経済審議会総括部会(第3回)議事録

時:平成12年11月13日
所:経済企画庁特別会議室(436号室)
経済企画庁


経済審議会総括部会(第3回)議事次第

平成12年11月13日(月)14:00~16:00
経済企画庁特別会議室(436号室)

  1. 開会
  2. 経済審議会が担ってきた機能、役割を効果的に発揮させる上での対応方向
  3. 報告書スケルトン(案)について
  4. 閉会

(説明資料)

  1. 経済審議会活動の総括的評価と新しい体制での経済政策運営への期待(報告書スケルトン(案))
    • 別紙1:それぞれの時代区分ごとの経済審議会活動の評価について
    • 別紙2:経済審議会が担ってきた機能、役割を効果的に発揮させる上での対応方向
  2. 委員による計画の評価

(関連資料)

  1. 経済指標実績と主な出来事(付.時代区分)
  2. 各計画の課題、目標内容、達成状況等
  3. 経済計画で打ち出した主な政策の実施状況
  4. 経済社会指標集(国際比較)

[出席者(敬称略)]

(委員)

 香西泰(部会長)、荒木襄、伊藤進一郎、岩田一政、角道謙一、木村陽子、嶌信彦、高橋進、長岡實、原早苗、グレン・フクシマ、水口弘一、森尾稔、盛岡通、八代尚宏、吉川洋、鷲尾悦也

(経済企画庁)

 堺屋経済企画庁長官、小野総括政務次官、中名生事務次官、坂官房長、牛嶋総合計画局長、永谷総合計画局審議官、塚田総合計画局審議官、仁坂企画課長、藤塚計画課長、前川計画企画官 他


経済審議会総括部会委員名簿

 部会長    香西 泰   (社)日本経済研究センター会長
 部会長代理  清家 篤   慶應義塾大学商学部教授
        荒木 襄   日本損害保険協会専務理事
        伊藤 進一郎   住友電気工業(株)代表取締役副社長
        岩田 一 政   東京大学大学院総合文化研究科教授
        浦田 秀次郎   早稲田大学社会科学部教授
        角道 謙一   農林中央金庫特別顧問
        木村 陽子   奈良女子大学生活環境学部教授
        嶌  信彦   ジャーナリスト
        高橋 進   (財)公庫住宅融資保証協会理事長
        長岡 實   (財)資本市場研究会理事長
        畠山 襄   日本貿易振興会理事長
        原  早苗   消費科学連合会事務局次長
        グレン・フクシマ  日本ケイデンス・デザイン・システムズ社社長
        福武 總一郎   (株)ベネッセコーポレーション代表取締役社長
        星野 進保   総合研究開発機構特別研究員
        水口 弘一   (株)野村総合研究所顧問
        森尾  稔   ソニー(株)取締役副会長
        盛岡  通   大阪大学大学院工学研究科教授
        森地  茂   東京大学大学院工学系研究科教授
        八代 尚宏   上智大学教授、日本経済研究センター理事長
        吉川  洋   東京大学大学院経済学研究科教授
        鷲尾 悦也   日本労働組合総連合会会長


〔 部会長 〕 ただいまから、第3回の総括部会を開かせていただきます。

 本日は、委員の皆様方にはご多忙のところをお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。また、小野総括政務次官におかれましては、お忙しい中ご出席いただきましてありがとうございます。なお、大臣も少し遅れてご出席になられると伺っております。

 本日は、お手元にお配りしました議事次第のとおり、「経済審議会が担ってきた機能、役割を効果的に発揮させる上での対応方向」及び「報告書スケルトン(案)(以下、スケルトン案)」についてご審議いただきたいと存じます。

 前回の部会で、ご同意いただきましたように、1980年代以降の4本の計画について、私から若干の委員の方々に経済計画の「時代認識」あるいは「目標の妥当性」等について評価をお願いいたしまして、8人の委員から提出していただきました。各委員の評価は、資料2「委員による計画の評価」として配付されております。私も拝読いたしましたけれども、大変力作の評価もありました。評価を担当された委員の方々にお礼を申し上げたいと存じます。大変ありがとうございました。なお、これらの評価は、今日事務局から提出されておりますスケルトン案及び別紙1に反映させていただいたところでございます。

 それでは、本日の議題に入らせていただきます。

 まず、事務局から別紙2「経済審議会が担ってきた機能、役割を効果的に発揮させるうえでの対応方向」及びスケルトン案の2つについて、あわせてご説明をお願いいたします。

〔 事務局 〕 それでは、スケルトン案と別紙2を中心に、40分程度使いましてご説明申し上げます。

 資料1ー1をご覧ください。スケルトン案の目次でございます。その表題にもございますけれども、このスケルトン案では2つのことを申しております。1つは、いわば過去の評価でありまして、経済審議会活動の総括的評価でございます。そして、もう1つは新しい中央省庁体制での経済政策運営への経済審議会の期待を述べております。したがいまして、全体が2章構成になっております。第1章においては、これまでの経済審議会活動の総括的評価を述べておりまして、中が3つに分かれております。1.として、経済審議会の3つの主要な活動等について述べております。2.として「過去半世紀の活動を通じて経済審議会が果たしてきた機能、役割の評価」ということで、まず(1)として全期間約50年を通じた評価、(2)としてその前半期の評価、(3)として後半期の評価とその背景について述べております。そして、3.として「経済審議会が果たしてきた機能、役割の今後における重要性」を、21世紀初頭の経済政策運営をめぐる環境条件の諸変化も踏まえて述べております。

 次に第2章でございますが、「新しい中央省庁体制における経済政策運営への期待」を述べております。大きく2つの部分に分かれまして、1.が、「新しい体制において期待される重要政策課題への効果的な取組」ということで3点述べております。次に、2.として、これまでの経済審議会で効果的であった活動特性の発展的な継承をお願いしたい点として3点挙げております。また詳しく申し上げますけれども、アウトラインは以上のとおりでございます。

 そして、別紙1と別紙2についても少し触れておきます。別紙1は、「それぞれの時代区分ごとの経済審議会活動の評価について」と題しまして、今申し上げました第1章での過去半世紀の経済審議会活動の評価のもとになったものでございます。ご覧になるとおわかりになりますけれども、これは第2回部会の資料を、先ほど部会長からもお話がありました各委員からの評価により加筆修正したものでございます。したがいまして、今回説明は省略させていただきます。なお、修正部分を太線の下線で示しております。

 なお、別紙1の関連で「関連資料1」をご覧ください。時代区分につきまして、前回の部会での時代区分についてのご意見を踏まえて2点修正しております。1点目は、一番左に「自立期」というものを新しく作りました。これは高度成長の始まる時期が少し早過ぎるのではないかということで、最初は「自立期」として1957年,58年(昭和32,33年) 頃を高度成長前期の始まりとしたものでございます。もう一点、「戦後経済の頂点期」という言葉を使いましたところいろいろご指摘がありましたので、ここは素直に「安定成長期」と「バブル期」と2つに分けて表現させていただきました。すなわち、細かく分けると7期、大きくは5期ということでございます。

 別紙2でございますけれども、「経済審議会が担ってきた機能、役割を効果的に発揮させる上での対応方向」としておりますが、これは先ほど申し上げました第2章のもとになるものですので、後ほど詳しくご説明させていただきます。

〔 部会長 〕 大臣にご出席いただきました。早速でございますが、ご挨拶をいただきたいと存じます。

〔 大臣 〕 委員の皆様方におかれましては、ご多用中にもかかわらずご出席いただきまして、誠にありがとうございます。

 長年にわたり活動いただいた経済審議会も来年1月の省庁再編とともに組織替えになり、経済財政諮問会議という総理直轄の機関ができまして、その幕を閉じることになりました。

 我が国の経済は、平成10年(1998年)の大不況がございまして、政府はあらゆる政策を動員してデフレスパイラルに落ち込むのを防止いたしました。その結果、平成11年度、昨年度はようやく0.5%の成長に戻りまして、はっきりしたプラスにするという目標も達成することが出来ました。今年は、1~3月期そして4~6月期と大変好調でございました。公共投資あるいは介護保険の一時的な要因で4~6月期は伸びたところもございますけれども、前期比1.0%増と2期連続のプラス成長になりました。

 景気は、家計部門での改善が遅れているとはいうものの、企業部門を中心に自律的回復への動きを示しているところでございます。

 政府といたしましては、経済を自律的回復に乗せるため引き続き景気に軸足を置いた政策をとりつつ、さらに新しい経済発展を目指して新発展政策を採用することにし、10月19日に「日本新生のための新発展政策」を決定いたしました。この政策は、総事業費11兆円と報道されていますが、実際の予算額で申しますと3兆9,000億円でございます。そのうち2兆円は国債を発行いたしましたが、その他は前年からの繰越しと、それから税収の増額見込み、この2つで賄うということでございます。そういたしますと、この3年間でみますと、追加的な補正予算による国債の発行高は、98年度が18兆4,000億円程度、昨年度が7兆6,000億円程度、今年度が約2兆円ですから、そういう意味ではかなり減ってきているわけで、公需から民需へのバトンタッチは進んでいると言えるでしょう。

 また、政策の面で見ましても、最初は緊急経済対策ということで、とにかくデフレスパイラルに落ち込むのを抑えなければいけないというので、かなり乱暴なといいますか、ばら蒔き的なものも行いました。また金融対策、中小企業倒産防止などにも膨大なお金を使いました。昨年になりますと、これがかなり整理されてまいりまして、今年は重点4分野に集中した格好になっています。

 しかしながら、最近になりまして経済情勢は必ずしも楽観を許さないという感じがいたしております。例えば、米国、アジアの経済成長率が鈍化してきたこと、原油価格が上昇したこと、また日本国内でも倒産件数や倒産に関わる負債金額が非常に急増しております。一方で企業利益が上昇し、他方で倒産件数や負債の金額が増えているというのは、まさに新旧経済の入れ替わりのところでございまして、景気回復は今、胸突き八丁というところに来ているのではないかと思います。

 同時に、各金融機関の不良債権処理額は、大手16行で見ますと、98年3月決算で10兆円超、99年の3月決算も10兆円超、2000年の3月決算は5兆4,000億円程度でした。今年2001年の3月決算は、恐らく4兆円程度になるのではないでしょうか。これもそろそろ過半数を超えて、今まさに胸突き八丁のところに来ていると思います。

 ただ、構造改革の面で見ますとやや立ち遅れが見えるのでございまして、この国会ではIT国会ということで、特にITを突破口にして新しい産業構造をつくろう、国民生活、社会組織をつくろうということで今頑張っているところでございます。

