第4回物流・情報通信ベストプラクティス研究会

議事録

時:平成12年4月26日(水)16:00~18:00
所:経済企画庁長官官房特別会議室(729号室)
経済企画庁

議事次第

  1. 開会
  2. 中間報告書(素案)について
  3. 自由討議
  4. 閉会

(資料)

  • 資料1  物流・情報通信ベストプラクティス研究会委員名簿
  • 資料2  物流・情報通信ベストプラクティス研究会中間報告書(素案)

委員名簿

  • 石原 和幸  日本航空株式会社 貨物事業企画部 企画マーケティング室 課長補佐
  • 石原 誠一郎 SAPジャパン株式会社 ディレクター エグゼクティブセールス
  • 井出 一仁  株式会社日経BP 日経コミュニケーション編集長
  • 岩田 彰一郎 アスクル株式会社 代表取締役社長
  • 北之口 好文 ヤマト運輸株式会社 システム改善本部 情報システム部長
  • 國領 二郎  慶應義塾大学大学院 経営管理研究科 教授
  • 花輪 順一  日本郵船株式会社 物流グループ 物流統括チーム 課長代理
  • 藤田 周三  株式会社ローソン 情報システム室 副室長
  • 前田 正明  株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ MM企画部 MM企画担当部長

(五十音順 敬称略)

出席者

(委員)石原和幸委員、石原誠一郎委員、井出一仁委員、岩田委員、國領二郎委員、花輪順一委員、藤田周三委員、前田正明委員
(事務局)牛嶋総合計画局長、永谷審議官、塚田審議官、税所計画官


(事務局) 第4回目の物流・情報ベストプラクティス研究会を開催させていただきたいと思います。

 本日は、委員の皆様方におかれましてはご多忙の中お集まりいただきまして、まことにありがとうございます。

 議事を始めます前に、お手元に用意させていただきました資料を確認させていただきます。まず物流・情報通信ベストプラクティス研究会第4回の「議事次第」、座席表、資料1として「委員名簿」、資料2として「中間報告書(素案)」です。ページの落丁等ございましたら、事務局までお申し出でください。

 それから、委員の異動について報告させていただきます。資料1の委員名簿に記載してございますけれども、國領座長におかれましてはこのたび教授にご就任なさいました。それから、前田委員におかれましては、株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモMM企画部MM企画担当部長になられております。

 それでは、座長、これからの議事進行をよろしくお願いいたします。

(委員) それでは、議事次第に沿って進めてまいりたいと思います。

 事務局より、これまでの研究会に出されましたご意見を踏まえて準備していただきました「物流・情報通信ベストプラクティス研究会中間報告書(素案)」についてご説明をお願いいたします。

(事務局) (事務局説明)

(委員) どうもありがとうございました。

 それでは、ただいま事務局より説明がありました素案につきまして、自由に忌憚のない活発なご意見をお願いします。

 事務局からのお願いであり、この会議でも何度か話題になっている、我が国でネットワーク取引を推進する上でアメリカ等と比べて、基本的に何が不十分なのかという点についてもコメントをいただきたい。

 なお、段取りとして、本日皆様方からいただいたご意見を踏まえて、さらに作業を進めますが、次回に中間報告として取りまとめることから、出来る限り今日の会合でご意見をいただければと思います。

(委員) 熟読しているわけではないですが、大雑把に言うと、「第1」のところで環境の変化を述べてます。これは事実ですから問題はない。それから導いたところの特性というのが「第2」になって、顧客、企業に言及しているのは良いのですが、ここから「第3」につながらないです。「第3」に書いてあることは、個々の事項は世の中の傾向として良いのですが、なぜこうなのかを言及していない。背景と「第2」の特性から導き出される結果が「第3」の記述になるということが必要だと思う。そこの結びつきが若干弱い。

 「第2」の「ビジネス特性」で大事なことは、こういう傾向、特性があるが故に、勝ち組と負け組が出てくるということ。国内の競争に勝つことも大事ですけれども、国際競争に勝つためには政府として何を推進しないといけないのかいうことが必要です。この「特性」によって何を勝たせ、何が負けてくるのか。勝たせるためには何をしないといけないのか。負けるということは、そこに問題が起こるわけですから、救済してやらないといけないかもしれないが、どういう救済策があるのか。そういう視点に立って「第3」でとるべき方策とは何ぞや、と、こうやって結びつくのが自然だと思う。「2」と「3」のつながりがはっきりしないなというのが第一印象です。

 ここに記載されているすべての事実は全部間違いない。ただし、バラバラに記載されているようなイメージが私にはしました。

(事務局) これの考え方は日本の企業が勝つ負けるじゃなくて、外国の企業が日本に来てもいい、生き生きした日本というイメージです。外国からいろいろな人が来たり、そういう日本を作ったらどうだろうか、そのためにネットワーク取引がどんどんやれるような日本にしたらどうだろうかというのが、この流れとしてあったわけです。そこは人によって意見がまた違うのでしょうか。

(委員) 今のご意見は貴重で、「第3」のレコメンデーションがどういう背景、前提に基づいているのかということに関連しており、全くおっしゃるとおりだと思う。日本の企業にとってだけではなくて、グローバルなハブになるということを考えるからには、海外からのグローバルな企業が日本を拠点としてもらうという視点は非常に重要なので、そういう拠点にしてもらうためにはどういう環境がほしいのかという流れを作るのはすごく大事です。

(委員) その流れも大事だと思うが、我々の研究会の提言を読んで、読んだ人が何を頭に浮かべて何が頭に残るのかというと、「大容量の情報を通信で流しましょう」ということになってしまうでは、それで日本が変わるか、ベストプラクティスになるかというと、あまりそれは伝わってこないと思う。だから、最後に「緊急アピール」が出ていると思う。大きなコンセプトとして、「日本がここで変わっていく」というものが必要。

 先日上海に行ってきたが、まちが沸いていて、テレビを観ると衛星放送を含めてドットコムの情報もどんどん流れている。そこの人たちにお話を聞いても、みんな目が生き生きとして何かやろうとしている。そういうアジアの都市と競争するわけです。そのときに、「日本全体が新しい時代に向かっていくのだから、みんなでやっていこう」というまさに「アピール」のところが大きなコンセプトになり、そのコンセプトを具現化するためにこういう方策をやっていく。そこで税制が変わって、ネット上の取引をやって、そこで商売を活性化させて、物流コストに関して国際的に一番ローコストな仕組みをつくる。コストでは負けるというのであれば、インターネット上のナレッジを世界から集めてくる。

