経済審議会政策推進部会政策小委員会(第1回)
日時: 平成 12年 4月 18日
場所: 経済企画庁官房特別会議室(729)
経済企画庁
経済審議会政策推進部会政策小委員会(第1回)議事次第
平成12年4月18日(火)18:00~20:00
経済企画庁官房特別会議室(729号室)
- 開会
- 議事の公開について
- 検討テーマ、スケジュールについて
- 介護ビジネスの推進について
- 閉会
(配布資料)
- 資料1.経済審議会政策推進部会政策小委員会委員名簿
- 資料2.経済審議会政策推進部会政策小委員会の公開について(案)
- 資料3.経済審議会政策推進部会政策小委員会の検討テーマ、スケジュールについて
- 資料4.介護ビジネスの推進に係る論点メモ
(出席者)
(委員)
水口 弘一委員長、香西 委員長代理、木村 陽子委員、清家 篤委員
(経済企画庁)
堺屋経済企画庁長官、中名生事務次官、牛嶋総合計画局長、永谷総合計画局審議官、塚田総合計画局審議官、藤塚計画課長、佐々木計画官 他
(有識者)
岸田ニッセイ基礎研究所社会研究部門主任研究員、
西沢さくら総合研究所環境・高齢社会研究センター主任研究員
経済審議会政策推進部会政策小委員会委員名簿
植田 和弘 京都大学大学院経済学研究科教授
木村 陽子 奈良女子大学生活環境学部教授
委員長代理 香西 秦 (社)日本経済研究センター会長
清家 篤 慶應義塾大学商学部教授
委員長 水口 弘一 (株)野村総合研究所顧問
村井 純 慶應義塾大学環境情報学部教授
(50音順、敬称略)
〔 委員長 〕 ただいまから第1回の政策小委員会を開催させていただきます。非常に忙しい日程の中を無理やりに小委員会を作るということになりまして、何しろ6月中には政策推進部会の方のレポートをまとめなければなりませんので、そのために政策小委員会で精力的に問題点を詰めていきたいと考えまして、小委員会を設置ということになりました。
委員の皆様におかれましてはご多忙のところをご出席いただきましてありがとうございます。香西委員長代理と清家委員は、少々遅れてご出席の予定でございます。
また、大臣も、いずれ出席されると思います。
この委員会は、今、申し上げましたように、経済審議会の政策推進部会の限られた審議スケジュールの中で、実効性のある政策提言のとりまとめに資するという観点から、「経済社会のあるべき姿と経済新生の政策方針」の実現に向けて当面の重要な政策課題について調査審議を行なうために設置したものであります。
本日は、お手元にお配りしました議事次第のとおり、まず、当委員会の議事の公開方法を決めまして、続いて検討テーマと今後のスケジュールについて事務局から説明をいただいた後に、テーマの1つであります介護ビジネスについてご審議いただきたいと考えております。
委員会の皆様につきましては、お手元にお配りしております委員名簿のとおりですけれども、初回ですので、事務局から委員の皆様をご紹介させていただきます。
また、当委員会では、委員の皆様以外に検討テーマに知見のある有識者の方々にもご参加をいただいておりますので、本日も、介護ビジネスに詳しい有識者の方においでいただいておりますので併せてご紹介申し上げたいと思います。
それでは、事務局、よろしくお願いいたします。
〔 事務局 〕 それではご紹介させていただきます。
木村委員でございます。
香西委員長代理、清家委員は若干遅れていらっしゃるということでございます。
植田委員、村井委員につきましては、本日ご都合によりご欠席でございます。
また、本日は、介護ビジネスにつきまして有識者の方にもお越しいただいておりますのでご紹介させていただきます。
ニッセイ基礎研究所社会研究部門主任研究員の岸田様でございます。
さくら総合研究所環境・高齢者社会研究センター主任研究員の西沢様でございます。
〔 委員長 〕 ありがとうございました。
それでは、本日の議題に入らせていただきます。
まず、当委員会の議事の公開方法についてお諮りしたいと思います。事務局から説明をお願いいたします。
〔 事務局 〕 資料2経済審議会政策推進部会政策小委員会の公開について(案)ということでご説明申し上げます。読み上げさせていただきます。
経済審議会政策推進部会政策小委員会の公開については、以下のとおりとする。
1.会議の公開について
会議について非公開とする。会議の開催日程は事前に公開する。
2.議事要旨、議事録の公開について
議事要旨を原則として会議終了後2日以内に作成し、公開する。また、議事録を原則として会議終了後1ケ月以内に作成し、公開する。ただし、議事要旨、議事録ともに発言者名の公開は行わないものとする。
3.配布資料の公開について
配布資料は、原則として議事録と併せて公開する。
以上でございます。
〔 委員長 〕 ただいまご説明のありました当委員会の議事の公開方法について、ご意見等ございますでしょうか。
もし、ご異議がなければ、当委員会の議事の公開につきましては、本日の会議の冒頭にさかのぼってそのようにさせていただきたいと思います。
それでは、次に検討テーマ、スケジュール等について事務局から説明をお願いいたします。
〔 事務局 〕 資料3経済審議会政策推進部会政策小委員会の検討テーマ、スケジュールについてご説明申し上げます。
まず1.政策小委員会設置の趣旨でございます。
冒頭、委員長からお話がございましたように、政策推進部会の限られた審議スケジュールの中で「実効性のある政策提言のとりまとめに資する」という観点から、「経済社会のあるべき姿と経済新生の政策方針(あるべき姿)」についてご審議いただく。そのために3月17日の第2回の政策推進部会で設置が決定されたものでございます。
2.政策小委員会の検討テーマでございます。
これからの我が国経済発展の原動力としてのIT革命始動、厳しい環境制約下で持続的発展を可能とする循環型経済社会構築への歩み、高齢化社会において人々の安心を支える介護保険制度のスタート、そういう3つの動きは、21世紀初頭の日本経済に大きなビジネスチャンスをもたらすものであり、需給両面において新しい日本経済発展の中核的存在となるものである。時機を逸することなく、こういった動きを本格化、定着させるための適切な政策を実行することにより、最近の景気回復の動きを「あるべき姿」が目指す経済新生の新しい発展軌道へとつなげていくことができると考えられる。また、こうした動きを本格化させるためにも、来るべき少子高齢・人口減少社会に対応するためにも、人的資源活用が重要である。
こうした観点から、「あるべき姿」の実現に向け、当面(3年程度の間に)戦略的に取り組むべき政策課題として、以下のテーマを取り上げて検討を行う。
4つ挙げておりまして、
- IT革命の戦略的推進
- 循環形成ビジネスの推進
- 介護ビジネスの推進
- 少子高齢・人口減少社会における人的資源の活用方策
でございます。
2ページにまいりまして、3.政策小委員会のスケジュールでございます。
本日、第1回は4月18日は介護ビジネスについてご検討をお願いいたします。
第2回の4月21日(金)は、循環形成ビジネス。
第3回の4月26日(水)は、IT革命の推進。
第4回の4月28日(金)は、人的資源活用について。
第5回の5月9日(火)は、全体整理、とりまとめということでございます。
1回目から4回目につきましては、本日と同様、必要に応じまして委員外の有識者の方にもご参加いただく予定でございます。
それから、この小委員会での検討の成果につきましては、政策推進部会の報告書(案)に盛り込みまして、政策推進部会でのご審議をいただくということでございます。
以上でございます。
〔 委員長 〕 ありがとうございました。
ただいま、大臣がお見えになりましたので、一言ご挨拶をいただきたいと思います。
〔 大臣 〕 委員の先生方及び有識者の方には、急にこういう話になって、またまた面倒なことを大変短期間にお願いいたしまして、おそれいります。
今、日本は、ようやく景気が回復してきた。まだ十分とは言えない厳しい状態ではありますが、景気の回復が見られるということになりました。
景気回復までは皆さんが一致して「景気回復が大事だ」という話だったのですが、これが回復してまいりますと、「一体、この次の世界はどうなるのだ、これからの日本はどういう方向に行くのだ」ということで、なかなか次が見えないという話があります。
それどころか、現在の日本人は、本当に人生としての幸せというか目標を持っているのだろうか。昔は「末は博士か大臣か」と言われたのですが、博士も大したことありませんが大臣も大したことありません。そういうことを希望している人はごくわずかだろうと思います。
高度成長の時代になりますとより豊かになる。自動車を持って、電気製品をそろえて、自宅を通勤の便利のいいところに持って、子どもを大学を卒業させて、大企業の中でそこそこの地位につけばゴルフや宴会の誘いがあって、退職金がもらえて、まあまあ幸せという、平凡な幸せのジャパニーズドリームがありました。
今の時代、もうそう豊かにもなりそうにもない。これから環境や介護がよくなったとしても、テレビで介護の現場を見て、介護している方ではなくて介護をされている方の身になって「これぞ人生の幸せ」とみる人がいるかというと、これまたわずかだろうと思うのです。それでは、どうなるのが日本人にとって人生の幸せなのかということを考えると非常に戸惑いを感じます。ここで日本人の次の目標というか、次の期待というか、いわゆる「夢」というものはどこにあるのだろうか。こんなことを考える次第であります。
そこで重要なポイントとして、ここに挙げました5つの問題、第1は情報革命、ITでございますが、これがどんどん発達したらどれほど楽しくてどれほど便利な世の中になるのだろうか。便利になるということはわかりますが、本当に楽しい世の中になるのだろうかというのが1つの問題点であります。
2番目は環境の問題ですが、「循環型の社会を作る」というのは簡単なことではございません。リサイクルをするのにはまたエネルギー、資源がいるわけでございまして、現在のリサイクルで、リサイクルする方が資源がかかる方が多い。またこれには捨てるためのコストというのが別途あります。そういうことを考えると、結局、資源を倹約して廃棄物を少なくするということは、資源を労働力に置き換えることに他ならない。そうすると、おそらく現在の廃棄物処理の10倍ぐらい労働生産性を上げないと引き合わないだろうと思われます。こういうことをどういうふうに考えるか。
