第4回経済審議会総括部会議事概要

1.日時:

平成12年11月28日(火)14:00~15:35

2.場所:

経済企画庁特別会議室(436号室)

3.出席者(敬称略):

 (委員)

香西泰部会長、荒木襄、角道謙一、嶌信彦、長岡實、畠山襄、原早苗、グレン・フクシマ、星野進保、鷲尾悦也

 (経済企画庁)

中名生事務次官、牛嶋総合計画局長、永谷総合計画局審議官、塚田総合計画局審議官、仁坂企画課長、藤塚計画課長、前川計画企画官 他

4.議題:

・総括部会報告書(案)について

5.議事内容:

 「経済審議会活動の総括的評価と新しい体制での経済政策運営への期待(報告書(案))」等について事務局から説明し、審議を行った。

 以下のような発言が委員からあった後、部会長一任ということで了承され、経済審議会総会に提出されることになった。

  • もっとも重要な変化について直接触れていない。90年代以降の日本経済の非常に大きな違いは、「市場」の役割、「市場」の力というのが増してきている点であるが、その「市場」という言葉、概念があまり出ていない。この「市場」のほか、「民間」の役割、「競争」の3つについて殆ど触れられていない。
  • 90年代になってから、政策面でも民間企業のあり方においても、グローバリゼーション、IT革命等により市場の力が感じられるようになっている。例えば、IT革命により地理的制約の減少、時間の短縮、取引コストの削減等市場の力が重要な役割を果たしている。あと、なぜスピードをもって、変化に対応することが重要かというと、これも「市場」が過去と比べて速く動いているからである。
  • 政治的リーダーシップも重要だが、民間の活力とか、民間がいかに競争できる環境を作るかというように、市場をいかにうまく活用するかということが日本経済の活性化には非常に重要である。経済財政諮問会議でも、民間の意見・経験を導入し、市場の役割をよく把握して、それにどう対応するかという政策を考えるのが最大の課題ではないか。したがって「市場」、「民間」、「競争」という3つを具体的に盛り込んでいただきたい。
  • 「世界に対する情報発信」についても、日本特有の制度にもとづく政策ではなく、むしろ普遍的な「市場」「民間」「競争」を重視した政策形成により、世界に対する説得力が増すのではないか。
  • 「アカウンタビリティ」について、何度も専門家、実務家の幅広い知見を吸収すると書かれているが、今後の経済諮問会議の役割も含めて、専門家等から吸収する方も必要だが、国民に説明するという役割も重視しなければならない。
  • 今までの経済審議会の役割で、経済審議会の委員の中には、それぞれの業界・所属グループの立場を反映して経済審議会で意見を述べ、反対に審議会での結論については所属グループに対し説明責任を果たすという役割もあった。経済財政諮問会議においてもこれを担保する仕組みが必要であり、合意を形成するためには、決まったことを明確に説明できるという責任を果たす機能が重要である。
  • 「総理のリーダーシップ」だけに頼っていいか疑問に思う。政策を展開できる強力なリーダーシップと機能が必要なのではないか。
  • これからも発展的に継承してもらいたい3つの項目のうち、3番目の「国民との情報の共有」が、これまでうまくいっていたのか疑問を持っている。経済審議会の前半期では確かにそうだったと思うが、80年代に入ってからは必ずしも情報が十分に共有されていたとは思わない。
  • これからの政策は経済政策だけではない。多面的な政策の中で、経済政策をどうしていくのかという位置付けについて、肉付けして書くことを考えていただけたらと思う。
  • 政策評価がどういうものなのかを一般国民にもわかるように説明を付けていただきたい。
  • 包括的なビジョンというのは分かりやすいが、課題対応型のビジョンというのは、各省との関係をどう考えているのかということが非常に問題だと思われる。関係省庁を無視して経済財政諮問会議で提言を行うのか、それとも協議をするのか、協議すると各省と同じものをなぞるようなものになってしまうが、どういう考え方なのか。個人的には政策提言型で、それが説得力のあるものであれば、あまり省庁とすり合わせずに提言し、あとは総理のリーダーシップで遂行していくべきだと思う。