 こういう段階を経てようやく、日本経済も次を考えられる状況になってまいりました。そういう意味で、20世紀の終わりと戦後の規格大量生産社会の一区切りというのが重なり合った時期だと思います。ここで経済審議会の歴史をおまとめいただき、その機能を評価していただき、後世に役立つようなものを残していただければ、誠にありがたいことだと考えております。

 香西部会長以下皆様方、大変ご多忙のところでございますが、是非とも、戦後日本という人類の歴史にとどめる値打ちのある時代をご記述し、将来に役立つものにしていただければありがたいと思います。よろしくお願いいたします。

〔 部会長 〕 大変励まされて、ご期待にそえるようにと思います。どうもありがとうございました。

 それでは、事務局の説明を引き続き行います。

〔 事務局 〕 資料1ー2、スケルトン案の第1章の1.の(1)でございますが、「経済審議会の主要な活動」としましては、ご案内のとおり「経済計画」、「長期展望」、「政策提言」の3つがございます。1)として「経済計画」ですが、これは経済審議会の活動の中でも最も包括的なもので、基本的にはそこに挙げていますような4つの構成要素からなっていると考えられます。

 ・現状認識と将来予測

 ・目指すべき経済社会の姿(ないし政策目標)

 ・目指すべき姿(ないし目標)を実現するための重要政策課題と政策の基本方針

 ・政策の基本方針に基づいた具体的な政策でございます。

 経済計画は以上の諸点をわかりやすい形で政府部内及び国民各層に広く提示し、また取りまとめに至る過程を通じて経済政策の方向づけと具体的な政策形成に大きな役割を果たしてきたものでございます。

 2)「長期展望」ですが、「長期展望」は対象期間を20年程度の長期とするものが多く、先に述べました経済計画の4つの構成要素のうち、1番目、2番目、3番目を主たる内容とするものでございます。

 3)「政策提言」ですが、「政策提言」は経済計画とは異なりまして、限られた課題や分野を取り上げて提言してきたものでございます。先ほどの経済計画の構成要素で申しますと、3番目、4番目に該当する内容を取りまとめたものが多くなっております。

 次に、(2)「経済審議会の調査審議体制」でございます。(略)となっていますが、これは第1回の部会でご説明申し上げました広範な分野からの委員構成であるとか、部会、小委員会等の下部機関について記述する予定でございます。

 2.としまして、「過去半世紀の活動を通じて経済審議会が果たしてきた機能、役割の評価」でございます。詳しくは別紙1に取りまとめてございますけれども、それをもとに総括的評価をまず行い、そして、50年代半ばから80年代はじめまでの前半期の評価を行い、最後に80年代はじめ以降の後半期の評価を行うとしております。

 まず、(1)全体を通じた総括的評価ですけれども、経済審議会はその設立から今日までの約半世紀を振り返ってみますと、以下にあるように大きく言って5つの機能、役割を発揮して、我が国の経済政策運営と経済の発展に大きく貢献してきたと考えるわけでございます。

 ・的確な内外経済情勢の把握及び経済社会の将来展望とそれらについての政府部内および政府と国民の間での認識の共有

 ・目指すべき経済社会の姿(ないし政策目標)についての政府部内、および国民の間でのコンセンサス形成の促進

 ・特定の分野にとらわれない経済全体の立場に立った重要政策課題の把握と政策の基本方針の策定

 ・政策目標の達成に向けた効果的な個別政策の形成促進と個別政策間の整合性の確保

 ・政府の経済政策に対する国民の理解の促進と中長期的な民間活動のガイドラインの提供でございます。

 概して言えば、50年代はじめから80年代はじめまでは、経済審議会活動が我が国の経済政策運営と経済の発展に総体として大きく貢献し、多くの機能、役割がかなり効果的に発揮されたと考えるわけでございます。

 その次に、所得水準がほぼ欧米並に達した80年代以降についても、我が国の経済社会が大きな転機を迎え、世界的にも激動が続く中で、時々の時代認識や大きな政策目標の設定を適切に行い、国民に対して我が国経済が置かれている状況、世界での位置づけ、時々の重要課題等について分かりやすく提示し、認識を深めることに貢献してきたものでございます。ただし、構造問題等を解決するための政策の具体化などの面では、それまでほどの機能、役割が発揮されなかった場合も見られたわけでございます。

 このような機能等の発揮に貢献した活動特性として3つ挙げております。

 1番目は「広範な分野の多くの専門家、有識者が参加した経済審議会における調査審議」でございます。ご案内のとおり、「経済計画」や「長期展望」の作成においては、通常10前後の部会等が設置され、延べ200人前後の専門家、有識者の方に参加していただきました。また、いわゆる産・官・学に加えまして、労働界、消費者、マスコミの各界からも調査審議に参加していただき、専門家、有識者の見解に加えて、幅広い分野の人々の意見を反映してきたわけでございます。

 その次の特性としまして、「調査審議に当たっての経済学に基づく分析や計量モデルを用いた政策シミュレーション、将来展望等の経済学的・計量的手法の活用」でございます。もちろんこれは経済審議会でご審議いただく材料、素材を提供するといった意味ですけれども、様々な条件変化や政策変更等の経済諸変数への影響を科学的、定量的に把握できるようになり、経済審議会での調査審議の強力な手段としてこれを支えたと考えております。

 3番目としまして、「政府と国民の間の幅広い情報の共有」でございます。経済審議会では、専門家や学識者を含め幅広い分野の方々に参加していただいたわけですけれども、その成果を「経済計画」や「長期展望」等の最終報告で分かりやすく対外的に提示していただいただけではなく、その背景にあるデータや情報、分析結果等についてもかなり広く公開してきたわけでございます。

 こうした努力を通じて、内外の経済情勢や将来展望、重要政策課題や政府の政策方針等について、関係者や国民の理解を深めることに貢献してきたと考えるわけでございます。

 次に(2)としまして、前半期、50年代半ばから80年代はじめにかけての活動の評価でございます。1)「我が国の経済政策運営と経済発展に大きく貢献した経済審議会活動」ですが、特に、高度成長の初期におきましては、日本経済が持つ成長の可能性を理論的・定量的に示すことにより国民に自信を与え、また限られた政策手段を経済発展に向けて効率的に動員することにより、日本経済の急速な発展に寄与してきたわけでございます。さらに、過疎・過密問題や公害発生等の高度成長の歪みの是正につきましても正面から取り組み、社会的摩擦を減少させることに貢献してきました。

 70年代に発生した2回の石油危機につきましても、諸外国と比べても順調に危機を乗り越えることを可能にしたと評価できるわけでございます。

 次に、(この時期の経済審議会活動において克服が困難であった課題)ですが、いくつかの認識の遅れがございます。例えば、高度成長期の前半期における日本経済の成長能力を過小評価していたこと、高度成長末期における我が国の国際的地位の急速な高まりについての認識が遅れたこと、さらには、高度成長期から調整期への経済成長の下方屈折についての認識の遅れ等がございます。

 以上の認識の不十分性は、それぞれ、高度成長の「歪み」の発生、「円切り上げ」への準備不足、さらには後世代への負担の転嫁等の要因となった面もあると考えております。

 2)「経済審議会活動が我が国の経済政策運営に大きく貢献できた背景」では以下の2点を挙げております。これは前回の部会の資料でも述べさせていただいた点ですので詳細は省略させていただきますけれども、

 ・日本経済の課題と目標について人々の合意を得やすかったこと

 ・経済計画等での基本的政策方針の提示と個別分野の担当部局における政策の具体化及び実施機能との役割分担が有効に働いたことが挙げられると考えます。

 それでは、(3)として、後半期、80年代はじめ以降の評価でございますけれども、この時期は、我が国経済が大きな転機を迎え、世界的にも激動が続く中で、新しい経済社会の潮流が進むべき経済社会の方向付けについて国民の理解を深めることに貢献したと考えております。

 80年代に入りますと、いわゆる欧米先進国へのキャッチアップという目標が終了したという認識から、新たなビジョンが求められる一方で、行財政改革や規制緩和に代表される構造問題への対応が大きな政策課題になってきたわけでございます。

 経済審議会におかれましては、既に80年代の前半に、21世紀をにらんだ経済社会の新しい潮流、例えば高齢化とか国際化等ですけれども、これを的確に指摘していただいております。

 さらに、80年代に入りまして、国際社会への貢献が大きな課題となりますと、その次の計画においては経済計画の内容のみならず、表題や副題でもそのことを明確化にしていただきました。生活重視の必要性についても強調していたわけでございます。

 さらに、必ずしも十分ではなかったという反省もございますけれども、構造改革の口火を早い段階で切っていただいたわけでございます。

 なお、将来ビジョンに関しては、人々の時代認識や将来の方向付けについての理解を深めることに貢献はしてきたと考えられますが、一方で、多くの国民の「感性」と合致するものではないとの指摘もございまして、必ずしも将来ビジョンとしての訴える力が十分でなかった面もあると考えるわけでございます。

 次に、(この時期の経済審議会活動において克服が困難であった課題)を3点挙げております。

 まず、「大きな状況変化に対する認識とその影響把握の困難性」でございます。何といいましても、バブルの発生、崩壊、及びその影響への認識の遅れ、失敗でございます。それから最近においては、IT革命の重要性についての認識が遅れたことがございます。

 次に「構造改革面での具体的政策の実施促進の困難性」でございます。構造問題については、政策の基本方針は提示したものの、具体的な個別の政策提言まで踏み込むことが少なかったということでございます。

 それとも関係しますけれども、3番目としまして、経済計画で時代認識については非常に的確な形で提示いただいたのですけれども、それを迅速な政策の形成・実行につなげていくことの困難性があったのではないかということでございます。

 このように、経済審議会の機能、役割がそれまでほどには、すなわち前半期ほどには後半期で発揮されなかった場合も見られた背景として以下4点述べております。これも前回の資料で述べた点ですので詳細は省略させていただきますが、

 ・キャッチアップ終了後における日本の経済社会の方向付けの困難性

 ・経済活動の専門化、複雑化及び変化の早さと政府や企業の情報開示の不十分性

 ・総論賛成でも各論反対という傾向の強まり

 ・利害対立克服のための総理大臣による政治的リーダーシップの役割の強まりでございます。最後の点の1番目としてⅰ)コンセンサス方式の限界、2番目としてⅱ)総理大臣による政治的リーダーシップの役割の強まりを挙げておりますが、これは経済審議会の機能等が発揮されなかった背景というよりは、不足部分を補うものとして総理によるリーダーシップがあったということでございます。

 それでは、第1章の最後として3.「経済審議会が果たしてきた機能、役割の今後における重要性」でございますが、これまで述べましたように、前半期と後半期で違いが見られるものの、総じて言えば、半世紀の間、我が国の経済政策運営と経済の発展に大きく貢献してきたと評価されるわけでございます。