3番目の問題は高齢化でございまして、「高齢化社会をどう生きるか」、内容的にはここにございますように2つあって、1つは高齢者の働きをどうやって活用できるか。70歳まで働くことを選べる社会にしたい、と私は考えておりますけれども、そのためにも産業構造的にどういうところに高齢者が適しているのか。あるいは企業組織、職場組織としてどういうものが高齢者に向いているのか。あるいは勤務形態は、週休3日制がいいのか、1日6時間制がいいのか、あるいは2人で一組みになるのかいいのか、そういうことも考えられると思いますが、高齢者が働くための条件、そのための人間工学から器具の開発まであると思います。
もう一つは外国人の問題でして、これをどうするかという話があります。外国人を入れろという意見もだいぶありますが、一方では、どこかの知事さんのように非常に恐れている人もいるという次第でございます。
4番目の問題が介護ビジネスで、今日お願いしている話でございます。これは大変大勢の人手がいるし、雇用力をつけると言われておりますけれども、一方においては非常にコストのかかる問題で、この間、テレビである会社の話が出ておりましたけれども、1日に何人も回るためには50分で切り上げなければいけない。したがって、雑談している暇は全くないというのです。ところが介護を受ける人の方はちょっと話をしてもらいたいということで、「話をしたら罰則です」なんていう話があって、むだ話ばかりしてちゃんと仕事をしていないということになるというような話もありまして、需要と供給が合ってないのか、欲求とサービスが合ってないのか、そういう矛盾を感じないわけではないのですけれども、なかなか難しい問題です。
一方では、家族の重要性を説く人が今もけっこう大勢おられて、どういう関係を作っていったらいいのか、最近は何でも社会がもつべきだというので、子育ても社会がもつべきだという話になって、だんだん人間性が欠けてくるという話もあります。どういう形にすれば本当に一番いいのか、そして、それがどのぐらいの経済効果を生み出すのか、あるいは経済負担になるのか、これも重要な問題だと思います。
介護の生産性はどうやったら上がるのかというのも問題でしょうけれども、どういう人たち、年齢層、あるいは国籍、あるいは教育程度、技能、そういうのをどういう人々の間にもたらされるべきなのか、これも大きな問題だと思っております。
そういうことが合わさってでき上がった社会というのは一体いかなるものかというのも、これがまた大変重要なところでございまして、1つ1つの問題ではなく、全体像として、情報革命が行われて、リサイクルと高齢者労働があって、そして、その上に介護、医療の問題が確立した社会というのは一体どういう社会なのか。どうも全体像が見えない。どういうサイクルでお金が回り、どういうサイクルで人生が送られているのか、これがどうも見えないという感じがいたします。
そんなところを皆様方に議論していただいて、1つの指針を与えていただければと思っております。
大変難しいことをお尋ねして恐縮でございますけれども、しかも時間が短時間でございますので、委員長以下大変ご迷惑かと思いますけれども、ひとつよろしくお願いしたいと思います。ありがとうございました。
〔 委員長 〕 大臣、ありがとうございました。
そういうようなことで少し精力的にやっていきたいと思っております。
特に、先週金曜日のアメリカの株式暴落、これを「ブラック・フライデー」と言うかどうかはこれからの問題だろうとは思いますけれども、来るべきものが来たという感じはあります。それだけに6月に向かっての当委員会でのこの4つの問題点の検討というのは非常に意味があると考えておりますので、みんなで相携えて精力的に検討してまいりたいと考えております。
それでは、先ほどご説明いただき、また、今、大臣からもご説明がございました検討テーマのうち、介護ビジネスについてご審議をいただきたいと思いますので、まず、事務局から説明をお願いいたします。
〔 事務局 〕 資料に基づきまして概略をご説明申し上げたいと思います。
お手元の資料のご確認をお願いしたいと思います。
資料4介護ビジネスの推進に係る論点メモをお配りしております。この資料4につきましては事前に各委員の皆様方にはご覧いただいている状況でございますので、簡単に説明いたしたいと思います。
まず1.基本認識ということでございますが、この4月に施行されました介護保険制度、これは法律の中におきまして、「保険給付の内容・水準は可能な限り、その居宅において、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう配慮されなければならない」ということで、在宅介護に重点を置くということになっております。
従いまして、現在、立ち上がった状況でございますが、「これを踏まえた仕組みを整えていくということが、これから先の高齢社会における安心を支えるものとなっていく」という書きぶりを考えております。この制度におきまして、いままでは措置制度ということで行政がすべてを決めていたというものでございますが、新たなこの制度の下では事業者がサービスを供給し、利用者がこれを選んでいくという一種の市場の考え方というものが入ってきているわけでございます。
しかしながら、制度がスタートします段階におきましては、需要に対して供給がまだ不足している状況にある。介護保険が目指す在宅介護に重点を置いた体制の整備が最も必要なことになっている。
次に2.介護サービス市場の展望の(1) 需要拡大の見通しということについては、昨年末に決められましたゴールドプラン21が平成16年度におきます公的介護サービスの需要見込量、あるいは提供量というものを掲げているわけでございます。
ここでは、新ゴールドプランでは基盤整備の目標量というところから若干質が変わってきているわけでございますが、16年度の需要見込量が掲げられている。公的サービスだけでなく、それ以外の関連のサービスというものも、ゴールドプラン21がこの5年間進んでいくに伴って、それぞれ需要が増えていくだろうということが1つ。
もう一つは、ゴールドプラン21というのは、高齢化の状況との関係からは中間段階で終わっているものでございますので、平成17年度以降につきましても、今の介護保険制度の定着でありますとか、あるいはさらに後期の高齢者が増えていくということで需要はさらに増えていくだろうということでございます。
特に公的保険の給付サービス以外の関連サービスといったものも、既にいろいろと新聞紙上取り上げられておりますけれども、この需要も波及効果として大きく出てくるだろう。医療保険と違いまして介護保険の場合には、給付上限を超えた場合にも、自己負担ではございますが、サービスを上乗せて受けることができる仕組みがございます。こういったものもだんだんなじんでまいりますと、民間保険の特約などによって増加する可能性がある。そういう面で市場の拡大という見通しを定性的に述べるつもりでおります。
(2) サービス提供者の増大ということについては措置制度の下では、在宅介護の部分は市区町村と社会福祉法人に委ねられている状況で、民間事業者は措置費の対象ではございませんので、参入の余地はほとんどなかったわけでございます。
これに対して介護保険制度においては、在宅介護分野では参入することができるようになって、利用者がサービス提供の契約を取り交わすことでサービスを受ける。そういう面での一種の市場が生まれてきているわけでございます。こういった背景の中で、生命保険、家電メーカー、住宅メーカーなど諸々の関連業界からかなり参入が始まっているという状況でございまして、これからさらに隙間の部分として新しいサービス商品というものも生まれてくる可能性が多分にあるわけでございます。
また、一般的な意味での非営利団体でありますNPO、これは地域における活動が中心になろうかと思いますが、公的な介護保険サービスの担い手にもなり得るとともに、それぞれ個性あふれるような関連サービスというものも工夫されてくるのではないかという期待があるということでございます。
(3) IT(情報技術)の応用への期待ということについては、福祉関係においては、従来、比較的効率化に向けた「情報化」といったものがなじみにくいということで、遅れている分野になろうかと思います。しかしながら、最近ではサービス業者の情報を共有化しようという動きや、あるいはサービスの情報提供といったものも取り上げられてきております。
それだけではなく、生産性の向上に向けた取り組みも、一部には訪問ヘルパーの管理など出てきているわけでございます。その他にも、関連分野になりますが、例えば健康保険証のカード化を図って検診結果をポータブル化する試み、これはかなりの地域で行われております。それから、PHSを使った徘徊老人の所在の感知システムなど、そういった領域でITの応用が進められつつある。
そういう面では、今後さらにIT技術が進んでまいりますと、遠隔の場所にあって居宅、あるいは外に出ておられる高齢者の健康状況を把握するといった緊急対応関連のシステムが実用化されるということも期待できる。これも生活の安心を与えるものになるのではないかということでの期待を書くつもりでおります。
さらに3.介護サービス市場整備の政策課題では、介護サービスの特性に留意しながら、効率とサービスの質のバランスというものを考慮しつつ、市場規模の拡大に対応していく上で着実に体制の整備を進める必要があるということで3つの課題を掲げております。
2ページにまいりまして、(1) サービス提供体制の整備ということで、労働集約的な介護関係の場合には、マンパワーの確保ということが一番大きなポイントになろうかと思います。ここでは、マンパワーが提供するサービスの質の向上という観点から養成課程の充実。もう一つは、人が集まる、担い手が集まるという面で、非常に女性の多い仕事場でございますので、今後、ホームヘルプサービスの24時間化などに伴いまして夜間勤務の可能性もあるという厳しい職場条件、先ほど大臣からも、多くの場所を回るという話もございましたが、かなり厳しい職場条件も想定されるわけでございます。そういった中で人材を確保していくための処遇の改善、あるいは職場環境の整備といった面。育児との両立という観点からも、保育などの就労支援のための社会的措置、こういったものの必要性を考えております。
