第4回世界における知的活動拠点研究会

議事録

時:平成12年4月14日
所:経済企画庁官房特別会議室
経済企画庁

第4回 世界における知的活動拠点研究会 議事次第

平成12年4月14日(金)13:00~15:00
経済企画庁官房特別会議室(729号室)

  1. 開会
  2. 「世界の知的活動拠点」となるための環境整備について~その3
    プレゼンテーター:椎野委員、伊藤穣一委員、松岡委員
  3. 閉会

【配布資料】

  • 資料1   世界における知的活動拠点研究会 委員名簿
  • 資料2   椎野委員 意見発表資料
  • 資料3   伊藤穣一委員 意見発表資料
  • 資料4   松岡委員 意見発表資料

参考資料  「世界の知的活動拠点」となるための環境整備についての論点(案)

世界における知的活動拠点研究会 委員名簿

  • (座長) 伊藤元重       東京大学 大学院 経済学研究科 教授
  • 伊藤穣一       株式会社 ネオテニー 代表取締役社長、株式会社 インフォシーク 取締役会長
  • 植田憲一       電気通信大学レーザー新世代研究センター長・教授
  • 加藤秀樹       構想日本 代表、慶應義塾大学 総合政策学部 教授
  • 川島一彦       東京工業大学 工学部 教授
  • 北原保之       AOLジャパン 株式会社 常務取締役
  • 椎野孝雄       株式会社 野村総合研究所 リサーチ・コンサルティング事業本部長
  • 杉山知之       デジタルハリウッド 株式会社 代表取締役社長
  • 田中明彦       東京大学 東洋文化研究所 教授
  • 林紘一郎       慶應義塾大学 メディア・コミュニケーション研究所教授
  • グレン・S・フクシマ アーサー・D・リトル(ジャパン)株式会社 代表取締役社長
  • 松岡正剛       編集工学研究所 所長、帝塚山学院大学 教授

〔 座長 〕 それでは、まだこれからいらっしゃる方もあるかと思いますけど、お時間ですので始めさせていいただきたいと思います。

 ただいまから、第4回世界における知的活動拠点研究会を開催したいと思います。本日は、「世界の知的活動拠点となるための環境整備について~その3」として、A委員とB委員にまず意見発表していただいて議論をして、そのあとさらにC委員から意見発表していただいて、ご議論していただきたいと考えております。

 最初に事務局の方から配布資料について説明をしていただきます。

〔 事務局 〕 それでは、配布資料の確認をさせていただきます。資料2がA委員からの発表資料、資料3がB委員からの発表資料、それから資料4がC委員からの発表資料でございます。

 それから、資料番号を付してございませんが、「産官学共同における留意点」と題するD委員からのメモがございます。これは前回の議論に関連いたしまして、メモをお作りいただいておりますので、皆様方にも配付させていただくという趣旨であります。

 それから、もう一つ参考資料でございますが、「「世界の知的活動拠点」となるための環境整備についての論点(案)~その3」ということで、本日ご議論をいただくテーマについての論点を整理したものであります。論点が二つありまして、一つが多様な知の交流と統合に関するものでありまして、世界規模で多様な知恵が交流し、刺激し合うことで新たな知恵が生まれるということ。また、特にこれから知の創造・発信の担い手として、インターネット上のボランタリー組織が大きな役割を果たすということから、より多くの人がインターネット上の参加型社会の価値生産に参加できるような基盤整備、あるいは大学の国際化など世界規模の多様な知恵の交流が必要だということ。この際には、既存の分野にとらわれずに、さまざまな分野の知の統合・再構築が必要ではないかということ。

 これに関連いたしまして、方法論の確立とありますが、言葉づかいが必ずしも適切ではないかもしれませんが、こうした知の交流と共有が円滑に行われるように、知の創造から発信に至る一連の過程を明らかにするメソドロジーの確立によって、相互の理解可能性を高めていく必要があるということ。この際のツールとして、これまでのアメリカ型ではなくて日本初のツールを開発すべきだということ。特にこの点に関しましてC委員のプレゼンテーションをお願いしている次第であります。

 それから、もう一つのテーマが2ページにありますが、「独創的なビジネスの展開を通じた知恵の創造」ということでありまして、2ページの四角の中にありますように、新しいビジネスがいろいろと生まれてきておりますが、こうした知恵を企業戦略の柱として位置づける独創的なビジネスの展開を通じて、知的活動拠点を形成するという要素があります。こうしたビジネスの積極的な展開を可能とするような参入コストの低減などの施策が重要ということで、3ページに多様な主体が容易に参入できる、あるいは異業種連携が柔軟にできるような規制緩和ですとか、IRの充実などによりベンチャー企業向けの資金供給システムの拡充、大学の研究成果を基にした新たなビジネスの展開を促進するための大学等との連携の強化、話題の電子商取引にかかわる環境整備といった事項をいろいろ並べてございます。これらに関しましてはA委員、B委員からのプレゼンテーションをお願いしているところであります。

 それから、最後に委員会限りの資料がございまして、中間とりまとめの素案があります。これは次回に中間とりまとめについてご議論いただくわけですが、あらかじめ配付させていただいたという趣旨でありまして、最後に若干お時間をいただいて、この構成などについてご説明をさせていただきたいと思っております。事務局からは以上でございます。

〔 座長 〕 どうもありがとうございました。今の参考資料について、また議論の中で必要に応じてコメントをいただきたいと思います。

 それでは、最初にA委員と、B委員から続けてプレゼンテーションしていただいて、そのあと討議に入らさせていただきます。プレゼンテーションは討議時間を確保するため、それぞれ20分程度でお願いしたいと思います。

〔 A委員 〕 プレゼンテーションということでしたので、パワーポイントで資料を用意しております。「ネットワーク型社会における新たなビジネスの創出」ということで、今日のテーマに合ったような形でプレゼンテーションをしたいと思います。

 最初に、全体のストーリーとして何を話すのかというところを確認させていただくと、最初に現状のインターネット利用の姿ですが、モバイルやゲームといったような欧米型でない新しいネットワーク型社会の姿が、日本で非常に先行的に進むのではないか。それによって、知恵の表現の場や伝達手段は非常に充実していて、どんどん伝達できて、多くの場で表現できるようになるだろうという話をご紹介します。

 そういった場で、ではどういう知恵を発信して交流していくのかといったところで、一つの例として日本での生産が拡大しそうなコンテンツであるゲームについてご紹介します。さらに、ただこういったものの生成や交換を促進するために、どういう場や機能が必要かという点について最後に触れてみたいと思います。

 最初、ここにあるのは皆さんご存じのインターネットが、どういうふうに、どれだけ使われているかという話です。インターネット人口は、1999年3月現在で約1,350万人。現在では約1,800万人の人がインターネットに触れていると言われています。ただ、これは家庭・オフィスを含んでの数なので、家庭だけだとこの半分ぐらいになると思います。

 これに匹敵する、もしくはこれ以上のものとしては、例えばNHKのBSですと1,327万世帯ということでかなり普及していて、これがこれからデジタル化するということでコンテンツの発揮の場としては非常に有望であると期待されています。携帯電話が4,700万台、これも今年でもう5,000万台を超しているわけですけれども、こういった携帯電話などが有望視されたり、ゲーム機が有望視されるということで、ほとんどの世帯でこういった新しいタイプのコンテンツを見たりすることができるようになるということが予想されています。

 野村総研で予測しているインターネットのユーザー数は、2005年ぐらいには4,000万人ぐらいということで、現在の3倍ぐらいの普及をみると予想しております。

 この点で日本が特徴的なのは、日本のインターネット接続端末数で、今はこういうビジネスPC、ホームPCというパソコン系の方が多いんですけども、我々の予想では、パソコン系とパソコン以外、これは非PCと書いてありますけれども、PDA、携帯電話、ゲーム機、情報家電といったパソコンでないインターネット端末の数とパソコンの数が来年ぐらいに大体同じぐらいになる。2002年ぐらいになるとパソコンよりそういう携帯電話やゲーム機でインターネットをやる方が多くなって、今後は非PCが主流になっていくと予想されます。

 アメリカですとPCでインターネットをするという環境になってきたわけですけれども、日本の方がこの非PCでインターネットをする、いろいろなコンテンツを見るといったような現象が世界でも一番早く進むのではないか。この辺が世界における知的活動拠点を考えるうえでのキーポイントではないかと思います。

 また、端末だけでなくて途中の伝送手段としても、ここにありますようにBSデジタル放送がもう今年の12月に始まったり、データ放送も同時にできたり、衛星を使ったモバイル放送や地上波のデジタル放送、ネットワークゲームの仕組みの開発、CATVによるインターネットネットワークの発展、それから来年からはIMT-2000と呼ばれる携帯電話の高速データ通信ができるようになることなど、コンテンツを伝送する環境も、もう今年、来年あたりからどんどん発達してくるでしょう。さらにこの伝送環境についても世界より日本の方が先駆けてどんどん進むことが予想されます。

 その結果、2005年ぐらいになれば、こういったような形で家でのテレビやゲーム機やパソコンが、衛星や地上波デジタルや携帯経由でネットワークで繋がって、いろいろなコンテンツがどこでもかしこでも見られるという状況になると予想されます。つまりコンテンツを利用する時間やコンテンツに触れる機会が増えるので、コンテンツを利用する量も増えていく。端末もいろいろな端末が使えるようになり、伝送手段も高帯域で、どこにいても使えるようになり、コンテンツを使う時間もどんどん増えることが予想されます。

