経済審議会総会議事録

日時 : 平成 12年 6月 30日
場所 : 内閣総理大臣 官邸ホール
経済企画庁


経済審議会議事次第

日時 : 平成12年6月30日(金)14:00~15:30
場所 : 内閣総理大臣 官邸 ホール

  1. 開会
  2. 経済企画庁長官あいさつ
  3. 『「経済社会のあるべき姿と経済新生の政策方針」の実現に向けて』(案)について
  4. 経済審議会の今後の運営について
  5. 内閣総理大臣あいさつ
  6. 閉会

(出席)

(委員)

豊田彰一郎会長、長岡實会長代理、伊藤助成、角道謙一、小長啓一、小林陽太郎、佐々波楊子、得本輝人、那須翔、畠山襄、星野進保、星野昌子、水口弘一、村田良平、諸井虔、山口光秀、和田正江

(内閣官房)

森内閣総理大臣、額賀内閣官房副長官、松谷内閣官房副長官、竹島内閣内政審議室長、江利川首席内閣参事官

(経済企画庁)

堺屋長官、中名生事務次官、新保経済企画審議官、坂官房長、牛嶋総合計画局長、河出調整局長、金子国民生活局長、鹿島物価局長、小峰調査局長、永谷総合計画局審議官、塚田総合計画局審議官 他

(配布資料)

  1. 経済審議会委員名簿
  2. 「経済社会のあるべき姿と経済新生の政策方針」の実現に向けて  ーIT革命を起爆剤とした躍動の10年へー  (案)
  3. 「経済社会のあるべき姿と経済新生の政策方針」の実現に向けて  ーIT革命を起爆剤とした躍動の10年へー  (案) のポイント
  4. 「経済社会のあるべき姿と経済新生の政策方針」の推進状況
  5. 経済審議会の今後の運営について(案)

経済審議会委員名簿

会長
豊田 章一郎   トヨタ自動車(株)取締役名誉会長
会長代理
長岡  實   (財)資本市場研究会理事長
伊藤 助成   日本生命保険相互会社代表取締役会長
稲葉 興作   石川島播磨重工業(株)代表取締役会長
角道 謙一   農林中央金庫特別顧問
金井  務   (株)日立製作所取締役会長
公文 俊平   国際大学グローバルコミュニケーションセンター所長
香西  泰   (社)日本経済研究センター会長
小長 啓一   アラビア石油(株)取締役社長
小林 陽太郎   富士ゼロックス(株)代表取締役会長
佐々波 楊子   明海大学経済学部教授
下村 満子   健康事業総合財団理事長
末松 謙一   (株)さくら銀行常任顧問
鶴田 卓彦   (株)日本経済新聞社代表取締役社長
得本 輝人   全日本金属産業労働組合協議会議長
那須  翔   東京電力(株)相談役
畠山  襄   日本貿易振興会理事長
星野 進保   総合研究開発機構特別研究員
星野 昌子   日本国際ボランティアセンター特別顧問
水口 弘一   (株)野村総合研究所顧問
村田 良平   (株)三和銀行特別顧問
諸井  虔   太平洋セメント(株)取締役相談役
師岡 愛美   日本労働組合総連合会副会長
山口 光秀   東京証券取引所顧問
山口  泰   日本銀行副総裁
鷲尾 悦也   日本労働組合総連合会会長
和田 正江   主婦連合会会長


〔 豊田会長 〕 ただいまより経済審議会を開催いたします。

本日は、委員の皆様には大変ご多忙中のところお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。また、堺屋経済企画庁長官におかれましても、お忙しい中をご出席いただきましてありがとうございます。

なお、森総理大臣及び額賀官房副長官、松谷官房副長官にも、3時過ぎ頃にご出席いただける予定となっております。

それまでに、できる限り議事を進めたいと思っておりますのでよろしくお願いいたします。

それでは早速でございますが、堺屋経済企画庁長官からご挨拶をいただきたく存じます。

〔 堺屋経済企画庁長官 〕 後ほど、総理も伺って皆様方にご挨拶させていただきますけれども、ちょっと所用で遅れておりますので、まず私からご挨拶させていただきます。

経済審議会委員の皆様におかれましては、大変ご多用の中ご出席いただきまして、誠にありがとうございます。

政府は、先の小淵内閣以来、金融システムの改革、産業競争力の強化、雇用の創出と労働市場の改革、中小企業政策の抜本的な見直しなど、様々な経済構造の改革に取り組んでまいりました。その成果もございまして、最近の我が国経済は、厳しい状況を未だ脱してはおりませんけれども、景気は緩やかながら改善を続けております。ようやく自律的な回復に向けた兆しも徐々に強まるようになってまいりました。

こうした状況の中で、公需から民需にバトンタッチを円滑に行い、景気を本格的な回復軌道に着実に乗せていくために、21世紀の新たな発展基盤を築く、大胆な日本経済の新生と構造改革に取り組むことが重要であります。具体的には、本日ご審議いただく予定の報告書案においても当面の戦略的課題として強調されております、IT革命の推進、循環型経済社会の構築、高齢社会への対応の3つの課題に重点を絞り込みまして取り組んでいくことが必要であると考えております。こうした取組みによって、21世紀の我が国が新たな発展基盤を築いていくことが可能であろうかと思います。

経済審議会におきましては、今年2月以降、昨年閣議で決定いただきました「経済社会のあるべき姿と経済新生の政策方針」の実現に向けて、こうした今後の取り組むべき課題について、積極的にご審議いただいてまいりました。本日、その成果をとりまとめて、ご報告いただけることになっておりますが、政府といたしましても、経済審議会の報告の趣旨を十分に踏まえまして、経済新生と構造改革に積極的に取り組んでまいりたいと考えています。

私、昨日までOECD閣僚会議に出席しておりましたけれども、日本の経済が予想以上に回復しました。一昨年の暮れのOECDの予想では99年度もマイナスだったのでございますが、プラス成長になったということを高く評価されております。また、構造改革も遅い遅いと言われながら、一つ一つの項目を見ていきますと、1年半前に予想だにされなかったことがかなり実現しているのではないかと考えております。これも、皆様方のご審議、ご提案のお蔭と大変うれしく思っております。

最後になりましたが、報告書をとりまとめていただくに当たりまして、これまでご尽力いただきました豊田会長をはじめとする委員の皆様方に対しまして、心から御礼申し上げます。本日の審議のほどをよろしくお願いしたいと思います。

どうもありがとうございました。

〔 豊田会長 〕 ありがとうございました。

それでは、議題に入らせていただきたいと存じます。最初の議題は「『経済社会のあるべき姿と経済新生の政策方針』の実現に向けて」についてでございます。昨年閣議決定されました「経済社会のあるべき姿と経済新生の政策方針」につきましては、経済審議会において、その諸施策の推進状況を点検し、今後の政策運営の方向性を政府に報告することとされており、政策推進部会において具体的検討が進められてまいりました。

それでは、まず、今回の報告案についてとりまとめに当たられた政策推進部会の水口部会長から、部会での審議経過等についてご報告をいただき、続いて、事務局から説明をお願いいたします。

〔 水口委員 〕 政策推進部会の部会長を務めさせていただきました水口でございます。本日お諮りいたします報告案をとりまとめました政策推進部会を代表して、その審議経過と概要を簡単に説明させていただきます。

政策推進部会では、「経済社会のあるべき姿と経済新生の政策方針」(以下「あるべき姿」と表現いたします。)の実現に向けて、これまでの推進状況を点検するとともに、今後取り組んでいくべき課題について、計8回にわたり、調査審議を行いました。この過程で、主要なテーマについて、関係省庁からヒアリングを行うとともに、事務局である経済企画庁の研究会の検討成果も報告していただき、調査・審議の材料とさせていただきました。

また、短期間で十分な調査・審議を行うため、政策推進部会の下に政策小委員会を設け、特に当面戦略的に取り組むべき課題について、計5回にわたり調査・審議をいたしました。したがいまして、4月から6月まで計13回の調査・審議を行いました。

