、そういうルール化がされている。 ただ、イギリスについて言えば、11ページの下に書いてありますように、道路に関する案件については、協議による契約で規定されているものについては、いずれも企業側が負担するという、ある意味では、企業がリスクをより多く取るというような実態になっているということだけ、ちょっと我々自身も理解しておかないといけないかと思います。

もう一つは、このDBFO道路というのは、13ページの上の方に書いてございますように、イギリスの場合は、一部の橋梁とかトンネルを除いて、基本的に道路は無料である状態の中で、いかに有料道路化するかという前処理としてしまして、このようなシステムを導入しているのだという話もございます。日本の場合とちょっと違う状況下での取組みということでご理解いただきたいと思います。

8ページに戻りますが、こういうプロセスを踏むのには、期間が必要だということであります。8ページの右側に「入札にかかる期間」というので書いてございますが、この道路に関する事例でいきますと、約17ヶ月、公報掲載からかかったという状況がございます。

こうしたものを踏まえながら、資料4ー1の2ページに戻っていただきまして、枠囲みの中に書いてございます提言めいたものですが、これは先ほどの全体の議論との関係で若干構成を変えないといけない部分があるかと思いますが、まず1つは、「行政による説明責任の遂行と透明性の確保・定期的見直し」でございます。既に、公共事業といいますか、公共投資に関する部分については、費用対効果分析、あるいは時のアセスメント等で言われるような一定期間後の見直しということで、かなり議論は進められておりますけれども、大事なことは、それ以外の公共サービスについてもこのような考えで検討を進め始めるべきではないかということでございます。

ただ、そうしたときに、官の場合はインセンティブが働かない可能性があるということで、(2)に書いてありますような、例えば、削減できている予算に対して一定の裁量を付与する。当然必要なものなのですけれども、次の年に考えていたようなものを、では余った予算で先に手をつけてもいいというようなイメージのことで言っていますが、そういう方式が考えられるのではないか。 それから、課題ということで(3)にございますように、「情報開示と公開による競争の確保」。これは、民間企業にとってのビジネス機会のチャンスでありますが、一方で、先ほどもご意見がございましたように、こういうビジネスについては企業の役割が変わるという意味合いを持つものかと思います。

それから、「官から民へ」の移行に対応した入札制度の整備ということで、現在、価格のみが落札基準になっているわけですけれども、それ以外のいろいろなリスクをとる程度とか、それから長期間の契約を認めることとか、発注者と入札者間の交渉を認めること、というようなことが日本の制度の中ではありませんので、これをどのように組み込んでいくか。かなり社会全体に係わる大きな問題になるかもしれません。

それから、実際の一番大きな問題は、事業主体が倒産するという想定があります。これが起きた場合の官のコントロールのあり方と民間の責任の明確化ということが大事であるということでございます。

4ページ目でございますが、では、そうしたときに社会資本という非常に特定の分野ですが、そこにおける民間活力の一層の活用。「一層の活用」と書いてございますのは、資料4ー2の22ページ目以降、日本においても当然資金が少ない時代から民間活力といいますか、民間の資金、民間の技術力をうまく使いながら、いろいろな分野でいろいろな取組みがなされてきています。そうしたものを背景にして、ベースにして考えていく必要があるだろうということ。

それから、20ページ以降は、昨年11月に緊急経済対策が示されておりまして、その中でもPFIとかBOTという概念を一応紹介されております。ただ、民間の資金を使えばPFIかというような、ちょっと違う言い方をされているかなという心配はございますが、いずれにしても、取り組む方向というのは同じでございまして、資料4ー2の22ページ以降に書いてございますように、既に幾つかの大プロジェクト、それから、NTTの株式売却の収益を使いましたNTTのA事業というようなことで進んでおります。道路については、一般自動車道という観光道路的なもので、既に民間が参入したいろいろな事業をやっております。

そういうものを考えますと、日本でさらに考えていくのに適しているのはBOTタイプというものかなということで、資料4-1の4ページの枠囲いの中に書いてありますような、「導入可能な社会資本の分野」は、交通関係の社会資本、廃棄物発電等のエネルギー/リサイクル、一般廃棄物処理、庁舎等が挙げられることが多いわけですけれども、一方、それぞれの住民なり国民の方はどのように考えているかというと、これも先般の資料でお示ししたと思いますけれども、民間活力を活用してでも整備してほしいという施設が、福利厚生から始まりまして、はっきり申し上げますと、かなり身近な施設というのを要求しているわけです。これはある意味で、三セクで既にいろいろ事業をしていて、それ自身が赤字経営ということで問題になっているものもかなり含まれているということでございますが、これは都市規模別でみますと、大都市は福利厚生が多いですけれども、地方都市は福利厚生ももちろんのことですが、道路のニーズは高いというようなこともあって、かなり地域差がある。4月に「国から地方へ」というところで若干、地域のニーズというのを住民がどのように理解して組み立てていくかというのをご提示しようと思いますが、そういう個別具体的な地域でこういうものを考えていくことの必要性を掲げております。