 さらに2010年ぐらいには、我々はユビキタスネットワーク社会と言っていますが、どこでもいつでもいろいろなものがネットワークに繋がって、そのコンテンツが使えるといった状況が実現するだろうと予想しています。こういった中でビジネス的に見ても注目されているのは、ハードやネットワークのコストがどんどん安くなるということです。ハードに関してはご存じのようにフリーPCといってパソコンをただで配るというケースがあり、サーバも最初から買うのではなくて使った分だけのレンタルというように、安く提供されるようになってきております。ネットワークについても前は高かったんですが、インターネット・サービスプロバイダーが無料でISP事業を行うこともあるし、携帯電話も広告を聞けばただで使えるといったケースもある。このようにハードもネットワークのコストもどんどん安くなって、ただになっていくことが予想される。その一方で重要になってきてお金が払われるのは知恵やサービスといったものです。

 こういった中で、今、非常に注目されて、かつ日本での生産が拡大するコンテンツの一つとしてゲームが注目されているのではないかと思います。これらが世界に先駆けて日本から始まると思われますが、日本発でゲームコンテンツが拡大する背景は、今のようにどこでもかしこでもネットワークに繋がって、かつ端末が増え、ゲームを楽しむ環境が広がることです。ゲームを楽しむ場所や端末が増えるということで、今までの据え置き型のゲーム機やゲームセンターだけでなく、モバイルでネットワークにつないでゲームで遊ぶなど、ゲームをする時間やきっかけが増えるので、そういったコンテンツが非常に必要になってくると予想されます。

 ゲームプレーヤーも、今まではマニア的な人がやると言われていたものが、こういった時間つぶしでどこでもできるということで、ゲームプレーヤーの層、裾野が広がって数が増えるということも言われています。

 あとはゲームの種類が広がるということで、今までの普通のゲームだけでなくて、最近では会話を楽しむゲームや、音楽を楽しむゲームなど、いろいろなゲームができるようになったり、ゲームを楽しむいろいろな端末が出てくるということで新しいゲームがどんどん開発されると予想されます。

 その他に注目しているのは、ゲームソフトを開発する環境が整備されるということで、今までだと任天堂のゲーム機用のゲームとなると、それ専用の開発ツールキットを買ってやらなくてはいけないということで、かなり投資が必要だったわけですけれども、例えばプレイステーション2のゲームソフトの開発環境だと、LinuxというフリーのOS上で開発できるということで、開発の環境が安くなり、誰でもゲームソフトが作れるようになります。新しいアイデアを持った人がゲーム開発に入ってこれるようになるということで、またいろいろアイデアのソフトが出てくるだろうと予想されています。

 また、こういったところに、いろいろなお金や大企業も入ってくるということも予想されています。こういったインターネット環境をうまく使ったり、インターネット環境に繋いでいろいろなコンテンツを見させる仕組みとして、ネットワークを通じてのゲームというのは非常に接続時間が長いということもあって、いろいろな通信事業者や機器メーカー、インターネット・サービスプロバイダーが注目しています。大手企業がこういったゲームのコンテンツをどんどん買ったり、それを自分で囲ったりする動きがあって、どんどんそういったゲームコンテンツに対する注目も増えるでしょう。

 それに伴って、専業メーカーだけでなくベンチャーもたくさん参入し、最初は安いゲームを作っていたところが、もう少し多くの資金を集めて大型のゲームを作るようになったり、株式公開でお金を集める人も増えてくると思います。

 さらに今まではゲームプラットホームというのは、日本クローズドのプラットホームだったわけですけれども、既に携帯ゲーム、例えばゲームボーイやプレイステーションがグローバルスタンダードになってきたということで、それら向けのソフトを開発する人は、マーケットは日本だけでなく世界を相手に考えることができるということになります。

 今までのプレイステーション1は、日本で作ったソフトはアメリカ版のプレイステーションの機械では動かないということがあったわけですが、これからは日本で作ったゲームも世界中どこでも動くようになり、ゲームボーイについても同じように世界中共通になります。

 インターネット上のゲームは、HTMLやXMLといったインターネットの共通言語の上で動くということで、日本でゲームを作れば世界中に売れるとか、世界中の人が遊んでくれる、見てくれるといったような環境がどんどんできつつあります。それがパソコンだけでなく、こういったこれからのインターネットのモバイルの端末として有望なゲームボーイやプレステーションで作ったコンテンツが、世界中で使われるようになります。それがすべてネットワークで繋がって、世界中から入れるようになってくることが予想され、日本に場を作れば世界中からいろいろな人が集まってきて、知恵やコンテンツを出し合えるという環境を作れるのではないかと思います。

 実際、今、任天堂のゲームボーイですと、日本では大体2,000万台、海外では約5,500万台で、世界中で約8,000万台も出ています。これだけの数を相手にコンテンツを作るということが日本発でできるのではないかと思います。プレイステーションの場合も、世界中で約5,500万台出ていて、これからプレイステーション2がそれに置き換わっていくわけです。

 私としては、まずゲームボーイが非常に小さいので、逆にコンテンツも作りやすいという特徴もあり、これから新しい人がどんどんゲームボーイ用のコンテンツを作って、そこでまた腕を上げた人がプレイステーション用のコンテンツを作っていくといったような形で、どんどん世界中にコンテンツの発信ができるようになるのではないかと思います。

 こういった形で携帯型ゲーム機、アメリカのPalm社のPalmが業界標準になっているPDA、携帯電話上でのiモードといったようなゲームを楽しむプラットホームの標準化が進んできており、これ向けのゲームを作れば世界中の人が使ってくれるといったような環境ができると思います。

 ソフト面では、こういったゲームの開発環境についてLinuxで作れるとかWindowsで作れるとかJavaで作れるとか、アマチュアでも開発可能な、それこそ高校生でも作れるといってよいような環境になってきております。

 流通についても、すべてのものがネットワークに繋がっていますから、ネットワークでゲームをどんどん配信することができるようになって、作ったコンテンツを全世界に発信することがこれからは非常に容易になってきます。こういったことから、日本を中心にしていろいろなコンテンツを交流できる環境を作れるのではないかと考えます。

 実際、今、パソコン関係のシェアウエアやフリーウエアのサイトを見ると、多くのソフトがどんどん作られてアップロードされているわけです。パソコンのゲームはまだそんなに日本では発達していないわけですが、こういったようなものがゲームボーイ用とかプレステーション用とか、あとはiモード用などにどんどんできてくれば、非常に活発になるのではないかと思います。

 どんどん作られるコンテンツを普及するために、どういう仕掛けが必要になってくるのかというと、やはりコンテンツを集めて、ここに来ればそういったコンテンツが全部選べるといったような場が必要だと言われています。こういったコンテンツやサービスをあるカテゴリーで固めた場と、そういったようなサービス事業者をアグリゲータと呼んでいて、具体的にはダウンロードサイトや映像をたくさん集めたサイト、ネットワークゲームのサイト、もしくはいろいろなオークションを集めたeBayのサイト、いろいろなショップを集めた楽天市場などがアグリゲータと言えると思います。

 このようにここに来れば何でも手に入るといったような、集める機能が必要だと思います。どんどんみんながコンテンツを出し合い、交流し合うということが重要な要素になるのではないかと思います。

 こういった形で情報化社会や技術革新に期待してお金がどんどん流れ込んでくるといった良い循環があって、こういったゲームや映像やアミューズメントなどのコンテンツがどんどん拡大してくる。モバイルやゲームを使うことが、今、日本が世界の中でも非常に先進的であり、日本から発展が起こる可能性がある分野ですので、そういった分野におけるコンテンツ拡大を今後促進していくことがいいのではないかと思います。

 最後に、こういったコンテンツなりゲームなり知恵なり、そういったものの活発化に対して必要なものは何かと考えたときに、それらを物流することに関しては、高速でどこでも繋がるネットワークが整備されてきている。発表の場としては、それを発表する放送サービスや標準化された表示や情報の端末がもうできつつある。

 標準的な製作手段としては、インターネットのHTML、XML、音楽ではMP3、映像ではMPEGなど、標準的な提供のスタンダードができているということで、あとはこういったコンテンツなり知恵を集める場としてのアグリゲータが必要です。集めて交換するだけでなくて、さらにそのコンテンツの中身の評価づけをしてあげて、どれがいい、どれが悪い、もしくはどれが一番使われているか、何回使われているかという評価をつけて、そういった知恵なりコンテンツの交換をしてくれる場を、誰かが作らなくてはいけないのではないかと思います。

 これをもちろん民間が作るという話もあるわけですけれども、例えば高校生のための場を作るとか、特別なカテゴリーの人たちのための場を作るとか、そういうところに行政が入る可能性もあるのではないかと思います。

 あとはその中でコンテンツを交換をしたときに、貨幣として使えるようなもの、これは普通のシェアウエア、フリーウエアのサイトは200円や300円ぐらいの現金で行うわけですが、エコマネーのように、現金ではないけれども、どれだけ自分が貢献したか、もしくはそこにコンテンツを提供して非常にヒットしたら信用が得られたといったような、貨幣みたいなものをこの中で流通させることも考えられる。それによってその人がみんなから評価されているコンテンツを作っているとか、それが貯まることでその人の技術力の信頼が得られるなど、そのコンテンツの制作者の評価をして、高めていく仕組みも、このアグリゲータの場の中では導入する必要があるのではないかと思います。これはうまく市場経済的な考え方を取り入れた仕組みではないかと思います。

 このような日本からの情報発信で、知的活動拠点を作れればいいのではないかと考えました。

〔 座長 〕 どうもありがとうございました。

 それでは、続けてB委員の方から、よろしくお願いいたします。

〔 B委員 〕 まず、大きい話からさせていただきますと、かなりちゃんとした産業革命が、今、世の中で起きてきているが、製造業と流通業を中心としてきた日本は、まだ本当の情報産業は動いてないのではないかと思います。日本は情報産業を中心とした製造というのはたくさんあるのですが、実は情報産業はまだ成り立っていないと思っていまして、多分この2年間ぐらいのあいだで情報産業とそれを支えるインフラができなければ、かなり日本は危機に陥るのではないかと思います。