これらの調査・審議を踏まえ、本報告案では、第1部として、「あるべき姿」の実現に向けた当面(3年間程度)の戦略的政策課題をまとめ、第2部として、「あるべき姿」で示されました個々の政策について、その推進状況と今後取り組むべき課題をまとめております。

第1部においては、現在の景気回復の動きを「あるべき姿」が目指す経済新生の新しい発展の成長軌道へとつなげていくため、当面3年程度の間に、以下の3つの政策課題に戦略的に取り組むべきであるとしております。

すなわち、

第1、IT革命を起爆剤とした新しい経済発展

第2、静脈産業の発展を通じた効率的な循環型経済社会の構築

第3、安心でき活力ある高齢社会の構築

の3つでございます。

まず、IT革命については、最近のアメリカの経験が示しますように、経済に力強いダイナミズムをもたらし、生産性の向上と新しいビジネス機会を提供し、その成長を通じて、長期的な経済発展の原動力になるものと考えます。本報告書案でも、IT革命が企業活動や消費生活にもたらす効果を展望した上で、スピード、民間主導、新しいネットワーク社会への対応という3つの基本的な考え方に基づき、IT革命の推進を政府における当面の最重要の戦略的課題と位置づけ、経済社会の制度・システム面までも含めて、総合的、戦略的に取り組む必要性を提言しております。

続きまして、循環型経済社会の構築です。現在の大量生産ー大量消費ー大量廃棄の経済行動がそのまま推移すれば、近い将来において最終処分場の制約から持続的な経済成長が困難となることも想定されます。そうした事態を回避し、環境と調和した持続的成長を続けていくために市場における競争を通じて、静脈産業(廃棄物処理業や広い意味でのリサイクル業を指します。)を育成することにより、効率的に循環型経済社会を構築していく必要性を提言しております。

最後に、安心でき活力ある高齢社会の構築です。今後、少子高齢化が進み、近い将来に人口が減少に転じていく中で、安心でき活力ある高齢社会の基礎を早急に固める必要があります。社会保障制度については、安心でき効率的なものとなるよう、今後とも検討が必要ですが、特に、高齢社会の安心の柱となる介護保険制度が本年4月にスタートしたことから、この介護保険制度を定着させ、介護ビジネスを推進することにより、将来への不安要因を取り除いていくことが重要です。また、年齢・性別に関わりなく個人が社会に参画できる条件を整備していく必要性も提言しています。このことは、結果的に少子高齢化がもたらす我が国経済への負担を軽減することができると考えられます。

第1部では、以上の3つを、当面の戦略的政策課題としてまとめました。

続きまして、第2部では、「あるべき姿」で示されました5つの柱に沿って、個々の政策方針について、その推進状況と今後さらに取り組むべき課題を整理しております。

すなわち、

第1、多様な知恵の社会の形成

第2、少子高齢社会・人口減少社会への備え

第3、環境との調和

第4、世界秩序への取り組み

第5、政府の役割

の5つの柱です。

全体として政策の推進状況を見ますと、規制改革の進展や循環型経済社会の構築に向けた法整備、行政改革等、構造改革への取組みは進展しておりますが、急速な環境変化や将来を展望したときに、まだまだスピード感に欠け、かつ取り組むべき課題は多く残されております。第2部では、こうした課題に政府として積極的に取り組んでいく必要性を提言しております。

以上、本報告案の審議過程と概要について、簡単にご説明させていただきました。より詳細な説明を、事務局よりお願いしたいと思います。

〔 牛嶋総合計画局長 〕 事務局の総合計画局長の牛嶋でございます。私の方から、主としてお手元の資料3のポイントによりながら、また適宜資料2の報告案の本文をご参照いただきながら、補足説明をさせていただきます。

資料3のポイントの2ページからご覧いただきたいと思います。この報告案は、2部構成となっており、第1部は、ただいま水口部会長からご説明がございましたように、3つの課題を、「あるべき姿」の実現に向けた当面の戦略的政策課題として挙げております。

第1が、IT革命を起爆剤とした新しい経済発展でございます。ご承知のように、アメリカにおける最近の経済の好調、特に、90年代後半の経済成長率の加速の要因として、ITの効果が大きいというさまざまな調査結果が出されております。

本報告案においても、ITの経済効果について検討をしており、資料2の本文の5ページの下の方で「1)IT革命の経済効果」のところに記述がございますが、6ページにかけて、そのことを書いてございます。それから、脚注の3で、経済モデルを使用した試算を紹介しております。それによりますと、今後5年間、我が国において、アメリカと同様のIT生産部門の生産性向上の加速が見られ、また、電子商取引(いわゆるeコマース)が順調に拡大していくとすれば、直接的な生産性向上効果が、5年間でGDPの2.1%、波及効果も入れますとGDPの4.2%になるという結果が得られております。

こうした効果が発揮されれば、IT革命が新しい経済発展の原動力と呼ぶにふさわしいものになると期待されるわけでございます                     本文の方では、続きまして、IT革命の進展に伴う企業活動の姿と消費生活の姿を記述してございます。企業活動は、そこにさまざまなこれからの変貌を書いていますが、その最後の部分、7ページの下の方に、「以上のような変貌の中で、企業活動全般にわたる変革が進むものとみられるが、特に、我が国の競争力の重要な源泉でもある『ものづくり』の分野において我が国の強みを生かす形でITの活用が進むことが期待される。」という形で、我が国の得意分野との関係について触れてございます。

また、「消費者生活の姿」では、我が国のインターネットの普及率は現在、アメリカよりも低いわけです。それが、移動電話による接続が急速に増加していることなどから、遠からず、アメリカを抜きそうであること。8ページの上の方ですが、「さらに、現在政府が進めている『インターネット博覧会(通称:インパク)=楽網楽座=』等を通じて消費者が楽しめる多様なコンテンツが提供され、インターネットが消費財としての性格を強めるようになれば、その普及が一層促進されるものと期待される。」ということも述べてございます。

そうしたインターネットの普及に伴い、我が国における企業対消費者(BtoC)の電商取引は、従来の予想以上に拡大する可能性もあるということを触れてございます。

一方、IT革命の進展に伴い「懸念される側面」として、8ページの4)で3点を挙げてございます。いわゆる情報格差(デジタル・デバイド)の拡大、雇用のミスマッチの発生、ネットワーク社会への移行に伴う新たなシステミックリスクの発生といった懸念を述べていまして、「これに対する適切な対応が必要」という認識を示してございます。

次に、「IT革命推進の基本的考え方」として、9ページから10ページにかけて、「スピードの重視」、「民主導の変革」、「新しいネットワーク社会への対応」を挙げてございます。「新しいネットワーク社会への対応」には2つの側面がございまして、1つは、ネットワーク取引に対応した「新たな市場の枠組み作り」を早急に行う必要があること。もう一つは、私どもも苦しめられた面がございますけれども、ハッカーあるいはサイバーテロ等の悪意を持った攻撃に対する「システムの安全性確保と求められるグローバルな視点」ということでございます。

次に、「IT革命を起爆剤とした新しい経済発展に向けて」の方策について提言をまとめてございます。時間の関係もございますので、先ほどの資料3の方に戻っていただきまして、2ページの最後のところからですが、このポイントに沿って説明を続けさせていただきます。

そこにございますように、「IT革命が経済社会にダイナミズムと創造性をもたらし、新しい経済発展の実現に向けてその効果が最大限に発揮されるためには、情報通信の高度化等のITに直接関係する範囲を越えて、企業経営のあり方、労働、雇用のあり方、さらには、市場の枠組を形成する法制度のあり方までも含む経済社会の幅広い分野における変革が必要」という認識を示してございます。「こうした観点に立って重要政策課題を統一的に位置づけた上で、以下の方向に沿って重点的取組みをすすめていくことが重要」としてございます。