それから、「大都市圏と地方圏」ということで、BOT方式では、プロジェクト・ファイナンスという仕方が考えられますけれども、大都市の場合の方が明らかに需要が高いという意味で、事業規模が大きいプロジェクトも成立しうるわけですけれども、地方都市においては住民の日常生活に密接に関連した施設、先ほどご紹介した施設について、コミュニティーボンドというのを使ったやり方があるのではないか。これは地方の民間企業のビジネスの機会のチャンスというのもありますし、あるいはNPOというのもちょっと関係するような話になるのかなということでございます。 それから、「導入に当たっての課題」として、5ページ目の(3)に書いてございますようなものがありますけれども、いずれにしても、社会資本の種類、地域など、個別にいろいろ考えていかないといけないと考えます。

それから、(4)でございますが、情報開示と説明責任を明確にする。

最後に、「第三セクターの問題点と対応策」ということですが、「官から民へ」の流れの中で、実は、土光臨調以来、第三セクターというのをかなり多く設立して、民に近いサービスをということで始めたわけですが、それ自体いろいろ、以前からご紹介したような内在する課題を抱えていて赤字経営になっているものが多い。これについて、既存の三セクについては、少なくとも、現時点での再評価といいますか、本当に事業目的が達せられているか、そういうものを住民に対してちゃんと説明をする。経営の見通しの立たないものについては、通常の破産手続により清算させるべきである。三セクでいろいろ問題になっていますのは、最後の尻拭いを公共サイドでする、せざるを得ないという状況でありますけれども、もう一度設立の当時から戻ってちゃんと議論をして、破産が必要なものは破産をする。また継続するものについても、公共の利益と民間の営利性との調整を図る経営形態としての第三セクター、これもまた先ほどの企業経営と同じように、一般で言われている意味合いと違う日本版の第三セクターと言われておりますが、それがふさわしいかどうか十分に検討する。

それから、経営情報の開示と説明責任。

今後の第三セクターの設立に当たっては、先ほどのPFIのお話と同じだと思いますけれども、官民の役割、リスク分担、それからどの時点でどういうふうに経営を評価するか、何かあったときに地方公共団体にどんな支援をするか、というのをあらかじめ明確化して、しかも、ここには書いてございませんけれども、十分な情報開示を行って、住民にも議論をしていただく。本当に必要なものかどうかを住民自身で判断する。最後は、住民もそれは必要であれば支援せざるを得ない、支援をする、そういう社会をつくっていくべきだということで、このようにまとめました。 以上でございます。

〔 部会長 〕 どうもありがとうございました。

それでは、ただいま説明がありました、この表題も考えてもらいたいと思います。「公的なサービスの供給主体の移行方策について」は、ちょっとどうかと思います。これはまた、すぐわかるように考えていただきたいと思います。

ただいまの内容につきまして、何かご意見がありましたらどうぞお願いいたします。

〔 K委員 〕 多分、十分おわかりの上でいろいろご説明いただいたのだと思うので、こういう質問をするのは失礼かもしれないですけれども、例えば、道路についてBOTを利用します。そうすると、いいとこ取りだけになってしまうわけです。

今、日本の高速道路料金は確かに高いし、地方の道路を整備するのに大変お金がかかるのでいろいろな議論があるわけです。それで相対的には、お互いにみんなで負担しているという恰好ですけれども、もしBOTで一番いいところだけ、例えば、第三京浜などはそうだったわけですけれども、ああいうところだけをやってしまうと、あと過疎地域の道路は猛烈に高いものになります。税金で負担しなければならないわけだから、そうするとどっちが得かよくわからないということが起こりうるので、どうなのでしょうか。

オーストラリアのシドニーでハーバーブリッジをBOTでやっていますね。先進国で、特定の区間についてはわりあいと成功しているので、ハーバーブリッジも成功すると思うのです。 だから、かなりケース・バイ・ケースなのかなという気がするのです。一般論として、そこまでぶち上げるほどの話なのかどうかという気がしました。