 産業革命の前は土地がたくさんあれば、それが権力になってそこで植物を植えることができたと思うのですが、産業革命が起きたあとは基本的にキャピタルが中心で、キャピタルがあると製造を拡大でき、キャピタリズムのマーケットができたと思います。

 今のLinuxはすごくいい例だと思いますが、今はキャピタルよりもどちらかというと信用や知恵や知的財産の方がよっぽど価値が出てきて、本当にこの数年間で大分世の中が変わってきたと思います。今まで現金があれば必要なものは何でも買えたのが、今では買えないものがたくさん世の中に出てきて、この買えないとても重要な知的財産をどうやって我が国で育てるのかということが、ちゃんとした国として成り立つかということに関する重要なポイントだと思います。

 これは実はすごく深い問題で、日本の政治や行政や教育が、すべて製造とその流通を中心とした考え方をベースにしてできているわけなので、Linuxみたいな会社はなかなか日本から生まれない環境になっているわけです。

 今のインターネットベンチャー、例えば先ほど出てきたeBayのような会社が日本で生まれてきて、そういう会社の中でそういう知的財産を作っていく人間や考え方が生まれていくと思います。このベンチャーのマーケットも、うまくやらないと日本では成功しないと思います。アメリカはかなり長い歴史の中でシリコンバレーのベンチャーブームが起きて、たくさんの会社が生まれてアメリカをどんどん情報産業の方に引っ張って行っている。

 日本はそんな歴史がなく、今、急いでベンチャーブームを作っている。多分ベンチャーごっこぐらいにしかなっていないわけです。実際、日本の経営者を見てもアメリカの経営者のレベルよりかなり低い。私みたいな経営者はアメリカにはいくらでもいるわけです。そういう環境の中でキャピタルマーケットがあって、そこで新しいアイデアを中心としたベンチャーがどんどん育っていっているわけです。

 日本はとりあえずキャピタルは集まってきた。数年前だととにかく未公開企業に対してはなかなか投資は集まらなかった。光通信やソフトバンクみたいに営業を中心としたキャッシュフローがある会社が、インターネットベンチャーにスピーディーに投資していったり買収していくということで、インターネットに一番先に出てきたわけです。

 日本のベンチャーは、比較的アメリカの成功したモデルを真似したり、営業を中心としたビジネスモデルを育てていっているわけですが、そこからやはりとんでもないアイデアが生まれてくるというケースは比較的少ない。

 本当に日本でこれから必要なのは、日本ならではのいろいろなアイデアだと思います。さっきのスライドにも出てきていましたが、日本ではゲームや携帯端末やカーナビなど、日本ならではのマーケットはたくさんあり、その周辺でいろいろな事業をこれから興していくことができると思います。

 ただ、アメリカの大企業は、もう完全に自分の会社をeビジネスに切り替えてリストラして一点集中して、だんだんインターネットベンチャーと競争できるぐらいポジショニングを変えている。残念ながら日本の大企業のシステムはそれほど機動力がないのであまり期待できないと思います。大企業にそれはあまり期待できないと思います。大企業はせいぜい自分たちの会社の中にある資産をうまくベンチャーに使っていただいて、それでインターネットスペースに入っていくと思います。

 一番日本に足りないのは多分人材です。アメリカのモデルなど、新しいモデルがたくさんあるのでアイデアはいくらでもあるが、一番足りないのはやはりプロフェッショナル・マネージメントと技術者です。これは多分今から日本で育てるのはなかなか大変です。いろいろ我々も調査しましたが、アメリカだと大体30代ぐらいでMBAを持っていて、実際どこかの会社できちっとした数字の責任を持ったことのある、経営者にすぐなるような人材はいっぱいいますが、基本的に日本の大学ではあまり自分で何かやるという教育を受けておらず、大体40歳を過ぎないと会社の中でも数字の責任を持たせない。弁護士もアソシエートのレベルだと、きちっと自分で責任を持ったオピニオンを書かない。大体45とか50にならないと本当に経営者としてのタマかどうかというのは試されていない。

 したがって、かなり若手ベンチャーアントレプレナーという層は基本的に日本にはいない。一方で、外資のベンチャーファンドは日本に向かってきてはいるが、ほとんど投資していない。外資のファンドは、マネージメントフィーはファンドの大きさのパーセンテージで取りますので、大体最低でも5億ぐらいは投資したいというファンドが多い。今の日本のベンチャーは、5億を投資してもいいぐらいまで整っている会社はなかなかない。そういう意味で外資はなかなか投資できていない。

 日本のベンチャーキャピタルの場合はどんどん投資してしまって、投資を受けた会社で潰れてしまっている会社がたくさんある。投資を受けて使ってしまって、次に増資しようとしたときには、大体ベンチャーキャピタルの契約だと自分たちが入れた時価総額以下では株を発行できないので大体そこでもう終わってしまう。なかなかベンチャーキャピタルもお手伝いできない。今、日本のベンチャーキャピタルを運営しているファンドマネジャーは、中には何人かいますけれども、基本的には金融からきたサラリーマンがほとんどです。実際にベンチャーを立ち上げるのをお手伝いしたり、お客さんを見つけてきたり、困ったらリストラしたりということができない。

 アメリカで最近インキュベーターというビジネスが結構伸びてきて、もう数百社あると言われています。インキュベーター業というのはどういうことかというと、アントレプレナーの最初のシードファンドを投資して、その立ち上げをお手伝いするものです。アメリカで言うとCMGIという、インターネット広告を中心としたいろいろな会社を育てていった会社がありますし、ビル・ブロースという人がアイデアラボ(idealab!)という会社を作って、自分が考えたアイデアをどんどんスピンアウトしていくというケースもあります。それからICG(Internet Capital Group)という会社がBtoBを中心としたいろいろな会社に投資してシナジー効果を求めるというケースもあります。

 インキュベーターはファンドとホールディングカンパニーとコンサルティング会社が合体したみたいな組織になっています。私も12月から新しく自分の会社をこのインキュベーター業にしました。実は日本の方がアメリカよりインキュベーターのニーズがあります。アメリカのシリコンバレーはそれ自体がインキュベーターです。そこには、自分の事業を立ち上げようと思ったら、スタートアップ向けの事務所もあるし、スタートアップ向けの会計士もいるし、スタートアップ向けの弁護士もいる。株を渡したら成功報酬でお金は取らないという業者もいる。また社長がいなくても仮でコンサルタントの社長をやってくれる人もたくさんいるので、すぐスタートアップ事業ができる。日本だと多額の資金が必要だったり、商法がものすごく難しかったり、弁護士の先生の選び方がわからない、人もなかなかリクルートできないなど、スタートアップのところでいろいろなことに時間を費やしてしまう。アメリカだとアントレプレナーはスタートアップの時間の半分ぐらいを事務所探しや普通の雑用に費やしているが、日本はもっと多いと思う。多分最初の2ヶ月のほとんどの時間は、そういう自分のコアビジネスを作るのではなくて周辺のインフラを整えることに費やしていると思います。

 そういうわけで、まずインキュベーターの一つのポイントは、明日からでも入れる事務所と、ITのコンサルティングや、会計士、弁護士がいて、広報部や営業部など、大企業にあるような部門が全部あって、それらのリソースを、投資した会社に全部提供するということです。

 それとアドバイスの部分が必要で、私どもは、今まで日本でいろいろな会社を作っていった中で、こんなことがあったらよかったなということを全部束ねて、スタートアップ企業に提供しようとしています。

 重要なのは、最初に自分側についてくれて、資本構成などを考えてくれる人です。そのような信用できるアドバイスをしてくれる人は日本にいない。インベストメントバンクやベンチャーキャピタルにいくと、基本的にはベンチャーキャピタルというのは安く買って高く売るわけですから、その最初の出会いのところから、今の日本のアントレプレナーとベンチャーキャピタルは信用の関係が持てない。そのあいだに立つアドバイザリーの役目をインキュベーターが行います。

 我々の会社は12月に20億円増資して、来月か再来月にあと100億円ぐらい増資するんですが、これはファンドではなくてうちの資本金に組み込んで、その中の4割を、リソースの提供のオペレーションズの方に使います。残りの6割は投資にあてます。その投資をする部門とオペレーションズの部門があって、投資する部門は大体商社から引き抜いてきた若い事業開発系の人たちが、いろいろな新しいベンチャーを見つけてきたり、いろいろな人をリクルートしてきたりする。そこにインベストメントバンクから引っ張ってきた人たちが投資していろいろなリソースを提供するというシステムです。

 もう一つリサーチ部門があります。これもやはりベンチャーキャピタルではできない。我々のリサーチ部門はLinuxの研究をやっていたりXMLの研究をやっていたり、かなり中長期のリサーチをしています。そのリサーチを活かし、これから面白くなるべきところとか、まだベンチャーキャピタルがわかっていないようなところに我々はシードとして入っていきます。

 我々の会社は12月に立ち上げたばかりなので、まだ10社ぐらいしか手掛けていないのですが、ほとんど全部の会社は我々のシステムに入ってとても喜んでいます。最低3ヶ月ぐらいスタートアップまでのスピードがアップしています。今日本は多分ベンチャーバブルになっていて、1、2年のあいだにはバブルは一旦はじけると思います。そして4、5年先に本当の山がくると思います。というのは、いくら不景気になってバブルがはじけても、また鉛筆と紙に戻るわけがなく、本当に底力があるIT革命というものが今起きています。我々は、4、5年先にきちっとした会社を作ることに目標を置いています。

 投資家は4、5年で抜けるかもしれないが、起業家は20年先、30年先責任をとらなきゃいけないんだよということで、さらに日本が不景気なった時にも生き残れるような会社をみんなに設計させているということが、我々の事業の特徴で、かなりコンサバティブにやっています。

