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全文 > 第3章 職場のつながり >第3節 職場のつながりの変化による影響(1/3)

第3節

職場のつながりの変化による影響

第1節では職場のつながりが総じて希薄化していること、第2節ではその背景を見てきた。本節では、職場のつながりが変化した結果、職場で働く人や職場にどのような影響をもたらしているのかを分析する。


1.仕事のやりがいや雇用の安定に対する充足度の低下

●仕事のやりがいや雇用の安定に対する充足度は低下している

職場におけるつながりが変化する中で、仕事のやりがいや、良好な職場環境、雇用の安定といった、人々の職場や仕事に関する満足度はどのように変化しているのだろうか。

「仕事のやりがい」、「快適な職場環境」、「雇用の安定」について、現在どれだけ満たされているかを示す充足度得点40の推移を見ると、「仕事のやりがい」と「雇用の安定」に関しては、1980年代後半以降、低下する傾向にある(第3-3-1図)。これに対し、「快適な職場環境」は、90年代後半から2000年代初めにかけて、いくらか下がる傾向が見られるものの、ほかの二つの項目ほど顕著には低下していない。

 

第3-3-1図 仕事や職場環境に関する充足度は低下している

ここで、「仕事のやりがい」および「雇用の安定」について、男女別、年齢層別に見ていこう。

まず、「仕事のやりがい」に対する充足度を見ると、男性は90年代半ばから2002年にかけて低下している(第3-3-2図)。なお、30代以上では2002年までには充足度の下げ止まりが見られ、2005年には再び上昇に転じているが、20代に関しては2005年も引き続き充足度は低下している。これは、この間の厳しい経済環境の中で成果主義の導入や終身雇用制の見直しといった雇用慣行の変化とともに、雇用者が職場から従来のように評価されなくなり、会社への帰属意識も低くなるなど、職場とのつながりが弱まったことが背景にあると考えられる。また、若年層においては、企業の新規採用意欲が高まらず、正社員での就職が難しいなど求める職場のつながりが得られない状況が続いていたことも、低下傾向に歯止めがかからない要因となっている可能性がある。

 

第3-3-2図 仕事のやりがいや雇用の安定に対する充足度が低下している

次に、「雇用の安定」に対する充足度を見ると、男女を問わず、2002年まで大きく低下した後、2005年にはほぼ全ての年齢層で高まっている。この推移については、経済低迷による雇用不安のほか、第2節で見たような終身雇用制の変化や雇用の非正規化の進展などにより、雇用面での職場とのつながりが弱まったことも影響していると考えられる。

●若年層を中心に「生きがいをみつけるため」に働く割合は減少

先に「仕事のやりがい」が低下傾向にあることを見たが、近年、働くことに生きがいを見出そうという意欲も薄れてきている。

働く目的について尋ねたところ、「生きがいをみつけるため」と答えた人の割合は97年には33.1%であったが、2000年代に入り低下し、2006年には23.0%にとどまった。その一方で、「お金を得るため」と回答した人の割合は、97年の34.0%から、厳しい雇用情勢も反映して上昇を続け、2006年にはやや減少したものの49.7%と半数近くに達している(第3-3-3図)。

 

第3-3-3図 「生きがいをみつけるため」に働く人の割合は減少している

年齢層別に見ると、男女とも若い年齢層では「生きがいをみつけるため」と回答する割合が低くなっている(第3-3-4図)。他方、「お金を得るため」とする割合は、30代、40代を中心に高く、60代以上では低くなっている。多くの人が定年を迎える60歳以降では、経済的理由のほかに、生きがいを求めて働く傾向が強まることが分かる。

 

第3-3-4図 若年層で低い「生きがいをみつけるために働く」意識

また、男性では、20代では「自分の才能や能力を発揮するために働く」と回答する者の割合が約2割に上っており、他の年齢層よりも高い。50代以上では「社会の一員として、務めを果たすために働く」と回答する者が2割程度となっており、働くことを社会人としての義務と認識していることがうかがえる。


2.仕事上の負担感が増加している正社員、雇用不安感の強いパート・アルバイト

●多くの人が疲労感やストレスを感じている

第1節で見たように、30代、40代の働き盛りの年代を中心に長時間働く正社員の割合が高まる一方で、若年者で勤務時間の短いパート・アルバイトが増えるなど、労働時間が二極化している。こうした状況下では、職場で働く正社員、パート・アルバイトはそれぞれどのような身体的、精神的疲労を感じているだろうか。ここでは、疲労感やストレスの状況と、これらに職場のつながりが及ぼす影響について見てみよう。

普段の仕事で身体の疲れや、仕事上のストレスをどの程度感じているかを聞いてみると、「身体の疲れ」については、「とても感じる」と答えた人の割合が30.2%、「やや感じる」が49.2%、「仕事上の不安や悩み、ストレス」については、「とても感じる」が26.7%、「やや感じる」が43.6%であり、7割以上の人が身体の疲れや仕事上のストレスを感じていることが分かる41

就業形態別に見ると、正社員で「身体の疲れ」を感じている割合(「とても感じる」と「やや感じる」の合計)は男性で82.9%、女性では84.1%と、ともに80%を超えている(第3-3-5図)。一方、パート・アルバイトでは、男性の69.3%、女性の78.3%が「身体の疲れ」を感じると回答しており、正社員よりも割合は低い。「仕事上の不安や悩み、ストレス」についても同様の傾向が見られる。このように、パート・アルバイトよりも正社員で、身体の疲れやストレスを感じる割合が高くなっている。