(2) 新規参入促進のための事業者への支援ということで、2点目の政策課題としまして、民間事業者がまだ十分に育っていない領域ということで、新規参入促進のための事業者への支援ということを挙げております。
今、現在、サービスの需要に対しまして供給が足りないということでございますので、担い手を増やしていくという意味合いからも、事業者に対する種々の情報提供、資金的な支援といった措置の必要性も書いております。
最後に(3) 利用者本位の仕組みの整備ということで、介護保険制度におきましては、事業者を利用者が選んで契約をしていくという形になってまいります。また、事業への参入障壁というものも一部取り払われておりますので、事業者も多様化することが確実でございます。そうなりますと介護サービスの質、あるいは逆選択を受けるような問題なども起きることが想定されるわけでございまして、そのために今種々議論はされておりますが、介護サービスを評価する仕組み、公的機関によるサービス選択のための情報提供、トラブルがあった場合の苦情処理の仕組み、こういったものを早急に確立することが、利用者が安心して各種のサービスを利用できる条件整備になっていくのではないか。これが制度の立ち上がりの段階において必要ではないかということで掲げております。
手短で恐縮ですが以上でございます。
〔 委員長 〕 ありがとうございました。
それでは、委員の皆さん、岸田さん、西沢さん、ただいま説明のありました介護ビジネスの推進につきまして、ご意見、ご質問等ありましたら、どうぞ積極的にお願いいたします。
〔 委員等 〕 事前に資料4を頂戴してまして、私なりに考えてまいりましたので、申し上げてみたいと思います。
3.介護サービス市場整備の政策課題というところで、大きく4つほど考えてまいりました。1つは、前段としまして、推進ということについてですが、残り3つは(1)、(2)、(3) について申し上げたいと思います。
前段の推進ということですが、厚生省のゴールドプラン21というものが策定されまして、現在、需要に対して供給が不足しておりますので、供給体制の整備が数値として指定されておりますけれども、私、数値目標の必達ということについて若干疑問を持っております。と申しますのは、現在、介護サービス市場にはどんどん参入して、どんどん退出してくれということを前提としていると思うのですが、介護につきましては参入と退出に伴う社会的なコストは非常に大きい。他のモノやサービスに比べて事業者が参入して退出していくときのコストが非常に大きいと考えております。
例えば、寝たきりの方でしたら、1時間あるいは数時間ヘルパーの方が、ヘルパー会社が倒産して来なくなったら非常に困るわけです。これが他のサービスと違う特徴だと思います。介護サービスの供給体制を整えていくといったことには数量の必達ということも重要だとは思いますけれども、それと同時に社会的なコストが最小限に抑えられるといったことも考慮する必要があるのではないかと思っております。そういうことで、数量の必達と同時に、例えばトラブルが少なかったといったようなことも目標に掲げて、それを十分評価する体制にしておくべきではないかと思っております。
介護保険が始まりまして、かなりトラブル等も発生しているようですけれども、社会的コストを最小限に抑える。必ずしも数量目標が達成ができなかったにしても、「トラブルが少なかったよ」と勇気ある目標未達ができるような状況にしておくことが、供給体制の整備ということで重要ではないかと思っております。
あと3つ申し上げたいのですが、3.介護サービスの市場整備の課題の(1)、(2) 、(3) に沿って申し上げたいと思います。
(1) サービス提供体制の整備ということについてですが、介護要員については、いままでは措置制度ということで、かなりヘルパーの方のボランティア的な精神に頼っていた部分があると思います。4月から介護保険制度が始まりまして、本当は産業として成り立っていかないといけないのですけれども、それでもなおヘルパーのボランティア精神に頼っている部分があるのではないかと思っております。産業として確立するのであれば、ボランティア精神がなくても給与だけで十分皆さんがいいサービスが提供できるような体制を築かないといけないと思っております。
(2) 新規参入促進のための事業者への支援ということですが、こちらに書いてあります①、②も非常に重要だと思いますが、何より重要なのが参入のためのインセンティブといいますか、利益ではないかと思っております。いままで福祉でありましたけれども、これから産業になるわけでして、介護で儲けていいのだということをはっきり認識すべきではないかと思っております。いまでも「儲ける」ということに対して若干後ろめたいような風潮があるのではないかと思いますが、いいサービスを提供すれば儲けてもいいのだということをはっきりさせておくことが重要だと思います。
そのための方策としまして私なりに3つほど考えたのですが、1つが安定的な財源の確保ということだと思います。社会保障については医療も年金も、介護も含めて財源についてなかなか決着がついてない。医療は先送りになりましたし、年金も給付の抑制、保険料の引上げという基本方針はできましたけれども、まだまだ課題を残している。介護保険がスタートして、健保が老人保険拠出金等の拠出でかなり苦しんでいるわけですが、保険料が医療保険料に上乗せになってしまったということで、介護報酬単価が3年後に改定になる予定ではありますけれども、果たして、そのときに財政的に十分な単価を設定するに足るような状況になっているのかといいますと、必ずしもそうではないのではないかと思っています。今回、参入促進ということで仮単価から始まりまして正式単価まで総じて事業者には好意的には受け止められていますが、果たしてそれが3年後にも同じ状況にあるのかというと、やや悲観的に思っておりまして、財源についてまず根本的に決着を図ることが重要ではないかと思います。
事業者への支援の第2番目の方策としまして、これはよく言われていることではありますが、介護というのは大きく在宅と施設の2つに分かれておりまして、「介護市場は大きい」と言われておりますが、実際のところは小さい規模の在宅にしか事業者の参入が認められていないというところがありますので、結論としましては、施設についての参入も認めるべきではないか。それが例え儲からないとしても、事業者としては儲けのバリエーションが増える。例えば要介護者の家族の状況が変化して、それまで在宅だったものがどうしても施設に入らなければいけないといった状況になった場合、1つの事業者で在宅と施設の両方をやっていれば、お客さんの囲い込みができるわけですが、現状ですと、お客さんの状況が変わると逃げてしまうという状況もありますし、介護報酬単価がサービス供給の少ないものには手厚くもらえることになると、自分が参入すればするほどその分野の単価は引下げられてしまう。だったら、もっと違ったところもやっておけばよかったではないかということも考えられます。ですから、現状、施設というのは儲からないかもしれませんが、道を開いておくということが重要ではないかと思っております。
3番目は、介護報酬単価の3年ごとの見直しということを見直すべきではないかと思っております。と申しますのは、介護事業者の費用が主に人件費だと思いますが、年々ベースアップも変わるわけですが、介護報酬単価の3年ごとの見直しでは費用と収入がなかなかマッチングできないということもありますので、ここは柔軟に見直した方がいいのではないかと思っております。
(3) 利用本位の仕組みの整備ですが、3点ほど申し上げたいと思います。こちらに書いてあります①、②、③も非常に重要だとは思いますが、私個人が考えますに、利用者本位ということではまず第1に価格決定メカニズムを利用者本位にすることではないかと思っております。介護補修単価の公定価格でございまして、審議会に各業界の代表者が出て、その中で決定されていきます。私の個人的な受け止め方かもしれませんが業界同士の利益調整の場になりはしないか。予算が限られていますので「うちの団体にこれだけくれよ」という場になってほしくないと思っております。今、訪問介護の身体介護ですと4,020円というのが基準の価格ですけれども、この4,020円というのが本当に4,020円払うに足るサービスなのかどうかということが価格決定の第1の決定要因だと思いますので、本当に払うに足る価格であるかどうかということを吸い上げる価格決定メカニズムになってほしいと思っております。それにはアンケート等をとるしか、現状、私の頭では方法が浮かびませんが、審議会で業界だけで決めるのではなく、消費者の払うに足る価格になっているかどうかを吸い上げるということが極めて重要だと思います。医療を見ましても、医療が我々が保険給付も含めて「払った価格に見合ったサービスを受けているか」と言われたときに、多分多くの方はそう感じていないケースが多々あると思いますので、消費者のニーズを汲み上げるということが1つ重要だと思います。
2番目は、事業者の決算データを開示させる。医療で非常に問題になっているのは儲かっている、儲かっていないという水かけ論ですけれども、それというのも医療については経営実態を調査するときには、ある1か月だけの収支状況をアンケートして調査する。それでは実態がわかるわけもありませんので、保険給付から収益を得る以上、決算データを匿名にしろ開示するということが重要ではないかと思います。利益が出ていても、先ほど申し上げしまたように、対価に見合うサービスを提供しているのであれば、儲けていてもかまわないということが言えると思います。