 近年、政府の経済政策運営に関する環境条件は、次のような4つの方向で変化しつつあります。これから21世紀初頭におきましては、こうした傾向は一層強まると思われますが、1番目の傾向としては、IT革命とグローバル化の進行に伴い、これまで以上に的確な状況把握とそれに基づく迅速、的確な政策の形成及びその確実な実行が求められております。2番目の傾向として、このような新しい事態が経済社会にどのような影響を与え、将来の方向がどのようなものになるのかについて、国民の関心が非常に強まっております。3番目の傾向として、情報公開の世界的な流れの中で、国民の政府に対する説明責任と透明性への要請が強まっております。4番目の傾向として、財政赤字の拡大、少子高齢化の一層の進行、本格的人口減少社会の到来が見通される中で、効率的な資源配分に向けてのいわゆる縦割りを超えた総合的な政策形成が求められております。

 以上のような傾向を踏まえれば、経済審議会がこれまで果たしてきた機能、役割につきましては、21世紀初頭の経済政策運営においても引き続き重要であると考えるわけでございます。

 (3)の第2パラグラフで述べておりますけれども、このような経済審議会の担ってきた機能、役割を今後も効果的に発揮させる上での対応方向については別紙2で詳しくご説明申し上げます。

 もちろん、経済財政諮問会議は、経済審議会とはメンバー構成もその性格も異にするものですから、そうした意味で、新しい中央省庁体制における経済政策運営に対して経済審議会の経験がそのまま適用できるわけではないと考えます。しかしながら、中長期の経済政策運営に関する事項を経済全体の立場から扱うという点では共通するものがありますので、次章で述べるような方向で、その機能、役割が効果的な形で発展的に経済財政諮問会議あるいは内閣府に継承されることを期待するものでございます。

 その期待の内容としまして、12ページからの第2章でございます。ご案内のとおり、経済審議会及び経済企画庁の機能と役割は、新しい中央省庁体制におきましては、新設される経済財政諮問会議及び内閣府に発展的に受け継がれるものでございます。経済財政諮問会議は、内閣総理大臣を議長とし、内閣官房長官、経済財政政策担当大臣、関係大臣及び民間有識者等による10名以内の少数の議員により構成され、経済財政政策の分野で内閣総理大臣のリーダーシップを補佐するために設けられる新しい合議制機関であり、我が国の経済運営のまさに中枢にふさわしい機能と役割を果たすことが期待されるわけでございます。

 21世紀初頭において日本経済の新しい発展を実現していくために、これまでの半世紀にわたる経済審議会活動の様々な経験が参考になると思われますので、新しい中央省庁体制における経済政策運営への期待を表明し、半世紀にわたって続けられた審議会活動の総括的評価を締めくくることとしたいということでございます。

 なお、以下の記述をご覧いただければおわかりになると思いますが、この第2章は、本当の意味でまだスケルトンの段階にとどまっております。したがいまして、委員の皆様からのご意見をいただきたいと強く希望しているところでございます。

 それでは、その1番目としまして、1.「新しい体制において期待される重要政策課題への効果的な取組」でございますが、21世紀初頭における日本経済の課題としては、例えばですが、財政再建、社会保障制度改革、社会資本の形成、環境と経済の両立、経済制度・システム改革等の重要問題が山積しております。このような問題の多くは、個別分野での縦割り的対応で解決できるものではなく、分野横断的、省庁横断的な取組が求められるものでございます。同時に、大きな利害対立のある構造改革の問題でもございます。

 新しい中央省庁体制においては、以下述べるような3つの方向で重要政策課題に効果的に取り組んでいただくことが期待されるわけでございます。

 その3つの方向ですが、1番目として、「構造改革問題をはじめとする重要政策課題への分野横断的、省庁横断的取組」でございます。以下の「・」は、今現在の取りまとめを例示的に出したものでございますけれども、まず、何と申しましても内閣、特に総理大臣のリーダーシップによる総論賛成各論反対の傾向や制度的硬直性の克服が必要と考えます。その前提になるわけですけれども、経済財政諮問会議及び内閣府の総合調整機能への期待も高いわけでございます。

 2番目として、「加速する経済社会の変化に対応した迅速な政策の形成と実行」がございます。状況変化とその影響の迅速、的確な認識と必要な政策課題の適切な把握、そして、短期と中長期の経済運営の一体性の確保といったことでございます。これは経済審議会では、これまで事実上中長期の経済運営を中心にご審議いただきました。そして、短期の経済見通しであるとか経済対策については、事実上はほとんど扱ってこなかったわけですけれども、経済財政諮問会議は、短期と中長期の両者を扱いますので、経済運営もより一体性をもってできるということでございます。それから、新しく導入されます政策評価制度を活用して政策の改善、見直しを行っていくということでございます。

 3番目として、「政策の形成と実行を促し、国民の理解と協力を得るための将来ビジョンの構築」でございます。ビジョンといいましてもいろいろな種類がありまして、現在IT分野でまさしく取り組まれているような当面の重要課題に関する分野を限った行動計画的なビジョンというものは、有用でございます。ただし、国民の間で経済社会の全体についての将来ビジョンが求められる場合には、今まで経済計画で示していただいたようなものでございますが、そういう包括的なビジョンも引き続き必要であると考えております。また、各ビジョンにおいては、目的や目指す将来像を提示するのみでなく、その実現のための政策の着実な実施が重要と考えられます。

 次に、2.としまして、これまで経済審議会がいろいろな機能、役割を発揮してきた上で非常に効果的であった活動特性を次の新しい体制にも発展的に継承していただきたいという点として、3点挙げております。

 1点目として「広範な分野の有識者、専門家の知見の活用」でございます。

 2点目として「経済学等の社会科学に基づく理論的分析や計量的手法の開発と活用」でございます。

 3点目として「政府と国民の幅広い情報の共有」でございます。

 それでは、今ご説明申し上げました第2章のもとになっております分析ということで、別紙2をご覧ください。「経済審議会が担ってきた機能、役割を効果的に発揮させる上での対応方向」と題されていますけれども、分析の方法としましては、経済審議会の活動のうち最も包括的な形態である「経済計画」の主要な構成要素、先ほどスケルトン案の冒頭で述べさせていただきました4つの要素に分け、それぞれに関して80年代以降の経済審議会活動の経験を踏まえて克服すべき課題と今後の対応方向について分析したものでございます。

 それでは、1番目の構成要素であります「経済の現状認識と将来予測について」でございますが、内外経済情勢の的確かつ迅速な把握と日本経済への影響の適切な認識及び将来予測への反映ですけれども、課題として2つ挙げていまして、(課題1)は、「内外情勢の変動とその認識の困難性」でございます。特にバブルの発生、崩壊等の認識の失敗でございます。その要因と背景として2つ挙げておりまして、1番目が、経済活動の専門化、複雑化等に対応できない認識体制及び能力でございます。2番目が、政府等の情報開示の不十分性でございます。

 対応方向としては4つ挙げておりまして、1番目は、非常に基礎的なことですけれども、内外の経済情勢に関するデータ・情報のアベイラビリティの向上、アクセスの改善でございます。

 2番目と3番目はある意味で同種のものですけれども、2番目として、経済の最前線で活動しておられる内外の実務家、経済人等の方々との頻繁な意見交換でございます。これはバブルやIT革命に関する認識が遅れたこと、さらには、金融システム不安が経済に与える影響の認識が不十分だったことの背景には、経済活動の専門化・複雑化に伴い現場に近い方でなければ正確な状況把握は困難だったという反省がございます。これに対応するため、経済や産業の根幹部分やビジネスの現場にいる実務家の方々等と、直接的かつ広範な情報交換・意見交換に努めるということでございます。

 3番目は、単に情報交換等にとどまらず、外部専門家の方に内閣府に直接参画していただくということでございます。現在、国会でまさしく審議中でございます任期付き任用制度ですとか、経済財政諮問会議の専門委員への登用といった新しい方法もできますので、これらを活用して最前線の専門家、研究家の方々に、必要な期間についてのみですけれども、内閣府に参画していただいて、能力を発揮していただきたいということでございます。

 4番目として、事務局の計量的・経済学的な分析能力の強化でございます。経済審議会における審議の比較優位性の1つとして、様々な計量的・経済学的な分析能力というものがあったわけでございます。経済審議会におきましても、10次にわたって計量委員会を設置していただき、様々な作業を検討していただいたわけで、今後ともこうした高度な計量分析能力を保持していくことが極めて重要と考えております。

 一方で、バブルを十分に見通すことができなかったことにも示されていますように、マクロ計量モデルにも限界がありまして、最近の経済学の発展を踏まえて、ミクロ的な分析手法の導入も必要と考えております。なお、このような手法の開発・導入におきましては、機能強化される経済社会総合研究所との連携や外部専門家の活用も必要であると考えております。

 次に、(課題2)ですが、「将来予測の弾力的見直しの必要」でございます。プラザ合意による為替相場の急激な調整、バブルの崩壊による経済停滞のように、計画策定時には想定していなかった大きな条件変化があっても、多くの場合は、将来予測の見直しは新しい次の計画の策定までは行われなかったのが現実でございました。

 その要因と背景でございますけれども、経済計画等における将来予測の提示に当たって、その前提条件や想定されるリスクが明示されたことが少なかった。したがって、条件変化がわかりにくかったということがございます。また、経済計画の包括パッケージ性により将来予測という一部分の見直しのみを行うことが事実上困難であったということが挙げられます。

 対応方向としては、今後は、将来予測の前提条件や想定されるリスクを計画策定時に同時に明らかにしておくとともに、定期的にそれらの状況について評価を行い、弾力的に将来予測の見直しを行えるようにしておくということでございます。

 なお書きで書いておりますが、先ほど述べましたとおり、今までは経済審議会は中長期のことを中心にしておりました。しかし、今後は短期の経済見通しを中長期の経済見通しに反映させるといったような、短期と中長期の一体性も強化することが必要であると考えております。

 次に、2番目の経済計画の構成要素であります「目指すべき経済社会の姿ないし政策目標の提示について」ですが、(課題)としては、何と申しましてもたびたびご指摘いただきましたように「国民へ強く訴える力を持った将来ビジョンの必要性」でございます。

 下の脚注をご覧いただきたいのですが、「将来ビジョン」については、その意味するところが人により異なり、必ずしも統一的定義があるわけではありません。ここでは、「将来ビジョン」とは次のようにいたしました。目指すべき経済社会の姿ないし政策目標のみでなく、それを実現するための政策も含む包括的なものであると定義いたしました。また、ビジョンのカバーする範囲については、個別の分野の場合あるいは経済全体を対象とする場合等いろいろなものがあり、経済全体の「将来ビジョン」を示した典型的な例が「経済計画」であると考えております。

