経済審議会政策推進部会(第5回)議事録

時: 平成 12年 5月 18日
所: 経済企画庁特別会議室(436)
経済企画庁


経済審議会政策推進部会(第5回)議事次第

平成12年5月18日(木)15:00~17:00
経済企画庁特別会議室 (436号室)

  1. 開会
  2. 関係省庁からのヒアリング
  3. 社会保障について( 厚生省)
  4. 政策小委員会報告について
  5. 「経済社会のあるべき姿と経済新生の政策方針」の推進状況と今後の課題について
  6. 閉会

(配布資料)

  • 資料1.経済審議会政策推進部会委員名簿
  • 資料2.関係省庁ヒアリング説明者
  • 資料3.厚生省資料
  • 資料4.政策小委員会の検討概要
  • 資料5.「経済社会のあるべき姿と経済新生の政策方針」の推進状況と今後の課題(骨子案)

経済審議会政策推進部会委員名簿

部会長
水口 弘一    (株)野村総合研究所顧問

部会長代理
香西 泰    (社)日本経済研究センター会長

安土 敏    サミット(株)代表取締役社長
荒木 襄    日本損害保険協会専務理事
伊藤 進一郎    住友電工株代表取締役副社長
植田 和弘    京都大学大学院経済学研究科教授
江口 克彦    (株)PHP総合研究所取締役副社長
大田 弘子    政策研究大学院大学助教授
角道 謙一    農林中央金庫理事長
木村 陽子    奈良女子大学生活環境学部教授
嶌   信彦    ジャーナリスト
清家 篤    慶応義塾大学商学部教授
高橋 貞巳    (株)三菱総合研究所代表取締役会長
高橋 進    (財)建設経済研究所理事長
田中 明彦    東京大学東洋文化研究所教授
畠山 襄    日本貿易振興会理事長
濱田 康行    北海道大学経済学部教授
原   早苗    消費科学連合会事務局次長
ロバート・アラン・フェルドマン  モルガン・スタンレー・ディーンウィッター証券チーフエコノミスト
星野 進保    総合研究開発機構特別研究員
村井  純    慶応義塾大学環境情報学部教授
村田  良平    (株)三和銀行特別顧問
森尾  稔    ソニー(株)代表取締役副社長
森地  茂    東京大学大学院工学系研究科教授
八代  尚宏    上智大学国際関係研究所教授
八城  政基    日本長期信用銀行銀行代表取締役社長
山口  光秀    東京証券取引所顧問
鷲尾  悦也    日本労働組合総連合会会長


〔 部会長 〕 ただいまから第5回政策推進部会を開催させていただきます。

本日は、委員の皆様におかれましては、ご多忙のところをお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。

また、堺屋経済企画庁長官におかれましても、お忙しいところをご出席いただきましたので、議題に入る前に、長官から一言ご挨拶をいただきたいと思います。

〔 大臣 〕 お忙しいところを、本日は経済審議会政策推進部会にご出席いただきましてありがとうございます。

今年に入りましてから、日本の景気も少しよくなってきたと言われておりますが、まだ厳しい状態が抜けきっておりません。特に、消費は増えたり減ったりというような状況でございます。

その大きな理由は、昨年度の企業決算が悪かったものですから、それに基づいて出されたボーナスが去年は非常に低かった。今年は、昨日あたり連合が出したところによりますと、前年に比べてマイナス0.1%、大体下げどまりというような答えが出ているようですけれども、まだまだ活発に上がるというような状況にはなっておりません。

そういうような状況で、景気は企業の方では企業利益が回復し、設備投資が少し出てくるという明るい面も出ております。輸出も順調でございますが、全体の需要の6割を占めます消費がもうひとつぱっとしないというようなことで、まだまだ気を抜けない事態が続いていると思います。

そういったことを踏まえまして、この数カ月、小委員会の先生方には情報産業の大発展・改革、情報革命というようなことを第1として、また高齢化社会、循環型社会、こういった新しいテーマをどのように取り入れていくか、そして、4月から始まりました介護の問題、こういったことが経済・産業にいかなる影響を与え、将来どのように発展させていければいいのかひとつご研究いただきたい、と大変お忙しいところを短時間で無理を申しまして1つの案を作っていただきました。

これから、世界の動きはドッグイヤーと言われて、犬は人間の5、6倍の速さで年を取るそうでして、1年間で20歳になって、あと1年毎に5歳つづ年を取ると言われておりますが、今の1年は昔の5年分ぐらいの速さで進んでいる。特に今申しましたIT産業、循環型環境産業、それから介護・高齢化というのはまさに今、急激に進んでいる最中であります。したがいまして、この審議会も、3カ月かけていただくということは2年かけていただくことになる。こういうつもりで大変取り急いで、お忙しいところを無理を言ってお願いしたわけでございます。

ぜひ、この推進部会の先生方に小委員会の答申をご覧いただきまして、また重ねて審議していただきたいと思っております。

本日はどうもありがとうございます。

〔 部会長 〕 大臣、どうもありがとうございました。

それでは、本日の議題に入らせていただきます。本日は、厚生省から社会保障についてヒアリングを行います。続きまして、当政策推進部会の下に政策小委員会を設置しまして、「あるべき姿」の実現に向けた当面3年間程度の重要な政策課題について調査審議を行ってまいりましたが、今般その成果がまとまりましたのでご報告し、ご議論いただきたいと思います。今、大臣が言われましたように、ドッグイヤーにふさわしい内容になったかどうかということを、後ほどのご審議でいろいろご議論いただきたいと思います。また、これまでの当部会での審議等を基にしまして、「あるべき姿」の中の政策提言の推進状況と今後の課題について、事務局で素案の骨子を作成しましたので、あわせて簡単に紹介したいと思います。なお、当部会の報告書については、本日ご審議いただきます政策小委員会の報告を第1部として、「あるべき姿」の推進状況と今後の課題を第2部としてまとめたいと考えておりますが、第2部の報告書案につきましては、次回の部会でご議論をいただきたいと思っております。

それではまず、年金等の社会保障について、厚生省からご説明をいただきたいと思います。厚生省大臣官房政策課長、年金局年金課長、よろしくお願いいたします。なお、大変恐縮でございますが、時間の制限がございますので、ご説明は簡潔によろしくお願いしたいと思います。

〔 厚生省 〕 資料として、資料3ー1と資料3ー2をお持ちいたしました。与えられた時間が非常に短いわけですので、その中からピックアップしてご説明申し上げたいと思いますが、一応、社会保障の全体像が資料の方ではご説明できるように持ってまいりましたので、資料が厚くなっておりますのをお許しいただきたいと思います。

そこで、私の方からは、社会保障の現状と課題ということでございますが、テーマを絞りまして、給付と負担の現状と課題を中心にご説明したいと思います。資料3ー2を主に前半は用いたいと思いますので、資料3ー2をご覧いただきたいと思います。

給付と負担の現状でございますが、1ページをお開きいただきますと、委員各位ご承知かとも思いますが、「社会保障給付費の推移」が出ております。このグラフでおわかりいただけますように、1970年あたりから、社会保障の給付費は急増しておりまして、決算の数字で一番新しいのは97年度でございますが、69兆 4,000億円が1年間で社会保障として国民に給付される額になっております。1人当たり55万 200円という額でございます。この伸びですが、名目値で、1970年からこの30年近くで、左上の箱にありますが、19.7倍。国民所得の伸びが 6.4倍ですので、ほぼ3倍。この30年間で社会保障の経済に占める割合は3倍になったというのが、これまでの経過でございます。

課題としましては、高齢化は2025年あたりに最初のピークが来ると言われておりますが、今後25年間にどの程度増えるか。また、それが負担可能かというのが最大の課題になろうかと存じます。

2ページですが、ただいまの給付を分析したものでございます。3つ目の欄をご覧いただきますと、部門的には、69兆 4,000億円のうち52.4%の36兆円が年金に、医療に36.5%、25兆円、介護等福祉に11.1%、 7.7兆円が使われているということでございます。

対象者をご覧いただきますと、社会保障給付費の65%が高齢者にいっている。高齢者以外、高齢者は制度によって定義の違いがございますが、例えば年金とか福祉でいいますと概ね65歳以上、医療については70歳以上の医療費が大部分になっていますが、そういった経費が65%、45.1兆円。それ以下の年齢に対しては、35%、24.3兆円が給付されていますが、そのうち、厚生省の言葉では「若人」と読んでいますが、70歳未満の方の医療費が15.7兆円と、ほぼ大部分を占めるということで、少子化対策が問題になっていますが、児童・家族関係に使われています経費は 2.3兆円でして、社会保障給付費の現状からいいますと、高齢者給付にかなり片寄った現状になっております。

収入の方は、90兆近い収入がございますけれども、その内訳をみますと、保険料が全体の60.9%で54.8兆円。税金が24.2%で21.8兆円、そのうち国が17.1兆円、地方が 4.6兆円となっております。その他は、大部分は資産運用収入でございます。

3ページをご覧いただきますと、「社会保障給付費の国際比較」。給付面の国際比較は3ページのとおりですが、各国と比較しますと、ヨーロッパ諸国に比べると現状はかなり低い。アメリカと並んでかなり低い。対国民所得比の右の欄で見ていただきましても、17.8というのは、アメリカと並んで低い現状にございます。

以上が給付面ですが、6ページにとんでいただきまして、負担の現状を申し上げたいと存じます。

負担の現状、これは社会保障の負担に限らず、国民負担率ということでご説明申し上げますと、これは大蔵省の数字ですが、平成12年度(2000年) の国民負担率は、一番下の欄にありますように、36.9%で、先ほどの社会保障給付の伸びと重ね合わせるために、昭和45年(1970年)からの推移を示しておりますが、この間、国民負担率は、ご承知のとおり12.6ポイント増えていますが、内訳を見ますと、4)の欄で、社会保険料の伸びが9ポイント、租税の伸びが昭和45年(1970年)と平成12年を比較しますと、3ポイントちょっとの伸びということで、この間、12.6ポイント国民負担率は上昇していますが、社会保障負担が9ポイントと、伸びのかなりを占めているというのが、国民負担率という面から見たものの推移でございます。