3番目は、質の評価です。こちらに挙げられている苦情処理等の対応も重要だと思いますが、世間一般でも言われている対応の仕方がやや事後処理的な方向に向いていると思います。事後処理というのは、先ほど申し上げしまたように何かトラブルが起こると、社会的コストが非常に大きいものですから、それを未然に防ぐような質の担保も重要ではないかと思います。チェックする機関としまして、ボランティア的なものではなくて、財源を充てて公的な機関を設立すべきだと思っておりまして、銀行にも金融監督庁というものがありますけれども、それに準ずるようなものがあってもいいのではないかと思っております。確かにボランティアの方がコストは安いと思いますけれども、公平性などを考えた場合に費用を充てて公的機関を作っても、社会的コストの大きさを考えれば十分釣り合ってくるのではなくかと思っておりますので、チェック機関については財源を充てて作ったらどうかと思っております。
長くなりましたが、以上、私が考えてきたことでございます。どうもありがとうございました。
〔 委員長 〕 ありがとうございました。続きまして、お願いします。
〔 委員等 〕 6点ほど申し上げたいと思います。
第1点は、あまりにも介護保険の中の在宅というものに限定してあるように思います。介護保険の在宅の中でも、特にマンパワーの問題に限定しますと、先ほど、大臣がおっしゃったような、日本人が次に夢を持てるようなビジネスとして介護の可能性を考えると言いますと、かなり限定的なものになってしまいます。むしろ介護保険ができたということは、この分野が虚弱老人から一人で寝返りもできないような方まで多くの人が要介護老人になるわけですから、生活介護というのはとにかく生活関連、まちづくり全体まで含みますから、むしろそういった介護保険関連の方での事業の立ち上げのほうに対してテコのような働きをなすのだという位置づけ、介護保険並びに介護保険関連市場が非常に大きいものだというぐらいの位置づけの方がいいのではないかと思っております。そして、施設の規制緩和も重要であるということは思います。
第2点目は、介護ビジネスということになりますと、今、要介護状態の人だけを指すのか、あるいは単身の世帯に対しての宅配事業も含まれますし、PPK、「ピンピン、コロリ」といいますか、最後の瞬間まで元気でいたい、そのための健康、アメリカなどでは例えば気功とかヨガとか、コミュニティーの中で集まってそういう活動をするということもあるのですが、そういった予防のことまで含めると、これはかなり大きなものになるのではないかという気がします。ですから、まちづくり、生活雑貨も着脱しやすい被服とか靴とか、手が悪くなっても持ちやすいお箸とかスプーンというのが、そういったところまで全部介護関連ビジネスには含まれてくると思いますので、そのぐらいの大きさにする方がいいと思います。例えば介護サービス市場ですと、介護しやすいベッドの開発とかそういったところまで出てくると思います。
第3点目は、IT技術の応用の期待も、人を診る、介護をするということだけにかなり関心が絞られているような気がしまして、要介護状態になった人が、それを使ってどのようにするのかといった方面にも目を向ける方がいいと思います。例えばテレビがITの端末になったとしますと、テレビを見ながら買い物の申込みもできるわけで、そういったことまで含める方がいいのではないかと思います。
第4点目は、この分野で、例えば在宅においても規制緩和がまだまだ必要なことはすごくありまして、これは介護保険ということではないのですけれども、例えばある自治体では、自分のところのホームヘルパーの講習を利用した人でないと採用しないということが実際に、現在の状況は調べておりませんが数年前はありました。民間がそういう講習会をしていても、そこで受けた人たちは雇われないということです。そういった方面の規制緩和も必要ではないかと思います。
第5点目は、先ほどテレビの話をされましたが、マニュアルどおりにしかしない介護に飽き飽きして、自分で事業を始めたいという人もいるわけです。ヘルパーとして働いていて、自分が目指す介護をしたいという方がおられて、40代の中年といわれる女性が、資本金がそんなになくても参入できる1つの、この分野はこれから可能性のある分野だと思われますけれども、ただ、そのときに、その人たちの話を聴くと、他の商売に比べてお金がそんなにかからないのだけれども、それでもどういうところで補助金がもらえるかという情報がほとんどないということと、彼女たちはべつに新しい家を建てるのではなくて古い家を借りて人の介護をしていたりするのですが、そういった古い家を借りるために、これは本当に些少なことですけれども、今、困っているのは地域の理解がなかなか得られないとか、どこに行けばそういう家が借りられるかという情報があまりないということです。
第6点目は、後でまた思いついたら話をしますけれども、最後の部分で、2ページの(3)利用者本位の仕組みの整備のところですが、先ほどのお話にもございましたが、私も、公的な監査制度というのは①、②、③に加えて④ぐらいの並びで、入れていただきたいと思っております。以上です。
〔 委員等 〕 資料4に基づきまして、少しお話をしたいと思います。
3.介護サービス市場整備の政策課題がポイントになると思うのですけれども、そこで介護ビジネスというのはどういうものかということで1)から3)まで挙げられておりますけれども、他にも幾つかあるのではないかと思います。
自己選択できるための環境整備をしていくということをうたっていくのがいいのではないか。単純に規制緩和だけをしていけばいい、これはあくまでも自己責任だということには問題があるだろう。そういう意味では情報の提供、その提供においても情報の非対称性ということもやはり解消していかなければいけない。そういう意味ではもう少し定着するまでに時間がかかるのかなと思います。
それから、品質の評価ということですが、これはなかなか難しい問題で何を評価するのか、好き嫌いもあるし、評価する場面もなかなか難しいということですが、やはり専門的な人たちが専門的にそのことに従事する、そういう組織を作るということになると思います。それがNPOであるのか、ちゃんとした法人であるのかというのは今後の検討の課題ですが、少なくとも当事者とは別の人々が積極的にそういうものに関与していくということが必要になるのではないかと思います。
あと、先ほどもお話がありましたように、あまりにも介護に限定され過ぎている。もう少し幅広くみてはどうかなと思います。例えば病気で不自由になったり、あるいは近視で眼鏡を外したら生活ができないというように、そういう状況がいっぱいございます。そういういろいろな生活の障害を埋めていくサービスを今後作っていく。また、能力障害、機能障害、社会的不利ということがあれば、それは介護やリハビリという話になりますし、ちょっと身体機能が落ちたなというときであれば、例えば家事支援のようなものもあります。あるいはもう少し全体で言えば、都市基盤整備の話ですとか、最近出てきていますユニバーサル・デザインのような商品開発というようなこともあると思います。
先ほど、大臣がおっしゃった就労の問題もございますし、幅広く生活障害をカバーしていくような新しいビジネス、それが福祉ビジネス、介護ビジネスというふうに位置づけていって、介護保険はその中の1つだというふうに位置づけてはどうかなと思いました。実際、介護保険自体は公定価格で動くわけですので、利益を上げようとすると効率を上げる以外にないのです。いいサービスを提供すれば値段を上げられるというわけではございませんので、そうなると20分のところを19分で片づけて次のところに走っていく。あるいは遠くにいる人はお断りするということになるわけです。老人マンションみたいなところがあればそこが一番効率がいいわけです。そういうところだけが取り合いになるというようなことになってはいけないだろう。そういう意味でもう少し幅広い介護ビジネス、福祉ビジネスをとらえていくというのが1つポイントになるのではないかと思います。
〔 委員長 〕 どうもありがとうございました。続きまして、発言をお願いします。
〔 委員等 〕 幾つか気がついたことをお話ししたいと思います。
1つは、介護労働力の確保については、先ほどおっしゃったように、あくまでも市場メカニズムを通じてということであれば、労働力を確保するためのプライスメカニズムがどのように働くか。端的に言えば、もし労働力が不足しているのであればきちっと賃金が上がる形で供給が確保できるかどうかということがポイントだと思います。
これで1つ参考になると思うのは、実は数年前、もう10年ぐらい前かもしれませんけれども、看護婦不足がちょっとした問題になったときに、私、小さなサーベイをしたことがありますが、そのときの結論は、看護婦不足ではないという結論だったわけです。それはなぜかと言うと、看護婦不足が非常に叫ばれた間の看護婦の賃金の上昇率を見ますと、もちろん上昇はしていますけれども一般的な賃金上昇率に比べて極端に上昇したということはないわけで、ほぼ同じ程度の賃金上昇率だったわけです。それが定義的に言えば看護婦不足ではなくて、雇い主、お医者さんとか病院の経営者が以前のように安い賃金では十分な量の看護婦が確保できなくなったという雇い主側のグリーヴァンス(悩み)といいますか、苦情を示していただけであって、本来、本当の意味での不足であれば、当然、看護婦の賃金が他の職種に比べて上昇する形で不足は解消されるはずだったわけですが、そういうようなことは起きなかったということです。それはなぜかと言うと、介護保険の場合と同じように、医療保険の場合には看護の点数とかそういうものが決まっている。あるいは看護婦の賃金は、看護の点数が決まっているようなことから派生していると思いますが、大体国立病院の看護婦の賃金表に準拠して看護婦の賃金が決まってきているというようなことがあって、賃金が非常にインフレキシブルである、硬直的である。それが要するに看護婦の供給の弾力的な変化を妨げていたわけで、介護のマンパワーについても全く同じことが言えるだろうと思われますから、ここのところは、いかに賃金というプライスメカニズムを通じて労働力が確保できるかどうかの条件を整えるかどうかがポイントになると思います。