5つ挙げておりまして、第1が、「予算・人員の重点配分と既存のネットワーク基盤の有効活用」でございます。予算・人員の重点配分は当然のことですが、公的部門においても様々な光ファイバー網等の大容量通信手段を整備しています、そうしたものの民間への積極的な開放等を提案してございます。

第2が、「ネットワーク社会における経済取引に対応した新たな市場の枠組みの構築」でございます。先ほども申しましたような、ITに直接関連しますネットワークの高速・大容量化、低廉・定額化、モバイルの活用、放送のデジタル化、通信と放送の融合等による情報通信ネットワークの高質化を推進することはもちろんですが、早急に新たな市場の枠組みの構築を行うことで、人々が安心してネットワーク社会での経済取引を行うことができるという状況にする必要がある、という認識で2つ挙げてございます。「1)ネットワーク取引に対応した制度の整備」、「2)安全・危機管理対策の強化」でございます。

第3に、「我が国をグローバルなIT革命の中心に位置付けるための方策への積極的取組み」でございます。IT革命時代においてはスピードが勝負になってまいります。「国際競争力を確保していくためには、日本を常にグローバルなIT革命の中心に置いておくことが必要」という認識で政策を提言しております。そのため、グローバルなIT革命を先導できるような、「技術・システム開発の推進」、「世界の情報ビジネス、ネットビジネスが日本に立地するような環境の整備」、「インターネットのグローバルガバナンスへの貢献」等の世界的課題への取組みがまとめられてございます。

第4に、「IT革命の成果を最大限に生かすための物流のスピード化の促進」でございます。情報の方は瞬時に届くわけですが、物はそういうわけにもまいりません。全体としてスピードアップを図るためには物流のスピード化が非常に大きな課題になっているわけで、基幹的なインフラの整備に加えて、「物流システムの標準化・シームレス化・ペーパーレス化の促進」、「ITを活用した物流の効率性の向上」を課題として挙げてございます。

第5、最後の柱ですが、「IT革命時代の変革とスピードに対応できる経済社会システムの構築」でございます。3つの側面でこのことを言っておりまして、1つは、「企業活動面での変革へのサポート」ということで、「企業経営、組織の変革を支える環境の整備」、「変革の主体となるベンチャー等へのサポート」。前者に関しては、株主総会等の会社の機関のあり方も含めたコーポレーションガバナンスのあり方の検討及び所要の措置、あるいは規制緩和撤廃の徹底で魅力的な事業環境を整備する、ということを含んでございます。後者では、一部の投機的動きに幻惑されることなく、市場競争力のある、将来大きくビジネスとして伸びていく、本当の意味でのベンチャーを育てていく、という観点に立った政策提言がまとめられてございます。

続きまして、4ページにまいりますが、2つ目が労働市場の観点からで、雇用のミスマッチを解消するためにも、「労働市場の機能強化と労働者の能力開発への支援」が重要であるとしてございます。労働市場の需給調整機能の強化、あるいは企業外部での職業能力開発システムの充実、または、有能な外国人労働者の活用といった点についても触れてございます。

3つ目が教育の面で、「教育におけるグローバルリテラシーの確保」を言ってございます。ネットワーク化したグローバル社会において、コンピュータあるいはインターネットといった情報技術、あるいは国際共通語としての英語を使いこなして、IT革命に対応できる能力を育てるという趣旨で提言がなされております。

第2の課題ですが、「『静脈産業』の発展を通じた効率的な循環型経済社会の構築」が挙げられております。本文では20ページ以降に技術してございます。

この「基本的な考え方」ですが、「現在の大量生産ー大量消費ー大量廃棄の経済行動がそのまま推移すれば、近い将来において最終処分場の制約という面で持続的な成長が困難となることも想定される」。したがいまして「環境と調和を保ちながら長期的な経済成長を達成するためには、廃棄物のリデュース、リユース、リサイクルを基礎とした循環型経済社会を実現することが緊急の課題である」という認識でございます。「最近、『循環型社会形成推進基本法』の制定等関連法制の整備をはじめ本格的な取組みが始まっているが、この機会を捉えて取組みを強化し、市場競争を通じて静脈産業を育成することにより、効率的な循環型経済社会の構築を進めていくことが必要」であるという基本的な考え方でございます。

「静脈産業発展のための課題と方策」でございますが、第1に、「循環資源に係る適正な市場の形成」が挙げられます。「不法投棄をはじめとする不適正な処理を行う業者が、不当な処理価格により選択されて、優れた技術を有し適正な処理を行う業者が結果として市場から排除されるという逆選択が生じないようにすることが基本的な課題」でございます。「そのため、取引当事者が相互に説明を強化し、それぞれの責任を果たすとともに、違法行為の監視及び抑止を徹底することが重要」であるという認識が書かれてございます。

第2に、「静脈産業の飛躍的な生産性向上」が挙げられています。「静脈産業の生産性向上を実現する上では」、「広域的な観点からの産業立地、施設配置と産業基盤整備」、また「効率的な静脈物流の形成」、あるいは当該の産業においては小規模の事業者が多いということもあり、「事業者間の連携や統合による経営基盤強化への支援」ということを挙げてございます。

それらに加えまして、「あらかじめ廃棄物になった場合の処理工程を考慮した製品等の設計・製造」、効率的な処理ができるような形での「効率的な収集」といった点も挙げてございます。

また、5ページですが、この問題はようやく本格的な取組みの緒についたばかりということで、「それぞれのシステムの実施後も、関係者による評価を行い、問題があればシステムを迅速に修正していくことが必要」ということも、あえて付け加えてございます。

第3の課題ですが、「安心でき活力ある高齢社会の構築」を挙げてございます。本文の26ページ以降でございます。

本年4月から介護保保険制度がスタートしましたが、これはもちろん、「これからの高齢社会における『安心』の大きな柱」になるものです。「さらに高齢社会の安心を真の意味で確保していく」という観点からは、「介護に加え、年金、医療等総合的な社会保障の面でこれからの人口の動態に対応できる、制度としていくことが必要」でございます。さらに、「高齢社会を活力あるものにしていくためには、これまで潜在的な能力を十分に生かせる環境が整備されていませんでした高齢者と女性が意欲と能力に応じて働き、社会参加できるようなシステムを構築することが重要。これから数年のうちに(おそらく2005年をピークにして)労働力人口が減少に転ずることになるが、そうなる前に、安心でき活力ある高齢社会の基礎を早急に固めることが肝要」というのが基本的な認識でございます。

3本の柱がございますが、最初に、「安心でき、かつ効率的な社会保障制度の構築に向けた総合的検討」を挙げてございます。「国民年金法等の改正が行われたところであるが、引き続き、年金制度に関する諸問題を含め社会保障制度が将来にわたり安定した効率的なものとなるよう、年金、医療、介護などを総合的にとらえて検討を行い、国民にとって安心と納得のできるシステムを早急に確立していくことが必要」とうたってございます。

2番目に、「介護保険制度の定着と介護ビジネスの推進」でございます。6ページにまいります。「介護保険制度は、市場を通じて、高齢者介護サービスを必要に応じて十分に受けられる仕組みを整えるもの」。ただ、まだまだ供給体制が十分でない面も見られ、この面で体制整備を早急に進めていく必要があるという認識であります。

その際に、この市場の特徴であります、2)に書いていますが、「プライバシーの保護も課題となる」あるいは「サービスの提供が第三者の目の届きにくい場所で行われる」というような市場の特性がございますので、それに「十分留意し、介護サービス提供体制を整備することが重要」と述べております。「介護要員の確保」、「利用者本位の仕組みの整備」、「新規参入促進のための事業者への支援」といった点で提言がまとめられております。