  • 民間と役所との間の情報公開は進んできたが、官と官の間の情報公開が問題。例えば、なぜIg(公的固定資本形成)を正確に計上できないのか。政府が最も予測しやすい項目であるはずなのに見通しの改訂等で大幅な狂いが生じるのは何故か。従前と違い今後は経済「財政」諮問会議なのだから、深刻に考えるべき問題である。
  • 市場中心で民間活力をもっと活用していく方向性については、90年代からそういう方向には進んでいたが、それを振りかえっての反省としては、第1に、規制緩和その他が肝心なところで進まなかった点、第2に、「官から民」と言った手前、本来政府として発言すべきなのに遠慮した点がなかったか、という両面の反省がある。
  • 「政府や企業の情報開示」については、政府がその時点できちんとした情報を持っていてその開示が遅れたのか、それとも情報のキャッチの点で足らざる点があったのかという反省があるのではないかと思われる。その点を考えると、最後の締めくくりの「世界に対する情報発信」で「受信」も入れてもいいのではないか。
  • ビジョンについて、誰がこの2種のビジョンを提示するのかということが重要。包括的ビジョンは経済財政諮問会議で行うが、個別課題対応型ビジョンは各省庁で行うものと総理の私的懇談会で行うものといろいろなものが出てくる。この2つが矛盾なく行えればいいのだが、各省庁のビジョンは往々にして矛盾したり利害が対立する。私的懇でやると正規の機関との調整が問題となる。
  • 経済財政諮問会議は民間人が4人(4割)となり限られた分野の方となる。経済審議会的に各界の意見を吸い上げられる、あるいは調整されるように、経済財政諮問会議でも専門調査会を重視すべき。
  • 90年代は「市場」の時代に変わったということは誰も否めない事実である。しからば政府の役割はどうなるのかという基本的問題の話になり、この議論をしだすときりがない。この報告書は経済審議会のこれまでの業績と足りなかった点を整理して、次世代の経済財政諮問会議に何を期待するかを書いている。
  • 21世紀初頭に向けての課題は、財政再建や高コスト構造是正等全て国内的な視野によるものばかりである。90年代後半以降我が国の政策の進め方を困難にしている大きな要素は国際的な動向と国内の政策課題との整合性がとれないことにある。したがって、この重要課題の問題提起のところにグローバリゼーションという問題の指摘をしておく必要がないか。
  • 現在は、国民全体に閉塞感があって、先行きの見えない時代である。このような時に省庁が再編され、経済財政諮問会議が一種の旗振り役の中心になっていくと思われる。このような時には国民の琴線に触れるようなビジョンが必要であり、国民の側からみて生活にリアリティを感じるような新しいスローガンを打ち出すべきである。
  • GNPが3%伸びる等の成長ありきの方法論では国民はリアリティを持てない。逆の方法論で、例えばここ10年間で年収6~7百万円でも十分豊かな生活ができるように、そのようなシステムの作り方、邪魔しているのは何なのかという発想が大事である。
  • 国際化(グローバル化)、IT化に対し国民は不安感を持っている。21世紀のインターネットのシステムとか環境のシステムとかゲノムとか10年くらいは国際社会でコンセンサスが得られることはないのではないか。その中で情報発信というか、日本の考え方を打ち出していくことが重要である。
  • 省庁再編を控え、各省庁がいろいろなビジョンを出そうとしている。それらのビジョンを見ていると重なるところもあるし、縄張り争い的なものもある。その中で経済財政諮問会議が、どれだけガバナビリティを打ち出せるかということが今度大変大きな問題となってくる。

- 以上 -

 なお、本議事概要は、速報のため事務局の責任において作成したものであり、事後修正の可能性があります。

(連絡先)
経済企画庁 総合計画局 産業班
Tel 03-3581-0977