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補論

I.働き方に関する改革

人々が暮らしていく上で、収入を得、生計を立てていくことは最も基本的なことである。そして、失業率の上昇が目立ったり、ライフスタイルの多様性が尊重されつつある近年において、人々が自分のスタイルで安心して働けることの重要性が再認識されている。そこでまず、この点について、今回の構造改革により、どのような変化がもたらされるのかをみていくこととする。

第一に、(1)年齢・性別にかかわりなく働けるようになり、また、(2)その働き方についても個人の就労意識・価値観に基づいて多様な選択ができるようになる。

(1)については、改正雇用対策法の中で、募集・採用における年齢制限緩和の努力義務規定が制定されたことにより中高年齢者の働く機会が増えるということがある。また、男女雇用機会均等法の履行を確保することにより、男女とも同じ条件のもとで仕事をすることができるようになるとともに、特に女性にとって働く意欲を阻害しないような社会保障制度や税制等の制度設計の見直しが進められる。さらに、育児休業等について定めた育児・介護休業法の履行を確保することにより、男女とも子育てをしながら働き続けること等が容易になり、仕事と家庭との両立を図れるようになる。

(2)の働き方の選択肢が拡がるということについては、1)有期労働契約については、契約期間の上限が3年とされている特例に関し、対象労働者の範囲の拡大や契約期間の上限を3年から5年に延長することについて、2)派遣労働については、対象業務の拡大や派遣期間の延長(なお、同制度における派遣期間は一部の専門的、技術的な業務(3年)等を除いて原則1年であるが、中高年齢者については、その厳しい雇用情勢に鑑み、3年とする特例措置が平成14年1月1日より施行されている)も含めた制度全体の見直しについて、それぞれ検討することとされている。一方、3)裁量労働制については、本社における企画・立案の業務等においても、労働者自身の裁量により労働時間の配分等を行うことができる柔軟な働き方ができるようになった。

従来の制度のもとでは、個人や家族の事情に応じて働くことが困難であり、子育てや介護の負担を感じたり、家族との団らん時間を持てないなどの問題が生じていた。しかし、労働分野の制度改革や保育サービス等の充実の結果、人々は柔軟な働き方ができるようになり、また、仕事以外の生活時間をより上手に活用できるようになると考えられる。

第二に、離職者や転職者への支援強化等、総合的にセーフティネットの充実が図られることにより、離職時の生活の不安が軽減され、再就職もスムーズにできるようになる。

離職時の生活については、新たに離職者支援資金が創設され、雇用保険制度の枠外にいる自営業者やパート労働者、雇用保険の求職者給付期間が切れたことにより生計の維持が困難となった世帯でも、失業に対するセーフティネットとして、生活資金の借入れが可能となる道が開かれた。また、会社が倒産した場合における未払賃金の一部の立替払制度において、その上限額の引上げが行われたり、平成14年度予算において、最大10年の返済期間延長等を内容とする住宅金融公庫の住宅ローン返済の特例の適用も引き続き行われることになる。これらの施策は、現に失業している人々の生活の維持を可能とすることや、人々の失業に対する不安を軽減することにつながると考えられる。

一方、企業のリストラ等により離職を余儀なくされた人々にとっては、円滑に再就職ができることが重要であるが、そのための施策の1つとして労働移動支援助成金が創設された。この制度は、「失業なき労働移動」の実現を目指す観点から、離職予定者に求職活動のための休暇を付与するなどの条件のもとで、企業に助成金を支給するものである。このような施策によって、離職を余儀なくされた人が、失業を経ずして再就職ができる可能性が高まる。

さらに、失業した場合についても、規制改革による民間職業紹介機関のいっそうの普及や公共の大規模な就職サポートセンターの設置等により、求職者が職業紹介を受ける機会が増えたり、求人情報を容易に入手できること等を通じて、再就職しやすくなる。

第三に、自己啓発等の努力によって自らが望む仕事に就きやすくなる。

具体的には、教育訓練給付制度(厚生労働大臣が指定した講座を受けた場合にその費用を補助する制度)の整備等により、個人にとって自己啓発によるスキルアップを行いやすくなる。職業訓練の比重が企業内訓練から個人の自己啓発へと移って、個人が自分のキャリアを自分で決めるようになっていく方向にある中で、このような個人に対する自己啓発への支援策は、人々の職業選択の幅を広げる上で有効である。

一方、再就職を目的とした能力開発の機会も拡充される。これについては、大学・大学院、事業主、NPO等あらゆる民間機関を活用した委託訓練が充実するとともに、求人者の人材ニーズに応じたオーダーメイド型訓練コースを開設することにより、求人者、求職者双方のニーズを的確に反映した職業訓練が実施されるため、中高年ホワイトカラー離職者等の早期再就職が容易になるというものである。また、失業給付の訓練延長給付制度(失業給付の受給資格者が、公共職業安定所長の受講指示により、公共職業訓練等を受講する場合、失業給付の所定給付日数を超えたとしても、訓練を受ける期間は基本手当を支給されるという制度)についても、その対象となる職業訓練の枠を拡大するなどの拡充が図られ、これにより、再就職が容易になると考えられる。なお、一定以上の収入を得られる管理職層等の求職者が、民間職業紹介所に自ら手数料を払って、自らのニーズに合致した紹介サービスを受けることが可能になる。また、個人のキャリア形成に関する相談(キャリアカウンセリング)のサービスも充実する。

以上のような働くことを巡る改革は、いうまでもなく、雇用機会を拡大することにつながるが、さらに、現在進められている保育や介護等のサービス分野における規制改革も、これらの分野における事業の拡大や新規事業の創出を通じて、働く場の拡大に結びつくと考えられる。

 

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