 将来ビジョンに関する問題の要因と背景ということで2つ挙げておりまして、1番目が「欧米先進国へのキャッチアップ」に代わる国家的基本目標の未形成でございます。80年代以降、「欧米先進国へのキャッチアップ」という基本目標に代わる新しい骨太の長期的な目標を形成し得なかったことがその要因ではないかと言われておりますが、この点は、経済審議会のみの責に帰することはできないと考えております。当たり前のことでございますけれども、「欧米先進国へのキャッチアップ」という目標は経済審議会において作り出されたものではございません。経済審議会は、既に存在していたこの目標を背景として、「所得倍増」、「高度成長の歪み是正」等のそれぞれの時代に対応した経済ビジョンを作成してきたものでございます。しかしながら、長年にわたり経済計画という形で経済全体の観点に立って我が国の将来ビジョンを提示してきた立場としては、国民が納得できる新しい国家的基本目標の形成に資することができなかったことは、反省すべき点もあろうかと考えられます。

 2番目として政策目標の実現可能性についての説得力の弱さでございます。掲げられた目標を実現するための政策については、関係各方面の合意が得られなかったことから、結果として従来の延長線上の政策にとどまったということもしばしばあったわけでございます。すなわち、掲げられた時代認識あるいは政策目標は非常に適切なものだったのですけれども、その目標が十分に達成されるのかどうか確信が持てないという印象を国民に与え、したがいまして、全体のビジョンとしては訴える力も弱くなったということが要因として挙げられるということでございます。

 対応方向として4つ挙げておりまして、1番目は、内外の経済情勢や将来展望についての政府と国民の間での認識の共有でございます。

 次に、国民との対話を通じた目指すべき経済社会の姿や長期的な政策目標の形成でございます。政府部内や一部専門家のみで経済社会の姿や政策目標を決定するのではなく、政府と国民が経済情勢や将来展望をある程度共有した上で、政府の側から目指すべき経済社会の姿などについての案をまず示して国民的な議論を喚起し、いわば対流方式により政府と国民との間で対話を繰り返すことにより、多くの国民が納得し、広く受け入れられる目標の形成に努めることが重要と考えております。

 他方で、これからの時代においては、経済が文化や教育など社会を構成する他の側面から独立して論じられることは少なくなると予測され、経済的側面の強い将来ビジョンであっても、対象となる分野が広がってくるものと考えられます。例えば、現在の「経済社会のあるべき姿と経済新生の政策方針」というのはそういう形になっていると考えられます。こうした状況を踏まえれば、経済分野での将来ビジョン作りに向けての努力の地道な積み重ねが、同時に、我が国が目指すべき基本的な方向についての国民的コンセンサスの形成に貢献すると期待されるものでございます。

 3番目として、将来ビジョンの作成プロセスに関する積極的な情報提供、開示でございます。単にビジョンの案を国民に示して対応していくというのではなく、政府が当該案を作成した前提条件、検討経過等について情報提供を行い、政府と国民が同じ基盤の上に立って意見交換することにより、国民各界各層の実質的な参加を促進したいということでございます。そのことによりまして、出来上がった将来ビジョンについては、受入れ可能性も増すと考えるものでございます。

 なお、具体的なイメージを描きやすくするために、数値を用いてビジョンないし政策目標の意味するところを表現することが有用であると考えます。

 4番目として、政策目標の実現に向けた効果的な具体的政策の形成促進と実行の確保でございますが、これは9ページ以降の4.で詳しく述べさせていただきます。また、具体的政策を検討する場合には、従前有効であったシステムであっても、時代の変化に対応しているかどうかを常に吟味することが必要と考えます。過去の成功体験は貴重な経験ですけれども、それに過度にとらわれると新たな発展の制約になるということでございます。

 次に、経済計画の3番目の構成要素としての「重要政策課題と政策の基本方針の形成について」課題を2つ挙げております。1つは、重要政策課題の適切な抽出の必要性でございますが、過去の認識がありながら遅れた例として、金融等の我が国制度の国際的な調和ですとか、80年代において、せっかく国鉄等の民営化が果敢に行われたにもかかわらず、公的規制が民間活力を抑制しているという認識が希薄であったこととか、繰り返しになりますが、バブル崩壊あるいはIT革命についての認識が不十分であったことでございます。もう1つは、重要政策課題の迅速な抽出と取組の必要でございます。これらの課題の要因と背景としましては2つ挙げておりますが、1番目が、先ほどの繰り返しになりますが、経済活動の専門化、複雑化等に対応できない認識体制及び能力でございます。2番目が、経済計画の包括性、すなわち経済全般にわたる現状認識から政策目標、重要政策課題と政策の基本方針、具体的な政策等までパッケージとして包括的に提示していたものですから、時々の重要問題に対して機動的に対応することが十分でない場合があったということでございます。

 対応方向も2つ示しております。まず、1.で指摘した諸課題への対応でございます。内外への経済情勢に関するアベイラビリティの交流ですとか、第一線の外部専門家の活用等ですが、それと、それらに基づく重要政策課題の適切な抽出でございます。次に、重要政策課題への時期を逸しない迅速な取組でございます。経済計画的な包括性に拘泥することなく、適時適切に重要政策課題の抽出を行っていくということでございます。

 (課題2)としまして、いわゆる「重要政策課題と政策方針の形成に当たっての戦略性の必要性」でございます。経済計画においては、経済計画に示した政策目標を達成する上での戦略的重要性が必ずしも明確にされないまま、網羅的に政策課題の選定が行われたという傾向もございました。その背景として2つ挙げておりまして、1番目は、コンセンサス方式の限界でございます。どの政策課題についてもそれが重要だとする関係グループの方がいらっしゃいますので、各関係者に配慮して政策課題を選定しますと、どうしても網羅的な形になるということでございます。次に2番目として、経済関連の全分野を包括的に扱おうとしたことでございます。計画期間である5年程度の期間に大きな成果をあげていくためには、限られた数の重要課題を抽出し、そこに資源や人材を重点的に配分していく必要がありますが、従来の経済計画においてはその包括性から経済関連のほとんどの分野についてある程度扱おうとした傾向が強くございました。したがいまして、総花的になり、当該計画の本来の焦点が不明瞭になることがあったということでございます。

 対応方向としましては、関係者からの要望は情報としては踏まえつつも、あるべき経済社会の姿を実現するという観点に立って戦略的重要性を判断するということでございます。すなわち、政策課題につきまして優先順位を付けるということでございます。また、その時代の趨勢や対外的要請に応えるためであっても、経済計画全体の位置付けを十分吟味して重要政策課題とするということでございます。すなわち、吟味なくして重要政策課題としないということでございます。

 それでは、経済計画構成要素の4番目ですけれども、「政策の基本方針に基づいた具体的政策の形成促進とその実行性の確保について」でございます。課題を2つ挙げておりますが、(課題1)が、政策の基本方針に従った具体的政策の策定とその実行でございます。利害の対立や意見の相違が大きい問題につきましては、経済計画で示された政策の基本方針に沿って、具体的政策の策定、実行がなされなかったきらいがございました。

 その要因等でございますけれども、1番目は、経済審議会からの政策方針の提示と各省の個別政策形成及び実施機能との役割分担が有効に働かない面があったことでございます。2番目として、総論賛成各論反対の傾向があったことでございます。

 対応方向として3点挙げておりまして、まず、複数の政策オプションについての情報提供でございます。選択すべき有力な具体的政策が複数ある場合には、その効果や他への影響等について理論的、計量的に比較検討し、その結果を分かりやすい形で情報提供することにより、個別政策の形成に当たっても効果的な政策選択ができるようにするということでございます。

 次に、政策評価の活用でございます。政策評価は今回の中央省庁改革で導入された有力な手法でございます。各省庁及び総務省における政策評価も活用しつつ、経済全体の観点から重要政策課題に関する個別政策の評価も行い、政策方針を見直すとともに、政策の総合調整機能の一環として関係省庁における具体的政策の改善に向けた働きかけを行うことが期待されるわけでございます。

 3番目としまして、総論賛成各論反対の克服のための内閣、特に総理大臣のリーダーシップへの期待でございます。

 (課題2)でございます。構造改革の分野における先導性の発揮でございますが、これまで申しましたとおり、これまでの経済計画では、制度の見直しを含む構造問題については具体的な個別の政策までは踏み込むことは少なかったわけでございます。そして、2番目にありますとおり、「6分野の構造改革」のように例外的なものもございますけれども、なかなか先導的な政策が少なくて、個別政策については後追い的なものも多かったということでございます。

 その要因と背景につきましては、まず、経済全体の視点に立った審議が中心という経済審議会の特性のために、なかなか制度・構造問題への対応が難しかったことでございます。2番目と3番目は、それぞれコンセンサス方式の限界ですが、まず、個別問題まで降りると関係者の利害に触れて、具体的な政策をまとめにくい場合がございました。それから、原則として参加者全員の合意を必要とするコンセンサス方式では、利害対立の大きい問題についてはどうしても政策対応が後追い的かつ寄せ集め的になりがちだったということでございます。

 対応方向として2つ挙げておりまして、まず、専門家の積極的活用でございます。構造問題に関しては、何と申しましても各分野の状況や個別制度の詳細な専門知識が必要ですので、従来以上に専門家の積極的活用と多様な対話チャンネルの拡大を図っていくということでございます。それから、政策提言の活用でございます。

 以上述べましたような構造問題の個別分野の課題につきましては、これを実際の政策に結び付けていくためには2つの方法がございます。「経済計画」のような形で具体的政策を政府の方針として決定していくか、あるいは「政策提言」のような形式で政府全体ないし所管省庁に具体的政策を提案していくかでございます。

 前者の経済計画の方針ですと、参加者全員のコンセンサスが必要なためになかなか改革を大きく前進させることは難しい場合もございます。しかしながら、後者の政策提言の形式であれば、理論的な検討の成果と専門家・有識者の知見を活用して、必要な改革を盛り込んでまとめることが可能であると考えられますので、必要に応じて政策提言という形式を活用していくことが重要であると考えるわけでございます。

 以上で別紙2の説明を終わらさせていただきます。

 あと、残りの資料について簡単にどういうものかということだけ述べさせていただきます。資料2は、先ほど部会長からもございましたけれども、80年代以降の4つの経済計画につきまして、各委員からご提出いただいた評価でございます。

 関連資料1は、先ほど申し上げたとおりでございます。

 関連資料2は、前回もお出しした資料でございますけれども、「5.達成状況」のところの数値が若干未完成でしたので、それを完成させたものでございます。

 関連資料3は、前回の部会で、これまでの計画で提示した政策の実行がその後どうなったかということについても分析すべきというご意見がございましたので、前期の代表として「国民所得倍増計画」、中期の代表として「新経済社会7ヵ年計画」を取り上げ、後期は現行計画を除いた4つの計画を取り上げまして、既述のマクロ経済指標を除いた主な政策の実施状況をまとめたものでございます。