2つ目はこれと関連するわけですが、もう既にいままでの方々が言われたように、実はここで書かれている内容というのは、ほとんど介護保険を前提にした介護サービス、介護ビジネスなわけですが、おそらく介護ビジネスというのは介護保険がコアになるでしょうけれども、介護保険をいわば呼び水にして、それ以上のもっとわがままな介護とか、あるいはもっとぜいたくな介護を受けたいという、当然派生がなければ、そのビジネスとしての発展性が少ないと思いますので、おそらく、もう少し今回出された論点整理以上に考えるべきなのは、介護保険というものを呼び水にして、それ以上のいわばより高度なといいますか、あるいはより高価なというか、介護ビジネスがどのように発展していくかという視点が必要だろうと思います。そこにおいては介護保険制度だとかというようなものの縛りを外れて、価格メカニズムがより働きやすくなってくるということだろうと思います。
3つめに、介護労働力の質をきちっと確保するためには、介護サービスに従事する人たちのプロフェッショナル・コードといいますか専門家としての高度な、あるいは職業倫理規定、あまり堅苦しく言わなくても介護に携わるプロフェッショナルとしてはこういうことはやってはいけない、あるいはこういうふうにしなければいけないというプロフェッショナル・コードのようにものを考えていく必要があると思います。通常はそういうようなものはプロフェッショナル・アソシエーションといいますか、専門家団体ができれば必ずしもプロフェッショナル・コードが、例えば医療従事者であれば医師あるいは看護婦の専門家集団がそういうプロフェッショナル・コードを作っていくわけですが、介護労働の場合どういうふうプロフェッショナル・アソシエーションがあり得るのかわかりませんけれども、やはり介護労働に従事する人たちについてのプロフェッショナル・コードのようなものを社会全体でも考えていく必要があると思います。
4つ目は、全く違う視点ですが、介護ビジネスが推進することの副次的な効果として非常に重要なのは、要するに介護ビジネスが発達することによって、介護という仕事がまさに介護のプロフェッショナル、介護についての生産性の高い人たちに委ねられることによって、従来、生産性の低い家族とか、要するに介護のプロではない人たちが介護に携わることによって失われていた人的資源、つまり、本来、家族というのはその人固有の仕事をしているわけで、あるいはその人たちが長年培った人的資源があるわけですが、とりわけ介護の場合は育児以上に40代の人とか50代の人とか、相当人的資源を蓄積した人たちがいきなり親の介護のために仕事を休まなければいけないとか、場合によっては仕事をやめなければいけないということで、失われる機会費用が非常に大きかったわけですが、介護非ビジネスが発達することによって、そういった長年培われた能力を、仕事を休んだり、あるいはやめたりすることによって失うことがなくなるわけですから、そういう意味では介護ビジネスの発達によって、コインの裏側としていままで介護ビジネスが発達していなかったことによって失われていた人的資源が社会にとって活用できるというメリットを、何らかの形で推計したりすることもできるのではないかと思います。
それは2つの面で、1つは失われた人的資源が回復されることによって回復する生産量の増大と、その人たちが介護に従事することによって失っていた所得が復活する、回復することによって新たな生産物、サービスによる需要がそこから喚起されるということ。これはどのようなモデルを作るかによってその波及効果は変わってくると思いますが、要するに介護ビジネスの推進による経済効果だけではなくて、介護ビジネスが推進されることによって副次的に生み出される波及効果、その辺の点についても場合によっては言及してもいいのではないかと思います。
〔 委員等 〕 介護ビジネスないしは介護保険の方から問題を見ているわけです。しかし、ここは一応計画のフォローアップですから、計画として何をこれに期待しているかという観点をもう一度スタートに置いて考えてみる必要があるのではないか。
1つは理念的な問題で、つまり、こういう介護ビジネスを興すことによってどういう社会を日本に作り出そうとしているのか、そのためにはさらに何が必要なのか、そういう意識というか観点がもう少しあった方が、ここで議論する、あるいは他のプロジェクト、政策委員会が議論する他のプロジェクトとの整合性といったものもとりやすいのではないか。ただ、それでは具体的にどういうふうにやるというのはなかなか難しいのですが、少なくとも、皆さんがおっしゃった広い立場からということと結局同じことかもしれませんが、これからの経済社会のあり方の中でこれはどういう意味があって、そのためにはまだ何が足りないかというような観点を少なくとも強めたらいかかでしょうか。これが第1点です。
第2点は、今、お話があったことと同じで、介護ビジネスだけではなくて、それが経済全体にどういう影響があるかということで、その1つはおっしゃるように労働力だと思うのです。つまり、家族がバラバラに介護しているのに対して、もし、規模の利益があるなら専門家がやったらずいぶん労働力の供給は増えることになるとも言えるわけです。その点、これはマクロ的なフレームワークとして当面の10年の間の日本の労働力需給をどう見ているのか。不足だと思っているのか、それともこういう介護ビジネスによって雇用を吸収してもらうことがありがたいと思って計画はこれをやろうとしているのかとか、そういう判断というか、そういうこともまずはっきりさせた方がよくて、その上で例えば労働力に対して具体的にはどのぐらいの影響があるとかないとか、プロフェッショナルを育成するとするとその教育課程から必要になりますから、いわば関連的な労働力需要というのはどのぐらいになるかとか、それに対して介護学校というのがあるかどうかわかりませんけれども、そういったようなことについてのいろいろな効果も計算すべきではないかと思います。同じことは、もう一つ一般的な影響という点では貯蓄に対する影響があるはずなのです。老後に備えての貯蓄というのがとにかく非常に大きなウエイトを占めているわけですから、それがこれによってどのぐらい貯蓄の必要がないということになるのか、ますます大きくなるということになるのか、そういった問題も議論しておく余地があるのではないか。以上が2つ目の話題です。つまり、全体的な経済に対するインパクトとその評価と、それに関連した異議づけというようなことができないだろうか。
3つ目は、介護保険によって市場が導入されたと言うのですけれども、確かに選択の余地が増えて価格が多少選択に影響するということはそのとおりだと思いますが、需給調整のメカニズムを全部価格が担うというところまではまずいっていないわけです。そうすると、将来、こういう介護保険というのをスタートさせてそれが適正に運用されていくための、一種の需給調整メカニズムというのはどういう形で設計してあるのかということが、やはりあってもしかるべき。今は当面とにかくスタートさせて、とにかくうまくやろうという、その意識は全くそのとおりで、現実にはそのとおりで早く何とか格好をつけようということでいいのですけれども、やや中長期的に言った場合、あるべき姿としてどういう需給調整でこのシステムが日本の経済社会に根づいていくのだろうかといったような点のつなぎを示すということも1つの課題ではないかという気がいたします。
最後、4点目は、これはむしろ私ができないことなのですが、この小委員会に期待されていることはやはり一種の政策提言ですから、格好いい政策提言が何か出てこないといけないのではないかと思うのです。一体、それは何だろうかということ、そちらの方から先に考えておいた方がいいのかもしれない。つまり、あちこちでやられていることでなくて、ここで出てくる政策提言は一体何なのでしょうかということを、原点に帰ってもう一度考えてみたらいかがでしょうか。以上です。
〔 委員長 〕 どうもありがとうございました。委員長として考えているようなことを、今、全部言っていただきました。続きましてどうぞ。
〔 委員等 〕 順序は逆になりますけれども、期待されているということは、やはり現状の分析、足りない点、そこから新しい政策提言というのは当然出てくるはずだ。そうすると、冒頭からゴールドプラン21ということを前提としての話になっていますけれども、本当にそれでいいのか。労働市場と同じように、何か官主導で全部のことが行われるというような感じが非常にして、片方で言っているプライスメカニズムを動かしてやっていくということも現実的には相当ギャップがあるのではないか。私はこの問題全く素人ですが、そういう印象を持ちますので、世の中一般に対してどういうプレゼンテーションができるか、政策提言ができるかということは非常に重要だなと。4月1日から始まっても、この間、テレビを見ていたら、一般の人は全然関心がないなんていう結果もあったりしますので。
あとは、その中の観点で、例えば具体的な問題として、難しい問題になると何かすべてNPO等の第三者機関によるサービス評価というのがすぐ出てくるのですけれども、実際問題として第三者機関によるサービス評価というのは、例えばグローバルな金融資本市場などでしたら格付機関というのがそれぞれあって、長い歴史を持ってそれぞれの格付機関に対する評価もある。また、その前提としてあらゆるデータが全部ディスクロージャーされているという点がある。しかもマーケットはグローバルに広がっているというものがあるのですけれども、今後、市場メカニズムを利用していこうという場合の第三者機関によるサービス評価という問題ももう少し現実的に考えていく必要があるのではないかという考えでございます。
〔 委員長 〕 それでは、いままでの各委員等のご意見をもとにしながら、さらにこれから残りの時間議論を深めていきたいと思います。また、事務局の方からも説明や意見がございましたら、どうぞ活発にご議論をお願いします。
事務局の方から、何か追加的にありますか。
〔 事務局 〕 事務局の方が力不足という面がありまして、いろいろとご指摘いただきましてありがとうございました。
この中で、先ほどから幾つか評価あるいは監査という視点、要するにチェックの話がございましたが、今もNPO等の第三者機関によるサービス評価というところの関連した話がございましたが、今、担当しております厚生省の方では、介護のオンブズマンという言い方をしたり、だいぶ揺れ動いているようでございますが、何らかしっかりしたチェック機能、評価、あるいは情報提供するようなものを考えようということがあるようでございまして、そういう点でちょっと歯切れが悪いところがございます。