 つまり、「ベストプラクティス」といったときに、実際のコストの問題もあるが、それはアジアの国にかなわない。勝つためには知恵というか、新しいビジネスモデルが必要であり、新しい物流とか情報のベストプラクティスを日本で集めなければいけない、受け皿も含めてそこでもアピールをしていかないといけない。今後ネット料金が定額で安くなるということでは日本もアジアも変わらないと思う。その提案しておられる大きなアピールを、それに対する目玉の政策というものと連動して何かやらないといけない。ここが最後の勝負です。国民的なコンセンサスとか、若い人たちがそこで起業していこうとか、ワイワイするような仕掛けが要るのかなというような印象です。

 もう1つは、EC(Electronic Commerce)の中で、電子商取引というネットでの調達等の場面が議論の中心になっているが、日本がやっていくためには製造業が変わっていく必要がある。デルモデルではないが、途中のプロセスの改善とかが必要である。単に部品の調達が安くなるだけではなく、社内の効率化を含めた意味での「IT化」というのはあると思う。だから、日本の製造業がさらに競争力を持っていくための「IT革命」であるとすれば、製造業に対する言及がもう少しあった方がいいのかなと。

(事務局) どこまでをこの研究会のテーマにするかということが毎回議論になっている。今回は配送まで。第1、第2段階までとしたのは、我々はスタートのときのことにとらわれすぎているところがあると思うが、これから物流とか情報通信分野といったものをよくしていかなきゃよくなっていかないという経済計画での書きぶりがある。良くしていくためには、ネットワーク取引に焦点をあててやっていくと、少しは検討が深まるのではないか。私もそれにとらわれてまして、真っ白な段階からネットワーク取引をやっている感じではない。スタートから製造業まで入ってないものですから。前回も製造業までちゃんとやらないといけないと指摘を受けました。

(委員) ただ、デルモデルの場合は、製造業でありながら物流、調達のネットワークを活かすことによって製造業が活性化している。ソニーのダイレクトモデルとか、NECのモデルもそうです。これらは製造モデルと物流・調達モデルのどちらに入るのかといったときに、メーカーがお客様と直接コンタクトをとるなど、そこの物流システムは非常に大きなものです。工場などの問題もありますが、そこもかなり大きな製造業の変革になる。物流を使った、工場内のコストダウンだけではなく、トータルな全体のコストを見直しして、それによって国際競争において、もう一回蘇る、そのあたりも少し触れたいなという気がします。

(事務局) そうですね、どういうふうに入れたらいいかの自信はないが、貴重なご意見だと思いますので、検討してみたいと思う。

(委員) 1ページの「はじめに」にも書いてあるが、この研究会の最も大きな前提として、フロントエンドにとどまらず、物流管理のバックエンドにも留意するということで、これは構成として「第3」の「方策」のところの、10ページの「ネットワーク取引を促進する物流のスピード化」の最初の基幹的なインフラだと思う。

 これが中間報告ということであれば、中間報告でまとめなくても、最終的な報告でまとめればいいのかもしれませんが、11ページの冒頭に「ITの総合活用により、交通関連インフラを計画・整備・運営することが必要」とある。具体的には2つのことがあって、2つ目としてITを利用した道路交通情報通信システムやITSが言及されているが、例えばこれらを使うとバックエンドとしての物流をどのように強化できるか、物流の強化にどのように貢献するかについて具体的に書くと、読んだ人はわかりやすい。

 それから、瑣末なことですけれども、「第2」で「企業の面から見た特性」と「顧客の面から見た特性」とありますが、この場合、「顧客」というよりも「消費者」といった言葉の方が適切ではないかなと感じました。

(事務局) 後者だけ回答します。「消費者」という考え方も確かにあると思います。ただ、ここでBtoBもイメージしたので、何がいいかなと思って、「顧客」という言葉を使った。

(委員) それはむしろ「第1」(企業の面から見た特性)の中に織り込むべきだ。曖昧になる。

(事務局) 「消費者」にしましょうか。

(委員) ここは消費者の観点から引っ張っていく記述。企業と企業の関係だったら「第1」(企業の面から見た特性)の中に書いた方がいい。

(事務局) そこはちょっと考えます。

(委員) 数値的な指標を用いて、「第3」の「方策」を打ち出すことが欲しい。その結果日本は21世紀初頭にどうなるかが判る。通信料金はアジアで一番安いのか、アメリカに比べて安くなるのか。物流のスピードに関して、コンテナの発着がシンガポールよりも何時間速くなるとか。そのコンテンツの数値に落としたときに、「ベストプラクティス」と称しているが本当に「ベストプラクティス」なのかが判る。または「グローバルの中で競争しているから、最初の何年間は我慢して、その後それを抜いていくための投資をする」とかが判る。数値指標がないと、この方策の結果で何をもたらすのかという目標値が見えない。

 そういう国際的な比較と世界のベストプラクティスは何なのかということを提示しないといけない。そうでなければ、掛け声で終わってしまう。

(事務局) それも事務局の中でいろいろ議論がありました。これは5月ぐらいにまとめるわけですが、インパクトのあるものにするためには最終形がどういう姿になるのかというのを定量的に出さないと、インパクトはないという話が事務局の中でもありました。どうやったらできるのかというのは検討した。

 しかし、タイムスケジュールの面から、5月中にあるものを出さないといけないということもありまして、可能かどうかわかりませんが、最終報告でもないので、年内ぐらい、時間があればそういったものも検討していくということでどうだろうかと、事務局の中で話し合いました。

(委員) 数値指標があると次に何を試してみるのかということにかかってくる。それがまた全体のキャッチフレーズとして、日本がもう一回いい国になるというコンセプト的なコンセンサスに繋がる。そのためには何年までに何をするかという数値指標に翻ってくると思う。だから、本当にベストプラクティスというのは何かという定義がないかと思います。

(事務局) 今のお話は2系統の話があると思う。「こういう施策を打てばこんな結果が出る」ということと、「何年までにこういう状態をつくる」という目標を提示することの2系統ある。

