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全文 > 第3章 職場のつながり > 第1節 職場のつながりの変化と現状(3/3)

2.「職場と人」のつながりの変化と現状

次に「職場」と「人」のつながりについて見ていきたい。

かつては、「会社人間」という言葉に象徴されるように、終身雇用制・年功序列制などの日本型雇用慣行の下で、企業すなわち職場とそこで働く人との結び付きは強固であったが、現在では状況が変化していると考えられる。

以下では、これらの職場と人のつながりの変化と現状を、勤続年数、労働時間、個人の意識などの観点から分析する。

(1)勤続年数で見た職場と人のつながり

●若年層を中心に勤続年数が短くなっている

職場と人のつながりは様々な尺度で測ることができるが、その一つとしては勤続年数が考えられる。

男性の勤続年数を見ると、95年の12.9年から2005年の13.4年へと若干伸びている(第3-1-18表)。

 

第3-1-18図 若年層を中心に勤続年数が短縮

男性雇用者の勤続年数
(年)
年齢区分 勤続年数 増減差
2005 1995 2005-1995
平均 13.4 12.9 0.5
  20〜24歳 2.3 2.7 ▲ 0.4
25〜29歳 4.8 5.1 ▲ 0.3
30〜34歳 8.2 8.5 ▲ 0.3
35〜39歳 11.7 11.9 ▲ 0.2
40〜44歳 15.2 15.8 ▲ 0.6
45〜49歳 18.6 19.3 ▲ 0.7
50〜54歳 21.7 22.1 ▲ 0.4
55〜59歳 22.6 21.8 0.8
60〜64歳 14.5 13.4 1.1
65歳以上 14.4 12.8 1.6

(備考)
1. 厚生労働省「賃金構造基本調査」により作成。
2. 男性の勤続年数を年齢層別に示したもの。

これは、90年代における新規採用の抑制や定年延長を背景として、職場における年齢構成が高年齢層に移行したことによる影響と考えられる。そこで、年齢層別に勤続年数の推移を比較すると、54歳以下で短期化、55歳以上では長期化する傾向にあることを確認することができる。

また、離職率についても、29歳以下の若年層の離職率が全年齢平均を上回り、上昇傾向となっている(第3-1-19図)。このことから、若年層を中心に勤続年数が短くなっていると見られ、このような尺度で見た職場と人のつながりが弱まりつつあると考えられる。

 

第3-1-19図 離職率も若年層で高まる

●長時間働く人の割合は高まっている

職場と人とのつながりの尺度として勤続年数を見たが、もう一つの尺度として労働時間を見てみよう。

1人当たりの年間総実労働時間は、時短の流れや週休二日制度の普及などから年々減少しており、96年からの10年間で100時間以上減少し、2006年には約1,800時間となっている(第3-1-20図)。つまり、平均値から見ると、人と職場との時間的なつながりは緩まる傾向にある。

 

第3-1-20図 1人当たり年間総労働時間は減少

しかしながら、1週間当たりの労働時間別に従業者28の割合を見てみると、週35時間未満は95年の10.1%から2005年には14.2%に高まり、同時に週60時間以上の割合も16.8%から18.0%に高まっている(第3-1-21図)。これを年齢層別に見ると、30代と40代といった働き盛りの年代で週60時間以上の割合が高まっており、2005年では2割以上を占める結果となっている。また、20代で週35時間未満の割合が9.7%から15.3%へと高まっているが、これは、勤務時間が短いパート・アルバイトという就業形態が増えたことが影響しているものと考えられる。

 

第3-1-21図 労働時間は長短二極化の傾向

つまり、労働時間が長いほど職場とのつながりが強いという労働時間の長短をつながりの尺度とすれば、一部で職場とのつながりが強まった人が増えていることとなる。しかし、労働時間が増えることは、後で示すように職場、家族および地域のつながりが希薄化する原因ともなっている。そこで、労働時間を尺度とした職場と人とのつながりについては、そのマイナスの影響を強調するため、以下では「職場における時間的拘束」と記述することとしたい。