 関連資料4は、これも前回の部会で過去と現在を比べるとともに他のOECD諸国等との国際比較も重要であるというご意見がございましたので、国際比較ができるものを中心に指標をまとめたものでございます。

 若干長くなりましたが、以上でございます。

〔 部会長 〕 どうもありがとうございました。ただいまお話がございましたけれども、この総括部会としては、報告書を取りまとめる場合、第1章はともかくとして、第2章で何を言うかということが最大の問題になるわけでございますけれども、それにつきましては1980年代以降の経済審議会の活動を踏まえて、そこから何を抽出して今後に申し送るかという形で問題が出されていると理解しております。その意味で、まず最初に、別紙2についてご審議をいただきまして、その後でスケルトン案全体もそうですが、特に第2章のまとめ方についてご審議いただければ幸いだと考えております。

 それでは、ご自由にご発言をお願いしたいと思います。

〔 A委員 〕 全体のご説明をお聞きしながら、どこにどうということではないのですけれども、全体的な印象として「コンセンサス」という言葉の使い方というのでしょうか、これがまだ少しうまく整理されていないと思っております。今までコンセンサス方式でやってきたために、いろいろなところに配慮して総花的になって限界があるというような記述があるかと思うと、一方で、これからは情報を共有して国民的なコンセンサスを得るというところは大事であるとかという、すなわちコンセンサスをとっていくというのは大事だけれども、その位置づけ、今までももちろんとってきているわけですけれども、これからも大事とは言いつつも、どこかでは排除しながらというようなところがあり、まだうまく整理されていないような印象があるのです。

 でも、これからは経済計画を立てるというのではなく、政策提言のようなことに力点を置いたようなあり方がいいだろうと、最後の締めくくりになっていますが、そうすると総理大臣などのリーダーシップみたいなところに話が来るのかなとも思いながら、それでは途中で強調してきた国民的コンセンサスはどこへ行ってしまうのだろうかというような、その辺をもう少しうまく整理していただければと思います。

〔 B委員 〕 今、コンセンサスの話が出ましたので、その点から私のコメントを申し上げます。

 ここで言っている「コンセンサス」というときに念頭に置いているのは、もう一つのキーワードであります既得権益といいますか、特定のある制度の下でそれぞれの分野といいますか、部門といいますか、そのところの既得権益を守ろうとするがために、それが日本では役所が生産者別に縦割りになっており、つまり特定のある意味では既得権益を非常に守りやすい仕組みになっている。国民というのは消費者、あるいはちょっと違った言葉で言うとライフワールドに生きている者といいますか、つまり経済システムとは少し外れるようなところの部分というのが人間にはあると私は思うのですが、そういう意味での国民といいますか、そこのところでのコンセンサスの形成といいますか、合意を取り付けていくような、そこはまさに政治の役割であると私は思うのですが。そういう合意を形成しているようなプロセスの問題と、それから、生産者単位での既得権益を守るという、典型的には中央省庁で言いますと各省庁がそれぞれの生産者の立場を守るために、利益を守るために、それで実際には物事が実行できないという、既得権益の擁護と裏合わせのコンセンサス方式の限界というのになっているのではないかと思うのです。

 ですから、そこの言い方をそのように言い換えることが多少必要ではないかと思います。

 その点についてさらに言いますと、例えば、そういう既得権益がどのくらい害悪であったか、頑張ってしまうためにどのくらいみんなが困ってしまうかということは、もう少し踏み込んで書いてもいいのではないか。つまり、既得権益と書いてあるのですけれども、中身がどういうものなのか、読んでいる人は「一般的には何かありますね。だけど、それは具体的には何なのですか」というところが何か抜けているのではないか。したがって、わかりにくいことになっているのではないかと思います。

 私が、今思っていますのは、財政の分野でしたら、例えば財政投融資でいろいろな特殊法人とかが問題になっていますけれども、それが例えば国民の便益等に照らして本当にコストと便益との関係で機能を果たしているのかとか、あるいは予算の制度で言いますと地方の交付税交付金、あるいは特別会計で特定財源になっていて、それで財源があるのでそのままいくらでも増えてしまうという、そういうメカニズムがいわば制度の中に組み込まれており、そこに既得権益があり、それが結局動かない。もっと言うと、予算でも同じで、先ほど堺屋大臣の方から補正予算のご説明があって、補正予算の方は多少フレキシビリティがあることがやれるようになっていますけれども、本予算というのはかなりそういう制度的なもので雁字搦めになっていて、どういうふうにやろうとしても解きほぐせないような仕組みになっているのではないかと思うのです。

 それから、これは税制についても同じで、例えば租税特別措置というのがたくさんあるわけですけれども、あれは既得権益のいろいろな固まりではないかと私は思うのです。それがあるがために、企業が例えば連結で決算をやるとか財務をやるということは国際化していれば当然のことですが、課税の方では連結課税というのはなかなかできない。ではどうしてできないのかというと、今は租税特別措置がいろいろあって動かない。つまり、これも同じ構造だと思うのですが、本則の方は税制でいじらない。けれども、多少フレキシビリティを租税特別措置で置いたのだけれども、それがまた既得権益になって、団子のようになってそれが動かないで、それ故に企業の革新的な行動ですとか、革新促進的な動きを押さえ込んでしまう、そういう構造になっているというのが非常に大きい問題ではないかと思うのです。

 ですから、私の1つ目のコメントは、既得権益とは何なのかと。それがはっきりしないとコンセンサスがどうしてうまくいかなかったのかということが浮かび上がってこないのではないかと思います。

 2番目は、バブルの対応のことです。バブルというのは70年代はじめにもあったのだと私は思うのです。明らかに土地を見る限り、土地があのときは列島改造ブームで円高ショックを避けるためにおやりになったら、地価がどこまでも上がってしまった。ですから、73年石油危機の時というのは、ある意味でバブルの崩壊、すなわち土地バブルの崩壊と、交易条件の大幅な変化という2つのショックが日本を覆ったのだと思うのですが、73年の1回目のときは何とか切り抜けた。では2回目はどうしてうまくいかなかったかということですけれども、それはやはり既得権益の問題がいろいろ尾を引いていたと思うのです。つまり、バブルが発生したこと自体も失敗なのですけれども、その後の政策対応の誤りの方が私はいろいろ問題があったのではないかと。つまり、米国でも2回も3回もバブルは起こっているわけです。実際にコストも払ったわけですけれども、日本ほど10年もかけてずっとバブルを処理しているというのはどこかに間違いがあり、今回うまくいっていないのは金融仲介が機能麻痺をしているからです。まだ、その麻痺の状態から抜けきっていない、そこのところが一番問題ではないかと思います。

 その場合に、例えば今の既得権益との関係で言いますと、例えば資本市場というのが米国の場合には間接金融をかなり代替するものですから、銀行部門が傷んでも、資本市場で直接金融仲介が行われる。けれども、日本はいろいろな戦後の仕組みが資本市場を抑圧的といいますか、資本市場の革新を押さえつけるような仕組みになっていて、私は金融税制も明らかにそうだし、そのほかのいろいろな法制度、民法にしても、商法にしてもそうだと思うのですが、それが押さえ込んでしまっている。そうすると、いつまでも抜けられないということですから、これも既得権益と関連しているのではないかと思います。

〔 C委員 〕 非常によくできていると思います。ただ、意見を2、3申し上げます。

 第1点は、スケルトン案の第2章の1.「新しい体制において期待される重要政策課題の効果的な取組」で、(1)が「構造改革問題をはじめとする重要政策課題への分野横断的、省庁横断的取組」、(2)が「加速する経済社会の変化に対応した迅速な政策の形成と実行」ということが大きく掲げられていて、このとおりで大賛成でありますけれども、ただ、別紙2の本文に入るとどうも「分野横断的」とか「省庁横断的取組」という問題、あるいは「スピーディーに対応」というのがあちこちに散りばめられてしまって、インパクトがないのではないか。これは僕の主観的な読み方かもしれませんが、そんな感じがするので、その辺をもう一度考えていただきたいということです。

 それから、特にスケルトン案で今申し上げた(1)の2番目の「・」の方に、「経済財政諮問会議及び内閣府の総合調整機能への期待」とあるが、「期待」という記述では弱い。期待どおりにならなかったら、ではどうなるのだという話もあるので、この辺はもう少し強い言葉で断定的に言った方がいいのではないかと思います。これは私のフィーリングの問題でありますが。

 第2点は、ここで「6分野の構造改革」というのがいろいろと引用されていますが、その後の部会の活動を見ていますとどうもインパクトが少ない。というのは、別紙2にありますように、(課題2)「構造改革の分野における先導性の発揮」の最後に「政策提言の活用」とありますが、これは非常に重要な分野だと思います。しかし、先ほどお話がありましたけれども、これをすべて総理大臣のリーダーシップということにいっていいのかという感じが私は非常にしております。例えば、「6分野の構造改革」のときのように、委員、事務局と同時に担当大臣のリーダーシップというものが非常に重要であったと思いますので、全て総理大臣のリーダーシップというと、では担当大臣は何だという話になりますので、その辺はもう一度考える必要があるのではないかという点です。

〔 D委員 〕 1点だけです。別紙2に関連してですが、「実務家、経済人、学者等との頻繁な意見交換」というのがあります。私は、これは半分はいいけれども、もう半分は非常に危ないというふうに思っています。危ないというのは、経済人とか研究者というのは、いわば時代の子になりやすいからです。

 それで、ここの中でその文章のどこの部分を変えるのかと言われるとちょっと難しいですが、文章表現の中に入れていただきたいのは、既に起こった、例えばバブルとかいうことで、先進諸国の経験に学ぶという姿勢も入れていただきたいと思います。

 なぜそういうことを言うかと申しますと、2つのことが今までにありまして、私の知っている範囲では、バブルに踊らなかったのは大工さんたちです。「こんなおかしなことが起こるはずがない」というふうな実感を持っていて、「今は家を買わない」とバブルの最中に大工さんたちが言っていたということ。あと、日本の信用金庫で不良債権で踊らされなかった有名なところが佐世保にあって、そこの理事長さんがおっしゃるには、息子を米国に留学させて、バブルのときに何が起こったかというのを調べるだけで、不良債権に手を付けては絶対にだめだということがわかったと。「日本の新聞記者でニューヨークとかいろいろなところに行っている人は、どういう情報収集をしていたのかよくわからない」というようなことをおっしゃっていましたけれども、時代の子になりやすい経済人とか研究者というのに、あまり情報を頼り過ぎることの危険性を補完するために、他国の経験に学ぶとか、そういったことを入れていただければありがたいと思います。