〔 H委員 〕 PFIの話、今日のご提案、私も大きな流れは賛成といいますか、この流れでまとめていただけばいいと思うのですが、さっきC委員もおっしゃいしましたけれども、また、今の事務局のお話にもありましたけれども、PFIというのは、要するに民間に行政を任せるということについては、例えば、社会資本とか、ある特定のサービスについてご議論しているわけですが、そのもとになっているのは行政のあり方とか、まさにこの役割部会のテーマなのですが、どこまで民間的な手法とか資金を入れてくるか、そういう根幹に係わってきてしまうのです。ですから、その辺の背景と、このPFIについての提案というのが遊離しないような形で、これはさっき事務局もおっしゃったので、まさにそれはおわかりだと思うのですが、それを強調したいと思います。 その上で、私は前にも申し上げましたけれども、PFIの基本というのは、マーケットテストとバリュー・フォー・マネー、この2つの考え方なのです。マーケットテストについてはもう言うまでもないのですが、バリュー・フォー・マネーというのをどういうふうに日本の場合に担保するか、なかなか難しいと思うのです。

イギリスの場合でも3つタイプがあって、今のBOT型とか、ジョイントベンチャー型とか、もう一つはアウトソーシング型といいますか、民間がサービスを供給して、それを行政が買う、そういう3つのやり方があるのです。先日、新聞で、神奈川県が小田原第三庁舎と県立美術館の新館をPFIでやるという報道がありました。具体的な内容というのは、建物について民間がつくって、それを借り受けるという方法ですが、これは行政のサービスの一部を民間が供給するという、サービス供給提供にあたるのですが、この場合、問題点にも書いてありますけれども、要するに債務の先送りみたいな形になって、民間が資金調達をして、本当は公債で出るところを、民間の資金調達になってしまう、そういうことになってしまうので非常に問題だというのですが、さっきのバリュー・フォー・マネーという考え方をもっと徹底すると、これも、その方が得なのかもしれないということが出てきます。

例えば、民間が提供するサービスの内容が、公的資金を公債によって調達してサービスをなす場合よりも、もっといい質で、しかも安いものができるかもしれないとか、そういうこともありますので、バリュー・フォー・マネーという考え方をいかに取り入れていくかというのは非常に大きなポイントです。

確かにそれは難しいのです。それで、ここでのまとめは、サービス提供タイプはあまりよくないですということになっています。

それから、時間がないので早口で言いますけれども、今の問題提起で、いいとこ取りで、いわゆるクリームスキミングの問題というのはあると思います。これをやっていくと、例えば、高速道路のプール制をどうするかとか、そういう議論までいってしまうと思うのですが、その問題と逆の面から見ると、民間の側から何ができるという提案があったときに、それはどういう問題が起きるのかということが明確になると、少しその辺の仕分けができてくるのではないかと思います。 さっきの資料にありましたように、22ページに、一般自動車道というのはもともと制度があって、昔からこうやってきたところもあるのです。ですから、逆に民間側から、何ができるかという提案によって、それの影響を測ったらいいのではないかというふうに思います。

それから、ただ、道路の場合には、最終的に日本の場合は収用権の問題があるのでなかなか難しいかと思います。イギリスの場合は、一応、民間に代わって公共が収用して、民間がやるということは可能ですけれども、それが日本でできるのかどうかはよくわかりませんので、そういう問題があるということだけ指摘しておきます。

以上でございます。

〔 部会長 〕 どうもありがとうございました。

ほかにいかがでございましょうか。

それでは、まだいろいろご意見はあろうかと思いますけれども、時間の関係もございますので、第3の議題につきましては、ここまでとさせていただきまして、なおご意見がございましたら、事務局の方へぜひお寄せいただきたいと思います。

最後に、今後の審議スケジュールについて事務局よりご説明をお願いします。

〔 事務局 〕 お手元に資料5といたしまして「今後の審議スケジュール(案)」いうのをお配りしております。第8回は、公的金融が関与すべき分野、民民規制ワーキンググループ報告、雇用労働ワーキンググループ報告。第9回は、報告書スケルトンの提示、NPOワーキンググループ報告、住民参画を含めた意思決定方式、起業と退出がしやすいシステムの構築、というテーマでご審議いただきまして、5月、6月と掲げさせていただいております。

次回第8回は、3月24日火曜日の14時から、繰り返しますが、公的金融の問題、民民規制・雇用労働両ワーキンググループの報告ということで開催させていただく予定でございますので、どうぞよろしくお願いいたします。

〔 部会長 〕 どうもありがとうございました。

それでは、第7回の経済主体役割部会の審議は以上にいたしたいと思います。本日は長時間のご審議、誠にどうもありがとうございました。また次回もよろしくお願いいたします。

--以上--