人口減少下の経済に関する研究会(第4回)議事概要
1.日時:
平成12年4月19日(水)10:00~12:00
2.場所:
経済企画庁総合計画局会議室(732号室)
3.出席者
(委員)
橘木座長、井堀委員、岩田委員、小川委員、小塩委員、外谷委員、永瀬委員
(事務局)
牛嶋総合計画局長、永谷審議官、塚田審議官、藤塚計画課長、山崎計画官、大脇計画企画官、太田計画官、
(説明者)
石川主任研究員(ニッセイ基礎研究所)
4.議題
- 1)歴史からみた人口減少の経済社会への影響
- 2)人口減少下における資源の活用と生産性の向上
5.会議経過
「歴史からみた人口減少の経済社会への影響」の説明者及び事務局より「人口減少下における経済に関する研究会」の配布資料について説明が行われた後、自由討議を行った。
6 討議の概要
1)歴史からみた人口減少の経済社会への影響
- 人口減少下においては構造改革が必要としているが、構造改革は人口増減にかかわらず必要なものではないか。
- 高齢化が進展する中で保有資産が大きくなる。
- 人口減少の移行期過程において、資産の増加が生産性を上昇させる面にも注目すべき。
- 「現在の少子高齢化の状況はローマ帝国の末期と同じではないか」という説への評価も欲しい。
- アイルランドとアメリカの移民の行き来は、両国ともプラスに働いたが、この事は日本も移民を受け入れるべきだとする主張の論拠となり得るものと考える。
- アメリカへの移民は一次がアイルランド、二次が南欧からの移民であるが、南欧からの移民の一部はマフィアとなって、アメリカ社会に影を落とした。
- アイルランドの移民先は当時の経済最高水準国イギリスではなく、アメリカであった。これは英国におけるアイルランド人差別があったためである。日本が移民を受け入れた場合に、例え経済水準が高くても移民しやすい環境を整えない限り移民の増加は期待できない。
- 当時アメリカは資本(土地)が潤沢であり、アイルランドは労働力が潤沢であった。当時は貿易が盛んでないため移民により調整することで、移民コストがあっても両国にとって大きなプラスとなった。しかし、現代においては貿易及び、国際的なR&D投資を行うことで必ずしも移民に頼らなくても良いのではないか。
2)人口減少下における資源の活用と生産性の向上
- このシミュレーションに高齢化による貯蓄の低下が織り込み済みであるとすれば政策努力による成長率引き上げは一人当たりで0.3%、全体でも0.5%程度で済み、さほど深刻ではない。
- このシミュレーション結果で貯蓄率の動きがどうなっているかをチェックする必要がある。
- 技術進歩率がゼロと置いて、GDPがこの程度のマイナスで収まるならば私はまずまずであると考えるが、一般の人はどんどん貧しくなると考えてしまうのではないか。技術進歩率をある程度プラスに与えたシミュレーションも併せて提示した方が良いだろう。
- 日本の過去における技術進歩率は1~2%。このシミュレーションの成長率は年率でマイナス0.5%程であるので、90年代の技術進歩率0.5%を仮定してもプラス成長か、ゼロ成長程度は確保できるものと考えられる。
- 今後は定年制の撤廃等、労働力の裾野を広げるような政策が必要ではないか。
- 個々の産業の生産性を高めるケースだけではなく、より成長性の高い産業へ資源配分したケースを示してみてはどうか。
- 人的資本を多く持つ労働者を知的資源をより必要とする分野に重点的に配分したり、年齢に応じて仕事が変わっていくなど、労働者の効率的なアロケーションが達成された経済の姿を示してみるのもおもしろいのではないか。
- 人的資本形成やR&Dはかつては会社が行ってきた。会社に人的資本形成を行う余裕が無くなり、かつ資料にあるように個人が負担するにのは苦しいのであれば、今後は誰が負担するのか。
- 中高年の雇用延長は議論されているが、つい最近まで中高年の勤続年数は伸びていた。一方、若年層の勤続年数は短くなっており、若年層の気質の変化もあるだろうが、初職に恵まれない為にやめざるを得なくなっている面もある。若年層の求職問題も真剣に考える必要がある。
7 次回以降日程
第5回 5月10日(水) 10:00 ~ 12:00
開催地及び第6回研究会は今後決定する。
なお、本議事概要は、速報のため、事後修正の可能性があります。
(連絡先)経済企画庁総合計画局計量班
鮎澤 大橋(03-3581-1098)