7ページですが、3番目として、「少子高齢・人口減少社会における高齢者と女性の能力発揮システムの構築」をうたってございます。「これからの我が国経済社会においては、年齢・性別にかかわりなく個人が意欲と能力に応じて社会に参画していく条件を整備していくことが重要。このことは、結果的には総人口の中で働く人の割合を高めることになり、高齢化のもたらす我が国経済への負担の軽減にも資する」という認識でございます。

「能力発揮システムの構築に向けての方策」として、「年齢にとらわれない高齢者の能力発揮」、「エンプロイアビリティーの向上と労働移動しやすい労働市場の整備」、「男女共同参画の推進」といった点で提言をまとめております。

8ページ、第2部;「『あるべき姿』の推進状況と今後の課題」。本文では37ページ以降にまとめてございます。この面では、先ほど水口部会長からのお話にもありましたように、基本的なメッセージとしては、「多様な知恵の時代への大きな潮流の変化の中で、『あるべき姿』の実現に向け、さまざまな取り組みが見られ、広範な分野での規制改革、循環型経済社会構築に向けた法制度整備、行政改革等、構造改革」といった面で「着実に進展」しているという評価であります。「ただし、急速な環境変化や将来を展望した場合、残された課題も依然多く、『あるべき姿』の実現に向けて、引き続き残された政策課題に取り組んでいくことが重要」であるということでございます。

「『あるべき姿』で示された政策方策について、引き続き取り組むべき主な課題は以下のとおり」として、例示してございますが、その中から幾つか取り上げてみますと、まず、「多様な知恵の社会の形成」に関しては、「市場と事業環境の整備」という面で「規制改革の推進、司法制度改革」、あるいは「コーポレート・ガバナンス」のあり方の検討、さらには、改正労働者派遣法等の「雇用労働分野における法制度等の適切な運用」という課題が残されてございます。また、「多様な人材の育成と科学技術の振興」という面では、「特色ある教育の推進、教育の情報化」、あるいは「専門的・技術的分野の外国人労働者の受入れ推進」という点が課題でございます。

9ページで、2番目の柱、「少子高齢社会・人口減少社会への備え」に関しては、「年金、医療、介護等、社会保障制度を総合的に検討」、あるいは「年齢にとらわれない経済社会」の構築という面で雇用に関する「年齢差別禁止という考え方について検討」、「少子高齢社会における街づくり」として「『歩いて暮らせる街づくり』の推進」とか「公共施設のバリアフリー化」、また「少子化への対応」として昨年12月に策定された「新エンゼルプランの着実な実施」ということが挙げられるかと思います。

3番目の柱で、「環境との調和」に関しては、先に述べました「循環型経済社会の構築」に向けてのさまざまな取組み、さらには「地球温暖化をはじめとする地球環境問題への対応」として「京都議定書の早期発効、新エネルギー等の開発・導入」という点が挙げられるかと思います。

4番目の柱で、「世界秩序への取り組み」に関しては、「WTOにおける包括的なラウンド交渉の早期立ち上げ」、10ページですが、「アジア地域の中での役割」として日韓等での自由貿易協定に向けた検討をはじめとします「アジア域内の連携推進」、あるいは「

『世界の知的活動拠点』の形成」ということが「あるべき姿」でうたわれましたが、その面でも、まだまだ推進していかなければいけない課題が多くあるように思います。

最後に、5番目の柱で、「政府の役割」に関しては、「行政の効率化と財政再建」という非常に大きな課題を抱えてございます。「政策評価の実施、PFIの推進等行政の効率化」を図る、あるいは「透明性確保」、また非常に重要な財政再建も問題ですが、「我が国経済を本格的な回復軌道に乗せた上で、総合的な検討を踏まえて抜本的に措置」ということでございます。「地方の自立」の問題については、「地方税の充実確保の方策について検討。中長期的に市町村合併や地方分権の進展状況を踏まえ」ながら、行政の広域的なあり方については「幅広く検討」していく、という課題が残されてところでございます。

以上、簡単でございますが、今回の報告案についてご説明させていただきました。

〔 豊田会長 〕 ありがとうございました。

ただいま説明のありました報告案につきまして、ご意見・ご質問があればお伺いしたく存じます。

ご質問、ございませんか。

それでは、時間の関係もございますので、「『経済社会のあるべき姿と経済新生の政策方針』の実現に向けて」(案)を経済審議会として承認いたしたいと存じますが、よろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

〔 豊田会長 〕 ありがとうございました。ご承認いただきました本報告書は後ほど、私から総理にお渡しいたします。

続きまして、経済審議会の今後の運営についてお諮りしたいと存じます。

今回の「『経済社会のあるべき姿と経済新生の政策方針』の実現に向けて」については、審議会の下に設置しました政策推進部会と政策小委員会において集中的に審議を進めてまいりましたが、本日の報告をもちまして、これらを廃止することにいたしたいと存じます。

また、経済審議会は平成13年1月をもって廃止され、創設以来ほぼ半世紀にわたる活動の幕を閉じることになります。これから残された約半年の期間に、これまで経済審議会が経済計画の策定等を通じて担ってきました機能と役割を評価し、今後政府内において引き継ぐことが期待されています機能と役割について、ご審議いただいてはどうかと考えております。こうした点につきまして事務局より説明をお願いいたします。

〔 牛嶋総合計画局長 〕 それでは、資料5「経済審議会の今後の運営について」ということでご説明させていただきます。短いものでございますので、読み上げさせていただきます。

経済審議会の今後の運営について(案)

1.審議事項

経済審議会は、中央省庁等改革に伴い来年1月をもって廃止され、1952年の創設以来ほぼ半世紀にわたる活動の幕を閉じることになる。残された約半年の期間に、これまで経済審議会が経済計画の策定等を通じて担ってきた機能と役割を評価し、今後、政府内において引き継ぐことが期待される機能と役割について調査・審議を行う。

2.総括部会の設置とスケジュール

1) 上記の調査・審議のために、経済審議会の下に総括部会を設置する。部会長及び部会委員は会長が指名する。なお、政策推進部会は廃止する。

2) 経済審議会は、総括部会での検討を踏まえ、本年12月を目途に調査・審議結果をとりまとめる。

〔 豊田会長 〕 ただいま説明のありました「経済審議会の今後の運営について」につきまして、ご意見・ご質問などございましたらお願いいたします。

〔 牛嶋総合計画局長 〕 事務局の方から補足したいと思いますが、経済審議会は、この半世紀、日本経済のいろいろな変遷の過程で、さまざまな計画の策定、いろいろな提言のとりまとめ等を行い、非常に大きな役割を果してきたと存じます。この活動の幕を閉じるに当たって、ぜひ、これまでの活動を評価して、重要な政府内で引き継ぐべき機能と役割については、この経済審議会から最後にとりまとめを行っていただいて、政府に提言をし、幕を閉じるという形にできればと考えてございます。

〔 豊田会長 〕 それでは、ご異論がなければ、この案のとおり今後の経済審議会の運営を行ってまいりたいと存じます。

なお、総括部会の部会長については、経済審議会令第6条第3項により会長が指名することとなっておりますので、部会長は、本日、ご欠席でいらっしゃいますが、香西委員にお願いしたいと存じます。部会の委員につきましては、香西部会長や事務局と相談の上、別途決定させていただきます。

総理大臣がいらっしゃるまで、少し時間がありますので、水口委員から、政策推進部会について何かご感想がございましたらどうぞ。

〔 水口委員 〕 特に、4月から始めて、6月20日が最終の政策推進部会でございましたので、その1週間前には上げなければいけない。畠山委員からご意見も色々ございまして、「とても、できないだろう」ということで小委員会を設置しました。小委員会を5回開催し、局長の勉強会に入っておられましたそれぞれの専門家や、有識者の方々のご意見を全部集約して、なかなか時間がないものですから、早朝8時からとか、夕方6時からとか、相当無理を委員の先生方にはお願いしまして、やっとここまで来たという実感でございます。

