「近年の規制改革の経済効果―利用者メリットの分析」報告書のポイント
平成12年1月
経済企画庁調査局経済効果分析室
本報告書は、国内及び国際電気通信、国内航空、車検、電力、石油製品(ガソリン)、ガス、株式売買委託手数料、の8つの分野において実施された規制改革が、料金・価格の低下を通じて利用者にもたらしたメリット(利益)を推計したものである。
1.規制改革のメリット
- 規制改革には、競争を促進し、価格・料金を引下げる効果がある。価格・料金の低下は、その財・サービスの購入を増加させる。本報告書では、こうした価格低下がもたらす利用者への効果(メリット)を数量的に計測した。
- このメリットは、「消費者余剰」の増加を指標として表すことができる。「消費者余剰」とは、「消費者・利用者がその財・サービスを購入するに際して、実は支払ってもよいと考える最大の金額から実際に支払った金額を差し引いた金額」である。これが、その取引による消費者・利用者が得られた満足度となる。規制改革によって、価格・料金が低下し、購入が増えれば、「消費者余剰」は増加する(別添図A)。
- 「消費者余剰」は、政策評価手法として英米で実施されている「規制インパクト分析」においても、「規制の費用」を測るため用いられている。
2.大幅な利用者メリット
- 対象の8分野で合計8兆6千億円程度(98年度までの累計)の消費者余剰が創出された(別添表B)を参照)。98年度の時点において、利用者は、規制改革がなかった場合よりも、この金額分だけ大きな消費者余剰を享受している。この金額は、98年度国民所得の2.3%に当たる。規制改革の効果で、利用者に対しては、国民所得が2.3%上昇したのと同様の満足度の上昇があった、という解釈ができる。
- 対象分野の中では、国内電気通信、電力、石油製品の順でメリットが大きい。これら分野は、広く国民に利用される財・サービスを供給するものであるため、規制改革のメリットは、広く国民に浸透しているということができる。
3.98年度の効果
- 98年度において、対象8分野の消費者余剰は、規制改革によって、前年度と比較して、1兆9千億円程度上昇した。この間、名目国民所得は13兆円程度減少したが、この消費者余剰増加分は、国民所得減少幅の15%に当たる。
- これは、98年度において、国民所得の減少による利用者の満足度の目減りを、規制改革による価格・料金の低下で15%程度下支えしたものと考えることができる。
- 98年度においても、国内及び国際電気通信、電力、石油製品などの実質生産数量は増加した。
4.供給側の対応
- 競争激化による価格低下は、供給側において生産性向上とコスト低下への動きを促進した。
- それとともに、いくつかの分野では、中長期的に技術の進歩が促進されたという実証例がある。