7ページをご覧いただきますと、今度は国民負担率ではございませんで、先ほど申し上げました社会保障の財源の構成を各国比較したものですが、日本の場合は、先ほどのものをグラフにしただけですが、白いところが被保険者拠出、横縞が事業者拠出ですので、合わせますと6割が社会保険料。国庫負担あるいはその他の公費負担が24%ということですが、これを他国とのパターンで比較しますと、イギリスやスウェーデンが社会保険財源という意味では4割以下あるいは4割をちょっと超える程度ということで、租税の財源が多い国のパターン。逆に、ドイツ、フランスは社会保険料の負担が7割近くになっているということで、社会保険方式がメインの国だと言えると存じます。そういった意味では我が国の財源構成は、この図で見ますと、両者の中間にあるように見えますし、確かに社会保険料負担と租税負担と組み合わせて運用をされている国になるかと思います。ただし、資産収入がかなりありまして、資産収入は社会保険料の固まりから生まれています利子ですので、これも社会保険料から生み出されているというふうに考えますと、どちらかというと社会保険方式の国になるのではないかと存じます。

8ページは、国民負担率の国際比較の数字ですが、こちらも日本の国民負担率はアメリカと並んで、ヨーロッパ諸国と比べるとかなり低い。それから、社会保険料の負担は、この棒グラフで見ますと白い部分ですが、社会保険方式のドイツ、フランスと比べますと、日本の社会保険料の負担は半分くらいの状況にあるというのが現状でございます。

9ページは、平成11年度版の厚生白書でお出しした資料でございますが、勤労者世帯の家計の中に占める社会保険料負担あるいは直接税の負担がどうなっているかということですが、家計ベースで見ますと、先ほど国民負担率は36%と申し上げたわけですが、15.8%という状況になっています。この社会保険料負担と租税負担の推移を見ますと、80年代半ばくらいからあまり変化はないということが見て取れると思いますし、社会保険料の方が内訳で見ますと、じわじわと上がっているという状況でございます。

以上が社会保障の給付と負担の現状でございますが、将来これがどうなるかということで、かなりとびますが、17ページをお開きいただきたいと存じます。これは、私どもの給付と負担の見通しもやや古い推計で恐縮でございますが、97年9月時点でしました2025年の負担と給付の見通しですが、どんな経済的な前提を置くかによって変わってくるかと思いますが、私どもは、今70兆円弱の社会保障給付費が2025年には 230兆円になる。それから、国民所得に対する割合は18%弱でしたが、この試算によりますと、国民所得比について33.5%。もう少し経済の伸びが低い場合を見通しますと、36%ぐらいかと考えておりますので、経済に対する社会保障の割合は今後25年間でさらに倍になると考えております。

18ページをお開きいただきたいのですが、そうなったときの日本の社会保障給付費の国民所得に対する割合、それから国民負担率についてどうなるかということですが、18ページのグラフは、国民負担率を横軸に、社会保障給付費の国民所得比を縦軸に取ったものですが、今、日本はアメリカと並んで低い方ですので、左隅にあるという状況でございます。A推計、B推計、C推計としているわけですが、先ほどお目にかけた 230兆円というのはB推計で、経済の伸びが一番低いと見込まれるC推計の場合は、この図では「日本(2025) C」欄ですが、こういう範囲になるのではないかということで、社会保障給付費は今の倍程度、国民負担率は、これは厚生省限りで推計できないので、社会保障による社会保険料及び社会保障に必要な国庫負担等の伸びを伸ばしたもので、ほかの経費については国民負担率の伸びと同じ伸びという前提で考えますと、2025年の国民負担率は55、56%というところまで行く。この位置に行くということで、2025年の日本の国民負担率なり社会保障給付費は、現在のドイツなり、フランスなりの位置に推計上は近づくと考えている次第でございます。

以上は将来推計でございますが、社会保障をめぐる課題は何かということでございます。19ページに、社会保障構造の在り方について、総理の下に今年の1月から、有識者会議を設置しまして、こういった問題について議論していただいているわけですが、課題をご紹介するという意味で、21ページの「論点の整理」、この有識者会議で4月に論点整理をしたものでございますので、この論点整理を簡単に見ていただきますと、直面している問題点が出てくると思います。21ページに、「少子高齢化と社会保障」、特に人口構成の変化にどう対応するか。4つ目の○ですが、今後の負担の増大が見込まれる中、どうやって若い世代の信頼を獲得していくか。それから、社会保障の在り方としては、22ページで、いろいろな議論がありますが、特に3つ目の「・」にありますように「持続可能で効率的なシステム」。「年金、医療、介護等の相互の関係、総合性」あるい「税制との関係」がございます。もちろん、そういったことを突き詰めていきますと、「社会保障の範囲・水準、公私の役割分担、給付と財源」という問題になろうかと思います。

それから、中長期的な課題に対して当面、どんな行政的あるいは政治的な動きになっているかということで、資料3ー1の11ページを開けていただきますと、社会保障をめぐり、特にここ1、2年、政党間の方でも議論がされていて、小渕内閣が自由党と連立を組みましたときの自由党との合意では、「自自合意(1998年12月)」とございますけれども、「消費税は、その使途を基礎年金、老人医療、介護に限定する」という合意がなされていまして、11年度、12年度の予算の総則で現にこういう規定が置かれております。ただ、現在は、基礎年金、老人医療、介護に要します費用が国分として上がっています消費税収よりも大きいものですから、国分の消費税収を全部この費用に充てましても、現行の国庫負担で必要なものに充てましてもまだ足りないということで、消費税で、現行の制度で全てを賄っているわけではないという状況でございます。

そういった中で昨年、年金法の改正年に当たっていまして、政府の年金法案を国会に提出するときに、自由党との間で合意がなされていて、基礎年金は、自由党の政策としては、全部税金で賄うべきだという考え方を持っておられましたので、国会に法案を提出する際に、その方向で検討する旨のことが明示されないとだめだという動きがありまして、11ページの2)の1にありますように、「基礎年金については、財政方式を含めてその在り方を幅広く検討し、当面平成16年までの間に、安定した財源を確保し、国庫負担割合を2分の1(現在は、3分の1でございます。)」へ引き上げるという規定が置かれております。この法律が今度の国会で今年成立したところでございます。

12ページでございますが、昨年10月に、与党3党(当時の与党3党、自民、自由、公明)が政権を組むときに、社会保障について合意された中では、今度は「2005年を目途に、年金、介護、後期高齢者医療を包括した総合的な枠組みを作る。それに必要な財源の概ね2分の1を公費負担とする。消費税を福祉目的税に改めて、基礎年金、高齢者医療、介護を始めとする社会保障経費の財源に充てる」、こういう合意がなされております。

13ページをお開きいただきたいと思います。こういう流れ等を踏まえまして今後の、現在直面しています社会保障の制度改革の宿題といいますか、スケジュールといいますか、求められている事項を整理したものですが、年金については、11年の財政再計算に伴う年金改正法は成立したわけですが、次期財政再計算が16年度ということが第1点。第2点は、先ほどご紹介しました改正法の附則で、当面、平成16年までの間に国庫負担を2分の1に引き上げるということですので、12年度以降、こういう宿題があるということでございます。医療については現在、健康保険法等の改正法案が国会に提出されていますが、どうも今国会は成立しそうにないということです。また、健康保険法については平成9年に、いわば保険料なり患者さんの一部負担引上げをする健保法改正を行ったわけですが、そのときに、国民に負担だけを求めるのではなく、医療制度の抜本的な改正を2000年度までにするということが、当時の自社さ政権の公約でしたし、歴代厚生大臣、総理を含めて、これを繰り返し約束してきたところでありますが、なかなか関係者の合意が得られず、今回、12年度、法律改正は出しておりますが、抜本改正からは国会ではほど遠いものというように言われていまして、厚生省としても、改めて改革は順次行うということで、とりあえず14年度を目指して改革を進めるという約束をしております。介護については、この4月から実施されたわけですが、法律の附則では、5年後に見直し議論がありますし、それ以外にもいろいろな場面で、介護保険制度についての見直し議論が行われているという状況でございます。児童手当関係は、今度の国会で児童手当の改正法案が提出されていますが、与党のうちの1つであります公明党は、大幅な児童手当の増額を政策としていまして、さらに、今年の12年度の児童手当の改正は経過的なものであり、税制の控除制度との見直しを含め、13年度に改めて児童手当制度の抜本的な見直しに合意するということが昨年末、3党で合意されております。また2005年には、先ほど申し上げましたように消費税を福祉目的税に改めるという3党合意がなされている、こういう状況でございます。

それから、年金制度もご報告しなければならないと思いまして、資料3ー1の14ページ以下にお付けしていますが、時間がないと思いますので、項目だけを紹介させていただきまして、また、年金課長が来ておりますので、ご質問等があればお答えをしたいと思います。

年金の課題としましては、まず、財政方式として社会保険方式か税方式かという議論がございまして、14ページ、15ページに、その辺の私どもの考え方、ご説明を書いております。

もう一つ年金の財政方式という意味では賦課方式か積立方式かという議論がありますが、18ページに、その辺の議論を紹介しております。

特に、日本の年金制度は基礎年金制度、サラリーマンの報酬比例部分の厚生年金制度、その上に企業年金制度等の3階建ての制度と言っておりますが、基礎年金についていろいろ議論がありますので、19ページに基礎年金の制度の仕組み、20ページに基礎年金の制度について税方式の導入問題。なお、基礎年金については未納者、未加入者がいて空洞化しているのではないかという議論がありますので、それについてのご説明が21ページ以下にあります。さらに、最後の論点としまして、24ページですが、厚生年金を公的年金としては廃止すべきだという民営化論がございますので、その問題。あるいは、女性の年金について議論がありますので、その点を論点としてお付けした次第でございます。

私の方からのご説明は以上とさせていただきます。

〔 部会長 〕 どうもありがとうございました。ただいまご説明のありました社会保障について、ご質問、ご意見がございましたらお伺いしたいと思います。なお、時間の関係もございますので、まず委員の方から続けてご質問、ご意見をお伺いし、最後にまとめて厚生省からお答えをいただきたいと思います。