(委員) 「この施策をやった結果こういう数字になる」という数値目標があります。その施策は本当にベストプラクティスなのか、第一ステップで数値目標にいけなかった場合、次のステップでは今までのやり方はなくそうという第二ステップの目標というのが出てくるのか、まずそういうことを言っている。

(委員) 逆もあります。この目標で、「追いつき追い越せ」をやるわけでしょうから、米国にまず追いつく。そのためは何をしないといけないか。アジアの国に対して、うまくやるためには何をしないといけないか。それが数値目標と施策が連動するということです。

(事務局) 私どもも何らかの数値的な将来像と比較して、問題提起ができれば施策の言っていることもわかりますし、はっきりすると思っている。数値目標を策定することができるのかを検討してみた。しかし、なかなか難しい。実態がわかってない部分がある。

 まず必要なことは、諸外国と比べて日本がどういう状況にあるのかを調査することです。港湾などの手続は、外国に比べて日本では時間がかかる。これを具体的な目標として、どのくらいの時間でやれるようにしようというのは具体的な目標をつくってやっているわけですけれども、いろんな側面で諸外国の手続と比べて、日本がどのくらい遅れているのか、時間がかかるのかというのは、実態がまだよくわかってないところがある。

 まず私どもがやるべきは、諸外国との比較をいろいろな指標でやれるようにしてみる。具体的に施策を実施したら、手続がどのくらい縮むかというのは、残念ながら経済企画庁がそういう施策を推進するところではないので、そのことを実際にやるにはそれぞれの所管の省庁の協力を得て、それを指標にして施策をつくる必要があります。

 今の時点でそれがなかなかできないので、中間報告から次のステップというのは少し予算をかけて、分野ごとの状況を把握して、数値指標を出していくということもひとつ考えられると思う。

(委員) 最後の「アピール」が全体を貫く一つのサマリーだとすれば、どういう言葉なんだろうと。「とにかく繋ごう」、これもいいと思う。そのほか、適当に考えたが、いいでしょうか。

(委員) そもそも「アピール」を出すということ自体についてはいかかですか。

(委員) 何を言いたいのか、何をしたいのか。「何が」という話であれば、アピールが要る。総論でまとめましたというような、卒論ではないです。

(委員) 多少インパクトがある数点を打ち出すのがいいという感じですかね。

(委員) 私は出すべきだと思います。

(委員) その前提で考えたんですけどね。1つは、「だれが競争の相手かを考えよう」と。つまらないことで申しわけないが、競争相手がアジアなのか欧米なのかということで、グローバルコンペティション、誰がコンペティターなのかという意味で、「だれが競争の相手かを考えよう」。

 それから、「日本独自の強みのある技術を世界に広めよう」、これはグローバルスタンダードの意味もある。コンペティションの意味もある。

 それから、「大企業のリストラ施策を支援して、支援と同時に救済策も考えよう」。結局、職種転換をしないといけない。日本の大企業はリストラをやらないと競争力がないと思う。リストラの裏には失業の問題があるから、その救済策も考えなければいけない。要するに職種のコンバージョンをどうするかという問題も含めている。

 それから、「既得権益をいたずらに引き延ばしてはいけません」。規制緩和という意味だが、既得権益を守るがために規制があり、それを死守しようとする。既得権益がスピードなりいろいろな発展を阻害する。逆にいうと保護しているという面もあるが、それを何らかの形で訴える必要がある。

 日本の技術をグローバルコンペティション、グローバルスタンダード化する。それから、リストラを進めないといけないし、それで出てきた問題点を解消してやらないといけない。それから、規制についても緩和をしないと競争力は生まれないし、海外からの新しいものの導入も非常に難しい。

(事務局) もし「アピール」を出すのなら、例えば「繋ごう」ということだけで、たった1つの方がアピールとしてよろしのではないか。誰かが受け取ってくれて、それで何かを感じ取ってくれて、何かの動きにつながるということでなければ、幾らいいことを言っても意味がないと思う。

 もしアピールを出すなら1つでも、それを新聞が書いてくれて、だれかがそれを受け取ってくれればいいと思う。このレポートの「第3」の政策がどうして出てくるのだという流れは、ご指摘を受けて整えることとします。

(委員) サンプルとして幾つかあって、これらは同じことを言っている。その中の言葉としていいアピールの表現があって、それを1つ選ぶなら1つということでも構わないと思う。

(事務局) 例えば「とにかく繋ごう」でいいかどうかわかりませんけれども、それを軸として、サブ的に追記する手もあるかもしれません。それを横軸で貫くのが一番上に「繋ごう」なら「繋ごう」でやるというプレゼンテーションの仕方はあるかもしれません。そこはまたいろいろ考えてみます。

(委員) 確かに「繋ごう」ということの意味は、ありとあらゆる場所で接続できるようにしようという「繋ごう」でもあるし、ブツブツに切れている物流と情報の流れをつなごうでもあるし、政府と民間の間がシームレスに情報が流れるようにしようというのでもあるし、いろいろな意味が込められる。

 表現がいいかどうかはまた議論するとしても、今みたいにとにかく一言ポンと「アピール」を出せば、その下にいろいろな要素があり、今まで日本の強みであったものをつなぐ中で活用していこうという話になっていくわけでしょう。世界の知恵と日本の知恵をつなごうという話にもなってくる。外向けにインパクトがあるようにするためにはせめて一言だけでも。

(委員) 「とにかく繋ごう」ということは、ビジネス特性を最大限に発揮させるための方策であり、「アクション」ということにつながると思います。ほぼ同じベクトルでしょう。

 言葉尻をとらえるわけではないけれども、ネットワーク取引をエンカレッジするために、まずはつないでみないと話にならないことは事実で、その次にある程度反論してくるものが出てくるのでしょう。

(委員) いかがでしょうか。論点が違っていても結構です。

(委員) 「繋ごう」というのはすごくいいと思っているが、ネットワークで顧客とのやりとりを、例えばメーカーと顧客が直接やるということから考えると、安全性や安心があって、結びつきができるのであり、それが「繋ごう」ということの裏にあると思う。日本のネットワークは安心だということであれば、逆に世界も利用してくるだろうし、その辺が技術力なりバックボーンではないか。