(2)働く人の意識から見た職場と人とのつながり

これまで、職場と人のつながりを、勤続年数や労働時間という客観的な尺度から見てきたが、次に、職場で働く人が、職場との関係をどのように感じているかという意識の面から見ていこう。

●職場への帰属意識や貢献意識が低下

働く人が職場についてつながりを意識しているか否かは自分が職場に所属していることを肯定的に捉える意識、すなわち、帰属意識を持つか否かで測ることができよう。

会社に対する帰属意識に変化があるかを尋ねると、このような意識が「もともとない」とする回答が95年は18.4%であったが、2000年には23.7%に高まっている(第3-1-22図)。またそのような意識が「薄れた」という回答について19.4%から32.2%に10%ポイント以上も高まっている。

 

第3-1-22図 会社に対する帰属意識は低下している

また、帰属意識の低下に伴い、職場に対する貢献意識も変化していると考えられる。従業員数200人以上の企業に勤務する従業員に、会社に尽くそうという気持ちが人一倍強いかどうかを尋ねたところ、「そう思う」、「どちらかといえばそう思う」といった考え方に肯定的な回答をした者の割合は、60代以上では72.9%にも達しているが、20代以下では21.8%にとどまり、年齢が若くなるほど低下する傾向が見られる(第3-1-23図)。年齢の高い層でこのような考え方を肯定する割合が高いことは、従来、我が国が愛社精神、会社への忠誠心が強い国と言われていたことの証左でもあると考えられる。一方で、現代の若者はこのような意識が薄れ、組織と一定の距離を置きたいと考えている人が多いことがうかがわれる。

 

第3-1-23図 職場に対する貢献意識が低下

●新入社員の意識は、「就社」から「就職」へ

若年者では会社への貢献意識が低下していることを見たが、新入社員は何を重視して仕事に臨んでいるのだろうか。 

新入社員に就職先の企業を選ぶ際に重視した点は何かを尋ねた結果を見ると、「会社の将来性を考えて」と回答した会社に惹かれる人の割合が低下し、「自分の能力、個性が生かせるから」、「仕事がおもしろいから」、「技術が覚えられるから」と回答した職に惹かれる人の割合が高まっている(第3-1-24図)。つまり、新入社員の職場に対する意識は「就社」から「就職」へと変化し、その職場という「場」で働くこと自体よりも、その「場」でどんな仕事をするかを重視するようになっていることがうかがえる。先に若年者において勤続年数が短くなり、離職率が上昇していることを見たが、一つの企業に長期継続的に雇用されることを期待しにくくなったことも、このような意識の変化に影響していると考えられる。

 

第3-1-24図 新入社員の入社意識は「就社」から「就職」へ

(3)企業から見た職場と人とのつながり

働く人はかつてのような、職場との強いつながりを求めなくなっていることを見てきたが、職場、つまり企業の側では、人とのつながりをどのように考えているのだろうか。ここでは、企業が従業員とどのように接しようとしているかを、人材育成・能力開発の観点から見ていこう。

●能力開発は、従業員個人の責任と考える企業が増える

これまで、我が国企業における人材育成は、終身雇用や年功的賃金といった慣行を背景に、新卒を一括して大量に採用し企業の責任において育成するという特徴があり、職業教育訓練が重視されていた。これは、企業が長期的な人とのつながりを前提としてきたことの現れでもあるが、近年、企業における職業教育訓練に対する態度が変化している。

企業の能力開発責任者に、従業員の能力開発は企業の責任で行うものか、従業員の責任で行うものかを尋ねたところ、「企業の責任」(「企業の責任である」もしくは「企業の責任であるに近い」)との回答割合は、2000年度には75.6%と全体の4分の3を占めていたが、2004年度には66.8%に低下し、「従業員個人の責任」(「従業員個人の責任」もしくは「従業員個人の責任であるに近い」)とする企業の割合は20.1%から30.7%に上昇している(第3-1-25図)。