〔 A委員 〕 時間がございませんので、1点に絞ってお聞きしたいと思います。

資料3ー1の18ページ、賦課方式と積立方式の問題で、「積立方式への移行のためには、二重の負担の問題」がある、「現在時点で果してこれが現実的な選択肢といえるか」というご意見だと思います。これについては、「二重の負担」という言い方についてはすごく誤解があるので、積立方式への移行さえしなければ二重の負担があたかもないというご認識かどうかをお伺いしたいと思います。

これは既に積立金がその分積立不足になっているという面から、単にこれを先送りにするのか、それとも移行期に、既に起きているその負担を顕在化させるかという選択肢ではないかというような質問に対してどう思われるか。現実的でないということは、逆に、どんどん後代世代に繰り延べるということの方がより現実的なのか、そういう選択になろうかと思います。

もう一つは、極端なことをいえば、積立方式への移行をすると同時に、その二重の負担を赤字国債を発行して補うというような選択肢もあるわけで(これは民営化との絡みでありますけれども)、そんなことはナンセンスだといえば、まさに現状の賦課方式のままで放っておくということはそういうことをしているのだ。後代負担に巨大な赤字国債を出しているのだというような見方に対してどうかということ。

最後には、賦課方式のままであれば少子化のリスクということに対して、何の手も打たないのかどうか。どんどんこれからは出生率が、厚生省の見通しでは回復するということですけれども、これが回復しなかったからどうなのか。今のままでも、後代世代はどんどん人口が減っていくわけですから、そういう人たちに専ら負担を後送りするということが本当に現実的な選択肢かどうか。

そういう二重の負担の定義についてお伺いしたいと思います。

〔 B委員 〕 私も、3点ほど申し上げます。

1番目は、A先生と重なるのですけれども、「二重の負担」という言葉遣いで後代に残される負担が、民営化するときだけに出てくるような印象を与え過ぎているのではないかという、これはコメントです。

2番目と3番目が質問ですが、1つは、年金制度について見せていただきましても、ここに書かれてあるニュアンスとしては、税よりは社会保険方式の方がいいのだということで書かれていると受け取ります。しかし、税方式にしましても、必ずしも生活保護と同じものではない制度設計もできるわけで、また税方式だと人口の高齢化というものをヘッジできないということではないと、私は個人的に考えております。そこで厚生省に伺いたいのですけれども、社会保険方式を堅持するというスタンスで書かれてあるところから見た場合、私が1つ危惧するのは、このままの制度設計では少子化が進むたびに制度を収支バランスするような形で改正していかなければならないことになります。そこで、社会保険方式を堅持されるということであれば、例えば、スウェーデンが社会保険方式と所得再分配を分離するのだというような抜本改革を行いましたが、ああいったところまで考えておられるのかどうか。

2つ目は、時間がないので細かな質問は避けまして、介護、医療、年金、そういった大きなカテゴリーで社会保障制度というものが成り立っていますが、今後、財政制約の下で厚生省としては最も力を入れるといいますか、ほかの言葉を借りれば、給付がどの分野も伸ばせない状況の中であえて力を入れる分野とすれば、どの分野と考えておられるのかということです。以上です。

〔 C委員 〕 資料3ー2、国際比較がありますが、その他の欄でスウェーデンの割合は非常に大きいです。これは介護ということかと思うのですが、その場合に、将来、日本はこっちの分野も相当伸びていくことになるのかどうか、そこら辺です。

〔 D委員 〕 今まで出た質問と同じなのですけれども、まず1つ印象を言うと、こんなふうに特定の制度、特定の官庁が指示するというのは民主主義の世界でおかしいと思います。いろいろな考え方があって、政府はそれに応じてやるのであって、それを実行される方と企画される方とは分離すべきだと思います。こんなふうに、イデオロギー的な立場を一官庁が取って、しかも、それが実施主体であるという、その組織自体がまずおかしいと、率直に言って思いました。

次は感想です。オーストラリア、カナダでは、税方式については所得制限がある。なぜあってはいけないですか。これは、賛成しておられるのですか、反対しておられるのですか。

〔 部会長 〕  それでは、ただいまの4人の委員の方の質問、意見に対しまして、どうぞ。

〔 厚生省 政策課長 〕 年金課長の方からも順次お答えさせていただきますし、私もお答えさせていただきます。

D先生がおっしゃった、イデオロギー的にどうかということは、私どもも十分自覚しております。自覚しているという意味は、いろいろな議論があって、我々、いろいろな議論についてきちんと勉強していかなければならないということは承知いたしております。そういうつもりでありまして、表現的な面とかでちょっとおかしいと思われるような点がありましたら、そこはお詫びしたいと思いますけれども、今の自分たちの考え方を素直に整理してみるとこういうことかなということで、あえてお出ししていることでございます。実は、そういうコメントを別の場でもいただいたことがありまして、私も、そのコメントには大変ショックを受けておりますので、私どもはそういうことではない、これ以外に絶対に成り立たないとか、そういうように思っているわけでもない。非常に難しいと思っていることもございますけれども、凝り固まっているとか、そういうことではないことは釈明をさせていただきたいと思います。

〔 厚生省 年金課長 〕 年金の関係についてお答えしたいと思います。

二重の負担の関係でありますが、民営化したからそういうものが生じて、今はないということは、決して申し上げていないわけであります。例えば、資料3ー2の24ページに、今の厚生年金の給付債務と財源構成という絵を掲げておりますが、将来に、今の年金制度の運営をしていてもこういう過去債務を抱えていますということは、 330兆円を囲んでいますけれども、厚生年金部分だけでもこれぐらいの過去債務を抱えていますということを申し上げておりまして、これは現行制度でも今後、永久償還という言葉が正確かわかりませんが、保険料を引き上げることによって払っていかなければいけないものです。

ですから、これをもし民営化ということで一気に解決するならば、その償還するスキームというものがいるということでして、それはまた今の保険料を上げることによって吸収していくのではない、かなり明快なやり方で進めていくことになるということでございます。したがいまして、存在しないようなことを申し上げているつもりはございません。

それから、これに対する考え方でありますが、少なくとも、これだけの大きな過去債務を後代に後送りすることについては望ましくないという考え方に立ちまして今回法律を改正しまして、総額では、将来債務の約2割をカットする。その分、将来の負担も抑えようという改正を行いました。国会でも大変厳しいご審議が続いたわけですけれども、この3月末にお認めいただいて、将来債務を約2割は減らすというところまでは今回、到達したわけであります。それにおいて少しでも負担の後送りを減らそうとしているわけですけれども、その先もっと減らすには、全額民営化して、それを完全に減らすところまでたどり着けるかとなりますと、まだ、そこまで私どもは踏み切る考えはございません。2階部分の厚生年金というものは被用者の老後の支えでありますので、これをゼロにするという方向で舵を切るところまでは考えておらないところであります。

それから、スウェーデン方式ということでありますけれども、スウェーデンにおきましては、保険料を固定して、将来、例えば寿命が伸びようが、経済変動しようが、それは保険料の範囲で給付が変動するのだという、かなり大胆な改正が行われました。そういうことができれば、政府なり国会は、いわば自動調整的に給付が伸縮するわけですから、改正の作業が軽減されるわけでありますが、一方で、その給付の変動について、自動的にこれは決定されることになりますから、国会なり国民が、そういう意思決定の方法を取っていただけるのかどうかということになります。スウェーデンの方法は大変参考になりますけれども、給付が自動的に調整されるという動かし方がこの国で可能かどうか、このあたりは政治の問題にもなってくるのではないかということでございます。

それから、税と社会保険方式の関係でありますけれども、私どもも、仮に税方式になったらそれが必ず所得制限が入らなければならないと考えているわけではございません。それは考え方によって、税方式でも全員・全額・皆年金で支給するというやり方は、考え方としてはあると思っております。ただ、これまでの消費税の議論等を見ておりまして、例えば毎年零点数パーセントずつ消費税を上げる、あるいは3、4年に1回1%消費税を上げるということが国会で審議されるたびに、そして、それが5%、8%、10%になっていく中で、この消費税の引き上げの中に無駄はないか、高額所得者が受給しているのを低所得者が負担しておかしくないか、こういう議論が出ると、かなりの確率でその給付全体について対象者を抑えるか、給付が伸びないか、こういうリスクがあるのではないかということです。これは財源が切り替わったら給付の性格も変わるのではないかということで、そこを今の国民皆年金と同じようなことで推移するというふうに国民が思っているのであれば、その可能性はありますよ、ということを書いているわけでありまして、これは思想的にできないと申しているわけではございません。

そういう意味で、オーストラリアの例などを引きましたのは、こういう形にすればこういうような例もあるし、そうでない例もあるということで、それ以上の意味ではございません。

〔 厚生省 政策課長 〕 残りのご質問にお答えさせていただきます。

C委員の方から、スウェーデンの福祉の経費が非常に大きいということで、医療、年金は、各国とも大体定義がきちんとしておりますが、福祉のところはかなり各国で差がありますのは、各国の制度なりの違いがあるということでございます。スウェーデンが非常に大きいのは、1つは家族給付、児童手当みたいなものですが、これが非常に高い。23.3%のうち 7.1%が家族給付、失業給付が 4.1%ということでかなり高くなっています。そのほか、年金をもらっている人が高い家賃のところに入った場合など、家賃補助などもスウェーデンはしていますので、そういったことで高くなっているのかと思います。

私どもの見通しでは、現在、日本の福祉の経費は全体の給付の10%ですが、これがやや高くなると将来見通しでは考えておりますけれども、やはり年金、医療保険が大きいというのは変わらないのではないか。スウェーデン型には、この部分はなかなかならないのではないかと見通しております。

B委員の、いろいろな財政制約の中で年金、医療、介護、どの部分が大事なのかというご質問ですが、なかなか難しいというのが正直なところでございますけれども、今の年金の状況を見ますと、資料の中では付けておきましたけれども、年金しか収入のない方が半分くらいおられる。それから、高齢者の収入のうち年金が8割以上だという方を合わせますと、3世帯に2世帯がそういう状況でございますので、そう考えますと、年金がきちんとしていないと高齢者の生活は苦しいかな、と。さはさりながら、それでは医療はどうかというところはあるかと思いますが。基本的には支える側の負担とのバランスもありますので、年金をきちんとし、その年金、その他の収入、あるいは資産で応分の負担をきちんとしていただける。つまり、医療なり介護なりも、サービスはきちんと届けられ、しかし、負担は高齢者だからといって、例えば安くするとかいうことではなくて、負担できる方についてはきちんと負担していただく。政治的にはなかなか難しくて、そういうことがコンセンサスが得られないので改革が進まないわけでありますが、そういう方向ではないか。