 ネットワーク取引は、その中でやったことが本当に行為としてどうなのかという行為です。ネットワーク上でやっているけれども、実態は全然モノが動かないということがあってはならないし、そういう意味では情報通信と物流という組み合わせの目指すことではないか。取引だけだと、そういう話は出てこないと思う。

(委員) 安心の面と信頼性の面とでちゃんとつながる仕組みというのも起こるかもしれません。

(委員) そういう意味でもつなごうというアピールではないか。そのバックボーンをつくるというのが方策としてのアピールではないか思う。今の環境のままでつなごうといっても安心できない。今のインターネット取引という分野でいけば、セキュリティーも含めまして安心できない。

(委員) どんな形でそれを組むかは難しいところです。

(委員) そのとおりだと思います。インターネットを使っているが、安全性とか信頼性という人間の生きていく基本的な部分をきちっと確立していかないと、商売上の部分だけを追求していくのはどうかなというのを一番懸念している。

(委員) 発生するであろう地域格差を、政府の立場でも埋め合わせる方策が欲しい。前回か前々回にお話したが、通信ネットワークだと、カバーエリアが広いことが競争力になって、その結果放っておいてもエリアが広がった。

 しかし、インターネットのサービスは、1つの事業者がネットワークをつくるのではなく、多数の事業者がつくったネットワークをつないでいるものですから、ビジネスとしておいしい。例えば都市部に高速サービスを提供して、あとはどこかにインターネットでつないでおけば、その人はとりあえず全国にサービスを提供することができるわけです。ところが、そうやったときに、地方に高速のサービスを提供する人があらわれるのか。

 つまり、携帯電話とか宅配便というのは、エンド・ツゥ・エンドのネットワークの中で行われるサービスだが、インターネットというのはオープンなネットワークがあって、その中に幾つものサービスを提供するサーバーが存在して、みんながそこへ行きさえすればサービスが成立する世界です。そういう意味で、片側が速くて、どっちかが遅いということもある。それでもサービスとしては成り立つ形になっている。

 そうなると、都市部では高速・大容量のサービスが安価に提供されるが、地方でビジネスチャンスを見いだす通信事業者というのは現れにくいのではないかと見ている。放っておくと地域格差が出てくると思うし、ビジネスの論理でインフラ整備をするのはかなり難しいと思うので、国の施策なり何らかの形で、地域的なデジタルデバイドを補正するような話があってもいいのではないか。

(委員) それはどのくらい踏み込んでいきたいですか。

(委員) 一言あればいいのではないかと思う。個人の能力のデジタルデバイドという問題はここに記述されているのですが、地域性というのは、情報通信ネットワークでさえ拭えなくて、恐らく物流の道路とかいう話になるとさらに大きく出てくる。

(委員) 行くところまで行くと、ユニバーサルサービスの目標の方へ設定するのか。そうすると、「何年後ぐらいまでにどこまでいこう」という、さっきの数値目標ではないですが、例えば「3年後ぐらいまでに10メガぐらい、ユニバーサルサービスを日本全国どこでも大丈夫なようにしよう」というのは不可能ではない。

(委員) 言うこと自体は不可能ではない。具体的な数値目標と言われると、さっきから話題になっているように、具体的な数値目標というのをどういうふうに据えるのかというのが非常に難しいと思う。しかし何らかの形で据えてしまうことは決して不可能ではない。

(委員) 「とにかく繋ごう」という表現の中には、ユニバーサルサービスをやってしまおうというインプリケーションが後ろ側にある。

(委員) そうですね。「みんなが」というイメージが恐らく中にあるからです。

(委員) 現実問題として、例えば無線も入れれば、容量の太さはあれですけれども……。

(委員) ええ、つなぐこと自体は大丈夫だと思います。ですから、この中に記述があるように、とにかくつなぐと。既存のインフラを使ってでもインターネットにつなごうと、全くそのとおりだと思う。ただ、先に進んでいくときに高速・大容量化とか、料金を低廉化とかといったときに、地域格差が出てくるであろう。

(委員) 「つながらないことの格差」というのと、「スピードの格差」というのはどのくらい差があるかということかもしれません。「つながらないストレス」があります。オフラインでやることの障壁の高さというのと、とりあえず9600bit/sでもつながっていることの差というのはちょっとあると思います。

(委員) だけど、人間は贅沢でしょう。iモードが最初はトラブルが気にならなかったけれども、最近しょっちゅうトラブルがあるでしょう。繋がっているのが当たり前だと思っていて、つながらないとイライラしますね。前は別にそんなことなかったのです。だから、人間は、慣れるとスピードが遅くてもよかったものが、だんだん速いものを要求する、常につながることを要求する。それに対してリジェクトされるとイライラしますね。

(委員) 9600bit/sでもコンシューマ的には十分という人もいます。おっしゃるように半年もしないうちに9600bit/sでは物足りなくなるのが現実です。

(事務局) 先ほどの地域格差のお話で、例えば道路を高速道路で1万4,000キロと、高規格幹線道路以外も入れるともっとになる。全国の九十数パーセントの人が30分以内に高速道路のインターチェンジにアクセスできるという目標になる。具体的に「何メガのインターネットにアクセスできる人口の比率をどうだ」とか。今そういう計算が可能かどうかわからないが、地域間のデジタルデバイドは、もちろんメンションするのは差し支えないのですが、先ほどのような具体的な数値を出すことは可能なのでしょうか。この間、アメリカの西海岸が1.5メガbpsで、日本が28.8キロbpsという話だったでしょうか、今の日本の状況がどういうふうになっていて、それは地域別にどういうふうになっていて、かなり地域間格差があって、そのことについてはもっと公平さを高めるのか、全国津々浦々までやる必要があるとか。

(委員) 定量的には難しいでしょうね。

(委員) 次から次へと新しいサービスが始まっていて、カバーエリアを広げるスピードは相当速い。それは無線を使っているということもあるが、この素案にも入っているように、ADSLのサービスとか有線系のサービスはかなり難しいという感じがする。ADSLは引いてある電話線を使うサービスですから、新たに線を引くという作業は発生しないが、地域にいくと電話局から加入者までの距離が長くなってしまう。