 

第3-1-25図 今後については、能力開発は「従業員個人の責任」と考える企業の割合が増える

今後の能力開発の主体についても、「企業の責任」とする割合が2000年度には69.4%であったものが2004年度には65.9%に低下し、「従業員個人の責任」とする割合が26.6%から31.0%に高まっている。このことから、依然として6割以上の企業が能力開発の主体を企業と考えているものの、「従業員個人」の自己責任を求める考え方も広まっていることがうかがえる。

●90年代に職業教育訓練は縮小傾向

企業の職業能力開発に対する意識に変化が見られる中で、実際に職業教育訓練の状況はどう変化しているのだろうか。

職業教育訓練の実施状況を見ると、企業における通常の仕事を一時的に離れて行う職業教育訓練である「Off-JT(Off the Job Training)」、日常の業務につきながら段階的・継続的に行われる職業教育訓練である「計画的なOJT(On the Job Training)」のいずれもバブル崩壊後の90年代に大きく実施率が低下している(第3-1-26図)。

 

第3-1-26図 職業訓練実施率は低下

また、費用面でも、企業の教育訓練に係る支出は減少する傾向にある。企業の支出した教育訓練費が労働費用に占める割合を見ると、90年代のバブル崩壊以降大きく低下する等、職業訓練の実施率と同様の傾向が見られる(第3-1-27図)。

 

第3-1-27図 企業の労働費用計に占める教育訓練費の割合は90年代に低下

このように、90年代に企業の職業教育訓練は縮小傾向にあり、これは企業がかつてのように長期的なつながりを前提とした人材育成を行わなくなってきたことを裏付ける結果となっている。

【コラム】 家族や友人・知人を介しての転職は転職後の満足度が高い
  株式会社リクルートワークス研究所が行った「ワーキングパーソン調査2002」に基づく分析結果によると、転職活動をする上で「家族や友人・知人」の紹介を得る人の割合が高く、またそのような人の内定に至る割合や、転職後の満足度が高いことが示されている()。
  家族や友人・知人の紹介による転職では、転職希望者および求人企業について一般的には知ることのできない情報がやり取りされる場合が多く、情報の非対称性が小さくなることから、より適切なマッチングが可能になるものと考えられる。
  このように、「家族や友人・知人」のつながりは、新たな職場とのつながりを創る転職において、重要な役割を担っている。
 
表 家族や友人・知人の紹介で転職した場合は満足度や内定率が高まる

入職経路別利用割合、満足度および内定率
(%)
区分 利用した 利用した経路について
満足した 応募した 決定した
 働きたい会社に直接問い合わせ 12.4 72.2 64.3 41.0
 学校(学生課)の窓口や掲示板 2.2 54.9 52.7 34.5
 公共職業安定所(ハローワーク) 24.3 39.3 55.4 34.9
 民間人材紹介会社等 3.2 52.1 53.6 33.6
 人材派遣会社 3.8 50.4 55.4 29.2
 求人広告 49.4 69.3 72.1 58.5
 その他のインターネット 1.6 50.3 38.9 17.5
 家族や友人・知人 42.6 79.9 56.7 76.7
 その他 4.5 70.6 51.6 63.2
 どれも利用していない 4.6 - - -

(備考)
1. 樋口美雄、児玉俊洋、阿部正浩編著『労働市場設計の経済分析ーマッチング機能の強化に向けて』(2005年)による(一部抜粋)。
2. 株式会社リクルートワークス研究所「ワーキングパーソン調査」(2002年)の結果を用いて特別集計を行ったもの。

 


28  総務省「労働力調査」で定義される従業者(調査期間中に仕事(賃金、給料、諸手当、内職収入などの収入を伴う仕事)を1時間以上した者。家族従事者は無給であっても仕事をしたとする。)を指す。

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