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全文 > 第3章 職場のつながり >第3節 職場のつながりの変化による影響(2/3)

3.職場内のコミュニケーション不足

●職場内のコミュニケーションは不足している

第2節で述べたように、個人単位での仕事の機会が増えるとともに、IT化の進展によりコミュニケーション手段が多様化したことなどから、職場におけるコミュニケーションの有り様も変化している。また、先に見たように、正社員、パート・アルバイトのいずれにおいても、疲労感の原因として、「職場の人間関係が悪い」や「相談する相手がいない」が挙げられるなど、人とのつながりの希薄化により、コミュニケーション不足が生じていると考えられる。そこで以下では、コミュニケーションの状況について見てみよう。

企業の従業員に、社内でコミュニケーションが取れているかどうかを聞いてみると、「十分取れている」、「大体取れている」と回答した人の割合は合わせて45.9%と、約半数に上っている(第3-3-11図)。他方、「あまり取れていない」、「全く取れていない」と回答した人も合計で26.6%おり、約4分の1が社内コミュニケーションが不十分と感じている。企業規模別では、従業員数100人以上の中堅・大企業でコミュニケーション不足を指摘する割合が高まる傾向がある。

 

第3-3-11図 「社内コミュニケーションが取れていない」と感じている人の割合は4分の1強

次に、職場内でどのような相手とのコミュニケーションが不足しているかを尋ねたところ、「部署を超えた社員同士のコミュニケーション」と回答した割合が65.3%と最も高く、次いで「経営層と一般社員とのコミュニケーション」が63.8%となっており、ともに6割を超えている(第3-3-12図)。また、「同じ部署内の上司と部下のコミュニケーション」を挙げた者の割合が40.0%、「同じ部署内の同僚同士のコミュニケーション」と答えた者の割合が26.8%となっており、同じ部署内であってもコミュニケーションの不足を感じていることが分かる。

 

第3-3-12図 部署を超えた社員同士のコミュニケーションが不足している

さらに、社内で電子メールやイントラネットなどを利用している人に、ITを活用したコミュニケーションや情報共有についてどのような問題点を感じているかを聞いたところ、コミュニケーションに関する項目としては、「ネットに頼りすぎて生のコミュニケーションが希薄になりがち」と回答した割合が26.1%となっている(第3-3-13図)。この結果から、電子メールでのやりとりや、ネット上の情報検索に頼ることが増え、従業員同士が直接コミュニケーションを取る機会が少なくなりがちであることがうかがえる。

 

第3-3-13図 ITを活用したコミュニケーションの問題点は「生のコミュニケーションが希薄になりがち」なこと

●職場の助け合いやコミュニケーションの減少が心の病にも影響

コミュニケーションの機会が減少することにより、心理的な負担も増加している。

最近3年間の心の病の増減傾向について尋ねたところ、「増加傾向」と回答した企業の割合は、2002年には48.9%であったが、2006年には61.5%にまで高まっている42第3-3-14図)。

 

第3-3-14図 心の病が増加していると感じる企業は6割

心の病が最も多い年齢層を見てみると、30代と回答した企業の割合が61.0%と群を抜いて高く、次いで40代が19.3%となっている(第3-3-15図)。過去の調査結果と比べると、30代を挙げる割合が高いことは変わっていないが、以前よりもこの年代に集中する傾向が顕著になっている。

 

第3-3-15図 30代に多い心の病

次に、同じ調査で、職場の変化と最近3年間の「心の病」の増減傾向の関係を見ると、「職場でのコミュニケーションが減少」という項目に対し、「そう思う」、「ややそう思う」と回答した企業において、「心の病」が増加傾向と答えた割合は71.8%に上っている(第3-3-16図)。一方、同じ項目に「あまりそう思わない」、「そう思わない」と回答した企業については、「心の病」が増加傾向と答えた割合は46.0%にとどまっている。

 

第3-3-16図 コミュニケーションや助け合いが減少している職場で「心の病」が増加する傾向

このほか、「職場での助け合いが減少」、「個人で仕事する機会が増加」といった項目についても、当てはまると考える企業は、そうでないと考える企業に比べて「心の病」が増加傾向にあると回答する割合が高い。

これらの結果は、職場のコミュニケーションや助け合いが減少するなど、「人と人のつながり」が希薄化したことが、働く人の心の余裕をなくし、ストレスにつながっている可能性が高いことを示唆している。


4.人材育成機能の低下

●4人に1人が「若手を育成する余裕がない」と感じている

前述したように、最近の職場の変化として、正社員の長時間労働で職場における時間的拘束が強まり、仕事上の責任や負担が増大していることがある。こうした変化は、従来職場が担ってきた人材育成機能にも影響を与えている。

長時間労働の弊害の一つは、正社員が業務をこなすことに追われ、十分に指導を受けられないために、能力開発の機会を喪失していることであると指摘されている43。また、第1節で見たように、企業における職業訓練の機会は縮小しており、これに拍車を駆けている可能性もある。