〔 A委員 〕 今の発言に触発されてなのですが、経済審議会、当初から30年はまあうまくいった。この20年はあまりうまくいっていないというところで、今バブルの話もあったのですけれども、80年代に入って何がよくなかったかというと、欧米に追いつけということのキャッチアップでやってきて、その後はこれからの日本が進むべき目標というのが見えなかったということも1つの要因というふうに書かれていまして、私もそのとおりだと思うのですが、それは今の段階でも「そのとおり」と思っております。

 先ほど大臣から家計消費の方はまだあまり動いていないというお話もあったのですが、これから21世紀に向けて20年なり、30年なりの日本が進むべき方向みたいなもの、国としての将来像というのはまだ見い出せていないと思っております。これが、来年1月からスタートする経済財政諮問会議での一番大きな柱だろうと思うのです。

 ではそれをどういう目標でやっていくのかというところでは、誰の意見を聞いていくべきかというところが大きな問題で、今予定されているのは、10人ぐらいのメンバーでやっていかれるということなので、それこそ大工さんであるとか、一消費者の声とかというのはなかなか入りにくいだろうと思うのですが、是非、これからの経済とか経済運営とかを考えていかれるのであれば、本当に国民の声が入っての、国民的な合意がとれての国家像が打ち出されるということを中心に持ってきていただきたいと思います。

〔 E委員 〕 別紙2の位置づけですけれども、参考資料という格好で切り離されるのはよくわかるのですけれども、別紙2は第2章の中身と重複しているのがずいぶん多いと思います。先ほどもご指摘がございましたけれども、印象としては、第2章、これはまだスケルトンのようですからわかりませんが、恐らくここでの対応方向の相当部分が第2章の中に入ってくると思うのです。別紙2は、切り離して別紙とされる意味があるかどうか。むしろこれは、もう少しコンパクトにして、第2章の中に書き込んだ方が印象が強くなるのではないかという感じがいたします。

 もう一点は、先ほどもご指摘がありましたが、内閣総理大臣による政治的リーダーシップの役割の強まりというのは違和感がございます。これは後で違ったご議論がされているところでありますけれども、経済審議会の機能、役割がそれほど発揮されない場合も見られた背景の中に、総理大臣のリーダーシップがあったから経済審議会の機能が十分に発揮されなかったというのは、ちょっと逆ではないかという感じもいたします。それほど複雑であり政治的な性格があったからこそ、むしろ内閣総理大臣が出てこなければいけなかった。そういうのは結果なので、これが後ほどのまとめには、内閣総理大臣のリーダーシップの期待が強いという点で出てきますと、表現としてもこの辺はおかしいのではないかという感じがいたします。

〔 F委員 〕 3点ほど申し上げたいと思います。

 第1点は、コンセンサス方式ということの意味でありまして、これは先ほど非常に明確にご説明されたのですけれども、私は、長い目で見たときには、既得権益擁護ということが必ずしも悪くなかった時代もあったと思います。例えば、それは高度成長期であって、民間部門、特に特定の民間部門が非常に高い経済成長をするときに、それに取り残された部門があるわけです、中小企業であるとか、農業であるとか、それから過疎地域に、政府が所得再分配政策を用いて、そういう人たちの既得権益を守るということが社会の発展にとって望ましかった時代もあったと思います。それが低成長の時代においても、そのまま維持されていることが問題なわけで、そのような点を踏まえて、過去には合理的であったシステムが新しい時代には非合理的になっている、そういう変化というものをもっと具体的にイメージすることが大事ではないかと思います。その総論的なことは、もちろん文章に書いてあると思いますが。

 第2点は、そういうことをするために、新しいコンセンサスを作るために総理のリーダーシップということが書いてあるのですが、私は、総理がリーダーシップをうまく発揮できるためには、そのベースとして各省庁間の政策競争みたいなものが必要ではないかと思います。これまでのように、1つの官庁が1つの分野を独占的に行政を行っているということですと、そこへなかなか口を挟むことができない。それに対してこれからは、例えば社会保障分野でも厚生省だけに任せるのではないし、労働市場についても労働省だけに任せるのではない。そういうような形で、経済官庁がそういう社会保障とか労働分野に口を出していって、伝統的な分野との意見の対立を明確にするということが大事であって、それが結果的にはより高い視点からのリーダーシップを発揮できる最大の1つの基盤になるのではないかと思っております。

 第3点は、重要政策課題についての認識の必要ということで、金融の問題とかバブル後の不良債権の問題とか、IT革命の重要性の認識の遅れということが例示されているのですが、ここに書いてないことでまだまだ重要政策課題についての認識の必要な分野はほかにもあると思うのですが、それはどこに触れられるのでしょうか。例えば、社会保障の改革についてもまだまだコンセンサスは得られていないし、考え方によっては、またIT革命が成功して高い成長になれば今の社会保障は変えなくてもいいとか、そういうような高い成長頼みの制度維持という考え方があるわけで、そこは必ずしもコンセンサスがとれているとは思っておりません。

 それから、金融市場と極めてよく似ているのは労働市場でありまして、労働市場についても、過去の非常に長い間、日本経済の労働者の生活を安定させていた日本的雇用慣行というものが今後の低成長・高齢化時代にどうなるかということについても、私は必ずしもまだコンセンサコスを得ているとは思いません。これまでのように企業ベースで雇用を守るのか、それとも労働市場全体で労働者の雇用を守るのかという点に関しても、まだまだ意見の対立があるわけで、今後は、社会保障と労働市場の分野についての重要政策課題についての認識の必要性ということをもっと強調する必要があるのではないかと思っております。

〔 部会長 〕 まだいろいろご議論は残っているかと思いますが、先ほど申しましたように、できればスケルトン案の特に第2章、その書き方について私ども総括部会として締めくくるに当たって何を言うかという点についても、是非ご意見を承りたいと思います。

 先ほどお話があったのは、ある種ご明察でございまして、恐らく別紙2は第2章の下書きというか、ある段階のドラフトであったというふうにお考えいただいてよろしくて、これをまたどういうふうにまとめていくかということも、ご議論していただいたら結構なところだと思います。

 それでは、今まで積み残してきた問題を触れていただいてもちろん結構でございますけれども、できれば経済審議会の活動を締めくくるに当たっての今後の期待、注文、要望といいますか、何を言い残すかということについてお話を承りたいと思います。

〔 G委員 〕 2点挙げさせていただきたいのです。1つは、来年からのことで、先ほどから、大げさに言いますと日本国のガバナンスに関するようなことが出ていると思うのですが、経済審議会の過去という点から見ても、とりわけここ数年、よくわからないと私が思うことがあるので、それは将来の課題あるいは改善点になるのではないかと思います。

 例えば、1点具体的に挙げますと、関連資料2でずっと過去からの経済審議会の計画があるわけですが、その最後、つまり現行の計画というのは昨年度に策定された10年計画「経済社会のあるべき姿と経済新生の政策方針」で、当然現在進行形で2010年までいくものであります。これを見ますと、計画の課題に、「付加価値の源泉が情報と知識の量と内容云々」とありまして、知識の量ということが謳ってあるわけです。今後は高齢化が進んで労働力人口が減っていく。そういう中で知識とか情報というのが、これは日本だけではなくて、世界的に非常に重要な問題でポイントになる。とりわけ日本では、労働力人口が減るわけですから、こういう点が重要であると謳っているわけです。

 ところが、もう一方では、皆様方ご承知のとおり、文部省の中教審では、教育に関して「ゆとり」というのをキーワードにして、一番象徴的には、新学習指導要領において2002年からは小学校で3.14の円周率を3にすることになっているわけです。そういうようなことを目にすると、日本の国では、日本の政府として一方で経済審議会でこういうことを謳いながら、もう一方では、同じ日本国政府として小学校の教育で円周率を3.14から3にする。教育というのは、もちろん経済のためだけではありません。それは当然ですが、多くの人は、少なくとも私のまわりにいる人は、私も含めてですが、子供の一生の幸せのためにも、円周率は3よりは3.14の方がいいというふうに考えているのです。しかし、先ほどからお話しているように3にするというようなことになってきている。ここら辺がどうなっているのだろうか。

 いろいろな考えがあるのでしょうけれども、「ゆとり」という非常に曖昧な言葉で、最近はやりの言葉で言えば、グローバルスタンダードは3.14ですが、そこから日本ひとりが離れてわざわざ3にしていく。一方、経済審議会では、先ほどのようなことを謳っている。このあたりが一体どうなっているのかというのが、非常に疑問に思います。

 この点、先ほどから出ている日本国政府として、一種のインテグリティを求める、あるいは来年からそういう点で改善するということですので、是非ともお考えいただけたらと思います。それが1点です。

 2点目は、先ほどから総理のリーダーシップ云々という話が出て、その場合に、どういう人のどういう形でアドバイスを聞くかということで、1つは、生活者の声も反映させた方がいいというお話もあったかと思います。その点に私も反対ではありません。それは反対ではないということを申し上げた上で、一方では専門的な意見というのも非常に重要だと思います。というのは、経済に関しては過去30年くらいの日本を振り返ってみると、為替レートの動きに関して、日本は基本的な間違いをしたと思います。70年代初頭のブレトンウッズ体制が崩壊して変動相場に移ったとき、当然、360円から308円ぐらい、それから200円台へと円高が非常に進んだわけですが、その円高をどういうふうに理解するかということに関して、グランドスケールで日本全体として間違えたと思いますし、また80年代の後半、プラザ合意、85年年初240円から120円へという円高に関しても、それを基本的にどういうふうに理解するかというところで、やはりずいぶん混乱があったのではないかと思います。

 今のは一例ですが、為替レートの大きな変動をどういうふうに我々が理解して、日本全体として対応すべきかというところでの判断の誤りあるいは混乱というのは、大変大きなツケを日本経済にもたらしたと思いますので、生活者の意見というのは、もちろん初めにも申しましたように反対ではないのですが、是非とも来年から新しくスタートする組織では、そういうところでの基本的な判断を間違えれば大変なツケが後で回ってくるのは当たり前のことですが、その辺りに関してはしっかりした判断を持っていただければと思います。

〔 H委員 〕 経済財政諮問会議ができて新しいことをやるというときに、非常に大事なのは、経済財政諮問会議が出した提案に対して、国民の心の琴線に触れるというか、それによって気持ちが奮い立つというか、そういうものがないと説得力を持たないだろうと私は思います。

 80年代まで何となく成功したと言われているのは、欧米に追いつけ、追い越せというけれども、そこには何か国民がリアリティを感じていたものがあったと思います。テレビがほしいとか、自動車がほしいとか、システムキッチンが欲しいとか、何か自分の頭の中に非常にリアリティを感じていた。そういうものが、言葉としては高度成長とか所得倍増というふうに言われたけれども、国民がそういう言葉に対してリアリティを感じられた。だから、恐らく国民もそれを支持し、1つの大きな力にもなって日本の経済を引っ張ったのだろうと思うのです。

