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第1章 家族を巡る潮流変化

結婚することに対する意識の変化

では、このような未婚化、晩婚化の背景として、人々は結婚することについてどのような意識を持っているのだろうか。

まず、結婚することによる利益、不利益についての意識をみてみたい。当府「国民生活選好度調査」(97年)によれば(2つまで複数回答)、結婚することの利点として、「精神的な安らぎの場が得られる」(68.2%)、「人間として成長できる」(37.1%)、「一人前の人間として認められる」(30.6%)をあげた人の割合が高い(第1−12図)。一方、不利益については、「やりたいことの実現が制約される」(48.2%)、「自由に使えるお金が減ってしまう」(30.4%)、「家事、育児の負担が重くなる」(22.1%)をあげる人の割合が高く、このうち、「自由に使えるお金が減ってしまう」については男性における割合(40.0%)が、「家事、育児の負担が重くなる」については女性における割合(31.4%)がそれぞれ高くなっている(第1−13図)。これらの結果によれば、結婚してパートナーや子どもと一緒に生活することにより、精神的な安らぎや社会的な信用を得ることができる一方で、男性については、自分のために使える所得が減少すること、女性については、家事労働の負担が重くなることにより、経済面、生活面における自由がそれぞれ少なくなると考えている人が多いことがわかる。

次に、この結果を踏まえて、結婚することに対する意識についてみてみよう。国立社会保障・人口問題研究所「第11回出生動向基本調査」(97年)によれば、一生を通じて考えた場合、いずれ結婚するつもりであると考える未婚者の割合は、9割近くになるものの、そのうち、理想的な相手が見つかるまでは結婚しなくてもいいと考えている人の割合は半数を超えている。また、当府「国民生活選好度調査」(2001年)において、結婚しなくても満足のいく生活ができると考えるかどうかについて尋ねたところ、高年齢層においてはそう思わないとする人の割合が高いのに対し、若年層においてはそう思うとする人の割合のほうが高い(第1−14図)。このように、将来的には結婚しようと考える反面、今すぐに結婚しなくても構わないという意識や、結婚しなくても満足のいく生活ができるという意識の高まりがみられる。

さらに、未婚者が独身のままでいることの理由について、前述「第11回出生動向基本調査」によれば(3つまで複数回答)、結婚適齢期にあると思われる25〜34歳の独身者において、「適当な人に巡り会わない」、「自由や気楽さを失いたくない」、「必要性を感じない」と考える人の割合が高い(第1−15図)。

以上をみるに、近年の未婚化、晩婚化の第一の原因としては、相手が見つかるまでは結婚しなくてもいいという人が多いことがあげられる。なお、結婚相手の条件としてもっとも重視するものについて、当府「国民生活選好度調査」(97年)では、性格が合うことをあげる人の割合(64.3%)が高くなっており、精神的なつながりが重視されているようである(第1−16図)。そして、第ニの原因としてあげられるのが、現在享受している自由を失いたくないと考えている独身者が多いことである。これについては、おもに所得や家事に関する自由について取り上げたが、近年では、結婚することで気楽さを失いたくないと考える若者も多いと思われる。親と同居して日常的な世話をしてもらうパラサイト・シングルがその象徴的な例といえるだろう。

これ以外にも、仕事を持つ女性が増えたことにより、女性の経済力が高まったことや、コンビニエンスストアや加工調理食品等が普及したことにより家事の省力化や外部化が進み、男性の一人暮らしが容易になったことも要因として考えられる。独身者でも経済面、生活面で不自由を感じなくて済むようになり、必要に迫られて結婚するというよりも、その後の人生を豊かにするかどうかを考えた上で結婚するという傾向が強く出てきた結果、未婚化、晩婚化が進行したものと考えられる。

 

第1-12図 結婚することの利点

第1-12図 結婚することの利点


 

第1-13図 結婚することの不利益

第1-13図 結婚することの不利益


 

第1-14図 結婚しなくても満足のいく生活ができると考える人は若年世代で多い

第1-14図 結婚しなくても満足のいく生活ができると考える人は若年世代で多い


 

第1-15図 未婚者が独身にとどまっている理由

第1-15図 未婚者が独身にとどまっている理由


 

第1-16図 結婚相手の条件として男女とも性格が合うことを重視

第1-16図 結婚相手の条件として男女とも性格が合うことを重視

 

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