さらに、指導者が多忙で十分に指導できないことにより、能力開発の機会が失われていることも考えられる。最近3年間で職場に起こっている変化について尋ねたところ、「若年層の育成に手が回らなくなった」という項目については評価が分かれているものの、「そう思う」および「どちらかといえばそう思う」と回答した割合が27.0%と4人に1人が若手の育成に手が回らなくなったと感じている(第3-3-17図)。これは、後述するように、団塊の世代が退職期を迎えることにより、技術の伝承に関する懸念を顕在化させる要因ともなっている。

 

第3-3-17図 4人に1人が「若手の育成に手が回らなくなった」と感じている

●世代間コミュニケーションの難しさも技能継承の懸念材料

また、人材育成の一環と考えられる、職場内における技術や技能の継承については、世代間のコミュニケーションの難しさも課題となっている。

「団塊の世代」が定年を迎えることに伴い、この世代が持つ熟練の技やノウハウが後の世代にうまく引き継がれるかどうかが、いわゆる「2007年問題」として懸念されている。

従業員規模30人以上の企業に2007年問題に対する危機意識を持っているかどうかを聞いてみると、「強く持っている」と回答した企業の割合は5.0%、「ある程度持っている」は28.7%で、合わせて33.7%の企業が危機感を持っている44。企業規模別では、規模が大きくなるほど危機意識を感じている割合が高まる傾向が見られ、従業員規模30人以上100人未満の企業では30.8%であるが、1,000人以上の大企業では52.5%になっている(第3-3-18図)。

 

第3-3-18図 大企業で高い2007年問題に対する危機感

危機意識を持つ要因を尋ねてみると、「意欲のある若年・中堅層の確保が難しい」を挙げた割合が64.4%と最も高く、次いで「技能・ノウハウ伝承に時間がかかりやすい、円滑に進まない」が58.0%となっている(第3-3-19図)。こうした要因のほかに、「教える方と教わる方の年代やレベルの差が開きすぎていて、コミュニケーションが難しい」を挙げた企業の割合も24.7%(製造業では29.8%)に上る。熟練技術者と若手との技術レベルの差に加え、意識や価値観の異なる世代間でコミュニケーションを取ることの難しさも、技能やノウハウの継承に当たっての懸念材料となっていることが読み取れる。

 

第3-3-19図 世代間のコミュニケーションの難しさも危機意識を持つ要因となっている

●団塊の世代は「伝える相手がいない」ことを問題視している

一方、技能を伝える側の団塊の世代は、この問題についてどのように考えているのだろうか。

仕事をしている広義の「団塊の世代」(47〜51年生まれ)に、自分が持つ技術や技能を職場の後輩に伝えるべきだと思うかどうかを尋ねたところ、64.4%が「伝えるべきである」と答えている(第3-3-20図)。「伝えるべき」と回答した人に、実際に技能やノウハウの伝達がうまくいっているかどうかを聞いてみると、「うまく伝わっている」とする人は4.9%にとどまり、「ある程度伝わっている」とする人の割合が65.5%と最も高い。他方、「あまり伝わっていない」が23.5%、「まったく伝わっていない」が4.9%となっており、合わせて28.4%が技能やノウハウの伝達に何らかの問題を感じている。

 

第3-3-20図 団塊の世代の3分の2は自分の技能を後継者に伝えるべきと考えている

それでは、なぜ技能や技術の伝達がうまく進んでいないのだろうか。「あまり伝わっていない」または「まったく伝わっていない」と回答した人にその理由を聞いてみると、「技術を伝える相手がそもそもいない」と答えた割合が42.0%と最も多く、そもそもつながる相手がいないことが問題となっている。そのほかでは、「会社のサポートが足りない」が27.1%、「時間が足りない」が23.9%、「会社が伝達の機会を与えてくれない」が17.2%と続き、技術伝承に関するサポートが不十分であることがうかがえる。(第3-3-21図)。

 

第3-3-21図 技能伝達の壁は「伝える相手がいない」こと

勤務先の企業規模別では、「技術を伝える相手がそもそもいない」を挙げる割合はどの規模においても最も高いが、「29人以下」の小規模企業に勤務する者で54.7%と特に多い。一方、「30人以上」の企業に勤める者については、「会社のサポートが足りない」を挙げる者が3割前後いる。また、「時間が足りない」、「会社が伝達の機会を与えてくれない」と回答した割合は、勤務先の企業規模が大きくなるほど増える傾向にある。

 


42  過去の調査結果(2002年、2004年)と比較すると、「横ばい」、「減少傾向」とする割合は減少していない。「わからない」と回答する割合が減少していることも勘案すると、これまであまり認識されていなかった従業員の「心の病」について、企業側の認知度が高まってきたことの現れとも考えることができる。
43  玄田有史「働く過剰」NTT出版(2005年)。
44  厚生労働省「能力開発基本調査」(2005年度)による。

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