 ADSLというのは高周波の信号を使うので、距離が長くなると伝送速度が落ちてしまう。地方だと電話局から5キロというようなケースが普通にあるが、このくらいになると都市部で2キロぐらいでやっているところの3分の1、4分の1ぐらいの通信速度に落ちてしまう。同じ品質を保つのは現実問題結構難しいという感じはしますし、それより以前にそんなところにサービスしてもうけようという通信事業者が現れるのか。

 特に、この報告書の中に何か書くというよりも、そういう可能性があるだろうから、そのあたりに関しては、政府の方で何らの政策を考慮すべきではないかぐらいの程度がいいと私は思っている。

(委員) 基本認識として、いつでも、どこでも、動いていても、止まっていても、空を飛んでいても、海の上でも、繋がる状態。基本的には物流ロジスティックス的な考え方をすると、流れの中でどこか1カ所でも切れていると、これはもう全体が「ゼロ」になる。動いていても、どこにいても、繋がる状態で、そのレベルがどれぐらいの高さにあるかによって、全体のパフォーマンスが決まると思う。

 その意味で、「どこにいても大丈夫」というレベルを、どれぐらい国家的な目標として設定できるかは、担い手が、民間がやるか国がやるかというのは置いておいて、掛け声でもよいが、とにかくこのぐらいのところを狙おうというアピールがあってもいい。あまり先を考えないで、既存の設備でできる。2年ぐらい前に日本中を64kbit/sにしたが、それでやったらすぐにもできるはず。放っておいても速度が遅いために起こるフラストレーションによりブロードバンドウェイの需要が出てきて、その次の段階でもう一段レベルの高いところまで持っていこうというような話になってくる。

(委員) 研究会の中間報告がどういうものかというのは、私自身まだイメージが湧かないが、私の感覚からいくと、各々の項目を、促進すべき。もちろん定量効果は確実なものが出てないので何とも言えないが、もしそれが本当にゴーサインするものであったら、関係省庁はどこ、いつまでにやる、もしくはやるべきだと。もしくは、これは民間でやるべき、これは民間と政府が協力してやるものと。それぐらい、自分で自分の首を締めるように。本当にそこまですべきかという問題はもちろんあるが、普段の仕事のやり方からすると、アクションプラン要素が入ってないと、一般論を述べて終わってしまうことを危惧している。

(委員) どのくらいまで入れるのが現実的かという、現実のデッドラインとのすり合わせもあるとして、具体的にこんなことを入れたらどうかというようなことはありますか。

(委員) 個人的な意見としては、フロントエンドの部分というのはうま味がいっぱい転がっていて、表に向いてますし、脚光を浴びているので、放っておいてもいきやすいと思うが、バックエンドにかかっているようなところに、何らかの改革のドライブをかけられるような、焦点をうまくあてたい。

(委員) 地域格差のところにも関係あるが、提言の一番大きな構想がネットワークの高質化。

 ところで、全国に高速道路を作ると、どういう良いことがあるのかといえば、生活者である国民にとってモノが安くなり、いろいろなサービスの改善が行われるという便益がある。だから高速道路を作る。しかし、今の首都高速道路を見ても、交通渋滞している。その道ができたら生活者にとってどんなことが便利なのというイメージがなかなか伝わってこない。高速道路をつくって、そこへみんなが乗り入れるから、そこに新しい便益があるということをもっとイメージできる方が良い。

 地域の格差の点について言えば、高知県では、ネットワークを使ってインターネット化をしている。そういうところは逆に税制の在り方を考えるところ。地方は地方で「経済特区」ではないが、インターネットを使って、例えば、港があるような九州は中国や韓国と交易をしていくようになるとか、そういうことをやってもいい。地方の分権とインターネットの活用の中で、皆で自由に競争していく、自由競争をつかんでいくみたいなところもあると思う。東京は東京でもっと大きい構想、世界に通じるエレメンタルな拠点となればよい。

 だから、それぞれが考えてやっていく中で、相互にソースはつながるかもしれけれども、例えば「高知はえらい速い」となれば、高知でいくと、ネットビジネス化になるかもしれない。そういうものをバックアップしてあげないといけない。そういうところへラビッジバックスではないけれども、ある政策が打てれば、みんながそこでいろいろなビジネスをやっていくようになる。ネットワークの話というのは目に見えないから、「どこが太い」とか「細い」というのがよくわからない。高速道路が全国に広がって、そこに何があるかを考えてみると「太い方がいいね、太かったらいろいろなことができる」というようなことがみんなに見えるようになる。ネットワークについては、皆に見える形にどうしていくのか、最後のキャッチフレーズも含めてね。

 「高速網ができ上がったら、日本もこんなに便利になるとか夢があるね」ということをどう分かりやすくするのか。東京オリンピックの頃のように「高速道路までできて日本が狭くなる」というふうな、そういう現実感をどう持っていくか。「繋ぐ」というのは大事なのですけれども、生活者の現実感というのがもっと伝わっていけば、ビジネスをする人も便益を受ける人もみんな喜べる。それを象徴的な形にすると、例えば、楽市楽座的な目に見えるような場が5年間限定で位置付けられるとか。そういう象徴的な…「インパク」(インターネット博覧会)というのもそうなんでしょうけれども、例えばネット上でインパクに入っていくとモノが安く買えるとか、無料であったりとか、みんなが盛り上がるような見える形で。

(委員) インパク内消費税減免。いいですね。

(委員) それにより、ネット上の楽市楽座にみんなが入ってきて、「まずやってみる」ということになるという効果もあります。地域ではなくて、ネット上という所ではそういうこともできる。だから、「インパク」というのが出てきて、そのあとに何を打ち出すか。連続技でみんなが盛り上がっていかないといけない。もちろん地道に物流ネットを構築しなければいけないところもあります。みんなが便益を感じることが大事。

(委員) 全国を均一し、地域格差を解消する代わりに、おっしゃったように、高知はそういうことを選び、沖縄ではコールセンターを設置したというように、何でもみんな同じようにするということではなく、格差を格差として特徴づけていくということでも良いではないか。