それから、施設介護サービスへの参入の話というのは、確かにいたるところでそういうご指摘がある部分でございまして、政府自身としては、ちょうどこの時期規制緩和の3年計画の中で結論を出すということになっている関係から、事務局段階では恐縮でございますが、そこまで立ち入らなかったというようなことでございます。
もう一つございましたのは、資料4が、介護保険中心の話になっているではないかというご指摘をいただいております。1つには、介護保険を順調に立ち上がらせるということがまず大切なことで、安心を与えるという面で大切ではないかという点がございますので、介護保険に大きな軸足が置かれているということは確かでございます。
その一方で、現にどのような介護関連のビジネスの参入例があるのかということでいろいろと調べてまいりましたところ、今、一種の商品開発という形で非常に個別的なものになっている。これを一体どう表現すれば大きな介護ビジネスになるのだろうかというところで、資料のサービス提供者の増大といったようなところで、例えばシナジー効果を期待しての介護サービスに参入と、非常に大きなバリエーションがあるだろうということから、福祉機器の開発みたいなものもございますれば、旅行業の関係をつないだものとか、ペットのサービスとかいろいろなものがございまして、それをどう表現したらいいのか、うまくできなかった点がございます。
ただウエイトとしては、明らかに介護関連ビジネスの方が大きいだろうということは、事務局としても認識はしておりまして、介護保険はこれまで厚生省が出しているものからいっても、あと10年のうちにせいぜい10兆円とかそういったオーダーまでしか出てまいらないわけでございますが、私どもの経済研究所の方で出したデータからいきますと、それにさらに食事の問題でありますとか、あるいは諸々生活雑貨のものまで加えていきますとどんどん広がっていく。そういう意味では介護ビジネスというものをどのぐらいの広がりとしてとらえるのがいいのかというところで、金額などがここに出ておりませんのはそういうような点で、十分に煮詰まってなかったということでございまして、さらにいろいろなご意見を賜りまして事務局として努力したいと思っております。
〔 委員等 〕 今、指摘されたサービスの評価の問題ですが、確かに介護サービスというサービスについてはサービス評価が必要かと思いますけれども、介護は医療などに比べればサービスの質について専門家でないとどうしても評価できないという程度は低いですね。要するに介護される人がいいと思えばいいんだし、よくないと思えばよくない。医療なんかの場合には、どういう医療サービスがいいのか悪いのかというのは素人にはなかなかわかりにくいわけですが、そういう面で言えば介護にサービス評価が必要、あるいは介護事業者に対するコンセンサス評価が必要だったら、医者とか病院についての方がもっと必要度は高いだろうと思います。
それから、一度失敗があったら取り返しがつかないことになるというのは、確かに介護でも一部そういう面があるでしょうけれども、これも医療とかあるいは教育とか、とんでもない教育を受けてしまったら後で取り返しがつかないとか、とんでもない医療行為を受けると命に関わるとかいうことに比べれば、相対的には介護の場合には、もちろん重大な事故などが起きる可能性がありますから、そういう面はありますけれども、介護をやってもらってうまく合わなかったら違う人に替えるとかいうようなことは、医療とか教育などに比べればまだ程度が軽いといいますか、ですから、確かにサービス評価の問題は重要かと思いますが、介護サービスについてどの程度、フェイタルイシュー(致命傷)というか非常にクリティカルなイシューかどうかというのは、医療サービスとか教育サービスとの比較において位置づけておく必要があるのではないかなと、感想として思ったのですが、いかがなものでしょうか。あるいはそんな生やさしい問題ではなくて、もっと深刻に考えなければいけないというのもあるのかもしれないのですが。
〔 委員等 〕 先ほどのお話で1つ教えていただきたいのは、ビジネスであるから利益が出なければだめだというお話ですけれども、今、一般的な経済社会では、例えば国際競争力なんていう場合、日本の企業はROEがものすごく低い、アメリカのマイクロソフトは25%だけれども日本は1%か2%だというようなことなのですけれども、介護ビジネスというのは国際的にもう1つのビジネスとして成立していて、どのぐらいの利益率が上がっているビジネスなのか。どなたでも構いませんので、もし、何かわかったら教えていただきたいと思います。
〔 委員等 〕 現状、介護ビジネスというのは、ドイツで介護保険がありまして、あと、アメリカでケアサービスみたいなものがありますけれども、収益率の諸外国比較というのは私できないのですが、日本に関して言えば、今回の介護報酬単価を決めるに当たって、厚生省の方でサービスごとに事業収支のアンケートを民間事業者と社会福祉法人に対して行いました。
その結果を見ますと、記憶ベースですけれども、ホームヘルプサービスについては、事業収入に対して収益はマイナス17.1%の赤字であるというのが厚生省が公表した結果でした。訪問入浴については若干プラスの3%だったと記憶してます。有料老人ホームについては介護付きですとやはりマイナスで、介護がないと若干のプラスという状況で、私が見る限りこれが事業収支を見る唯一のパブリックな資料だと思うのですけれども、極めて儲からないという状況であると認識しております。
〔 委員等 〕 米国のケアビジネスも、公開している事業の収支を見ますとあまりいい利益率を上げているところはないです。株価も、大体医療と介護がセットにしてサービスしていますので、医療の方で引っ張られている。多少介護バブルのようなものがあって、新しいビジネスとして期待はされて上がったりはしたのですが、米国でもその辺は少し収束ぎみで、ですから、そんなに大きく儲かるビジネスではない。
今、おっしゃったように、日本でも介護報酬単価が決まっていますので、人件費が取れてそこそこ儲かるというぐらいの水準でおそらく落ち着くのではないかと見ています。ですから、大きくビジネスをということであれば、介護プラス拡大した部分、そちらの方にどう出ていくのか、その環境をどういうふうに作っていくのかということが重要な課題になるのかなと思います。
〔 委員等 〕 先ほどおっしゃった、いわゆるクエーザイマーケットと言われているところに公的に財源が調達されて、さまざまなプロバイダーとディマンダーがいるのだけれども、他の市場と違うところはプロバイダーにはNPOも入っているし、払うバジェットに上限があって、また、日本だとおまけにそれが公定価格で決まっている。そこにどういった需給調整メカニズムをもたらすのかというのは非常に大きなソーシャルポリシーの中での研究分野でもあります。
1つ言われていることは、プロバイダーにとにかくコストセービングのインセンティブをつけることは当然なのだけれども、例えば医療保険で議論になって頓挫しましたけれども、参照価格制度、例えば薬で、マーケットで支払われている価格の最低あるいは平均までは公定価格として保険で払うけれども、他のところは自分で払ってもらうとか、そういった需給調整メカニズムをどうやってつけるかというのは大きな問題ですが、私が聞いている範囲で、前の議論で介護保険でも起こってきたのは、例えば3年なら3年で介護報酬を見直す、市場実勢に合うように形で介護報酬を見直していくということが1つの方法。あと一つの方法は、介護保険で仮に単価が決まっていたとしても、プロバイダーに競争させて、そしてこれはケアマネージャーという人がカギとなってサービスをいろいろ組み合わせたりしますので、一番安いところからケアマネージャーが予算の範囲内でサービスを購入するという仕組みを作るとか、そういったことを聞いたことがあります。
それから、先ほどのお話がありました第三者機関によるサービス評価は、アメリカでも実際にミシュラン、レストランの評価のような形で行われている。例えばそういう本が売られている。そういうことが行われているということです。
NPOとPOをプロバイダーとして競争させるには、今、税制が違いすぎるという大きな問題があることは確かです。例えば有料老人ホームでは何の租税優遇措置も受けていませんけれども、社会福祉法人は税金を払う必要もないし、POとNPOが同じ線で競争していくためのスタートのラインが今のところNPOにハンデがつけられている。それをどう評価するかという問題があると思います。
〔 委員等 〕 評価の問題ですけれども、おそらく幾つかの意味があるのではないか。1つは監査といいますか、悪いことをしていないか、例えば虐待していないかとか、代返というか勝手にハンコを押していないかとか、そういうのが1つの役割だと思います。
もう1つは、事業のレヴューイングといいますか、受ける方が何を欲しているかということを第三者から聞いて、それを供給者に伝える。本人が言えばいいことかもしれませんが、そういったような役割を期待する。
3つ目は競争だと思うのです。「おまえのところはサービスが悪いぞ」ということを客観的に示す。それによって事業者もその次の選択が変わってくるという、一種のレピュテーションの競争みたいな。それによってどういう組織がいいのか、何を期待して評価がいるかということで変わってくるのではないかというような印象を受けました。
〔 委員等 〕 私もおっしゃるとおりだと思います。
ただもう一つ、最後に言われた競争という面から言えば、最終的には第三者がした評価ではなくて、消費者が使ってみてよくないサービスは買われない、いいサービスが買われていくというメカニズムは大切だと思うのです。
その点で、先ほどどなたかおっしゃいましたけれども、確かに介護サービスが安定的に供給されるというか、ある日つぶれてしまって明日から介護者が来なくなるといったようなことは困るわけですが、えてして「そういうことは困る」という話になると、「介護事業者は一事業者たりともつぶさない」とか、そういうような政策がとられて競争が阻害されることも往々にしてありますので、やはり情報が提供されてサービスが競争によって向上されるためには、場合によってはあまりにもひどいサービスを提供している事業者は市場から撤退する。