その間、特に事務局の総合計画局の皆さんには、恐らく、ペーパーを何十回と書き換えたのではなかろうかと思いますが、非常にご苦労だったと思っております。

それから、最終的には、各省庁折衝に非常に時間がかかるという話だったものですから、6月20日の第8回目の政策推進部会に最終案を出すためには、相当早めにまとめないといけないということで、かなり切羽詰まった議論をいろいろしてきたということもございましたけれども、お蔭様で短い期間の間にこれだけ、1つは委員の皆さんのご努力、事務局のご努力。それから、国内及び国際的な諸情勢が全部そういう方向に向かっているということが非常に大きなバックアップの力になったと思いまして、短い時間の間にこれだけのものをまとめられたということで、非常にありがたく感謝をしております。

以上でございます。

〔 豊田会長 〕 ただいまのお話に、何かご意見はございませんでしょうか。

〔 水口委員 〕 昨年「あるべき姿」をやりましたときに、最終で、豊田会長の方から、「ものづくり」という点が非常に重要であるというご指摘がございました。今回も、ちょうどこれをやっている最中に、一部の銘柄、株式市場などにおいて「ネットバブルの崩壊」という動きが、これは日米ともにございまして、「IT革命を起爆剤」ということは本当に正しい方向かというようなご議論が、豊田会長はじめ委員の皆さんの中からも非常にございまして、一部専門家の間では、「e‐プラス‐リアル」という、実際に実力のある技術を持ち、あるいは工場を持ち、あるいは販売ルートを持ち、あるいは、ノウハウを持っているところが、結局、IT技術を利用していかに発展するかということが起爆剤である、こういうような方向に議論が集約していったということで、浮わついた、流行を追うという話にならず、きちんとした方向づけができた、というふうに私はとりまとめ役として確信をしております。

〔 豊田会長 〕 局長さん、何か。

〔 牛嶋総合計画局長 〕 事務局として、とりまとめに当りました立場から、今回、特に第1部のとりまとめに当りまして、いろいろ検討を進めてきたわけですけれども、最初の、経済審議会の今回の作業がスタートするときに皆様にお諮りをして、テーマについてこういうことを考えているというご紹介をしたわけですが、その中でも各委員からいくつか意見がございました。

1つは、小林委員をはじめ、「あるべき姿」は10年間の姿であるけれども、その中でいかに「あるべき姿」の達成を図っていくか、その道筋というものが重要ではないか。最終目標だけを掲げて、そのための政策というものも必要ですけれども、はじめに、この短期間に何をやって、それを踏まえて何をやる、そういう道筋が重要である、というご意見もありました。そういう意見も踏まえて、「当面の戦略的な課題」ということで、当面の重点的な課題として3点をとりまとめさせていただきました。

また、最初の総会の議論の中で、政府の取組みも非常に重要であるというご指摘もいただきまして、これは第2部の方ですが、政府の取組みについても、フォロー・アップをきちんと行ったところでございます。

いろいろ政府の取組みの中にも、新たな、これまで述べられてなかったような取組みについても、「あるべき姿」の中で述べてございます。例えば、時間管理概念、時間というものが非常に貴重なものであるということをうたって、きちんと政府でも時間というものを考えて政策を実行しろ、という提言もしております。各省で、それについての検討も始まっておりますが、部会の審議の中で、まだまだ不十分だという部会委員のご指摘もございました。そういうご指摘も踏まえて、もっともっと時間というものを十分に、政策決定・実行に際して念頭に置くように、ということで第2部では強調してございます。

また、これから3つの短期的な重点課題としてとりまとめさせていただきましたけれども、従来であれば、恐らく、IT革命といった経済の発展のプラスの原動力、その部分だけを論じればよかったのだろうと思います。ただ、廃棄物の問題ですとか、プラスの面だけを論じれば中期的な、あるいは長期的な発展が論じられるという時代は終わったのかなと。まさに、日々の我々の生活の中で廃棄物問題の深刻さということは実感できるわけで、中期の新しい成長経路・発展経路という中に、廃棄物というような環境の問題も位置づけていかなければ、例えば、ここでITだけをうたって「それ行け、どんどん」という形では、もはや、我々の経済社会は発展していくことが難しい、そういう局面に至ったのかなというのが、第2番目の柱の理由だろうと思います。

もう一つは、生活における安心ということが、新しい経済発展の中でも非常に大きな柱である。生活の安心がなければ、ただただITといったような経済の供給面での、あるいは市場という面での力だけでは、新しい発展というものが実現できない。新しい発展の中身には、従って、経済の発展の原動力になるようなもの、それから環境という側面、それに生活の安心といった側面、その3つが揃って初めて「新しい発展軌道」と呼ぶにふさわしいものができ上がる、そういう認識でございます。

したがいまして、かつての所得倍増計画時代のようなものでは、もはやない。これは当然のことでございますが、新しい発展軌道の中の要素として原動力になるもの、エンジンになるもの、それから環境、それに生活の安心、それをみんな組み込んで新しい発展という形になり得る、そういう認識をこのとりまとめの過程で深くしたわけでございます。

以上、感想でございます。

〔 豊田会長 〕 ただいまのご発言につきまして、何かご意見がございますか。

〔 和田委員 〕 感想という程度でございますが。IT革命、私どもの消費生活にも日々の暮らしの中に、あれよあれよという間に、という感じで入っております。すべて、ここに述べられておりますけれども、8ページにありますように、懸念される側面というのをこれから十分にみて、対応していかなければならないのではないか。

特に、情報格差の問題、今までになかったような新しい消費者問題、ネットワーク時代の新しい消費者問題というのが、まだ、私どもはわかりませんけれども、出でくるのではないか。私どもも「ネットワーク時代の消費者問題」ということで、いろいろシンポジウムをやってみたりしておりますけれども、その面での配慮なり対応というのが、スピードが早いだけに、求められるということを痛感していることが、1点でございます。

それから、循環型社会、これも今、私ども、自分自身の消費者としての生活、それから消費者運動の中でも非常に大きな柱でございます。これは、やはり大きな問題として進める必要があると思います。この報告のとおり、さらに前向きに進めていかなければと思いますけれども、私どもが運動しておりますのは、地球環境問題、それともう一つは限りある資源を大切にしていくということからの循環型社会ということへ、いろいろ身近な運動に取り組んでおりますけれども、ここの文章を拝見いたしますと、近い将来において廃棄物の最終処分場の確保が難しくなって、そういう制約から持続的な経済成長が困難になることが予想される、と。これは経済審議会の報告ですから当然なのかもしれませんけれども、処分場が十分あれば問題が薄まるという問題では決してなくて、問題の全体のとらえ方としては、繰り返しになりますけれども、地球環境問題と、それから限りある資源の問題、そこから取り上げていくのが大筋の問題だと感じております。

以上、2点でございます。

〔 豊田会長 〕 ありがとうございました。

ほかにご意見がございますか。

〔 小林委員 〕 まとめられた部会長の水口さんはじめ、大変なご苦労だったと思いますが、2つだけ、文章にはない御苦労なところを少し伺えればと思うのです。

1つは、スピードという問題です。明らかにスピードが非常に大切ですが、今度の3つの重点の最初の、起爆剤になるIT。IT化の実際に何年かで計画されているスピード、そのスピードというのは、数字、いろいろな点で一体どのくらいなのか。

これは先ほどちょっとご説明のあった、アメリカのIT化が生産性アップに実際に出るまで、ある程度時間がかかる。それから、急に出てくるわけです。ある程度遅れているということを前提にすると、日本の場合には、かなりスピードアップしていかなければいけない。そのスピードというのは、量的にイメージするためには、何か見たらいいような数字があるのかどうか。これが1つでございます。

