第7回経済審議会経済主体役割部会議事概要
1.日時
平成10年2月19日(木)14:00~16:00
2.場所
共用第一特別会議室(1212号室)(第4合同庁舎12階)
3.出席者
(部会)
水口弘一部会長、金井務部会長代理
河村幹夫、ポール・シェアード、末松謙一、竹内佐和子、得本輝人、那須翔、西村清彦、グレン・S・フクシマ、星野進保、星野昌子、諸井虔、山内弘隆、米倉誠一郎、和田正江の各委員
(事務局)
糠谷事務次官、林官房長、藤島日銀政策委員、中名生総合計画局長、高橋審議官、高橋企画課長、大西計画課長、涌野計画官、塚原計画官、大森計画官、安井計画官、田坂計画官、赤井計画官、小島計画官、道上計画企画官、福島推進室長
4.議題
- (1)経済主体役割部会のとりまとめの方向性について
- (2)年金基金の活性化を通じた市場機能の活性化について
- (3)公的なサービスの供給主体の移行について
5.審議内容
(1)経済主体役割部会のとりまとめの方向性について
○事務局より資料2(経済主体役割部会のとりまとめの方向性(案))に基づき説明
○主な意見は次のとおり。
- 情報開示の他にも、ルール監視、紛争調停制度等も重要。グローバル化が進展すると紛争が増える。現行制度の下では、訴訟が起こしにくい、コストと時間がかかるなどの問題点があり、結局は行政に依存してしまうことになる。
- NPOについては、行政は過剰に関与すべきでない。なぜNPOの機能がシステムの中に取り入れられないのかを考える必要がある。
- 年金基金については、話題にはなっているが、なぜ年金だけを限定的にとりあげているのか。投信など他の機関投資家もあるのではないか。
- 全体的にはかなり各論的なものも多い。前提として、「結果の平等から機会の平等へ」という思想が必要だと思う。流行りのトピックを並べるだけでは足りないのではないか。
- 市場原理へ移行すべきという考え方には賛成。しかし、市場は万能か、経済の活性化を図るために、どこまで市場原理を拡大していくのかを考える必要がある。個人的には、今の日本と米国の中間的な形態がいいと考えている。どの国も、自由と平等のバランスをどうとるかということで苦心している。
- NPOについては、自由化が進み、敗者や弱者が出てくると、NPOが活躍する必然性が出てくるのではないかというような脈絡のある取り上げ方をするべき。
- コーポレートガバナンスについては、ガバナンスのあり方としてどういうものがあるかということを検討すべき。どういう企業形態をとると、どういうガバナンスになるのか、というシステムの話をすべき。必ずしも米国企業のようなガバナンス形態がいいとは思わない。
- 起業や退出がしやすいシステム構築のために持株会社、分社化等が必要とあるが、これらの形態では意思決定が遅過ぎるので、あまり有効でない。いかにIPO(新規株式公開)をさせるのかという問題の方がより重要だ。
- NPOについては、国や都市の分散の問題にかかわってくる。現在のように一極集中の状態では発展しない。その点を考慮すべき。
- 企業が日本社会の中でどういう役割を果たすのかは重要であると思うが、資料では全て「市場」という言葉を使って議論しすぎているように見受けられる。
- NPOについて方向性そのものはいいが、それらを具体的に実現するための方策が重要。
- 現行システムの問題点としては、法律等に書いてあることが実行できなかったという点がある。書いてあることが実行されることを担保するようなシステムの構築が必要。
- 資料を読むと、今まで日本では市場メカニズムが働いていなかったかのようなトーンになっており、悲観論的見地が強い。より現実的に、現行システムの長所や短所を選別して、検討すべき。
- 構成が抽象論と具体論が混交しているので、組織だてるべき。例えば、流動性、透明性、自己責任、多様な選択肢、セーフティーネット整備といったキーワードを使って全体を組み立て、そうした一般論から年金、コーポレートガバナンス、官民分担、公的金融等の各論に入っていくアプローチにしたらどうか。