ですから、そういう面で言うと、サービス事業者が市場から撤退しても困らないようなシステムといいますか、破綻処理、つまり、サービス機関が市場で競争した結果いなくなった場合にどうするかということを決めておくことが、逆に言うと競争による質の向上を担保するためにも大切かなと思います。
〔 委員等 〕 そういう意味では、介護保険制度の中で考えれば、ケアマネージャーが現場のサービスの提供までどうやって目を行き届かせるかということなのですけれども、今、我々が実態をいろいろ見てみますと、プランを立てて事業者が行っているかどうかの給付確認をして、国保連に毎月結果を出すというこの作業をしていますと、ほとんどケアマネージャーが利用者の顔を見ていられない。アセスメントに行ってケアプラン作った、そこでもうほとんど終わりという状況ですので、ケアマネージャーをもっと本来機能に生かすような支援をしていく。それはまさにIT技術だと思うのです。給付管理なんていうのは簡単にシステム化できますから、それを一気に効率を上げていくようなシステムにして、ケアマネージャーは1週間に1回でもいいと思いますけれども、利用者のところに行って「どうですか、計画どおりいってますか」というようなことができれば理想的だなと思います。
あとは、サービスがどうかというときは、社会保険で保険者というのはやはり主役になってくると思うのです。ですから、市区町村がどれだけ評価能力が持てるか。そういう仕組みもこれから作っていくべきかなという気がします。
それから、意外に在宅介護を受けている方で重度の方が多いのです。本当にこの人たちはケアなのか、介護なのか。実は介護ではなくて病院で面倒を見なければいけないのではないかというような方も入っていて、そういう方が重大な状況でトラブルになるということもこれから出てくるのではないか。実際、介護保険が始まる前に、やっているいろいろな介護サービスを見ていても、意外にたくさん途中で死亡していっている。これは本当に最初から介護でよかったのかな、在宅で本当によかったのかなということを思いますので、最初の話になりますけれども、ケアマネージメントの正確性というのが求められる。ですからケアマネージャーの教育というようなところがこれからもポイントになってくるのかなと思います。
〔 委員等 〕 先ほどの発言の中に介護保険を導入すると何がいいのかということがありましたが、それを考えるときの1つの前提として置いておかなければいけないのは家族観だと思うのですが、これまでは家族が介護するというのが美風としてとられてきましたが、それが行き詰まって社会的に担おうということで介護保険が出てきたわけで、最近でも家族が介護するのが美風だから現金を給付しろという意見も出てきたことですから、介護を離れても家族というものをどう考えるのかということを前提に置かれるのがいいと思います。
1つ私の考えとしては、家族で介護してもらってもいいし、あるいは外部で良質なサービスを受けることもできるということで選択肢は広がった。介護保険だけではなくて選択肢の広がりであるということで介護をとらえた方が、介護保険ができて介護サービスが発達してよかったなと思える社会だと思います。
もう一つは、今、市区町村ということをおっしゃいましたが、介護というのはやむにやまれず受ける商品であるということが他の商品と違うと思います、できれば受けたくない。ですから本当なら介護を推進するよりも予防を推進すべきでして、今、介護が話題にはなっていますけれども、介護を受けなくてすむような予防システムをむしろ推進することが重要である。
そこで市区町村の役割なのですが、市区町村はいままで予防的な高齢者福祉も、介護という高齢者福祉も一般会計の中で一緒にやってきましたけれども、今度、介護保険特別会計というのができまして、財源は国や都道府県、1号保険者から2号保険者から広く集めて介護というものについてはケアしていける。ところが残った予防的な高齢者福祉については、引き続き一般会計の中で自分たちの税財源でやっていかないといけないということで、予防というところがかなり手薄になっているのではないか。
ですから、結果として起こってしまった介護については手厚く財源の手当が、制度ができたわけですけれども、もっと大事な予防ということについては、まだまだ不十分だと思いますので、今、市区町村頑張っておられると思いますが、市区町村だけに任せるのではなくて、財源もそうでしょうけれども社会的に予防を組み込んでいくようなシステムが重要ではないかと思っております。
〔 委員等 〕 一つ教えていただきたいことがあるのですが、先ほど、介護ビジネスということで、結論としてはその他を含めてのシナジー効果である、アメリカでも大体そうであるというお話ですが、聞いたところによると参入例として異業種同士が提携して訪問入浴、食事宅配に参入という例もあるようですが、これもシナジー効果という一連の位置づけ、そういう理解でよろしいのですか。
〔 委員等 〕 情報がなくて、どういう意図で提携したのかわからないのですけれども、本業の顧客を高齢者にスライドさせて介護ビジネスに来た方ですとか、固有のインフラ技術を使って隣接業界から来た場合とか、最近は全く関係ないところからも参入してきているという状況だと思います。
〔 委員等 〕 これは事務局でも、あるいは現実にやってらっしゃる方からでも教えていただきたいのですが、資料4の2.(3) IT(情報技術)の応用への期待とあるのですが、いずれこの小委員会でもIT革命というテーマがありますけれども、介護ビジネスにIT技術を利用することによって革命的なことが起こるようなことは、何かあり得ないのでしょうか。先ほど、インターネットを通じた介護報酬請求事務代行業務なんかはきちっとできるというお話がありましたけれども、もう少し何か革命的な「これは」というようなものはないですか。
〔 委員等 〕 技術のレベルという問題だと思うのです。例えば徘徊老人の居場所がわかるようにとセンサーをつけるのですけれども、ボケたりしますと、異物があると異物を取ろうとする。取れないようにガチッとつけると自分の身を削って取ろうとする。そういうものですので、本当にその辺のIT技術がどこまでインターフェースをきちっととれるかというところが勝負になるのではないかという気がします。
ですから、実はまだそういうところまでメーカーもプロバイダーにしても目が行き届いてないと思いますので、そこが実は宝の宝庫のような気もします。
〔 事務局 〕 いままでのお話の中で、NPOへの期待というのがあまり出ていないといいますか、私自身はけっこうNPOがこの分野で活躍できるのかなと思っていたのですが、新聞などでもNPOの事業者の登録が少ないとか、いままで先生方のお話を聴いていてもわりと醒めていて、やはり儲けにならなければ来ないというニュアンスが強かったのですが、やはりNPOに大きな期待ができないというご認識なのでしょうか。
〔 委員等 〕 私は、NPOの方と話したことがあるのですが、非常に労務管理が難しいということです。NPOに集まって来る方々はみんなボランティア的な気持ちでやっているわけです。だからお金はもらえなくても、あるいは時間制でもいいわけですけれども、ところが介護保険が設定されるとお金がもらえるようになる。ボランティア的な人たちも精神が強い人もいれば、お金をくれるのかと思うような人もいる。その人たちを同列に集めて労務管理をしていくのは非常に難しい。だから、介護保険はいいんだろうけれども、僕たちにはちょっと扱いづらいなという話も聴いたことがありまして、これは多分、私が会った方だけではなくて、NPOという組織形態にとっては非常に難問だと思っております。
確かに、いろいろな業者に参入してほしいでしょうけれども、営利企業とNPOが同列、先ほどおっしゃっていましたが、同じ土俵の上でやっていくことに対して制度的にフォローするようなものがないと難しいのではないかと思っております。
〔 委員長 〕 事務局のご指摘の点は大変重要だと思いますので、いろいろご議論ください。
〔 委員等 〕 私も一時は、数年前まではこの分野でNPOが非常に活躍できるのではないかと期待しておりました。アメリカとかイギリスとかいろいろなところでも、介護の分野にさまざまなプロバイダーが入り込んで競争した結果とかを見てみますと、確かにNPOがこの分野の事業を担う可能性というのはあると思いますが、最終的にはPOと棲み分けができるのではないかと思っています。どういったところでNPOの可能性が大きいかといいますと、1つは、なかなかPOが進出してこないような郡部とか、それからPOが上澄みだけをはねてしまうようなことがありますから、なかなかPOでは引き受けないような人でも引き受けるような特性のあるNPO、自分たちはミッションを持って、とにかく人の世話をするというのは営利企業よりも強いわけですから、そういったものをはっきり持っているところが、特性を持ったところが残っていくと私は考えております。ニッチ(隙間)で、POがなかなか入ってこないような分野にNPOが残っていくと思っています。
〔 委員等 〕 これは単なる議論の整理ですけれども、POといった場合にはプロフィット・オーガニゼーション、株式会社という形で利益を配当という形で分配するというものですけれども、NPOの場合には2種類あるというか、1つは事務局が念頭に置いておられるようなボランティア団体みたいなものがありますけれども、もう1つ非常に大きな要件は医療法人とか社会福祉法人とか、それを業としていて利益は分配しない。そちらの方が多分ノンプロフィット、オーガニゼーションとしてはこの分野では大きな力を半期するのだと思うのです。
その点について、私は先ほどのお話と同じで、そういう社会福祉法人というようなものと株式会社の競争条件を整える必要はあると思います。これは医療保険でもそうですけれども介護保険でも減価償却という考え方があまりありませんから、価格の中にイニシアル・インベストメントのコストをどういうふうに転嫁していくかとかいうことは1つ考えなければいけない部分だろうと思います。社会福祉法人については、さまざまな税法上の特典等が認められていて、すなわち競争上のイコールフィッティングという観点から言うと、そこの問題はあるかと思います。