 もう一つ我々が特に重要だと思うポイントは、これからどんどん外資のお金が入ってくることによって透明性が必要とされるので、ちょっとやり過ぎなぐらいに対応しています。それは、プライバシーポリシーがないと公開させないとか、バイリンガルなアカウンティングシステムとして、毎月マネージメントレポートを出すとか、いろいろなビジネスプラクティスを入れて、それを卒業しない限りは次の投資家は入れてあげないなど、かなり厳しく締めているところもあります。

 それから投資についてですが、全部契約書は英語と日本語でバイリンガルにしています。アメリカのベンチャーキャピタルは、今、かなりいろいろなファイナンシャルなボキャブラリーと技術がある。アメリカだと大体優先株で、もしだめになったときには投資家が先にお金を返してもらいますが、このようにアメリカだと当たり前な投資の方法を、日本のベンチャーキャピタルは一切使っていない。もっと言うと日本の弁護士は、これは違法だとまず最初に言い切るので、我々はもう既に数千万円、弁護士事務所を教育するためにお金を使っている。定款も英語と日本語にしている。そうすると外資のお金が流れやすくなる。この外資のお金は中長期では消えてしまうんですが、短期的には、この外資を入れることによって日本のベンチャーキャピタルが多少教育される。

 このようにいろいろやらなければいけないことがたくさんあります。我々の中長期のビジョンから言うと、日本のシステムの中で、商社というものは、かなり優秀な人材と知的財産が集まったところで、何かやりたいことがあったら商社に持っていって、商社がコーディネートしていたという役割を持っていたと思います。しかし今の商社はなかなか情報産業を中心とした商社機能というのはできないと思います。

 多分また日本は不景気になりますので、その時に我々は、いろいろな企業に優秀な人材を出していって、安定した知的財産をうまくマネージメントしてコーディネートできるような企業を育てようと思っています。私たちだけではなくて数社のこういうインキュベーターみたいなものが、次世代の商社みたいな形に進化していくのではないかと思います。

 自分の会社の宣伝みたいな話ばかりだったんですけど、我々はそういう中長期のビジョンでやっております。

〔 座長 〕 どうもありがとうございました。

 それでは、ただいまのA委員とB委員のご報告を踏まえて、それから参考資料の論点(案)の「独創的ビジネスの展開を通じた知恵の創造」、これらに関してご意見、あるいはコメントをいただきたいと思います。

〔 C委員 〕 日本の今のゲームというものが、知的活動拠点のある種のソフトウエア、メディアあるいはツールになっていくのかどうかということはどうお考えになりますか。

 それから、もう一つ、日本ではパソコンゲームってあまりはやりませんね。ファミコンやプレステは何とかなりますが、その理由です。その部分がアメリカと日本との違いを表しているのかどうか、その辺をちょっとまず伺いたいのですが。

〔 A委員 〕 まず、後者の方、パソコンゲームがはやらない理由は、単純にパソコンの普及がアメリカよりも遅れたということだと思います。コンソール型のゲームマシンの方が値段も安かったということもあって普及が先に進んだ。ソフトウエア会社は、より端末の台数が多い方に向けてソフトを作りますから、当然普及が進んだプレイステーションや任天堂のゲーム機向けにゲームを作ったので、そちらの方が多くなった。

〔 C委員 〕 ということは、ネットワークインという考え方が日本人には定着しにくいということではないだろうということですね。単にコンソール型のゲームマシンがたくさん先に先行したからだということですね。

〔 A委員 〕 それによってそっち向けのソフトウエアがどんどんできたから、日本ではコンソール型の方がはやったと思います。

〔 C委員 〕 日本社会の特徴である地域型コミュニティというのは、今度の有珠山の爆発を見ても、阪神大震災を見ても、すぐ解体しているようで再生しますよね。ところが、電子ネットワーク上の人間関係と、そこに知的な財を感じていくという感覚というものが果たしてあるかどうかというのはどうですか。

〔 A委員 〕 今まで通信コストが高かったせいもあるんですが、最近ようやくネットワーク型のゲームなどがどんどん出てきています。

 今までパソコンでインターネット上でチャットをするなど、いろいろなことが出てきたけれども、それがこれからコンソール型に置きかわることで、日本もそういうネットワーク上でいろいろなコミュニティを作るといったことも普及してくると思います。例えば最近同窓会サイトや県人会サイトが出てきていますよね。

〔 C委員 〕 それは地縁型のもので、好縁型というか趣味的にネットワークを繋ぐというのは、俳句などたくさんあるけれども、そのままやり切れるかどうか。先ほどおっしゃったようないろいろな仕組みだけではない何かが加わらないと、背中をどんと押すということが足りないかなと私は感じています。だから県人会というのはやはり昔風なんですね。

〔 A委員 〕 あとはだからその中の評価なんでしょうね。例えば同じ趣味の団体であっても、やはりその中で誰が評価されているかというランキングのようなものがないと、フィギュアなどの世界ではこの人がカリスマじゃないけど有名だとかという、みんなから認められるような評価がないといけないと思います。何となく日本の中でそういう評価をつけるのは下手だったんですが。

〔 C委員 〕 言わないことが一種の文化と言うか、たたずまいというふうに思われていたりしていますからね。

〔 A委員 〕 やはりネットワーク上のコミュニティだとわからない人ばかりですから。

〔 C委員 〕 それは言わないとだめですね。

〔 A委員 〕 誰が評価が高いのかということを明確にしないと、やはり育たないと思います。もう一つ、ゲームが知的活動拠点のツールとなるという点については、ゲームにしろ何にしろ、一つのオリジナリティーを作る。作ってそれを世の中に発信するということの一つきっかけになるのではないか。ゲームだけでなくていろいろな美術関係のものもそうだし、それ以外のいろいろな論文もそうだし、自分で作ったものを世の中の人に認めてもらえるということのきっかけとしては、ゲームは非常に有望ではないかと思います。

〔 C委員 〕 ファミコンとカラオケがあれだけ世界を席巻した段階で、一切知的なものが出現しなかったということに、どちらかというと失望してます。だからゲームもだめなんじゃないかと思います。

〔 E委員 〕 ちょっと感じるところは、ゲームの本質は何だろうということです。ともかく何か作ったらみんなコンテンツだというのは本当に正しいのか。そこには価値判断があって、いいものでないとコンテンツと言わないということが必要な気がします。ただ、ゲームの場合、楽しめるけれども役に立たないのか、それとも役に立たないから楽しめているのかということが本質のところであります。

 だから、非常に面白くて、だけど非常に生産的で人類の役に立つというのもあるわけですけれども、本当にゲームの中からそういう方向に将来出るのか。それともまさにギャンブルみたいに、役に立たないから面白いものが必要なんだろうか。人間には自己破壊願望もあるわけですから。

 そういう意味では、知恵やコンテンツというものの定義をはっきりしないで言うことには、疑問があります。

 ここはいろいろな意味がごちゃごちゃとしていますが、刺激をすることはできるが刺激の次に何を生むかということが大事なのではないかと思います。

〔 F委員 〕 私も同じ問題意識なんですが、今までプレステとゲームボーイ、これらは海外で随分売れていますね。どこで、どういう人が買ったというのはわかるんですか。それを見れば何かヒントがないかなと思うのですが。

〔 A委員 〕 プレイステーションの場合、日本で約1,500万台、アメリカで約2,000万台、ヨーロッパで約2,000万台と、それぞれ同じ数ぐらい売れています。

 ただ、アメリカ、ヨーロッパの場合には、大体20代以下の人たちが買っていますが、日本の場合は、30代まで年齢層は広い。アメリカの場合はゲーム機をやるのは10代、20歳までで、それ以降はパソコンに移るというシフトがはっきりしているという特徴はあるみたいです。

〔 B委員 〕 ゲーム業界の人たちといろいろ話していると、インターネットで欠けているのは、ユーザーインターフェイスだとよく聞きます。

 ゲーム業界の人たちはもうコンソールなんかやっていない。ネットワークにシフトしている。インターフェイスのよさや、キャラクターのデザインを使うことや、ユーザープロファイルの効果的な引き出し等の、心理学的なノウハウは、コンソール型のゲーム開発を通じてアメリカよりも日本の方が蓄積している。

 今まで、本当に無駄な時間をどうやって償却するかというところにゲームは視点を置いていたから、比較的無駄なものがたくさんあると思います。

〔 G委員 〕 私、おととい英国とデンマークから帰って来まして、向こうで暇があってテレビなんか見てますと、ハリウッドの映画が大部分ですよね。それを通してアメリカの情報とかアメリカのことが非常に大きく入ってきます。ポケモンもやっていました。私、ポケモンを見たことがなかったんですけども、そこからは何も日本人や日本人のものの考え方は浮かび上がってこないのではないかと思いました。ゲーム機も多分そうだと思います。

 たしかにお金はもうかるかもしれないけれども、全然日本に対する共感は生まれないと思います。その辺がハリウッドの映画産業と非常に違うところではないかと思います。単にソニーや任天堂は知ってても、そこからは日本人に対する共感は生まれてこない。単に道具として使っているに過ぎない。そこをどうやったらもう少し日本に対する心理的な共感が沸くようになるか、専門家のご意見を伺いたいと思います。

〔 C委員 〕 おっしゃるとおりだと思います。だから例えば江戸300年の後半期というのは、例えばですが浮世絵というファミコンのようなメディアが爆発的に当たったにもかかわらず、日本人はそれを文化的な資産や価値とは見られなかったわけでしょう。欧化政策の中で浮世絵を捨てましたよね。浮世絵というものを心的な資産、文化的な資産に切り替えたのは欧米人です。アメリカのボストン美術館などもそうです。

 やはりこのままいくとファミコンやプレステというものは、知的な財産になり切れないままに終わってしまうだろうと思います。完全な消費財として、経済を活性化するということに関してはいいと思いますが、知的活動拠点のスコープの中に、ゲームやファミコンだけを入れていて果たしてうまくいくかという疑問はあります。