もう一つは、少し質的なことで。今のご質問に関係して、あるいは逆になるのかもしれないですが、アメリカその他を見ていくと、IT化も、効果のあるところというのは出方が結構違って、1つ言うと流通、この辺が今までのところではかなり大きな効果を上げている。それを逆に言うと、日本の場合には、雇用その他の問題、あるいは慣習その他からいって非常に攻めにくいところ。しかし、あえてそれを思い切って攻めていくのか、あるいはバランスをとってやっていくのか。後者だとすると、最初にご質問したような、スピードを上げて効果を上げるということについて矛盾しないかどうか。この辺は、たぶん、ご議論の中でずいぶん苦労されたところだと思うので、ちょっとご披露いただければと思います。

〔 牛嶋総合計画局長 〕 IT化の問題でございますが、まさにスピードが重要なポイントであります。アメリカではずっと、コンピュータ、情報化と言われながら、生産性として全然現れてこないではないか、というパラドックスの議論がされておりましたが、とうとう90年代の後半に、本当に数字になって現れてきた。1%ないし1.5%ぐらいの成長の加速が見られた。その大半がITである、というのがアメリカの状況のようでございます。

日本の場合に、アメリカよりも遅れてスタートしたということがございまして、最近の企業等の取組みを見ますと、本当に猛烈なスピードで今、取組みが進められているという感じがいたします。

この提言自体は、「当面」ということで、3年程度という時間の単位で考えておりますが、実際にも政府の取組みできちんと時間を区切ってやっているものも多くございますし、まだ、残念ながら、方向づけだけがなされて、時間が明確に出されていないというものもございます。時間の出されていないものについては、これからの取り組みの中でできるだけ具体的に目標を設定しながら、スピードを上げて取り組んでいく必要があると考えております。

恐らく、実態の進展というのはこれから急速に加速して進んでいくのではないか。政府が、それに取り残されないように、きちんとした政策を本当にスピードをもって対応していかなければいけない、というのが実感でございます。

それから、雇用等でITの効果の現れる側面で、おっしゃるように、ITの大きな効果というのは「中抜き」と言われることで結果としては出てくる面が大きいだろうと思います。そういう意味では、一方で雇用の機会をつくっていく、マッチングをきちんとさせるという、雇用面での対応が非常に重要になるわけですし、また、企業自体の対応としましても、中にも少し書いてございますが、労働者のエンプロイヤビリティ、能力開発というものを、企業の中でも、これから充実させていくことになるだろうと思いますが、政府としても、企業外でのそういった面での取組みを強化していかなければいけない。これは、1つのところにマイナスがあるからということで、そこの進展を遅らせるというのは、全体としてはあまりよくない方向ではないか。そうは言っても、極端に影響が出るという場合に、またいろいろなことが必要だと思いますけれども、マイナスを懸念してスピードを緩めるというのは、恐らく、本来の行き方ではないというふうに感じております。

〔 豊田会長 〕 ほかにございますか。

〔 星野昌子委員 〕 いわゆる市民活動、NPOなどについて、このまとめが触れていらっしゃらないことは、私自身も今、NPOセンターの代表理事として、「3年」という当面を考えた場合には、まだまだ生まれたばかりで戦略の材料にはなりにくいということで、よく理解できます。しかし、5月26日でしたか、1936のNPOが全国で認証を受けておりまして、先ほどお話のありましたITに対するリアルというのでしょうか、「ものづくり」とか、そういうものと並んで「当面」ではなくて、中長期的なプランの中にはぜひ、いろいろネガティブな要素も出始めているようなことも聞いておりますけれども、日本の中に本当に新しく生まれてきたこうしたパワーを伸ばしていただくような施策を講じていただければというふうに願っております。

以上です。

〔 豊田会長 〕 確かに、こういう対応というのは、変化に対して適時適切に、早く対応していかなければいけないということですので、NPOについても、変化によく心してやっていくべきである、というふうに私も思っております。

〔 牛嶋総合計画局長 〕 NPOにつきましては、十分承知をしておりますし、例えば介護でありますとか、環境でありますとか、いろいろなところでNPOの重要性については強調させていただいております。ご指摘のように、NPOをまとめてというような扱いを第一部ではしておりませんけれども、私ども自身がNPOについていろいろな検討を行っている部局が経済企画庁にございますので、重要性については、十分にこれからまた取り組んでいきたいと思っております。

〔 豊田会長 〕 ほかにございませんか。

〔 佐々波委員 〕 「少子高齢化・人口減少社会」というので1項目ございますので、感想みたいなことを申し上げます。

高齢化の方は着実に進んでいるようですけれども、少子化の方は、今日の新聞によりますと、歯止めがかかっていないようです。それに関しまして、均等法の趣旨で、雇用機会その他で、私どもの学生の頃に比べると改善していただいているようですけれども、ただ、この支援システムの方はそれに比べて非常に遅れているようなので、この後の問題といたしまして、ぜひ引き続きそちらの方のバランスといいますか、かなり長期的な問題を含みますので、よろしくお願いしたいということ。

もう一つは、たびたびここでも申し上げている、外国人労働者・留学生の話ですけれども、今回、経済成長率が持ち直してというのは大変明るい話ですけれども、中長期的に考えますと、やはり需要の拡大ということ。少子化が進んで人口減少社会といった場合には成長率の長期的な上昇というのは需要が拡大しなければいけないのではないかと思います。その際、外国人労働者といった場合に、一時期は「3K」とかいう暗いお話しかなかった。ようやくこの頃は、一足飛びに「技術者を入れろ」という話ですけれども、より別の観点から見ていただくと、いわゆる中核を担うような、より層の厚い外国人の受入れということもお考えいただいたら、長期的な課題に必要なのではないか。

感想みたいなことで申しわけございません。

〔 牛嶋総合計画局長 〕 今朝の新聞で1.34という数字が出ておりました。少子化対応ということは、政府の方でも鋭意取り組んでおりまして、この報告の中でも50ページに書かれておりますし、また、男女共同参画の面でも男女ともに、固定的な役割分担ではなくて、子育てなども一緒にやっていく、というような考え方は出ております。そういうことで、この面での対策をこれからも進めていく必要がある、という認識で書かれております。

外国人につきましては、ITのところでも述べさせていただきましたように、まさに一時期は「3K」とかいうお話もございましたけれども、最近では、むしろ、世界で有能なIT技術者の取り合いのような状況にもなっているようでありまして、優秀な外国人の技術者・労働者が日本に来るような環境というのを、きちんともっとつくっていく必要がある。そういう認識で、ここでも書いてございます。留学生も含めて、そういう認識をしているところでございます。

〔 長岡委員 〕 「経済審議会の今後の運営について」でも、よろしゅうございますか。

〔 豊田会長 〕 どうぞ。

〔 長岡委員 〕 審議事項の一番最後に「今後、政府内において引き継ぐことが期待される機能と役割について調査・審議を行う」とあるのですけれども、この点、非常に難しい問題がありまして、来年の1月以降、組織の再編成が行われて、それから後、どういうふうにそれが動いていくのか。どういうふうに動いていくかというだけでなくて、どうあるべきかという点について、恐らく、いろいろな意見があると思うのです。ここの「今後、政府内において引き継ぐことが期待される機能と役割」についても、恐らくいろいろな意見が出てくると思います。それが来年以降、例えば、経済の運営なり、経済の計画なり、いろいろな面について政府というものはどんなスタンスで臨むべきかという問題にもつながっていく問題だ、と。したがいまして、これは大変難しい審議を香西部会長にお願いするわけですけれども、この総括部会の顔触れといいますか、メンバーには、各界の方が万遍なくこの部会の中に入って、いろいろな意見がたたかわされて、私個人としては、結論として、ある1つの結論に到達しないのであれば、こういう案もあった、こういう考え方もあった、という取りまとめをしていいのではないかという感じを持っております。

〔 豊田会長 〕 ご趣旨、ごもっともだと思います。私も、香西さんにもよく申し上げますし、また、いろいろと途中でもご意見を伺えるときがあったら伺わせていただきます。