 僕はこれをずっと読んでみまして、1980年代ぐらいの計画を見るといいことを言っているのです。つまり物がある程度揃った。もう物の時代ではない。そういう意味で言うと生活大国だとか、文化だとか、国際社会の中で一目置かれるとか尊重されるとか、あるいは構造改革が必要だとか非常にいいことを言っているのだけれども、国民の側からすると、そういう言葉に対してリアリティを感じないわけです。つまり、「物の豊かさ」の次の「生活大国」のリアリティとは何なのかとか、構造改革は具体的に自分の生活にどういうふうに関係してくるのかとか、国際社会の中で尊重されるとか一目置かれるというのはG8に入ったことなのかとか、もう少しリアリティのある物の言い方をしないと、心の琴線に触れてこないし、それがパワーを持ってこないし、逆に言うと、先ほどから言われているコンセンサスも出てこないのではないか。

 これからは、ますます国民のコンセンサスというのはバラバラになっていきますから、逆に言うと、総理のリーダーシップだって出てこないと私は思うのです。結局は支持率で決まっていくというような話になってしまうわけです。

 そういう意味で言うと、抽象的な言葉をもっとリアリティのある言葉に変えていく。同時に、それを最終的には数値目標とかいうことにしなければいけないわけですが、もう少し国民の生活のリアリティある言葉に変えていくということが、私は大事ではないかと思います。

 同時に、その後なぜ目標が実現できなかったかという反省の中に経済社会情勢に対する認識の甘さがあったとありますけれども、どこに認識の甘さがあったのか。それは、国民のリアリティというものをきちんと感じるような、そういう感性がなかったところに認識の甘さがあったのではないかという気もするし、それから、既得権とか、縄張りとかいろいろなことがあったけれども誰が邪魔していたのか。具体的にそういうものを示していくことも必要だろうと思うし、政治的なリーダーシップが取れなかったというのは一体なぜなのか、官庁の縄張りが強かったのか、あるいは経済界の言い分を重視したのか、あるいは国民が支持しなかったのか。

 もう一つは、たぶん日本では自己改革ができなかったということもあったのですが、これもなぜなのか。にもかかわらず、あるところは出来たというのは、外圧によって可能になった部分が多いのだけれども、外圧と自己改革との関係はどうなのか。

 そういうようなことをもう少し分析した上で、次の21世紀の目標を立てるときには、非常に感性的な言い方で申しわけないのだけれども、国民の琴線に触れて、「そういう社会が出ると居心地がいいな」というふうに思わせるような、そういうものを具体的に出してほしい。そして、その背後に数字の目標みたいなものがあるという形にされるといいのではないかと思います。

〔 I委員 〕 いくつかありますが、第1点は経済財政諮問会議の議員の構成で、私の理解では政治指導者と学者の方、民間の代表というふうに書いてあると思いますが、私は日本経済に今一番必要なことは市場に的確に対応することだと考えていますので、その観点から言いますと、生活者と産業界の意見というのを重視していただきたいと思います。学者の方も大変いい分析をされていると思いますが、私は語弊があるかもしれませんけれども、学者の方々には分析をしていただいて、実際に市場に参加している生活者と企業の方々の意見を重視し、経済の活性化にそういう意見を反映していただきたいと思います。

 これにも関係ありますけれども、私はできるだけ多様な意見の人たちを議論させて、日本社会も過去20~30年来ずっと多様化していますので、その多様性というのを反映する必要があるのではないかと思うのです。

 2点目としては、コンセンサスということが先ほどから議論されていますが、私は経済財政諮問会議というのは、多様な意見を明らかにし、その違いを出して、建前論ではなく本音で議論していただいて、実際に意見が対立した場合に、コンセンサスがなくても1つの結論を出して、それで、米国でよくやるマイノリティオピニオン、少数派意見とか、ディセンティングオピニオンという形での反対意見は記録として出てもいいのではないかと思うのです。むしろ、明らかにして、はっきりした政策論議をすることが重要ではないかと思います。

 先ほどお話があったように、透明性を確保してどういう意見でどういう対立があって、どういう政策のオプションがあったかということをもう少しはっきり国民に提示することがいいのではないかと私は思います。

 3点目としては、先ほどの資料にもありましたけれども、戦略性あるいは優先順位を決めるということが重要だと思いますが、あと、やはりスピードが重要です。外から見ますと、日本の場合は延々と論議をして延々と報告書を出しているけれども、実際に実行に移るまでに非常に時間がかかるという印象を受けるのですが、時間を大事にして、早く行動に移すということが重要です。そういう意味では、決断といいますか、意見が出たら、実施することを決めても、情勢の変化によって、それを定期的に頻繁に修正する必要性もあるのではないかと思います。ですから時間のことを、優先的に考えるべきです。

 4点目としては、政策の中身そのものも大変重要ですけれども、特に、これから世界における日本の役割のことを考えると、日本が何を決断して何を実行するつもりであって、どういう形でするかということを、外に発信するのが大変重要だと思います。これは経済財政諮問会議の役割の一部かどうかは知りませんけれども、何かどこかの日本の政府機関がこういうことをする必要性があるのではないかと思います。今の時点では、日本のこれからの経済政策を含めて、世界に対する発信がいま一つわからない不可解な面がありますので、それを是非解消していただきたいと思います。

 5点目としては、米国の商務省が4年ほど前から毎年公表しているITに関する報告書がありますが、ああいう形の、特に日本のITに関する状況の分析と将来の展望について、これは郵政省とか1つの官庁ではなく、むしろ横断的な経済政策を担当する組織に、そういう分析と経済におけるITの役割あるいは影響について、報告書を定期的にまとめていただきたいと思います。

 6点目、最後には、経済財政諮問会議そのものが1つの、特にITの活用に関する模範になっていただきたいと思うのです。ですから参加者もITを使っていただいて、国民にITの重要性を示すというように。1つには単なる報告書を出すだけでなく、実際に使っていただいて1つのショーケースとして、特にITの重要性あるいは役割を国民に印象づけるといいますか、訴えることを考えても、できるだけITを活用していただきたいと思います。

〔 J委員 〕 今までの議論というのは、日本の政策決定メカニズムに対して大変大きな課題を皆さんが議論しておられるのだと思います。私もいろいろな審議会に出させていただいていますが、今日各委員がおっしゃっていることは、みなそれぞれその中にある欲求不満の1つであるわけです。

 問題は、審議会というのはどういうものなのか、それから今後、今話題になっている経済審議会が発展さらに強化されて経済財政諮問会議という形になるのですけれども、それはどういう機能を果たすのかというのが、実は最近の政党との関係の報道などを見てもあまり明確でないという点です。

 私は、今それぞれの先生方がおっしゃったこの審議会のようなものは、いわば間接民主主義を補完する国民の政策決定への参加という直接の政策決定参加という意味合いなのか、それとも専門家集団としてあくまでも政策案や対案等を作る集団なのかによって、先ほどの意見が違ってくるように思います。学者と経済人だけでいいのかどうかとか、市民が参加しなければいけないのかどうかとか。確かに、先ほどの大工さんの意見を聞けと言っても、ITをいくら活用しても、それを全部機能させるというのはなかなか難しいと思います。もちろん、私も賛成で、市民が参加しなければいけない、あるいは消費者と経済人というご意見はわかるのですが、機能として両方持っているのをどういうふうに明確に区分できるかというのが課題だと思うのです。今、省庁再編に基づいて審議会を再編するというと、そこの中身は明確でない。ですから、経済審議会だけではなくて、全政府的にこうした問題をどういうふうに位置づけるかということを議論していかないといけない。

 先ほど、あるいろいろな審議会がほかの省庁にも競争的に手を伸ばしていくというようにに言われましたが、昔流に言うと、これをアウフヘーベン(止揚)するのは、実は国会ではないかという気がします。もちろん、既に国会が国民の声を、一々その都度選挙だけでなくて聞くということは難しいわけですから、これは公聴会をどういうふうにするかということと相関関係があるというように私は思います。

 ですから、多様性というものをどういうふうに処理して、そして、専門家集団として何を提起するかということを明確にしさえすれば、わりあい機能は明確になる。

 今度の経済財政諮問会議は、わずか数人の議員で構成されます。それについて、国民の各層を代表しろとか、多様性を代弁しろと言っても、ほとんど無理がある。もし仮に、この中の経済人の方でも、学者の先生方でもいいですが、1人出て行って、その多様性を全部代弁しろといっても、無理があるのではないか。

 そうなると、少人数であるということになると、私は、そこに求められているのは専門家としてのいわば理論の整理や、こうあるべきではないかということを提起するのであって、多様な意見についてはもっと違った形で市民参加、国民参加というようなシステムを作らないといけない。このようなことを言うと、先生方の批判になっていけないですが、今の国会の状況では国民の多様な意見を吸収していただけるとは到底思えない。

 ということではないのかと思いますが、私が言っているのは非常に抽象的です。あまり漠とし過ぎますから、この取りまとめにうまく影響させることができるかどうかはわかりませんけれども、ささやかな抵抗として、経済審議会としてこうした多様化の時代における意見具申のあり方というものを、前書きなり何なりのときにそういう意識を持って書いていただくと非常にいいのではないかと思っています。

〔 K委員 〕 部会長が先ほど、スケルトン案の第2章で、新しい中央省庁体制における経済政策運営の期待についてどういうふうに書くかということが非常に大事なのだとおっしゃいましたけれども、いろいろ各委員からお話が出ているように、今後の体制、経済財政諮問会議が中心になってやっていくという体制は、今までの経済審議会で経済計画を作るときのように、フォローアップをするときにも、各界の代表の方をたくさん集めてえらい時間をかけて、そして議論をして積み上げていったことをやらないということである。要するに、数人の人が責任をもってやる、いわゆるトップダウン方式だという考え方に転換しようという制度改正ではないかと取れるわけです。

 だとすれば、あまりここのところはお書きにならないで、そういうことであろうとした方がいいのではないか。しかし、そういった場合に、先ほどのマイノリティの意見も書くべきであるとか、第1章に書いた今までやってきた経済審議会での活動の中で、要するにこういうプラスとマイナスがあったということをよく参考にしてお考えください、ということを書くだけでいいのではないか。

〔 L委員 〕 別紙2の最初の(課題1)「内外情勢の変動とその認識の困難性」に関連する私見を延べさせていただきますと、ここにはできるだけ幅広く意見を聞くというように書いてあるかと思うのですが、私はこういうことは変化点をどう読むかということで、変化点が読めないための失敗であったと思います。ですから、今のように経済の状態がよくないときは、みんなが変化を望むから、コンマ1パーセントのプラスになったのを、みんなそう言っている。ところが、経済状態が非常によくなると、みんな変化を望まないので、いつが変化点だったかということが変化してからでないとわからない、そういうことだと思うのです。

