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第1章 消費者市民社会に向けた消費者・生活者の役割と課題

第1節

経済主体としての消費者・生活者〜消費者市場行動

消費者市場を取り巻く環境は、経済のグローバル化、サービスの多様化や情報化の急速な進展、規制改革、少子化・高齢化、女性の社会進出、環境問題の深刻化などにより大きく変化している。こうした環境の変化を背景に消費者・生活者は多様な選択ができる時代となる一方で、企業不祥事、価格変動、金融リスクの増大など様々な問題が発生している。
そこで、本節では、まず消費者・生活者が経済主体としてどのような状況にあるのか、経済という側面から市場全体、食品・製品、サービス、価格という順にその現状を分析するとともに、今後、消費者市場を変革させる上での課題と方策について考察してみたい。


1.消費者市場の現状

●経済全体の中での大きな消費者の力

 消費者が支出する総額(家計最終消費支出)は284兆円(2007年度)であり、国内総生産(GDP)に占めるシェアで見ると、1980年度以降、50%以上を維持しており、2007年度現在、約55%の最大のシェアとなっている(第1−1−1図)。先進国は概して消費者が支出する総額がGDPの5割を超えており、我が国も同じ中に位置付けられる(第1−1−2図)。つまり、消費者が何に支出するかは個々の企業、そして我が国経済全体にとっても大きな影響を与えうる。この消費者が自らの力を市場の変革のために上手く行使できているかが重要になってくる。

第1-1-1図 家計最終消費支出の割合は1980年度以降、5割を超えている
第1-1-2図 先進国は概して消費者の支出が経済の5割を超えている

●消費者の消費内容の変化

 このような中で、消費者の消費内容に変化は見られるのだろうか。
 1984年から2007年の1世帯当たりの財・サービス支出を見てみると、年間消費支出総額は84年の266万円から2007年には274万円に増加するとともに、商品購入(対財支出)とサービス支出(対サービス支出)別では、サービス支出の占める割合が32.6%から41.5%にまで高まっている(第1−1−3図)。

第1-1-3図 モノからサービスへとシフトしている日本の家計消費支出

 サービス支出のうち、増加したものは、住居(5.2%→7.5%)、教養娯楽(旅行、月謝など)(5.6%→7.3%)、外食(5.3%→6.2%)、通信(機器を除く)(2.5%→4.3%)である。また、上位5位には入っていないが、保健医療(1.8%→3.0%)についても大きく比率が上昇している。一方、商品購入を見ると、食料(30.4%→22.7%)および被服及び履物(8.2%→4.9%)が割合を大きく低下させているが、支出項目間の順位に大きな変化は見られない。
 このような家計による支出項目の内容の変化は、ライフスタイルの多様化、女性の社会進出、インターネットや携帯電話などIT化の進展、高齢化などを背景に、需要がモノからサービスへとシフトしていることをうかがわせる。
 我が国の家計の支出内容を諸外国と比較してみると、アメリカではサービス支出の占める割合が49%(2006年)になっているほか、家賃を含めた物価水準が東京と近いスウェーデンでも、家計のサービス支出が全体の47%(2006年)を占めており、我が国以上にサービス経済化が進展している(第1−1−4図(1)3。スウェーデンにおけるサービス支出の具体的内容を見ると、住居(21.1%)、教養娯楽(旅行、趣味など)(11.1%)、外食(3.8%)、通信(2.2%)などが上位に挙がっており、順位に占める項目は日本と類似している。しかし、比率では住居、教養娯楽、家事サービスなどが我が国よりも高くなっており、我が国でも更にこうした項目でサービス化が進展する可能性がある(第1−1−4図(2)4

第1-1-4図 日本以上にサービス化は欧米で進んでいる

●消費者・生活者の行動が企業の売上に影響を及ぼす

 では、消費者・生活者はその力を生かしているのだろうか。企業の倫理的、社会的または環境に関する評判によって、製品またはサービスを購入しようと決めている人は最近の調査によると48.2%となっており、欧米の同様の調査(アメリカ45%、英国42%など)に比較しても意識の高さが見られる5。また、企業の環境に関する方針や、社会に関する方針、倫理綱領によって、企業の製品やサービスを利用しないように誰かに忠告したことがあるかと尋ねたところ、「ある」との肯定的回答が28.8%となっており、アメリカ(41%)、英国(26%)、ドイツ(22%)などと変わらない。実際、企業が起こした不祥事とその後の売上高の関係を見てみると、不祥事発生以降、売上高が徐々に減少している(第1−1−5図)。直接的には取引先が製品の入荷を停止するなどの影響が大きいと思われるが、その背景には消費者・生活者側の不祥事を起こした企業に対する厳しい姿勢があったと考えられる。

第1-1-5図 不祥事を起こした後は売上高が減少

 このように消費者・生活者の行動が企業へ一定の影響力を及ぼしているが、これはあくまで不祥事を起こした企業に対するペナルティーとして機能しているに過ぎない。これを更に一歩進め、食品・製品の安全性や誠実な経営をする企業を見分け、そうした企業を支援することによって、企業、市場の在り方まで変える、その力こそ消費者・生活者に求められている。一方でそうした状況に変革されるためには課題も多い。以下では分野ごとに見ることで市場経済を消費者・生活者を中心に据えたものに変革するための課題を見ていくとともにその課題を解決するための方策を探りたい。

 


家賃を含む物価水準はニューヨークを100とした場合、東京が94.4、ストックホルムが90.8となっている(UBS(2008))。
住居支出が多いのは[1]若年層の子どものいる家庭または片親家庭には賃貸住宅家賃の45%程度の補助で住宅手当が支給されていること、[2]年金支給者にも住宅補助があること、などからあまり本人が実質的に負担せずに比較的広い住居に住むことができるためである(OECD(2004c))。
内閣府(2008a)およびIpsos(2006)

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