経済審議会 人口減少下の経済に関する研究会(第2回)議事概要
1.日時:
平成12年2月10日(木)15:30~17:30
2.場所:
経済企画庁総合計画局会議室(732号室)
3.出席者
(委員)
橘木座長、井堀委員、小川委員、小塩委員、外谷委員、長岡委員、永瀬委員、
(事務局)
牛嶋総合計画局長、永谷審議官、塚田審議官、藤塚計画課長、山崎計画官、大脇計画企画官、太田計画官、
4.議題
- 1)人口減少下で想定される経済
- 2)女性の就業について
5.議事内容
6.討議の概要
- 1)人口減少下で想定される経済
- このモデルではエージングコストが大きく出ており、この大きさでモデルが大きく左右される。
- 子供を持つ効用を考えていないのではないか。
- 遺産動機は強いものであると考える.
- 政府の存在を無しとした、つまり、全て社会保障を民間の保険等でまかなったケースも分析するべきだ.
- 2ヶ国モデルの日本と海外部門の影響度の比率を1:1.5としているのは日本を過大に評価しているのではないか。
- 人口変動の要因としては出生率だけではなく、死亡率も重要。
- 遺産をどのように考えるかにより消費は大幅に変わりうる。
- 人口減少により一人当たりの所得が上昇した場合、資本の深化が進むかというと、その分消費が増加すればマクロの貯蓄はさほど上昇するものではない。資本の深化の可能性が強調され過ぎではないか。
- 実体経済はベビーブームの影響が極めて大きく出ているが、このモデルではその点が心許ない。
- このモデルは引退者が増えると社会的コストも増大するとしただけで、後は資本と労働を生産要素とする新古典派理論で固められている。この考えだと,高度経済成長下では有効であったが、現在のIT革命のようなアイデアを重視した経済を想定すると十分には対応できないのではないか。
- 社会保障のコストを誰が負担するのかといったことを考察することをモデルに組み込む必要があるのではないのか。
- 2)女性の就業について
- 現在の女性の就業を拒む制約を取り除く費用、又は現在自発的にリタイヤしている女性に就業を誘導する費用など、女性の就業率を引き上げるためのコストを考える必要がある。
- 女性の就業が高まると労働の供給が大きくなり、賃金の引き下げが起き、この通りの収入が得られないことも考えるべきだ。
- 6歳までの保育の公的負担が約700万円の試算というが明らかに過小に見積もっていると考える。東京都のゼロ歳児の1ヶ月の保育コストが50万円にも及ぶといった試算もある。
- スウェーデンの女性の就業率には休暇をとっている人も含まれており、本当に働いている人はもっと少ないのではないか。
- 女性の就業率と合計特殊出生率の関係のグラフで負の相関から正の相関に変わってきたとしているが、こうしたデータではアイスランドがきわめて特殊であるため、歪んだ結果が出て来やすい。
- 女性の就業率と合計特殊出生率の関係を日本の市長村レベルで調べた事があるが、そのときは正の相関が出た。しかしそれは親との同居率など他の要因が大きく、日本の育児が必要な女性の働きにくさは国際的にも特筆すべきものと言える。
- 女性の労働力率が上昇すれば、相対的に賃金の高い日本の男性が働きに出て、賃金の安い女性が家事を切り盛りするといった男女間格差に立脚した現在の社会システムが、男性の賃金が下がるといった男女間格差の縮小により男女共働きを基本としたシステムに移行するのは間違いないと考える。
- 30年代生まれと60年代生まれの国際クロスセクションでは、後者には晩婚化に伴う女性の出生の遅れの影響が出ており単純には比較できない。
- 保育施設の充実は女性の社会進出の補助の観点のみならず、今後の社会を支える若い人を増やす施策といった長期的な観点も必要ではないか。
- クロスセクションではなく各国別の時系列で見ると女性の就業率と合計特殊出生率には負の相関があるのではないか。
- 現実問題では介護の問題がかなり大きい。特に40歳以上の女性が介護をする必要に迫られるリスクはかなり大きい。
7.次回以降日程
第3回 3月15日(水) 14:00 ~ 16:00
第4回 4月19日(水) 10:00 ~ 12:00
第5回 5月10日(水) 10:00 ~ 12:00
第6回は今後各委員の予定等を考慮の上、決定する。
なお、本議事概要は、速報のため、事後修正の可能性があります。
(連絡先)
経済企画庁総合計画局計量班
鮎澤 大橋
電話 03-3581-1098