もう一つはボランティアを中心としたようなNPOといいますか活動というのは、私は、非常に大切だと思いますし、それぞれの志を持ってサービスが提供されているということはあると思います。ただ、これはよくわかりませんけれども、介護サービスというものが社会的必需財であって、それが安定的に供給される必要があるとすれば、これはこれまでの経験からみても利潤動機があらゆる財やサービスを安定的に提供してもらうためには最もいい仕掛けだということはもうわかっているわけですから、ボランティアの場合にはその人たちの都合で、あるいはその人たちが生活上困ってくればそういうボランティア労働は提供されなくなってくる可能性はあるわけで、そういう面では基本はやはり利潤動機によってきちっと市場から提供されるサービスに依存すべきである。しかし、それと同時にそれぞれの志を持った、収入を目的としない活動が補完的にといいますか、存在するということは非常に重要だと思います。
〔 委員等 〕 NPOでなくなってもよろしいでしょうか。
〔 委員長 〕 どうぞ。
〔 委員等 〕 どういうふうにこれをまとめていけばいいのかということですが、今日配られた資料4の3.介護サービス市場整備の政策課題ですか、このあたりをどういうふうに整理するかということではないかと思います。
1つはこの3つ、つまり、(1) サービス提供体制の整備、(2)新規参入促進のための事業者への支援、(3) 利用者本位の仕組みの整備、それぞれ大事なことであって、例えばNPOも、必要ですが、その他に関連分野といいますか裾野分野というか、もっと広い意味の分野のことが触れられているべきではないかということは、何人かの委員の方の議論で思うわけです。つまり、福祉産業とか、介護産業よりも、もっと広い概念に対して目を向けていこう、それはどうすればいいかということが大きな課題だと思います。
もう一つは、制度をどういうふうに発展させていくか。ここではサービス労働者とか利用者に対して注文がついていて、政府は何をすべきなのかということに対するはっきりしたものがないのですが、つまり、一体、この制度をどういうふうに発展させていったらいいかということについての提言があった方がいいのではないか。
例えば、大体、市区町村が責任者なのですが、私は地方分権には大いに賛成しているつもりなのですが、国の事業を市区町村がやったパフォーマンスというのはあまりよくないのではないか。生活保護費の運営とか、国民健保とか、どうもあまりうまくない。そういう点では、先ほどお話のあったケアマネージャーなんかが本当にプロフェッショナルになって、何も市区町村一つに限らず、「あの人が再建した」と、いわば再建屋みたいに、アメリカの経営者のようにどんどんあちこちに行ってどんどん改革するとか、そういうような形のケアマネージャーのようなところをうんと強化してかつ流動的に引っ張りっこで、それこそ地域間競争をしてよくしていくとか、管理の方の体制にももう少し工夫をしたらどうかという印象を、今日のお話を聴いていて何となく持ったのですが。
それから、人材などについても、もし、本当に労働力不足の中でこういうことをやらなければいけないのだったら、外人労働力をどうするかという問題もあり得ると思います。世界中で看護婦さんは大体フィリピン人が多いわけで、一番熟練しているということになっているわけですから。そうではなくて、IT革命でちゃんとするから人は余っている、労働力が過剰だというのならまた別の対応をしなければいけないですが、そういうマクロの背景ももう少し織り込んでいただければいいのではないか。
今後、3.に対してどういうふうな書きぶりが良いかということをもう少し議論しておいた方がいいのではないかという気がしました。
〔 委員長 〕 方向性について重要なまとめと指摘がございましたが、それに関連してご意見、あるいは事務局の方から、この辺についてもう一度皆さんの意見を伺いたいとか、今、NPOの問題が出ましたけれども、他にも何かありましたら残りの時間をそれに費やしたいと思います。
〔 事務局 〕 先ほど、この中に需給調整メカニズムをどう組み込んでいくかというような話、あるいは介護サービスに対する料金設定、参入できるに十分な水準の魅力的な料金設定というようななお話があったと思いますが、一方で、これを国民から保険料として徴収するという、そことのバランスで、もちろん高ければいっぱい参入するけれども、一方でたくさん取らなければいけない、たくさん取ることについてはまた反対があるから、そこの普通の需給調整とはまた別のもう一つのメカニズムの中で併せて考えなければいけないのですが、例えば、一方的に市場への参入を確保するためにきちっとした水準の料金設定をしろというだけでは、なかなかうまくないかなと思うのですが、そこら辺は保険料とのバランスでどう考えればいいでしょうか。それを含めてみんな選択だというのでちゃんと民意を問うて、これはそれぞれの市区町村が自らのサービスで異なった保険料の設定とかができるメカニズムには一部なっているわけですが、そこのところをお話いただければ。
〔 委員等 〕 おっしゃるとおり、単価を上げれば一方で保険料が上がるというジレンマがあるわけでして、ここ1年間の介護保険の制度の動きを見ていますと、そのジレンマに政策当局は非常に悩んでいたと思います。保険料を上げ過ぎるとみんなの同意が得られない。一方で、参入を促すために単価は上げないといけないということで、ジレンマとの戦いだったと思います。結論としては、私は、政治の説明責任と考えているのですが、本当に必要なサービスであれば、それを説明できないものか。「こういういいことがあります、だからこれだけかかります。だから、保険料はちょっと高いけれども我慢してくれませんか」という説明責任のところだと思います。それがどうも欠けているような気がしまして、本当に払った保険料が社会全体に幸せをもたらすように使えるのかというところに、保険料を払う方は疑問を持っているのではないかと思います。
それでは、それをどうやって解消するかと言うと、1つは政治の説明責任、もう一つは、今、介護保険が始まっていますけれども、介護保険が始まっていいところがもっと広く知らされることだと思います。ただ、ちょっと恐れているのは、これらか悪いところがピックアップされていくのではないかということです。10月からは保険料の徴収が始まりますので、また介護保険が注目されると思いますが、どうかそれまでにいいところが広く知らされるように、本当に必要なのだということの政治の説明責任も徹底されることがジレンマ解消のためには重要だと思います。
〔 委員等 〕 そこの議論になると、介護サービスのナショナルミニマムはどうするのかというところだと思うのです。食事も3回届けるのではなくて一日分まとめて届けて3回に分けて食べてくださいとか、風呂はバスタブには入れませんけれどもシャワーで我慢してください、それはとりあえず介護保険でやりますというふうにして、後は自由に皆さんの所得の範囲の中でやるという方向が1つあるのではないか。
あまり個の部分ばかり大きくしていくと、今、おっしゃったようなジレンマが常につきまとってきますので、ビジネスを育てるということとコアのサービスはきちっと提供するという、この二本柱がきちっと機能しないとうまくいかないのではないかと、持論ですけれども思っております。
〔 委員等 〕 今、おっしゃった2階部分と1階部分をどういうふうに組み合わせるか。つまり、介護保険でやっていることが基礎になって、その上にもう1階建てられるというような仕組みが、そこに一番たくさん入ってくるというのが、そこでこそ本当に価格メカニズムが効くという、そういう設定が必要なのではないか。今のお話に非常に同感します。
もう1つは地域、市区町村ということですけれども、一種の地域間協力も必要で、つまり、つぶれてしまったときの措置等を考えると地域間の協力体制も必要で、同時に競争も必要だと思うのです。あの地域は非常にうまくやっているという。その両方をヤードスティック・コンペティションというのですか、あそこは非常にうまくやっているとか、そういうことが流れていって、市区町村と管理者の方も競争するというメカニズムをうまく作っていくことが必要なのではないか。そういう点では、ケアマネージャーの評価システムあるいは管理者の評価システムもいるかもしれないという気もするのですけれども。
〔 委員長 〕 他にいかがですか。
〔 委員等 〕 先ほどもありましたように、基本的にケアマネージャーは今は事業者につくことになっていますけれども、これは独立とした事業者になれるぐらいの強さを持たないと、この人たちがコア、核になると思いますので、将来的にはインディペンデントであるということが重要になってくるのではないかと思います。
それから、本当に悩ましい問題ですが、保険料の値上げと給付の関係は、私個人の見解ですけれども、介護保険というのはコアなサービスであって基本的なものを供給しないと上も育たないという考えなのです。「これだけのいいサービスを取ろうとしたら、これだけの保険料がかかります」ということこそ民主主義ではないかと思います。それで、先ほどお話があったように、政治の説明責任であると同時に我々の民度の問題ではないかと個人的には思っております。
〔 委員等 〕 今のことで一言。
地域ごとに変えるというのも1つかもしれない。この市区町村では付加保険料を取るけれども付加サービスをやります。石原新税があるわけですから。
〔 委員長 〕 それも1つの競争的な面ですね。
〔 委員等 〕 それはできるわけですよね。それも競争すればいいのではないかと思いますけれども。
〔 委員等 〕 それは見込まれていると思います。
〔 委員長 〕 予定の時間になりましたが、これだけは言っておきたいということがございますれば、どうぞお願いいたします。
無いようですので、本日、いただきましたご意見を参考にいたしまして、最終的なとりまとめに可能な限り反映していきたいと思います。今日は本当にありがとうございました。
本日の審議はここまでとしたいと思います。
本日は、ニッセイ基礎研究所の岸田さん、さくら総合研究所の西沢さんにはお忙しいところをおいでいただき、貴重なご意見をいただきまして、誠にありがとうございました。
また、委員の皆様にも、夜の非常に貴重な時間をご参加いただきましてありがとうございました。また次回以降、よろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。
以上