〔 G委員 〕 日本の製品で海外でうまくいっているものとしては、トヨタにしてもコピー機にしても、製品がよいのであってそこには日本の色はない。トヨタの車は大変便利だから使われている。でもそこから日本人に対する共感は何も生まれない。ゲーム機も多分全く一緒だと思います。

 日本人の書いた研究論文を見ると、「~in Japan」と最後にin Japanがついているものが非常に多い。in Japanではこうしている、in Japanではこういうのがある、と書くことによって一方では、世界ではどうかは知らないがということをいっている。そのことが海外から見ると、日本人異質論として片づけられてしまうことになりかねない。日本人は我々と違うんだからということで、日本だけの特殊な事情ではそうであっても国際的には通用しないんだよという形に見なされてしまう。国際的な視野でこのようにするといずれの国でも役に立つのだという発言に変えていかなければならない。日本人の中の気持ちのバリアを取り除かないと、国際社会で評価はされないと思います。

〔 B委員 〕 結局日本はモノと製造と流通で全部を測ってしまうので、どうしても何台売れたということに関心がいってしまう。モノの中に文化は入らない。アメリカは、カルチャーや考え方や宗教などのコンテンツを、どうやってほかの国に持ち込むかということに視点を置いていた。例えば映画などの媒体に視点があった。だから多分、日本は、価値がモノにあるというところに問題があると思います。

〔 H委員 〕 知的活動拠点の「知的」という言葉は、分解すると「文化的」という問題と、活動拠点という言い方をしたところをみると「グローバル」という2つの要素に分解されると思います。ポケモンにしろ、プレイステーション2にしろ、「グローバル」な財であるという見方には異論はないと思うけれども、文化的であるかと言われるとちょっと日本でなければならないものを感じるものではないと思います。

 例えばトヨタやホンダの車がなぜ売れたかというと、素材が素晴らしい、電子部品が素晴らしい、コストパフォーマンスが素晴らしい、そういう点で売れてきてグローバルになった、この次、日本の自動車がどうしたら売れるか。やはりそこでアイデンティティを持たないと、さっき言った部品と素材とコストパフォーマンスではもたなくなるでしょう。自動車の名前を見たって、日本名を使った自動車の名前は1個もないと、昔石川島播磨の田口連三という日経連の会長が怒っていましたけどね。

 「グローバル」な商品から、日本的というものを感じさせる「文化」の領域にいくには、まだ発展過程というものがある。ヨーロッパの車はそれなりに皆さんが認める、ある意味でのソフトウエアというものがあるように思うけれども、きっと日本のゲームも、その中から分化して、C委員のような領域のものに使えるようなものや、教育に使えるものが、いろいろ出てくるような感じがしますので、慌ててはいけないと思います。どうせiモードだって世界中で共通になったときに、今まで日本、日本と言ってても結局世界共通になってしまう。

 オンラインサービスの要素は分解すると何かと言うと、インフォメーションとコミュニケーションとトランザクションの3つです。その中で知的というところを担うのは、やはりインフォメーションでしょう。

 ではコミュニケーションは何か。知的活動拠点を作ろうとするときには、やはり人に集まってもらうわけですが、遠隔の地とはネットを使えばコミュニケーションができるという意味で、ネットそのものはコミュニケーションのツールだと思います。

〔 I委員 〕 3点ほどコメントしたいと思います。

 第1点は、B委員が、日本の場合はモノや製造、流通を強調するということをおっしゃっていましたが、私も実は2年ほど前に経営コンサルティングの仕事を日本で始めて、まさに日本ではそうだと思います。

 それと昔と比べると変わっているとは言われていますけれども、基本的には40代以上の日本の人たちというのは、モノ、製造、流通に重点を置いて、情報、知識や提言というものはタダでお金を払わなくてもいいという前提で考えている人が多いのではないかと思います。

 これは当然のことなんですけど、日本語では「サービス」という言葉自体が「タダだ」という意味がありますよね。それを象徴しているのではないかと思います。

 第2点としては、世界に対しての発信ということがこの研究会の一つのテーマなんですが、発信の目的つまり何のために発信するのかをはっきりする必要があるのではないかと思います。いろいろな日本の活動、例えば日本のゲームやいろいろな製品が外に出ていますがそれによって何を伝えたいのか、発信したいのかをはっきり区分して、どういう機能があるか、どういう目的を果たしているかということを少し整理する必要があるのではないかと思います。

 同じ発信でも何でもかんでも発信して安心するのではなく、情報の中でもどういうたぐいの情報を発信するのかも考える。つまり量だけでなく、情報の質というものも一つの評価基準として考える必要があるのではないかと思います。

 前の会合でも一度申し上げたと思いますが、私が外から日本を見ていて感じることは、日本に関する情報を日本から発信しようという時、コンテンツ(内容)とロジック(論理)、プレゼンテーションの3つの側面があるのではないかと思います。つまり内容そのものに加えて技術的に正確か、例えば英語に関して言えば説得力がある正しい英語を使っているかといったことです。

 最後に3点目として申し上げたいのは、今日の皆さんの発表を伺って感じたことですが、私が日本に対して期待していることは日本の現実とはちょっと矛盾してしまうのではないかということです。どういうことかと申しますと、要するに日本は、今、経済大国でもありますし、政治でも経済でも、日本から発信する価値があるものが沢山あると思います。しかし外に発信される時は統一見解になりがちで、海外からは何も考えていないように受け取られがちです。そのギャップをどう縮めるかと考えた場合、やはり外に出すものの質や多様性、日本国内における多様な意見、多様な考え方を外に発信することが必要だと思います。それによってある程度の日本に対して、同じ問題をかかえる国としての共感や普遍性、魅力を感じるようになると思います。

 なぜ、これが日本の現実と矛盾するかと言いますと、多分日本国内においてそういう多様性を育てるとか、ディベートとかを重要視する環境があまりないので、無理に外に発信しようと思うと、一つの日本の公式見解とか、日本政府の方針とか、あるいは日本政府と民間企業の統一した意見とかの発信となってしまい、あまり外にとって魅力的ではない単一的で多様性に欠けた発信になってしまう危険性があるのではないかと思います。ですから、日本国内でそれほど評価されていないものを、無理に外に発信しようとすること、そのものに関して矛盾があるのではないかと思いました。

〔 C委員 〕 今の最後のところはとても大事で、なぜ日本のメッセージが矛盾するかなんですね。それは先ほどH委員がインフォメーションが重要だと言われているところと関係あるんですが、実はアメリカを例にとっても、ユーロを例にとってもいいんですけど、インテリジェンスというのがもう一つあるわけです。今回の経済企画庁のプログラムやマスタープランにも入れていただきたいと思うのですが、知的活動拠点というのは、インテリジェンス研究やインテリジェンスの拠点化ということが絶対必要です。要するに国の中で外部に漏れなくても構わないから、国の上部に対してどんどん蓄積されるような、インフォメーションからインテリジェンスへの変換構造というのが必要で、実際には我々は戦争というものは禁止されていますから、軍事というような形でインテリジェンスの研究をできるとは限らないんですが、その代わりそれを知的活動などという格好でインテリジェンスに転換していく構造を持たないといけない。しかしそれでないんですね。

 だから、欧米と比較するのは余り好きではないですが、あえて比較すれば、やはりインフォメーションやネットワークの多くのものというのは国のため、外交や政治や国際経済のためのインフォメーションをインテリジェンスに切り替えて蓄積している構造を持っていると思うんです。それを我々は持っていない。

 それでは一体インテリジェンスとしてどう思うのか。全部それはゲーム的にインフォメーションにしているからダメなんだというようなことが一方ではあるのではないかと思うんです。

 私は「日本流」という本の中で一途で多様というメッセージを作ったわけですが、その多様のところが一途なものにできなくて、一様なものとして外へ出していて、中の多様性を内部保留して上に持っていくというか、構造化して蓄積するという構造も日本には欠如していると思うんです。

 だから、今回の経済企画庁のプログラム、あるいはマスタープランの中には、インテリジェンスというものを研究する活動拠点というものも入れるべきではないかと思います。

〔 F委員 〕 今のC委員のお話の中で、インテリジェンスに切り替えて、ためて出していく仕組みというのはたしかにないと思います。

 もう一つは、これを誰がやるのかということで、政府にはやる仕組みはない、やろうとするとインテリジェンスではなくなるというのが、I委員のお話だと思います。

 ゲームが知的財産の中核になるかどうかということで、H委員はもうちょっと長い目でとおっしゃったけれども、私はゲームの中身自体の問題だと思います。さっき日本ではゲームを30代以上も買っているけれども外国では20代までというのは、やはり中身が薄いから飽きてきているのだろうと思います。

 例えば今のゲームの中に、本当に浮世絵が持っていただけの中身があったとすれば、これだけ動きの速い時代であれば、既にある程度それが日本という形で評価されていてもいいのではないか。やはり浮世絵が持っていたような中身とか表現方法の斬新さとか、その背後に何となく見え隠れする考え方というものが、おそらく今のゲームの中にはないということで、それは結局ゲームの中身の薄さに尽きるのではないか。

 ですから、次世代の子どもに対するゲームであっても、そこに何かもうちょっとこういうものがあれば、20代、30代、次のゲーム、あるいは50代でもできるゲームというものに移るのではないのか。そこがC委員がおっしゃった意味でのインテリジェンスということではないのかと思います。

 それがなかなかその次に移らない。とりあえず今売れるものしか評価されないというところで、B委員のおっしゃった、モノと製造と流通によって評価されるけれども、それは繋がらず、同じレベルのものが次々出ているというところから進まないのではないか。何かそこをぐるぐる回っているのではという感じがしました。