- 表題と中身との関係で、いくつか論理的に疑問な点がある。例えば、PFIや「官のスリム化」と「国民負担と受益の関係の明確化」とは必ずしも結びつかないのではないか。
- 市場機能を活かしていくためには、新しいルールが必要。そのためには独禁政策の強化等を打ち出すべき。
- NPOは自発的市民参加であり、行政による管理が懸念される。
- 配偶者控除廃止とあるが、その前提としては女性の「個としての確立」があり、専業主婦が働くようになる方策を幅広く検討する必要がある。
- 資料にあるように、「目標とする経済社会」が「ROLE-PLAYABLESOCIETY」かどうかは議論の余地がある。また、年金基金については、401(k)プラン、すなわち確定拠出型が、確定給付型に比べて優れているのかについても議論がある。
(2)年金基金の活性化を通じた市場機能の活性化について
〇事務局より資料3(年金基金の活性化を通じた市場機能の活性化(論点整理))資料3-2(年金基金の活性化を通じた市場機能の活性化(説明資料))に基づき説明
○主な意見は次のとおり。
- 確定拠出型の年金は受給者にとっては良いかもしれないが、年金基金がコーポレート・ガバナンスに有効かどうかの議論はいろいろあり、まだ決着をしていない。日本の場合は、まだその基盤がないのではないかと思う。
- 確定拠出型年金の導入により、選択肢が増えることは良いことであるが、これだけで、コーポレート・ガバナンスの問題がよくなるわけではない。
- コーポレート・ガバナンスは、株主によるガバナンスとイコールではない。従業員によるガバナンス等コーポレート・ガバナンスにはいろいろな形態がある。また、年金資金の問題は、新しい産業へ資金が流れるかどうかという視点からの検討が必要で、その辺の相互補完性を考慮して、議論するべきである。
- 年金制度改革は必要であるが、まず、拠出型と給付型の違い、例えば、社会的なリスク負担のあり方を明らかにしてから次に進むべきである。
- 今回のペーパーの年金制度改革の取り上げ方は株価対策的な側面が強いのではないか。
- 短期的な株価対策だけで年金改革を進めるのは危険である。確定拠出型年金の導入は選択肢を拡げるという意味では良いが、その場合でも日本では確定給付型は大きな割合を占めるであろう。
- そもそも年金制度そのものの議論、特に公的年金の部分をどうするか、厚生年金基金にも一部公的年金が含まれているわけで、その部分の議論が重要である。
(これに対して事務局より、財政・社会保障ワーキング・グループで公的年金についての議論を進めているので、最終的な報告書ではこれらを合わせてまとめたい旨の説明。)
(部会長より今までの年金についての議論は、制度面ばかりで、運用面についての議論がほとんどなく、そういう意味では意味がある旨。さらに機関投資家や投資信託のあり方についても触れるべきではないかという旨の発言があった。)
(3)公的なサービスの供給主体の移行について
○事務局より資料4-1(公的なサービスの供給主体の移行についての論点整理(案))資料4-2(公的なサービスの供給主体の移行について(説明資料))に基づき説明
○主な意見は次のとおり。
- BOT方式で道路事業を行うことは、いいとこどりにつながり、日本の高速道路のようなプール料金制のもとでは、収益の高い区間がプール制から外れることで、過疎地域の道路料金が高いものになる。
- BOTを適用する事業はケース・バイ・ケースであり、一般論として整理するのは問題がある。
- PFIの基本はマーケット・テストとVFM(バリュー・フォー・マネー:支出に対する最大の価値実現)である。「公共へのサービスタイプ」については債務の先送りである等の問題点はあるが、VFMから見て評価をすれば、そちらの方がメリット(コスト安)のあることもあるので検討する必要がある。
- PFIについては、具体的に民間からの提案があれば、問題点を整理できるし、適用範囲についても検討できるのではないか。
- PFIを適用する場合民間事業に対する土地収用制度についても検討する必要がある。
(速報のため、事後修正の可能性あり。)
連絡先
経済企画庁総合計画局物価班
03-3581-1538