 全国均一に何かやることは、無駄が多くなりがち。

 やり方はいろいろある。「均一行政」というものが高コストであり、弊害を生んでいるとすれば、格差は格差として認めながら、違うものの特徴づけにもっていくということの方がずっといいんだというふうに、国のコンセンサスとして得られないといけないような気がする。国としては「均一、平等」というのを打ち出すでしょう、何でもかんでも。それが本当に日本の国にとっていいことなのか。私はそう思わない。

(事務局) 先ほどのネットワークの話ですが、これはそんなにお金のかかることではないような気もするのです。自分のところに太い線がほしいとある自治体が思えば、具体的な数字は知りませんけれども、高速道路をつくるというような金ではないんじゃないかと思うんです。本音のところでは、地域がそう思ったらやるので、国が3,300の全市町村にこれだけのものを保障するという時代でもないような気がするのです。

(委員) ネットワークの不思議さというのは、先ほどの沖縄のコールセンターのように、あそこに情報を聞きに行ってまた帰ってくることが、えらく大変なことと思っていても、結局、線を引いてしまえば同じなわけです。だから、ネットワークも沖縄がああいう施策によって、みんながコールセンターを作っていこうとか、若い人たちはあそこで就職先を見つけるとか。ネットワークの良さというのは、そういうことがボーンと飛べるという物理的な障壁がないところにあるわけですよね。

 そうすると、そういう地域振興などを踏まえて、それぞれ特徴があるものが組み合わさって、日本中がいろいろ勝手なことをやって活力が出てくる。そういうのもネットワークのおもしろいところだと思う。そういうことを妨げないで盛り上げてあげるようなことも大事だと思う。

(事務局) 高速道路をつくったときに国民全体に夢があったとおっしゃった。これから情報通信ネットワークも夢を持たせてあげたいと思うのです。そういったことで参考的にお伺いしたいのですが、昭和39年頃に初めて高速道路ができた、その前後はどういう夢を国民に与えていたのでしょうか。

(委員) 新幹線が通って、高速道路が出来て、となっていくと、「きっと明日は今よりもいい」というのがある。それが経済成長だと思う。現在は、「今より明日の方が悪い」という人たちがかなりの数いるわけです。不安というのも起きている。そういう中で、ネットワークがつながったらどう幸せになるのか、目に見えなければ、それはまたさっきの経済格差を生んだり、自分たちが取り残されるのではないかという、夢ではなくて不安が出てくると思う。

 そこで、ネットワークにつながったら、老人も簡単に介護を受けられるとか、植木の砂も、テレビに向ってちょっと操作をすれば届けてくれるとか、これで楽になるとか、生活が便利になるとか、寝たきりとか高齢化しても安心だとか、そういう「現世利益」という、お年寄りとしての夢というか明日に対する安心感があったり、自分たちもお金持ちになれるとか、欧米もそうだし中国の人たちもそうなんですけれども、そこでビジネスチャンスがあると、夢が見えてきます。

 それは一方ではベンチャーであり、新しいチャンスがある。戦後50年過ぎて系列とかの鎖が全部外れるわけです。そうするとビジネスチャンスがある。それは夢につながっていく。それによってネットがもう一回夢につながることが日本の活力になっていくが、多様化している中で、それがどうしたのか、そんなことしてどうするのというネガティブな意見も同時に出てくると思う。それをクリアしないと、日本というのは本当に衰退してしまうという危機感とあわせて、そこが非常に、国民みんなが見る夢のところが大事な部分です。

 インターネットで投資をするというのは、ネガティブな意向であっても、ある意味では国民のコンセンサスを得られない。高速道路をつくることはいいことなのかということも含めて今、国民のコンセンサスを得られない時代になっている。そこをどうクリアするかというのはすごく大きい。

(委員) 高速道路がプラットフォームであり、インフラとして認められているのかもしれない。インターネットはインフラとして認められているのか、予算がつく対象になるかどうか。そういう意味ではまだインフラとしては本格的ではないのかもしれない。

(委員) インターネットは一部の人のためのものみたいなところがまだすごくあるということでしょう。

(委員) デジタルデバイドもそうでしょう。まだまだ本当に一部、ごく限られた人たちのためのものであって。「とにかく繋ぐ」というレベルまでは遠いでしょう。

(委員) それは、生活者にどれだけ現実的なベネフィットをもたらすかというのが民間の仕事なんですね。インターネットで発注したらすぐ届くとか、全国の産物、佐田岬の漁港で朝とれたばかりのエビがすぐ食えるとか。そんなことが楽しいことができて、便利になったねとか、ネットワークでいろんな便益があるねとか、個人商店がお店を開いて、全国に地方の名産が売れるようになるとか。その現世利益のところが全く見えないで、「線を太くします」といってもわからないです。

(委員) 岩田さんが最後におっしゃったことが、夢の絵を描くときに最後に持ってくることです。つまり、すごく便利に買えるというより、すごく便利に売れるプラットホームである。本当に小さな、しかもローカルで、今までだと片隅で埋もれているようなお店でもすごくいいものを売っている。こういうお店が大事なのです。

(委員) 地方の八百屋とかね。

(委員) そうそう。そういうような店が全国に販路を見つけられて、すごく有用な固定客を開拓できてくる。我々の仲間うちでは売上高1億円が天井であるというような話をしていて、1億円の壁を突破するのは難しいようなことを言っている。1億円でも利益がたくさん出ていれば、そういう会社が日本中にたくさん溢れていて、それこそ宅配便のネットワークでそれが流通しているわけです。

 それから、在宅のワーカーの人たちが、高齢者とか、通勤ができないとしても、仕事をそこでできる。教育もそういうところから発信できる。身体障害者の方も究極のバリアフリーの経済空間をつくることができる。そういう草の根から出てくる経済的なパワーが集まって生まれてくるパワーというのが、最終的にインターネットという道具の力だと思う。そんなに太い線でなくて構わないから、つながっていることによって、それがどんどん実現していくような世界なのだろうと思う。

(委員) 高齢者も、八百屋も魚屋も、みんな乗り込んで行ける「高速道路」でないといけないわけです。余分なことに手間暇かけずに商売のこと、いい魚をとってくるとかいい卵を飼育するということに注力できて、あとはお任せ出来るのがネットワークのすごさではないだろうか。そういう夢をみんなが持てるところへ昇華しないと、インターネットは一部の人たちのためにせっせとお金を積んでいるものだというようなことになってしまう。

