第1回物流・情報通信ベストプラクティス研究会議事概要

1.日時:

平成12年1月27日(木)10:00~12:00

2.場所:

経済企画庁長官官房特別会議室(729)(第4合同庁舎7F)

3.出席者

(研究会)國領二郎座長
   石原和幸、石原誠一郎、井出一仁、北之口好文、花輪順一、藤田周三、前田正明の各委員
(事務局)堺屋長官、牛嶋総合計画局長、塚田審議官、永谷審議官、藤塚計画課長、税所計画官その他経済企画庁職員

4.議題

  • 研究会の趣旨・検討事項について 外

5.議事内容

  事務局より資料2「物流・情報通信ベストプラクティス研究会の趣旨等」、資料3「物流・情報通信ベストプラクティス研究会検討事項」及び資料4「物流・情報通信ベストプラクティス研究会の今後のスケジュール」について説明。これらに対する各委員からの主な意見は以下のとおり。 -冒頭、堺屋長官と牛嶋総合計画局長から挨拶があった後、議事等の公開や座長の指名等について各委員より了承あり-

  • 事務局からの説明資料の中で印象に残った言葉は、「在庫削減」、「見込生産から注文生産へ」、「物流と情報の同期化」の3つである。これらのキーワードは「スピード」であろう。客のニーズにより早くより正確に対応することが課題。情報通信のハードが高まれば高まるほどよりそれが求められる。これに対応するには業務処理の効率化を高めることに繋がる。現在、物流関連の事業者間の情報を共有化しようという動きがある。次の段階としてペーパーレス化を推進することが必要。現在の煩雑な運送状による情報の伝達は人的・時間的ロスが多大になり、ミスも起こりやすい。
  • 最近は経営(マネジメント)の変化を含め情報通信の発展に伴い5つの流れが変化してきていると思われる。まず金流。電子マネーやICカードが誕生してきている。IC決済をどのように処理するかという問題も派生的に発生してきている。情報の流れについては、今ではここまで情報がオープンになってきているため情報を知る・探し出すツールを知っている者が勝つという現象が生まれている。人流はいわば雇用の流れでもある。ネックなのは物流である。モノはいくら他の流れが変化してきても瞬間移動できる訳ではない。コンビニエンスストアが物流と情報の拠点たる存在になってきているので、このネットワークを如何に活用するか。そもそもベストプラクティスについては、あまり原理原則は変化せずそれを実現する方策だけが変わってきただけではないのか。
  • この研究会の論点はかなり幅が広いのではないか。インターネットが一般的に普及し始めた97年くらいから5年先の絵姿を出すことが困難である。情報通信の技術革新が1,2年で変化するように変化が極めて激しいからである。特に高速化と低料金化は予想を遥かに超えたスピードで進展している。物流と情報通信のインフラとしては有用だと思われるITSについては、DGPSとの関連性でもインターネットとの結び付きが見えてこない。
  • 情報通信技術の進展によりこれまで電話やファックスでの対応が主であった消費者の要望がインターネットで吸い上げることが可能となった。また消費者どうしでの情報交換がインターネット上で可能となり、より良いロジスティックの構築が可能となった。
  • 消費者の価値観が非常に多様化してきたことにより消費者の要望に物流業界が追い付いていない部分もある。消費者への選択肢の提供を増やさなければいけない。そもそも人の動くところは、モノも動き、情報が動くところもモノは動くのである。現在は荷物の配達に係るサービスは、曜日や日時指定のみならず、受取人本人指定まである。電話とインターネットさえあれば部屋にこもっていても品物を注文できてしまうのである。モノを配達しても留守宅が多く、1個の荷物を配達するのに平均1.6回かかる。その1.6倍のコストを内包した上で更にコスト削減を求めるのであれば中間物流のコストを下げるべきであろう。物流の情報をリアルタイムで把握する努力をしているが、現在の技術では難しいところもあり、更に従来型のバーコードでは今後対応が難しく、安価な電子タグを開発する必要があるだろう。2010年ということで10年先の予想をするのが今の時代では難しく、現実的か否か考える必要があろう。
  • そもそも誰にとっての「ベストプラクティス」であるか。日本という国か、一般消費者レベルか。また、SCM、QR等々物流や情報通信に係る言葉が氾濫し過ぎているのではないか。物流や情報通信の役割には何ら変化はない筈なのに言葉に踊らされている感がある。言葉の意味について定義付けをして考えていくべき。物流と情報通信の融合それだけではダメで、モノの流れを如何にコントロールしていくか、その場合の物流業者の役割はどうであるか、それが物流業界に課せられた課題。インターネットをBtoBに如何にして応用していくか困難な問題である。
  • ネットビジネスを実施しているが、利用者にとってのカード決済について、セキュリティ面での不安がある状況が伺える。今後のチケットの取り扱い等における通信インフラとして、常時接続が必要となることが想定される。一時的に輻輳した受注、モノを預かるスペースの確保等データ処理や管理の面で課題があり、コスト面の負担を含めて検討する必要がある。物流面においても、環境適合(排気ガス対策車・低騒音車)のトラックの開発においても、まだまだ技術面やコスト面での課題が多いのが現状。今回の研究会テーマである10年先を想定した検討においては、5年先でも実現されうる環境変化が想定される。
  • モバイルでは音楽配信や位置情報システムのサービス運用の段階にある。モバイルは経営のあらゆる段階でのフリクションロスやエネルギーロスを解消し得ることから、モバイルをプラットフォームの提供をしているインフラとして認めるべきである。
  • この研究会の共通テーマとしては、物・人・金の流れを如何に統合していくか、があると思われる。またそれをする前提として物流や情報通信の本質的な意味を有する言葉を構築していくことが考えられる。また、そもそも根本的な問題としてこの研究会のテーマを10年先という形で「長期計画」的に考えても良いものか否か。「変化の激しいもの」と「変化しようとしないもの」に分けて考えていかなければならないだろう。
  • 検討に当たって、1つのフレームワークを作る必要があるのではないか。例えば、「5つ(物・人・金・情報・経営)の流れの歴史と今後」、「明と暗」、「物事の二極分化」、「インターネットのインフラ化におけるフロントとバックエンド」及び「モバイル、カーナビ等の日本が世界に冠たるもの(文化)の世界への発信」である。
  • コンビニエンスストアで住民票や戸籍抄本を受け取りたい等の要望が多い。一部では行っているが関係地方公共団体との調整が必要。国が標準様式を含め一定のコントロールをすべきではないか。また使う使わないを問わず、倫理教育を含め情報リテラシーに関する教育を早い段階で行うべきではないか。
  • これらの分野の人材育成を如何に進めていくか。企業任せにせず国の研究所の再編を含めて考えるべきことであると思われる。またビジネスモデルの特許問題のような国家戦略的な問題について国が真剣に検討する必要があるのではないか。

-今後のスケジュールについて各委員より了承を頂き閉会-

(本議事概要に関する問い合わせ先) 経済企画庁 総合計画局 社会資本班 TEL:03-3581-0764