〔 B委員 〕 ゲームと教育についてですが、アメリカはバイオレンスのゲームは反対だということで、それの裏をとって何をしたかというと、ゲームをやっている時の子供たちの心理学をいろいろ研究しました。ゲームの構造の中では、物理的な空間にはないコンピュータならではの構造とか経験というのが出てきます。普通の我々の物理的な世界の中ではサイバーの発想というのはなかなかできないんです。

 でも、ゲームの中だとマルチ次元の階層だとか、こうやるとこうなるとか、ロジックなどを子どもたちは覚えていく。それはあえて教育のために作ってはないんですけれども、普通の教育ソフトよりは、実はよくできたロールプレイングゲームの方が、子どもたちの考え方の発展には繋がるという結果が出ているんです。

 ゲームを作っている人たちは、自分が例えばマリオをやっている時には、自分がもう画面の中に入って、コンピュータの中に自分がいるという、肉体的にゲームを感じていくという発想があって、そうするとイマジネーションがサイバースペースに移っていくんです。

 そういうツールをもうちょっと教育的にしていくという研究が実は始まっていますので、ちょっと表面より深いところで多少はバリューがあるのではないかと思います。

〔 座長 〕 まだ、ちょっとご意見があると思いますが、せっかく今日準備していただいたので、次にC委員からプレゼンテーションを20分ぐらいでお願いします。

〔 C委員 〕 私の方は、今、私及び私たちがやっていること、及びやったことに絞っています。最初にレジュメがありますので、この順番でお話をして、あとは資料ですから時々見ていただくという程度にいたします。

 最初、一番に書いたことは知財の保護と育成と、それの発信の仕組みというものをやるべきではないかということです。知財とは、インテレクチュアルセットないしはナレッジキャピタルと言われているものですが、そのためにある仕組みが必要だろうということ。既に私の方で作り上げたのは、知財というものに投資ができる仕組みで、パドックシステムと呼んでいます。パドックというのは競馬で馬が出走する前にすべての情報をもとにして投資をしてしまう最後の場面ですよね。あれは実態の動きの前に、ある意味では情報によって投資をする仕組みなわけですよね。ということは情報そのものに経済がくっつくのだということ。だからパドックのようなシステムがあってもいいのではないかということです。

 それが売れたか、売れないかというデータをもとにしただけでやろうとするといつまで経っても、シリコンバレーの蓄積に追いつかない。むしろ可能性に賭ける、インキュベートに賭けるというのは、ある意味では情報に賭けるということですから、そういう仕組みを作ろうということでパドックシステムというものを作りました。

 これは最初通産省で検討していたんですが、三菱商事がどうしても買いたいと言うので、先月スタートを切り、日経にも出ております。

 これはパドックエディターというのがいて、いろいろな情報をネットワーク上のパドックの中で、情報を加算していってエディティングし、ある売れる状態にして、それにベットしていこうという仕組みです。そのベット数が評価になるわけですけれども、そういうものを作りました。どういうふうに発展していくかはこれからですが。

 そういうことの背後にある考え方は何かというと、全米の議会図書館で私は時々スピーチしたり、彼らと共同研究をやったりしているんですが、あそこでは全世界の情報をアメリカンメモリーという系統樹の中に入れようとしているわけです。それは大変アメリカ人っぽくってすごいなと思うんですけれども、癪で癪でしょうがない。ありとあらゆるもの、例えばレオナルドダビンチから日本の藤原定家からケルトルネッサンスに至るまで全部、アメリカンメモリーの中の系統樹の中に入るようにしている。ところが日本ではそういうのはないんです。だから日本経済・文化の系統樹というものを作っていくべきだと思います。これは知的活動拠点以前に、そういう系統樹そのものがない限り知財が入っていかないだろうと思うんですね。それをやるべきではないかと思います。

 そのために、2番目に書いたことは、そういった知財の育成、インキュベーションを支援・評価するためのエディターシップです。私が考えているのは、そういうものを中身でエディットしながらインキュベートをお手伝いする仕組みというものが必要だろうということです。

 すなわち、産業を文化性と経済性に分けながらディレクションしていくディレクター、かつて室町幕府では同朋衆(どうぼうしゅう:室町時代以降の職名で、殿中の雑役に従事し、芸能関係について将軍の顧問的な役も務めた)と呼んでいたんですが、そういった同朋衆がいることによって信長は楽市楽座もできたし、名物狩りもできたわけです。そして今の値段で言えば、大体1,000円ぐらいの茶碗を約半年ぐらいで10万円ぐらいに上げることができた。要するにそういうある種の証券市場のようなものを作り得たわけです。

 それがなぜできたかと言うと、信長のマネージメントシステムを支えたディレクターシステムがあったわけです。これが江戸茶碗ですよというようなことを言ってる人がいたわけです。それが今、日本にいないんです。だからそういうディレクターシステムが必要だろうと思います。

 ただし、今のネットワーク時代だから、それがある種ひと握りのディレクターでやられるというのもよくないので、それをネットワーク上でインタースコアリング・システムというふうにして、スコアをお互いにインターし合うような仕組みというものを開発したらどうかということで、先ほどのアグリゲータでは間に合わないというのが私の意見です。アグリゲータの中にインタースコアリング・システムとディレクターが関与したようなものが必要だろうと思っています。これについてはあとで出ますけれども、ESPというエディトリアル・スコアリングパッド・システムというものを、一応実験的に開発しつつあるので一言だけあとでご紹介します。

 このようなことを考えていった理由は、簡単に言いますと、私は今のITの技術環境というのを3つに分けているわけです。ネットワーク・ツーリング環境とサーバ・リフレーミング環境とクライアント・オーサリング環境です。ほとんど日本のITセンスと言うかIT産業感覚というのは、上のネットワーク・ツーリング環境だけに向いていて、おまけにブラウザなんて何の役にも立たない技術なんです。あれはエディット能力がなく、ピンポイントで行って戻ってくるわけです。しかも肩越しでそれを見られるような肩越し機能というものもついていない。私はテールランプ・エディティング・システムと呼んでいるんですが、ブラウザが行ったあとのテールランプをあとで全部ヒストリーとして見て、それを交換し合いながら学習するという仕組みも作れていない。ということはブラウザというのはただのごみ掻きのようなものなわけです。

 ところが、そちらばかりに目がいっていて、ネットワーク・ツーリング環境だけで勝負をしようとしている。問題はサーバ・リフレーミング環境で、そのサーバの中で情報構造を常にリフレーミングして、サーバそのものの構造が自立的にできれば、常に更新されていくと思います。そういうサーバシステムというものが必要なんですが、まだないです。

 これはデータベースと関係がありますので、先ほどのアメリカンメモリーに代わる系統樹がそこに関与することによって、サーバというものが常に構造的・意味的な変換構造というものをアルゴリズミックに持つようなものが必要だろうと思います。

 最終的には、消費者が一番大事なので、消費者にそのようなものが感知できるようなクライアント・オーサリング環境というものを作らなければいけないんですけれども、このパレットがろくなものがないのです。最終的にパソコン上でソフトとしてインストールされていたり、あるいはちょっと高いお金を出して私たちが買っているものというのは、やはり編集的ではなく、そのフレームに合わせたものだけをそこに置くというようなことになっているということです。

 ただ、本当はそこが一番大事なんですが、こういったつまりノートのように自由に書け、絵も書け、色もつけられ、ランダムアクセスも可能であるようなオーサリング環境に編集パレットを作るということを、一番時間はかかると思いますけど、今、私たちが考えています。

 こういうことをやるために、いろいろ考えて絞っていくと、どうも大事な問題は、やはりOSではないかなと思います。今のOSはマイクロソフト型のものになっていますけれども、そうではなくて、OSそのもののが編集OSであるようなものを日本から発信してはどうか。それをES、エディティング・システムと呼んでいます。要するにオペレーティングシステムからエディティング・システムへというようなことが、うちの研究所のコンセプトになっています。

 どういうふうにESを作っていくかと言うと、編集構造を内包した知のアーキテクチャーというものを、どういうふうにOS上、すなわち編集OS上、すなわちES上で常に動かせるかというという、まずそういう設計思想が必要です。

 それから、今のOSの限界を的確に指摘すること。アメリカがやってるからだめというようなことも感情的にはあるのかもしれませんが、それだけではなくて、私たちは例えば庭とか、文房四宝(筆、墨、硯、紙)とか、床の間とか、そういうところで情報処理をしてきたわけですが、今のデスクトップメタファーを前提にしたOSというものは、例えば、ケルトの編み目という感覚や、インドの複雑な流れというような感覚からすると、余りにも近代的な知に基づいたOSで作られていると思うんです。

 だから、もっと文化的な多様性というものを取り込んで、日本が発信して、それを例えばポーランドの民族の人が、自分で編集して独自のOSにしていくということ。そういうもののプロトタイプを日本から作れると、今のアメリカに対抗しようとばかり思っている段階を、もうちょっと超えられるのではないか。これが一番時間がかかりそうなことですが私たちがやっていることです。

 そのためには、方法的な実験を幾つかしなければいけないんですが、蓄積の仕方と流通の仕方と表現の仕方をバラバラにしないといけない。今、完全に技術的にバラバラなんですね。これを何とか部品が共通になるようにしていく必要があるのだろうということで、とりあえずESPというものを、今、プロトタイプとして作っています。

 この綴じていただいたものでいくと一番下の3枚分なんですけれども、エディトリアル・スコアリングパッドというものですけれども、うしろから3枚目からいきますと、インターネット上、これは今、NTTと私たちで共同開発しているESPというものの基本的なモデルのごく簡単なところだけです。インターネット上に膨大なHTML文書があって、それがなかなか共有、再流通、評価、総合評価という格好をとれない。