(委員) 団塊の世代の方々が60歳を超えてから、どれぐらい戦力化して維持できるかというのは、この国にとって決定的に重要だと思う。団塊の世代の方々が目一杯働ける年齢でなくなってきたときに、でもすごくいいスキルを持っている。ただし、後々までずっと面倒を見られるほどの体力が会社側に残ってない。そうすると、プロフェッショナルとして、SOHOで働いていただくような道を探さざるを得ない。

 もう1つ、どうしても戦力化しなきゃいけないのが女性で、女性に参加していただけるような環境がどのぐらい提供できるかで、この国の未来を占える。このままいくと重たさで沈没してしまうので、今重たいと思っている部分を、どれぐらい燃焼可能な燃料にできるか。

(委員) ところが、インターネットで一旦便利というか、売る側を助けるというのは良いことだし、買う側は便利になっているのは良いことだが、本当に便利になっていいのかなと。不便さが人としてのコミュニケーションをもたらすとかいう側面もあるではないですか。

 余り便利が良いというばかりでは、インターネットは必要な人にとっては必要だけれども、そこに人間のコミュニケーションがなくなるでしょう。それはまずいような気もします。

 例えば地方で介護を受けている高齢者ががインターネットでモノが買えれば良いが、そうではなく、隣近所の子どもが買い物を手伝ってあげる方がいいわけです。地方でインターネットをやったってしようがないという意識もあり得る。その点は使い分けないといけないというジレンマがある。

 それから、携帯電話の普及年齢層は、どこがピークになりますか。50歳以上になったらポーンと落ちませんか?40歳代ですか。さっきの話ではないが、団塊の世代の方々と携帯の世代とどういう関係にありますか。

(委員) 50歳までは…そこら辺が一つの情報機器の境目かもしれないですね。そこがキーボード使用者のエリアかもしれないですね。

(委員) 将来、訓練してないと戦力にならないでしょう。SOHOをやるにしても。SOHOというのは情報機器の使用が必然なわけですよね。

(委員) そこに今のままリタイヤされると困るってこともありますよ。そこをもう一回いかに戦力化できるかで、この国が決まってしまうのではないか。

(事務局) 今、おっしゃったのは、50代以上の人に国がインターネットを教え込むためのプログラムを準備して、受講する人には20万円まではやりますよとか、そういうことをやるとかをおっしゃっているのでしょうか。

(委員) どこまで国が関わるかは反応を見ながらやるべきだと思う。今試しに使ってみるというのが非常にやりにくい状況にあるので、失敗しても何してもいいから使ってみてくださいという環境が提供できれば、あとは自然に入ってくると思う。

 逆に言うと、お金に困っているようにも見えないので、お金のインセンティブというよりはオポチュニティーだと思います。

(委員) 現実的なコンテンツとしては、株取引のインターネット化でものすごい勢いで進んでいます。それは誰がやっているかというと、高齢者、特に裕福な女性が入っている。それは現実的に手数料などが安いし便利だからです。そこに入っていくと、ついでだからそこから物を買おうかしらというようなことで、それが従来のものよりも便利であるとなれば、お客様というのはそちらへ動く。

 うちの母たちもパソコン教室に通って、みんなでメールを打ったりということをしている。そういう意欲というのは日本の高齢者にはすごくある。そういう学校があったり補助があったりするのは良いかもしれないが、習うだけで使うものがなかったら結局使わない。そういうネット上のコンテンツを守ってあげる部分も、法規制も含めてあると思う。現実的に便益があれば皆さん使うようになる。それはテレビでも、携帯でもそうでしょうし、より簡単でより便益が高いものの組み合わせで動いていく。それで放っておいても大丈夫だったりする。

(委員) 当面の急務があるとすると、インストラクターの供給が足りないと思う。小学校の先生たちの相談に乗ると、一部の小学校の先生がすごく意識が高くてよく勉強していて理解しているが、彼らは孤立無援です。かわいそうです。そのあたり、教える人たちをどれくらい支援できるかが課題です。

(委員) ひょっとすると子どもの方が詳しくなっているのではないですか。

(委員) 順番としては、小学校の先生を助けてあげると、子どもたちができるようになって、孫たちが高齢者に教えてあげると、そういう流れだと思う。

(事務局) アメリカとか外国と比較して、特に梃子入れするところがあるのかないのか。もしご存じの方がいらっしゃったら、ご感想とか教えていただければと思う。

(委員) 教育です。今から30年前にアメリカの小学校でBasicという言語を教えていました。20年前には既に子どもがやっている。その頃、日本ではBasicを大人がやっと勉強していた程度。30年のギャップがある。その時代に日本の小学校では教えていない。

 今はどうなのでしょう。小学校でも、まだだめでしょうか。

(事務局) 小学校でちょっと出てきたとも聞いています。

(委員) 一部ですよね。そこのギャップはものすごく大きくて、その人たちがみんな大人になっているわけですから。これは累積としては大きなギャップだと思う。

(委員) トップマネージメントがPC(パソコン)を使うという意味では、米国は日本に対して30年のアドバンテージがある。本当にアメリカとの大きな差だということです。キーボードの差もあるが、おっしゃるように30年のプラスがある。

(委員) これを日本の経営者が理解できない。結局ジェネレーションです。30代ぐらいの人間の感覚が今の時代にマッチしている。今の経営者はその感覚が理解できない。トップ経営者は60歳ぐらいが多い。それがデシジョンできないものだから大企業というのはなかなかうまくいかない。

 60代の人たちは、そういう教育を受けてない。だから、その人たちに理解しろということ自体が、一般論から言うと難しい。ギャップをどうやって埋めれば良いかは実は大問題です。

(委員) 海外との違いというところで、例えばこの中間報告の全体のトーンというのは、いろいろなものの整備は民間に任せる。公権力の方は企業活動の最大限な自由を図る形になる。それは正しいと思うが、かといって何でも民間に任せていると、前へ進むものも進まないのではないか。特に手続のところです。例えば港のところでいうと、日本ではシガックスというのが去年の10月から始まりましたけれども、あれはやっても良いし、やらなくても良いという選択制です。

