第五回個人消費動向把握手法改善のための研究会議事要旨

1.日時:

平成12年7月14日(金)18:00~20:00

2.場所:

経済企画庁特別会議室(436会議室)

3.出席者:

  (研究会)

竹内啓座長、イェスパー・コール委員、池本美香委員、井出満委員、中村洋一委員、早川英男委員、舟岡史雄委員、牧厚志委員、水谷研治委員、美添泰人委員

  (事務局)

小峰調査局長、中城調査局審議官、大守内国調査第一課長、妹尾景気統計調査課長、浜田国民経済計算部長、嶋田国民経済計算部企画調査課長、丸山国民経済計算部国民支出課長

岡本総務庁消費統計課長、會田総務庁管理企画室長

4.主要議題:

  1. (1)5万円以上の購入について補完調査した場合の効果について
  2. (2)中間報告の構成案及び提言案について

5.議事内容:

以下のとおり。

(1)5万円以上の購入について補完調査した場合の効果について

  ○総務庁消費統計課長より説明。概要以下のとおり。

  • 5万円以上の高額支出を家計消費から排除したとき、標準誤差率はトリム平均を取ったときと同様な程度低減する。
  • ここで排除した5万円以上の購入部分を別の補完的な大規模サンプル調査で補うとすると、3万サンプルでも、標準誤差率は大きく減少する。
  • 消費支出のブレを図る目安として、補完調査で補った場合の尖度を推計してみると、約5万サンプルとると、尖度が大きく減少し、ブレを抑える効果が大きいとみられる。

(2)中間報告の構成案及び提言案について

  ○中間報告の構成案及び提言案について、経済企画庁内国調査第一課長より説明。説明の概要は以下のとおり。

  • 中間報告については、研究会設置の経緯、中間報告としての位置付け等を記した「はじめに」、審議概要を記した「第1章」、具体的な三つの提言を記した「第2章」という構成にしたいと考えている。三つの提言の内容としては、以下のように考えている。
    • 第一に、消費全体の動向把握及びQE推計の精度向上に資するための大サンプル調査の実施に向け検討を行うこと。この中で高額商品等への支出と所得・支出総額を簡略に把握 する。
    • 第二に、供給側の統計を整備活用してゆくこと、QEにおける消費の推計に際して高額消費に関する供給側統計の活用を拡充していくことが望ましいこと。
    • 第三に、既存の消費統計調査のデータでも、トリム平均、幾何平均は、より安定しているので、その活用法を検討するべきであること。

(3)以下、以上の報告を踏まえた上での自由討議。概要以下のとおり。

  • 家計調査を簡略化しても、その正確性が確保できないのではないか。
  • 大規模サンプル調査で、収入・支出総額調査を正確に実施するのは困難ではないか。
  • 新調査については課題があることは事実であるが、今回のOECDのエコノミックアウトルックやIMFのコンサルテーションにおいても、日本の統計は強い疑問にさらされているなど、日本の統計への国際的な批判が高まっており、無為にするというわけにはいかないということを十分に認識するべきである。
  • 統計については、ブレを所与として認識し、そのうえで、その利用法を工夫することを考えることも必要ではないか。
  • 家計調査の目的はマクロデータの提供というよりは消費の構造変化を捉えるための側面が強く、家計調査への数々の批判はこの点での誤解に基づいたものが多い。
  • 日本においては、消費は景気の変動に先行する性質は小さいが、景気変動の結果として生じた消費の変動を認知することが重要であり、家計調査とは異なる手法になるとしても、マクロの家計消費を捉える努力をするべきである。
  • 統計の使用法の誤りを統計そのものの誤りと混同するべきではない。統計は必要最小限の基本的なものが正確に作成されていれば足り、あとは利用者が推計をはじめ、使用法を工夫するべきであろう。
  • IMF、OECDの批判は、加工統計の作成手法について批判したものであり、日本の一次統計そのものを批判したものではないのではないか。一次統計の充実については日本は世界的にもトップクラスである。
  • 加工統計は推計にもっとモデルを利用すべきではないか。
  • モデルでの推計では97年末当時のように消費が大きく冷え込んだ状況を早期に把握することは困難で、政策判断の誤りをもたらしかねない。
  • 頻度が少ない高額支出調査のみではなく、総額収入・支出も調査をしないと新調査の有効性は薄れてしまうのではないか。総額の把握には様々な工夫はいるものの、口座記録等を利用することにより、調査客体自身が総収入、総支出を把握することは比較的容易なように思われる。
  • 家計調査より簡略な方法で総額のデータが円滑に調査できるか、あるいは正確に把握できるか疑問であり、調査したとしても、推計の参考にするような補助的データにはなるかもしれないが、QE推計に利用できるような信頼性の高いものはできないのではないか。
  • いずれにせよ、本調査の前に予備調査を十分行い、綿密に試行を繰り返しておく必要がある。
  • 現在のように統計への国内外への批判の高まり、各方面の関心も高まっている状況は、新しい調査を迅速に立ち上げる有意義なチャンスとして捕らえる必要がある。
  • 新調査を行うのであれば、多額の費用をかけて行う調査の有用性や意義を国民に明らかにしておくべきであろう。

―以上―

[問い合わせ先]経済企画庁調査局内国調査第一課  指標班

TEL  03-3581-9517