 そこであいだにESPというものを置いて、そこにストッカ型のフォーマットと、ここではシナリオ型のコンテキスト型のフォーマットの2つを用意しまして、それによって要約とか引用、リンクをHTMLを引きずりながら引き受けて編集してやる。それをあいだに置くことによって、今、マイクロソフトの四大ソフトと呼ばれているような日常的なコンテンツ作業も編集的に変わっていけるような、ブラウザとOSとを疑似的に兼ねたような中間段階のパッドというようなものを作ったらどうかなと思って、共同開発に入っています。大体今年中にあるプロトタイプができると思います。

 このように私が考えていることというのは、視点を変えると、日本的な何か知というものに特色があるのかなと思います。これは私がずっと前から研究していたテーマと関係してくるわけです。それを一言でいうと日本的な連想法と呼んでいます。

 日本人は認知科学や認知工学といった技術と関係なく日本的な連想にもともと富んでいる。ではそういうものをもう少し組み立てていけるものを考えるということをもう一方でやっています。

 その一つが、和歌というものを、どういうふうに完璧に近いデータベースによって万葉、古今、新古今を使って日本で多くの人たちが1,000年ぐらい楽しんだのかということ。

 そこでは、一言でいえば歌枕というプロトコル、あるいはパスワードを前提にしたプロトコルをもとにして、例えば「宇治」や「竜田」と入れるとたくさんの情報がそこでたくさん引き出してこれるわけです。しかもハイパーリンク状態になっている。

 したがって、芭蕉が発句として一句を詠む場合にも、たった17文字というのは短いセンテンスになったということだけではなくて、短いセンテンスでもその多くのハイパーリンク構造というものが1,000年の歌枕・和歌構造によって充実していたからできたというふうにとらえたときに、我々もちょうど17文字ぐらいの文字の打ち込みで、その奥から日本中の知の情報、それはアメリカンメモリーに代わるものを引き出せていける。源氏物語は183ぐらい白楽天の引用があるわけですが、その白楽天もまた中国のいろいろな思想から引用しているわけですから、それを17文字ぐらい、あるいは5文字ぐらいのキーワードで引きずり出せるような構造が既に日本にあったわけです。

 それから、国語学です。これは、今、英語の問題がI委員からも出たし、小渕さんの懇談会からも出ています。森有礼(初代文部大臣。1847-1889)がホイットニー(Willam Cogswell Whitney 1825-1882)に日本語をやめて英語にしたいと相談したときに、あなたは一国の文化というのは他国の言語でできるものじゃない、やめなさいと言われて、それの表記だけを考えなさいということでヘボンのアルファベットを登用したわけです。

 やはり国語というものをグローバルに考える力というものを、日本の組織や政府が持つべきだと思います。英語の方がグローバルであるわけないんです。イギリスが英語を公用語と感じるのは、アーサー王物語以前にはなかったわけです。そしてアーサー王物語のストーリーはフランス語から英語に置き直すときに徹底的に英語の公用化を図っていったわけです。オックスフォードの初版からずっと6版ぐらい見ますと、ほとんど意味は今日とは変わっています。例えばサブジェクトとオブジェクトの意味は変わっているわけです。しかも、それが日本人の問題だとよく言われるんですが、日本人というのはサブジェクトとオブジェクトがうまく区別がつかないんですから。

 ところが、初期のサブジェクトとオブジェクトというのは、神というものが想定されているサブジェクトに対して邪魔をするものがオブジェクトだったわけです。そういうものを客体という意味に変えていく努力を彼らが国語学的にやったのが英語というものなわけです。日本だってそういうものをいっぱい持っているわけですが、そういう国語学的な構造から情報処理とか情報編集とか、インテリジェンスというものを研究するような、そういうものが少ない。大野晋さんが『日本語練習帳』をお書きになりましたが、あれはどうやってみんな読んでいるのかなと思います。相当あれは難しい内容ですから。しかし、ああいうものが多少はやるというのは、止むに止まれぬ気持ちというものがどこかにあって売れたんだと思うんです。でも、あの間にあることの意味を、もっと日本国、あるいは官公庁の中でつかむ必要があるだろうということです。

 こういうものは、私は最近一言で「数寄」と呼んでいます。数寄屋造りの数寄です。この「すき」というのは「髪を梳く」とか、「ペーパーを漉く」、透き通るの「透く」、あるいは土を耕すの「鋤く」。みんな同じことで、こういうような千歯こきのようなもので、串のようなものでばっと情報をすいている構造のことを数寄と言うんですけれども、これがどうも日本的なメソッドの一つだなと最近思っていまして、先月朝日新聞から「日本流」というのを出しましたけれども、来月「日本数寄」という本でそういうことをちょっと書いています。

 こういうものをもとに、やはり教育に一度実験のレベルを落としたらどうかと思います。しかも子どもに落としたらどうだろうかと考えています。それから、日本はもう1回ネットワークセンターというものを考えないと知的活動拠点というのできないだろうと思います。

 そのモデルは、既に天平時代の国分寺ネットワークというのがあって、あれは法華経や最勝王経などのお経を65ぐらいの国分寺全部に同じものを配って、しかも何巻目の何行目というと、必ずそれを元にして地方の行政官が解読するという仕組みになっていたわけです。あるいは、家康時代に東海道という幹線道路を53のゲートウエイに分けたわけです。そして宿駅を全部反映させようという仕組みを持ったわけですが、これは華厳経の善財童子が53人の知の拠点を巡っていくというメタファーから作っているものです。インターネットの構造をいくらやったって、それに付与する人たちが出てこないとダメなんです。もっとそこに具体的なイメージを持って差し迫っていくような人たちが出現する必要があると思います。

 最後にちょっとビデオをお見せいたしますけれども、子どものための知のアリーナ、今、言ったようなちょっと難しい話を、うんとブレイクダウンしてやってみたらどうかなということを去年やってみました。かなり反響があったので、その一部をお見せいたします。

 (ビデオ放映開始)

 一つは、「クロノス」という情報。これは通産省や郵政省と慶応系の人たちとが組んで、子どものための教育システムのソフト開発というものをどうするかというようなことをやっているわけです。これはネットワーク・ツーリング環境と、先ほどのサーバ・リフレーミング環境などという3つの構造の話をちょうどしているところだと思います。

 これは「2+1」というふうに私が名づけたもので、2つのものを持ってきて、それにプラス1を加えたらどういうふうに情報が変わるのというようなことだけで作った仕組みです。最後に物語まで子どもたちが編集しようということです。それを2年生と4年生で実験したんですけれども非常に効果がよかったのでちょっとお見せしたいと思います。

 これは先ほどのゲームと言えばゲームなんですが、ちょっと見ていただくとわかりますけども、ゲームであって知的なものの原形になっています。今のところ生物と社会と英語でやっています。

 もう一つ、データという呼び方をやめてキャプタ(capta)というコンセプトを作りました。要するにデータが、ある編集をされたい状態になっているものをキャプタと呼びます。キャプションのキャプタです。これはアメリカの心理学者であるR.D.レインが提唱した概念なんですが、心理学的なデータというのはもはやデータじゃなく、それは意味を解釈されるのを待っているんだから、そんなものをデータと呼ぶなということでキャピタと言い出したんですが、それを使っています。

 こういう魚が一つ一つキャプタです。これを子どもたちが取ると実は情報が中に入っているわけです。それを2つ取ってきて、もう一つ自分がそこに加えるということで編集を成立させようという、その繰り返しになっています。

 それから、流通を教えるために、情報というのは常に流通しなければいけないので、自分が作ったキャプタを、今、マグロ商店というところに持ってきて、買われるか買われないか、価値があるか価値がないということを判断してもらうんです。そうすると、これはシェルという通貨なんですけれども、1シェルとか2シェルという通貨がもらえるようになっていて、子どもたちがそれを今度はバンキングして、それによって人の情報を買いに行く、キャプタを買いに行くというような仕組みになっています。

 それから、これは慶応義塾でデモンストレーションをすることになったので、慶応義塾の工程を作ってありまして、これは漢字ですけれども、工程が作ってあって、その工程の中に入っていろいろなものを拾ってきて、ここからが自分で物語を作るところです。

 これは昼休みですけれど、ともかく1回やっただけでものすごくやりたがって、授業以外の時間でもほとんどの生徒たちが遊びに来たがるんです。

 この仕組みで、もう一つ子どもたちにも教えたいし、我々が知的活動拠点でも考えたいと思っているのはマザーということです。要するに情報にはある種の物語のマザーがあって、そのマザーがテンプレートになって情報編集が進むんだということです。

 これが「2+1」というものです。今度は「情報の歴史」という、NTTの電話100年事業で記念出版したんです。それを慶応大学と通産省と私どもで電子化して、それを動かすようにしたんです。

 こういうものを作ったわけです。ご覧いただくとわかると思いますけれども、例えば山水画とロシア帝国、ジェームス一世と徳川家康など、一切の国籍を一緒くたにした年表です。この年表は非常に評判だったわけですけれども、これを電子ネットワーク上に入れて、小学生がこれを学習できるかどうかということを実験してみたんです。そしたら私の予想をはるかに超えて子どもたちの反応がよかったので、そこの場面をちょっとこのあとお見せしたいと思います。

 これがその場面ですが、これをクロママトリックスというような、ある種のインターフェースに入れました。それを子どもたちが見て、先ほど言った単なる点的なブラウジングではなくて、動的な、インモーション上でブラウジングをするということを体験させてみたんです。

 これは普通のデータベースなので別に驚くことはないです。時代とかテーマだけで引き抜くため、たくさんのコセットがついています。例えば福沢と引くと福沢だけの別のコセットが出てくるとか。でも、こういうものも今の日本のデータベースには少ないんです。

 今のものをインフォキューブというキューブに入れて、その情報の歴史的なイベントを全部キューブにしたんです。まだ、形が5つぐらい、色も7つぐらいしかつけられていないんですが。子どもたちが、このクロママトリックスという戦艦ヤマトのような、あるいはモノリスのようなものの中に入っていくわけです。そうすると、年代が出てきながら、どんどん情報がそこに出てくる。これをブラウズしながら自分のところに持ってくる。