介護保険は、そういった意味では、保険料も高齢者の方からいただいておりますし、介護保険のポイントの1つは、65歳以上の方ご自身がお一人お一人が被保険者になり保険料を払っていただくという点と、若い世代の半分の率ではありますが、1割の定率の負担を利用する際にはしていただくというところが、今の健康保険制度などとは違う点でございますので、そういう介護保険で入れていることをほかの分野にも広げていくべきではないかと考えております。

〔 B委員 〕 私が例えばスウェーデンと申し上げたのは、年金課長がおっしゃったみたいに、年金の保険料も固定してしまうというのも1つの方法であると思いますが、あと1つの大きな特徴は、ご存じのように、保険という性格を大幅に出してしまって、その中では所得再分配というのは別のことでやってしまうような方式にしたということです。

D先生は、「イギオロギー的な」とおっしゃったけれども、社会保険方式というのを前面に出されるからには、それぐらいのことまで考えておられるのかということなのですけれども、その点についてはいかがですか。そこまではまだ考えていない、今の現状のまま行くということなのですか。

〔 厚生省 年金課長 〕 今回の改正、あるいは現在の中では、今持っている社会保険方式の再分配機能をさらに強めようということは、少なくともしていませんけれども、ではそれをなくすということについても、まだそこまでの決意はないという状態であろうと思います。

〔 厚生省 政策課長 〕 D先生のお話にあった、税方式にした場合に所得制限を入れる、それは生活保護と同じになるということに解釈される。それについて賛成しているのか反対しているのか、あるいは生活保護的になって何が困るのか、というご質問だと思います。

私の考えについて言いますと、ちょっと釈迦に説法みたいですが、社会保障のどこの国の歴史を見ても、まず生活保護からスタートして、みんなそれで満足できなくなって、結果的に苦しくなった人を救うということではなくて、予防的にできないかということで年金制度などはできたという歴史がありますので、そういったことから言うと、生活保護的に戻るということが本当にみんな納得できるのか、というのが1点。

それから、老後生活設計するときに、自分はあるラインより低くなる。したがって、年金をもらえると思って設計するのか、それより高くなると思って設計するのか。つまり、年金がもらえるものかもらえないものかということについて、設計の仕様が非常に不安定にあるのではないかという点。つまり、生活保護というのは事後的なものであります。それに対して年金制度は、今、いろいろご議論はあろうかと思いますが、これだけ保険料を払ってきたのだからこれだけもらえるはずだという事前的な制度ではないかと思っておりますので、そこが大丈夫かなということです。

3つ目は、非常に実際的なお話をさせていただきますと、財政当局との力関係でいって、税金でそんなにちゃんとした年金をもらえると思えない。そこを私は非常に危惧しているところです。つまり、そういう制度になった場合に、財政制約によって、最初のうちは8割の高い年金を払う。それが7割5分になり、6割になり、そういう結果になるのではないかというふうに考えております。

〔 A委員 〕 私は、3つの要望であります。先ほど政策課長がおっしゃったような問題は、必ず二重の負担を議論するところには一緒に書いていただきたいということ。口頭では補足されるのですけれども、こういう文書には一切論点としては出てこないので、そこはバランスよく整理していただきたいというのが第1点。

第2点は、今の事後的、事前的な話です。生活保護は事後的だ、年金は事前的だとおっしゃいますが、例えば、資料3ー1の21ページの一番下の○ですけれども、貧しくて「保険料を納めることができない人には、保険料の免除という制度があり、貧困の状態が続いて40年間保険料を納めなくても、国庫負担分(1/3)は保障される仕組み」がある。これは別の言い方をすると、本当に貧しい人は基礎年金の3分の1しかもらわないですね。これのどこが事前的な生活保障システムなのか。年金というのは非常に厳しい制度で、負担なければ給付なしということで、これは一種の保険にすぎないわけです。生活保護ではだめなので年金でカバーすると言っても、それには明らかな原因があるわけで、生活保護をきちっとセーフティネットとして築かなければ、ある意味で完全な年金というのもできないわけで、決して生活保護か年金かという対立概念ではなく、これは補完的にとらえなければいけないのではないかという点です。

それから、女性の年金について、これはいつも付け足しで議論されているのですが、これは非常に問題ではないか。「女性の年金」という言い方自体に問題があるので、これは専業主婦を持つ夫の年金の問題なのです。明らかに所得再配分の問題である。それから、年金の給付水準でも、今は1人の夫の年金で奥さんも養うという想定から月に23万円というモデルケースが出ているので、もし共働きを前提にすればこれをもっと低くできるわけです。ですから、女性の年金を切り離して考えるというやり方自体に、今の年金改革の非常に大きな問題があるという、これはコメントでございます。

〔 D委員 〕 そもそも財政需要に左右されたくないのなら、国庫負担など受けなければいいというわけです。基本的に国庫負担があれば、3分の1であろうと何であろうと、必ず財政需要に負担が引っ繰り返される、こういうことだと思います。つまり、自由といいながら、何で国庫負担をそもそも現在でも入れているのか、というところから問題が発生していると私は思います。

ついでですから、もう一つ、免除者の18.7%、この比率をどう見ておられるのですか。この比率が高すぎる。30%以上はいけないとおっしゃっているのですが、18.7%の人に免除するというのは、正当な査定の結果だとお考えですか。

〔 厚生省 年金課長 〕 免除者につきましては今、基準に基づいて、その所得、あるいは前年の経済状況で判断しておりますので、これがこんなに多くなければ、年金の保険者としてはいいと思うわけですが、現実としてはこの数字を受け止めざるを得ない。

ただ、終生免除という方はそんなにおられないわけで、一時的にそうであっても、長い時期には免除の時期もあれば欠けている時期があって、本当の終生免除という方は非常にレアだと考えております。

〔 D委員 〕 初めからこういうのを見込んで保険料率を計算されていなかったのでしょう。だから、問題になっている。

〔 厚生省 年金課長 〕 現在の料率は折り込んで計算していますけれども、昭和36年の発足の時点でも、国民皆年金を社会保険で達成するというためには、所得のない方に対するこういう取扱いというものは、制度的には不可避であったというように理解しております。

〔 D委員 〕 そのときは、いくらとみておられたのですか。          〔 厚生省 年金課長 〕 免除者の存在をですか。

〔 D委員 〕 何%ぐらいあると。

〔 厚生省 年金課長 〕 それは古い資料を確認してみます。今、手持ちではございません。

〔 厚生省 政策課長 〕 先輩からの伝え聞きで、その文献的な根拠といわれると困りますけれども、当時の議論としては、3分の1くらいは免除者でもやむを得ない。農業国家でありましたし、36年当時は国民の半分が、今の制度でいうと1号でありますので、そういうとらえ方をしていたというふうに考えています。

〔 D委員 〕 それで負担を設計していた。3分の1入らないということを前提として負担を。

〔 厚生省 政策課長 〕 入らないということではなくて、免除されるということです。

〔 D委員 〕 免除されるから、入らないわけです。それで収支合うように設計していた。

〔 厚生省 政策課長 〕 保険料が入らないということであって、制度には入っているわけです。 財政上は、それを前提に保険料を計算している。

〔 D委員 〕 3分の1入らないという前提で計算されていたのですね。

〔 厚生省 政策課長 〕 その3分の1ということについては、文献的な根拠に基づくものではないので、きちんと確かめてお答えはさせていただきます。

〔 B委員 〕 政策課長にお聞きしたいのですけれども、先ほど、税にすると財政当局との関係でうまく取れるかどうか不安定になるというようなことをおっしゃいましたが、それは目的税についても同じ考えですか。もし目的税にしたとしても、同じ考えですか。

〔 厚生省 政策課長 〕 目的税をどういうふうに仕組むかとか、そういうことにも関わってくるとは思います。

〔 厚生省 年金課長 〕 それから、女性の年金についてご指摘がございましたが、これについては今回改正でも、年金審議会でも相当突っ込んだ議論をした結果、結論に至らずということで、近々これは検討会を設けて引き続き取り組むことにしております。その中には、単にいわゆる専業主婦の方々の保険をどうするかということだけではなくて、さっき先生がおっしゃいましたような、給付設計のあり方、世帯・個人の問題を含めて取り組まなければならないということで、それは単に保険料だけの狭い意味で扱っているわけではないところでございます。

今回の改正でも、結局は、そこまでは至りませんでしたけれども、今の23万円というモデルの水準が、これは専業主婦世帯の夫がモデルになった給付の設計で、これがおっしゃるように女性の年金額が男性と対等になってくれば、ダブルで2階部分を持つ必要はないわけですから、そういう制度設計の変更というものも今後、議論の中で起こり得るかと思いましたが、今回の改正ではそこまで、女性の平均額が低かったということもありまして、たどり着いておりません。ただ、そういう視野は持って検討をしたいと考えております。

〔 部会長 〕 どうもありがとうございました。大分時間も超過いたしましたけれども、最後に、私から一言だけ質問を。

13ページの「社会保障の制度改革」に、年金、医療、介護、少子化対策・児童手当とございますが、これ全部が下の方に、例えば年金の場合は2004年、それから介護まで全部合わせて2005年にきちんと問題点を解決する、こういうことになっているわけですけれども、当政策推進部会は「当面3年ぐらいをメドに」ということでいろいろな検討をしているわけですが、現在、有識者会議は、実際上は厚生大臣が補佐されているわけですが、これで総括的な全部、この秋ごろまでに検討して、意見が出ると聞いています。その後の取扱いは、そうするとこういう見直しに向かって具体的にはどういう方法を考えておられるか、お聞かせいただきたいと思います。

〔 厚生省 政策課長 〕 今、有識者会議で議論していただいておりますのは、年金制度、医療制度、介護制度、それぞれ具体的にどうしていくかということよりは、まさに今、先生方からご質問という形でお話が出ましたけれども、そういう各制度を考えるに当たって基本となる考え方を整理していただきたいと考えております。