〔 畠山委員 〕 55ページに自由貿易協定の話が書いてございまして、大変に結構だと思うわけでございます。ここには、韓国とシンガポールの話が出ておりますが、それに加えて、メキシコとも研究を終えましたし、チリとの間でも研究が始まりました。それで、チリの話で恐縮ですが、今日たまたま、先方からも局長とかが見えてやっているわけですけれども、そのチリの人たちが、駐日大使を含めて言っておられたことが大変に印象に残りましたので、この席を借りてお伝え申し上げておきたいと思います。

チリは、日本と燃える思いで自由貿易協定を実現したい。なぜかというと、2つ理由があって、1つは、日本の経済は一旦行ったコミットメントを必ず守ってくれる。これは非常に立派な国である。別の国との対比で言っているわけですが、その「別の国」の名前は、あえて秘します。その別の国との対比で、非常に立派にコミットメントを日本の企業は守ってくれる、それが第1であります。

第2は、日本と自由貿易協定をチリという小国が結べることは、非常に政治的に光栄である。日本というアジアの大国と自由貿易協定を結べるということは、非常に政治的に光栄である、と言っておりました。彼らは同時に、例えば「NTTは、完全民営化した方がいいよ」とか、わりあいずげずけ、ほかの面では意見を言っていたわけでありますが、他方で、今申し上げたように、日本を高く評価している。それで、この高く評価されている日本のイメージ、少なくともチリの目にとって高く評価されている日本のイメージを、大事にできるといいし、その期待に即応できるといいなと思いました。感想で恐縮でございます。

ここに書いていただいて、自由貿易協定は大変よかったと思います。

〔 豊田会長 〕 私も、全く同感でございます。

〔 牛嶋総合計画局長 〕 まさに自由貿易協定、いろいろな取組みが進められております。「アジアにおける共同体」といったような表現に踏み込んだ表現を昨年の「あるべき姿」で初めて出したものでございます。そのときも、部会の中でも、日韓の二国間での自由貿易協定といった話に対して、「日韓関係の中でそういうことを言っていいのか」というようなご意見もあったくらいの去年は状況でしたけれども、この1年間、本当に様変わりで、ずいぶんと進んできたなという印象を、私どもも持っております。

〔 豊田会長 〕 ほかにございませんか。

〔 堺屋経済企画庁長官 〕 昨年7月に答申を出していただきまして、それから約1年経つわけでございますけれども、最初、答申を出すときには、各省いろいろご意見がございました。特に、今お話のございました外国からの移民の話、それから自由貿易協定の話、この2つはいわばタブーになっておりまして、今まで、公的な文書で突っ込んでは書かなかったのです。移民の件も、遠い将来の話としてはあるかもしれない、というようなことは書いたことがありますけれども、積極的に検討するということはなかった。それを受けまして、法務省の方でも今、今までに比べましたら前向きの話が出てきております。

特に、IT技師については、日本でかなり不足しておりまして、世界中、インドや東ヨーロッパのIT技師の優秀なのを取ろうという競争になっているような状況であります。

それから、貿易の方も、日本はグローバリズム、全世界と同じようにやるのだということを掲げて、あらゆる地域協定に消極的な態度を取ってきたのですが、シンガポール、韓国、そして今チリ、メキシコと進んでおりますけれども、今度初めてこういうところに踏み切ったわけです。

この1年、かなり大きな変化が起こりまして、構造改革が遅い遅いと言われながらも、実は相当進んでいるのではないか、という感じを持っております。議論の段階から実行の段階へと、この1年間で進んだ部分も大分ございます。

NPOにつきましても、2年目で見直す。これは議員立法でございますので、行政府の方で考えていただくのですけれども、相当数も増えましたし、また重要な仕事もやっていただける。この29ページ、32ページあたりにはかなり言及させていただいております。

〔 豊田会長 〕 ただいま、総理がお見えになりましたので、先ほど、ご承認いただきました「『経済社会のあるべき姿と経済新生の政策方針』の実現に向けて」をお渡しいたします。

( 報告手交 )

〔 豊田会長 〕 それでは、総理よりご挨拶をいただきたいと存じます。

〔 森内閣総理大臣 〕 経済審議会委員の皆様には、本年2月以来、熱心な調査・審議を重ねていただきまして、本日、「『経済社会のあるべき姿と経済新生の政策方針』の実現に向けて」と題した立派な報告をまとめていただきました。誠にありがとうございました。皆様方の精力的なご審議に対しまして、厚く御礼申し上げます。

政府は、前小渕内閣以来、景気の回復と構造改革に、財政、税制、金融等のあらゆる分野の政策を動員して大胆かつスピーディーに取り組んでまいりました。その効果もありまして、一時はデフレスパイラルの入り口に立っていた我が国経済も、厳しい状況をなお脱してはいないものの、緩やかな改善を続けており、平成11年度の実質GDPは、0.5%とマイナス成長からはっきりとしたプラス成長へと転じました。

この機を逃さず、景気回復の動きを民需中心の本格的な回復軌道に乗せていくとともに、構造改革を一層協力に推進し、IT革命を起爆剤とした経済発展を目指すなど、21世紀における新たな躍進を目指した政策に取り組んでいくことが、私に課せられた使命であると考えております。

本日、経済審議会からいただきました報告は、政府として日本新生を目指していく中で、時宜を得た非常に貴重な提言であると受け止めております。この中では、当面3年程度の間に、IT革命の戦略的推進、循環型経済社会の構築、安心でき活力ある高齢社会の構築の3つの課題に積極的に取り組むべきであるとの提言をいただいておりますが、いずれも、21世紀の発展基盤を築いていく上で、早急に取り組むべき重要な課題であると認識しております。特に、「IT革命を起爆剤とした躍動の10年へ」との副題にあるように、経済にダイナミズムをもたらすIT革命を積極的に進め、新たな経済発展を実現していくことが極めて重要であると考えております。政府としましても、この報告の提言を積極的に進めていくよう努めてまいります。

最後になりましたが、精力的に調査・審議を進められ、短期間で本報告をおまとめいただきました豊田会長をはじめとする委員各位のご尽力に対して、重ねて心から御礼申し上げますとともに、今後もますますのご活躍に期待申し上げまして、ご挨拶とさせていただきます。

ありがとうございました。

〔 豊田会長 〕 ありがとうございました。

なお、本日は総理に若干のお時間をいただいております。折角の機会でございますので、総理に対して何かご発言がございましたら、時間が限られておりますが、お伺いしたいと存じます。

〔 水口委員 〕 今、力強いお言葉をいただきまして、我が意を得たりということでございます。新聞報道によりますと、ITに関して総理直轄で戦略会議をつくられると聞いております。ぜひ、それは早急に実現していただきたいと思います。

それから、今回のが「3年程度」と言っておりますのは、ドッグイヤーと言われているITの時代ですから、スピードであるいはもっと早くやらなければいけないという感じがしております。

それから1つ、この報告には出ておりませんけれども、例えば、先日経済企画庁で発表されました「アジア白書」によりますと、アジア諸国におけるIT化、我が国はアメリカには遅れている。ただし、知識レベルは高いけれども、全体として見ると香港と台湾と同水準、こういう発表になっておりました。私の野村総研がアジアで10年以上一緒にやっています10カ国のシンクタンクと、これはちょっと観点は違うのですけれども、電子商取引の現状動向ということをやりますと、アジアの10カ国で、これは台湾を含めますから10カ国・地域ということになりますが、IT化はAランクがシンガポールと台湾ということであります。日本は、総合点になるとCランクになってしまって、中国並みになる。理由は何かというと、通信コストが高いということになっておりますので、その辺も構造改革ということで、ぜひ総理直轄の下で総合的・戦略的なことをスピーディにやっていただくということを特にお願いをしておきたいと思います。