 

第3-3-5図 正社員は仕事に対する疲れやストレスをより強く感じている

●正社員では、仕事上の負担の重さが疲れやストレスに

正社員が疲れやストレスを感じている割合が高い点を見たが、その原因はどのようなことであろうか。

正社員に現在の仕事で身体的な疲労感や精神的なストレスを感じている原因を尋ねたところ、「会社の将来性に不安を感じる」と回答した割合が31.6%と最も高く、「仕事量が多い」が30.5%、「仕事の責任が重い」が29.4%と続いている(第3-3-6図)。また、このほかに、「働く時間が長い」、「職場の人間関係が悪い」、「相談する相手がいない」、「自分の雇用の安定性に不安を感じる」といった項目も上位に挙がっている。

 

第3-3-6図 正社員は会社の将来性への不安や仕事上の負担感などから疲れやストレスを感じている

第2節で終身雇用制などの日本的雇用慣行の変化を見たが、自分の雇用に対する不安は、長期的な「職場と人のつながり」の希薄化が影響していると考えることもできる。その一方で、第1節では、長い時間働く正社員の割合が高まるなど、「職場における時間的拘束」が強まっている側面を見たが、疲れやストレスの主な要因として「仕事量が多い」、「仕事の責任が重い」、「働く時間が長い」が挙げられていることは、こうした「職場における時間的拘束」が強まり、正社員の負担となっていることの現れと見ることができる。つまり、長期的な「職場と人のつながり」が弱くなった一方で、「職場における時間的拘束」は強まっており、このことが正社員の疲れやストレスの要因になっているものと考えられる。

また、「職場の人間関係が悪い」、「相談する相手がいない」といった要因が挙げられていることは、一方で職場における「人と人のつながり」の希薄化が、疲労感やストレスを更に高めていると考えることができる。

●若年・中堅の正社員で負担感が増加している

正社員では、仕事量が多いなど仕事上の負担の重さが、疲労感やストレスの原因となっていることが分かったが、仕事に対する負担感は過去と比べて強まっているのだろうか。

別の調査になるが、正社員に仕事に対する負担感を尋ねたところ、「(5年前と比べて)仕事上の責任・負担が増加した」と回答した割合は42.9%、「仕事上の責任・負担がどちらかといえば増加した」は24.3%となっており、両方を合わせると3分の2強の人が仕事上の責任や負担が増えたと感じている(第3-3-7図)。一方、「仕事上の責任・負担がどちらかといえば減少した」は2.9%、「仕事上の責任・負担が減少した」は2.5%であり、合計しても5.4%にとどまる。年齢層別では、20代から40代において仕事上の責任・負担が増えたと感じる割合がいずれも7割以上に達しており、若年・中堅層の負担感が高まっていることがうかがえる(第3-3-8図)。

 

第3-3-7図 正社員の3分の2が「仕事上の責任や負担が増加した」と感じている

 

第3-3-8図 20〜40代では7割以上が「仕事上の責任や負担が増加した」と感じている

それでは、なぜ仕事上の責任や負担感が増加したのだろうか。5年前に比べて仕事上の責任や負担が増加したと回答した人にその理由を聞いてみると、「個人の責任で仕事をする機会が増加したから」を挙げた割合が44.6%と最も多い(第3-3-9図)。第2節では個人単位で仕事をする機会が増えたことを指摘したが、この結果、職場の同僚の協力や助言を得にくい状況で仕事上の課題を抱え込むようになり、負担が増したとも考えられる。つまり、職場における「人と人のつながり」の希薄化が人々の負担を高めていると言えよう。

 

第3-3-9図 仕事上の責任や負担が増加した原因は「個人で仕事をする機会の増加」、「昇任、昇格」、「社員数の減少」

●パート・アルバイトは、雇用の不安定さからストレスを感じている

他方、パート・アルバイトも正社員ほどではないものの、男性では約7割、女性では約8割が仕事上の不安や悩み、ストレスを感じている(前掲第3-3-5図)。前出の調査で、パート・アルバイトに現在の仕事で疲労感やストレスを感じる原因を聞いてみると、「自分の雇用の安定性に不安を感じる」と答えた割合が39.1%と最も高い(第3-3-10図)。パート・アルバイトの場合は、正社員よりも雇用調整の対象となりやすい立場にあり、雇用関係としての職場とのつながりに不安定さを感じる者が多いと考えられる。

また、これ以外の要因として、25.5%が「職場の人間関係が悪い」を、14.0%が「相談する相手がいない」を挙げている。第1節ではパート・アルバイトは正社員に比べ、職場における「人と人のつながり」を持ちにくいことを指摘したが、この結果から人とのつながりの希薄化が疲れやストレスの原因となっていることが見て取れる。

 

第3-3-10図 パート・アルバイトは雇用の不安定さから疲れやストレスを感じている

 


40  内閣府「国民生活選好度調査」では、国民生活全般にわたる様々な項目について、充実度を5段階評価で尋ねている。充実度得点とは、充実度の段階に応じて「十分満たされている」=5点、「かなり満たされている」=4点、「どちらともいえない」=3点、「あまり満たされていない」=2点、「ほとんど満たされていない」=1点とし、項目ごとに回答者数で加重平均したものである。
41  独立行政法人労働政策研究・研修機構「就業形態の多様化の中での日本人の働き方−日本人の働き方調査(第1回)−」(2006年)による。

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