有識者会議でとりまとめていただいた考え方を受けて、それぞれ年金なり、医療なり、介護なり、スケジュール的にはこういうふうになっておりますが、例えば年金についても、我が厚生大臣は、国庫負担2分の1を13年度からやったらどうかとか、そういう提案をしている状況でございますので、2004年までやらないということではなくて、その前という可能性もあるわけですし、介護についてもそういう可能性がありますので、そういう諸々の改革に当たって基本的な考え方に立って、それぞれの改革案を具体的に詰めていきたいと考えております。

〔 部会長 〕 どうもありがとうございました。まだいろいろご質問、ご意見等おありと思いますけれども、時間の関係もございますので、次のテーマに移りたいと思います。厚生省の政策課長、年金課長、本日はご多忙のところをありがとうございました。

続きまして、政策小委員会の検討成果をご報告し、ご議論いただきたいと思います。

政策小委員会は、私が委員長を仰せつかりまして、当部会の香西部会長代理、植田委員、木村委員、清家委員、村井委員、さらにテーマに関係のある有識者にもご参加いただき、計5回開催いたしました。

テーマとしては、最近の我が国の景気回復の動きを、「あるべき姿」が目指す経済新生の新しい発展軌道へとつなげていくため、当面3年間程度に戦略的に取り組むべき4つの政策課題について審議を行いました。すなわち、第1にIT革命を起爆剤とした新しい経済発展、第2に「静脈産業」の発展を通じた効率的な循環型経済社会の構築、第3に安心でき活力ある高齢社会の構築です。

詳しい内容につきましては、事務局からご説明をお願いします。

また、部会報告書案の第2部「『あるべき姿』の中の政策提言の推進状況と今後の課題」の骨子案についても、事務局から簡単に紹介をしていただきます。

〔 事務局 〕 それでは、資料に基づきましてご説明したいと思います。

今、部会長からこ紹介がありましたように、小委員会で検討いただいた部分を報告の第1部と位置づけて、当面3年程度の戦略的な政策課題に、ここで焦点を当てるというふうにしたらいかがかと考えております。第2部では、「あるべき姿」で示されましたそれぞれの政策課題について、今までの進捗状況と今後の課題を明らかにする。そういう形で構成をして、これから取りまとめを行っていただきたいと考えております。

次に、私どもの総合計画局では研究会をつくっていまして、その成果も報告書の中に反映されております。循環型経済社会構築に向けての研究会では盛岡先生が座長でございますが、そこでの成果をかなり入れさせていただいておりますし、ITの関係では國領先生を座長にして、情報と物流に関する世界のベストプラクティス研究会というのを作っておりまして、そこでの成果もかなりこの中に取り入れさてせいただいております。そのほか、清家先生の委員会の雇用の年齢差別禁止の関係の委員会ですとか、その他の委員会でのご議論も採り入れさせていただきまして、事務局として小委員会報告としてまとめて、部会長、委員の方々と相談させていただいたところでございます。

それでは、中身について簡単に報告をいたします。

まず、第1章が「IT革命を起爆剤とした新しい経済発展」ということでまとめてございます。1が「IT革命がもたらす経済社会の姿」、2が「IT革命推進の基本的考え方」、3が「IT革命を起爆剤とした新しい経済発展に向けて」ということで政策提言をまとめてございます。

第2章が「『静脈産業』の発展を通じた効率的な循環型経済社会の構築」、1が「基本的考え方」、2が「最近の取組み状況」、3「静脈産業のための課題と方策」として、この問題についての政策提言をまとめてございます。

第3章が「安心でき活力ある高齢者の構築」ということで、Iが今もいろいろご議論がございましたけれども、「安心でき、かつ効率的な社会保障制度の構築に向けた総合的検討」、IIが「介護保険の定着と介護ビジネスの推進」、IIIが「少子高齢・人口減少少子化における高齢者と女性の能力発揮システムの構築」、そういう形でまとめさせていただいております。

まず「はじめに」としまして、どうしてこの3分野について当面3年間の戦略課題として重点的に取り組むべきなのかということをまとめてございます。21世紀初等における日本経済の新しい発展へとつながる重要な動きがみられるという認識で、この中で新しい発展の原動力としてのIT革命の始動、厳しい環境制約下での持続的発展を可能とする循環型経済社会構築への歩み、高齢社会において人々の暮らしの安心を支える介護保険のスタート、ということをここでとらえてございます。

1「新しい発展の原動力としてのIT革命の始動」、最近、毎日、新聞を賑わしているところで、日本もようやく始動がみられているということだろうと思います。アメリカの景気に照らしても、これは長期的な経済発展の原動力になるという認識で、これに重点的に取り組んでいく必要があるという認識をまず示しております。

2「循環型経済社会構築への歩み」ということで、この数年、廃棄物問題が非常に深刻化していまして、特に産業廃棄物の最終処分場の残余量は、昨年9月現在で 1.6年までに減っている。これはずっと3年ぐらい推移していたわけですが、許可の申請件数が非常に減りまして、急速な勢いで残余の容量が減っているという状況でありまして、このまま推移すれば、経済がこのまま活動を続ければ、そのうちに最終処分場の制約で経済成長が困難になることも想定されるということです。そうした中で、循環型経済社会の実現に向けてのいろいろな法制が今スタートした、あるいは今国会で審議中ということ、それから民間の方でもいろいろな動きがスタートしているということで、この機会をとらえて経済と環境に調和したシステムを構築するということを書いてございます。

3が介護保険に関係するところです。これは4月からスタートしたわけですが、老後の不安には様々なものがありますけれども、非常に大きなものは、介護状態になったときにケアが十分に受けられるかどうかということでして、この介護保険のシステムというのは高齢社会の安心の大きな柱であるという認識。しかも、介護サービス市場が整えば人々の安心も得られます。また、関連サービスも含めた介護ビジネス市場が全体として大きなものになって、新しいビジネスの機会も提供される、そういう認識が示してございます。ただ、高齢社会の安心という観点では、介護に加えまして、年金、医療の総合的な社会保障の面でこれからの人口動態に対応できる安心でき効率的な制度を作っていくことが求められておりまして、そこは先ほどの議論のとおりでございます。また、高齢社会での、安心とあわせて活力ということも考えますと、これまで十分に能力が発揮できる環境が整えられていなかった高齢者と女性の能力を最大限に発揮させるためのシステムというものを早急に構築していく。特に人口減少、労働力人口が数年のうちに減少に転ずるという状況ですが、その前に、そういったものの基礎を作っておくことが重要であるということで、介護保険のスタートを契機にして、安心でき活力ある高齢者社会の基礎を早急に固めることが肝要という認識を示してございます。

こうした動きをうまく定着させていけば、現在の景気回復の動きを、「あるべき姿」が目指す経済新生の新しい発展軌道へとつなげていくことが可能であるという認識を示しております。

こういう認識に立ちまして、3つの課題について、当面3年の間に戦略的に取り組んでいくということで、そこに3つの課題が示してございます。

まず、Ⅰ「IT革命を起爆剤とした新しい経済発展」について述べております。ご承知のとおり、IT革命は、情報技術の想像を絶する進歩、世界中の情報の受発信源がインターネットを中核にした情報ネットワークで結ばれるようになること、それから、それがもたらす経済社会面での様々な変革というものを示す表現ですが、その本質は、基本的には情報制約がなくなる、ほとんど情報制約から開放されて非常に活動の自由度が高まる。それから、経済社会の様々な面でダイナミズムと創造性の高まりがもたらされるということ。その一方で、旧来の制度、システムでは、その新しい可能性が十分に発揮できないということで、経済社会の広範な側面で新しい情報環境にふさわしい制度、システムの転換が進行する、ということでございます。先ほども言いましたけれども、アメリカの例に見られるように、経済的な側面では、IT革命は長期的な経済発展の原動力になるものであるということで、最近、日本で始動がみられているわけですから、これを当面の政府の最重要な戦略課題と位置づけて、これを起爆剤として我が国経済に再びダイナミズムを取り戻して、新しい経済発展の展望を確固としたものにしていく必要があるという認識でございます。

1で「IT革命のもたらす経済の姿」ということですが、これは時間の関係もあり省略させていただきますが、1点だけ、IT革命がアメリカの成長に非常に貢献しているということ。IT革命の経済効果として、私どもの方で多部門の一般均衡モデルを用いて試算しましたけれども、IT産業部門の生産性の向上と、今どんどん広がっていますが、Eコマース、インターネット上の取引の普及、その2つの面でアメリカでのいろいろなスタディを参考に、これから5年程度の間に発生するであろう生産性の向上、Eコマースの拡大というものの効果を試算してみますと、直接的な効果の倍ぐらいの効果が経済全体にもたらされるという試算結果が出ております。IT革命自身がこれから非常な勢いで進んでいきますので、直接的な効果も大きいですし、その2倍の効果ということになりますと、まさに新しい経済発展の原動力と呼ぶにふさわしいものになることが期待される、ということを書いてございます。5年間の効果の試算としまして、直接的な生産性向上等の効果がGDPの2%、それをトータルして経済全体の波及効果も入れると 4.2%ということで試算結果が出ております。もちろん、この5年間で全てが出てくるということではございませんので、単純に5で割って、年間 0.8というようなことはできないわけですが、それにしても、かなり大きな効果になるということを示しているということでございます。

以下は、「企業の姿」としまして企業活動で、「取引及び経営のスピード化」、「顧客重視の経営戦略とダイレクト取引の拡大」、「企業組織のフラット化と取引のオープン化」、「インターネット上での世界規模での最適調達」、「バーチャルカンパニー化による経営資源の集中」、あるいはベンチャーとかSOHOとかいった個人の創造性や能力を活用した活動が活発化するという点を述べてございます。

「消費生活の姿」では、現在、インターネット普及率はアメリカと比べてかなり低いわけですが、今後は、移動電話、モバイルによるインターネット接続が順調に増加していることから、遠からず我が国のインターネット普及率がアメリカを上回るようになることも考えられるということを示してございます。これは、実際にそうなるというスタディもございます。

その結果、我が国における企業対消費者の電子商取引も急速に膨らんでいくだろう。その効果として、消費者選択の多様性の拡大、利便性の大幅な向上等、いろいろなメリットが出てくるということでございます。