 例えば今どういうことが起こっているかというと、このシステムで通関業者と銀行と税関と海運事業者とターミナルを全部つないでいるということですが、海運事業者が税関に対して「こういう貨物を積みます」と、カーゴマニフェストの情報をあげるわけです。だけど海運事業者はその情報を誰からもらったのかというと、通関業者からもらっている。通関業者は、データとしてくれる人もいるし、くれない人もいる。海運事業としては税関の方にデータとして上げないといけない。ではどうするかというと、場面によっては通関業者の代理として海運事業者がドキュメントのデータを打ち込んで税関に出す。そういったことが現に起きている。

 そういうことから言うと、「とにかく繋ぐ」ということがなかなかできない。例えばシンガポールは「これでないとだめ」とかいう規則がある。あるいは、アメリカでも通関システムについては全部電磁的なもので、書面では一切認めない。そういったところで、手続的なことについては誰かが主導権をとっている。誰かというと、公になっている。これでやりなさい、これ以外だったら受け付けません。こういったことをどこかでやらないと、つなぐとか標準化といったことはできないです。

(委員) 全く賛成です。当初送っていただいた素案には、政府部門の情報化についていっぱい書いてあるのに、今回はバサッと削ってある。どうしてか。

(事務局) 特に他意はない。良くわかりました。

(事務局) 今のお話は試行期間だから、そういうふうに自由に、どっちでもいいですよということになったのですか。

(委員) シガックスですね。試行期間ではなく、本格運用だが、どちらでも良いことになっている。

(委員) 日本の場合は、ついてこれない業者がいたり、業界が反対する。

(委員) さっき団塊の世代にどうやってインターネットを習熟させるかというお話があって、本当に習熟させるのであれば、インターネットを使うことによってお金を稼ぐとかいうことではなくて、インターネットを使わないと生きていけませんよというような状況にすればできると思う。それは一般のレベルではやってはいけないことだと思いますし、不適切だと思う。例えば住民票の登録も全部インターネットでないとだめとすれば、おのずとインターネットを使わないといけないという状況になってくると思うが、不適切だと思う。

 しかし、企業のレベル、特に手続のレベルについては、ほかは一切認めないというようなことをするべきです。それをどういう場面で使うというのは注意しないといけないと思いますが、そういった決断とか力が必要ではないか。それは民間、あるいは民間の業界団体といったところに任せては、なかなか前には進まないと思う。そこを目標化することも不可能ではない。

(委員) 日本は、今、学校でインターネットをやっています。米国等でもやっていて、米国は2000年度中に各教室がインターネットに繋がる。そういう意味では、日本は学校にインターネットを接続するといっても、まだ学校にどこか1カ所しか接続する部屋がない。我々の小学校のころは、リスニングの勉強をするような部屋があって、記憶では年間2回か3回しかそこの教室へいってやったことがない。各学校にインターネットにつながる部屋が1つしかなかったとしたら、きっとそれと似たような頻度になってしまうのだろう。そういう意味では、まだまだ全然足りない。

(委員) 99年にクリントンがそれを言いましたよね、「一般教書」ですべての中学校に導入する。例えば首相などの要職の方はインターネットに対して具体的な目標で触れられたことが今まであまり見たことがない。施政方針演説も満足に聞かない。だから、インターネットのステータスはすごく低く、言及するような存在にはまだ日本ではない。

(委員) 国のコンセンサスの取り方という中で、ITが重要視されることはわかっている。でも、それが本当にいいことか悪いかという議論において、日本は分かれます。上海は飛行場も大きい。あそこは共産圏だということを全く意識してない。現地の方に聞いてみるとほとんど意識したことがない。でも、1個だけ意識したことがある。何かというと高速道路がまっすぐ作れる。あるときここに道を作るといったら、家がみんな退いて道が走っている。あとは割合自由経済で活力がある。

 すべてにコンセンサスを得ながら、しかも多様化している価値観の中で国を進めていこうと思ったときに、徹底的に自由市場原理で、道は作りました、あとは市場原理で勝手にやって生き残ってくださいというのか、みんなをコンセンサスでここに引っ張っていくのか。そのときにインターネットの世界というのは、物理的な道はありませんから、作るのであればハイウェイでもボーンとつくって、あとは自由競争で自由にやりなさいというふうなことなのか。それとも規制の路線をきちっと決めるとか。そういうのがないと、全体のコンセンサスへのスピードというのは、世界はクリアに動いている中で、日本では、意思決定のスピードを含めて、そのこと自体が問われてしまうことだと思う。そうすると、その分だけでもまず速く走らそう。ベストプラクティスだってできるところからやっていかないと大変なことになるという感じを持ちます。

(委員) お話をお伺いしていて、整理しますと、第2章と第3章の関係を明確にする。第2章に夢にイメージを入れる。

 それから、緊急アピール的なことはあった方が良い。とにかくつながっていくことのメリットは極めて大きい。しかも、安心感とか信頼感を持てるようなつながり方がほしい。

 どこでもつながっていることが大事だけれども、その中に格差があってはいけないということではなくて、どこか特定の地域が戦略的にほかのところよりも高いところを目指そうとされたら、それはそれでやっても構わない。これは物理的なインフラストラクチャーもそうですし、制度的なインフラストラクチャーについても、どこか特定の地域が高いところを目指そうとされるなら、それを支援するぐらいでいいんではないかというような話。

 あと、国として、政府の電子化が極めて大事で、つながるという中にはいろんな手続レベルでもつながるということが大事で、官と民の間が手続的にシームレスにつながって流れるような状態が重要、ということですね。

(事務局) 次回までにまた皆さん方にお送りさせていただいて、できるだけ大きな問題は把握しておきたい。

(委員) 全部取り込むのは難しいので、皆さんの貴重なご意見を踏まえて、できることを考えていただければと思います。ちょっと乱暴でしたけれども、本日の議題についての議論はすべて終わったということにさせていただきます。追加すべきことがありましたら、事務局まで電子メールなどによってご連絡いただけましたら幸いです。

 中間報告の取りまとめとして5月18日に開催を予定しておりますが、正式な開催通知を事務局の方からご連絡させていただくという段取りでございます。それでは、長時間にわたりまして熱心なご議論をありがとうございました。

(本議事録に関する問い合わせ先)
経済企画庁 総合計画局 社会資本班
電話:03-3581-0764