第二回個人消費動向把握手法改善のための研究会議事要旨
1.日時:
平成12年5月9日(火)18:30~20:30
2.場所:
経済企画庁官房特別会議室(729会議室)
3.出席者
(研究会)
竹内啓座長、新居玄武委員、イェスパー・コール委員、池本美香委員、中村洋一委員、早川英男委員、牧厚志委員、水谷研治委員、美添泰人委員
(事務局)
小峰調査局長、中城調査局審議官、大守内国調査第一課長、妹尾景気統計調査課長、浜田国民経済計算部長、嶋田企画調査課長、丸山国民支出課長、岡本総務庁消費統計課長、會田総務庁管理企画室長
4.主要議題:
(1)ユーザーとして消費統計に求める改善要望点
(2)景気判断やQE作成の観点からみた必要項目
5.議事内容:
以下の通り
(1)ユーザーとして消費統計に求める改善要望点
1)A委員より説明
- 昨年中の景気の動きに関しては、需要面、供給面、所得面の指標の乖離が指摘されているが、マクロ経済の動向把握の上では、個人消費の統計の改善はきわめて重要な課題である。
- 供給サイドの販売統計において、消費の変化をマクロ的に把握するには、新興業態の機動的把握という問題が残る。
- 需要側統計である家計調査については①サンプルの入れ換えによる推定値の変動の問題、②月々の調査結果の変動が大きすぎるという問題はある。
- マクロ的に個人消費を把握するための現実的な対処方針としては消費・所得水準に関する簡易な調査を大規模に行うことではないか。
- QEについては計数の振れが大きいという問題点があり、推計方法や季節調整法の改良、詳細な推計方法の公開が望ましい。
2)B委員よりの説明
- マーケット参加者にとって月次のデータは必要。マーケットの期待からのブレという意味では家計調査も他の統計とそれほど変わらない。
- マーケットユーザーにとって現在最も関心のあるのは、所得サイド統計であり、家計調査とSNA統計の乖離は大きな関心事である。
- 季節調整手法についてはX-12ARIMAで各統計とも統一するべき。
3)C委員からの説明
- 消費は本来安定的に推移するものであり、今の統計が大きな変動を示しているということは統計の方に何らかの問題があると思われる。
- 統計の正確性やコスト面の問題もあり、家計調査を今以上に改善するのには限界がある。
- 季節調整法を含め、ユーザー側で既存統計の利用方法の改善を考えるべきではないか。
(2)景気判断やQE作成の観点からみた必要項目
1)大守経済企画庁内国調査第一課長より景気判断における家計調査の利用系列について説明。
- 景気判断においては、総消費支出、実収入、可処分所得、消費性向等の系列を重視しているが、必要に応じて費目別内訳も参照する。
- 実収入や消費支出の振れは大きいが、消費性向の振れは比較的小さいのかどうかについて検証が必要。
2)浜田経済企画庁国民経済部長よりQE民間最終消費支出の推計に必要な消費統計の情報について説明
- QEの消費支出については、国連より勧告された93SNA体系への移行に伴い、93SNAでの分類に準拠した86目的別分類ごとに推計する予定であり、それを前提にすると、家計調査の品目別の数字が必要となる項目もある。
- 単身世帯、農家世帯、こづかい調査等についても同等の分類・品目ごとの数字が必要。
- 振れの大きい項目については、補完的な調査を行なうことも、QEの精度の向上に有効と考える。
- QEの消費支出の推計方法は、20年前に公表している。
(3)自由討議
大要、以下のような議論が行われた。
- 季節調整法については、X12ARIMAの中のX11を用い、曜日調整をするのがよいのではないか。
- 家計調査のサンプルは日本の平均的世帯からずれている可能性がある。
- 消費の構造変化を把握することは必要だが、そのために品目ごと、四半期ベースの数字が必要か。
- 単純な金銭の出入りだけの系列では加工等施して使用することが困難であり、一定の区分を持った調査は必要である。
- 調査事項の簡素化により、調査の正確性が損なわれたり、むしろ調査の実施が困難になる恐れもある。
- 家計調査のような詳細な統計は月、四半期ベースで取る必要は必ずしもないのではないか。
- QEの推計のために、家計調査のような詳細なデータを用いることが適切なのかという検討も必要。
- 統計コストの問題については、景気判断の結果をもとに数兆円の補正予算を組む可能性があることをかんがえれば、ある程度コストがかかることもやむを得ない。
- 統計調査に必要なコストは、金銭面より、人的コストの問題の方が大きい。
- 国の統計と個人のプライバシーとの関係を十分に考慮すべき。
- 家計消費関連の統計については、個人ごとに調査するイギリスの方式(所帯の構成員ごとに調査する方式)を、採用するべきとの意見もあるが、家族規模の大きいサンプルの脱落が増加する傾向がある。
- 販売側の統計は、新興分野がカバーされておらず、マクロ的な消費動向把握のための活用には限界がある。
- 家計調査のような詳細な調査の実施においては、サンプルや調査回答に強いバイアスがかかる可能性を否定できない。それらをいかに検証しているかという情報を開示するべき。
- 当研究会の目的はマクロの消費をどのように迅速かつ正確につかむかということであり、家計調査はこの観点からは限界に来ている。新規調査等による家計調査以外のデータを家計調査と照らし合わせてみる等の工夫が必要。
- 小売統計については、最終消費財なのか中間財なのかとの識別は出来ず、売られた財がどのセクターに配分されたかということまでわからない。
- 資金循環表、SNAや産業連関表等の高度に推計して作成しているような統計については、どのようなやり方を用いても完全に推計するというのは困難である。したがって詳細な推計方法等を公開して、広く議論を募ることにより、より良いものにして行く必要がある。
- 家計収入を1カ月単位で厳密に捉えることは不可能だが、景気動向に必要なことは、支出する主体の主観的な収入であるはずだから、過度に厳密に調査する必要性は小さい。
- 時系列についても、品目についても、細分化することにより、誤差が拡大するという傾向があることは否めない。現行家計調査における月毎の品目データの動きもそのような面があるのではないか。
- 細分化しても、それによる誤差拡大を避ける工夫の余地はいくらでもある。
―以上―
〔問い合わせ先〕経済企画庁調査局内国調査第一課 指標班
TEL 03-3581-9517