一方で「懸念される側面」としていくつかあるわけですが、1つは、よく言われるデジタル・デバイドということ、それから、産業構造や職種構造の大幅な変化に伴う雇用のミスマッチ、さらには、ネットワーク社会への移行に伴います新たな形でのシステミックリスクの発生といった新たな懸念もあるわけです。

その次、「IT革命推進の基本的な考え方」というのでまとめてございます。IT革命が持つ諸特性にかんがみまして、そのもたらす成果を我が国の新しい経済発展、国民生活の向上につなげていくためには、政府として次のような基本的な考え方に基づいて推進に取り組んでいく必要があるとして、3つ挙げてございます。

1番目は、「スピード重視」であります。先ほども大臣の挨拶にございましたけれども、世界ではドッグイヤーという時間の単位で状況が変化していると言われております。そういう中での最大のポイントはスピードであるということで、民間企業は当然ながらこれに必死に取り組んでいるわけでして、政府としてもスピードが最重要な要素であることを念頭に置いて対策にあたっていくことが必要ということであります。

また、スピードとの関係では、ITが非常なスピードで変化していきますので、ITの変革が起こっている中心から離れた位置にいるということでは、実際に変化に気づいた頃にはもうフロンティアは先の方に行ってしまうということで、これはITの世界では「勝者の一人勝ち」という事態もしばしば起きるわけですので、変化に大きな後れを取るというのは市場競争力の面でも大きなマイナスですので、こういったことのないようにしていく、そういう観点も重要だということでございます。

2番目が「民主導の変革」であります。これは言わずもがなのことだろうと思いますので、説明は省略いたします。

3番目が「新しいネットワーク社会への対応」であります。IT革命は経済社会を新しいネットワーク社会に導くものということで、政策的にも従来の発想では十分対応できないということを自覚して取り組むべきだということでございます。1つが、新たな市場の枠組み作りということで、インターネット上の取引等の相手を活用した取引というのは、従来の市場の枠組みでは十分に対応できない新たな課題を内包するものであるということで、それにふさわしい新しい市場の枠組みを構築していく必要があるということであります。

2つ目が、システムの安全性確保と、それに関連してグローバルな視点ということでありまして、今年1月の下旬から次々に、行政機関のサーバーへの攻撃がございました。このように悪意をもった攻撃に対しては、これは本質的に弱いという特性をもっておりまして、まだまだ安全性の面で多くの課題を抱えているということでございます。そういう中で、ネットワーク社会の基本的な基盤整備として安全対策というものを位置づけて取り組んでいく必要があるということでございます。

次に、3で「IT革命を起爆剤とした新しい経済発展に向けて」ということで政策提言をまとめてございます。IT革命がもたらす創造性、ダイナミズムということがあるわけですが、その過程では、経済社会の広範な側面で新しい環境に対応するための転換が進むということがございます。この転換は、いわゆる技術開発、技術進歩等のIT革命の範疇を越えて、企業経営のあり方、労働雇用のあり方、さらには市場の枠組みを形成する諸制度の変更までも含むものでございます。こうした経済社会の制度とか仕組みの転換が遅れれば、IT革命の効果が十分に生かされないことになりますし、またIT革命自体の進行が遅れるということにもなるということでございます。

今まで、我が国でもIT革命に関しては様々な切り口から政策努力が行われてきておりますが、これら全てがIT革命を推進して、それを新しい経済発展につなげていくという観点から統一的に位置づけられてきたわけではないということですので、この機会に、ITを新しい発展につなげていくという視点に立って、経済社会の制度、システム面での課題も含めて統一的に位置づけて、戦略的に取組みを進めていく必要があるという認識でございます。

中身的には、まず、「予算・人員の重点配分と既存のネットワーク基盤の有効活用」ということに触れております。予算・人員の重点配分については、言わずもがなということでございますが、既存のネットワーク基盤の有効活用については、これまで、政府その他の公的部門において整備されてきた大容量の通信手段について広く民間に開放していく。あるいは、既存の管路、施設等を使用した、新たな回線の敷設について、オープン、無差別で透明性のある手続で処理することについての検討を述べております。

「ネットワーク社会における経済取引に対応した新たな市場の枠組みの構築」が2番目にあります。現在、政府の方では、「高度情報通信社会推進に向けた基本方針」というのが定められていまして、アクションプランに基づき、電子商取引の本格的普及、公共分野の情報化、情報リテラシーの向上、高度な情報通信インフラの基盤整備、ハイテク犯罪・セキュリティ対策等が進められております。当然、これらは積極的に進める必要があるわけですが、この部会としましては、ネットワークの高速・大容量化、低廉定額化、モバイル積極活用、情報と放送の融合といった点でネットワークの高質化を進めていくいこととあわせて、ネットワーク上での経済取引を円滑にするための制度の導入を早急に行っていく必要があることを強調したいということでございます。

「ネットワーク取引に対応した制度の整備」としまして、ネットワーク取引の安全性と安定性を確保し、取引が安心して行うことができるように、様々な制度等を確立していく。また、知的財産権につきましても、特に、いわゆるビジネスモデルの特許の問題について早急に検討を進め、明確な方向を示すということを述べてございます。

「安全・危機管理対策の強化」ということで、先ほど基本的な考え方で述べたものについて具体的に政策を進めていく必要があるという趣旨で述べてございます。

「我が国をグローバルなIT革命の中心に位置付けるための方策への積極的取組み」ということで、これは「IT革命時代における我が国の国際競争力の確保に向けて」ということでございます。基本的考え方でも触れましたけれども、猛烈な勢いで進行しておりますグローバルなIT革命の中で市場競争力を維持していくという観点からは、日本を常にグローバルなIT革命の中心あるいはその近傍に位置づけておく必要があるということで、その観点から4つほどの政策を提言してございます。1.日本がグローバルなIT革命を先導できるようになるための技術開発を官民が協力して促進する。2.日本がアジア太平洋地域の情報面のハブとして機能する条件を整備し、世界の情報ビジネス、ネットビジネスが日本に立地するような環境を整え、我が国の経済主体が常に世界のIT革命の先端に容易にアクセスできるような状況を創り出す。3.インターネットのグローバルガバナンスの貢献等の世界的な課題に積極的に取り組んでいく。4.日本がこれからイニシアティブを発揮するためにもアジア諸国と協調してIT革命の推進に取り組む、の4つでございます。

「IT革命の成果を最大限に生かすための物流のスピード化の促進」ということで、ボトルネックとなりがちなバックエンド、すなわち、物流のスピード化が重要であるということです。そのためには、いろいろな基盤整備ということ、インフラ整備ということが必要ですが、それに加えて、物流システムの標準化・シームレス化・ペーパーレス化の促進、安定を活用した物流の効率性の向上が重要ということでございます。

「IT革命時代の変革とスピードに対応できる経済社会システムの構築」ということで、IT革命の時代にあっては非常に変化が激しいということですが、それらの変化がもたらすチャンスを個々の経済主体が機敏に生かして、それが経済全体の生産性の向上、経済発展につなげていくようにするためには、それにふさわしい経済社会システムを構築していく。経済主体が、その変化にスピードをもって適切に対応していけるような環境条件を整備することが重要ということで、企業活動、労働、雇用、教育の面での課題に対しても積極的に取り組む必要があるとしてまとめてございます。

まず、企業活動面では、「企業経営、組織の変革を支える事業環境の整備」として、

コーポレーションガバナンスの強化と競争的な事業環境の整備の問題、企業組織の変革を容易にする制度の整備の問題、ITの利用促進ということを掲げてございます。

また、その関連で2番目として、「変革の主体となるベンチャー等へのサポート」ということでございます。最近、ネットビジネスの出現を契機に創業・起業ブームが起こって、一部投機的な動きもございますが、そういうことに幻惑されることなく、競争力を付けて大きく伸びていくビジネスを、本当の意味でのベンチャーということで育てていく観点が重要だということで、技術力の強化と人材の確保、ベンチャー支援のための金融・資本市場の整備、リスクへの挑戦に関する支援ということでまとめてございます。

次に、労働市場の問題でありますが、「労働市場の機能強化と労働者の能力開発への支援」ということでまとめてございます。1)で、「労働市場の需給調整機能(マッチング機能)の強化」でございます。労働者派遣事業の派遣機関のあり方,あるいは無料職業紹介事業の強化制度のあり方等について検討を行うということ。②は、「労働条件、勤務形態の多様化、弾力化」の問題。「企業外部での職業能力開発システムの充実」の問題を提案してございます。また、「有能な外国人労働者の活用」、この面でアメリカ等ではかなり進んでいるようですが、日本でもこういったことを考える必要があるということであります。

「教育におけるグローバルリテラシーの確保」ということで、大学をはじめとして、この面での人材育成に力を入れる必要があるということ、それから、初等中等教育段階からグローバルリテラシーとしての英語能力、ITへの対応能力、インターネットリテラシーの能力、そういったものを付けていく必要があるということ。デジタル・デバイドを防ぐという観点からもそれが重要である、そういったことでまとめてございます。

以上がIT関連でございます。

Ⅱでは、「『静脈産業』の発展を通じた効率的な循環型経済社会の構築」ということでまとめてございます。基本的な考え方は、先ほども言いましたけれども、非常に処分場の制約が厳しくなってきております。もちろん、ほかにも地球環境問題の対応ということもございます。そういったものに対応していくためには、リデュース、リユース、リサイクルを中心とした循環型経済社会を構築していく必要があるということでございます。

そのための主体として静脈産業の育成ということが非常に重要で、特に効率的な循環型経済社会の構築という観点から、市場の形成を通じて静脈産業の発展を促していくことが非常に重要であるという観点をまず書いてございます。

最近の取組み、様々な取組みがみられておりますが、それについては省略させていただきます。

なお、静脈産業というのは、「廃棄物処理業及び広い意味でのリサイクル業」ということを指してございます。

3で「静脈産業発展のための課題と方策」をまとめてございます。基本的考え方は、今述べましたように、資源循環に係る適正な市場の形成を通じて静脈産業を育成して、環境と調和の取れた持続的発展の基礎を築いていくということでございます。