 ですから、大勢の意見を聞いてコンセンサスを取るというよりは、むしろ、少数意見をどうくみ上げるかということの方が大切ではないか。経済の調子のいいときは、大多数の人がいい思いをしているので、みんなの意見をまとめても、それが変化するというふうに先は読めない。やはり少数意見をどう扱うかということも大切だと思います。

 それから、新しい中央省庁体制における経済政策の運営の期待ということに関してですけれども、私は、非常に具体的なお願いなのですが、今進行中のIT革命というのは、結局のところはいろいろな経済活動がグローバル化するということですから、国の単位での産業政策では限界がある。全てそれで解決できない問題が出てくる。例えば、著作権の問題、ビジネスモデル特許などの知的財産権の問題、あるいは関税だとか、サイバー上での犯罪とか、トラブルが起こったときの裁判管轄権がどうなるのかとか、いろいろな国際間で調整すべき課題がいっぱいあると思うのですけれども、こういうのを日本がリーダーシップをもって早く取り組んでいただきたい。今までは、米国が先行して、日本が後追いするというようなところがあって、遅れた分だけ、どうしても産業界はいらいらして待っているというところがありますので、この辺で非常にスピード感のある対処をしていただきたい。

 もう一つは、これは前からよく言われることですけれども、日本の高コスト体質、これをどう是正していくかということの具体的な提言をぜひ出していただきたい。それには、なぜ日本が高コスト体質なのかという分析が、私は今までは不十分だったのではないかと思います。日本の経済活動の全体としての効率が低いということだと思うのです。ですから、どうすれば日本全体の経済活動の効率を上げられるかということと、高コスト体質の是正というのは表裏一体の問題だと思いますので、是非そういう点にメスを入れて具体的な是正の政策というものを打ち出していただきたい。これはかなり具体的なお願いですけれども、よろしくお願いいたします。

〔 M委員 〕 将来から現在を見るという観点に立ちますと、経済政策における持続可能性の問題というのは極めて重要かと思うわけです。ビジネス上の効率の悪さというのは、これはビジネスの世界の方はすぐに感知することができるわけですが、グローバルなレベルにおける環境効率の悪さというのは、なかなか検知できない状態で、まさしく変化点がかなり通り過ぎてから気がつく。しかも、これは米国が成功しているとか、ヨーロッパが成功しているとかいったような、成功者か必ずしもいない経済運営上の問題だと思うのです。

 こういう世界に関する経済財政諮問会議における扱い方というのは、環境に関する環境省の審議会のあり方とかなり違った側面を持つのではないか。特に、持続可能性というのは、環境的持続可能性以外にも、経済的持続可能性、社会的持続可能性ということで国際社会では語られているわけですが、日本における取り上げ方というのはまだ、環境と経済との両立という点からの取り上げにすぎないと思うわけです。

 例えば、循環経済という取り方をしているわけですが、循環経済はあくまで1つの形態なり、あるいはこれまでの使い捨て・規格大量生産社会からの訣別を表す言葉ではありますけれども、本質的には持続可能な経済社会を構築するというのが大命題です。その大命題に関する見通しなり、あるいは国民に対するメッセージというのは、これからの経済運営あるいは国策の極めて重要なポイントではないかと思うのですが、この側面に関する前出しが、ITとか高齢化社会という面における記述に比べて弱い。これは、言い換えますと、誰も代弁者がいないというところに根ざしているのではないかという気がしますので、将来を見通した比較的少数の専門家の意見を含めて反映するような仕組みが必要ではないかと思います。

〔 N委員 〕 従来から申し上げておりますように、経済審議会には、経済界の意向が十分反映していたということが言えると思うのですが、今度の経済財政諮問会議になって、もちろん首相のリーダーシップ、それについても経済界の代表が参画するということになろうかと思いますけれども、我々としましては、経済財政諮問会議での内容がディスクローズされていくことが重要だと思います。それを是非お願いしたいということであります。

 それから、経済戦略会議というのがひととき大変な国民の期待を担ったということがかつての現象であったと思うのです。その結果がどうであったかはいろいろ問題があったと思いますが、尻しぼみであったとも言えるわけですけれども、ああいったような国民の期待というのはあるわけです。あれは、官と離れたから期待があったというわけではなくて、そのときにあった国民のニーズというのを何らかの形で吸い上げたのです。そういう点では、経済財政諮問会議というのはそういうものがないといけないと思います。

 ただ、私は、全ての細かい点を吸い上げる必要はないけれども、少なくとも、ここでの内容とかポイント、あるいは中期と短期の一体性をどういうふうに調整していくかという、そこはきちんとディスクローズしながら議論していく必要があるのではないか。

 各経済団体がいろいろな要望を出します。それは大体、党に出してきているわけですけれども、内閣にもそれぞれ出しますが、それぞれ省にも出しているわけです。税制の問題だったら、主税局にお願いし、党の税制調査会にも行くというような形で行っているわけです。先ほどご意見がありましたけれども、そういったものをどういう形で結び付かせるかということをしないと、現実的に財界との調整機能というのはないわけです。経団連との結び付きとか日経連との結び付き、そういったこともきちんと、何もそこの意見を聞く必要はないので、対話はお願いしたい、こういうふうに思っています。

〔 O委員 〕 1点だけです。スケルトン案の最後に関連するのですが、(2)の「加速する経済社会の変化に対応した迅速な政策の形成と実行」はまさにそういうことで、これに異議を言うわけではないのですが、一方で継続性といいますか、そこの観点というのは常に考慮する必要があるのではないか。

 今までの経済計画を見ていましても、政権が代わると新味を出すために経済計画を出すというようなこともあったりして、従来の計画がどこに行ってしまったのかというところがあります。もちろん、変化する時代ですから、変わるのは当然ですけれども、一旦決めた目標とすべきものがあれば継続するべきものがある。そこのところのフォローといいますか、それがどうなっているのかということが重要である。仮にその目標を修正する場合には、こういうことでするということの1つの継続性というものがないと、国民にとってもわかりにくいようなところがあるかと思いますので、変化に対応するのも大事だけれども、継続性ということも1つ考慮する必要があるのではなかろうかということです。

〔 P委員 〕 第2章で、今後の期待ということが書かれていまして、別紙2で、これまでの経済審議会としての反省といいますか、おのれにかなり厳しい記述もありまして、私はそういう点について非常に感銘を受けるわけです。ひるがえって、第2章、今後の期待ということになりますと、別紙2で言っているような自己批判といいますか、非常に厳しいこれまでのやり方に対する批判的な意見も含めて今後に注文をお出しになっているわけですが、一体誰に注文をしているのだろうかというところがありまして、この第2章を読むと、結局のところこれから引き継がれる事務局としては内閣府であり、経済審議会に対しては経済財政諮問会議であるということになるわけですけれども。経済審議会が経済財政諮問会議に代わり、事務局が経済企画庁から内閣府に代われば、これまで経済審議会がなし得なかった、あるいは非常に不十分であったようなことが本当に実現できるのですかということになってくると、審議会のあり方というものが根本的に変わるのかという問題ですとか、ここで書かれている内閣総理大臣のリーダーシップということに結局は帰着するのかどうか、この辺は、私は正直に申し上げて非常に不安があります。本当にそうなるのかという気持ちがあるということだけ、最後に申し上げておきます。

〔 部会長 〕 どうもありがとうございました。本日、特に大きく言えば日本の経済政策のデシジョンメーキングについてのプロセスといいますか、ガバナンスについてのこれからのあり方について、たくさんのご意見いただいたと思います。委員からもご指摘がありましたように、大きくシステムは変わるわけでありますけれども、その中で引き継いでいけるもの、我々の当面した問題でいろいろ試みた中で吸収していただけるものと、欄外に落ちこぼれるものと両方あると思うのですが、その辺をもう一度洗い直して、コンセンサスとリーダーシップがうまく調和する次の体制に持っていってもらいたいという期待を述べるという形になるのではないか、そんな予感がいたしております。

〔 事務局 〕 たくさんご意見を頂戴しまして、これらを踏まえて最終的な報告案を作ろうと思いますが、1点、別紙2の扱い等の話があったわけですけれども、確かに、別紙2と第2章というのはかなり重複するものもございますが、今回の報告を準備する事務局の立場で考えまして、今回最後の経済審議会のいわば部会の報告ということになって、これまでの50年間の経済審議会の活動に対して、1つは感謝をし、よくやっていただいたというものを表明するということも考えております。ただ、そうは言っても、新しい体制に対して、経済審議会の今までの活動を振り返って、よりよく新しい体制が機能するようにこういうことについては引き継いでほしいというような形でまとめられたらと思っているのですが、そのときに別紙2は、言ってみれば自己批判で反省面がかなり強く出ていまして、私どもとしては、反省というものをあまりにも表面に出すというのは今回、最後の50年を振り返ってお礼を申し上げる趣旨から少し厳し過ぎる感じになるのではないかと考えております。したがって、できれば別紙2は別紙という形でわりと正直ベースでまとめさせていただいて、第2章では、もちろん繰り返しになる部分もあるのですが、次の経済財政諮問会議、内閣府への申し送りということで、経済審議会から言うにふさわしいような体裁を取りながら、必要なことを言っていきたいと考えておりますので、できれば別紙2というので述べさせていただけたらということでございます。

 あとは、審議会の性格づけで少しサジェスチョンをいただいたようなところもございますし、またコンセンサスという言葉が非常に難しい言葉で、若干整理の悪いところも確かにあるかと思いますので、その辺のところは気を付けて最後のドラフトをやりたいと思います。また作成しきましたら早めにご連絡をしてご意見等を求めたいと思いますのでよろしくお願いいたします。

〔 部会長 〕 本日、ご発言の時間がなかった方、あるいはもっと言いたかったけれども言えなかったような点がございましたら、事務局の方にご連絡をいただきたいと、私からお願いをいたします。

 次回は総括部会の最後の回となりますので、報告書案を用意してご審議いただくという形になります。なお、それまでの間に事務局を通じて、個別にもいろいろご意見を伺ったり、あるいはご発言内容の確認等をさせていただくかもわかりませんが、その場合にはよろしくご指導のほどをお願いしたいと思います。

 次回の日程は、既にご連絡しておりますけれども、11月28日火曜日の午後2時から4時までこの会議室で最終の会議を開かせていただきたいと存じます。

 それでは、本日の議事は以上で終了いたしました。これにて閉会とさせていただきます。大変ご熱心なご議論をいただきまして、誠にありがとうございました。

- 以上 -

(連絡先)
経済企画庁 総合計画局 産業班
Tel 03-3581-0977