 ブラウズしたものはナビゲーションラインが残りまして、自分がどのようなものをゲットしたかというのがあとでわかります。そうすると今度はその自分が選んだものだけで、全体をディストーションできるんです。これは今、郵政省が面白がりまして、今年いっぱいかけて大体1,200校の小学校に置くことになっているので、これのバージョンアップにこれからとりかかるところです。色が変わったり、横から見れたり、上から見れたり、それから自分のナビゲーションラインに沿ってものを見るとか、多少の工夫がいろいろされているわけです。

 これを子どもたちにやらせてみて驚いたんですね。こういうふうに横からも見られますし、自分が入れた情報が浮かんでいくわけです。これはいくらでも浮かぶようになっています。基本的には先ほど申し上げた「情報の歴史」という本のものが全部入っていますけれども、各自ユーザーがいくら入れてもいいということになっています。

 それから、先ほどちょっとお見せしました、うしろ3枚の絵の中にブリタニカという項目が入っていると思いますが、フランクギブニーというブリタニカの会長が、もう百科事典の時代が終わったということで、百科事典の代わりにこれを使うということに、去年の暮れに決まりまして、2年後ぐらいにブリタニカがこれを使って、ここからすべての情報の知識に入っていくということをやっています。

 非常に高度だと思っていたんですが、これ小学校2年生なんですよ。ともかくレオナルドダビンチだとか富士山爆発だとか言っているわけです。これは去年の10月ぐらいにプロトタイプができまして、11月、12月と、東大の方にも協力していただいて、高校生、小学2年生、4年生に、今度はそれをパソコンの中で一人一人がやるというようにさせたのですが、ともかく次の順番を待つ子がみんな押し寄せちゃって非常に興奮していました。

 この前、スミソニアン協会の方が、これを見に来まして、ぜひミュージアムの中でこういうようなこともやりたいと言ったんですけれども、さてそういうふうに反応が早いスミソニアンやブリタニカに、こういうものを手渡していいのかどうか非常に悩んでいるところです。

 ということで、今は「クロノス」と「2+1」というものだけをお見せしたんですが、これ以外に去年、京都デジタルアーカイブというものを京都市に頼まれまして作りました。これはまたなかなか面白いものなのですが、世界のデータベースに初めて語り部というものを入れてみたんです。そして、土地の中のいろいろな知を持っているおじいちゃん、おばあちゃんの声で収録してくる。それをデータに落とさないで、そのまま音声として保存し、語り部ボタンを押すとその声が出てくるという、それに基づいて構造を編集していくというようなデータベースを作りました。これは「ザ・ミヤコ」というものです。

 以上、非常に急ぎ足でしたけれども、先ほどアグリゲータ止まりの段階というのは、ほとんど何の役にも立たないというのが私の意見で、そこに編集的な構造と動的なものと、それから知の基本的な仕組み、この場合は「2+1」とか情報が世界中で一緒に動くとか、そういう単純なことなんですけれども、そういうことをしっかり入れて、そこの上に積み重なっていくような知的な活動の仕組みというものを確立しなければいけないのではないかということです。以上です。

〔 座長 〕 どうもありがとうございました。

 ちょっと時間が来ているんですが、残りの範囲でもし少し議論があればいただきたいと思います。

〔 H委員 〕 タイムワーナーがAOLと合併したことについて、それなりに検証する価値があると考えています。タイムワーナーは4年ほど前にパスファインダーという名前のポータルのアグリゲータを作ったんです。そこにあらゆるバンドを持ち込んでやってみたものの失敗し、やめたんです。C委員のおっしゃるとおりで、つまりポータルにものを並べてアグリゲートしたって、何の魅力もないということです。

 それから、AOLがなぜアメリカで独り勝ちになったかという理由で、私がずっと思っていることは、AOLのスティーブケイスが、繰り返して、「インターネット、テクノロジーは道具だ」と言っていたことです。何かをするための道具であり、目的化してはいけないということを繰り返して彼は言っております。教育やビジネスのための道具として如何にインターネットを活用するかが重要であるにもかかわらず、ついインターネットが自己目的化されている。

〔 座長 〕 ほかにいかがですか。よろしいですか。最後に事務局の方から少し中間とりまとめについてお願いします。

〔 事務局 〕 それでは、冒頭にも申し上げましたが、委員会の中間とりまとめの素案で、これは次回ご議論いただくわけですが、あらかじめ配付させていただいて、事前にご意見を伺えればという趣旨でございます。時間もございませんので、基本的な考え方だけをざっとご説明させていただきたいと思います。

 1ページで、背景と目的ということで、ここのポイントは多様な知恵の時代とかネットワーク型社会とかグローバリゼーションといった歴史的潮流変化のもとで、世界の変化を進歩のスピードに対応して、我が国で経済的あるいは文化的知的豊かさの増進を図るということ。あるいは対外的には世界への貢献を実現していくためには、得意な分野で世界に発信して、世界から最新の知恵・情報を牽引すること。すなわち、これが知的活動拠点のイメージでありますが、こういった知的活動拠点を形成することが必要ではないかというものの考え方を整理してございます。

 2ページ以降が、その知的活動拠点を形成する環境整備ということで、まずこの知的活動拠点の基本的なパターンとして、新たな知恵の創造によって魅力あるコンテンツを積極的に作り出す。それを世界に発信して世界からのアクセスを確保する。その結果、知的交流が進んで、さらに新しい知恵になるという好循環によって形成されるということを基本的にパターンとして想定いたしました。したがって、魅力あるコンテンツの創出ということと世界への情報発信、それから知的交流の促進という3つの大きな柱に沿った環境整備を考えていこうということで枠組みを考えてございます。

 3ページ以下が、まず第一に魅力あるコンテンツの創出ということでありまして、ここはやや内容が盛りだくさんでありますが、まず源泉に関しては大学等における魅力的な研究開発環境という問題。それから知恵を生かしたビジネスの展開という事柄。それからいずれにも属さない日本の文化の活用といった事柄がリソースとしては大事だよということ。

 こういった分野の中でも、特に国際競争力を有する分野に重点化すべきということで、そういった分野を挙げる必要があるのではないかということ。最後に、こういった知恵の創造の担い手として、創造性を有する人的資源が必要という教育の問題。5つの項目をここでは設定してございます。

 最初に、大学の研究開発環境の問題がありまして、6ページに知恵を生かしたビジネス展開の話。それから、8ページに参りまして、固有の文化の活用という視点。それから、9ページで重点的に取り組むべき分野ということで、本日もご議論がございましたけれども、ここでこの四角の中の一番下の(3)で文化・娯楽分野ということでアニメとかゲームソフトということが、とりあえず書いてございますが、オリジナリティーのある知恵を使った世界が利用するコンテンツではあるのではないかということで、ここに挙げている次第であります。

 それから、10ページが教育の問題であります。

 それから、11ページからが、2つ目の大きな柱であります世界への情報発信ということで、国際的な情報発信能力の強化ということで英語力の問題、あわせて日本語のことも議論をすべきだと思いますが英語力の問題。それからコミュニケーション能力、それからツールとしてのインターネット・リテラシー、そのほかにもツールの問題としてほかにあろうかと思いますがとりあえずこういった形であります。

 それから、13ページが、3つ目の柱であります交流の問題でありまして、知恵の交流によって新たな知恵が生まれるということがあるわけでして、そのためには我が国で魅力あるコンテンツを世界に発信して世界からのアクセスを確保するということが最も重要なわけでありますが、研究者等の国際的な交流の一層促進のための環境整備とか、交流のツールとなっているインターネットの利用環境の整備といったことが挙げてあります。具体的には外国人研究者や留学生の問題です。

 それから、14ページの④以下では、ダボス会議とか、ご紹介のあったスクールをイメージして知的交流の場の提供といった事柄にも触れてございます。15ページ、最後で、インターネット上の知の交流、あるいは方法論ということであります。

 本日のご議論は、当然まだ反映されておりませんし、そのほかの部分でも委員の先生方のご意見をなるべく取り入れさせていただいておりますけれども、まだまだ不十分であろうと思います。皆様方の知恵によって魅力ある内容のものにしていきたいと思いますので、次回の会議までに事前にご意見を賜れればということで掲げさせていただいております。

〔 座長 〕 今ありましたように、きょうの素案についてのご意見は、事務局までファクス、Eメール等でご連絡いただければ幸いです。

 次回は、5月17日、水曜日の午前10時より、この中間とりまとめについてご議論いただきますのでよろしくお願いいたします。

 ちょっときょうは時間も少しオーバーしてしまいましたけれども、まだ十分に議論をし尽くせないところがあると思いますけれども、きょうはこれで終わりにさせていただきたいと思います。どうぞF委員。

〔 F委員 〕 ちょっとよろしいですか。最初にも申し上げたんですけれども、今の報告書も含め、役所でこういう議論をすると、議論の時はとても面白くても、報告書は抽象的な書き方になってしまい、面白くないんですね。これはこの研究会がということじゃなく常にそうで、まとめられる方もそう思っていらっしゃると思うんですが。私は、抽象的にしてまとめるのが、今、求められているのではなくて、ここで議論していることをもっと具体的にすることが求められているんだと思うんです。ですから、報告書をそれはそれとして作ると同時に、それを具体化するような仕組みを考えてもいいのではないかなと思います。そういうこともあわせて叩き台を作っていただいて議論をすると、面白い議論ができるのではないかと思います。

〔 H委員 〕 委員が集まって記者クラブに行ったら、何だこれと言われるようなことではなくて、あえてプレゼンテーションで、説得性を持つために何か一つキャッチフレーズも必要かもしれないし、アクセントもつける必要もあるし、これぞというものがあってもいいですよね。

〔 座長 〕 ぜひ、考えたいと思います。どうもありがとうございました。