もう一つは、沖縄サミットも間もなく始まるわけでございますが、ここで重要な問題だと思いますが、IT革命ということで、これは世界各国、特にアジア諸国は猛烈に国家戦略としてやっておりますが、プラス面と同時に、デジタル・デバイドの問題であるとか、システムの安定性、ハッカー対策であるとか、あるいはビジネスモデル特許であるとか、いろいろ国際的な調和を図らないといけない問題がございますので、今回の報告書にもいろいろ出ておりますから、ぜひこれをうまく生かしていただいて、IT問題についても、沖縄サミットでのリーダーシップをぜひお願いしたいと、このようにお願いいたします。

以上でございます。

〔 森総理大臣 〕 今、途中でまいりましたので、大変適切なるご助言といいましょうか、ご提言いただきました。今日おまとめいただきましたましたものを、また後でゆっくり勉強させていただきたいと思っております。

IT戦略会議は、ぜひサミットの前にとりあえず立ち上げたいと思っておりまして、今、どういう構想で、どういうメンバーでやるかということを検討しております。このこと自体、政府としてどこまで、どういうようなことをやり得るのか。恐らく、ここにいろいろと皆さんのご議論が書いてあるのだと思いますが、堺屋さんもいらっしゃいますので、いろいろご指導いただきたいと思っておりますが、民間と政府の役割をどうしていくのか、役所間のいろいろな法的な枠があるでしょうし、これをどういう形で、いわゆる縦割りというものをどのようにカバーしていくのか、コントロールしていくのかということをまずやろうと思います。

それから、今もデバイドの話もございましたけれども、特に、私はこの間、太平洋諸島へ、小渕さんの肝入りで準備をされて、そのサミットへ私は臨んだのですが、太平洋の島々の国々の皆さん、経済のグローバル化からいっても大変なことだということは、みんなわかっておられます。正直言うと、できれば我々の島は静かな昔の太平洋の自然豊かな島であってほしいなというのは、皆さんの率直な気持ちです。しかし、そうかと言って、これは避けて通れないことで、我々の国は関係ないというわけにいかないということだ、ということは非常に痛切におっしゃっていました。

そういう国々のみならず、その他いろいろな地域も、この問題そのものを経済に取り入れる、産業に取り入れる前に、これをどうやって使っていくのかということなども、どういうようにしていけるのか、こういう国々に対する支援対策をどうするのか、ということなどを含めてサミットでも重大な議論をしなければならないところだと考えています。

恐らく、皆様方のご意見にあったのだと思いますが、日本はそういう意味では相当に遅れているということは、民間の企業の皆さんがおっしゃっておられますが、さて、我々政府、役所側はそういう自覚症状があるのか、どこが遅れていて、どこに何をどうしようというのかという、まだまだ政府部内にもそういうご意見を持っておられる方があるような感じ、私は両方のお話を聞きますと、そんな感じがいたしております。

新しい内閣をスタートさせるものですから、せめてITの担当ができ得る、そういう専門の閣僚があってもいいのかなというようなことも、いろいろ皆さんのお話を聞きながら、私なりにそんな考え方を持っておりまして、いずれご相談もしながらと思っています。

いずれにいたしましても、政府としてしっかり取り組んでいって、民間の皆様方の縦横無尽な活動ができ得る体制を政府がしっかりとることが大事だ、そのように考えておりますので、ご指摘いただきました点は十分私どもは大事に考えながら努力してまいりたいと思います。

〔 豊田会長 〕 ほかに何かご質問、ご意見がございませんか。

〔 畠山委員 〕 今の総理と水口政策推進部会長のお話に関連してですけれども、デジタル・デバイドという話がありましたが、かりそめにも日本は発展途上国のデジタル弱者を助けようというようなとポジションではないのではないかと思います。日本の方が、水口部会長からもありましたように、遅れている面もあるわけでございます。

それから今、総理から、島サミットのお話もございましたけれども、私も、あのとき一部の主要な方々とお目にかかったりもしましたが、例えば、フィジーは、どうやってほかの島の国々と連絡をしているかというとインターネットでやっているわけです。のみならず、オーストラリア、ニュージーランド、ハワイ、アメリカ西海岸と、この8月から光ファイバーで、海底ケーブルでつなぐのです。これほど早急に進展しているわけですので、この間、経済企画庁さんのご報告にもありましたように、アジアで経済が雁行形態で日本をヘッドにアジアNIEsが続いて、ASEANがその次で、中国が最後、そういうような恰好で普通の経済は進んだけれども、IT経済はそうはいかないかもしれない、と。そういう感じではないかと思うので、デジタル・デバイドで日本はどっち側に入っているのか、総理が今おっしゃった点に関連すると思うのですけれども、むしろ教えられる側に入っているのかもしれない、というぐらいの焦りをもって私どももやらせていただきたいと思いますし、政府におかれましても、そうやっていただいた方がよろしいのではないかと思います。

〔 長岡委員 〕 言わずもがなのことでございますけれども、今の総理のお話のように、これから新しい内閣がスタートするときに、IT革命の問題を担当される大臣が置かれるかもしれないという話で、今日の報告書にもありますように、IT革命を起爆剤として日本の経済が構造改革していかないと、21世紀どうなるかという大問題なのですけれども、これの成功の鍵を握っているのは、IT革命を推進するためのネックをどう除いていくかということと、もう一つはセーフティネットの張り方だと思うのです。今度は、あまりそのネットの目が細か過ぎると、結局、現状維持で、革命にならない。さりとて、その目が粗すぎると、これまた社会的ないろいろな面での摩擦が多すぎて、なかなか革命的なその進展が図れない。大変難しい問題だと思うのですが、そういう問題もどんなネットを必要最小限度に設けたらいいかということと並行して、IT革命を進めていくというスタンスが基本的に必要ではないかと考えております。

〔 小林委員 〕 総理の経済政策についてのお考えは、改選前・以後を含め、今度の選挙期間によく伺って十分承知をしておりまして、経済同友会のポジションについては、「

同友会のポジションはわかったけれども、個々のメンバーはどうも違うようだ」というご指摘、これもよく覚えております。

私が申し上げたいのは、2001年がターニングポイントか、2003年がターニングポイントかは別にして、ぜひ、IT革命を起爆剤として、「躍動の10年間」とございますから、10年であるか15年であるか、早く全体の枠組み、その中の重要な部分としての財政再建も含めて、1 つのビジョンというものを7月4日以降の段階でなるべく早く明確にお示しいただいて、その中で短期にどうするのか、これはいろいろ意見もあろうかと思いますし、私どもも政府のポジションを十分に尊重しているつもりでございますが、全体の意味で「安心感」という人もいる、頑張らなければいけないという人もいるという意味で、先行きを早く明確にお示しいただくことを、ぜひお願いしたいと思います。

〔 森総理大臣 〕 今、畠山さんがおっしゃったように、フィージーは住んでいる方なのでしょう、住んでない島もたくさんあるのです。だから、島嶼地域全体をどうするか。また、フィージーがあんな状況になりますとね。

確かに、日本は教えるどころか、助けられなければならないのかもしれない。

今朝、堺屋さんの報告をちょっと伺ったのだけれども、堺屋さんからもお話があったと思うけれども、もうITではなくてICTというとらえ方。つまり、社会のコミュニケーションの問題と取り上げて、産業をもう超えている、というぐらいにヨーロッパやアメリカでは進んでいますよというお話。そういう言葉は、僕は初めて今日聞いたわけです。そういう意味では、デバイドされる方かもしれませんね。そういう感想を持ちました。

いずれにしても、小林さんのお話も努力いたします。

〔 豊田会長 〕 総理、本日は大変お忙しい中をご出席いただきまして、また貴重なるご発言をいただきまして誠にありがとうございました。

それでは、本日の議事はすべて終了いたしましたので、本日はこれにて閉会とさせていただきます。長時間にわたりますご審議どうもありがとうございました。

なお、本日の審議の模様につきましては、後ほど、私から記者発表させていただきます。

〔 森総理大臣 〕 皆様どうもありがとうございました。

〔 豊田会長 〕 それでは、これにて散会といたします。

──以上──