まず、そのための「循環資源に係る市場の形成」ということで、この面で非常に大切なのは「情報の非対称性の改善」ということで、この市場では、不法投棄をはじめとする不正な処理を前提とした不当な処理価格による競争が行われて、不適正な処理を行う業者が選択されて、優れた技術を有し適正な処理を行う業者が結果として市場から排除されることになる、そういう情報の非対称性に基づく逆選択の問題というのがかなり大きな問題でして、これを防いでいく、こういったことが発生しないようにしていくということが大きな課題でございます。そのための方策としては、次に述べています「違法行為の監視及び抑止」とともに、取引当事者相互の説明責任を強化して、情報の流れをよくしていくことが必要で、その観点からも政策が以下に書いてございます。省略をいたしますけれども、「違法行為の監視及び抑止」ということが、この観点からも重要な問題でありまして、現行の廃掃法で違法行為に罰則規定がございますけれども、なかなか人が足りないということもあります。しかし、これはきちんとやっていかなければいけないということでございまして、警察組織による違法行為の取締り強化等々、いろいろな形でこのことに対応していかなければいけないということでございます。

「公的機関の関与」でありますが、基本的には、仕組みを作った後はできるだけ公的関与しないという形にした方が望ましいわけでありますけれども、産業廃棄物の最終処分場の確保等については、どうしても公共が関与する必要があるだろうということが書いてございます。また、リサイクル材とバージン材の価格差等でなかなかリサイクルに回らないで最終処分に回されてしまうということもございまして、その場合に、何らかの形で公が関与をして補正をする、そこで適切な社会的コストが反映されるような何らかの補正をしていくことも必要であろう、ということでございます。

2番目として、「静脈産業の飛躍的な生産性向上と資源の効率的な循環の形成」ということで、循環型の経済社会をつくりながら、なおかつ持続的な成長を続けていくためには、「静脈産業の飛躍的な生産性向上」が重要であるという考え方であります。そのためにどうすればいいかということで、広域的な観点に立った産業立地、施設の配置、あるいは産業基盤の整備、これは全て静脈産業に関するものでございます。あるいは、効率的な静脈物流の形成ですとか、経営基盤の強化への取組みに対する支援ですとか、人材の育成の問題ですとか、技術開発の支援ということでございます。

「市場のグリーン化」ですが、環境会計制度、製品LCAの研究・普及、こういった廃棄物問題についての低年齢層からの普及・啓発、公共機関によるグリーン購入、そういったものが必要であるということでございます。

それから、「ITの活用」、「循環資源に係るデータの整備」、「システムの普及と検証」ということで、これからどんどんやっていくわけですけれども、それぞれのシステムの実施後も、関係者による評価を行い、問題があればシステムを迅速に修正していくことが必要だということを強調しております。

次にⅢで「安心でき活力ある高齢社会の構築」をうたってございます。

1が「安心でき、かつ効率的な社会保障制度の構築に向けた総合的検討」ということでございます。先ほどもいろいろなご議論がございましたけれども、今般、国民年金法が改正されたわけですが、引き続き年金制度に関する諸問題を含め、社会保障制度が将来にわたり安定した効率的なものになるように、年金、医療、介護などを総合的にとらえて検討することが必要ということで、その際に、いろいろな要素を総合的手に勘案した永続性のある諸制度のあり方や世代負担のあり方について国民的コンセンサスを形成し、国民が安心と納得のできる仕組みを早急に確立していく必要がある。これは非常に難しい話でございますが、そういう指摘をしてございます。

2が「介護保険制度の定着と介護ビジネスの推進」ということで書いてございます。まず、基本的な考え方ですが、1)では、言うまでもありませんけれども、高齢者介護サービスを必要に応じて適切かつ十分に受けられる仕組みを整えること、これが高齢社会における安心な大きな柱であるということ。

2)では、そのためにも公的介護サービスが円滑に機能されて、定着させていかなければいけない。そのためには、今般、在宅介護については民間事業者への開放ということも行われたわけで、そういった措置の効果を最大限に生かすような条件整備をすることが必要と書いてございます。

3)では、これからの高齢化の進行で、関連サービスも含めた介護サービス市場全体としてかなりの規模に達するということで、でも、その核になるのは公的介護保険の給付対象のサービスですが、それをきちんと育てていくということで、呼び水的にそれが機能して全体の介護サービス市場の拡大につながるということを書いてございます。

「介護サービス市場の展望」については、時間の関係もございますので省かせていただきますが、民間事業者の参入が認められていない施設介護については、新規事業者の参入促進と事業の多様化による経営の安定の観点から参入を認めることが望ましいため、早急に検討を進め、結論を得る必要があるということでございます。

関連介護サービスにつきましては、公的な介護サービスの規模以上に大きな介護サービス市場が育っていくということが書いてございます。

3)「ITの応用への期待」についてですが、これもいろいろな応用が期待されているわけですが、これもとばさせていただきます。

「介護サービス市場整備の政策課題」ですが、介護保険制度が施行された現在、ケアプラン作成の遅れ等の問題が指摘されているが、「保険あって介護なし」の状態に陥らないように、政府は、需要と供給が適切にマッチングできるうようサービス体制、供給体制の整備に積極的に取り組んでいく必要がある、ということございます。

その際に、この市場の特質に十分留意する必要があるということで、4つ挙げてございます。1は、極めてメンタルなサービスだということ。2は、これは家の中に入り込んでくるわけですから、プライバシー保護の問題もある。3は、サービスの需要者が極めて弱い立場にあるので、消費者保護の面からもサービス内容が保証される必要がある。4は、これは第三者の目の届きにくい場所で行われるということで、高い倫理性が求められる、そういう特徴でございます。

そういうことを踏まえた上での、1)「介護要員の確保」ということで、サービスの質の向上を念頭にヘルパー等の介護要員の養成課程の充実と職業倫理規程の整備。また、処遇改善、保育サービスの提供・充実など介護要員の就労支援、ということを挙げてございます。

2)「利用者本位の仕組みの整備」ということで、ケアプランの作成を担当しますケアマネジャーについて、その独立性と、利用者の立場に立った業務がなされるようその機能強化が必要ということでございます。ケアマネージャーが主体的に活動することで、消費者である要介護者のニーズを汲み上げて、介護サービス事業者に対する監視、地域内での事業者サービスの質の評価が可能になり、さらにはサービスが選択される介護保険の仕組みと相まって、事業者間の競争が促進されることが期待される、ということでございます。3)「新規参入促進のための事業者への支援」としては、第1に、事業者に対する適切な情報提供、第2に、金融的な支援、第3に、新規参入マニュアルの作成、ということをうたってございます。

最後の項目でございますが、3「少子高齢・人口減少社会における高齢者と女性の能力発揮システムの構築」でございます。(1)の基本的考え方は、申すまでもないことだろうと思います。

(2)「今後の方向性」として3つ挙げてございまして、1つは、働く意欲と能力のある高齢者が、個人の能力を十分に発揮できるように、「年齢にとらわれず社会で活躍することのできる能力発揮システム」、2つは、ピラミッド型の人口構成がもう維持できないわけですので、これから労働移動が活発になるということで、「能力を生かした円滑な労働移動が図れる能力発揮システム」、3つは、働く意欲と能力のある女性が「性別にとらわれず社会で活躍することのできる能力発揮システム」を構築するということをうたってございます。

(3)で、それぞれについての政策提言をしてございます。1つは、「年齢にとらわれない高齢者の能力発揮」ということで、高齢者が離職した場合であっても、再就職が円滑に促進されるようにいろいろな施策を講じていく。また、その過程で、そのためにも長期継続雇用で特定の雇用システムを有利とする制度は中立的なものにしていく必要がある。現在、定年制等もございますけれども、一たん高齢者が職を離れると、職を見つけにくいという状況にあるわけですが、そういう状況を改善していく。

また、高齢者の職という点に関しては、高齢者に対していろいろな形の、フルタイム、パートタイム、任意就業といった様々な雇用・就業機会を提供していく。あるいは、体力に適した形態の作業や勤務を提供していく。そのために、高齢者の作業適正に関する調査を進めて、体力測定をやったり、勤務条件、作業形態等について、高齢者に適した職の開拓を行っていくことが重要ということでございます。

また、この観点では、例えば、年齢にとらわれずに働くことのできる環境を整える、その当面の目標として「70歳まで働くことを選べる社会」ということも1つの方策ではないか。

また、実際に高齢者が、通勤し、社会参加することを容易にするためには、いろいろなバリアフリー等も含めた地域づくりが重要であるということでございます。

2番目で、「労働移動を前提とした労働市場の機能整備とエンプロイアビリティーの向上」ということですが、高齢期においても十分に能力発揮するためには、若年期からその能力の向上に努める。あるいは、高齢期に至る前に様々な職業が選べるような選択の可能性を広げておくことが必要、ということでございます。

(3)「男女共同参画の推進を踏まえた女性の能力発揮」ということで、様々な政策を提案しております。

それから、第2部、資料5でございます。これは次回、5月24日と25日の両日あわせてご議論いただくことになるわけですが、2部で、「経済社会のあるべき姿と経済新生の政策方針」の推進状況と今後の課題をまとめたいと考えております。

第1章「多様な知恵の社会の形成」以下、それぞれ「あるべき姿」でうたわれました項目に沿いまして、推進状況と今後の課題を明らかにしていきたいと考えております。

ちょっと長くなりまして恐縮でございますが、以上でございます。

〔 部会長 〕 どうもありがとうございました。時間が大分なくなりましたけれども、また来週24日、25日と2回ございますので、今日は時間の範囲内でいろいろなご意見を承りたいと思います。特に、小委員会はちょうど1月前の4月18日に第1回をやり、それから、早朝とか夜も含めまして5回やりましてまとめたということですので、いろいろご意見もあろうかと思いますけれども、どうぞひとつよろしくお願いします。

〔 E委員 〕 循環型社会のところで1つだけ伺うというか、意見を申し上げたいと思います。

具体的には、今までの、新しい製品のマーケットメカニズムというのは、予想される最終製品の需要が先見的に決まって、それに見合って部品が調達され、またその素材が調達されるという恰好で動いていきますから、その過程で、ストックを含めた流通コストを最小限にするような、そういう恰好で倉庫だとか、流通のネットワークだとか、あるいは工場配置、こういうのがマーケットメカニズムで最適化される、こういう社会だろうと思います。ところが、循環型社会というのはそうではなくて、素材である循環資源が先見されて、それを何らかの恰好で、今までの循環の中に組み込まなければいけない、こういう話だろうと思います。このことについて価格についてはうまくいかないから、何か手当てをしなければいけませんと言っているのですか、そのほかに、何が先に決まってくるかという、そこのことについて一体どう処理するのかということ。具体的には、ストックが一体どういう段階でストックされるのかという、その物資の、物の連続性の処理をどうするのかという話。

それから、先ほど申しましたように、地理的に最適化された恰好になっていますから、それが必ず変わってくるわけで、その地理的なミスマッチを一体どうするかというのを、なるべく広域化・大型化といえばそれはそのとおりですが、先見されるシステムが違うものをマッチさせようとするときに、価格についてだけしか答がない。しかしながら、そうではなくて、もともと決まってくるものは、先が違うのだから、どこかでストックする、あるいはどういうボリュームでストックする、こういう話をシステム設計をして、それがマーケットメカニズムでできるのか、公的関与をどうやっていくのか、こういう話がデザインされないといけない、こういうことではないか。

残念ながらというか、しょうがないのですが、今のところは、業種毎に、包装だとか、電気製品だとか、自動車だとか、こういう恰好でシステムを設計しようとしていますから、その全体の形がなかなか見えない、こんな恰好になっているような気がします。

〔 部会長 〕 何か意見がありますか。

〔 事務局 〕 ご指摘は非常に重要なご指摘だろうと思います。また、大型化というのは、言葉足らずかもしれません。何でもかんでも大型化すればいいということではない、むしろ、効率ということで、それぞれに応じて効率的な形の処理の仕方をやっていくべきだというふうに考えております。

それから、オーバーフローの話は、まずは、どういうメカニズムでオーバーフローが発生するのか、それに対してどういう対応をする必要があるのか、それが起こらないようにするにはどうすればいいのか、ということだろうと思います。

市場というものの状況を一切考えないで、ただただマテリアルリサイクルをすべきもの、という単純な決めで、一方的に供給されるだけのメカニズムを作ると、どうしても処理に結びつかなくて、まさにオーバーフローして物が溢れてしまうというようなことになってくるわけですので、そこは一方で、どういう処理のされ方、どういう需要のされ方があるのか、それが量的にどの程度のものなのかということにも、これは今の仕組みの中で明確に把握することはできないわけですが、そういうものについての処理の見通しみたいなものも、ひとつ計画として作っていったらどうだろうかということを、この中のどこかで書いてみたいと思います。

いずれにしても、おっしゃっている点は非常に重要な点だと思いますが、全体としてこれから、いろいろな法律に基づいて仕組みが回っていくわけでありまして、そこで必要な計画性みたいなものも入れなければいけない部分が出てくるでしょうし、また、バージン材とリサイクル材の間のコスト差というのが、もし適正な社会的なコスト、環境のコストが反映されていないという部分からくるものであれば、何らかの補正の措置で、ちゃんと競争ができて、リサイクル材が市場で受容されるように仕組みを作っていかなければいけないでしょう。また、地域的な物の回りというのが、今までは動脈を中心にして作られていたものが、今度、静脈もあわせたときに、地域的な廃棄物の循環、あるいは廃棄物から再生物への処理、それを含めた循環ということを考えたときに、恐らく物流の仕組みが、あるいは物流基盤処理施設の配置ということも含めてずっと変わってこなければいけないということでしょうから、そういうことは実際的な地域の配置ということも考えて、これから広域的に考えて対処していく必要がある、という考え方を出しております。実際にも、いろいろな広域的な取組みは進んできているようにも思います。

もし具体的に修正すべき点等があれば、またコメントをいただければ幸いでございます。

〔 E委員 〕 今おっしゃることは、その仕組みがうまくいかないのは、情報を与えればうまくいくか、情報を与えることだ、そういうことである。

私は、そう思ってなくて、今やっている法体系も基本法も、みんなその仕組み、システムを設計しきれていない。それは確かに難しいから、設計しきれてないのはしょうがないとしたら、それをどこかの段階で設計しなければいけない、今すぐではないかもしれない、しきれていない、ということをクリアにしておく必要があるのではないか。

それを、オーバーフローが出たら大変だ、情報を与えればうまくいきます、公的関与はうまくいきます、とやること自体がどうもミスリードしないかということを申し上げたい。

〔 事務局 〕  いろいろなことが起こるだろう、ということです。それが起こったら、それに対してきちんとその時々に迅速に対応していく。

〔 部会長 〕 今言われたようなことを、書き込んでおいた方がいいかもしれません。

〔 A委員 〕 今のご指摘とちょっと関連すると思いますが、政府の役割があまりにもまだ曖昧としていると思います。1つは、アメリカの経験をそのまま日本に生かすということですが、アメリカは非常にユーザーが自由な世界でありまして、そこでIT革命と結びついて非常に大きな効果があった。日本の場合は、政府がぎりぎり規制しておりまして、せっかくインターネットとかITを使おうと思っても、それができないような、事業者側の規制がすごくあるわけです。

例えば、対面販売の原則というのがあらゆる行政にありまして、例えば、私が知っているだけでも、酒、医療、建築確認、不動産売買とか、そういうのが山のようにあって、それを改善しなければ、せっかくのITビジネスが育っても使えないわけです。

そういう、どういう規制がアメリカのような成果を生むために邪魔になっているか、そういう実態の調査、そういうのを一覧表ぐらいにしていただくのが重要で、これは規制改革を伴わなければ、なかなかITだけでは対応できないのではないかということです。それが第1点。

第2点に、変化の激しいスピードの時代にこたえてグローバルなIT革命の中心に位置づけるということですが、そのためには今の政策形成のIT革命に問題があるわけで、雇用でも、医療でも、社会保障でも、何でも利害調整を通じてほんのわずかしか進まない。この政策形成のIT革命をほっといては、とてもスピード時代に乗れないわけで、そういう政策形成のIT革命について触れることが重要だと思います。

第3点に、放送改革でありますが、今の放送改革というのは、ITのこと、介護、高齢化の問題、あらゆる面に係わることで、官庁の事前規制を事後規制にするためには、効率的なホームサービスで、そういう被害者救済の道がなければ規制緩和できないわけです。その認識があまりにも少ないのではないか。通産省の研究会とか通商白書で、この点は大きく取り上げているわけで、この放送改革という重要な点が本当に数行しか触れられていないことが極めて残念であって、これは総論の中にぜひ大きく取り上げていただきたいと思います。

以上でございます。

〔 F委員 〕 印象的なことになるのですが、1番目の「IT革命を起爆剤」、2番目の「静脈産業」、3番目の「安心でき活力ある高齢社会」、これは非常に結構なのですけれども、「活力ある高齢社会構築」の中に、年金、医療、介護を総合的にとらえて検討する必要がある、と言っているのにかかわらず、ぽっと介護保険だけがあるということにつきまして、脈略がややないのではないか。ほかの年金とか医療については、別途考える。その辺は、この3つを総合的に考えるといいながら、介護保険だけを取り上げたということについて、やや脈略がない。介護は非常に重要と思いますけれども、ややそんな感じがいたします。

もう一つは、循環型経済社会、「市場のグリーン化」とございます。循環型社会は公共部門と企業部門と消費者部門とございます。その場合、公共部門は特に廃棄物処理などは、むしろ国がやってしまうとかいうことがなければ、廃棄物処理センターはできないのではないか。現在の財団法人ではちょっとうまくいかないのではないか、という気がいたしますから、公部門がいろいろ関与することが、ここに書いてございますけれども、重要です。

一番重要なのは、「グリーン化」ということが書いてございますけれども、一般消費者がいかにこういったことに目覚めていくか。一番大事なのは、市民の教育、消費者がいかに目覚めていくか、それを教育のキャンペーンを張ることが、迂遠のようではございますけれども、循環型社会をうまるやるに一番大事ではないか。こういったことも、市民教育の拡充について、もうちょっと大きく取り上げていいのではないかという気がいたします。

〔 G委員 〕 循環型経済社会について最近の取組み状況がありますが、政府の取組みがあって、その次に産業界となっておりますが、実は、地方自治体の役割というのが、私は非常に大きいのではないかと思います。

〔 部会長 〕 事務局で何かありますか。

〔 事務局 〕 F委員からいただきました、安心のところで「総合的」といいながら介護が特出して書いてあるというお話ですが、いくつか理由があるわけですけれども、介護はまさに今スタートして、若干まだ混乱状況にあって、これを本当にきちんとしたものに育てて、みんなが安心して使えるものにするという、今その時期だということ。もう一つは、介護市場をきちっとすることで、高齢者関連、介護だけでなくて、それに関連してかなり大きな市場が出てくるだろう。その市場が出てくるということは、これからの経済発展、あるいは雇用の確保ということを考えた場合に1つの大きな分野になると思いますので、ほかと違って、今スタートして、これから早急に整備体制を整えていかなければいけないこと。それをすれば、かなり大きな需要面からの効果も見込まれるという、その2つがあって、ここに特記をしたということでございます。

〔 部会長 〕 ありがとうございました。まだいろいろご質問、ご意見等あろうかと思いますが、時間の関係もございますので、本日の審議はここまでとしまして、またご意見は文書その他を通じまして事務局の方にご提出いただきたいと思いますし、また、次回以降の部会で引き続きご審議をいただきたいと思います。

最後に、次回以降の日程等について事務局から説明をお願いいたします。

〔 事務局 〕 今後の日程ですけれども、来週の24日に第6回、25日に第7回、連日で恐縮でありますが、部会を開催させていただきます。それぞれ、事務局である総合計画局の研究会の報告、それから今日ご審議いただきました1部、そして2部、部会の報告書案についてのご審議をいただきたいと考えております。最終的な取りまとめでございますが、6月20日の第8回部会で行っていただければと考えております。

〔 部会長 〕 それでは、本日の審議はここまでとさせていただきます。来週も2回ということでありますので、よろしくお願いをしたいと思います。長時間のご審議どうもありがとうございました。

── 以上 ──